Coolier - 新生・東方創想話

マヨヒガの平凡な一日・納涼編

2009/07/26 18:13:01
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猫は日向ぼっこが好きだ、と言われている。
実際日の光の下で行う昼寝は格別であると橙は思う。

だが、

「あっつー……」

夏に限りその考えは変わる。
夏は日影で行う昼寝が一番気持ち良いと考える。
夏の身を炙る様な強い日差しを忘れさせる様な涼しさと心地よい風を感じる事の出来る
日影での昼寝が格別であると考える。

つまり、何が言いたいのかと言えば
純粋に暑かった。

ただ、暑かった。

朝食を食べた後、縁側で昼寝を始めた。
まだその頃は気温は上がってはなく、庭の草木は朝露に湿り、夏の暑さを忘れさせる様な風が
風鈴を撫でて『リーン』と涼しげな綺麗な音を奏でた。
その音を聞きながら橙は睡魔に身を委ねていた。

ただ、夏の日差しは強く、気温は上がりやすい。
昼近くになれば簡単に一日の最高気温に達してしまう。

朝方の、朝露が草木を湿らせていた時とは明かにレベルの違う熱気に橙の意識は
強制的に覚醒した。

「あついよー……」

寝ぼけた眼を擦りながら再度呟く、ここまで暑いと昼寝なんてしていられない。
このまま寝ていては干からびてミイラにでもなってしまいそうだった。

橙は考える。

昼まではまだ時間がある。
しかし、遊ぶにしては少し半端な時間である。
かと言ってこのまま昼寝を続けられる自身はないし、その気もない。

では、どうしよう?

寝ぼけたままで橙はこれから何をしようか考える。
その彼女の目が突然手で覆われた。

「!?」

「だーれだ?」

突然視界を塞がれた事に驚いたが直後に聞こえた声で
何が起きたのかすぐに理解できた。

声は毎日聞いている声だ。
考えずとも誰だか解る。

「紫様、ですよね?」

その言葉に手は離れる。
振り向けば、『正解』と言いながらニコニコと笑う『自分と同じくらいの外見』の紫がいた。

紫は春先から境界を弄ってこの姿を保っている。
最初は戸惑ったのだが、今では見慣れてしまった。

慣れって怖い。

「ふぅ、今日も暑いわね~、ねぇ、橙?」

言いながら紫は扇をパタパタと扇ぐ。

「……そうですね」

外見が自分とあまり変わらないはずなのに、何だかババくs……、
えー、品のある少女臭?を感じるのは流石に長く生きているからなのだろう
と橙は思う。

「ねぇ、橙?」

「何ですか紫様?」

紫の言葉に橙はハッとする。
今思った事は胸に深く仕舞って置こう。
同じ失敗は何度もする物ではない。

「これから、幽々子の所に行かない?」

「え?」

もうすぐお昼の時間になると言うのに……

「暑いから納涼に行きましょうよ?霊は体温が低いし
昔から怪談話は納涼の基本よ」

つまり真昼間から、霊の元に行き、霊を相手に、霊の話をして
涼もうと紫は言っている。

「でも、もうすぐお昼ですよ?今から行ったら向こうに迷惑じゃないですか?」

主に昼食を作る妖夢に

そんな心配そうな橙の声に紫はあっけらかんと答える。

「大丈夫よ、私と幽々子は親友なんだから」

「……」

自身満々に紫は言うが、それは理由にはなっていないし
その自身がどこからくるのか橙には解らなかった。

紫は橙の無言を肯定と解釈し、眼前にスキマを展開する。

「さぁ、橙行きましょう?」

「あ、ちょっと紫様!?」

紫は橙の手を引きスキマに入ろうとするが、橙は戸惑った。

いきなり約束も無しに昼食時に訪問しては相手に迷惑であるし、
きっとこの事を昼食を作っている藍には伝えてはいないだろう。
(もしくは、すでに伝えて却下されている)

そんな橙の懸念をよそに紫は嬉々としてスキマに向かう。

その時声がかけられた。

「紫様、何をしているのですか?」

凛とした声の方を見れば、スキマの大妖怪の式にして最強の妖獣の名を持つ
八雲藍が立っていた。
全裸で……
(※ちなみに、危険箇所は尻尾でカバーされているよ、だから大丈夫だよ発禁指定にはならないよ?)

