" />流しそうめん食べるよ 作者: 10KA
Coolier - 新生・東方創想話

流しそうめん食べるよ

2011/05/19 05:06:57
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「流しそうめん器?」
紅魔館、地下図書館。日陰の魔女は読書を中断し、聞き返す。

「そう。人間の里で、物好きな奴が作ったらしいわ。」
目を輝かせて話すのは、水色の髪をした女の子。その小さな背中には、漆黒の羽根が。

「つまり、どういう機械なのよ。」
「全自動で流しそうめんがエンジョイできる装置なんだって。それさえあれば、一人でも流しそうめんを食べられるってわけ。」
「なんだか寂しい話ね。」
「まったくね。皆で食べた方が、騒がしくていいと思うのだけど。たぶん、作った奴はぼっちね。」
「……根拠もなく言うものではないわ。それに、私はいくらか気持ちが分かるわ。」
「類は友を呼ぶのかしら?」
「どういう意味か聞いても?」
「引き篭も「そこまでよ!」
勢いよく吸血鬼を指さす魔女。無駄にキレがある。
彼女の内心では「決まった……!!」という達成感があふれていた。
知識人というのは、得てして、こういう性質をもつに違いない。きっとそうだ。

「別にいいじゃない。間違ってないし。」
「う……外に出るのが苦手なだけよ。と、ともかく!!そういう話じゃなくて、職人的なものを感じる、ということよ。」
「パチェって職人だったの?」
「違うわよ。ただ、『作ってみたい』という知的好奇心は理解できる。それは魔女も技術者も同じ。」
「哲学的な話?」
「まさか。単純に言えば、ロマンよ。」
「なるほど。パチェはロマンティックな乙女だったのね。」
「……はぁ、もうそれでいいわよ。」
額に手をあて、うなだれる魔女。それが照れ隠しであるのを知って、くすくす笑う吸血鬼。

「ともかく、全自動うんぬんはどうでもいいのよ。それより、大事なことがあるでしょ。」
「ん?……ああ、なるほどね。確かに迂闊だったわ。つまり、あなたは……」








「「流しそうめんが食べてみたい」」


















西洋にいた頃はそうめん自体を知らなかった。
そんな彼女たちが日本のそうめんを知るのは、幻想郷に来てからの話であった。
しかし、レミリア・スカーレットは吸血鬼である。
吸血鬼は太陽に弱い。
吸血鬼はニンニクに弱い。
吸血鬼は銀に弱い。
そして、吸血鬼は、流れ水に弱い。
また人里においても、人数や手間のかかる流しそうめんは、ほとんど行われない。
流しそうめんという文化は、彼女たちには遠いところにあったのだ。


たたみかけるレミリア。
「だってね、流しそうめんは味じゃない、って。風流なんだ、って。」
「けーねが言ってた?」
「そう、けーね……なんで知ってるの?」
「ありとあらゆる知識をもつこと、それが私の誇りよ。」
「へぇ、ふぅん、そう。まぁなんでもいいわ。
 ともかく、風流といえば貴族の嗜み。これには私の矜持がかかっているのよ。」
「と言われてもねぇ……。」
「お願いよパチェ、あなたなら、なにかこう、すごいことになるって信じてるから。」
「すごいこと、って何よ。馬鹿にしてんのか。」
「え、あ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったのよ。土下座で許してくれる?」
「えらく安い矜持だな、おい!」






プライド云々は今更な話だからどうでもいい。ただ、親友のためならば、ちょっとぐらい動いてもいいだろう。
しかし、問題は山積みだ。
なんせ吸血鬼が流れ水を食す、というのだから。
まず雨も駄目だし、川も駄目。力が抜けるとか、体が気化するとか。
妖怪という生き物は精神的な部分が強く、その存在を支配するといわれる。つまり、力が抜けることと、その存在が霧散することは本質的に等しいのであろう。
では、いかに気力の減衰を回避するか。
意志を強く持て?
確かに、それで解決する事案もあるだろうが、流しそうめんを食べながらの精神論、とは似合わないにも程がある。
そもそも、それでは自分がいる意味がない。
人間だって、飲もうと思えば硫酸だって飲める。
そういう話ではないのだ。根本的な解決を目指さなければならない。

