Coolier - 新生・東方創想話

焼き鳥屋台・鳳翼天翔(仮) 開店計画

2012/12/19 00:52:21
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※以前投稿した「変装異変」「鈴仙・優曇華院・イナバ 2回目の逃亡」「美鈴がぬえを皆と仲良くさせようとする話」の後のお話です。

※展開上、「タマネギ中毒」について話す場面が出ます


 迷いの竹林に住む藤原妹紅。
彼女は永遠亭の輝夜とお互い過去の因縁と蓬莱の薬を使った事により死ぬ事がないという点から以前は「殺し合い」をしていたが今はしていなかった。
殺し合いをする生活の中でそれを人間的な生活と感じた事で「生きているってなんて素晴らしいんだろう」と思うに至り、それを聞いた上白沢慧音が呆れながら言った言葉に従ったためだ。
「生きてるのが素晴らしいと解ったんだったら、もう殺し合わなくていいのではないですか? 貴女達だって怪我をすれば痛いのだから、痛い思いさせあうくらいならお互い楽しんで「生きてるのが素晴らしい」と思うようにした方が建設的です」……と。
 流石に長年の因縁のある輝夜と共に何かを楽しむというのは寒気すらする事だったのでそこまでは聞き入れるわけにもいかず、慧音に止められたから殺し合いはやめようと協定を結ぶに留まった。
 
「妹紅、永遠亭が地霊殿と宴会をしたのだけど、知っていますか?」
「ん? 何それ」
「なんでも鈴仙がさとりの世話になり仲良くなったからと親睦を深める宴会が開かれたとかで」
「ふーん」
 永遠亭といえばせいぜい病人の受け入れや診察などで人里とかかわりがある程度かと思っていた妹紅だが事態が変わっていたらしい。
「でも、あいつらがどこと仲良くなったからって私には関係ないね」
 妹紅は興味がなさそうだ。
しかし慧音は食い下がる。
「いいえ、あると思いますよ? このままだと輝夜に小ばかにされるはずです」
「なんで?」
「私達は地底の奴らと仲良くなったというのに妹紅は未だに竹林に引きこもってちょっと人里行ってくるしてるだけなのかしら? といった具合になるかと」
「あー」
 容易に想像出来た。 輝夜の――紅妹にとって――憎たらしくも嫌味ったらしい笑顔のフラッシュバックと声の再現つきだ。
「成程そいつは面白くないわね」
「ええ」
(まぁ、慧音にとっちゃ私がよそと関わろうとするいい機会ってとこなんだろうけど……素直に乗って慧音が喜ぶなら別にいいか)
 しかし問題はある。
「で、このまま私が素直にどっかよその者と関わるにしても上手くやる方法はないわけだけど、慧音の事だから何か案があって炊きつけたんでしょう?」
「ええ、勿論」
 にっこりと笑って慧音は……一旦妹紅の家から外に出た。 何事かと思うもすぐ様慧音は戻ってくる。
ガラガラとホワイトボードを引きずってきた。 マジックできゅっきゅと音を立てて書き込む文字は……
「焼き鳥屋台・鳳翼天翔(仮)開店計画」
「えー……?」
 以前紅妹は自分の過去を問われた際に「ただの健康マニアの焼き鳥屋だ」と濁した事があった。
その焼き鳥屋を本当にやれという事のようだが……
「さて、まず先に述べたように永遠亭が地霊殿と宴会を開催したわけですが」
 わざわざホワイトボードまで持ち出している辺り授業をするノリで進めるつもりらしい。 文句はおろか余計な突っ込みすらもしてしまっては面倒になるだろうと妹紅は口をつぐむ。
「これはその両者に限ったわけではなく、前後して白玉楼と守矢神社、紅魔館と命蓮寺・それに命蓮寺の地下からよみがえったという聖人、豊聡耳神子達も似たような経緯で宴会を開催しています」
 きゅっきゅとホワイトボードにマジックの走る音。 各地の名が書き込まれ、丸をつけられ、線で結ばれる。
「この出来事は幻想郷に影響を及ぼしました。名を冠する各地に拠って力を持った有名な者達が立て続けに宴会を行い……今、人里の人間や更にその外の妖怪までもを巻き込んで、空前の宴会ブームとなっているのです」
 結ばれた各地の名前の外側に人間・妖怪・宴会の文字が追加された。
 人里でよく酒宴が開かれているとは竹林の案内をしている事から妹紅も知っていた。
「はい、先生質問です」
 妹紅が手をあげる。
「はい、妹紅さん」
「ただ単に宴会宴会と騒いで自堕落にしてたら妖怪の賢者が黙っていないのでは?」
「いい質問ですね」
 またきゅっきゅとホワイトボードに書き込まれる。 人間と妖怪がそれぞれ書き足されて2つずつとなり、矢印で結ばれ、片方向には「親切」片方向には「お礼」が書き込まれた。
「今書き込みましたこれのように、宴会の開催には後述する理由が必要という事になっています。 これは八雲紫による提言ではなく、倣い出した者が自主的に始めた事ですね。 私達も知る彼女達が最初に行った3つの宴会は全て「従者が出向いた先の者に親切にする」といった要素があったのです。 ですから、それに倣う人間や妖怪も、何か他者のためにと行動をし、そのお礼という形で宴会が開かれています」
「成程、単に遊んでるんでなく誰かのための行動の結果としての宴会だから、宴会こそが目的であっても問題として見られていないと」
 これならば幻想郷に起こる問題に目を光らせる彼女も、真っ当に機能している限りは文句を言わないだろう。
「ええ、そこでこの表題に戻るわけです」
 宴会ブームに乗って焼き鳥屋を始めて売り歩けという事か。
「ん? でもこれだと主な商売相手は人里と、後はそこら辺の妖怪くらいになるんじゃないの?」
「それは目的の半分ですね」
「え?」
 疑問符を浮かべる妹紅に、慧音は笑みを浮かべて続ける。
「この機に真っ当に生活費を稼ぐ手段を持ちましょう。 寒さに震え、飢えに苦しみ、苦痛に耐えて過ごす事を受け入れるばかりが人間的でありましょうか?」
 妹紅は今更、素直に慧音の思惑に乗った事を悔やんだ。
「あー……うん、諦めよう。 で、肝心の一癖も二癖もある、既に宴会しちゃってる奴らにはどうするの?」
「開店のお知らせの宣伝も兼ねて、試食してもらいつつ売り込みに行く、と考えていますね」
「全部回れっていうのか……」
 更に悔やむも、最早後には引けない。 

「私が監修するからには、中途半端にはさせませんよ」
 などと釘を指して、慧音は準備をするからと妹紅の家を後にした。 寺子屋の方は少しの間休みをもらうとまで言っていた。 いつになく強引で有無を言わさぬ姿勢だ。
妹紅の殺伐とした生活をよくないと思っていたが、性に合っているなどと言ってかわす妹紅に強く出る事が出来ていなかったようだ。
(いつもそばで心を痛めていたのなら、悪い事しちゃってたかな……)
 少し反省する妹紅だった。

が、翌日その反省も後悔に変わる。
「おはようございます、妹紅」
 がらがらと屋台を引いて現れた慧音。 思わず妹紅は身構えて後ずさりしてしまった。
「なんかこう、目の当たりにしちゃうと引き返せないんだなーって実感がひしひしと湧いてきたわ」
 人里で教師をしていて人望もある慧音、それをフル活用したのだろうか、準備をすると言って翌日即屋台を引いてくるとは妹紅も予想外だった。
「里で用意が出来そうな方々へ当たってみた所、私に対してだけでなく、妹紅、貴女へもお礼の意をこめてと用意してくれたんですよ?」
「え、マジで?」
 妹紅の胸中を読んだかのように慧音が補足する。
「ええ、貴女も人里と永遠亭の橋渡しをしていて、人里にとってなくてはならない存在。貴女が思っている以上に、里の者も感謝しているのです」
 そう言われると妹紅としても悪い気はしない。
「そういうものこそが「人間的」なのですよ。 さぁ、店を始めるべく頑張りましょう」
 どうやら顔に出ていたようだ。

「まずは作ってみて私達で食べて、練習です」
 当然ながら、いきなり屋台を引いて各地をめぐって開店を知らせて回るのではなかった。
「まぁ確かにぶっつけ本番でやろうものならまずいもの食わせてあいつら怒らせる羽目になるだろうしね」
 生焼け丸焦げの肉を提供されて怒りに震える紅魔館の面々の顔が妹紅の脳裏によぎった。
「とりあえずこれだけ肉を買い付けてきました」
「うわぁ」
 屋台に乗せてあった肉の量は今日の2人の食事が焼き鳥のみになるのではないかと思う程度だった。
 妹紅がついでに屋台の確認をすると、慧音の注文があったのか、屋台はやや大きめで当然ながら焼き鳥器が置かれているのと、更にメニューの増加を見越してかカセットコンロもついている。
「急ごしらえで用意してもらった割に豪勢ね……」
 こうまでされてはより一層引き返す事など出来ない。
「自分で言うのも難ですが、それだけ私と妹紅への感謝の意が現れているのですよ。 それに……貴女の事だから、もしこれが気に入ったらこだわるでしょうしね」
 現時点では強制されての意味が強いが、実際気に入ったとしたらと思うと否定出来ない妹紅だった。
「では妹紅、焼き始める前に質問ですが、強火でガッと焼いて適度に焦げ目がついたらOK! などとは思っていませんか?」
「え? 駄目なの?」
 慧音の表情が確認してよかったと言いたげに変わった。
「貴女自身が食べるならともか……いえ、それも良くはないのですが、ましてや人に食べさせるのですからしっかりしないといけませんよ?」

 慧音から基本的な事を教わってから、実際に焼き始めた。
「肉の厚みが違えば火の通りは違う……同じでも肉質が違えばこれも火の通りは違う……」
 さしあたって火力を左右半々で弱め強めと分けてみて、火の通りの早いものを強火の方、遅いものを弱火の方へ置く。
「片面を焼いた後の裏側は焦げるのが早い……」
 種類によって置く場所も返すタイミングも違う、何もかもまとめて焼いて頃合いを見て返すだけかと思っていた妹紅には想像をはるかに超えた忙しさだった。
「脂の乗った部位は焦げるのが特に早く難しい……」
 それでもまだ練習段階、実際にこれで商売をしようという段階に比べれば一度にこなす数は明らかに少ない。

「うーん、難しい」
 やはり、というべきか、何本かは表面が黒焦げという程に焦がしてしまった。
「最初からうまく行くなんて事はそうそうありませんよ」
「それはそうだけど、やっぱり悔しいね」
 反省会ムードで2人して焼き鳥を食べる。
「慧音に生肉食わすわけにはいかないと思ったけどやりすぎたみたい」
「その気持ちはありがたいですね、生であろうと責任を分かち合うつもりでいましたが」
 そう言うだろうと思ってじっくり焼いたんだよ、とは言わないでおく妹紅。
「しかしまぁ、特に脂の多いとこは難しいね、ほんのちょっと前まで大丈夫だったと思えば他の肉を返したりしてる間にすぐに焦げる」
「そのうち慣れますよ」

初回の失敗以降、妹紅の上達は早かった。
 曰く「私みたいに死んでも復活出来るのとは違って肉になったこいつらはその命を終わらせてるんだ、無駄にはしたくない」と。
言葉の通り熱心に失敗の理由を追及し、繰り返さぬよう気を付け、焼き鳥だけ食べる1日の最後にはとりあえず2人分の用意だけなら大きな問題なくこなす事が出来た。
「目覚ましい上達ですね」
「料理らしい料理をした事が無いにしちゃ上出来でしょ」
 慧音に褒められて得意げになる妹紅。
「で、明日はどうするの?」
「練習その2です。 3名程声をかけて焼き鳥を御馳走するという事で来て頂きますので食べさせてあげて下さい」
 3名、妹紅がざっと考えて何パターンかは浮かんだが結論は出なかった。

 翌日の午前中に声をかけておくと言っていた慧音、昼前にまた肉を買い付けてやってきた。
「丁度3人いらしたので動き回らずにすみました。 もうすぐやってきますよ」
 とりあえず屋台の準備をしていると現れたのは……博麗霊夢・霧雨魔理沙・伊吹萃香の3人だった。
 意外だと思う反面納得も行くと妹紅は思った。 昨日の話からすると開店のお知らせとして回るのは宴会ブームの火付け役の面々の所であり、そうであればこの面子の所へは行かない可能性もある。
しかし……
(この巫女怒らせたら他の連中より酷い目に遭いそうな気が……)
 「練習その2」と言うにはいささか難易度が高いような気がしてならない妹紅だった。
「焼き鳥をたらふく食べさせてくれるって聞いたんだけど?」
「ああ、一応間違いじゃないねぇ」
 半信半疑といった様子の霊夢に、妹紅はまだ仕込みが終わってない分の肉を見せる。
「嘘じゃないみたいだな、でもなんでそんな大盤振る舞いをするんだ?」
「妹紅の練習に付き合ってもらうから、ですよ」
 魔理沙の疑問に慧音が答えた。
「練習って……焼き鳥屋を始めるために実際に焼く練習って所かい?」
 萃香の言を受けて慧音は事情を説明した。
但し、永遠亭の輝夜に馬鹿にされないようにという部分は抜きにして、妹紅の普段の生活を見かねた慧音が宴会ブームに乗って生業を得させようとしているという理由で。
「あんた今までどうやって生活してたの?」
 霊夢の問いかけに慧音が割って入る。
「死んでも復活するからと碌に食べずに空腹でいたり冬でも暖を取らずに震えていたり、そういうのが性に合うって言ってましたね」
「とんでもないマゾヒストじゃないか」
「べ、別に快感を覚えてるとかじゃないぞ! その方が落ち着く、というか……」
 全く反論になっていないと気付いて妹紅の台詞は尻すぼみに小さくなっていった。
「まぁまぁ、理由はどうあれ焼き鳥をおごってくれるっていうのにそういじめてやりなさんな」
 萃香から思わぬ助け舟が入った。
発言と共に萃香が何かを探すように屋台を見渡す。
「見た所ただ肉を仕込んでるだけみたいだけど、タレは用意してないのかな?」
「あ、そういえばそうでしたね、きちんと焼き上げる事ばかり考えていてそれを失念していました」
 材料を買いに行こうとしたのか慧音が飛び立とうとしたのを萃香が止める。
「私が行ってくるよ、手持ちがないからお金をくれるかい?」
「有難うございます」
 慧音が萃香に費用を渡すと、密と疎を操る能力で分裂した萃香の片方が人里へと向かっていった。
「ところで練習って言うけどこれまでは何かしたの?」
「昨日1日、慧音と焼き鳥だけ食べててなんとか焦がさずまともに焼けるようになった」
「おいおい、ほぼ初心者じゃないか……大丈夫なのか?」
 魔理沙の不安ももっともな話だ。 妹紅自身そう思うので特に気を悪くする事もなかった。
「妹紅の熱意はすさまじいですよ。 鶏の命を無駄にはしたくない、と、失敗を繰り返さないという心構えでみるみるうちに上達していました」
「へぇ、立派な心がけね」
 感心する霊夢。 妹紅としては正直な所、何かと攻撃的な噂の目立つこの巫女に褒められるとなんだか落ち着かない。

