此処は幻想郷の妖怪の山。その頂上付近の守矢神社。
私達がこの山に住み始めてから、もうかれこれ1年半以上。
私が生きてきた時間に比べれば遥かに短いとは言え、まるで退屈することのなかったこの1年半。
今年もまた、新しい何かが起きるんじゃないか。どんな事が私達を待ってるんだろうか。
と言うか既に、この間早苗が異変解決に出かけるという新しいことが起きている。
神として生きて、神として信仰され、神として廃れ、そしてまた神として生きる。
新しい何かを待つ事、それがそんな私の、幻想郷での楽しみだ。
「うーん、今日はいい天気だねぇ」
今日と言う日の新しい日差しを受けながら、私こと八坂神奈子は、珍しく早起きした朝日の下で、大きく伸びをする。
いやはや、それにしても本当にいい天気だ。
全く、今日はある意味新たな始まりの日であると言うのに、惰眠を貪ってる諏訪子はいい気なもんだねぇ。
…まあ、普段だったら私もまだ寝ている時間だ。あまり人の事は言えないけれど。
とりあえず、早苗はもう起きてるのかしらね。
早苗の顔だけは何回見ても飽きる気がしない。早苗は本当に可愛いわ。
此処最近幻想郷に慣れてしまって「常識に囚われない」ために、多少性格が変わってしまった節はあるけれど…。
何時まで経っても早苗は早苗。私の可愛い風祝。
一応早苗の先祖に当たる諏訪子がいる以上、可愛い娘とは言わないでおきましょう。娘みたいに思ってるけど。
と、そんな事はどうでもいい。早苗は…。
「あ、神奈子様。おはようございます」
こういうのは噂をすれば、と言うのかしらね?
いざ早苗を探そうと思ったら、当の本人が私の所へ来てくれた。
「おはよう、早苗」
「珍しいですね、神奈子様がこんな時間から起きているなんて」
…うん、だいぶストレートに皮肉ってきたわね。
まあ仕方がないわ。本当の事なんだし。
早苗がこうして神に対して、信仰という形より友人や家族として接してくれること、そこに素直に喜びましょう。
「まあ、今日くらいは早く起きたかったからね。諏訪子とは違うのよ」
「そうですか。あ、それじゃ朝ごはんを作りますね」
うーん、あんまり驚いてくれなかったのが少し残念。こんな事で驚かれても虚しいだけなような気もするけれど。
それにしても、朝食か。うーん、此処最近早苗に家事は任せっきりだったし…。
…よし、たまには早苗を労って、神様らしい所を見せるのも悪くはないわね。
「なら早苗、今日の朝「いえ、結構です」
キッパリ。
私が話の本筋すら言わぬうち断る早苗。
多分人間の反射速度の限界を突破してたわね。ああ、こんなに強い子に育ってくれて私は嬉しいわ。
「い、いや、早苗、そんなにあっさりと断らなくても…」
とは言っても、私とてそんなにあっさりと断られて引き下がりたくもない。
何時も早苗に家事をやってもらって、これではどっちが保護者なのかが判らない。
周囲からの眼もあるし、何より今日くらい私にしっかりさせて欲しいと言うのが本音。
…だけど、早苗はなんだか眩しいくらいの笑顔を見せて…。
「いえ、私は好きでこうして神奈子様の食事を作ってるんです。
だから、いつもどおり私にやらせてください」
「私は、神奈子様の事、大好きですから」
私の思考は一瞬にして停止。その間に早苗は台所の方へと歩いていってしまう。
…早苗、今なんて言ったんだい?大好き?大好きですって?
言ったわよね、今大好きて言ったわよね。大事な事だからもう一回言って欲しかったけれどやっぱり今ので十分よ。
ああ、今まではずっと面と向かってそう言ってくれた事はなかったのに!!
やっと私の愛を判ってくれたのか!!ああ早苗私も愛してるわ!!
今すぐ後を追って押し倒していい!?愛らしい唇を奪っていい!?キャッキャウフフな事していい!?
い、いや、落ち着きなさい八坂神奈子!!急にそんなことしたら早苗に嫌われてしまうかもしれない!!
ああでも早苗愛してる!!一万年と二千年前から愛してる!!まだ早苗が生まれてないとかそんな事を気にしてたら始まらない!!
