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私は東風谷早苗と申します、妖怪の山の神社、守矢神社で風祝をやっています。
巫女じゃないです、風祝です。そして博麗霊夢とは何の関係もありません、全くの別人です。
いいですか?巫女≠風祝ですよ、これテストに出します。間違えたら単位出しません!!
話は変わりますが幻想郷も最近はだいぶ落ち着いてきて神社でも特に異変はなく、平穏に毎日が過ぎていきます。
ちょっと退屈に感じるかもしれませんが私はそうは思いません。
神奈子様や諏訪子様と過ごしていると退屈などと感じている余裕がありませんからね。
はい、毎日がとても楽しいです。
そんなある日、いつものように私は居間でお茶を飲んでいました。
でも変ですね、いつものお茶なのに微妙に味が違うような……
「きゃあああああああ!!!」
と、外から諏訪子様の叫び声が聞こえてきました。
なにごとか!?まさか誘拐?あまりにも“私の”諏訪子様が可愛すぎるからって誘拐は許しません!!
「諏訪子様!!どうなさいました!?」
私があわてて外に飛び出すと、自らの肩を抱き、しゃがみこんでがくがくと震えている諏訪子様がいました。
ひどい、諏訪子様をこんな目にあわせるなんて、こうなったら私のスペルカードで!!
と、境内を見渡してみてもそれらしき人物は見当たりません。
私は仕方なく袖から出しかけていたスペルカードをしまって諏訪子様の隣にしゃがみこみます。
「あ、早苗……、見てよこれ、ひどいよ……、まさかこんなことする人がいるなんて……」
何を見ているのでしょう、諏訪子様の虚ろな視線の先を見ます。
その先には……、蛙が一匹、それも死んだように動きません、否、死んでいます。
その蛙の周りには白い粉が撒いてあります。
も、もしかして……これは青酸カリ!?
どどどどうしましょう、こういう場合はペロッとかやらなきゃいけないんでしょうか!?
おかしいですよね、あれ!!ペロッとかやったら死んじゃいますよ!!!
こ、ここは私の奇跡を起こす程度の能力で……はっ、私は何をこの程度で奇跡を起こそうとしているのでしょう……
す、少し落ち着きましょう、はい、すってー、はいてー、ひっひっふー。
「早苗ー、何勝手に頭の中でいろいろやってんの?それで深呼吸するのはいいけど赤ちゃんでも産むつもりなの?」
「え!?あ、ごめんなさい諏訪子様、それでこの白い粉、青酸カリなんでしょうか……」
「なにをいきなり、さぁ、舐めてみれば分かるんじゃない」
やっぱりですか!?やっぱりやらなきゃいけないんですか!?
わ、分かりました、女早苗、やるときはやります!!
ええ!やってやりますとも!!
ペロッ
「おぉ、冗談のつもりだったのに、そして地面ごといったねぇ」
諏訪子様が隣でかわいそうなものを見る目で見てきています、気のせいですよね?
