注)今回投稿した小話はすべて、筒井康隆さんの短編集(?)『天狗の落し文』を改変元としています。
というより8,9割そのままです。けして私のオリジナルではないことを、ここに明記するものであります。
上記の本は『文学史上初、「全作、盗作自由」の使用権フリー短編集!』なる小説本であります。
◇
博麗神社の宴会のおりに天狗から
「八雲のお二人はどうしていつまでもあんなに若々しくて美しいんですかね」
と聞かれた橙。つくね肉をほおばったまま朗らかに答えた。
「毎晩パックしてますから。一緒に仲良くパックしてますから。時々は私も一緒に三人でパックしてますから。えへへ」
舌足らずで「パ」がどうしても「ファ」になり、天狗はびっくり仰天。
◇
激しく咳き込んだ末、くしゃみと屁を連発した紫に、藍いわく。
「何もかも一人でなさらぬよう。紫様の悪い癖です」
◇
変なサークル活動をやってる変な友達(『メリー』っていうあだ名)から聞いた話。
ある夜、同棲相手の蓮子って娘(彼女達は二人ともレズビアン)がメリーに電話してきた。
聞けば、駅まで戻ってきたが、気分が悪くなったので迎えに来て欲しいと言う。
メリーは驚いて駅まで駆けつけた。
けど、蓮子の姿はない。
おりしも駅前に停車していた救急車がぴーぽーぴーぽーと警笛を鳴らしながら走り去ったとこだった。てっきり蓮子に違いないと思い込んだメリーはタクシーに飛び乗って救急車を追いかけた。
やがて救急車は救急病院に到着。
患者が蓮子以外の誰かとは思ってもいないメリーだったけど、受付に走りよった彼女は一応の確認をする。
「今、担ぎ込まれたのはどんな人ですかっ」
「男の人です」という看護士の返事。
ほっとしたものの、では蓮子はどこにいるのか。
ふたたび駅に戻れば、そこにぼんやりとたっている蓮子の姿。
「蓮子っ、どこに行ってたのっ」
「いや、寒かったからちょっとコンビニで肉まんを……はい、メリーの分」
メリーは思わず蓮子に殴りかかったそうである。
◇
永琳「認識=経験論的には、死は存在しない。いよいよ死ぬまでは死を意識できないし、死ねば意識はない」
◇
わが紅魔館の門前で毎夜のように小便をし、門を汚して帰る酔っ払い鬼がいる。
ある夜、門番の威信にかけて待ちかまえ、小便しているところをつかまえて首をしめあげてやったら大便をした。
◇
「あなたにこのようなものを戴くほどのことを、わたしは何もしていないはずです」
うろ覚えなので、正確ではないかもしれないけれど、聖白蓮の書いた、もらったお中元だかお歳暮だかの礼状である。
寅丸星は感心した。いいなあ。うまいなあ。これは何にでも応用できるなあ。
ちょうど、一度法事を頼まれただけの人里の男性が、毎年夏と暮れとに供物を送ってくださるので、もうこういうことは結構ですよという意味の手紙を、礼状を兼ねて書こうとした。
あまりそっけなくも書けず、悩んだ末、前記の聖の文章を真似ることにした。
「あなたからこのような結構なものを戴くほどのいいことを、私はあなたに一度もしていない筈ですが」
星は読みかえし、あっと思って破り捨てた。意味が違っているのである。
よい文章、必ずしもすべてに応用できるとは限らない。
◇
ヒロシゲがトンネルを抜け出て、次のトンネルに入るわずかな間に見える谷間の村。
列車の乗客にとっては五秒の村。村の歴史は千五百年。
◇
関雪円(カンセツエン)韋恢陽(イカイヨウ)張念天(チョウネンテン)囊朱陽(ノウシュヨウ)秩珪恋(チツケイレン)紅美鈴(ホンメイリン)いずれも中国人の名前。
◇
勃起した陰茎にバナナの皮をかぶせる。大きなバナナであれば先端部分を食べ残し、中央と根元の二箇所をセロテープで巻く。これを女性に見せると、たいていは仰天する。
僕は魔理沙にこれを見せて張り倒されました。
◇
サークル活動本を頒布している同人誌即売会にて。
「あのう、握手していただけますか」
蓮子は原則的にはお客とは握手しない主義である。
しかし「いやあ。握手はちょっと」と言いながら見上げれば、なんと輝くばかりの可愛子ちゃん。
「はいはい」などといって手を握り締め、ついでに手の甲に接吻した。
「あらあ。じゃあ私も握手してもらおうかしら」
次に進み出たのがちょうどサークルめぐりから戻ってきてたメリー。
うっかり目撃されたようで、わざわざ列にならんで半切れ。
「ほら。早くしなさいよ」
列に並んだ全員が注目しているから、こうなればやけくそ。
立ち上がり、メリーを抱きしめ、その柔らかい紅色の唇に、ぶちゅーっ!
