***まず最初に注意書き***
・当方の書くSSは極めて 病 的 です。SSの9割はシリアスで構成されております。読まれる方を不快にする場合が多々あるかと存じ上げます。なので、読まれる方は 十 分 に 覚 悟 してください。
(でも、今回は割と普通かも?)
・多分の厨二表現が含まれます。恐らく意味が通じてないような表現も多いでしょう。十中八九、読んでて疲れる文章です。俺でも疲れるんで(爆)
で、まぁそこらへんは「あ~、こいつ、痛い奴なんだな」と納得承知の上、スルーしてやってください。
・夏コミ受かったとき、これを元に推敲して出すかもしれません。宣伝、ってわけじゃないけど、もし出すことになったら出来るだけ上々な出来に仕上げたいので、その試験的な感じで上げていることをご理解ください。
・これは続編です。一話は、作品集96にあります。一応あとがきにもアドを貼ってありますので
覚悟は出来ましたか? Yes ->No<-
では、どうぞ
時は僅かに遡る。
まだ日も完全に暮れてから幾数刻。
夏場ということもあり、少し湿った地上は体感温度を高くさせて不快感を装わせる程だ。俗にいう熱帯夜とはこのことだろう。
街灯がともり、それなりに夜の営みに活気付いてきた街中を、客観的に見れば異端といえる、しかし中身は至って普通な偏屈魔法使い――魔理沙が、肩に等身以上ある竹箒を担ぎながら歩いていた。
「何だってンだ。まるで雨上がりのようなジメったさだぜ、こりゃ」
扇子を仰ぐも気休めにしかならない事態に、魔理沙は愚痴をつぶやく。
魔理沙の格好も、その意味でいえば十分季節はずれであるため、普段身に着けているゴシック調の上着もエプロンも、今は箒に簡単結びで巻きつけられていた。
対して、いかにも涼しげな顔をした少女――稗田阿求は、受け流すような、だがきっちり受け止めるような、物言いで応えた。
「そうですね。日照り続きだったし、そこまで湿度が高くなる要因はないと思うんですけどね」
魔理沙の上着が薄いブラウス一枚のなりとなろうが、長く分厚いスカートは未だ健在だ。さすがに下着をどうこう、主に脱ぐなんてことは、いくら天衣無縫、傍若無人の魔理沙であっても躊躇われるのか、パタパタとスカートを仰ぐのみである。いや、この行為自体、例えば阿求のような一般常識人にしてみれば破廉恥極まりないのだが。
道行く人の視線は自然、魔理沙のそれへと集まる。今の魔理沙にとっては恥や外聞以上にこの蒸し暑さが問題らしい。
「あの……魔理沙さん? 少しは人目を気にして――」
「無理! この暑さ、尋常じゃない! 異常気象だぜ、異変だぜ」
「いや、ただの熱帯夜じゃないですか! 普通に諸行の理の範疇ですから!」
そんな阿求の突っ込みに、魔理沙は人を品定めするようなジト目を向ける。
「阿求、その突っ込みは少し堅苦しい。芸や能を目指すならもうちょっと人受けするニュアンスを考えてだな」
「何の話ですか!? 何の」
「おう、そんな感じだ」
「というか、魔理沙さん。額の汗、拭ったらどうです? 見てるこっちが暑苦しいです」
半ば以上やっけになって仰ぐ魔理沙の額からは、滝のように汗が伝い落ちている。もちろん、清涼効果はてんで期待できないのは言うまでもない。
「何!? だからこんな暑いのか。なるほど。“あいんしゅたいん”も気付かぬ盲点だぜ」
「いや、ただ頭のネジが一本抜けてるだけだと思いますが……」
「何!? 私の頭の中にはネジが埋め込まれてるのか!?」
「……もういいです」
魔理沙との言葉の受け攻めにはと多量の根気と機転がいる、というのは人里の間柄では周知の事実である。初対面で魔理沙と言葉を交わす者の八割は、その突飛発言にあっけらかんな反応しか返せない。無論、残りの二割は対人適応力のある人間か、魔理沙以上に歯車の噛み合わせが悪い人間か、に絞られるが。
ことに関して、稗田阿求という人柄は専ら前者であった。しかもその許容範囲は幻想郷全土に息づく者全てが対象だ。いい意味では寛大、悪い意味では付和雷同、自己が希薄なところか。
「とりあえず私の家に行きましょう。冷たいお茶ぐらいご馳走しますよ。いや、暑い日にそんな厚い服着る天邪鬼な魔理沙さんには、やっぱり熱いお茶のがいいですかね?」
「お、さすが阿求だな。粗相のない接客態度で結構結構……って、おい! 私にも冷たいほう寄越せ!」
「そんな物言いするお客にお冷は振舞えません。こういうことを聞くのはご法度ですけど、あ、え、て、聞きます。何様なんですか? 魔理沙さん」
「無論、お客様、だぜ」
しかしながら、魔理沙が相手では気丈に、辛らつを演じる阿求なのであった。
二人は人里の大通りを和気藹々と闊歩する。二人にとって背景と同化している人里の人間たちもまた、各々の事情を抱えて足を進める。
そんなときのこと。
“きゃあああぁぁぁぁあああ!”