…そう、そうだ、落ち着きなさい私。
あくまで「大好き」と言っただけよね。それは「信仰する神として」という意味かもしれないんだし…。
だけど、勿論それでもOKよ。そこから発展する愛もあるのだから。
今はとりあえず、早苗が私に対して何らかの強い好意を抱いてくれている、それを確認出来ただけでも充分じゃない!
「ああ、もう今年度一年幸先が良すぎるわ!!」
なんというかこう…。
みwなwぎwっwてwきwたwww
という感覚が今は本当によく判るわ。
泣ける!!もう感動のあまり失神する!!もう死んでもいいわ!!ああでも早苗との愛を育まなきゃいけないからまだ生きよう!!
ああ!!おそらくこの世で私ほど幸せな神はいないわ!!
今日という日に酒はないけど乾杯!!私と早苗の愛に乾杯!!
* * * * * *
「諏訪子様、朝ごはん出来ましたよ、起きてください」
…あー…うー…。
…眠い…。…眠いよぅ…。
春先はどうしても眠くなる。それは生き物としては当然だよね…。
神だって生き物は生き物だもん…眠い…。
「ねむい~…。…もうちょっと寝たいよぉ~…」
何時も通りだけど、ちょっと抵抗してみる。
私と早苗の朝は、こうして布団から出るか出ないかの格闘から始まる。
勿論私は本気でやってるわけではなく、早苗の必死に起こそうとする顔が可愛いからそれが見たいだけ。
…最近はやりすぎると「さっさと起きろォ!!!!」と叫んで九字刺して来るからちょっと怖いけど。
うん、良くも悪くも早苗は強く育ってくれたよ。遠い先祖として嬉しいよ私は。
…と、何時もなら「駄目です!!朝ごはんが冷めますよ!!」と言って布団をひっぺ返しに掛かってくるはずなんだけど…。
「…そうですか。そうですね、春先で暖かくなって気持ちいいですからね。
眼が覚めたら私に声を掛けてください。また暖めなおしますから」
…えっ?あれっ?早苗?
どうしたの?私にもっと構ってよ。早苗の可愛い顔を見せてよ何時でも可愛いけど。
「ど、どうしたの早苗!?」
思わず布団を跳ね飛ばしてしまう。
…そうした後で、しまったこれが早苗の作戦か、と思った。
つまり何時もと違う行動を取る事で、私が驚いて布団から飛び出すんじゃないかと。
うーん、近頃の常識の囚われなくなった早苗の頭脳を、私はちょっと甘く見ていたのか…。
…そう思ったんだけど、早苗はなんだかとても眩しい笑顔を浮かべて…。
「いえ、大丈夫ですよ諏訪子様。ゆっくりお休みになってください。
諏訪子様のためならば、私はどんな苦労だって苦になりません」
さ、早苗…?本当にどうしちゃったの…?
何か今日の早苗は神々しい。私や神奈子なんかよりもずっと神様らしく見える。
まさか悟りを開いちゃった?それとも神の眷属としての血が覚醒しちゃった?
だけど、そんな神様みたいな早苗の口から出てきた言葉は…。
「私は諏訪子様の事、大好きですから」
私のエクトプラズムが身体から分離してしまっていた間に、早苗は私の部屋から出て行ってしまっていた。
…早苗?今なんて言ったの?大好き?大好きって言ったよね?
私の事大好きだって言ったよね!?今まで一度も素直にそう言ってくれた事はなかったのに!!
早苗!!ついに私の愛を判ってくれたんだね!!私だって大好きだよ早苗!!
そう!!この世で血に勝る絆なんてありはしない!!
確かに…確かに私は嘗て神奈子に負けて、国を取られてその後も事務営業ばかりだったけど…!!
その過程で風祝は神奈子をメインに信仰するようになって、早苗も確かに今まではそうだったけど!!
やっぱり早苗は私の遠い遠い娘だもんね!!神奈子なんかに負けない強い絆があるんだもんね!!
ああ早苗今すぐ後を追って抱きしめたい!!頬ずりしたいああ可愛いよ早苗ーッ!!
