魔法。
万能のように聞こえるが、実はそうでもない。
面倒な術式、媒体、言葉。
そういった色々な過程を踏んで魔法として完成する。
でも、私・・・霧雨 魔理沙の魔法の意味は少し違うのかもしれない。
魔法使いとして、認められたいがために魔法を研究している。
研究の果てに何かを生み出すことには、あまり意味はない。
たとえ、どんな魔法でもかまわない。
どんな魔法でも・・・というのなら、禁術の類はやりやすい。
命を媒体とする魔法は対価が高いため、どういった魔法でも効果は出やすい。
そのため、昔から呪いや不死等の類が多い。
魔法、今の私にとっての魔法は八卦炉を媒体にした魔力の放出でしかない。
しかし魔法とは呼べない、魔力を八卦炉から出しているだけだから。
水を蛇口から出すのと同じだ。
このままではいけない、そう感じながら結果の出ない研究を繰り返す。
毎回違う研究。
なんでもいい、蛙を鼠に変えたり、何もないところへ木を生やしたりするだけでもいい。
他の魔法使いにとって、なんでもないようなことが私にはまだ出来ない。
魔法使いと名乗ってはいるが、未だ何も出来ていない。
だからアナログな魔法使いの格好をしていたりするのかもしれないが。
魔法とは科学で出来ないことを言うと思う。
私は箒で空を飛ぶことが出来るが、これは魔法ではない。
外の世界では科学で空を飛べるというし。
物を破壊することだって、何も魔法でなくていい。
結局私の魔法とは、なんでもない。
単に魔法っぽく見えているだけ。
魔法、私にとって生涯の課題、いつの頃だったろうか才能は無いと思ったことがある。
それでも諦めないのは悔しいからだ。
私の周りにはあまりにも魔法使いや妖怪といった類が多い。
そんな中、私はあまりにも人間らしい。
一人のけ者、それが寂しくて研究を続けてるのかもしれない。
見られないよう、なるべく夜中にしているのもそのせいだろう。
悩み続けて長い年月が経つ。
段々と心が病んできた。
明るく振舞うことにも疲れ、空を飛ぶことも少なくなった。
以前は毎日のようにアリスや霊夢のところへも行ってたけど、それも無くなった。
トレードマークであった帽子も埃を被っている。
研究のためのノートも白紙のまま、魔道書もしばらく開いてない。
ただ、毎日がゆらゆらと過ぎていく。
最近は家から出ても居ない。
誰かと言葉も交わしてない。
「はぁ…」
ただ、ため息だけが増える。
ベッドに寝てるだけでも、空腹を感じるというのは一つの発見だ。
面倒臭く体を起こし、冷蔵庫を開けるが水といつのものだろうか、しなびた茸があるだけだった。
茸狩りも以前はよくしたものだが、今はまったくしていない。
冷蔵庫を閉め、食事を諦めた私は机に向かった。
ペンを持つものの何も書く気力も無い。
ただの習慣というかそういったものだ。
真っ白なノート、喋る代わりとでもいったように、隅のほうに「つらい」と書いておいた。
やっぱり私は駄目だったんだ、そんな言葉が頭をめぐる。
ただ、何も考えないように意識し眼を瞑り、眠気が来るようにと祈った。
目を覚ました、いや覚まされた。
ドンドンという扉を叩く音。
誰とも会いたくないから、結界なんていいものを張れればよかったのだけれど。
私に出来るのは扉に外出中という札を掛けるのが精一杯だった。
居留守を決め込むのはいつものことでもある。
けれども、今日は一向にノックが止まない。
しつこく、しつこく叩き続ける。
5分程だろうか、私を呼ぶ声とノックの音がしていたのが止んだ。
(帰った)
と、どこかホッとした。
したのだったけど、なにやら爆音が響く。
「魔理沙!」
誰だったっけ、久しく聞く人の声。来客はアリスだ。