運営スタッフに見られてて厳重注意されました。ちぇっ。
◇
「ねぇ妖夢。しばらくセックスをやめてみない?」
「えぇ、幽々子様、しばらくって、どれくらいですか?」
「さあ。半年とか、一年とか」
「半年は長すぎるし、一年はもっと長すぎるわ。いっそのこと中間をとって、四日にしない」
「何が中間ですか」
◇
永琳「はい。内視鏡、挿入しますからね。モニターで見ますか。はいどうぞ。見えますか。膣ですよ。どんどん入れていきますからね。ああこれは、綺麗な膣ですねぇ。妖夢ちゃん幸せだ。ここはもうだいぶ奥ですね。妖夢ちゃんが深く入れた時に幽々子さんが感じるところ。はい。子宮に入りますよ。ほら。お子さんです。ひとりだけですね。双子や三つ子ではありません。そして、ああ、女の子ですねぇ。元気そうですね。成長も早いなあ。もう髪の毛がピンクピンクしてますね。見えますかあ。はい。では抜きます。え。もう少し見ていたい。そうですか。ではどうぞ。いいですかあ。抜きますよう。はい奥の院、ずうっと抜いて、ああ、これ幽々子さんの陰核亀頭ね。はい。大陰唇です。はいこれが私の顔。これが私の鼻の穴の中。はい、こんなもの見たってしかたありませんね」
◇
「ねぇ大ちゃん。『パーフェクトフリーズ』って何だっけ」
「教えてあげよっか。チルノちゃんのスペルカードの名前だよ」
「そのスペルカードを見て考えてるんだけどさ」
◇
蓮子はなぜか結婚斡旋所に来ていた。
「どんな御用で」と所員が聞く。
「結婚相手を世話してほしいんです」と言ってみる。
「ええっと。では、デジタルにしますか。それともアナログですか」
「両方の中間がいいな」
「では、丁度いいのがあります」
所員は奥から、半切れのメリーを連れて現れる。
◇
ルーミアとチルノちゃんの会話はいつも頓珍漢。
「ね~チルノー、柿はおなかを冷やしちゃうから、あんまり食べないほうがいいんだよー」
「ええっ。私にあんな汚い運動靴を履けっていうの?」
「ほらみたことか。ちゃんとパンツを腰まではかないからなのだ」
「なあんだ。ルーミアもまだ下駄を買ってきてないんだね。あははははは」
「いひひひひひ」
会話が成立していないのに、妙に仲だけはいいみたい。
◇
患者「せ、先生。どうでした。やはり食中毒でしょうか」
医者「ご心配なく。食中毒なんかじゃありませんでしたよ」
患者「えっ。それでは、この腹痛は」
医者「なあに。ただの胃がんですよ。あはははははは」
患者「ガーン」
こういう会話を一度はしてみたいと、永琳は湯船の中で放屁しながら思った。
◇
里の料理屋の前菜で「茄子のトリコロール」というものがメニューに載っている。
永琳は顔をしかめた。
客にトリコモナス(女性の膣内に寄生する鞭毛虫)を連想させるとは思わないのだろうか。
◇
昔のメリーは、私が彼女の裸に見とれていると恥ずかしげに「見ないで」と、呟いたものだ。
今のメリーは「何よ」と言って私を睨みつける。
◇
道路を車でとばしながら、私はあたりの様子がなんとなく、いつもと違うことに気づいた。
「いつもと違うね」と、私は行った。
「そうね」
助手席のメリーも、気づいているようだ。
「車の数がやたらに少ないし」
「建物の様子も違うわね」
「どこかで間違えたのかしら?」
「そんな筈はないんだけどなぁ」
しばらく考えてから私は言った。
「私達、家の二階にいたんだっけ」
「そうよ。で、蓮子がジャズ・クラブへ行こうって、突然言い出したのよ」
「で、すぐに出発したんだよね」
「そうよ」
「なるほどメリー、どうりでいつもと違うはずね」
私はうなずいた。「ここは二階だ」
「ええー。ここ、まだ、二階なの」
「二階から出発したんだ。だからここは二階だ」