 慧音が人里を往復するよりもかなり早く戻ってきた萃香は何種類かの調味料を購入してきていた。 タレを作ると言うので竈を使うため慧音と共に家の中へ入る。
仕込みを続ける妹紅と霊夢・魔理沙が屋外の屋台に残った。
「さっきも言ってたけど宴会がブームなんですってね」
 不意に霊夢がぼやく。
「ああ、私なんか全部惜しいとこかすってるんだよなぁ」
「かすってる? 参加できそうでし損ねたの?」
 霊夢の言を聞いて魔理沙が悔しそうに屋台のカウンターに突っ伏した。
「そうなんだよ、最初の白玉楼と守矢神社のはあれコスプレがどうとかってやってたろ? 衣装を作ってたのがアリスだから、あいつと一緒に居れば紛れ込めたはずだ」
 3件の宴会についてはそれが行われたとしか知らない妹紅にとって多少興味のある話だった。 仕込みを継続しながらも聞き耳を立てる。
「永遠亭と地霊殿のは、出てった鈴仙を見つけて言われた通りに太陽が見えないような木の下に連れてったけど、あの時流行り風邪にかかっててだるいからってすぐ帰らなければこいしが地霊殿に連れてくとこも見られたかもしれない」
「それ、流行り風邪にかかってなかったら永遠亭に行ってないわよね、貴女」
 霊夢から冷静に突っ込まれる魔理沙。
「細かい事はいいんだよ!」
「細かくないけど、続きをどうぞ」
「紅魔館と命蓮寺は一番惜しかった。 命蓮寺で世話になってる美鈴の所へフランを連れてってやってくれって頼まれたんだよ。 パチュリーとレミリアと咲夜に脅されたようなもんだったからそれ以上関わりたくなくて顔を出さずにいたが、あんな事になってるとはなぁ」
 妹紅にしてみれば要領を得ない話で、聞いてみてもよく解らない。 しかし永遠亭は自分も今後何か関わりがあるかもしれないという事で、きっかけの一つが魔理沙らしいとは覚える事にしておいた。
「ブームに乗って宴会をしたいのならあんた達の場合簡単なんじゃないの?」
 ふと思った事を、妹紅はそのまま言った。
「と言うと?」
「何か親切をして、そのお礼にって形で開催するっていうのが今流行ってる宴会の形なんでしょ? それなら日頃からつるんでるあんた達ならお互い相手のためにってものがよく解ってるんじゃない? 今私が慧音にまともな生活をしろと世話焼かれてるみたいに」
 魔理沙が霊夢の方を見たが、対して霊夢は興味無さそうにしている。
「うーん、よく顔合わせてる霊夢とささやかに宴会してもなぁ」
 妹紅からはぜひやりたいという意識の表れで霊夢を見たのかと思ったがそうではなかったらしい。
「私らが参加するのは大体大人数じゃない。 たまには数人程度で静かにってのも悪くないんじゃないかしら?」
 霊夢は乗り気とも取れる発言だ。 態度と言葉が見事に逆なこの両名に少し戸惑う妹紅だった。

慧音と萃香が香ばしい匂いを放つ壺を持って出てきた。
「作り方を萃香から教えて頂きました」
「まー調味料なんかを組み合わせるだけの基本的な作り方だけどねぇ。 一味加える作り方もあるから気が向いたら色々試すといいよ」
 詳しいんだなと妹紅は感心する。 ふと霊夢がじっと萃香を見ている事に気付いた。
「あんた、こんなの作れたのね」
「そりゃまぁ酒呑みだもん、美味しい肴のためなら色々とね」
「塩しかないのかと思ってたが萃香のおかげでタレにもありつけるな」
 魔理沙は機嫌が良さそうだ、どうやらタレ派らしい。
「ふーん、魔理沙はタレの焼き鳥が好きなのね」
「霊夢は塩がいいのか?」
「ええ、タレだとタレの味に飲まれちゃうじゃない」
 両者の間に静かに火花が散る様が見えるかのようだった。
「ふっふーん、2人共解ってないなぁ、塩の方がいいのとタレの方がいいのがあるんだよ。 両方楽しんでこそさ」
 食べる事に拘りのない妹紅には理解の出来ない境地だった。
「それぞれ好きなように食べればいいんですよ。 味の好みは人それぞれ、強制するものではありません。 気が向いたら試してみて、認められるようなら真似をするくらいでいいではないですか」
「それもそうだね」
 火花を散らす霊夢と魔理沙の仲裁をしようとした慧音に持論を潰された形となった萃香だがあっさりと賛同した。
「好きなように美味いもん食べて美味い酒を煽る、最高の一時だねぇ」
 遠くを見るような視線でうっとりとする萃香。
「じゃあ慧音、私も好きなように食事をするという事で」
「貴女のそれは「好きなように美味いものを食べる」ではないでしょう?」
 妹紅の発言はあっさりと却下されてしまった。

鬼といえばよく食べる。 その点を危惧した妹紅だったが……
「ああ、心配は要らないよ。 今回はこいつと一緒のつもりだからね。 霊夢や魔理沙と同じ程度でいい」
 言って、萃香は杯を傾ける仕草をした。
「代わりといっちゃ難だが水を分けて欲しいね、これで酒にするから」
 と、瓢箪を取り出す。 萃香がいつも持っている伊吹瓢、注いだ水が酒になる代物だ。
「お、いいねぇ。 私にも分けてくれよ」
「鬼の酒は強いわよ? 程ほどにね。 私は水のまま頂くわ」
 それを聞いて魔理沙が霊夢に肩を組んでのしかかる。
「なんだ、付き合い悪いなー」
「飲むつもりではいなかったから、酔ったら帰りが面倒ってだけよ」
「一緒に飲みたいってんなら焼き鳥を頂いてから神社で飲みなおせばいいさ」
 会話をよそに、妹紅は鶏を焼き始めている。
萃香が敢えて人並みのペースにするとは言っても3人分、昨日より量は多い。
気をつけねばならない数が増え、スペースの使い方も勝手が変わる。 何よりも同じものを2本ずつ焼いていればよかった慧音との練習とは違って3人がそれぞれ好きに頼む事になる。
練習その2にしては難易度が高いと思った事が違った意味でのしかかって来た。

やはり多少の失敗はあった。
しかし霊夢と萃香は文句も言わず顔色一つ変えずに食べていた。 魔理沙だけは焦げ付いてしまった焼き鳥に顔をしかめる場面もあったが、他の2人に倣って結局言葉に出す事はなかった。
「やはりまだ技術が足りなかったようね、すまない」
 妹紅は3人に向けてお詫びを言う。
「何言ってんの、タダで食べさせてもらってんだから文句はないわよ。 それどころかタダなんだから喜んで練習台に付き合うわ」
 先程のやり取りから萃香からは言われそうな気がしていたが、霊夢からそんな台詞が出るのは妹紅にとって意外だった。
「まぁ、そういう事だね。 ……ところで屋台を用意したり鶏肉を用意したり、大分かさんでるんじゃないかい? 大丈夫なの?」
「屋台に関しては里の皆さんが私と妹紅へのお礼にと無料同然の費用で用意して下さりました」
 萃香の心配に慧音が答える。
「へぇ、流石は寺子屋の先生と竹林の案内人」
「それなら妖怪退治や異変解決してる私にだってもうちょっとなんかあったっていいんじゃないの? お賽銭とかお賽銭とかさぁ」
 実も蓋も無い要望を吐き出す霊夢に苦笑いが向けられた。
「……それはそうと、どこで店を出すかは決めてるの?」
 いたたまれなくなったのか自ら話題を変えた。
「まだ決めてないわよね」
「そうですね、まずは開店のお知らせも兼ねて各地に出張販売をしようかと思っていただけで」
「じゃあうちの境内なんてどう? 勿論ショバ代寄越せなんて言わないわよ?」
 思わぬ申し出だ。 しかし……
「あー、やめときなって。 博麗神社になんて店を構えたら閑古鳥が鳴くばかりだよ」
 萃香があっさり止めた。
「人が折角厚意で場所提供しようって言うのに」
「厚意があるならむしろ誘わないべきだね。 自分でお賽銭がもっと入ればいいのにだなんていう程だってのに」
「うぎぎ……」
 実際の所妖怪がよく訪れているのだから完全に客が来ないという事はないだろう。
たまになら出店させてもらうのも悪くないかもしれないと妹紅は思ったが、口には出さないでおいた。
(……?)
 そういえば魔理沙が静かだ、と、見てみれば酔いつぶれて眠っていた。

夜、慧音と2人の夕食を焼き鳥で済ませた後……妹紅は胡坐を組み、腕組みし、壁に寄りかかって目を閉じながら昼間の失敗を思い返し、改善点を探していた。
そばで物音ひとつ立てずに座っていた慧音が立つ音が聞こえ、遠ざかって行く。
しばらくするとコトリと音がした。 妹紅の瞼の裏に広がる昼間の光景にお茶の香りが重なる。
「お、有難う」
「今日の失敗は克服できそうですか?」
「うん、慌てちゃったのがいけなかったね。 そのせいで意識する範囲が狭くなって、見落とした所を焦がしてるって事が多かった」
 慧音の問いかけに言葉にして返したのが決定的だったのか、妹紅は何か思いついたような表情を浮かべると背を丸めて遠くを見ながら何か考え始めた。
この様子なら大丈夫だろうと慧音は思う。
なんだかんだで楽しみ始めているのか妹紅に仕方なくやっているという素振りは早くももう見えない。
これ程真面目に取り組んでいるなら開店すれば評判の店となれるかもしれない。

 翌日も練習に割く事になった。
また午前中に霊夢達に声をかけにいった慧音が買ってきた肉の量は昨日よりも多い。
「3人共二つ返事で了解してくれました。 しかも夜まで付き合ってくれるそうです」
 連日肉を購入していてはそれなりに懐も痛んでいるだろうに慧音は機嫌が良さそうだ。
「魔理沙って魔法の森に住んでるのよね? 昨日も今日も神社にいたの?」
「昨日はたまたま遊びに来ていたようですが、今日は焼き鳥のお誘いが来るかと期待して待機してたようですね」
 霊夢や萃香は妹紅が心の内で感謝するような言動もあったが、どうも魔理沙は食べて酔いつぶれての印象が強く厚かましく思ってしまう妹紅。
「ふふ……」
 何やら慧音が意味深な笑みを浮かべた。

訪れた霊夢・萃香はねぎ・玉ねぎ・ししとう等の野菜を、魔理沙はしいたけ・しめじ・エリンギ等きのこを携えていた。
霊夢・萃香の野菜の方は多いという程の量でもないが魔理沙のきのこが山盛りという程に多い。 なんだかんだでタダ飯の恩義は大きかったという事か。
「おー……」
 肉ばかり目にしていた妹紅には色彩が眩しい。
「流石にタダで食べさせてもらってるだけじゃ悪いしね」
 野菜の方はともかくとして……
「きのこって、これ、魔法の森で取ったもの?」
 魔法の森といえば幻覚作用のあるきのこ等が生えている。 妹紅はそれが気になった。
「失敬な、魔法に使うきのこと食べるきのこは別だ。 きのこ取りのスペシャリストたるこの私が厳選した食べられるきのこだぜ」
 そうは言われても、魔理沙の言動を見ると判定に迷った場合気分と勢いで決めていそうに思えてしまって、自分で食べるならまだしも人に食べさせる事には不安を覚えてしまう妹紅。
「自分で食べて酷い目に遭って失敗から学んでもいるし、大丈夫だと思……」
 フォローをしようとした霊夢が途中で言葉を止めた。 まじまじときのこの山を見つめておもむろに手を伸ばすと無造作に取ったきのこを……
ぽいっ ……と、投げ捨てた。
「……まぁ、こんなにたくさんあったら1つ2つくらいは大当たりだってあるわよね」
 魔理沙が文句を言わない事に妙な恐ろしさを感じた妹紅、メニューにきのこを並べる際には魔理沙の伝を頼らず里で仕入れようと固く誓うのだった。

野菜は脂の多い肉と同じくらい難しい。
野菜串に挑んだ妹紅の第一印象だ。
肉ははっきり色が変わるし脂が垂れる、見た目でよく解るが、まだ置いてから然程変わってないように見える玉ねぎを裏返したら真っ黒になっていた、という事があった。
「黒焦げ玉ねぎも悪くはないな」
 魔理沙がそんな事を言うが表情は逆の心情を主張している。 気を遣ってくれているようだ。 有り難くもあり、申し訳なくもある。
「でも肉の方は失敗してないわね。 本当に練習する毎に上達してるのねぇ」
「妹紅は元々考え事をよくしていて、今はそれを失敗の反省とイメージトレーニングにあてていて頭の中で何度も何度も反復していますしね」
 妹紅自身慧音に言われて気付いたが、確かに考える事といえば焼き鳥の事ばかり、そのうち夢でも焼き始めるかもしれない。
「目を閉じて腕組みして座ってると思ったら、いつの間にかこう手が動いてたりするんですよ、見てて飽きませんね」
 言って慧音が串を返す仕草をした。
「動かしてたのか……」
 意図的にやっている事もあったが、なんとなく恥ずかしくて慧音に見られていない時をねらっていた。 そんな妹紅のささやかな努力も無駄だったらしい。
「まるで職人のようだね」
 人を避けて生きてきて、死ぬ事の無い身であるせいか何か一つ始めるととことん続けるような事が多かった。 いつの間にか物事に向き合う姿勢が自然と、萃香にそう評されるようなやり方になっていたようだ。