「これは!!……塩ですね」
「うん、塩だよ?」
「知ってらしたんですか?」
「だって蛙に塩をかける遊びってあるじゃない、子供たちの間で」
「じゃあ、どうして舐めさせたんですか?」
「いや、ほとんど勝手に早苗が舐めてたけど、地面ごと」
あれ?私地面ごといってました?あ、なんとなくしょっぱい味の中にがりがりとした食感が。
おぉ、これはこれは、たまりませんね。
「早苗、砂利美味しい?」
「はい、とっても!ってなにを言わせてるんですか!?砂利なんて美味しいわけないじゃないですか」
「いや、さっき美味しそうに味わってたけど、もうそれはいいや」
そういった諏訪子様の顔は呆れ顔からまた暗い顔に戻ってしまいました。
「ねぇ、早苗、どうやったら子供達が蛙に塩をかける遊びをやめると思うかな?」
「そうですねぇ」
子供達が蛙に塩をかける遊び、あぁ、塩って水分を吸うじゃないですか、だから蛙は塩をかけると弱ったり死んだりしちゃうんですよ。
って誰に説明してるんだろう……、うーんどうやったらやめるんでしょう。
「うーん、やっぱりそういうのを見つけたら地道に注意するしかないんじゃないでしょうか?」
「そうなんだけどね、どうしても言い方が強くなっちゃうのよ、ほら、私の子分がいじめられているわけだし」
「確かに、まだ小さな子供だったりもしますからね、あんまり強く言ったらかわいそうですし」
私は注意の仕方を考えてみることにしました。
『あら、蛙さんがかわいそうでしょう、やめましょうね』
『あ、ごめんなさい……』
と、その中の小さな女の子は私のほうに素直に謝ってくれました、よしよし、可愛いなぁ。
よし、今度はこの子のお兄ちゃんと思われる子に。
『うっせぇ、巫女のくせに』
『な!?巫女!?こ・ん・の・クソガキャア!!』
だめだ、悪ガキ相手に優しい言い方は通じませんね。
どうしましょう……、やっぱり注意しているときに……
『蛙さんがかわいそうでしょう?』
チラッ
『は?うる……さくなんてないですよ、ごめんなさーい!!』
な具合に袖からスペルカードをちらつかせるとか、あ、これいいかもしれませんね。
「諏訪子様」
「なに?」
「注意してる最中にスペルカードをちらつかせる、これでどんな子供だって」
「早苗、それは首元にナイフを突きつけながら注意してるのとあんまり変わらないよ」
え!?そ、そうだったんですか!?
それはまずいですね……
「じゃあ代わりにスカートの中をちらつかせてみたり、なー」
「子供に色仕掛け?それ以前に早苗にそんな趣味があったことに驚きだわ、神奈子に報告しなきゃ」
あ、あれ!?なーんちゃってを言おうとしたら……これはまずいですね……
「え!?ちょ、ちょっとまってください!!これは言葉のあやというか……」
私の反論を聞かず諏訪子様は相も変わらずジト目で睨んできます。
あぁ、私の人生終わった。
こんなこと神奈子様に知られたら……毎夜毎夜、帯を引っ張られながらクルクルしなきゃいけないんだ……
絶対やりそうだ、神奈子様……
『およしになってー』
『いやよいやよも好きのうちってねぇ』
『お代官様ー』
『はっはっはっ、よいではないかよいではないか』
『あーれー』
ぶんぶんぶん
首を振って嫌な想像を振り払います、それにしても役柄ぴったりだったなぁ、神奈子様……
「どうしたの?」
「あ、いえ、時代劇の話です」
「意味が分からないよ、もっと真面目に考えてよねぇ!」
諏訪子様が頬をぷくーっと膨らませて怒ります、ああ、そんな、可愛すぎますっ!!
ちょ、ちょっと私には刺激が強すぎます!!そ、そんな、らめぇぇえ!!
おっと、よだれが、ジュルリ……
「早苗?息荒いよ、熱でもあるの?」
「はっ!?あ、いえ、大丈夫ですよ!」
「そう、ならいいけど、本当にどうしたものかなぁ」
「かわいそうですもんねぇ」
「死んじゃってるんだもんね、強いて言うならあのバカより悪質だよ、うぅ」
あぁ、諏訪子様が涙目に!!いや、待て早苗!!
諏訪子様は悲しんでいらっしゃるのよ、その表情を見て可愛いなんて言ったら失礼だわ。
あぁ、でも可愛い……
「早苗、鼻血鼻血」
「え、あ!?わわ!!」
「大丈夫?具合悪いなら休んでれば?」
「はい、そうします……」
なんででしょう、どうして今日はこんなにも変なんでしょう。
いまさら気づいた私も私ですが……
「おや、早苗、どうしたんだい?顔色が優れないが」
部屋に戻って休もうとしたところで神奈子様が声をかけてきました。
心配してくれているのかと思うと少しうれしかったです。
「今日の私、何か変なんです」
「変?変というと?」
「なんだか無駄に気分が高揚してしまって、頭の中で勝手に物事が飛躍してしまうといいますか……」
「ふんふん、なるほどー」
すると神奈子様は近くにあった紙に何かを書いています。
「それは重大な病気かもしれん、私はちょっとあの薬屋に行ってくる、それまではちゃんと寝ておくんだぞ」
あぁ、神奈子様……なんてお優しい……
まるであのころのおばあちゃんを思い出すようだわ……
おばあちゃん、元気にしてるかなぁ……
「はい、ありがとうございます、おばあちゃん!!」
「……おばあちゃん?」
「あ……」
「ほう……、いい度胸だね早苗ー」
そんな、拳がパキパキと音を立てています……
「あ……、あ……、あ、アスパラガス買ってこなきゃ……」
「……」
神奈子様がさすがにこれはやばいという目で見てきます。
おばあちゃんとよんでしまったことを突っ込まなくなったのでこれはこれでよしとしましょう。
でもなんで急にアスパラガスなんて……、本当に私大丈夫かしら……
「ま、まぁそういうことだ、おとなしく寝ていること、私が帰ってくるまでどこにも行ってはダメだぞ」
「分かりました……」
はぁ、これは本当に寝ているしかありませんね。
私は仕方なく布団に潜りこみました、まだ外は明るいのに、寝るにはちょっと日差しが強すぎますね。
そうしてふと目を細めて窓の外を見ると子供達が集まっています。
その子達の手をよーく見てみると……
「塩……まさか!?」
また蛙に塩をかけてるんじゃ……それは一大事です!!