…お、落ち着いて洩矢諏訪子。急にそんな事したら早苗に嫌われちゃうかも…。
今は早苗が私の事を大好きだと言ってくれた事実だけで大丈夫。親子(?)の絆はこれから作っていけばいいんだ。
「ああ!!生きてて良かった!!早苗私も大好きだァーッ!!!!」
今日ほど…今日ほど幸せな日はない!
こうして真正面から私に大好きだなんて言ってきてくれたのは、歴代風祝で早苗が初めてだよ!
早苗ーッ!!私だーッ!!結婚してくれーッ!!
もうこれだけ遠い子孫なんだから結婚したって大丈夫だよねーッ!!
布団と何時も寝巻きに着ているカエルスーツがよれよれになるまで、私は嬉しさのあまり布団の上を転げ回っていた。
* * * * * *
『神奈子様、肩凝ったりしてませんか?良ければお揉みしますよ』
『お茶が入りましたよ。今日は神奈子様のためにいいお茶を買ってきました』
『大丈夫ですってば。片付けとかも全部やりますって。大好きな神奈子様のためですから』
~♪~♪
愛する早苗の美味しい夕飯を終えて、鼻歌交じりに縁側を歩く。
ああ、今日ほど素晴らしかった一日は、私が生まれてこの方一度だってあっただろうか。
早苗の優しさに涙が出そう。て言うか早苗の見てないところでこっそりと何回か泣いた。
明日にでも早苗にしっかりプロポーズしたほうがいいかしら?
だとしたら明日は早起きして花束買いに行きましょう。早苗に似合う花って何かしら。
「…神奈子、なにそんな不気味に笑ってんの?正直キモいよ」
「きゃっ!!」
いきなり声を掛けられたものだから、思わず変な声を上げてしまった。
驚いて声のした方を見てみるけれど誰もいない。目線を少し下げてみたら諏訪子がいた。
「諏訪子、いたの?」
「いないはずがないじゃん」
ごもっともで。
小さくて見えなかった、って意味の皮肉の心算だったんだけどね。
「そういうあなたこそ随分頬が緩んでるわよ?」
「ん?判る?今日凄くいい事があってねー」
あらそう、それは良かったわね。
まあ、私のこの幸せには勝てないわよね。何せ早苗に大好きだなんて言われちゃったんだから。それも何回も。
…そうだ、諏訪子にこの事言ってみようかしら。どんな反応をしてくれるかねぇ。
今の喜んでる諏訪子の顔が嫉みに表情に変わるのが目に見えるわ。
いやいや、でも私はそんなに鬼じゃないわ。この事は私の胸に閉まっておきましょう。
ちゃんと早苗の遠い先祖である諏訪子にも敬意を払わないとねぇ。カッコ棒読み。
「そう、何があったのか聞いてもいいかしら?」
主に私の酒の肴のために。諏訪子がどんなぬか喜びをしているのかも気になるし。
「えー?いいのかなー?神奈子が聞いたらきっと私が羨ましくなっちゃうよー?」
…ああ、笑いを堪えるのってこんなに大変だったかしら。その自信は何処から来るのかしらね?
これはもうあれだ、やっぱり言っちゃった方がいいわね。
諏訪子がその事を嬉しそうに話した後に、私の事を話す。
その後の表情を見ればきっと、一ヶ月は酒の肴に困らないわ。
「そんな事ないわよ。私だっていい事あったんだしね。私に比べればあなたの喜びなんて月と鼈よ」
「へぇ~。面白い事言うねぇ~。だけど今日の私の喜びに勝るものなんて何一つないからね」
くすくす、本当に真実を知った時の表情が楽しみになってきたわ。
私は蛇で、所詮あなたはカエルなのよ。やっぱりあなたにはそのケロケロ帽がお似合いね。
「ふふふ、実はねー」
嬉しそうに語り始める諏訪子。
さあ、あなたの今日のその事がどれだけ小さな事か、この耳でしっかりと聞いて…。
「今日、早苗に『諏訪子様大好きです』って言われちゃったんだー」
あらあらそれは良かっ…。
……。
…………。
……………………はぁ?
「いやぁ、早苗はまだ知らないはずなのに、やっぱり何処かで私が早苗の先祖だって感じ取ってるのかなぁ。
それに早苗ってば、おやつにわざわざ私の大好きなお饅頭を里まで買いに行ってくれたんだよ。
昼寝する時には私が寝るまで傍にいてくれたし、さっきだって一緒にお風呂入って…」
「ちょっと待ちやがれヒキガエル」
「…誰がヒキガエルよ。そもそも私は元々カエルじゃない」
煩い今のあなたなんてカエルで充分よ。
それよりさっきから物凄く聞き捨てならない言葉を連発してくれてるような気がするんだけど?