慣れた、というにはいささか短期間過ぎるが、結果はそれを事実とした。
練習夜の部の後半頃には妹紅は3人分の注文をそつなくこなせるようになっていた。
 慧音は翌日からは各地を回ろうと提案し、霊夢達は早すぎる練習の終了を残念がっていた。

 翌日早朝。 今日は移動をするので早めに動き出していた。
技術の習熟を続けると共に慧音が肉を持ってくる事がだんだん当たり前のような感覚にすらなってきた妹紅。
今回は肉だけでなく野菜類もある。
仕込みを終えて準備万端という段階になって妹紅が慧音へ質問した
「回る順番は決めてあるの?」
「異変のあった順にと思っていました。 解りやすいですしね。 永遠亭は……」
「行かないぞ!」
「最後にしましょう」
 即座に拒否するもあっさりと一蹴されてしまった。
「今から気が重い……」
「それでも挨拶はしておかないと、じゃれ合いで済まない程度に邪魔をされかねないでしょう? 私も一緒に行きますし、永琳と話しておきますから」
「永琳に?」
 輝夜を止めておいてくれと頼むのだろうか、しかし頼んだからとて輝夜はかいくぐって何かしかけてきそうだと妹紅は思った。
「輝夜を引き合いに出して貴女を乗せたように、貴女がこういう事をしているのは永琳が輝夜を乗せるに使えますから、念押しもかねて」
「ああ、そういうことね」
 自堕落に過ごそうとする輝夜を戒めるために妹紅の屋台を引き合いに出して永遠亭で何かをするようになれば、ちょっかいを出した際のお仕置きはよりきついものになる。
 うまくあちらの事情に絡めて手を出したくないという状況を作ろうというのだろう。
それなら妹紅も永遠亭に行っておくのは吝かでもなかった。
「んじゃ、行きますかね」
 妹紅はぐっと腰を落として屋台を……
引かずに、屋台ごと水平に浮き上がった。
「……ん? どしたの?」
「いえ、この重量を苦もなく転がすだろうとは想定してたのですが、まさか飛ぶとは思いませんでした」
 補助しようとしていたらしい体勢のまま慧音は固まっていた。
「結界を組み合わせてみたんだ」
 それを聞いて慧音は気付いた。 屋台にお札が貼られている。
「傾かないように侵入を防ぐ結界と、簡単に持ち上がるように重力を緩和する結界をね」
 長い妖怪退治の経験からこういったアレンジも心得ている妹紅に、慧音は感心しつつもその背景のせいで複雑な気分だった。

紅魔館から少し離れた所に着地し、そこからは屋台を引いて移動した。
 空飛ぶ屋台、という怪しくもシュールな光景に敵襲と疑われて攻撃されるのを避けるためだ。
「おはようございます」
「おはようございます」
 紅魔館の門番、紅美鈴と慧音がそれぞれ挨拶を交わす。 妹紅は軽く会釈した。
「えーっと……?」
 急に屋台を引いて現れた両名に戸惑いを隠せずに居る美鈴。
「急な訪問で申し訳ないのですが、こちらの妹紅が焼き鳥屋台を開店するつもりでいるのですよ。 そこで宣伝に、差し支えなければご試食頂きたいというわけでして」
「はぁ、成程……解りました、少々お待ち下さい」
 美鈴は館へと向かった。

美鈴が戻ってくると、主・レミリアが乗り気であるという事で門を通された。
 吸血鬼であるレミリアのために中庭ではなく、玄関前の庇に屋台を止める。
「あいつはあそこに立ったままなの?」
 肉・野菜や串を取り出しやすいように準備をしながら妹紅が問う。
「彼女は門番ですからね。 主の許可がない限りは」
「ふーん……私は食べる事も気にしてなかったしあんまりわかんないんだけど、やっぱり焼き鳥作るよーっての聞かされてあそこで立ってるのって……普通は辛いわよね?」
「でしょうね」
 何故それを気にかけたのかは妹紅自身よく解らなかったが、言葉にしてみるとやけに気になった。

「おー屋台だー」
 出てくるなりレミリアは軽い調子で感心の声を上げた。
「やあお嬢ちゃん」
「随分なご挨拶ね」
 同じく軽い調子で声をかける妹紅に、レミリアは不機嫌そうに答えた。
「知らぬ仲ではないのですし、美味しいものを頂くのですからそんなにつんけんならさぬ方が良いですよ?」
 咲夜が主の不機嫌に指摘を入れる。
「ところであの門番はあそこで立たせたままにしとくの?」
 妹紅は館の二人へ向けて訊いてみた。
「え? 美鈴にも食べさせるつもりだったの?」
「ああ、あいつには焼き鳥の試食してもらいに来たって話してるし、気になるだろうと思ったのよ」
 レミリアはそれを聞いて少し考えるような素振りを見せた。
「4、5人程度を想定して来てますしね」
 そこへ慧音が補足を入れた。 昨日の練習では3人分までしか経験していない。 さりげなくハードルをあげている。
「そういう事なら丁度いいわね、フランとパチェも呼んで5人で頂くとしましょう」

 流石に屋台に5人座る事は出来ないのでレミリアと咲夜だけが屋台に、フランドール・パチュリー・美鈴はロビーに椅子とテーブルを運んできてそこに座り、慧音がロビーに待機しつつ、焼き鳥を持っていく事になった。
「慧音からちょっとだけ聞いたんだけど、人里でも流行ってる宴会はあんた達も発端なんだって?」
 黙っていると何か気まずく感じてしまいそうに思った妹紅は敢えて自ら口火を切った。
「ええ、そうよ」
「命蓮寺で美鈴が寺の者を守ろうという姿勢を見せた事で宴会を開催する運びとなりました」
「守ろう……って、あそこでなんかあったの?」
神子達の狂言襲撃に対して、狂言であると知らなかった美鈴がフランドールと共に対抗し、撃退した事をもう少し詳しい背景と共に咲夜が説明した。
少し長い話であったが、焼いている間を持たすには丁度良かった。
「へぇ、あいつの事は私は碌に知らなかったけど良い奴なんだね」
「ふふ、うちの自慢の門番よ!」
 レミリアが得意気に胸をはる。
「まぁ「門番」として自慢は出来ませんけどね」
「あー、よく居眠りしてるんだっけ」
 碌に知らなくとも知っている程に有名な美鈴の居眠りだった。
「ですが、あの子は紅魔館に必要です」
 咲夜もきっぱりとそういいきった。
「居眠りするのに?」
「ええ、居眠りの是非については勿論好ましくはありませんが、あの子がいなければどうにも……印象がとっつきにくくなりますから」
「ふーん」
 紅魔館と言えば「吸血鬼のレミリアが主の館」であり、ただでさえ近寄り難いと思われがちかもしれない。
「んー……誰も来ないと困るって事?」
 とっつきにくい印象を避けたいとなると、妹紅はさしあたってそれしか浮かばなかった。
「はい、お嬢様が寂しがります」
「なんであんた達みんなそういう事言うの!?」
 レミリアがガタッと椅子を倒しながら立ち上がって咲夜に詰め寄った。
発言からするとレミリアがこの暴露をされてしまうのは珍しくないようだが……
「へぇ、意外だ」
「ほら予想してなかったみたいじゃない!」
「いつも見知った連中と会えずにやきもきしてるじゃないですか。 少しは素直にならないと損ですよ?」
 主に詰め寄られても涼しい顔をしている従者という構図。
「主従の枠を超えて仲が良い、というわけだねあんた達も」
「咲夜は従者失格の振る舞いをしてるって事ね!」
 妹紅の発言を助け舟と取ってかレミリアは咲夜に指を突きつけながら言う。
「寂しがって不貞腐れてる主を見るのが心苦しいだけですよ」
 しかし咲夜は動じない。
「まーたーそーれーをー!」
「んー、お嬢ちゃん、怒らなくていいんじゃないの?」
「え?」
 妹紅の言にレミリアがきょとんとした表情を浮かべた。
「私は慧音と出会うまでは長い間一人で過ごして来たから……自分の事をそばで見て気遣う言葉を投げてくれる人がいるのは凄く大事な事だと思うのよ」
 ……と、思いの丈を出した所で、柄にもない事をしてしまったと少し悔やむ妹紅だった。
「蓬莱人が言うと重みがありますね」
「むぅ……」
 納得しきれてはいないようだが、レミリアはそれ以上不満は言わなかった。

一方屋内では。
 門番の仕事でありつく事は出来ないと思っていたのに声がかかって上機嫌の美鈴、美味しいものを食べられると聞いてよくわかっていないが同じく上機嫌のフランドール、然程興味はなさそうだが同席しているパチュリーの3名と慧音がテーブルを囲っていた。
「竹林で人里としか交流の無かった蓬莱人が何故急に?」
 好奇心故かパチュリーが慧音へ質問した。
「私が半ば無理矢理にですがやってもらうように仕向けたんですよ。 永遠亭への案内こそしていましたが、生活のために働くという行為を妹紅はしていなかったので」
「じゃあどうやって暮らしてたんですか?」
 美鈴が問いかける。 慧音は一つ息をついて言った。
「それが、死なないからって碌に食事もしなかったり冬も寒さに震えながら過ごしていたり……」
「うわぁ……」
「本人の意思を尊重すべきと言えど……流石に心苦しく、宴会ブームに乗る形でこうなりました」
 本来は妹紅の理解者であるという立ち位置にあるならそれすらも受け入れるべきなのだろう。
 しかし長い……長すぎる間一人で苦しみ続けた妹紅がようやく他者と関わりを作り出した今、慧音はそれを見過ごす事は最早出来なかった。
「あの人も私と似てるの?」
 フランドールが美鈴にそんな事を言った。
「多分、大体そんな感じですね」
「じゃああの人とも友達になればいいのかな?」
「うーん、ちょっと難しいと思います。 多分、地下室から出た直後のフラン様くらいのはずですので」
 慧音にはそのやり取りの指す所はよく解らなかったが……
「そうですね、妹紅もまだ気難しい所がありますが、いずれ誰かと関わろうという意思をもっと強く持つようになったら、友達になってあげてくれますか?」
「うん、勿論だよ!」
 フランドールの屈託の無い笑みが、慧音には嬉しかった。

咲夜とパチュリーが然程多くは注文しなかったため、人数が多くともなんとか問題を起こさずに終える事が出来た。
紅魔館の面々には好評だった。 第一歩が上手くいった事に妹紅は胸をなでおろす。
「何か飲み物を出す予定はないのですか?」
 片づけ中、近寄ってきた咲夜にそう訊ねられた。
「そういえばまだ食べるものだけだね」
「ゆくゆくはお酒なども用意した方がよさそうですね」
 妹紅は焼くことばかり考えていたので全く想定していなかった。 慧音は何か考えがあったのだろうか。
「お酒と、あとは……」
 ちらりとレミリアを見る咲夜。
「ジュースの類もあった方が、親子連れも受け入れられるでしょうね」
「参考にさせて頂きます」

「ねぇ、慧音」
「はい、なんでしょう」
 妹紅は一つ気になる事があった。
「用意した食材、使い切ってないどころか余裕がありすぎるくらいだけど、これってやっぱり……」
「ええ、次は白玉楼ですね」
 当然のようにそう答える慧音。
てっきり1日1か所ペースかと思っていた妹紅はうなだれてしまった。
「そういうつもりになってなかったからちょっと効いたわ……」
「あまり長く寺子屋を休むわけにもいきませんので。 妹紅が1人でも構わないのでしたらもっとゆっくりでもいいですが……」
 1人で馴染みのない所へも出向くのは妹紅としては遠慮したい所だった。
「1人でなんて嫌だしね……じゃあ、次行こうか」

 白玉楼へ続く長い階段……
流石に屋台を引きずって行くわけにはいかないので飛んだまま進んで行く。
慧音が先行して屋台が飛んでくると知らせればいいじゃないかと気付いた妹紅は、妖夢に攻撃されないためにと先に説明するよう頼んだ。
「……ほ、本当に屋台が飛んできた……」
 慧音はどう説明したのだろう、妖夢は夢でも見ているかのように呆然としていた。
「……しばしお待ちを、幽々子様にご報告致しますので」
 ここの主は食べる事が好きだというし、楽しい事も好きだというし、門前払いはないだろうと妹紅は軽く構えていた。

想像通りあっさりと通されて、中庭に屋台を止めた。
「空飛ぶ屋台ねぇ、是非見たかったわー」
「ん? ああ、まだ準備始めてないし見たいならやってみせるわよ?」
「ええ、お願いするわ」
 幽々子と妖夢が屋台から離れ、妹紅は屋台を浮き上がらせる。 そのままある程度の高さまで到達すると、円を描くような軌道で進んでみせた。
「屋台は車輪を転がして地上を移動するものという常識を破壊する素敵な光景ね」
 楽しそうにする幽々子に対して、妖夢はうつむいて目をつむっていた。
「あら? どうしたの妖夢。 こんな珍しいものを見ないなんて」
「いえ、なんだか……決してありえない光景という意識のせいか怖くなってしまって」
 そこへ妹紅が降りてくる。
「ん? なんかあったの?」
 妖夢の様子を見て訪ねる妹紅。
「空飛ぶ屋台がお化けみたいに思えてきちゃって怖いんですって」
「そうは言ってませんよぅ……」
 お化けみたいと思ったかどうかはさておき怯えてしまったのであれば、人里の子供もそういう印象を持つ可能性がある。
人里のそばでは飛ばない方がいいかもしれない。