私は一度台所に寄って“あるもの”を持って子供たちの元へ駆け寄ります。
子供達が突然駆け寄ってきた私をおびえたような目で見ます、あぁ、そんな目で私を見ないで!!
それはおいておいて、やはりというか、案の定子供たちは蛙に塩をかけて遊んでいました。
苦しそうにのた打ち回る蛙が見ていてとてもかわいそうです。
「こら、蛙さんがかわいそうでしょう?」
「うるせぇなぁ、いいじゃねぇか」
と、悪ガキの一人が私に突っかかってきます、よし、こんなときは台所からもってきたこれで!!
「よくないわ、ちゃんと胡椒もかけなきゃ」
「……」
「早苗」
「こう、パッパッパッとね」
「早苗」
そうそう、下ごしらえは塩だけじゃなくて胡椒もかけなくちゃ、これお料理の基本中の基本です!!香辛料にはですねぇ、いろいろな成分が……
ってあれ?私なんで胡椒なんてかけてるんでしょう?
はっ、なにやら後ろから殺気が……
恐る恐る後ろを振り向くと……
背後に『ゴゴゴゴゴゴゴ』とか書いてあってもおかしくない形相の諏訪子様が……っていうか書いてあります!!
「す、諏訪子様、これには水溜りより深ーいわけがあってですね……」
「へぇ、水溜りより深い程度なんだね、じゃあまともなわけじゃないよね、それじゃあ早苗の現世での最後の言葉、聞かせてもらおうかなぁ?」
「お、お、お助けぇ……」
と、すがるような目でさっきの子供たちを見ます。
あれ!?いない!?そんな!!皆私を置いてどこに行っちゃったの!?
一緒に全国制覇しようって約束したじゃない!!それなのに……、それなのに……!!
「うぅ、全国制覇の夢が……」
「なんの全国制覇かなぁ?早苗、歯、食い縛ったほうがいいよ?」
「いやあああああああああ!!」
ふと目を覚ますとここはいつもの布団の上、ありゃ?、そうか、なるほど。
私今まで夢を見ていたんですね、そうかそうか、でも夢の中の出来事だったのにどうして全身がこんなにも悲鳴を上げているんでしょう。
はっ、と気づくと外は真っ暗、いけない、お夕飯の準備をしなくちゃ!!
居間まですっ飛んで行きますとすでに神奈子様もお帰りになっていました。
「おや早苗、大丈夫かい?」
「はい、あれからずっと寝ていましたから」
「早苗大丈夫?もう目覚まさないのかと思ったよー(チッ」
「諏訪子様、そこまで心配してくださらなくても」
あれ?今変な音聞こえませんでした?うーん、心なしか諏訪子様が舌打ちをしたように聞こえたんですけど。
そ、そんなことありませんよね、こんなに笑顔で可愛い諏訪子様が舌打ちなんて、ありえませんよ!!
「ところで早苗、今日の夕飯は何なんだい?」
「あ、はい、昨日の残りのお味噌汁とお野菜と、お魚を焼こうかと」
「ほう、いいじゃないか、頼んだよ」
「はい!」
神奈子様が期待してくださってる、がんばらないと!!