「だったらジャズ・クラブについても、そこは二階なの」
「ええ。二階ね。二階についてもしかたがないよね」と私は言った。
「いったん引き返すわね」
◇
お喋り好きのチルノちゃんとルーミア。
互いに相手の話を聞かず、別のことを同時にしゃべり続けているのだけれど、おほほほほほほほほなどと、笑う時だけは一緒なのである。
不思議でたまらないけれど。
◇
夫は月の姫(姫なのに夫とはこれいかに。凡人には理解しがたい深遠なる論理が秘められているのだろう)、その妻はお医者様。
ある日、『プリンセスの妻』というテレビ番組(ローカル竹林放送)に彼女が出演した。
「ご主人があーたを怒鳴る、なんてこと、ございますか」と、遠慮のないインタヴューアーがたずねる。
「一度だけ、『馬鹿』と怒鳴られたことがございます」
「えっ。それはいったい、どういうときに」
「私は患者の看病に疲れておりましたが、無理をして人里へ買い物に出かけたのでございます。すると里で以前の患者様に出会いまして、つい話しこんでしまったのです。帰ると姫に『馬鹿』と、怒鳴られました。すぐ帰ると言っていたのに遅いものですから、どこかで倒れたのではないかと随分心配したそうでございます。このときだけは、姫の愛情が身にしみて、私は泣いて詫びたのでござます」
ふん、とテレビをみていた鈴仙は冷笑する。
実は、鈴仙の部屋は二人の部屋のすぐそばなのだ。そして毎夜のように激しい夫婦喧嘩の声と物音が聞こえてくる。
「このスットコドッコイ」
「やりやがったな。このドかちめんこ」がらがっちゃがっちゃ。
「痛い痛い。やったわね。このうすらニートのぐうたらが」どしーん。
「いててててて。この糞婆あ! 死ねええっ」
◇
輝夜「安逸をむさぼっていると女性の顔は白雉化し、醜くなる。昔の女性の顔が美しかったのは、苦労に耐えてきたからである。だから永琳が美しいのは私のせいだ。ありがたく思いなさい」
◇
あまりの旨さに、メリーが作ってくれたイカスミスパゲッティーを四皿平らげた。
翌朝、イカスミの大便がでた。
美味しそうだった。
◇
文書家・稗田阿求は一時睡眠薬中毒になり、永遠亭ではもう売ってくれなくなったそうで、私の寺子屋へ、変わりに睡眠薬を買ってきてくれと頼みに来た。そんな折、彼女はこんな話をした。
「幻想郷縁起を書いていると、筆がころがって机の下に落ちてしまって。しかたなく、かがみこんで手を伸ばし、筆を取ろうとするのだけどなかなか取れません。と、いうことをえんえんと幻想郷縁起に書き続けたのだけれど、いくら書いても筆が拾えないんです。困ったものです」
私は彼女を抱えて永遠亭に駆け込んだ。
◇
ルーミアの手記
『まだ骨ができていず柔らかい、赤ん坊の頭の部分に、大口をあけて接吻、というよりはかぶりつくように吸いつき、息を吸ったり吐いたりしてみれば、頭の皿がぽっぺんぽっぺん』
◇
「だいぶ日がくれてきたわねぇ」と、メリーが空を見あげていった。
「でもまだ、そんな時間じゃないわよ」と、蓮子が言う。「いつもなら七時を過ぎてもまだ明るいはずなのに」
「だけどほら、空の色が赤くなってるじゃない」
蓮子も空を見上げて、びっくりしたような声を出した。
「あれえ。ほんとうだ。雲もないのに、なんでこんなに赤いんだろう?」
「やっぱり、日が暮れかかっているのよ。ほら、なんだか紫がかってきたでしょう」
「どんどん暗くなってきてるわね。これ、いったい何だろう」
「でも、綺麗ね」
「うん。綺麗ね」
ふたりはこれ以後、空を見上げたまま、色の変化に見せられて眼がはなせなくなり、いつまでも眺め続けていることになった。
「赤みが引いていく」と、メリーが言った。
蓮子がうなずいた。「うん、かわりに、黄ばみがかってきた」