「…諏訪子、さっき夕飯の時あなたと同じ卓にいたはずだったけど、それは私の幻覚だったのかしら?
あなたは今日一日ずっと寝てて、変な夢でも見てたんじゃない?」
「はぁ?なに言って…。
…あー、判った、やっぱり神奈子ってば私が羨ましいんだねー。
自分がそう言ってもらえなかったからって、いやはややっぱり血の繋がりがないのは可愛そうだねー」
…なに?なんなの諏訪子のこの自信は。つまり諏訪子の言ってる事は真実なの?
いやまあ、それは確かに今日一日中早苗にくっついていたわけじゃないし、時間的に考えてそれくらいの余裕はあったと思う。
だけど、なにか、納得いかない。そうだ、早苗が諏訪子になんて言ったって?
「百歩譲って、おやつや昼寝やお風呂の事はいいとしましょう。
だけど一つ聞き捨てならないのは一番最初よ。早苗が大好きだって言ったのはこの私よ?」
そう、早苗は私に大好きだと言ってくれた。それも何度も何度も。
きっと諏訪子は何か勘違いしてるのよね。全く相変わらず見た目と同じで精神年齢は低いんだから。
「…神奈子、遂に歳食いすぎて頭やられちゃったのか、可愛そうに」
…何でそんな哀れむような目線を私に向けるのかしら?
「見た目はともかくあなたも年齢は大して変わらないでしょうが」
「じゃあ私より早くボケが始まった?老人介護はお断りだよ面倒だから」
「いい度胸ね諏訪子。オンバシラ頭に叩き落されるのと大蛇に喰われるのとどっちがいいかしら?」
「神奈子こそ鉄の輪で縛って厭い川流しにされるか滅びのバー○トス○リームか好きなほう選びなよ」
「そうね、久々に諏訪大戦始めるのもいいかもしれないわね」
「そうだね、神奈子が泣いて私に許しを乞う様を久々に見てみたいね」
私と諏訪子は暫しの間睨み合う。
…全く、蛇に睨まれてるのに反抗の目を揺るがせないカエルってのも生意気ね。
早苗に愛されてるのはこの私よ。あんたはただ夢を見ていただけ。
序に言うと私があなたに泣いて許しを乞う事なんて、今まで一度もないわよ。
「…そう、そこまで言うなら認めましょう。あなたが早苗にそう言われたって事を」
「あら、珍しいねぇ神奈子が引き下がるなんて」
「引き下がる?寝言は寝て言うものよ。
単にあなたは神として、最悪でも先祖として「大好き」だと言われただけに過ぎないのよ。
私のように一つの存在として、早苗に好きだと言われたのとは訳が違うのよ」
「ふん、神奈子こそ世迷言を言うね。
あんたの方こそ、信仰の対象として「大好き」って言われたに過ぎないんじゃない?