里人の誰かが悲鳴を上げた。
声の方向に魔理沙と阿求は目を向ける。
見ると、和服を着た女性が腰を引かせてへたりこんでいた。弱弱しく震えている右手は遠くの空を指している。
その先に続けて目を向ける二人。そこには、
――赤い紅い、空が出来上がっていた。
「ヒッ――!」
阿求は反射的に袖元で口を押さえる。目は丸く見開かれているのに、その瞳孔は限りなく小さく。その衝撃は呼吸を止めていることを失念しまうほどに大きい。
それほどの規模、異常――言い例えれば、それは紅い壁だ。
家々を飲み込むその濃度は、一寸先も闇、ならぬ紅色。徐々に迫ってくる壁に、さすがの魔理沙も唾を飲む。
「なんだ、これ。不気味なんてもんじゃないぜ――っていうか、これ」
魔理沙は、突然の頭痛に顔を歪める。
「ま、魔理――――?」
――――。
――――――。
続けて、阿求の案じもまるで耳に入らなくなる。眼は開いてるはずなのに、既に視界は渦巻く暗闇のような眩暈で何も見えない。
外界と断絶させられるほどの異常で深刻な頭痛に、魔理沙は思い当たる節もなく苛まれた。
否、思い当たる節は――。
(この、紅い霧――どこかで。)
途端、脳髄の芯がさらに揺さぶられる。
一時でも気を抜けば、意識をそのまま持っていかれるレベル。
地に跪き、硬い地面に自らの爪をめり込ませる。食いしばった歯からはぎりぎりと耳障りな音が響く。涙とは縁遠いであろう魔理沙の目尻には、小粒の雫が溜まっている。汗を吸い尽くして冷め冷めとしたブラウスの清涼感だけが、唯一魔理沙の意識を引き繋いでいる感覚だった。
(思い、出すな、ってか。なんだこの、吐き気も、よそ、る、既視感、は)
思い出そうとすれば頭痛で意識を押し返され、諦めようとすれば残留する既視感の心地悪さが意識を寄せ戻そうとする。
そんな理不尽すぎる綱引きも、阿求の容赦ないビンタでようやく決着ついた。
「大丈夫ですか!? 魔理沙さん!」
「――あ」
鮮明化する意識。潮を引くように治まる頭痛。それと同時に思い出される、
“あの日”の出来事。
“形”が崩れ、
“色”が消え、
次第に、幻想郷が――。
――と、
魔理沙は阿求の脅えきった瞳に我を取り戻し、混乱する記憶の処理より現状打破を優先、咄嗟に箒にまたがる。
「乗れ、阿求!」
「えっ――?」
後ろから強引に阿求を跨らせ、急発進の慣性に必死に耐えながら魔理沙は紅霧とは逆に飛行する。通り過ぎていく里人にあらん限りの声量で号した。
「とりあえず霧から逃げろ! それから物見やぐら、民宿の二階でもいい、出来るだけ高いところへ上がれ!」
「え? 高いところ?」
意図を把握できてない阿求に、魔理沙は短直に応える。
「霧の天端は平均的に見ておよそ三尺三寸強。七尺近くあるツバキの樹高半分以下と見受けられた。おそらく比重の重い気体で出来てるんだろう、成分は分からないが、はたから見ても異質といえる気体の大体が、魔術的な合成物の副産物だ。が、これほどまで規模が大きいと、この紅い気体そのものを生み出してる元凶がいるかもしれない」
「な、なるほど」
一刻を争う事態だというのに、不謹慎な納得をしてる阿求だったが、霧の特徴を一瞬で見定めるその観察力、そこから示唆される可能性を導き出すその洞察力は、まさに根っからの外出癖だった魔理沙が持つ才能の一つだった。