「あら、昼間の青空がもどってきたのかしら。黄色混ざり合って、今度は緑色になってきた」
「美しいなあ。どんどん緑色になっていく」
やがて空は、見渡すかぎりのエメラルド・グリーン一色となった。
その美しさに見とれていたメリーが、突然気づいて叫んだ。
「ちょっと! いくらなんでもおかしいじゃない。これ、エメラルド・グリーンだなんて、そんな色をした空なんて蓮子、見たことがある?」
蓮子は黙り込んでしまい、しばらく空を睨み続けた。やがて彼女は大声でさけんだ。
「わかった! これは『ほかの空』だ」
メリーは驚いてたずねる。「えっ。何? その『ほかの空』っていうのは」
「『ほかの空』だ。つまり地球の空じゃないってことよ」
二人はおそるおそる、上に向けていた眼を地上に戻した。
地球ではなかった。
隙間を通じて別の惑星にたどり着いていたのだ。
◇
◇
◇
広い会議室にいる。
天井がドーム状になった円形の明るい会議室だ。
私の席は半円形になったテーブルのいちばん端で、そこはどうやら事務局長とか司会進行とかいった、極めて重要な役目の席であるらしい。
『太陽系第三惑星地球:宇佐見・蓮子=ハーン』
テーブルの上のネームプレートには銀河公用語でそう記されていた。
本会議は宇宙規模の平和条約会議とかであるが、なぜか宇宙人たちは、まだ来ていないのか、その姿が見えない。
と、議場の設営をする担当者から大変な連絡が入った。
各星の人々のため、議場は場所や議席ごとに空気の濃度や組成、気圧、重力、温度、湿度などを微妙に調整しているのだが、そのため議場全体がモルトスパロール空間というものになり、議場内だけ時間が早く進みだしたというのである。
会議の日程を終了する頃には、なんとわれわれは急速に三十歳も齢をとり、議場の外に出れば、そこはもはや三十年後の世界になっているというではないか。
騒ぎになり、会議を中止または延期にしようかという話になったが、これがもはや二度と機会のない重要な会議であることは全員が認識しているので、続行しようという意見が大勢を占め、出席をとりやめて議場から退出すると言い出す者もひとりもいない。
さすがに各星の代表であり、みんなたいした人たちである。
私も家に一人でいる妻のことが気になったが、なにしろ宇宙平和会議なのであり、その司会進行役なのだから、抜けるわけにはいかない。
会議が始まり、やがて無事に終了した。
私は三十歳も齢をとってしまって、なんとなく身体ぜんたいが重いような気がする。
ゆっくりしか歩けず、顔がどれだけふけたかはわからない。
いそいで家に戻ると、前栽で妻が植木の手入れをしている。
ついこの間私が家を出たときと同じグリーンのセーターをきているその背中に声をかける。
「ただいま」
妻は振り返って、まるで三十年間の不在などまったく気にしていない様子で私に微笑んだ。
「お帰りなさい」
少し小皺がでているが、笑顔は以前と同じで魅的だ。
ああ。やはり妻は美しい。
私はほっとした。
というより8,9割そのままです。けして私のオリジナルではないことを、ここに明記するものであります。
上記の本は『文学史上初、「全作、盗作自由」の使用権フリー短編集!』なる小説本であります。
◇
博麗神社の宴会のおりに天狗から
「八雲のお二人はどうしていつまでもあんなに若々しくて美しいんですかね」
と聞かれた橙。つくね肉をほおばったまま朗らかに答えた。
「毎晩パックしてますから。一緒に仲良くパックしてますから。時々は私も一緒に三人でパックしてますから。えへへ」
舌足らずで「パ」がどうしても「ファ」になり、天狗はびっくり仰天。
◇
激しく咳き込んだ末、くしゃみと屁を連発した紫に、藍いわく。