 人里でたまに現れてはお菓子をたくさん買う女性がいると噂がささやかれた事があり、見知った相手である事からそれが幽々子であると妹紅も知っていた。
 その事からよく食べるというイメージがあったものの、この奇妙な縁で食べ物を提供する・される関係になってみてそのイメージが誤りではないかと疑いを抱いた。
最初の注文が至って普通だったからだ。
 噂程の健啖家とても思えない。
「……」
「こんなに美味しい焼き鳥を屋台の方から来てくれて焼いてくれるだなんて、最高ね」
「毎日来て欲しいくらい、だなんて無理なお願いしないでくださいよ?」
 褒められたがそれも頭に入ってこない程、妹紅はじっと幽々子の挙動を見ていた。
 特に食べるのが早くもない、ここも普通だ。
「……? 私の食べ方何かおかしいかしら?」
 妹紅が見ている事に気付いて手を止める幽々子。
「どうしたんですか? じーっと幽々子を見て」
「成程」
 慧音の発言を受けて、妹紅が返事を返すよりも先に幽々子が妖夢に向き直った。
「え?」
「じーっ……」
 と、声に出して妖夢を見つめている。
「え? えーっと」
 妖夢が慧音の方を向いた。
「じーっ……」
 そして主に倣う。
「いや何なのこの流れ」
 思わず妹紅が突っ込んだ。
「で、私がどうかしたの?」
 改めて幽々子が妹紅に向けて訊ねる。
「あ、すまない。 えーっと、人里ではあんたがよく食べるって噂があって」
「思ったより大人しくて気になってしまった、と」
「そういう事ね」
 言ってから、素直に答えてしまっては無礼ではなかろうかと妹紅は思ったものの、幽々子がそれを気にする様子はなかった。
「まぁ、尾ひれのついた噂でしょうしねぇ。 実際はこんなものなのよ?」
「あまり顔を見せない人の話となれば、面白おかしく脚色されたりもしますしね」
 慧音の発言に幽々子がうんうんと頷いた。
「見た目よりよく食べる、というのは事実ですけどね、特に甘いものは」
「するとあんまり見かけない女性がお菓子をたっぷり買っていった、ってとこは事実なの?」
 妖夢が付け足した言葉に訊ねる妹紅。
それを聞いて妖夢はうなだれて言った。
「ええ、以前一度凄い量を買ってきた事がありまして」
「それで妖夢にこってりしぼられてからは減らしたのよ。 それでも多いけど」
 妖夢の様子に反して幽々子は悪びれる様子もない。
「へぇ……」
 妹紅は考える、減らしたのは事実なのだろう、「何度もたっぷりと買っていっている」というような噂ではなかった。 それどころか実際の幽々子からは離れていっている展開を見せているので、噂になるような常識はずれは今はしていないはずだ。
「ところで焼き鳥だけでなく何か他にも食べ物を作るの?」
 妹紅が噂について考察している間の沈黙に、幽々子が話題を変えて質問した。
「ん? なんで?」
「調理器具がもう一つあるじゃない」
「あー」
 咲夜からの飲み物指摘もそうだが、これも焼く事を考えるばかりのあまり忘れていた。
「実はまだ置いてあるだけでどう使うかってのは考えてないのよ、これ」
「それって早苗が玉蜀黍を焼くのに使ったっていう……えーっと」
 名前が出てこないらしい。 思い出そうとしている幽々子に、妹紅は実際に使って見せた。
「ここをこうひねると」
 パチンと音と共に炎が出る。
「……で、なんていうんだっけ、これ」
 結局妹紅も覚えておらず、慧音に訊ねた。
「カセットコンロ、ですね。 まだ使ってはいませんでしたが……」
 と、言いながら屋台の内側の収納スペースを漁る。
「これで焼くのに便利です」
 慧音が取り出したのはフライパンだった。
「そんなものもあったのか……」
「焼くのに使えるんだったら、それで焼き菓子でも作れないかしら?」
「幽々子様、流石に焼き鳥とお菓子は無理があるのでは……」
 需要もあるにはあるかもしれないが、多くはなさそうだ。
「あ、やっぱり? じゃあ……串で焼いて出すのに使えないような肉や野菜の細かい切れ端とご飯を炒めたりしてお腹に溜まるものにするとか」
 食材を無駄にしたくないという気持ちの強い妹紅にとっては良い提案だ。
「成程それはいいね、参考にさせてもらおう」
「メニューに決まる事があれば是非頂きたいわね」
 食べる量こそ人並であれども食欲は旺盛のようだ。
「それにしてもこんな立派なお屋敷のお嬢様だってのに庶民的な食べ物も好むのね」
「ちょっと生理的に抵抗があるようなの以外ならなんでも食べるわよー。 楽しまなきゃ勿体ないわ」
 その持論に何か自信があるらしく妙に得意げに言う幽々子。
「まぁ、人里でお菓子をたっぷり買ったりしてますし、おおよそ「お屋敷のお嬢様」って高貴なイメージではないですよね」
 そう言う妖夢は少し不満そうだ。
 幻想郷のお嬢様お姫様の類は俗っぽくないといけないのだろうか、妹紅の脳裏に先程のレミリアや、永遠亭でだらしなく横になっている輝夜の姿がよぎる。
「親しみやすくていいでしょう?」
「確かにお高く留まってるよりは話しやすくて良いね」
「話しやすさのついでに貴女の昔の話を少ししてみたっていいのよ?」
 意味深な笑みを浮かべて幽々子はそう言った。
妹紅が自分の過去を話す事をしようとしないのを知っているようだ。
「それは気が向いたらにしておくわ」
「ええ、気が向いたら是非」
 追及されるのではないかとも思ったものの、あっさりとその話題は終わった。
「屋台は楽しい?」
 急に核心を突く質問を投げかけられたが、妹紅は特に動じる事もなかった。
「今はまだ一生懸命やってるってだけだから、楽しい楽しくないといった意識はないわね。 でも、少なくともやりがいはある」
「そう……よかったわね」
 笑みを浮かべる幽々子の視線は慧音へ向けられた。

屋台の片付けをして帰る準備をしている最中に、妖夢が歩み寄ってきた。
「どうかなさいましたか?」
「慧音さん、すみませんがちょっと上がって行っていただけますか? 何やら幽々子様が伝えたい事があるとかで……」
「? そうですか、解りました」
 あの亡霊が慧音に内緒話……そう思うと妹紅は胸中穏やかではない、何か不備でもあったのだろうか。
慧音が離れていったのを見計らって、妖夢が妹紅の方へ向き直った。
「えーっと、実はこっちが本命だそうなんですけれど……」
「え?」
 焼き鳥の出来についてか、メニューへの要望か、それとも問いかけてきた過去の話についてか、どれもありえそうに思え、どれも碌な話ではなさそうな気がしてしまう妹紅だったが……
「なんとかお菓子もメニューに入れられないか、と。 入れてくれたら頻繁に通いたいとも仰っていました」
「あ、ああそう……」
 身構えてしまっただけに拍子抜けした。
「強い要望ではありますが、焼き鳥とお菓子……無理ですよねぇ」
「まぁ私は食べる事に無頓着だしよく解ってはいないけど、聞いた事はないわね……」
「ですよね……」
 はぁ、と妖夢はため息をついた。
「全くもう、幽々子様ったら無茶な事を……この話はどうかお気になさらず」
「あ、うん。 でももし何か良い案が出るようならなんとかしてみるわ」

 紅魔館・白玉楼への挨拶は好印象だった。成功したと言っていい出来だろう――お菓子云々は抜きにして。
妹紅の家まで戻り、夜になってから……
「あ、そうだ」
 不意に妹紅がつぶやいて、家の外へと出た。
置いてある屋台で何やら取り出す音がし……やがて妹紅はカセットコンロとフライパンを屋台から持ってきた。 それを土間に置いて、今度は箱膳を土間に持って来る。 中の食器には肉と野菜の切れ端をそれぞれ分けてしまってあった。
「先程の幽々子の提案を試してみようと?」
「うん、捨てるのも抵抗があって適当に自分で食べようかと思ってとっといたのを、折角だからこれ使って練習をと思ってね」
 かまどに釜と米を準備し、術を用いて炎をつける。 火に関しては妹紅の得意技、あとは放置で済むような加減を設定した。
 その間に妹紅は慧音から説明を受ける。
「まず、肉も野菜もこのままでは大きいので更に細かくします」
「え? これよりも更に?」
「はい」
 慧音は包丁を取ると手際よく肉と野菜を細かく切っていく。
「主役はお米ですので、具は細かくし、多すぎない程度にですね。 そして調理の手順は、肉を炒め、そこへ野菜を入れて火を通し、一旦別のお皿に取ります」
「ふむふむ」
 目を閉じながら聞く妹紅。 まぶたの裏でイメージしているらしく手が少し動いている。
「フライパンに少し多めの油をしいてごはんを投入し、可能な限り1粒1粒がばらけるようにご飯の塊を押して崩します。 この時手際が早い事が理想ですね」
「早いって……どれくらい?」
「90秒以内を目指しましょう」
「スペルカードの制限時間並に!?」
 その発想のせいか妹紅の脳裏に一瞬米の弾幕を放ってくる慧音の姿がよぎった。
誰かが実際にやったと聞いたような気がしたが馴染みのない誰かなのか妹紅は思い出せなかった。
「最後に別に取った具と調味料を入れて混ぜて、完成です」
「なんだか話を聞いてると大変そうに感じるわ……」
「慣れればそうでもないですよ。 それにメニュー化すれば焼き鳥と並行して作る事になる事もあり得ます。 余った食材で頻繁に練習しないといけませんね」
「うへぇ……」

 実際にやってみると、やる事自体はシンプルだ。
仕込みで余った切れ端の肉と野菜を更に細かく切っておけば準備は必要ないとして、その肉と野菜を炒める。
次いで米を炒める。
具と米を混ぜながら味を調える。
問題は如何に手際よくやれるかに加え、焼き鳥の方との作業の兼ね合いだ。
米を炒める時点からは時間との勝負であるというのなら、ここをどれだけ早く済ませられるかが最大の焦点だろう。
「うーん、塊になってる所が残ってるなぁ」
 初回はそんな結果だった。
「これがしっかりとほぐれている事こそ、この料理、炒飯の肝であるとする人も居て、そうでなければ炒飯でないとする意見もあります」
「私はどっちだっていいんじゃないかって思っちゃうけど……何かコツはあるの?」
 慧音は宙を見てうなって少し考える。
「お米を炊く時に水を少な目にするとか、少し油を入れるとか、そういった手段がありますね」
「あ、成程、作る最中でなくてその前から工夫を凝らす手もあるのね」
 今度は妹紅が考え始めた。
「……お米を炊くのに薄い塩水を使って米の1粒1粒に微弱な結界を張って食べる頃には効力が切れるようにとか出来ないかな」
「……炊いている最中に結界に包まれているのであれば、水を吸わずに固いままになるのではないでしょうか」
「あー、そっかー……」
「とんでもない発想をしますね……」

 翌日。
「えーっと、永遠亭を最後にするからー……今日2か所行くとして守矢神社と地霊殿か」
 昨日までの面々は永夜異変の関係で面識があったし、このペースだと明日の予定の命蓮寺も人里を共通項に顔を合わせた程度はある。
しかし今日の2か所はそれらに比べれば接点が少ない。 特に地霊殿に至っては全くつながりがなく、むしろ永遠亭と交流を持ちだした場所であるため妹紅の事を聞いて嫌悪している可能性すらあるとも思えた。
(それでも慧音が行けって言ってるんだし、慧音がついてるんだし、大丈夫、かな……?)

 妖怪の山の上空を飛びながら守矢神社へと向かう。 もちろん屋台ごと飛びながら。
「そういえばここってなんか危険だって話なのよね……?」
 妹紅の声音は不安げだ。
自らの身を案じてでないし、慧音の身を案じてというわけでもない。 屋台が心配だからだ。
 何者かに襲われでもすれば、当然ながら「相手してやるからちょっと屋台降ろすまで待ってなさい!」だなどと言おうとて誰が聞き入れようか。
 後には大怪我をした襲撃者と無残な姿になった屋台が残るばかりという結果になるだろう。
「そこはぬかりありませんよ」
 慧音は微笑みながらそう答える。 それだけで心配はいらない事が解り、次いで好奇心が鎌首をもたげてくる。 それをくみ取ってか慧音は説明を続けた。
「一昨日の時点で八坂様へ、挨拶に向かうので安全に通れるようにしてくださいとお願いしておいたのです」
「成程、神様がにらみをきかしてるんなら手出しはしたくないだろうね」
 ましてや空飛ぶ屋台とあってはそれこそ不安にさせられる……かもしれない。
「でもいいのかねぇこういうの」
「何か問題でも?」
「いや、なんというか親戚が朝廷で勤めてる伝で庶民が絶対に入る事の出来ない貴族のお屋敷にお邪魔するみたいなずるさがあるような気がして」
 仮に人里の人間が一念発起して焼き鳥屋台を始め、守矢神社の皆様も是非ご賞味頂きたいと言ったとしてこのような受け入れ方はされるだろうか、と思うとそうは思えない妹紅だった。
「あちらも思惑がありますからね」
「なんか企みでもしてんの?」
「当たらずとも遠からずでしょうか……技術革新を起こそうとあれこれした結果、時に異変の原因になったり、遠因になったり、危険を招く所だったり……概ね皆が受け入れている事ではあるのですが負い目もあると伺え、信仰を欲する傍ら交友関係も築きたがっているようなのですよ」
「ほー」
「私達のように間接的にどこかの勢力に届く、ある程度存在感のある者とは仲良くしておいて損はない、といった所でしょうか」
「成程ねぇ」
 なんだか途端に山の神様も政争のような事をするのだなと妙な親近感と嫌悪感が湧く妹紅だった。

しかし……
「おー、来た来た。 焼き鳥食わせてくれるんだって? もう私も諏訪子も早苗も楽しみで今か今かと待ちわびていたよ」
 神が、境内で、手をぶんぶん振って、迎え入れた。
(これどう見ても単純に食欲でつられてるよね?)
 妹紅の中の腹黒い神様像が崩壊した。
ギャップのせいで余計にこの無邪気な行動への好意が湧いてしまう。
「神様がそんな軽い調子でいいの?」
「信仰してくれない奴に付き合う時はかっこいいとこ見せてやんないって決めてるのさ」
 妹紅自身、確かに里の人々がするような信仰をを向ける事はないだろうとは思うが、しかし何故そう判断されたのか疑問だった。
「まぁ、楽しみにしてくれたってのはありがたいけど」
「焼き鳥ってだけでも杯を傾けながらやるに良いっていうのにしかも屋台と来たらもう……っと、諏訪子と早苗も呼んでこなきゃ」
「あ、すまないけどまだうちは飲み物用意してないんだ。 酒を飲むなら自分で用意してちょうだい」
「む、そうなのか。 解ったよ」
 神奈子が離れて行くと共に、妹紅は準備を始める。 準備と言っても家を出る前にほぼ済ませてあるので、移動中はしまっておいたものを出すといった程度の事だ。
「なんだか大分意外だったんだけど、慧音はどう?」
「私もです」
 慧音は先程語った背景の予想が良い意味で間違いだったと思ったのか、妹紅からは少し安心しているようにも見えた。