思い出すのにちょっと掛かってしまった。
しばらくすると、机に突っ伏している私の顔を覗き込み、私の視界に人の顔が移った。
「魔理沙・・・どうしたのよ、全然姿見せないから皆心配してるのよ?」
なにやら当然のような台詞が聞こえた。
反応が無い私をアリスは心配を通り越して不安といった顔つきで見ていた。
「魔理沙?返事ぐらいしてよ…」
乱れた私の髪を触りつつ優しげに話すアリス。
「こんなにやつれちゃって…」
私の頬を触られる、そんなにまで痩せてしまったのか。
「ねぇ、魔理沙…?」
今度は名前だけを呼び、私の反応を待っている。
まっすぐなアリスの目を見ていられなくて、目をそらす。
「ほら、とりあえず体を起こして」
私の体を無理矢理に起こす。
「あぁあ、もうせっかくの綺麗な髪も台無しじゃない」
「触るなよ」
「こんなになるまで何してたの?また研究?」
「ほっといてくれよ…もう」
「何言ってるの、霊夢もすっごい心配してたよ?私も心配してるし」
「関係ないだろ」
「あるわよ!友達でしょ?私だってあなたのこんな姿見て、泣きそうなんだよ?」
「じゃぁ、見なければいい」
「そういう問題じゃない!」
怒り出すアリス、正直分からない。
「私は!私は…」
堪りかねたように涙を流すアリス。
大粒の涙、心配してくれているのは分かってるけどさ…
「アリス…」
なんだかつらくなってしまい、声を掛ける。
「え?」
その後は言葉が続かなかった。
気まずい沈黙。
「魔理沙」
とても、優しげなアリスの声。
そして暖かい温もり、そっと抱きしめられ驚いた。
その後も名前だけ呼ばれる。
アリスの鼓動が伝わってくる。
「どうしたの?」
耳元でとても優しい声がした。
「…私、魔法が出来ない」
搾り出すように声を出す。
「うん…それで?」
「魔法使いになりたい、本物の魔法使いだって認められたい!」
本音を言った途端涙が溢れてきた、アリスをぎゅっと抱きしめ、泣き続けた。
「大丈夫よ魔理沙、あなたは人一倍努力してるんだもの」
「うわぁぁ」
言いたいことは沢山あるのに、涙が止まらない。
アリスは何も言わず、私の涙を受け止めてくれている。
しばらく泣いていたけど次第に泣きつかれ、涙も止まった。
「ありがとうアリス」
落ち着いてくると恥ずかしい気持ちが湧き上がってくる。
「もういいの?」
もっといいよ、とアリスはそんな顔をしていた。
「いい」
「そっか」
そういうとアリスは私の頭をそっと撫でた。
「魔理沙はちゃんと魔法使いよ」
「違う…まだ、結果が出てないし」
「そうかしら?」
「だって…アリスみたいに人形を扱ったりも出来ないし」
「う~ん、じゃぁ魔理沙にとっての魔法ってなぁに?」
「…」
アリスの問いに言葉が詰まる、私にとっての魔法…
なんだろう。
「心配しなくても皆、魔理沙のこと認めてるわよ」
「そんな…ことない」
「はぁ、いつもの魔理沙はどこに行っちゃったの」
しっかりしなさい、と私の両肩を叩くアリス。
「あなたの魔法って皆を笑顔にすることだと私は思ってる」
にこやかな笑顔を見せてくれた。
「私だって、あなたのおかげでこんなに笑っていられるんだもの」
「アリス…」
「あなたはいつも元気で、笑顔で楽しそうにしてた、私も他の皆もそんなあなたを見て元気をもらってたのよ?」
そう、アリスが楽しそうに話し、私のおでこを人差し指で突く。
「むぅ」
「ほら、そんな変な顔しないの」
膨れてみせると、アリスは私のほっぺを引っ張り出す。
「笑顔笑顔、ね?」
「うん…」
「じゃぁ、私が元気になる魔法をかけてあげる」
そういうとアリスは私の両肩を掴むと、真剣な眼差しを向けてきた。
「目瞑る」