「何もかも一人でなさらぬよう。紫様の悪い癖です」
◇
変なサークル活動をやってる変な友達(『メリー』っていうあだ名)から聞いた話。
ある夜、同棲相手の蓮子って娘(彼女達は二人ともレズビアン)がメリーに電話してきた。
聞けば、駅まで戻ってきたが、気分が悪くなったので迎えに来て欲しいと言う。
メリーは驚いて駅まで駆けつけた。
けど、蓮子の姿はない。
おりしも駅前に停車していた救急車がぴーぽーぴーぽーと警笛を鳴らしながら走り去ったとこだった。てっきり蓮子に違いないと思い込んだメリーはタクシーに飛び乗って救急車を追いかけた。
やがて救急車は救急病院に到着。
患者が蓮子以外の誰かとは思ってもいないメリーだったけど、受付に走りよった彼女は一応の確認をする。
「今、担ぎ込まれたのはどんな人ですかっ」
「男の人です」という看護士の返事。
ほっとしたものの、では蓮子はどこにいるのか。
ふたたび駅に戻れば、そこにぼんやりとたっている蓮子の姿。
「蓮子っ、どこに行ってたのっ」
「いや、寒かったからちょっとコンビニで肉まんを……はい、メリーの分」
メリーは思わず蓮子に殴りかかったそうである。
◇
永琳「認識=経験論的には、死は存在しない。いよいよ死ぬまでは死を意識できないし、死ねば意識はない」
◇
わが紅魔館の門前で毎夜のように小便をし、門を汚して帰る酔っ払い鬼がいる。
ある夜、門番の威信にかけて待ちかまえ、小便しているところをつかまえて首をしめあげてやったら大便をした。
◇
「あなたにこのようなものを戴くほどのことを、わたしは何もしていないはずです」
うろ覚えなので、正確ではないかもしれないけれど、聖白蓮の書いた、もらったお中元だかお歳暮だかの礼状である。
寅丸星は感心した。いいなあ。うまいなあ。これは何にでも応用できるなあ。
ちょうど、一度法事を頼まれただけの人里の男性が、毎年夏と暮れとに供物を送ってくださるので、もうこういうことは結構ですよという意味の手紙を、礼状を兼ねて書こうとした。
あまりそっけなくも書けず、悩んだ末、前記の聖の文章を真似ることにした。
「あなたからこのような結構なものを戴くほどのいいことを、私はあなたに一度もしていない筈ですが」
星は読みかえし、あっと思って破り捨てた。意味が違っているのである。
よい文章、必ずしもすべてに応用できるとは限らない。
◇
ヒロシゲがトンネルを抜け出て、次のトンネルに入るわずかな間に見える谷間の村。
列車の乗客にとっては五秒の村。村の歴史は千五百年。
◇
関雪円(カンセツエン)韋恢陽(イカイヨウ)張念天(チョウネンテン)囊朱陽(ノウシュヨウ)秩珪恋(チツケイレン)紅美鈴(ホンメイリン)いずれも中国人の名前。
◇
勃起した陰茎にバナナの皮をかぶせる。大きなバナナであれば先端部分を食べ残し、中央と根元の二箇所をセロテープで巻く。これを女性に見せると、たいていは仰天する。
僕は魔理沙にこれを見せて張り倒されました。
◇
サークル活動本を頒布している同人誌即売会にて。
「あのう、握手していただけますか」
蓮子は原則的にはお客とは握手しない主義である。
しかし「いやあ。握手はちょっと」と言いながら見上げれば、なんと輝くばかりの可愛子ちゃん。
「はいはい」などといって手を握り締め、ついでに手の甲に接吻した。
「あらあ。じゃあ私も握手してもらおうかしら」
次に進み出たのがちょうどサークルめぐりから戻ってきてたメリー。
うっかり目撃されたようで、わざわざ列にならんで半切れ。
「ほら。早くしなさいよ」
列に並んだ全員が注目しているから、こうなればやけくそ。
立ち上がり、メリーを抱きしめ、その柔らかい紅色の唇に、ぶちゅーっ!