 神奈子が諏訪子・早苗を連れてきて、それぞれ席について注文をした。
「神奈子様ったら焼き鳥屋台が来ると聞いて昨日一昨日と凄いはしゃぎようだったんですよ」
「仕方ないじゃない、こういうの好きだけど人里の辺りでおおっぴらに 大将! 熱燗! とかするわけにいかないんだから」
 喜びようについては合点がいった。 信仰を集める神様が……ましてや先程の発言からすると信仰する者に対しては威厳を持って振る舞っているらしい神様が居酒屋や屋台でその辺の町人よろしく一杯ひっかけていたら、親近感がわきすぎて信仰どころではなくなるかもしれない。
「注連縄つけずに、服装も地味にしておけば案外バレないんじゃない? 見慣れないお姉さんがいるって感じで」
 早くも酒を口にしつつ諏訪子が言う。
「そうかもしれないけどバレちゃったら面倒だし、私だけの問題じゃなく諏訪子にも迷惑がかかるかもしれないじゃないか……」
 神様らしからぬしょんぼりとした仕草を見せる神奈子。
 二柱の神が一所にあれば張り合っているのではないかと妹紅は思っていたがそんな事はなく仲良くしている……ように見える。
「妹紅さんがここでお店を出してくれれば神奈子様が屋台で飲んだくれても大丈夫というわけですね」
 早苗のその発言から妹紅は一つ疑問が浮かんだ。
「今思ったんだけど……ここって人里だけでなく山の妖怪達からも信仰されてるのよね?」
「ええ、そうですね」
「今回は私が神社の客だからって事で妖怪達も近寄らないようにしてるんだろうけど、毎回そうするわけにもいかないでしょ? ここで飲んだくれてる時に参拝に来られでもしたらまずいんじゃない?」
「あー……」
 早苗の反応からすると妹紅の言う通りのようだ。
「ああ、私には自由がないんだね」
「結局の所はっちゃけるのは私達だけで飲んでる時や、宴会の時くらいのままって事だねぇ」
 ぽん、と、諏訪子が神奈子の肩に手を置いた。
「折角来てくれたってのに落ち込みながらやるわけにもいかないね、結構形になってきたから開店前に挨拶周りって聞いてるけど上手く行ってるの?」
 落ち込んだ様子を切り替えて神奈子は妹紅へ訊ねた。
「ああ、うん、とりあえず昨日紅魔館と白玉楼でこんな風に食べてもらったけど有り難い事に好評だったね」
「へぇ」
「日毎にいろんな場所へ出張して店を出すんですか?」
「宴会に出向く以外は一応はどこかに落ち着いて、っていうつもりだけど場所はまだ決めてないね。 博麗神社の境内に誘われたけど」
 それを聞いて一同、微妙な表情を浮かべる。
「あそこは……」
「人が来ないって言うから……」
 神奈子と諏訪子は歯切れ悪くも止めようとしている。
「ん、まぁ、そうだけど妖怪がよく居るらしいし、普段は別の所でやっといてたまに出すくらいなら意外と悪くないんじゃないかなって思ってたけど……やっぱやめた方がいいのかな?」
「日中に遊びに行く方が多いそうですし、昼に焼き鳥は芳しくないかもしれませんねぇ……」
「むぅ、そうか……」
 どうやら博麗神社に出店もよくなさそうだ。
「人里で出すのが一番無難だろうね」
「そうだね、道楽でやるってつもりじゃなくて生活費を稼ぐのが目的なんだったらちゃんと稼げるようにやらないといけないし」
 二柱の神は人里を推している。
慧音の意見はどうだろうと思い、妹紅は慧音の方を見やった。
「私もそう思います。 ……ですが、博麗神社も、ここ守矢神社も、たまに出店しても良いのではないですか?」
「たまに、ねぇ」
「たまになら売れ行きが悪い場所でも良いでしょうし、こっそり屋台を堪能して頂くのも可能なのではないでしょうか」
 妹紅の胸のうちに少しだけあった、「うちの焼き鳥を気に入ってくれた奴らを無碍にしたくない」という気持ちを見透かしたかのように慧音はそう提案した。
「成程月1くらいで立ち入り禁止にしてこっそり……」
「そのうち見たら怒られるからって避けるよりも好奇心が勝ってで誰か入って来ちゃうかもね。 まぁ、工夫を凝らせばいいんだろうけど」
 神奈子のために諏訪子が一肌脱ごうという事か、しかしニヤッととても悪い笑いを浮かべている。
そういえば祟り神なんだっけ、と、妹紅は思い出した。 もし本当に月1屋台を実行すればそのうち哀れな被害者が出る事だろう。
「慧音さんは寺子屋の先生をされてましたよね。 これからは妹紅さんと一緒に屋台をしていくんですか?」
「いいえ、この挨拶周りの手伝いを終えたらまた寺子屋に戻りますよ。 今回は妹紅の手伝いをしたくて、無理にお休みをもらってます」
 軌道に乗るまでの監視も兼ねてる、とは思っても言えない妹紅だった。
「へぇ、妹紅は慧音に頭があがらないってわけだね」
 神奈子がにやっと笑った。 このように言われると今しがた思った事を言ってしまいたくもなるが、ぐっとこらえる妹紅。
「……確かにね、屋台を用意してもらったし、毎日里で肉やら野菜やら買い付けてきてくれるし感謝してもし足りないさ」
 代わりに、別の事を大げさに言ってみた。
「じゃあ是非とも成功させないと。 持ち帰りもありなら早苗に見かけたら買ってきてもらうかねー」
「ええ、そうしましょうか」
 守矢神社の面々も協力的な様子に内心少し喜ぶ妹紅、慧音は……少しだけ、困っているように見えた。
(あー、今言ったのを皮肉みたいに思っちゃったのね)
 そういう意味がなかったと言えば嘘になる、慧音の困った顔を見ると罪悪感を覚えてしまった。
「んー……ところで、何か、こうしたらいいんじゃないかーみたいなのある?」
 居た堪れなく感じて妹紅は無理に話題を出した。
「よそでは何か提案があったの?」
「紅魔館ではジュースを扱えば子供連れも入りやすいと、白玉楼ではメニューに使えない細切れの肉・野菜の利用法を提案して頂きました」
「肉と野菜の利用は炒飯だね、まだ上手く作れないけど……」
 慧音と妹紅の説明を受けて守矢神社の面々はそれぞれ考え始める。
「味噌を使いましょう!」
 力強く早苗がそう言った。
「味噌?」
「ええ、焼き鳥に塩・タレに次ぐ第三の味付けとしても使えますし、炒飯をメニューに入れるのでしたらごはんもあるでしょう? 焼きおにぎり作れますよ、焼きおにぎり!」
「おー、いいねぇ、葱味噌塗って焼いて、少し焦げ目の入った所で……うん、最高だね」
 やけに味噌を推す早苗に神奈子も同意を見せる。
「いいですね、ごはんものが炒飯だけで選択肢がないとお客さんにもうけが悪いでしょうし、焼きおにぎりなら難しくもありません」
 慧音も賛成のようだ。 となれば反対の理由があるでもない妹紅も自然と賛意に傾く。
「慧音は味噌をどう使えばよさそうか解る?」
「一応は。 ですが、差支えなければ折角ですから提案して下さった早苗さんの味で行きたい所ですね。 よろしいですか?」
「ええ、もちろんですよ。 守矢印の味を世間に広めましょう!」
 さっきの屋台で飲んだくれてるのがバレたら云々に対してこれは良いのだろうか、妹紅は疑問に思ったが誰も異を唱えないので見守る事にした。
案外、守矢の味はこういうものかと有り難がるのかもしれない。

守矢神社でも好評を得る事が出来た。
そして次は……
「地霊殿……」
 呟くと、面倒な事になりはしないかと不安が沸き起こった。
「そんなに身構える事はありませんよ。 むしろ、そう思えばこそあちらの意地悪もより大きなものとなるんです」
「そういうもんなの?」
「はい、永遠亭の鈴仙は心を読まれる事を自然に受け止めていた結果、子供の悪戯のような事をされる程度であったとか」
「あいつ、気弱そうに見えてとんでもない事してきたんだなぁ……」
 心を読まれ、ねちねちと嫌味ったらしい事を言われでもしたらどうなるか、妹紅は想像してみたが5秒と持たずに頭の中でさとりの代役を務めていた輝夜に攻撃をしかけていた。

地底へと向かう洞窟……から、少し離れた開けた場所。
慧音に指定されて妹紅はそこへ降り立った。
「ここなの? 地霊殿ってあの洞窟の奥の方なんでしょ?」
「洞窟の中に屋台ごと入っていってどこかにぶつけたりしたら大変ですからね、ここまでご足労頂く事になっています」
「ふーん」
 妹紅が見た限りでは屋台ごと入っても難なく通り抜けられそうだと思ったが、それでも何かあってぶつける事があり得ないわけでもない、避けられるなら越した事はないだろうと納得した。
「あれ? でも地上と地底って妖怪が行き来しちゃいけない事になってなかった?」
「決まりとしてはそうなっているのですが、あまり守られていませんから……この際ですし、便乗しました」
「先生らしからぬ行動ね」
 とはいえこの場所でというのは妹紅にはありがたかった。 地底の奥まで行って慣れない、しかも閉塞感のある場所かつ、地霊殿連中の領域とあっては落ち着かなかっただろう。
「安心したって、顔に出てますよ?」
「う……」

 慧音が前もって約束をしておいたという時間に、洞窟の方から3人現れた。
そういえば地霊殿の主・古明地さとりの事は心を読む妖怪であるという噂を聞く程度で外見を知らないと妹紅は気付く。 大中小と体格の違うこの3名、果たして正解は……
「小さいのが正解です」
(……中かと思った)
 ともすれば無礼とも取れる思考だが、さとりは別段気を悪くした様子もないどころか、予想を外した妹紅を見てしてやったりといった顔をしている。
「今日はお招き頂きありがとうございます。 慧音さんにはお話ししてありますがこちらの両名は地霊殿の者ではなく地底の友人、星熊勇儀と水橋パルスィです」
 妹紅はてっきり主と従者の組み合わせで来るのかと思っていたがここはそうではなかったようだ。
「うちの場合は地霊殿から連れてくるとなるとペットのお燐とお空の2人ですが、方や猫の姿を持つ火車、方や地獄烏とあって「焼き鳥」は相性が悪いですから……」
 烏は鳥繋がりでよろしくないとしても猫は鶏肉なら別にかまわないのでは、と、妹紅は考える。 そこにすかさず……
「御存じありませんか? 犬や猫、それに兎等にとって玉ねぎやにんにくといった類は猛毒ですよ?」
「えっ……?」
(危ない所だった、知らずに永遠亭にも玉ねぎを……って、あ、そうか、仕入は慧音がしてくれてるから……)
 慧音は知っていたのだろうか、見てみると特に慌てた様子もない。
しかし今回ここに来るのに特に玉ねぎを避けていないのは何故だろう。
「仮に今日特別に玉ねぎを使わない事にして頂いてもお空が来られない事に違いはないですし、それなら特に気を遣わずに頂きこちらの両名を誘うと言う事に致しました」
 成程そういう事情だったのか、と、妹紅は納得し、安心した。
「なんだか黙った大将の心を読んで話すって形がやけに自然だね、あんた達初対面なんだろう?」
「またさとりの読心術を素直に受け入れる人物という事かしら?」
 勇儀とパルスィがそれぞれ口をはさむ。
そういえば先程から玉ねぎのくだりで驚きの声をあげた以外はしゃべっていないと妹紅は気付いた。
しゃべらなくていいのは意外と楽かもしれない。
「永遠亭との宴会の時に輝夜さんも仰っていましたね」
 さとりはニヤリと笑った。
(ああ、成程心を読んで意地悪するってのはこういう事か……)
 慧音を見やると、察しがついたのか苦笑いを浮かべていた。

「萃香にも焼き鳥食わせたんだってね」
 3名が席について各々注文をして程無く、勇儀がそんな事を言った。
「ん? ああ、慧音が博麗神社に声かけに行って、霊夢と魔理沙と3人でね、練習に付き合ってくれたんだ」
「ほー」
「勇儀さんと萃香さんは妖怪の山に住んでいた頃に鬼の四天王と呼ばれていた旧知の仲なんですよ」
 萃香の知り合いだろうかと疑問を抱く妹紅にさとりが説明した。
「地上の奴らとつるむのは好きじゃないんだが、あいつが気にかけたらしいと知って興味を持ってね」
「好きじゃないどころか、例外を除いては頑なに関わろうとしない程ですから……異例の事、ですね」
 何故それ程にと気にはなったが、誰しも触れられたくない事はあるだろう、と、妹紅は訊かない事にした。
「そういう事なら……実はこのタレは萃香が教えてくれたものなんだ」
「へぇ、あいつがねぇ……」
「勇儀は地底の者と関わるばかりだけど萃香は動き回ってるのかしら?」
 妹紅は少しだけ輝夜と自分の立ち位置に似ているかもしれないという気がしたものの、勇儀の萃香へ向けている気持ちは友情であろうと見て取れた。 それと同列に思えば即ち輝夜を友と見るような感覚に至ると気付いて慌てて思考を振り払う。
「私に比べりゃ色々やってるね、異変を起こした事もあるし、天界へ行った事もあるって言うし……変わり者だねぇあいつは」
 かつては共に過ごしていたが今は離れて暮らしている寂しさがあるのだろうか、最後のくだりを勇儀はしみじみと言う。
そうであるのなら、少し共感できる所がある、漠然と妹紅は思った。
「因みにお二人ともその気になれば簡単に会えるんですけどね。 地底の洞窟探検をしていた事もありますし」
 妹紅の胸中の雰囲気をぶち壊すさとりの補足だった。
「そうそう、その探検の時の成果を永遠亭の鈴仙に見せてやったんだよねぇ」
「ん? ちょっと待った。 地上の奴らとはかかわろうとしないって言ってたのに?」
「ああ、そりゃまぁ……さとりに頼まれて、パルスィも乗り気な所に私が駄々をこねるわけにもいかないしね」
 今回最後に行く予定の永遠亭も、慧音に言われれば妹紅は渋りつつもなんだかんだで行く。 それに似た感覚なのだろうか。