過ぎ行く里人に声をかけながら、魔理沙は適当な民宿の屋根を見つけると、そこで阿求をおろした。
「とりあえず、ここで阿求は、高所へ逃げろと叫ばせながら逃げるよう、みんなに呼びかけてくれ。そうすればお前がここを動かなくても人々に緊急事態であることは伝わる」
「え、魔理沙さんは?」
「私はこれから霊夢んとこ行ってくる。私の感が正しければ、十中八九、この異変は悪意を持った黒幕がいる」
「あ、悪意って……」
その言葉を聞き、また阿求は軽く縮こまってしまった。
無理もない。順応力の高い妖怪とは違い、人間は、初見という事態に滅法弱い。そのために“慣れる”という能力があるが、それゆえに人間は、『正体不明なものに疑心暗鬼になる』という防衛本能が用意されている。
ましてや“紅い霧”なぞ。到底結びつきそうもない二つの要素が混ざり合われば、連想するのは悪意や害意、少なくとも、人間の良しとなる考えはまず思いつかない。
少し失言だったか、と魔理沙は悔やむ。その罪滅ぼしにと、阿求の頭に手を置くと、安堵感あふれる優しい声で魔理沙は語りかけた。
「大丈夫だって。私に任せろ。“疾風怒濤”とは、私から生まれた言葉だぜ!」
「いや、違いますけどね」
魔理沙はいつでも我を保つことが出来る。たとえ、死に直面しても、臆することなく、不敵に、まさに“疾風怒濤”を体現するかのように、初志貫徹する。それは魔理沙の長所であり、強みでもあった。だが、阿求の案じは、魔理沙の心強さとは別の要素にあった。
そう、先ほどの、尋常じゃない苦痛さに。
「あの、大丈夫ですか?」
「あぁ、さっきのか? もう平気だぜ。回復の試験薬が身体によく効いた時並みに元気だ」
そういって、自慢にもならない小さな力こぶを見せる魔理沙。茶目っ気が健在な様子に、阿求はようやっと安堵のため息を吐く。
「結局、何だったんですか? さっきの」
「あぁ、そうだ! さっきのな! さっきの…………さっき?」
「?」
「……あれ? ん?」
「どうしたんですか?」
再び頭を抱える魔理沙。件の頭痛が来たのかと、阿求はいぶかしんだが、魔理沙の顔は至って健康なアホ面だ。
――まるで、大事な大事な用件を“忘れてしまった”ときのような。
「ま、まぁ、とりあえず行ってくるぜ! この話はまた今度だ、じゃあな」
「え? えぇえ? ちょっと、魔理――」
魔理沙は、真夏の、幻想であり、現実でもあり、平穏であり、不穏でもあり、有意義であり、無価値でもある、多々の思惑を内に秘められた、星々が煌く夜の空へと飛び立っていった。
ただ、少し狙いすぎた表現が所々あるのも確か……そこのあたりの強弱をしっかりつけるともう少し読みやすくなるかも、と思いました。
続き、期待しています。
みんな空気読みすぎわろたwwww
えー、作中で”きゃあああ!”って文章がありますが、一つしたの文に里で悲鳴が上がったってあるので、不要だと思います。読んでて凄く目立ちました。爆発音を”バーン”とか、擬音で書き出している風に見えて、幼稚に思えました。いや、言葉悪いなぁ、うん。作中の音はそのまま擬音を書くのではなく、文章で書き表すようにした方が良いと思いましたので。長文、失礼しました。