とは言うものの、課題は多い。
吸血鬼が流れ水を完全に克服する?
そんな話は聞いたことがない。
いわく、橋があれば川を渡れるらしいが……。










無理だ。できっこない。
きっとそうだ。仕方がないことなんだ。
それができれば苦労はしない。
歴史はもっと変わっていたはずだ。
仕様が無い。
どうにも、仕様が無い。
そうだ、これは呪文なんだ。
しょうがない、という呪文なんだ。
皆にあきらめる勇気を与えてくれる。
しょうがない。
しょうがない。
しょうがない。
しょうが、ない。
しょうが、無い。











「しょうがない、言うんやったら生姜買ってこいやああああ!!!」
「えっと、パチェ?」
「いいわ、やってみましょう。キリッ」
「……えっと、パチェ?」






「要するに、そうめんが流れればいいのよ」
「まぁ間違ってはいなけど……あなた、ほんとに大丈夫?」
「私はいつでも毎日がエブリデイよ。とりあえずは、そうめんを流す、という点に着目しましょう。」
「う、うん。無理はしないでね?」
「流れる、ということは少なくとも、液体・気体・流体のいずれかである必要があるわ。
 ガラス・アモルファスは流れているとは到底いえない。氷河なども同様にアウトね。
 流体の場合は温度・圧力にそうめんが耐えられない。気体ではそうめんが浮かない。
 以上から、媒介物質を利用してそうめんを流す場合、それは液体でなければならない。」
「そうめんの話よね?」
「そして、媒介物質が水を含んではならない。
 となれば、他に液体といえば、金属や臭素などを用いることになるわ。
 臭素では食べる前に鼻がまがる。金属でも、その高温にそうめんが耐えられない。
 常温で液体の金属には水銀が代表だけど、これは駄目ね。銀の一種たりえる。
 他には、ちょっとぬるくなっちゃうけど、セシウムがあるわね。でも、そうめんつゆに触れたらドカン。」
「なんで爆発してんのよ。そんなもの食べられないわよ。」
「こうなれば、有機溶媒を用いるしかないわね。エーテルなどを利用すればいいわ。」
「ちょっと待って。……それ、食べられるの?」
「……サラダ油でもいいのよ。」
「それ絶対にそうめん違う!油に浮いたそうめんって何!?揚げたいの!?」

今日の魔女の運勢は……ざーんねん、12位!頑張りが空回りしちゃうかも☆


「魔女のから騒ぎ、って番組ないのかしら」
「何の話よ。ともかく、そんな得体の知れないものは食べないからね。」
「うーん、となれば……媒介物質なしにそうめんを流すのはどうかしら。」
「どういうこと?」
「外の世界にリニアモーターカーという乗り物があるわ。なんでも弾丸のようなスピードが出るとか。」
「弾丸そうめん?なかなか刺激的ね。」
「流石に、そのまま利用するわけじゃないわ。その技術を拝借するのよ。
 このリニアモーターカーというのはね、実は浮いているの。その状態で移動するわけね。」
「それって飛行機、とかいうやつじゃないの?」
「飛行機はジェットを利用したものよ。リニアちゃんは磁力を使ってるの。
 つまり、そうめんに磁石を埋め込む。これは鉄分を大目にすればいいわ。
 その状態で、非常に強い磁場を展開する。そうすれば、そうめんが宙に浮くってわけ。」

「なんの話してるの?」
本を片手に歩いてくるのは金髪の吸血鬼。
「あら、フラン。おはよう。」
「……その台詞は今日2回目だけど。」
「刺激的でいいでしょう?」
「お姉様は間違ってると思うよ。」
「筆者が寝ずに書いてるからいいのよ。」
「メタ発言禁止ね。テンションがナチュラルハイ状態なのはよく分かったから。」


「……と、こうすればジェットでもそうめんを宙に浮かせることができるわ。
 下から吹かすときは天板とレールが必要ね。横からなら、まさに弾丸そうめんよ。
 これを捕まえるのは並大抵の技量じゃないけど、それがまさにロマンで……」