うん、なかなかいいできです、これなら満足していただけますね。
「「「いただきます」」」
「お、これなかなか美味しいじゃないか」
「そうですか?ありがとうございます」
「早苗ー、お茶ー」
「はい」
「早苗、塩」
「はい」
「早苗ー、おしょーゆー」
「はい」
「早苗、私にもお茶」
「はい」
「早苗ー、おかわりー」
「はい」
「早苗、私のもおかわり」
「はい」
「早苗ー、ソースー」
「はい」
「早苗、味噌汁」
「はい」
「早苗ー、お茶おかわりー」
「はい」
「早苗、ふじっこのお豆さんどこだっけ」
「はい」
「早苗ー」
「はい」
「早」
「はい」
「さ」
「はい」
「s」
「はい」
「 」
「はい」
「」
「はい」
「まだ何も言ってないんだが」
「はい、ってあれ?」
「少し落ち着け、早苗」
「ちょっと待ってください、何で全部私に言うんですか?私食べられないじゃないですか」
「あぁ、それは想定に入れてなかった」
「それにふじっこのお豆さんってなんですか?」
「いや、豆が食べたくなったんだ」
もう!神奈子様も諏訪子様も私をこき使いすぎですよ……
すっかりご飯が冷めちゃいました、ぐすん……
「しょうがないなー、早苗があまりにもかわいそうだから私のピーマンをあげよう」
「そうだな、では私のにんじんもあげるとしよう」
「諏訪子様、好き嫌いはいけませんよ!って神奈子様まで!!いい年して何やってるんですか!?」
「「だって~、食べられないんだもん☆」」
な、なんだろう、声が二重に聞こえた気が……諏訪子様ならまだ分かる、いや、私の頭がおかしいのよ、うん。
そんなぁ、まさか神奈子様があんなに少女チックに言うはずないですもんね!
「なんか言ったかい?」
「あ、いえ、まさか神奈子様が○×△□(某有名な花の名前の少女向け雑誌)とか買ってるわけないですよねーって話です」
「いや、たまに買うが?(花の方の意味で)」
いやいやいや、待ってください!!まさか!!そんなはずありません!!
あの神奈子様がですよ!?そんな、なにかの間違いじゃ……
「買って、どうなさるんですか?(雑誌」
「そりゃあ、部屋に飾ったりだなぁ(花」
「飾る!?(雑誌」
飾っちゃうんですか!?も、もしかすると……
「ま、毎回飾っちゃうんですか?」
「あぁ、飾らないでどうするんだ?」
わぁ、もうそこまでいってらしたんですか……
「それで……、いくつぐらい買ってこられるんですか?」
「まぁ基本的に3から4ぐらいかな」
そ!!それはもしや……、噂の『観賞用、保存用、布教用』というやつですか……
どどどどどうしましょう……か、神奈子様にこんな趣味が合ったなんて……
も、もし勧められたらどうしましょう……、でもちょっと読んでみたい気が……
さ、早苗だって女の子なんだもん☆
うわー、私何言っちゃってるんでしょう……
いや、まて、今凄い事に気づきました、もしこの台詞を諏訪子様が言ったとしたら……
『諏訪子だってぇ、女の子なんだよぅ』
やっば、むっちゃええ、恥ずかしがりながらも強気な感じで言われたりなんかしたら……あぁ、こりゃいいぜぇ……へっへっへっ……
はっ、私ったら何を!?しかも口調変わってるし……
もう、本当に今日の私、どうしちゃったんでしょう。
いや、まて、また凄い事に気づきました、もしこの台詞を神奈子様が言ったとしたら……
『神奈子だってぇ、女の子なんだぞぉ』
うわぁ、神奈子様、それはいくらなんでもいたいですよ……
それはやっちゃだめですよ、でも実際神奈子様にはそういったご趣味があるようです、もしかしたらやってるのかも……
「か!神奈子様だめぇ!!その一線を越えてはぁ!!」
「何を言っているんだ?本当に大丈夫か早苗、ほら、薬をもらってきてやったんだ、食べ終わったら飲んで寝なさい」
「え?あ、はい」
あれ?何だろうこの怪しげな青色の錠剤は……
普通薬といったら錠剤の白いやつ、または白い粉と決まっているのに。
何で青いの!?カプセルの半分が青いならまだ分かります、でも全体が真っ青なのです。
「あの、神奈子様?」
「ん?なんだい?」
「どうしてこのお薬は青いんですか?」
「あぁ、早苗の症状を言ったらとびっきり効く薬を出してくれたんだ、普通の薬とは違うみたいだな
特別調合だから日持ちしないらしい」
「そ、そうなんですか?」
「まさか、早苗はお薬が苦手なのかな?」
神奈子様がニヤニヤとした表情で見てきます。
そんな!?私もう子供じゃないです!!