「話は聞かせてもらいましたが、橙の言う通りですよ、こんな時間に何の連絡も無しに
突然訪問しては相手に迷惑がかかりますよ?」

主に昼食を作る妖夢に

「硬い事言わないの、大丈夫よ私と幽々子は親友なんだから」

「まったく理由になっていませんよ……
本当に常識知らずなんですから……」

呆れた藍の声に二人は同じ事を思った。
常識云々を『お前に言われたくない』

前回の失敗からその言葉を橙はやはり胸に仕舞ったが、紫は言った。

「今の貴女に常識云々は語られたくないわ」

「む、それはどういう意味ですか!?」

怒りの声を上げる藍に紫は溜息をついた。

「いや、自分の格好見てから言いなさいよ……」

言われて藍は視線を自分に向ける。

裸体、以上。

「何かおかしな所でも?」

「いや、服着なさいよ?」

「何をおっしゃいますか、いいですか?生物は生まれてくる時は皆等しく裸
つまり全裸こそが生物のもっとも自然な姿なのですよ?
ソレをおかしいとおっしゃるんですか!?」

「いや、そうかもしれないけど、貴女は……、やっぱ何でもないわ」

紫は何かを言いかけたが止めた。
式とは外の世界で言えばコンピュウータの様なモノだ。
あの手の精密機械は熱に弱い。

つまり、そう言う事だ、この式もこの暑さでイカレてしまったに違いない。
そうでなければいきなり全裸になる事もないだろう。
ともすれば彼女の熱が引くまでは何を言っても無駄だろう。

そう思い紫は言葉を切った。

でも、一つだけ聞いておこう。

「ちなみに何で裸なの?」

「暑いからです!!」

力強く藍は言う。
そこまで堂々と言われると清々しさを感じるから不思議だ。

「いいですか紫様、暑いのなら脱げばいいのですよ、そうすれば誰にも迷惑をかける事も
ありませんし、すぐに涼しくなれます、さぁ、紫様も是非!!」

「いや、私は遠慮しておくわ」

紫はかなりひいた。
まず、藍の血走っている目とワキワキと卑猥に動いている手が怖い。
やはり暑さにやられたのだろう。

恐怖を感じた紫は一瞬にしてスキマに消えた。



――



一人変態と残された橙は、この状況をどうやって乗り切るかを考える。
本気で考える。

何故なら、藍が血走った目でこちらをジッと見ているからだ。

このままではいろいろと危ない事になる。
(※発禁的な意味で)

「橙?」

「……はい?」

「紫様は私達獣から妖怪になった妖獣とは違う存在だ」

言って藍が一歩歩む。

「そうですね」

「だからきっと、服なんて余計な物を着たがるに違いない」

「そうですか?」

もう一歩藍は橙に歩みよる。

「しかし!!」

「……」

藍はもはや手を伸ばせば橙に触れる事のできる位置にいる。

「橙と私は、種族は違えど同じ妖獣だ!!」

「はぁ……」

目の前で力説する藍に気付かれない様に橙は足に力を込める。

「そして、先程お前は『暑い』とぼやいていたな?」

「……」

橙は重心をやや後ろ側に下げる。

「さぁ橙!!遠慮する事はない、お前も私と一緒に脱ごう!!」
「いえ私はチルノちゃん達とカキ氷食べてきますから!!」

こちらの肩を掴もうとする藍の手を、背後に倒れこむ力を利用したバックステップで
かわし早口にそう言って橙は走って逃げた。

橙の姿はすぐに見えなくなってしまった。

藍は一人取り残されて呟く。

「……何故だ?」

橙を掴みそこねた藍はその場に膝をつき絶望した。

何故だ?
紫様はまだしも、同じ妖獣である橙は何故私の言葉を解ってくれないのだ?
服なんて着ていても邪魔なだけじゃないか?
汗を吸って肌に張り付く服なんて気持ち悪いだけじゃないか?