運営スタッフに見られてて厳重注意されました。ちぇっ。
◇
「ねぇ妖夢。しばらくセックスをやめてみない?」
「えぇ、幽々子様、しばらくって、どれくらいですか?」
「さあ。半年とか、一年とか」
「半年は長すぎるし、一年はもっと長すぎるわ。いっそのこと中間をとって、四日にしない」
「何が中間ですか」
◇
永琳「はい。内視鏡、挿入しますからね。モニターで見ますか。はいどうぞ。見えますか。膣ですよ。どんどん入れていきますからね。ああこれは、綺麗な膣ですねぇ。妖夢ちゃん幸せだ。ここはもうだいぶ奥ですね。妖夢ちゃんが深く入れた時に幽々子さんが感じるところ。はい。子宮に入りますよ。ほら。お子さんです。ひとりだけですね。双子や三つ子ではありません。そして、ああ、女の子ですねぇ。元気そうですね。成長も早いなあ。もう髪の毛がピンクピンクしてますね。見えますかあ。はい。では抜きます。え。もう少し見ていたい。そうですか。ではどうぞ。いいですかあ。抜きますよう。はい奥の院、ずうっと抜いて、ああ、これ幽々子さんの陰核亀頭ね。はい。大陰唇です。はいこれが私の顔。これが私の鼻の穴の中。はい、こんなもの見たってしかたありませんね」
◇
「ねぇ大ちゃん。『パーフェクトフリーズ』って何だっけ」
「教えてあげよっか。チルノちゃんのスペルカードの名前だよ」
「そのスペルカードを見て考えてるんだけどさ」
◇
蓮子はなぜか結婚斡旋所に来ていた。
「どんな御用で」と所員が聞く。
「結婚相手を世話してほしいんです」と言ってみる。
「ええっと。では、デジタルにしますか。それともアナログですか」
「両方の中間がいいな」
「では、丁度いいのがあります」
所員は奥から、半切れのメリーを連れて現れる。
◇
ルーミアとチルノちゃんの会話はいつも頓珍漢。
「ね~チルノー、柿はおなかを冷やしちゃうから、あんまり食べないほうがいいんだよー」
「ええっ。私にあんな汚い運動靴を履けっていうの?」
「ほらみたことか。ちゃんとパンツを腰まではかないからなのだ」
「なあんだ。ルーミアもまだ下駄を買ってきてないんだね。あははははは」
「いひひひひひ」
会話が成立していないのに、妙に仲だけはいいみたい。
◇
患者「せ、先生。どうでした。やはり食中毒でしょうか」
医者「ご心配なく。食中毒なんかじゃありませんでしたよ」
患者「えっ。それでは、この腹痛は」
医者「なあに。ただの胃がんですよ。あはははははは」
患者「ガーン」
こういう会話を一度はしてみたいと、永琳は湯船の中で放屁しながら思った。
◇
里の料理屋の前菜で「茄子のトリコロール」というものがメニューに載っている。
永琳は顔をしかめた。
客にトリコモナス(女性の膣内に寄生する鞭毛虫)を連想させるとは思わないのだろうか。
◇
昔のメリーは、私が彼女の裸に見とれていると恥ずかしげに「見ないで」と、呟いたものだ。
今のメリーは「何よ」と言って私を睨みつける。
◇
道路を車でとばしながら、私はあたりの様子がなんとなく、いつもと違うことに気づいた。
「いつもと違うね」と、私は行った。
「そうね」
助手席のメリーも、気づいているようだ。
「車の数がやたらに少ないし」
「建物の様子も違うわね」
「どこかで間違えたのかしら?」
「そんな筈はないんだけどなぁ」
しばらく考えてから私は言った。
「私達、家の二階にいたんだっけ」
「そうよ。で、蓮子がジャズ・クラブへ行こうって、突然言い出したのよ」
「で、すぐに出発したんだよね」
「そうよ」
「なるほどメリー、どうりでいつもと違うはずね」
私はうなずいた。「ここは二階だ」
「ええー。ここ、まだ、二階なの」
「二階から出発したんだ。だからここは二階だ」
「だったらジャズ・クラブについても、そこは二階なの」
「ええ。二階ね。二階についてもしかたがないよね」と私は言った。