「パチュリーはどうしちゃったの?」
「フラン、気にしちゃ駄目よ。パチェはあれでも頑張ってるんだから。それを評価してあげなきゃ。」
「そもそも何の話をしてるの?」
「流しそうめんをどうすれば食べられるか。」
「はい?」
「あ、そうか。あのね、フラン。流しそうめんというのは……」
「知ってるよ。竹とかでレールを作って、上流からそうめんを流すやつでしょ。」
「ええ、そうよ。フランは物知りね。で、それをどうすれば私たちが食べられるか、ということよ。」
「どう、って。普通に食べればいいじゃない。」
「フラン。私たちは吸血鬼よ?流れ水はてんで駄目。」
「え」
「まさか知らなかった?」
「いや、そうじゃなくてさ」
「?」







「流しそうめんでしょ?上を渡るわけじゃないでしょ。
 それに、箸を使って食べるんだから、流れ水に触れてもいないじゃない。」
「……そこに気づくとは、やはり天才か。」
「馬鹿なの?」





次の日、流しそうめんが紅魔館で振舞われる運びとなった次第である。
まぁ、皆で食べるそうめんはおいしいよね。
初です。
ギャグを書いてみました。当初予定していた分から一部カット。冗長すぎた。
すごい疲れた。みなさん、こんなに頑張って書いてたんですね。尊敬しちゃう。
結構書いたと思ったのに、たかだか4K文字しかなかった。ちなみに、今は朝5時。
大学さぼりたいよう。
書体指導など、いただけると幸いです。3時間半もかかった。皆こんなもんなの?

流しそうめん器のバージョン違い版を誰か作ってくれないかな。あれ、楽しみだったんだ。

※以下、返答。
>3番様、4番様、過剰様
まとめての返答、失礼します。読んでいただき、ありがとうございました。
>奇声を発する程度の能力 様
大御所様に来ていただけるとは……励みになります。ありがとうございます。
>8番様
劇で使用した弾丸は、スタッフがおいしくいただきました。
>物語を読む程度の能力 様
大事なところが欠けてる、ということですね。睡眠は大事です。
>日間賀千尋 様
ぱっちぇさんのキャラは少し考えましたが、プロットを優先しました。
というわけで、真面目馬鹿キャラになりました。
>24番様
王道ですよね、この流れ。私も大好きです。
筆者が理系なので、文系キャラが書けないのです。わたしニホンゴわかりませーん。
>月宮 あゆ 様
まったくです。レミリアが薄すぎます。ぶっちゃけ、客席の合の手状態。
プロットを起こすことだけを考えていました。そのため、ただの進行役に成り下がってしまった。これは要反省。
セリフ量のバランスがとれていないのも、文章を読みにくくさせているかもしれません。心得ておきます。
常識人⇔狂人の振れ幅が紅魔館最大なのがフランちゃん。そんな願望。
10KA
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コメント



0.1520点簡易評価
3.60点名前が無い程度の能力 削除
面白かったです。パチェがいい感じ。
4.50点名前が無い程度の能力 削除
むぅ……
5.80点奇声を発する程度の能力 削除
パチュリーのハイテンションっぷりが面白かったです
8.70点名前が無い程度の能力 削除
「弾丸そうめん」と言う呼称が気に入ったので
それと色々な雑学を抑えてるパチェが好きです
9.90点物語を読む程度の能力 削除
パチュリーのテンションに親近感ww
完徹二日目くらいな俺と思考回路のベクトルが同じだ。
11.無評価過剰 削除
普通に面白かったw
12.80点過剰 削除
点数忘れ
21.80点日間賀千尋 削除
真面目にバカなこと言ってるパチェに惚れた
有機溶媒のくだりに吹いた
24.90点名前が無い程度の能力 削除
真面目にバカを言う→普通のやり方でよくね? の流れが大好き過ぎるwwww
このパチェは間違いなく理系。それもかなり純粋な。
33.90点月宮 あゆ 削除
パチェのまじめっぷりにふいた。
しかしパチュリーがまじめに考えたアイディアにレミリアが、つっこんでいるはずなのにインパクトが薄い あなたの為に考えているのにそこは一緒に乗ってあげないと
全体的に面白かったです。

追記
フランちゃんは常識人
パチェの生姜の突っ込み切れ味がサイコ!
34.90点名前が無い程度の能力 削除
ずっと思ってたことをフランが言ってくれたw
38.100点名前が無い程度の能力 削除
このパッチェさんからは理系の友人と同じ臭いがするw
39.100点名前が無い程度の能力 削除
「そうめんの話よね?」が可愛い