と、気味悪がりながらも口に入れて水で流し込みます。
うわぁ、なんだか不安になってきた。
これ本当は風邪薬なんかじゃなくてもっと重い病気の薬なのかも……、どうしよう……、私まだ死にたくないです……
「さ、おやすみ、早苗」
「お、おやすみなさい……」
そうして私は神奈子様に促されるままに布団に入り目を閉じます。
昼間少し寝ていたせいか寝づらいですね。
それでも私は無理やりに目を閉じたままにします、するとすぅーっと意識が落ちていきました。
翌日、朝目覚めるとそこにはいつもの天井。
具合はよくなったかな?いや、待ってください……そんなにすぐ治ったりするようなら薬なんていらないはず……
それとも薬が効いたのかな?それにしては効きすぎですよ、も、もしかしたら副作用があるのかも……
もしかして、髪が抜けるとか……、ほら、こうやって髪をすいたらズルッと抜けちゃうんです!!
いやです!!せっかく治ったというのに副作用に苦しめられるのはいやです!!カムバック私の髪の毛!!
「あれ?」
何にも抜けません、よかった、髪の毛が抜ける程度の副作用じゃなかったんですね、ほっ。
で、ではいったいどんな副作用なんでしょう!?あぁ、不安で不安で仕方ないです……
「早苗、具合はどうだい?」
神奈子様が様子を見に来てくださいました、嬉しいです。
あ、そういえば昨日神奈子様は私がどんな病気なのか教えてくださいませんでしたね、よし、聞いてみましょう。
「あ、あの、神奈子様、その……、私はいったいどんな病気なんでしょう……」
神奈子様が息を呑む気配がします。
「それはね、今は言うことができない」
「え……」
そ、そんな、それじゃあ私は伝えることができないくらい重い病気にかかっているってことでしょうか……
……やっぱり、そんな感じはしていたんですよ、神奈子様が妙にお優しいし……
諏訪子様も本当に心配してくださいました、こんな私なのに、早苗は幸せ者ですね……
もうこんなに優しいお二方に迷惑はかけられませんね……
「おや、早苗、大丈夫かい?」
「ええ、ありがとうございます、でも、もう迷惑はかけません」
「迷惑?何の話だい?」
本当にお優しいんですね、神奈子様、本当は私の薬代が凄い事になっているはずなのに……
こんなに、うっ、ひぐっ……
「ふえーん!!」
「ちょっとちょっと、どうしたって言うんだい早苗」
「神奈子様~、ぎょうまでありがとうございまじだ!!」
「いきなりなんだい、ほら、朝ごはん作っとくれ」
「朝ごはん?」
「そうだよ、諏訪子も腹空かせて待ってんのさ」
そ、そうでした、私にはまだやることがありました。
そうですね、今日一日はここで過ごすことにしましょう。
明日、ここをでなくちゃいけませんからね、これ以上、迷惑はかけられません。
さびしいですよ、もちろん、でも……それは私のわがままですから……
もしかしたらさびしいと思っているのは私だけで実は神奈子様も諏訪子様も早く出て行ってほしいと思っているのかもしれませんね。
あぁ、やっぱりそうなんですよ、私がここにいたって迷惑をかけてしまうだけですもんね。
うぐっ、ひっくっ、涙が止まりません……、どうしてこんなにも悲しいんでしょう……
ううん、よ、よし、ちゃんと料理に集中しなくちゃ。ここで作る最後の朝ごはんなんだから。
……最後、う、ふえーん!!