「うん? このタレ……」
 タレのつくね串を口にした勇儀が呟いた。
「なんだか味に……奥行きがないねぇ。 これを萃香が?」
 不審そうな顔をする勇儀に慧音が答える。
「基本的な作り方なんだそうで、単に調味料を混ぜているだけなんですよ。 一手間加える作り方もあるから気が向いたら色々試すようにと仰っていましたね」
「あー、成程、それで特に案が出なくてこのまんまだって事?」
「ええ、そうなんです」
 それを聞いて勇儀は即座に提案した。
「昆布やしいたけを入れて出汁を取ったり、あとにんにくやねぎを入れて風味をつけたりって手段があるね」
 今挙がったものであれば野菜串用にしいたけ・ねぎがある。 現状から手を加えずとも試すことが出来るものだ。
「んー、にんにくとねぎは使うわけにはいかないからとりあえずはしいたけだけかな」
 使うのであれば永遠亭へ行った後だ、それに使うようになったら使用している旨を知らせるように屋台のどこかとメニュー辺りにでも記しておかねばならないだろう。
「輝夜さんと喧嘩しているのに、永遠亭の心配をするんですね」
「そりゃそうさ、あいつと私……ついでに永琳も、殺したって死なないけど他の奴らは違うし、何よりあいつと私の喧嘩に他の奴らを巻き込むわけにはいかないもの」
 輝夜との殺し合いのせいで竹林で火事を起こしてしまった事もあって幾分か気にかけていた。 それでもまた輝夜と何かで争えば周りが見えなくなるだろうとも思う妹紅だが。
「不器用な優しさというものかしらね、妬ましいわ」
「妬ましい?」
 急にパルスィにそう言われて戸惑う妹紅。
「ああ、そういえば言ってなかったっけ、こいつは嫉妬心を操る能力を持っているのに加えて自分自身非常に嫉妬深い奴なんだ。 言い換えるとだね……」
 と、そこで勇儀は一拍溜める。
「他人のいいとこを探すのがすごく上手い」
「悪い所にだって嫉妬するわ」
「いいとこか悪いとこかは聞いてすぐ解るだろう?」
 そのこなれたやり取りを見てなんとなく、妹紅は自分と慧音の仲みたいなものかと納得する。
「そうは言われても私は優しくなんかないよ」
「昔とは変わったという事でしょう」
 そう横から付け加えるのは慧音ではなくさとりだった。
「私が言うのもおこがましい事ではありますが……皆、先に逝くのだから素直になれずに後悔するのは避けた方が良いかと」
「……あんたに不老不死の気持ちが解るとでも?」
 胸の内を覗かれた発言に、自然と語気を強めて言葉を返してしまう。
「いいえ、解りませんよ。 ただ、ペットが多いとどうにも死別が多いですからね」
 つまり、後に残されるという事を知っている。 妹紅にとっても苦い経験であるが故に頭に血が昇りかけてもさとりの言う所を理解する事が出来た。
妹紅のそれと比べてしまえば「気持ちが解る」などとは言えないのだろう……しかしこの状況はどうだろう。 見られたくないものをつつかれて苛立ちを隠さない妹紅、辛い事であるはずなのに「貴女に比べれば大した事ではない」と言うかのように涼しい顔をしているさとり。
その対比に気付いて、妹紅の苛立ちはしぼんでいった。
「私はこういう事しか能がないので気を悪くさせてしまいましたが……」
 慧音が何か言いかけたが、妹紅が先んじて口を開いた。
「いや、あんたのおかげで一つ気付けた、有難う」
「役に立ったようですね。 では今回の焼き鳥のお代の代わりという事で」
 険悪でこそないが気まずい雰囲気になってしまった。 脂の爆ぜる音だけが響いて数秒、不意にパルスィが質問した。
「ところでそっちの調理器具は使ってないみたいだけど何を作るの?」
 と、カセットコンロを指さす。
「ああ、これは今の所炒飯用だね」
「炒飯? それでかい?」
「ん? これだとなんか問題あるの?」
「大ありさ……どこぞの白黒風に言えば」
 勇儀は天に向けて腕を突出し、ぐっと握ってポーズを作った。
「炒飯は火力だぜ!」
 ポーズはともかくとして発言は確かに魔理沙っぽいものだ。
「あー、確かにこれ、さっと火をつけられるのは便利なんだろうけど」
 言って妹紅は掌を胸の辺りまで上げて
「私の場合これがあるからねぇ」
 その上に火をともした。
「おお、火の術を使えるんなら話は早いねぇ。
 あ、ちょっとそっちで火をつけてみてくれるかい?」
 勇儀はカセットコンロで火を出すように促した。
「ん? こう?」
 パチンと音を立てつつ火が灯る。
「そうそう、んで、こいつだとこんなもんだけど……」
 勇儀が手をかざすとカセットコンロの火の勢いが増した。
「これくらいで勢いよくぱぱっとやるのが理想だね」
「おー、あんたも火を使えるの?」
「いや、私のは火をおこしてるわけじゃないな」
 じゃあどういう事だろうと考えた所で
「勇儀さんは怪力乱神、説明できない物事を引き起こす力があります。 なんだか意味がわからないけど凄い事が出来るとでも思っておけば良いかと」
 さとりから補足……というには少々無理のある説明が入った。
「萃香と比べると術の類は苦手だからね、他人の術に干渉するよりこっちの方が楽だったんだ」
 勇儀が「コンロの火を強めた」その方法は幾つか思い浮かべる事が出来るだろう、しかし「説明出来ない」とも言われている。
方法として説明がついてしまった以上はそれらは全て勇儀の能力とは違うという事になる。
「うーん、知ってみたいけど知る事は出来ないか……あ、忘れるとこだった。 有難う、火の強さ、今ので覚えたよ」
「どういたしまして。 で、早速やってみるかい?」
 勇儀が目を輝かせている。
「要するに、焼き鳥だけじゃ足りないのね。 たくさん食べる事が出来る、妬ましいわ」
「あー……うん、それは問題無いけど、まだ1回練習しただけで上手く出来ないわよ?」
 それも満足の行く出来ではなかったという自己評価だ。
「じゃあその練習に付き合うさ」
(萃香のように、なのかな?)
 ふと脳裏にそうよぎった。 さとりの方を見てみると合っているという事なのか小さく頷いた。
「折角だし付き合ってもらおうかな」
 帰った後に食事がてら炒飯の練習をというつもりでいたために準備した量には余裕がある状況だ。
「ねえ、さとり」
「はい?」
「半分食べない?」
「付き合いましょう」
 パルスィの提案に、さとりが親指を立ててみせた。

不安だった地霊殿の面々への挨拶も、一時険悪になりかけはしたが問題なく終わる事が出来た。
 家に戻り、お茶をすすって一息ついていた所で妹紅は……
「こいしに地上へ出て見かけたら買っておくよう言いつけておきますので、いきなり覚えの無い子が現れたらびっくりしてあげてください」
 と、良く解らない事をさとりが言っていたのを思い出した。
丁度そこへ、土間の方で何かしていた慧音が現れ、妹紅は訊ねる。
「地霊殿はさとりとこいしって姉妹なんだっけ。 さっきさとりがうちに買に来させるって言ってたのは、その妹?」
「はい、そうですね。 よく遊びに出てるのであまり一緒にはいられないのだとか」
「ふーん」
 姉妹なのにねぇ、と、妹紅は思う。 それを見て慧音は再び土間の方へ行くと、新聞の束を持ってきた。
先日準備の際に持ってきていててっきり燃料にでも使うつもりなのかと思っていたが……
「やっぱり読んでなかったんですね」
「って、それ天狗の新聞でしょう?」
 天狗の新聞といえば荒唐無稽な内容、という認識でいた妹紅だが、慧音は新聞を開いて言った。
「確かに大袈裟であるとか、敢えて知っている事実の一部しか見せない事で面白さを優先させるだとか、そういった面はありますが」
「というよりもむしろ嘘だらけなんでしょそれ」
「ところがそうでもないんですよ。 「永遠亭と地霊殿の宴会」が嘘ではない事は私も確認しています」
 と、聞いて妹紅は首をかしげてしまう。
「恐らくですが、一から十までを全て嘘で塗り固めている例はありません。 程度の差はあれども根っこには事実が存在するはずです。 そう思って見てみると、意外とこれがよその事を知るのに便利なんですよ」
「へぇ……」
 慧音が取り出した新聞には紅魔館や白玉楼の例も記事がある。
 確かに、魔理沙がぼやいていた内容や、紅魔館で聞いた話とも重なる部分があった。
「うーん、「事実がある」って言われても何があったのか知らないとどの部分が本当なのか解らないね」
「では妹紅、これらの記事では「嘘がつけない事」は何だと思います?」
「そりゃあ……」
 目の前に置かれたのは各地の宴会についての記事だ。
「宴会があったという事だよね?」
「はい、誰しもが知るようになる事であれば嘘はつけないですからね。 そして次にですが」
 言って、慧音は紅魔館と命蓮寺についての記事を出す。
「実はこれについて、昨日の一件で事実であろうと思われる点がもう一つ解りました」
 指差す先は命蓮寺が襲撃された事についてだ。
美鈴とフランドールとぬえが神子一行を撃退したとある。
「ああ、門番だけじゃなかったってとこがほんとだって事?」
 妹紅の言に、慧音はきょとんとした顔を見せた。
「あれ? 知ってたんですか?」
「ああ、うん、慧音が萃香とタレ作りに行ってる時に魔理沙が霊夢に愚痴ってた。 連れてってやったのに宴会に参加し損ねたって」
 慧音は平静を装っているように見えるが妹紅には解った、少し残念なようだ。
「……ん? なんでこれ私がもう知ってると残念なの?」
「あ、いえ……別にたいした事ではないのでいいんです。 話を元に戻しますよ?」
 あまり深く突っ込まれたくないらしい、強引に話題を変えようとしている。
「んー、まぁいいけど」
「はい、紅魔館では屋内にいて、その時の話や新聞の記事、それに妹紅も聞いたその話から考えるに……フランドールとぬえが交友関係を築いたと推測されます」
「成程」
 ぬえの事なら妹紅も多少は知っていた。
幼い吸血鬼の妹と悪戯を好む正体不明の妖怪、子供らしさのある両名だ、何か通じる所があったのだろうか。
「ですので、紅魔館で美鈴・フランドールの両名がどんな様子だったかを主軸に置いて入れば話しやすいかと思います」
 今朝の守矢神社の話の時に神様が云々と思った妹紅だが、慧音もよそに対して取り入り易くなるにはどうすればいいかを話している。
これでは慧音も……いや、違う。
「……もしかして慧音、私がどう振舞えばいいか解らないって事にならないように予習させてる?」
「え? あ、はい。 そうですね」
(危うく今朝思ったのみたいに黒い考えがよぎる所だったわ……)
 永遠亭と人里の間にあって間接的なつながりを持っている、そんな自分達の立ち位置を何かに利用しようという意味でもあるのだろうかと考えてしまいそうになっていた。
 妹紅にとってはだからといってよくないように思う事でもないが、口にすれば慧音を傷つけてしまっていたかもしれない。
「……何か変な事を言いそうにでもなったんですか?」
 見透かされていたようだ。
「あー、いや、その、実は……」
 妹紅は今朝守矢神社の話を聞いた時に思った事と、今の流れがそれに似ていると思って同じ意味合いを持つものに思いかけてしまった事を正直に話した。
「こうやってちゃんと話してくれれば問題ありませんよ」
 あっさりとそう言われた。
「妹紅が私に対して本気で怒ったり嫌がったりはそうそうしないと思いますし。 めんどくさいとはよく思ってるように見えますけど」
 当たっているだけに、妹紅は返す言葉に詰まってしまった。

「そういえば……」
 ふと、妹紅は思い出して気になる事があった。
「命蓮寺って、お寺なわけだから肉も酒も駄目だよねぇ……?」
 焼き鳥の屋台が出向いて挨拶をするといっても、出来る事はあるのだろうか。
「ええ、そうですね。 なので……」
 そう言うと土間へ行き、すり鉢を持ってきた。
「これを使います」
 白い生地だ。 先程土間に居て何かしていたのはこれを作っていたらしい。
「なんかお菓子でも作るの?」
「はい、御手洗団子を。 醤油と砂糖はタレに使いますからそこから流用が利きます」
「成程ね」
「小さくこねた後に茹でて、醤油と砂糖で作り片栗粉でとろみをつけたタレを塗って、焦げ目がつく程度に焼くだけですから、作る事自体は難しくないですね、更に……」
 慧音は色とりどりの小瓶を取り出した。
「きなこや抹茶等々、少しかけるだけで味の変化を楽しめます」
 やけに準備が良い、むしろ小瓶が市販物というよりも……
「これってもしかして慧音の趣味?」
「おだんごおいしいですよ? この機会に妹紅も是非」
 その晩は2人で大量の御手洗団子を作っては食べて過ごす妹紅と慧音だった。

翌日、朝からではなく昼を過ぎてから命蓮寺へと向かった。
今回も慧音が前もって連絡していて、この時間でと決めていたらしい。 出かけるまでに時間があったので余裕を持って団子の用意をする事が出来た。
「団子を作るってのも向こうとの話し合いで?」
「はい、ですが話し合い、というよりは私の提案なんです。 焼き鳥屋台として試食をして頂く事は出来ないので、そういう方向けにお団子を出すようにしようと思うとお話ししまして」
「成程ねー」
 屋台で生活費を稼ぐ・幻想郷の面々と交流を持って輝夜に馬鹿にされないようにする、2つの目的の後者のために、慧音は妥協案を探してくれたのだろうと妹紅は理解した。
「そういえば紅魔館と白玉楼はいきなり行ってたわよね、それ以降はちゃんと相手と打ち合わせしてるけど」
「どちらも急に押しかけても断られると思えなかったので、始めたばかりの忙しさもあってああいう形になりました」
「どっちも歓迎してくれてたね」
 ふと妹紅は幽々子の頼みを思い出した、お菓子をメニューに加えてほしい、と。
今回団子を追加した事で実現した形となる。
(里の誰かに妖夢が来たら教えてあげるように頼んでおこうかな……)