「いったん引き返すわね」
◇
お喋り好きのチルノちゃんとルーミア。
互いに相手の話を聞かず、別のことを同時にしゃべり続けているのだけれど、おほほほほほほほほなどと、笑う時だけは一緒なのである。
不思議でたまらないけれど。
◇
夫は月の姫(姫なのに夫とはこれいかに。凡人には理解しがたい深遠なる論理が秘められているのだろう)、その妻はお医者様。
ある日、『プリンセスの妻』というテレビ番組(ローカル竹林放送)に彼女が出演した。
「ご主人があーたを怒鳴る、なんてこと、ございますか」と、遠慮のないインタヴューアーがたずねる。
「一度だけ、『馬鹿』と怒鳴られたことがございます」
「えっ。それはいったい、どういうときに」
「私は患者の看病に疲れておりましたが、無理をして人里へ買い物に出かけたのでございます。すると里で以前の患者様に出会いまして、つい話しこんでしまったのです。帰ると姫に『馬鹿』と、怒鳴られました。すぐ帰ると言っていたのに遅いものですから、どこかで倒れたのではないかと随分心配したそうでございます。このときだけは、姫の愛情が身にしみて、私は泣いて詫びたのでござます」
ふん、とテレビをみていた鈴仙は冷笑する。
実は、鈴仙の部屋は二人の部屋のすぐそばなのだ。そして毎夜のように激しい夫婦喧嘩の声と物音が聞こえてくる。
「このスットコドッコイ」
「やりやがったな。このドかちめんこ」がらがっちゃがっちゃ。
「痛い痛い。やったわね。このうすらニートのぐうたらが」どしーん。
「いててててて。この糞婆あ! 死ねええっ」
◇
輝夜「安逸をむさぼっていると女性の顔は白雉化し、醜くなる。昔の女性の顔が美しかったのは、苦労に耐えてきたからである。だから永琳が美しいのは私のせいだ。ありがたく思いなさい」
◇
あまりの旨さに、メリーが作ってくれたイカスミスパゲッティーを四皿平らげた。
翌朝、イカスミの大便がでた。
美味しそうだった。
◇
文書家・稗田阿求は一時睡眠薬中毒になり、永遠亭ではもう売ってくれなくなったそうで、私の寺子屋へ、変わりに睡眠薬を買ってきてくれと頼みに来た。そんな折、彼女はこんな話をした。
「幻想郷縁起を書いていると、筆がころがって机の下に落ちてしまって。しかたなく、かがみこんで手を伸ばし、筆を取ろうとするのだけどなかなか取れません。と、いうことをえんえんと幻想郷縁起に書き続けたのだけれど、いくら書いても筆が拾えないんです。困ったものです」
私は彼女を抱えて永遠亭に駆け込んだ。
◇
ルーミアの手記
『まだ骨ができていず柔らかい、赤ん坊の頭の部分に、大口をあけて接吻、というよりはかぶりつくように吸いつき、息を吸ったり吐いたりしてみれば、頭の皿がぽっぺんぽっぺん』
◇
「だいぶ日がくれてきたわねぇ」と、メリーが空を見あげていった。
「でもまだ、そんな時間じゃないわよ」と、蓮子が言う。「いつもなら七時を過ぎてもまだ明るいはずなのに」
「だけどほら、空の色が赤くなってるじゃない」
蓮子も空を見上げて、びっくりしたような声を出した。
「あれえ。ほんとうだ。雲もないのに、なんでこんなに赤いんだろう?」
「やっぱり、日が暮れかかっているのよ。ほら、なんだか紫がかってきたでしょう」
「どんどん暗くなってきてるわね。これ、いったい何だろう」
「でも、綺麗ね」
「うん。綺麗ね」
ふたりはこれ以後、空を見上げたまま、色の変化に見せられて眼がはなせなくなり、いつまでも眺め続けていることになった。
「赤みが引いていく」と、メリーが言った。
蓮子がうなずいた。「うん、かわりに、黄ばみがかってきた」
「あら、昼間の青空がもどってきたのかしら。黄色混ざり合って、今度は緑色になってきた」
「美しいなあ。どんどん緑色になっていく」
やがて空は、見渡すかぎりのエメラルド・グリーン一色となった。