「どうして、誰も解ってくれないんだ?この世には神も仏も無いのか?」

藍は大げさに落ち込んだ。



――



妖怪の山

山頂にある守矢神社から悲痛な叫び声が聞こえる。

「お願いだから早苗落ち着いて!!」

それは八百万の一柱の一人諏訪子の声だった。
彼女は自分の子孫である早苗の白い腕を掴み必死に彼女を止めようとしていた。

「邪魔をしないでください諏訪子様、これも信仰を得るためです!!」

信仰のため、全ては守矢に祭られている二人のために早苗は常に頑張っている。
そのため早苗は日々どうすれば信仰が集められるかを考えている。

諏訪子はその事に感謝しているし、彼女のその行動を誇りに思っている。

今回もそのための行為なのだが

「だからって、だからってなんで全裸なのよ!!」

「此処(幻想郷)では常識に囚われてはいけないんです!!」

「その程度の常識はもってよ!!神奈子も見てないで早苗に言ってやってよ!!」

きっと暑さにやられたに違いない早苗
このままこの早苗を信仰集めなんかに行かせたらもうお嫁に出せなくなる。

そんな事あってはならない、保護者として祖先としていつか早苗には幸せになってもらいたい
と諏訪子は考えている。
結婚して、子供を作って幸せになってほしいと考えている。

そこで何故かさっきから何も言わず傍観していた神奈子に助けを求めた。

「早苗……」

「神奈子、様……」

重々しい言葉と迫力に早苗もつい畏まってしまう。

神奈子はそんな早苗をしっかりと見据えて

「いいね!!普段もその格好でいるといいよ!!」

神奈子は親指をビシッと立てて断言した。
そして神のその言葉に早苗も

「……はい!」

と力強く返した。

どうやら暑さにやられていたのは早苗一人だけではなかったようだった。

「もうやだよ!何なんだよコイツラ!!」

諏訪子の悲痛な叫びが山に響く。

神は妖怪の山の山頂にいた。
15度目まして、
すっかり夏らしくなりました。
会社が熱持つ機会ばかりなので死ぬ程暑いです。

で、マヨヒガを舞台にした話の二作目となります。
(前作は74にありますのでよろしければどうぞ……)

暑さのためいろいろとカオスです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

3様
確かに紫の能力ならもってこれますね。
ってか幻想郷で唯一の冷暖房完備の屋敷でしょうねマヨヒガって……
でも、今回は冷房はなかった様です。

5様
誤字の報告感謝します。修正しました。

煉獄様
誤字の報告感謝します。『普段も』です。修正しました。
藍様と早苗さんはどこか似ていると思います。
苦労人であったり、ネタであったり、いつかこの二人は出会う事でしょう。
多分、その内……

9様
いや本当に……
でもやっぱり獣だと服を着ていたくないと思う時もあると思うのですよ。

13様
一応コメディでした。
それにしても世知辛いですね、ちなみに私の友人はベランダで全裸でビール飲んでたら
通報されかけたらしいのでご注意ください。
某俳優さんが早期に芸能界に復帰できて本当によかったなぁ……
という気持ちを思い出しました。

17様
二回、大事な事ですね。
脱げばいいんですそうすれば誰にも迷惑かける事なく涼しくなれます。

24様
スッパテンコー久しぶりに聞きました。
……裸になって何が(ry

26様
そして最後に神社に立っていたのは(全裸の)狐だった。

コメント、誤字指摘ありがとうございました。
H2O
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コメント



0.880簡易評価
3.90名前が無い程度の能力削除
性欲を持て余すwww

紫は外からクーラーくらい持ってきてそうだけどね。
5.100名前が無い程度の能力削除
いちおう
>服来なさいよ→着なさいよ
6.100煉獄削除
藍が裸になっていることや血走った目で紫様や橙にも裸になることを勧め、それを拒否されて
落ち込んでいる姿とか面白かったです。
守矢神社でも早苗とか神奈子のやりとりとか諏訪子の叫びも良かったです。

一字余計?な部分があったので報告です。
>「いいね!!普段かもその格好でいるといいよ!!」
『普段も』でしょうか?
9.100名前が無い程度の能力削除
藍様服着て下さいwww
13.60名前が無い程度の能力削除
あぁ、これはギャグだったのか。途中までまじめだと思ってたわ。

で。

藍様に倣って全裸でベランダに出てたらすげぇ大家さんにおこられた。世知辛い世の中になったもんだ。
17.無評価名前が無い程度の能力削除
暑かったら脱げばいいと思うよ!
思うよ!
18.無評価名前が無い程度の能力削除
↑点数入れ忘れたよ!
よ!
24.90名前が無い程度の能力削除
藍様は大変なスッパテンコーをしていきました。

あと、18さんがそそっかしい件
26.90名前が無い程度の能力削除
神は死んだ

蛙と蛇で暑さ耐久したら