「はい、おまたせしました……」
「どうしたんだい早苗、目が真赤だぞ?」
「いえ、たまねぎをみじん切りにしていたら」
「……」
今日の朝食はごはんに味噌汁、漬物に納豆、どこにもたまねぎを使った料理などないんですけど。
「そうかい」
「いただきまーす」
「いただきます」
「……はい、どうぞ」
無理に笑顔を作ってみますがやっぱりだめですね、あ、また涙が……
あれ、おかしいですね、何もかけてないのにお米から塩の味がします。
「ごちそうさま」
「あ、あれ?神奈子様どちらへ?」
「たまには自分の食器ぐらい片付けたっていいだろう?ほら、諏訪子も持ってきな」
「はーい」
どうしてだろう、なんだか神奈子様たちがどこか遠くへ行ってしまうような感覚に襲われました。
「待ってください!!神奈子様!!」
あわてて神奈子様の肩を掴みます、するとその手に握られていたお皿が滑り落ちて床で音を立てて砕け散りました。
「神奈子様……それは私の仕事です、どうか……、私にやらせてください……」
「だって、諏訪子、あんたも置いておきな、じゃあ私は薬をもらってくるよ」
「神奈子様、もう、薬はいいです、私、今日で出て行きますから」
「なんだって?」
「早苗……」
「もう、私のために無理をなさらないで下さい……」
「無理なんてしてないさ、少なくとも私はな」
「ですが!!」
「早苗……クッ……!」
「諏訪子様!?」
諏訪子様は下を向いて外に走り去ってしまいました。
「放っておいてやりな、それじゃあ行ってくる」
「……はい、ありがとうございます」
「それから早苗、出て行くのは構わんが薬を飲んだ後でもう一回考えてみな」
「分かりました」
そういって神奈子様は出て行ってしまいました。
そうして一人になった私はお茶を飲みながらいろいろ考えていました。
私が物心ついてからのこと、神奈子様と諏訪子様とこっちに移り住んできたこと、それから……
私はハッと目を覚まします、どうやら寝てしまっていたようです。
すると外から子供達の元気に遊ぶ声が聞こえます。
もしかしたら、また……
そう思いふらふらと表へ出るとやっぱりです。
「なにやってるんですか?」
「うわ!またでた!!今日は胡椒持ってきてないのか?」
「はい、蛙さんがかわいそうだから、やめましょうね」
「嫌だね、どうしてやめなきゃいけないんだよ!?」
「ねぇ、塩をかけられてる蛙さんの気持ちって知ってる?」
「しらねぇよそんなの、俺蛙じゃないもん」
「とってもね、痛くてね、うぅ、えぐっ、ぐすん……」
「うわ……泣き出した、気持ち悪っ、皆行こうぜ」
あぁ、また、涙が止まりません……
でも子供達が行ったんでよしとしましょう……
掃除でもしましょうかね。
「おや早苗、こんなところで何をやっているんだい?」
「あ、神奈子様、おかえりなさい、掃除をしようかと思っていたんです」
「ふむ、いい心がけだね、夕飯、楽しみにしているよ」
「ありがとうございます」
境内を掃除しているうちに諏訪子様も帰ってきました、そろそろお夕飯の準備をしなくちゃ。
私の……最後のお仕事です……
「「「いただきます」」」
「うわっ、早苗ー、これ美味しいね!!」
「そうですか?ありがとうございます」
「うん、なかなかいい味だ、腕を上げたね、早苗」
「はい……」
「こらこら、今は夕食の場だぞ、暗い顔をするな」
「はい……申し訳ありません」
これが神奈子様と諏訪子様と食べる最後の夕食かと思うと……笑ってなんて……いられませんよ……
そうして夕食の時間はあっという間に過ぎてしまいました。
「ほら、早苗、薬だ」
今回はちゃんとした白い錠剤、やっぱり昨日のお薬が高過ぎてお金がなくなって、普通のになってしまったんですね。
そんな状況でも薬を下さる神奈子様には本当に感謝しなくてはなりませんね。
私はその薬をごくりと水で飲み込むと神奈子様と諏訪子様に別れを告げます。
「神奈子様、諏訪子様、今まであり、が……――――――」
あれ?なんでしょう、頭がふわふわしてきて……
身体から急速に力が抜けてその場にへたり込みます、しまいには横になってしまいました。
私、もう、死んじゃうのかな。