「う、うん」
恐る恐る目を瞑る、自分の鼓動が聞こえてくるようなそんな静けさ。
すると急に唇に何かが触れた。
驚いて目を開けると、アリスの顔が目の前にあった。
アリスも目を開き、私と視線が合うと顔を離した。
「な…な、な!」
「元気出た?」
「あ、ぅ」
心臓がバクバクいってる、思わず一歩後ろへ下がった。
「魔理沙、私とキスするの嫌だった?」
「そ、そんなことない!」
なにやら、悲しげな表情をしだすアリスを見て、焦りまくる私。
「私も…アリスのこと好きだし」
小声でそういうと、アリスはクスクス笑い出した。
「って、何言わせるんだよ!アリス!」
「あはは、私も好きよ魔理沙」
「まったく、あれが元気の出る魔法って」
思わず自分の唇をなぞる。
「魔法ってそんなものよ」
「そうなのか?」
「うん、だからあまり難しく考えないほうが、魔理沙らしくていいんじゃない?」
「私って、どんなイメージになってるんだよ」
アリスがベッドから立ち上がる。
「ほら、外へ出よう」
そういって、私の手を掴み無理やり外へと連れて行かれた。
「ん~、やっぱり外に出てないと駄目ね」
大げさに伸びをし、アリスが振り返る。
「魔理沙って、こんな感じにいつも誰かを連れまわしてる感じだよ?」
「あははは、そっか私ってそんな感じか」
そう言われるとそんな感じがする。
いつもアリスを連れまわしてたっけ…
「あぁあ、なんかすっきりしてきたぜ」
私も一つ伸びをする。
「よし、アリス!これから霊夢のとこ遊びに行こうぜ!」
「うん!」
いつもの帽子を被り、いつもの箒に跨る、後ろにアリスを乗せ空へと飛んだ。
「魔理沙?霊夢にもちゃんと、心配掛けてごめんなさいって謝りなさいよ?」
「あー、分かってる」
やれやれといった感じの態度が背中越しに伝わってくる。
「私さ」
「ん?」
「魔法の研究諦めかけてたけどさ、もっともっと頑張ってアリスに負けないぐらいになってみせるぜ!」
「あら、随分大きく出たわね?」
「目標はでっかいほうがいいしな」
そう言い速度を上げた。
アリスが居てくれればきっと大丈夫。
今はとてもそんな気分だ。
万能のように聞こえるが、実はそうでもない。
面倒な術式、媒体、言葉。
そういった色々な過程を踏んで魔法として完成する。
でも、私・・・霧雨 魔理沙の魔法の意味は少し違うのかもしれない。
魔法使いとして、認められたいがために魔法を研究している。
研究の果てに何かを生み出すことには、あまり意味はない。
たとえ、どんな魔法でもかまわない。
どんな魔法でも・・・というのなら、禁術の類はやりやすい。
命を媒体とする魔法は対価が高いため、どういった魔法でも効果は出やすい。
そのため、昔から呪いや不死等の類が多い。
魔法、今の私にとっての魔法は八卦炉を媒体にした魔力の放出でしかない。
しかし魔法とは呼べない、魔力を八卦炉から出しているだけだから。
水を蛇口から出すのと同じだ。
このままではいけない、そう感じながら結果の出ない研究を繰り返す。
毎回違う研究。
なんでもいい、蛙を鼠に変えたり、何もないところへ木を生やしたりするだけでもいい。
他の魔法使いにとって、なんでもないようなことが私にはまだ出来ない。
魔法使いと名乗ってはいるが、未だ何も出来ていない。
だからアナログな魔法使いの格好をしていたりするのかもしれないが。
魔法とは科学で出来ないことを言うと思う。
私は箒で空を飛ぶことが出来るが、これは魔法ではない。
外の世界では科学で空を飛べるというし。
物を破壊することだって、何も魔法でなくていい。
結局私の魔法とは、なんでもない。
単に魔法っぽく見えているだけ。