その美しさに見とれていたメリーが、突然気づいて叫んだ。
「ちょっと! いくらなんでもおかしいじゃない。これ、エメラルド・グリーンだなんて、そんな色をした空なんて蓮子、見たことがある?」
蓮子は黙り込んでしまい、しばらく空を睨み続けた。やがて彼女は大声でさけんだ。
「わかった! これは『ほかの空』だ」
メリーは驚いてたずねる。「えっ。何? その『ほかの空』っていうのは」
「『ほかの空』だ。つまり地球の空じゃないってことよ」
二人はおそるおそる、上に向けていた眼を地上に戻した。
地球ではなかった。
隙間を通じて別の惑星にたどり着いていたのだ。
◇
◇
◇
広い会議室にいる。
天井がドーム状になった円形の明るい会議室だ。
私の席は半円形になったテーブルのいちばん端で、そこはどうやら事務局長とか司会進行とかいった、極めて重要な役目の席であるらしい。
『太陽系第三惑星地球:宇佐見・蓮子=ハーン』
テーブルの上のネームプレートには銀河公用語でそう記されていた。
本会議は宇宙規模の平和条約会議とかであるが、なぜか宇宙人たちは、まだ来ていないのか、その姿が見えない。
と、議場の設営をする担当者から大変な連絡が入った。
各星の人々のため、議場は場所や議席ごとに空気の濃度や組成、気圧、重力、温度、湿度などを微妙に調整しているのだが、そのため議場全体がモルトスパロール空間というものになり、議場内だけ時間が早く進みだしたというのである。
会議の日程を終了する頃には、なんとわれわれは急速に三十歳も齢をとり、議場の外に出れば、そこはもはや三十年後の世界になっているというではないか。
騒ぎになり、会議を中止または延期にしようかという話になったが、これがもはや二度と機会のない重要な会議であることは全員が認識しているので、続行しようという意見が大勢を占め、出席をとりやめて議場から退出すると言い出す者もひとりもいない。
さすがに各星の代表であり、みんなたいした人たちである。
私も家に一人でいる妻のことが気になったが、なにしろ宇宙平和会議なのであり、その司会進行役なのだから、抜けるわけにはいかない。
会議が始まり、やがて無事に終了した。
私は三十歳も齢をとってしまって、なんとなく身体ぜんたいが重いような気がする。
ゆっくりしか歩けず、顔がどれだけふけたかはわからない。
いそいで家に戻ると、前栽で妻が植木の手入れをしている。
ついこの間私が家を出たときと同じグリーンのセーターをきているその背中に声をかける。
「ただいま」
妻は振り返って、まるで三十年間の不在などまったく気にしていない様子で私に微笑んだ。
「お帰りなさい」
少し小皺がでているが、笑顔は以前と同じで魅的だ。
ああ。やはり妻は美しい。
私はほっとした。
全体的にシュールで、所々楽しめました。
それにしても、元ネタが「時かけ」を書いた人…だと……!?
ちょっと信じられん…!
なんかKASAさん、当たり前のようにそういうこと書くけど、作風を言い訳にしてませんよね?
あと、ジョーク集は先人がいくらでもいるんで、せめてもうちょっとオリジナルを増やすとかしましょう。
ただただ下品。
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( ´・ω・)∧∧ 元気だせよ
/⌒ ,つ⌒ヽ)
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ま、下品なのは、筒井康隆のせいなんで、何にも言いませんけど。
でも、逆に言うと、オリジナリティも東方成分も皆無のパクリですよ、これ。
実験作として評価して、この点数かな。
それでも中身が面白ければ一向に構わなかったのですが、そういうわけでもなく。
もっとメタ的な実験的意欲が感じられる作品はなんだかんだ好印象です