一瞬そんなことを考えていました、私が混濁した意識の中で最後に見たもの……
ニヤけながら私を見下ろす二人の神様……
いつもと変わらぬ目覚め、ちょっと頭痛がしますがこれもいずれ気にならなくなるでしょう、それぐらい軽い程度です。
「お、早苗おはよう、相変わらず早いな」
「おはようございます神奈子様」
「ところで早苗、昨日の夕飯は何を食べたっけか?」
「いやですね、神奈子様、昨日のことなのにもうお忘れになったんですか?……あれ?なんでしたっけ……」
「ほら、早苗もじゃないか、若年性のアルツハイマーか?」
「そんな!?ちょっと忘れてるだけですよ、えっと……あれ?」
「どうしたんだい?」
「夕飯どころか2日ぐらいの記憶が飛んでいるんですけど……」
「はっはっはっ」
それはもう愉快そうに神奈子様が笑います、なんのことやら。
それと関係があるのか無いのかは分かりませんが今朝から参拝客が増えたような気がします。
いい事ですね……と言いたいところなんですが、いらっしゃる方々が皆一様に目が虚ろなんですよ……
私にしてみればちょっとしたホラーですよ……あぁ、怖い……
「ん?」
子供達が集まってはしゃいでいます、なにをしているのかな、行ってみましょう。
すると子供たちは私を見るなり哀れそうな顔をしたり軽蔑のまなざしすらあります。
あれ?私この子達に何かうらまれるようなことをしたかしら!?
「なにをやっているの?」
「うわ、またきやがった、お前バカだからな、教えてやるよ、蛙に塩をかけて遊んでるんだよ」
「あら、それはいけませんね」
私は柄杓に水を入れてその蛙にかけてあげます。
「なにすんだよ!!」
「蛙さんだってね、こんなに小さくても、皆と同じで生きているのよ。痛いと思うし、苦しいとも思うの」
「……」
「皆も、痛いことや苦しいことをされたら嫌でしょう?」
「……う、うん」
「だったら、やめてあげましょう」
「わ、分かったよ、ちぇ、森で遊ぼうぜ」
なんででしょう、あの子達「また」って言いましたね。
でもなんだかあの子達とは会ったような気がします、それにしても、蛙さんが無事でよかったです。
そういえば今朝から諏訪子様の姿を見ていないような……
境内を見渡すとちょうど社の階段にうつむいている諏訪子様がいらっしゃいました。
どうなさったんでしょう……
「諏訪子様、どうなさいました?」
「あのね、私ね、鳥になりたいの」
「は?」
「この大空に翼を広げて飛んでゆきたいの!!」
「……」
社の中からこれまた大変愉快そうな神奈子様の笑い声が聞こえてきました。
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これはこの物語が始まった前日の話。
この日神奈子は永遠亭を訪れていた
「あぁ、分かった、この3種類の薬だな?」
「ええ、お願いします」
そういって神奈子は永琳からそれぞれ、赤、青、桃色の錠剤をを手渡された。
「予想できる効果としては、
赤色の薬が気分を高揚させる。
青色の薬が思考が全てネガティブになる、ようするに鬱になります。
桃色の薬は頭の中がお花畑になります。
一応この効果で合っているか確かめてきてください
あ、それとこれがその薬の効果を止める薬です」
と、永琳はさっきの薬とは別に白い錠剤を1つ渡した。
「その代わりにこの診療所を訪れた患者にこのポスターとあんたの洗脳系の薬をだしてくれるんだったな?」
「ええ、もちろんです」
「じゃあ、交渉成立だな」
このとき、八坂神奈子と八意永琳の右手ががっちりと結ばれた。
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作者さんが壊れている○
壊れギャグも悪くはないが、オチが弱いか。
○ 病んでいる
良い病み具合でした。
子供の頃、色々な生物に塩とか砂糖をかけてましたが
今思い返すとグロイことしてましたねー。
山里である幻想郷で塩は貴重品ではないかと…
子供が自由に使えるとは思えないので70点
幻想郷はしょっぱいものに飢えてるのかもね
続編のフラグですね分かります