魔法、私にとって生涯の課題、いつの頃だったろうか才能は無いと思ったことがある。
それでも諦めないのは悔しいからだ。
私の周りにはあまりにも魔法使いや妖怪といった類が多い。
そんな中、私はあまりにも人間らしい。
一人のけ者、それが寂しくて研究を続けてるのかもしれない。
見られないよう、なるべく夜中にしているのもそのせいだろう。
悩み続けて長い年月が経つ。
段々と心が病んできた。
明るく振舞うことにも疲れ、空を飛ぶことも少なくなった。
以前は毎日のようにアリスや霊夢のところへも行ってたけど、それも無くなった。
トレードマークであった帽子も埃を被っている。
研究のためのノートも白紙のまま、魔道書もしばらく開いてない。
ただ、毎日がゆらゆらと過ぎていく。
最近は家から出ても居ない。
誰かと言葉も交わしてない。
「はぁ…」
ただ、ため息だけが増える。
ベッドに寝てるだけでも、空腹を感じるというのは一つの発見だ。
面倒臭く体を起こし、冷蔵庫を開けるが水といつのものだろうか、しなびた茸があるだけだった。
茸狩りも以前はよくしたものだが、今はまったくしていない。
冷蔵庫を閉め、食事を諦めた私は机に向かった。
ペンを持つものの何も書く気力も無い。
ただの習慣というかそういったものだ。
真っ白なノート、喋る代わりとでもいったように、隅のほうに「つらい」と書いておいた。
やっぱり私は駄目だったんだ、そんな言葉が頭をめぐる。
ただ、何も考えないように意識し眼を瞑り、眠気が来るようにと祈った。
目を覚ました、いや覚まされた。
ドンドンという扉を叩く音。
誰とも会いたくないから、結界なんていいものを張れればよかったのだけれど。
私に出来るのは扉に外出中という札を掛けるのが精一杯だった。
居留守を決め込むのはいつものことでもある。
けれども、今日は一向にノックが止まない。
しつこく、しつこく叩き続ける。
5分程だろうか、私を呼ぶ声とノックの音がしていたのが止んだ。
(帰った)
と、どこかホッとした。
したのだったけど、なにやら爆音が響く。
「魔理沙!」
誰だったっけ、久しく聞く人の声。来客はアリスだ。
思い出すのにちょっと掛かってしまった。
しばらくすると、机に突っ伏している私の顔を覗き込み、私の視界に人の顔が移った。
「魔理沙・・・どうしたのよ、全然姿見せないから皆心配してるのよ?」
なにやら当然のような台詞が聞こえた。
反応が無い私をアリスは心配を通り越して不安といった顔つきで見ていた。
「魔理沙?返事ぐらいしてよ…」
乱れた私の髪を触りつつ優しげに話すアリス。
「こんなにやつれちゃって…」
私の頬を触られる、そんなにまで痩せてしまったのか。
「ねぇ、魔理沙…?」
今度は名前だけを呼び、私の反応を待っている。
まっすぐなアリスの目を見ていられなくて、目をそらす。
「ほら、とりあえず体を起こして」
私の体を無理矢理に起こす。
「あぁあ、もうせっかくの綺麗な髪も台無しじゃない」
「触るなよ」
「こんなになるまで何してたの?また研究?」
「ほっといてくれよ…もう」
「何言ってるの、霊夢もすっごい心配してたよ?私も心配してるし」
「関係ないだろ」
「あるわよ!友達でしょ?私だってあなたのこんな姿見て、泣きそうなんだよ?」
「じゃぁ、見なければいい」
「そういう問題じゃない!」
怒り出すアリス、正直分からない。
「私は!私は…」
堪りかねたように涙を流すアリス。
大粒の涙、心配してくれているのは分かってるけどさ…
「アリス…」
なんだかつらくなってしまい、声を掛ける。
「え?」
その後は言葉が続かなかった。
気まずい沈黙。
「魔理沙」
とても、優しげなアリスの声。