この世に血に勝る絆なんてないよ。例え何百何千年経とうと、私と早苗は永遠の絆で結ばれてるんだからね」
そしてまた私達は暫し睨み合う。
全く本当に強情なカエルね。早苗の真の気持ちすら見えずに絆など何だのって…。
確かにあなたは早苗の先祖。その血に強い絆がある事もまあ、認めてあげてもいい。
だけど、裏を返せばそれ以上の関係にはなれないって事よ。
私のように血が繋がってないからこそ、あなた以上に親密な関係になれるのよ。
それに気付かないあたり、やっぱり精神は何時まで経ってもお子様ね。
「いいわよ諏訪子。そんなに言うならどっちが正しいか確かめてみる?」
「ふぅん、どんな方法で?やっぱり諏訪大戦?」
「祟り神の長はやっぱり野蛮だねぇ。もっと簡単な方法があるじゃない」
「簡単な…?…ああ、そういう事ね。確かに簡単だね…」
「うふふふ…あなたの悔しがる顔が目に浮かぶわね…」
「そう言ってられるのも今のうちだよ…せいぜいいい夢見ておくんだね…」
最後にもう一度私達は睨みあう。
そう余裕でいられるのも今だけよ。あなたこそ今のうちに、その仮初の幸せを味わうことね。
…きっと諏訪子も同じ事思ってるんだろうけど。
まあいいわ。今に判ることだから、さっさと確かめに行きましょう。
何十秒か睨み合った後に、私と諏訪子は早苗争奪戦に決着を付けるべく、とある場所へと向かった…。
* * * * * *
「ふぅ、これで今日やる事も全部終わりっと…」
夕方取り込んでおいた洗濯物をたたみ終えて、私は一息吐く。
神奈子様と諏訪子様、そして私と3人分の洗濯物をきっちりとたたむのは、何度やっても少し疲れますね。
私のはともかく、神奈子様と諏訪子様のは下手に折れたりしないように、細心の注意を払ってますから。
これでも八坂様が核エネルギーを使い始めたりにとりさんの協力を得たりで、電気洗濯機が使用可能になって大分楽になったんですが…。
なんと言うか、暫く電気なしで暮らしていたが故に、今更になって電気のありがたみというのが判ります。
やっぱり幻想郷は私にいろいろな事を教えてくれますね。常識に囚われてはいけません。
さて、もう今日やる事は全部終わっちゃったし…。
後は最後の楽しみが花開くまで、時間を潰して…。
「早苗!!」
「ひあっ!?」
急に私の部屋の扉が勢いよく開き、神奈子様と諏訪子様が慌しく乱入してくる。
あまりに急だったもので、思わず私も変な声を上げてしまいました。
「ど、どうしたんですか神奈子様に諏訪子様!?何でそんな怖い顔してるんですか!?」
「早苗!!あなたに聞きたいことがある!!だから正直に答えなさい!!」
たぶんお二人は今、自分が神であることを忘れてますね。
だって顔が神様じゃないですもん。どう考えても鬼かケジメを付けに他の組に乗り込むヤクザです。
こんな姿を見られたら、一発で今まで集めた信仰心が0になる事でしょう。
「は、はい!!大丈夫です!!」
とにかく、お二人がこんな形相をするほどの事が起きてるんだから、私は風祝としてしっかりと聞かないといけない。
いったいお二人に何があったのか…。
「「早苗!!私と諏訪子(神奈子)とどっちが好き!?」」
見事なまでにシンクロしきった神奈子様と諏訪子様。本当に仲がよろしいですねお二人は。
…それにしても、今の質問は…?
「えっと、それはどういう意味で…?」
「私と諏訪子とどっちが好きかって事!!早苗は勿論私よね!?」
「いいや違うね!!早苗は私のほうが好きだよねこんなオバサンより!!」
「なんか言ったかこのロリメキシコジムグリガエル!!」
「本当の事じゃんこの年増ボアコンストリクター!!」
私が呆然と見守る中で見苦しい罵倒をし合う神奈子様と諏訪子様。
しかも罵倒の意味が全く判りませんし。相変わらずですね本当に。
…それにしても、と私はお二人の質問の意味を把握する。
神奈子様と諏訪子様のどっちが好きか、という事ですよね…。
…ああ、はい、そういう事ですか。しっかりと把握しました。
…まさか、こんなに早く本日最後の楽しみが花開くなんて…。
今日中にこういう事にならないんじゃないかと、少し心配していたんですが。
なにせ、今日中にやらなくては意味のない事ですから。
「くすっ…」
ああ、もう駄目です、笑いを堪えられません。
今日の行動全てが、この時のためにあったんですから。
そして此処まで見事に、私の予想通りの反応を示してくださったお二人の姿が、もう可笑しくて可笑しくて…。
「あははははは…ッ!!」
出来る限り笑い声を抑えたせいか、なんだか変な笑い声になってしまいました。