 命蓮寺につくと境内に2名の姿があった。
片方は妹紅も知っている、ぬえだ。
「やあこんにちわ」
「げっ! あんた竹林の……!」
 慧音と、ぬえのそばに居る者とが会釈を交わした。
「お主ら知り合いか?」
「あー、それはー……」
「前に竹林で迷子になってた事があって出口まで連れてった事があるんだ」
 迷子になっているぬえを見つけた妹紅が話を聞くと、永遠亭に用があると言われたがすぐに様子がおかしいと気付いた。
何か企んでいると思って問いただしてみると、悪戯をしかけにいこうとしていたのだと聞かされた。
永琳を怒らせるととてもひどい目に遭う、と、輝夜共々怒られた経験を適当に1つ語ってやって諦めさせて出口まで連れて行った、事の次第はそんな流れだ。
(それで「げっ!」だなんていきなり言うってのは、悪戯しにいったってとこがバレるとまずいんだろうねぇ……)
「永遠亭へも悪戯をしに行こうとしておったのか」
 あっさりバレた。
「……え? これだけでそう思われるって、あんた一体普段何してんの……」
「悪戯してんの……」
 がっくりと肩を落としてそう答えた。
「悪戯娘の事はおいといて、儂は二ッ岩マミゾウじゃ、お主の事は慧音から聞いておる。焼き鳥屋台を始めるそうじゃな」
 あらかじめ慧音がある程度話しておいてくれたらしい。 自己紹介をしなくて済むのは楽なので妹紅としてはありがたかった。
「そうなんだけど、ここでは焼き鳥ってわけにいかないから今日は団子よ」
「個人的には焼き鳥の方を頂きたいものじゃが……まぁ、仕方ないのう。 どれ、白蓮を呼んできてやろう」
 そういうと、マミゾウはその場を後にした。 うなだれたままのぬえが残される。
「えーっと、とりあえず、住職さんには悪戯目的で永遠亭に行こうとして迷子になってたなんて言うつもりはないからね?」
 と、一応フォローしておく妹紅。
「そうしてくれるとありがたいわね……」

「ここまで屋台を持ってくるのも大変でしたでしょう? わざわざ有難うございます」
 現れるなり白蓮は妹紅を労った。
「ああ、実は然程大変でもなくて」
 妹紅は移動して屋台を引く姿勢に入るとぐっと構えて……浮き上がって見せた。
「おおっ!?」
 しょんぼりしていたぬえが目を輝かせている。
「屋台ごと飛んで来られるようにしてあるからあんまり大した事じゃないんだ」
「凄い改造ですね……あ、そうだわ。 挨拶回りをしているそうですけれど、神子さん達の所へは行かれるのですか?」
 紅魔館と共に宴会をしたという連中か、と、妹紅は思い出した。 そういえば1日2軒ペースという事になっていたが今日はもう昼過ぎ、命蓮寺だけのつもりだったのだろうか。
「連絡する術がないので、残念ですが諦めようと思っていました」
「そういう事なら、お呼び致しましょうか?」
 白蓮の提案に慧音は考え出した。
「お団子の用意は十分なんですが……」
 妹紅と一緒に団子作りでテンションのあがった慧音、妹紅もそれに付き合う形でつい多目に用意してしまっていた。
「急な事ですしね、妹紅さえ良ければ」
「ん? ああ、いいよ」
 よく知らない人物が増える事は少し面倒ではあるものの、ここまで来て1か所だけ敢えて避けるのもすっきりしないし、何より慧音が残念がるだろうと妹紅は了承した。
「でしたら、是非」
「はい、解りました」

 神子達へ連絡を取ると言って白蓮は寺の中へと戻っていった。
入れ替わりに一輪・村紗・星の3名が現れぬえ・マミゾウと合わせて5人……
(えーっと……? 確か呼んでもらうのが「戯れは終わりじゃ」の人達だから……)
 3人、そして呼びに行っている白蓮。
「9人か……」
 呟いて、考える。 今回は団子を焼くだけだし、その練習は昨晩している。
 人数は多いが難しい事ではない、恐らく。
「こんにちは、妹紅さん」
 声をかけられてカウンターの方を見やると、
一輪・村紗・マミゾウが席についていた。
 ぬえと星は、と、ちらりと確認すると全員で集まっても狭いと思ったのか少し離れた所で何か話していた。
「こんにちは」
「こっちが一輪でこっちが村紗じゃな、あそこでぬえと話してるのは星じゃ」
 マミゾウから紹介される。 挨拶してきたのは一輪だった。
「里で少し顔をあわせた事はあるけど、まともに話した事はなかったね」
「そうですね、妹紅さんは竹林の案内をされていると伺ってますが、迷いの竹林と言われるあの場所で迷わないコツでもあるんですか?」
「いや、単にあそこで長く住んでるから慣れちゃっただけだねぇ。 別に魔力だ術だってもので惑わされるって場所じゃなく、目印はないし竹の生長は早いしでわかりにくいだけだからね」
 村紗に問われ、妹紅は考える事なくすぐ様答えた。
「ところで……紅魔館で宴会したって聞くけどあんた達酒飲んでたの?」
 放っておくとこちらの事を質問されるばかりだろうという気がした妹紅は、逆に自分から質問を投げかけた。
「勿論白蓮がとても渋っておったが、めでたい席という事で口八丁で納得させてやったぞい」
 マミゾウが得意気にそう返す。
「……まぁここだけの話、時折隠れてこっそりやっておったりするのじゃよ」
 と、声音を潜めて付け足した。
 言ってしまっていいのだろうか。
(告げ口なんてしないけどね)
「それでもよそへ出向いて大義名分を得て、っていうのは魅力的なものでしたね」
「いかんのう、そう考えてまたやりたいなどと思っては堕落じゃな」
「僧侶じゃないからって気楽に言ってくれるわねぇ」
 欲との戦いか、大変だななどと妹紅は思う。
 自身がある意味ではそれを乗り越えた先の境地を実践していたと気付かずに。
「……団子じゃあんまり嬉しいもんじゃないかなって思ってたけど、もしかして団子でもあんた達にはありがたい事?」
「そうねぇ、今日は好き勝手に団子を堪能して良いって聞いてるけど、そんな機会はまずないし」
「あー、そうか……」
 博麗・守矢の両神社に加え、たまには出店しようかと思う場所がまた増えた。
「期待していいと思うわ、慧音仕込みの団子」

 白蓮が神子達3人を連れてやってきた。
(あれ? 奥の方に行って、そのまま奥から連れてきた……?)
「この度はお誘い頂きありがとうございます」
 神子の言葉に妹紅は会釈を返す。
 一輪・村紗・マミゾウの3名が席を空けて白蓮と神子が屋台の椅子に座る形となった。
「じゃあ、そろそろ始めていいかな?」
「はい、お願いします」
 準備をする傍ら、妹紅は今しがたの疑問を訊ねてみた。
「それはですね、私達は仙界という、仙術で作り出した世界に住んでいまして、そこからはどこにでも出て来る事が出来るのですよ」
「ふむふむ」
「白蓮さんへは先日の一件以来私達との連絡に用いる道具をお渡ししていますので、自室にてそれを使用し、白蓮さんの自室にお邪魔する形でこちらに来たという次第ですね」
「ほー」
 妹紅は妖術や陰陽術の類を使用しているため畑違いの技術だ。
「仙人の術ってのは便利なものだねぇ」
「弟子も取っていますから、お望みとあらばお教え致しますよ?」
「いや、折角だけど遠慮しておく」
 外部からは連絡が取れないような場所で修行をしなければならないとなれば……そう思うと気乗りしない。
「そうですか、残念ですね」
 そう答える神子が一瞬慧音の方を確認したように見えた。
 さとりのように心を読むのだろうかと警戒してしまう妹紅。
 その様子に気づいたのか神子が種明かしを始めた。
「私は心を読むのではなく相手の欲が聞こえるんですよ」
 誘いの言葉を聞いた際に心によぎったものが欲として聞こえた、という事かと納得し……
「ふーん……じゃあ欲が強い奴はその分欲の……声って言っていいのかな、でっかいの?」
 微妙に話の方向を変えた。
「ええ、聞こえすぎないようにこの耳当てをしています」
「ああ、そのためなのね……ここのみんなはやっぱり、修行してるだけあって里より静かなの?」
「そうですね。 それに貴女も」
 そう答えて神子は妹紅を見た。
 自分についての話になってしまわないようにと話を変えた妹紅だったが、どうも避けられそうにない。
「因みにただ興味で踏み入ろうとしているわけではありませんよ?」
 妹紅に向けて神子はそう付け足した。 不思議と妹紅自身もそんな気がしていた事ではあるが。
「どういう事?」
「かつて政治に携わっていた身である事と、その枠を越えた所でも人の欲を聞いて手助けなどしていたので、気がかりな事があるとつい何か言いたくなるんですよ……ちょっと失礼して」
 神子は立ち上がって妹紅のそばに寄って耳打ちする。
「慧音さんは人並かつ控えめな欲の中で、貴女が真っ当に喜怒哀楽のある生活をしてほしいと思われているのに対して、貴女は慧音さんと一緒に居たい・気遣われてる事へのお礼をしたいといった所が大きい事と、風変りな欲が聞こえたものでして、何か助けになればと」
 言い終えると席に戻った。
わざわざそんな風に伝えてくるという事は「自分の話はあまりしたくない」という所も把握した上でなのだろう。
しかし妹紅は今聞かされた事と、この神子という人物を前にしての感覚――全てを見透かした上で良い提案をしてくれそうというそれに従ってみたくなった。
「まぁ、私は蓬莱人だからねぇ。 不老不死って奴」
「成程、道理で……」
「人を避けて、ひたすら妖怪を退治して、死ぬ事もなく……そうしてたらやりたい事とかよく解らなくなったの。 まぁ、永遠亭の輝夜……あいつも蓬莱人で死なないからお互い殺し合ってたりとか、慧音に世話焼いてもらってたらちょっとはしたい事も出てきたけど」
 妹紅が慧音を見ると……驚いてはいなかった。 急に身の上話をすればどういう風の吹き回しかと驚くものかと思ったが。
「貴女自身の考えからするとあり得ないような欲がある、という事は自覚されていますか?」
「……」
 今度は慧音の方を見はしなかったが、この言葉の意味は恐らく気付いているだろうと妹紅は思った。
「それに従って損はないと思いますよ」
「……」
 納得も出来る事だ、今神子に指摘された欲、それを実現したなら慧音の心配の種も一つ減る事だろう。 しかしやってみようと結論付ける事は難しかった。
「ところで、話は変わりますが妹紅さんの不老不死はどういった手段でそうなったのですか? 実は私、不老不死を目指して尸解仙の術を使ったのですよ」
「私のは永遠亭の永琳が作った薬の効果ね。 あいつは作る手段が無い・材料が足りないって事情でなければどんな薬でも作っちゃうから」
「薬、ですか……」
 神子は小さくため息をついた。
「皮肉なものですね白蓮さん。 この方は修行を積んだ僧のような事を自然と行い、そしてかつて私が追い求めた薬を私の居た頃からそう遠くない未来で使っていた、と」
 欲を持たずに苦行に耐えて過ごしていた事は僧のよう、とも言えるかもしれない、そして薬は言わずもがなだ。
「神子さんでも愚痴る事があるんですねぇ」
 白蓮は困ったような笑みを浮かべるばかりだった。
「不老不死なんていいもんじゃないと思うけどねぇ……」
「人々を導くに、人間の人生は短すぎるのですよ」

 その日の晩、家に戻ってからは妹紅は何か考え込んでいる様子で話す事もなく、慧音も敢えて問いただす事はなかった。
翌日の準備はこれまでよりも入念なものとなり、その忙しさも相まって結局2人は碌に話す事なく翌朝を迎えた。

永遠亭へ向かう前の準備の際にも妹紅は今日の事について話さずにいた。
 しかし慧音はやはり何も言わない。 妹紅の様子を見れば不穏な事を考えているわけではないと解ったからだ。

永遠亭に着くとてゐに出迎えられた。
「やー妹紅、こんにちは」
「ああ、こんにちは」
 返事は返すがどこか上の空といった様子だ。
「んー?」
 いつもと違うとてゐは気付いたようだ。
妹紅の顔を覗き込んで何か考える。
「何?」
「……まぁ、いつも通りでいいんじゃないの? 急に路線変更しようといっても難しいでしょー、特に貴女の場合」
 普段は輝夜へ向けてむき出しの敵意が今日は無いと気付いたらしい。
「慧音はお師匠様と姫様に挨拶があるでしょ?
 勝手にあがっちゃってー。 私は妹紅を連れてっておくから」

てゐに中庭へ屋台を置くようにと誘導されて、準備を始める妹紅。
 てゐと鈴仙がそれを眺めている。
「こう言っても説得力はないだろうけど、今日は普通に焼き鳥食ってもらうだけだから」
 輝夜と争うつもりもないし、焼き鳥に何か仕込んではいない、と、そういうつもりで妹紅は言った。
「お師匠様からは、慧音から挨拶回りの一環として来るって話があったって聞かされてるけど、それにしてもなんでそんな丸くなっちゃってんの」
「慧音に言われて殺し合いはやめたし、喧嘩しないようにと思ってね」
 鈴仙が何か言いたそうにしていたが、言うべきかどうかを迷っていたのか結局特に何か言う事もなかった。

しばらくして永琳と輝夜がやってきた。
「あら、立派な屋台ね」
「妹紅、似合ってるじゃない」
 さも愉快だといった様子でにやっと笑う輝夜。 褒めているのではなくおちょくっているとしか見えない様に妹紅は少し苛立つが一つ深呼吸した。
「慧音が言うには、里のみんなから慧音と私への感謝の証らしい」
「有り難い事に申し訳程度の費用で用意して頂いております」
「へぇ、慧音は人気者だし、妹紅も里の連中から一目置かれてるらしいし、成程ねぇ」
 そう言う輝夜は素直に感心して……いるのだろうが、妹紅にはやはり何か別の意図があるように思えてしまう。
「慧音のバックアップに頼りきりとはいえ、これまで挨拶をしてきた所は皆褒めていたそうね、立派だわ」
 永琳の方も輝夜へのあてつけがあるんだろうなと、どうにも斜に構えてしまう妹紅。
「……そんな面白くなさそうな顔しなくたっていいじゃない、私達素直に言ってるのよ? ねえ永琳」
「姫様が言ったって説得力ないと思うよー?」
 てゐから突っ込みが入った。