私の笑い声を聞いた神奈子様と諏訪子様が、同時にこちらに振り向いて…。
面白いくらいに同じように、顔を真っ赤に染めた。
「い、いや、早苗違うのよ…。子供は構ってあげないと死んじゃうから…」
「それ前にもやったよ!!同じネタ二回も使うなーッ!!」
ああもう、本当に何時までもお変わりありませんねお二人は。
神奈子様は何時までも大人っぽいんだか子供っぽいんだか判らず、諏訪子様は何時までも子供のままで…。
だからこそ、お二人は私の描いた予想通りに動いてくださったんでしょうね。
思ったより成果が出るのが早かったですが。
「いえ、申し訳ありません。お二人があまりに予想通りの反応を示してくださったものですから…」
私のその言葉に、二人の神様は揃って首を傾げる。
まだ判らないようですね。今日の私の行動や言動全てが、私の計画の上での事だったのが。
「えっと、お二人のうちどちらがお好きかという事ですよね」
「そ、そうだよ!!早苗はどっちが好きなの!?」
諏訪子様が勢いよく喰いついてくる。ああ、また笑いが込み上げてきます…。
いえ、だって、今日は…。
「…神奈子様に諏訪子様、今日は何月何日でしょうか?」
私がそう訊ねると、神奈子様と諏訪子様は揃ってお互いの顔を見合わせる。
「えっと、今日は4月1日だけど、それが…?」
…ああ、なるほど。確かにお二人には今日という日の概念が薄いのかもしれません。
神奈子様も諏訪子様も日本の神様ですから、すぐに思いつかないのも無理はありません。
バレンタインやクリスマスならともかく、あまり大っぴらにイベントがあったりする日でもありませんしね。
「お二人とも、エイプリルフールというのは聞いた事ありますか?」
「ん、それは勿論。エイプリルフールは…。……。」
諏訪子様がそこまで言って言葉を止める。
おや?どうしたんでしょうか。なんだか顔色もどんどん悪くなっていってますよ?
見れば神奈子様も全く同じように顔を青くしています。肩もちょっと震えてますね。
ま、そんな事はどうでも良いんです。
私は今日、このためだけに今日一日を使ったんですから。
「ええ、今日はエイプリルフールです。ですから…」
私も最後に言わせていただきます。
さて、お二人がどんな反応を見せてくれるのか、とても楽しみですね。
何処まで騙されてくれるのか、期待してますよお二人とも…。
「今日一日の私の言葉の意味、全部ひっくり返してみてください。それが私の本当の気持ちです」
その後一週間、神奈子様と諏訪子様は部屋に引き篭もりました。
あの「闇朧風猊」がまた見られることを祈るぜ!
しかしこの早苗さんは相変わらずやることが黒いな…
なんともわかりにくい嘘をいってくれる…
ちょっと意地悪?な嘘でほっとしました。
二柱は幸せから一転してどん底ですか……。
このあと早苗がちゃんと伝えるのでしょうけど。
面白かったですよ。
蛇と蛙は春眠しました、とww
>2さん
早苗「そう言う事で次の言葉が嘘だと言う事を暗示させた心算だったんですが…。…やっぱりお二人はダメ神様です」
>4さん
待っていただいたのであればありがとうございます。そして待たせてしまって申し訳ありません。
早苗さんは何時だって真っ黒です。(( だって「九字刺し」なんて超暴力的なスp(九字刺し
>煉獄さん
私の中の早苗さんにとっては日常的なことです。((
ちゃんと伝えたかどうかはご想像にお任せします。
>14さん
さなーえさなーえ((
>18さん
早苗さんにとっては嘘は一つだったんです。((
>19さん
早苗さんは闇の住人です。((
>26さん
綺麗に纏めて下さってありがとうございます。((
>27さん
しかしその心もまた嘘である可能性も否定できまs(ミラクルフルーツ
ついに待ちに待った酢烏賊楓さんの風祝とシリーズキター
それでは感想を
最初はあれ早苗が優しい?って疑問がありましたけど、今日の日付を見てもしやと思いましたが予想があたって分かっていたけど吹きましたwww
吹いたよちくしょう
PRIDE(SUMOUの曲)を聞きながら読んだら、無駄に壮大になった
で、実は前に似たような話があったんだ。それは美鈴の話なんだけどね
落ち着いてケロちゃん!
毎度そして何時もありがとうございますー。
早苗さんが優しいのは妖怪の山より外だけであって中ではこれが基本d(五穀豊穣ライスシャワー
>36さん
神だけに失神でs(オンバシラ
…被ってましたか…。…エイプリルフールネタとしては割りとオーソドックスだと言う事にしておいて下さい。((
>37さん
神様の辞書に自重と言う言葉はありません。((
早苗さん鬼畜すぎるwww