「あ、美味しい」
 いまいち信用してなさそうだった鈴仙も焼き鳥を食べてそう呟いた。
「そうね、初心者とはとても思えない」
「確かに美味しいわ……いつからやってたの?」
 素直な言葉だと先程は言っていたが、それでもやはり永琳と輝夜に褒められるとどこか落ち着かない。
「えーっと、今日で7日目だっけか」
「は?」
「ついでに言えば昨日は命蓮寺でしたから団子を作っていましたし、1日間を空けた6日目ですね」
 慧音の補足を聞いて輝夜は目を白黒させて焼き鳥と妹紅を交互に見た。
「あんた焼き鳥の天才だったの!?」
(なんだろう……これはほんとに素直に褒めてるんだって解るのに、さっきのよりももっと馬鹿にされてるみたいに感じる)
 輝夜の表情には笑いがない、完全に驚きに支配されている。 疑うべくもないというのに、輝夜にこんな言葉を投げかけられるととても胡散臭く感じてしまうのだった。
妹紅が冷静な様子を見て驚いたのが恥ずかしくでもなったのか、輝夜は咳払い一つして続けた。
「まぁ、期間が短い割にあまりに上手なもんだからびっくりしちゃったけど、どこの誰が作る焼き鳥よりも美味いだなんて流石に言えないわね。 でも、まだ6日やそこらとは思えないわ。 これなら普通にお金取れるわよ」
「夕方に見かけたら2回に1回くらいは持ち帰りで買いたくなるね」
 微妙なたとえでてゐが同意した。
「余程熱心に練習されたのですか?」
「ああ、初日なんか丸1日慧音と焦げたり上手く行ったりした焼き鳥だけしか食べなかったよ」
 うへぇと呻いてたじろぐ輝夜。
「相変わらずやる事極端ねぇ、あんた……」
「ですがその甲斐あってのこの上達ですよ、2日目と3日目は霊夢、魔理沙、萃香の3名に練習に付き合ってもらってました」
「いきなりあいつらにだなんて随分と攻めて行ったのね」
 妹紅自身も「よその誰かに食べてみてもらう」にしては随分高いハードルだと思ったものだ。
「タダ飯なんだから喜んで付き合うって言ってたなぁ」
「あー、成程ね」
「で、2日目までは焼き鳥だけだったけど、3日目にあいつらがタダじゃ悪いってんで野菜やきのこを持ってきてくれたんだ」
 因みに今日は葱類は除いてある。
「ん? 焼き鳥って言ったらねぎまでしょうに、ねぎがないのはなんで?」
 それに気付いて輝夜が指摘した。
「兎に葱なんかは猛毒だって聞いたから」
「へぇ、気を遣ってくれたのね、あんたがねぇ」
 実際の所とても気を遣っていた。 月の兎である鈴仙や長く生きた妖怪兎のてゐならものともしないかもしれないが、もし永遠亭に住む普通の兎に焼き鳥を与えて死なれでもしたらたまったものではない。
 妹紅の準備は入念に入念を重ねるものだった。
焼きあがった焼き鳥を乗せる皿・焼き鳥器・屋台のカウンターなどなど片っ端からよく洗い、更にこれまで使っていたタレも一度別の甕に移し、普段持ち運んでいた壺を何度も何度も水洗いした後新しいものをねぎ無しで用意した。
「喧嘩するのは輝夜とだけだ、他の奴に迷惑かけるわけにいかない」
「竹林燃やしちゃった事もあったけどねー」
 事実なだけに反論できなかった。
「4日目からは挨拶回りを始めましたね」
 慧音が話題を戻してくれたので妹紅は輝夜の茶々入れに取り合わず続ける。
「最初は紅魔館と白玉楼で、飲み物を増やすようにって提案と、細かい肉と野菜の利用法を教えてもらった」
「へぇ」
 輝夜は後者には然程興味を持った様子もないが、敢えて気にせず妹紅は炒飯を作り始めた。
まだ完全にものにしたとは言い難いが、最初の頃に比べれば上達している。
「ほら、食べてみなさい」
 押し付けられた形だが輝夜は文句を言わずに手をつけた。
「……あんたって確か、まともなもの殆ど食べてなかったのよね、自分で料理もしてなかったし」
「見事なものでしょう?」
 慧音が我が事のように得意気に言った。
「そうね、これだってお金とれるわ……みんなも食べてよ、これ全部食べちゃったら他のあんまり食べられなくなるし。 あ、取り皿ある?」
 妹紅が取り出した小皿に分けて永琳・鈴仙・てゐも炒飯を口にする。
「おお、結構いけるねぇ」
「本当だわ……」
「ただ、流石に姫様には敵わないですね」
 鈴仙だけは素直に褒めなかった。 が、それよりも……
「あんたも炒飯作んの?」
 面倒くさがりのくせに何故炒飯を、それも自分よりも上手に作るらしい、妹紅はそこが気になった。
「あー、うん、まぁね。 部屋で遊んでた時にたまたま読んだ本に作り方が書いてあって、真似してみたら散々だったもんだからつい意地になって……」
「それで今では私や鈴仙が忙しい時に美味しい炒飯を用意してくれるようになったのよ」
 輝夜も負けず嫌い……駄目だった、で終わらせたくなかったのだろう。
「……近いうちにあんたより美味しいの作ってやるわ」
「今のあんたがそれ言うと本当に「近いうち」になりそうね」
 ついいつもの調子で張り合ってしまったが、輝夜はあっさりとそれを認めた。
「なんかすっかりここに来るまでの道のりを聞く流れになってるわね、折角だから続きを聞かせて頂戴」
「ああ……えーっと5日目は守矢神社と地霊殿で、味噌を使うようにと勧められたのと、後はタレの味付けと炒飯の作り方のコツを聞いたなぁ」
 言って、今度は焼き鳥と焼きおにぎりの用意を始める。
「炒飯のコツって、何聞いたの?」
「強火だとさ」
「ああ、それね」
 輝夜の反応だと何か他にもありそうだと思ったものの、訊ねても確実に教えてはもらえないので妹紅は無視する事にした。
「因みに地霊殿のさとりさんが葱類が犬や猫・兎に猛毒だと教えてくれました」
「ああ、彼女ならペットをたくさん飼っているから知っていそうね。 ごく微量でも危険なのよねぇ……個体差はあるけど、小さな欠片だとか、煮込んだスープだとか、その程度を口にしただけでただの犬猫なら死ぬ事だってあるわよ」
「マジで?」
「マジで」
 掃除・水洗いの最中にちょっとやりすぎなのではないかと思わないでもなかったが、やりすぎてよかったようだ。
「そんなに危険なら断っといた方がよかったんじゃないの……?」
 思わず弱気になってしまう妹紅。
「発症までは1日から数日あるし、それに症状は溶血性貧血だから予め赤血球の型毎に分けてみんなにタグをつけ……」
「お師匠様、みんな置いていかれる話はそのくらいにして下さい」
 鈴仙が永琳を止める。
その辺にいる兎を見てみると、「ど」や「げ」と書かれた腕輪状のものを前足の付け根の辺りに巻いていた。
「つまり、よく解らないけど心配は要らなかったって事?」
「ええ、でも気を遣ってくれたのは凄く有り難いわ」
 少しして、焼き鳥と焼きおにぎりの準備が整った。
まず焼きおにぎりを2個を半分ずつでそれぞれ永遠亭の4人が食べる。
「守矢神社の早苗さんに教えて頂いた作り方……ですが、今回は葱を使用していないので少し私なりに手を加えています」
「ふーむ、これも美味しいわね」
 更に味噌ダレの焼き鳥を口にする。
「おー、美味い美味い」
「つくねにこれは……凄く合うわ……」
 どうやら鈴仙はとても気に入ったようだ。
「結構な量を出してもらったけど、まだ続きがあるのよね」
 そう言う輝夜はもう大分腹が満たされてきたようだと妹紅には見て取れた。
「もう腹一杯かな? なら次は丁度いいかもね」
「6日目、昨日は命蓮寺に行っていたんですよ」
「あそこはお寺で肉や酒が駄目って事になってるから……」
 そこまで言って、妹紅は準備した団子の生地を手早くまとめて串に刺して輝夜に見せた。
「おー、いいわね」
「……焼き鳥と団子は合わないだろうと思ってたけど、食事を終えて最後に食べるなら意外といいのかな……?」
「まぁ、今こうして見せられて惹かれたのは確かね」
 妹紅が団子の準備を始め、慧音は味付け用の小瓶を置きつつお茶の準備を始めた。
その間、妹紅は輝夜に見せた団子串を口にする。
「って、あんたそれ食べちゃうの?」
「ああ、これは見せるためにやっただけ。 茹でてから焼き目をつけるんだけど一度串に刺したのを外して茹でるわけにもいかないし。 予め茹でてちゃ固くなっちゃうしねぇ」
「もうすっかり誇りを持った屋台の大将ね、あんた」
 何度か褒められたからか、今度はその言葉を素直に受け止める事が出来た。

団子が気に入ったのか、輝夜は最後まで食べていた。 2本程持て余してしまったのをゆっくりとだがなんとか食べているうちに鈴仙・てゐは永琳の一言で退席の許可が出たためそれぞれ何がしかの作業に移ったようだ。
「あー、よく食べたわ……ご馳走様」
 屋台を離れ、縁側に移動するとごろりと横になる輝夜。
「食べてすぐ横になると牛になるぞ」
「もー」
 頭の両脇に立てた指を置いて牛の鳴き声を真似て見せる。
「妹紅、片付けは私に任せて下さい」
「え?」
 急に慧音からそう言われて戸惑う妹紅。
「今なら永遠亭の皆さんも私もここに居る事ですし、輝夜と喧嘩になっても無理矢理止められますから、少しは話をしてはどうかと」
「マジで?」
「マジです」
 こうなっては抵抗しても無駄だろう。
諦めて輝夜の隣へと向かうが、輝夜も屋台に座ったままの永琳も特に驚く様子も、この行動について何か言う様子もない。
もしかしたら訪れた時点でこういう事になっていたのかもしれない。
「勿論うちもあんたの屋台は店として構えるに足るという結論よ。 これで挨拶回りしたとこ全部から良い印象を得たっていう形になるわね」
「そいつはどうも」
 結局終始褒められ通しだ、何か妙な狙いでもあるのだろうかと考えてしまう妹紅。
「随分と疑ってるようだけど、まぁ、当然ね」
「正直言ってこう褒められると落ち着かない」
「私の方は別にあんたを嫌ったりとかしてないもの」
「は?」
 幾度となく殺し合いをしていたというのに、驚くべきことを輝夜は言った。
「私が残していった蓬莱の薬をあんたは人から奪って使ったとは言っても、あんなものを私が時の帝にも残しさえしなけりゃこうはなってなかったんだしねぇ……」
 そう言って輝夜は空を見る、今はまだ見えない月の方を見ているのだろうか。
「罪滅ぼしでやってたっていうのか?」
「ま、半分はね」
「半分?」
 妙な答えに妹紅は首をかしげた。
「いくら死なないったって殺されるのは痛いわけだから黙ってやられるのも癪じゃない」
「それもそうか」
「慧音が止めてくれて助かったってのが正直な所ねー、ほんと」
 輝夜としてはやられればやり返すが気乗りはしない事だったようだ。
「……輝夜はさ」
「ん?」
「私と殺し合いをしないとなると、なんかやりたい事とかある?」
「どうかしらね、ずっとあれしかしてなかったから今になって急には浮かばないわよ。 とりあえず適当になんかネタ見っけて張り合ってみたりでいいんじゃない? 今ならまぁ……どっちの方が炒飯美味しく作るか、とか?」
 二人共殺し合いをしなくとも付き合いを持つ事を前提として話しているが、知ってか知らずかどちらもそれについて言及する事はなかった。


妹紅が人里に屋台を出したその日……
物陰から屋台を苦々しく見つめる者がいた。
「まさかこんなものが出てくるなんて……」
 妹紅・慧音の動きは早かった、この件を捕捉していなかったのだろう。
「私への挑戦と受け取るわ……」
 その後、妹紅は盛んにミスティア・ローレライの焼き八目鰻屋台に勝負を仕掛けられる事になるが、それはまた別の話。
輝夜と妹紅が殺し合いしてないやら、とんでもない短期間で焼き鳥屋台開店させる勢いになってるやら、他にも……
一応設定から解釈のしようによっては、と、意識しての形ではありますが、色々と無理があったりコレジャナイ感漂ってたりするだろうと今回のは出すのが少し怖いと正直思ったり……
概ね緩い雰囲気に和めれば幸いです。
HYN
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コメント



0.230簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
 読んでいて「この一文では何が言いたいのかな?」となる部分が多々ありました。
 これは時間をかけて身に付くものですので、今すぐ改善しろとは言いません。けっこう難しいものですからね。
 ですが、せめて読点はちゃんと打って下さい。それだけで、上記のような読み難い文章も、多少は改善されると思います。
 ネタは良いと思うんですけどね。申し訳ありませんが、途中で読む気が失せてしまいました。
4.20名前が無い程度の能力削除
慧音は妹紅に対して敬語で話しましたっけ…?
6.100名前が無い程度の能力削除
焼き鳥が食べたくなったw
自分的には読みやすかったしキャラ同士の会話も違和感も感じませんでした。
後慧音は妹紅に対して原作で敬語ですよっと。
7.90名前が無い程度の能力削除
小説版儚月抄からだな<慧音が妹紅に敬語
実際考えてみると妹紅が輝夜に突っかかるのはわかるけどその逆は特に理由がないし、妹紅が落ち着けば自然とこうなるか、と簡単に納得できたなぁ
さて強力なライバルの出現に果たしてみすちーはどう対抗するのか、そしてなんか恐るべき速度で進化していく妹紅の料理の腕前はどこへ行き着くというのか。先の展開が楽しみな終わりかたでした
でもぶっちゃけ共同経営が一番上手くいくんじゃね? と思ったり

9.90名前が無い程度の能力削除
面白かったです!慧音先生と妹紅がなんだか時代劇の夫婦みたいだw
さあ、作者様はミスティアの屋台繁盛記を書く作業にもどるのです。
10.80名前が無い程度の能力削除
久々に焼き鳥食べたくなったなぁ
12.80名前が無い程度の能力削除
けーね先生の敬語好きは今に始まった事じゃなさそう
妹紅が凝り性(別の言葉ならオタク気質)なのは理解出来るし、
紅魔館はじめ各拠点の連中のお人好しぶりも良かった

あと、釈尊の原始仏教は「喜捨された限り」魚肉や酒を禁じてません
「世の中を捨てて出家した自分たちに、食べ物に関してどうこう言う甘えた権利などない」だそうです