そして暖かい温もり、そっと抱きしめられ驚いた。
その後も名前だけ呼ばれる。
アリスの鼓動が伝わってくる。
「どうしたの?」
耳元でとても優しい声がした。
「…私、魔法が出来ない」
搾り出すように声を出す。
「うん…それで?」
「魔法使いになりたい、本物の魔法使いだって認められたい!」
本音を言った途端涙が溢れてきた、アリスをぎゅっと抱きしめ、泣き続けた。
「大丈夫よ魔理沙、あなたは人一倍努力してるんだもの」
「うわぁぁ」
言いたいことは沢山あるのに、涙が止まらない。
アリスは何も言わず、私の涙を受け止めてくれている。
しばらく泣いていたけど次第に泣きつかれ、涙も止まった。
「ありがとうアリス」
落ち着いてくると恥ずかしい気持ちが湧き上がってくる。
「もういいの?」
もっといいよ、とアリスはそんな顔をしていた。
「いい」
「そっか」
そういうとアリスは私の頭をそっと撫でた。
「魔理沙はちゃんと魔法使いよ」
「違う…まだ、結果が出てないし」
「そうかしら?」
「だって…アリスみたいに人形を扱ったりも出来ないし」
「う~ん、じゃぁ魔理沙にとっての魔法ってなぁに?」
「…」
アリスの問いに言葉が詰まる、私にとっての魔法…
なんだろう。
「心配しなくても皆、魔理沙のこと認めてるわよ」
「そんな…ことない」
「はぁ、いつもの魔理沙はどこに行っちゃったの」
しっかりしなさい、と私の両肩を叩くアリス。
「あなたの魔法って皆を笑顔にすることだと私は思ってる」
にこやかな笑顔を見せてくれた。
「私だって、あなたのおかげでこんなに笑っていられるんだもの」
「アリス…」
「あなたはいつも元気で、笑顔で楽しそうにしてた、私も他の皆もそんなあなたを見て元気をもらってたのよ?」
そう、アリスが楽しそうに話し、私のおでこを人差し指で突く。
「むぅ」
「ほら、そんな変な顔しないの」
膨れてみせると、アリスは私のほっぺを引っ張り出す。
「笑顔笑顔、ね?」
「うん…」
「じゃぁ、私が元気になる魔法をかけてあげる」
そういうとアリスは私の両肩を掴むと、真剣な眼差しを向けてきた。
「目瞑る」
「う、うん」
恐る恐る目を瞑る、自分の鼓動が聞こえてくるようなそんな静けさ。
すると急に唇に何かが触れた。
驚いて目を開けると、アリスの顔が目の前にあった。
アリスも目を開き、私と視線が合うと顔を離した。
「な…な、な!」
「元気出た?」
「あ、ぅ」
心臓がバクバクいってる、思わず一歩後ろへ下がった。
「魔理沙、私とキスするの嫌だった?」
「そ、そんなことない!」
なにやら、悲しげな表情をしだすアリスを見て、焦りまくる私。
「私も…アリスのこと好きだし」
小声でそういうと、アリスはクスクス笑い出した。
「って、何言わせるんだよ!アリス!」
「あはは、私も好きよ魔理沙」
「まったく、あれが元気の出る魔法って」
思わず自分の唇をなぞる。
「魔法ってそんなものよ」
「そうなのか?」
「うん、だからあまり難しく考えないほうが、魔理沙らしくていいんじゃない?」
「私って、どんなイメージになってるんだよ」
アリスがベッドから立ち上がる。
「ほら、外へ出よう」
そういって、私の手を掴み無理やり外へと連れて行かれた。
「ん~、やっぱり外に出てないと駄目ね」
大げさに伸びをし、アリスが振り返る。
「魔理沙って、こんな感じにいつも誰かを連れまわしてる感じだよ?」
「あははは、そっか私ってそんな感じか」
そう言われるとそんな感じがする。
いつもアリスを連れまわしてたっけ…
「あぁあ、なんかすっきりしてきたぜ」
私も一つ伸びをする。
「よし、アリス!これから霊夢のとこ遊びに行こうぜ!」
「うん!」
いつもの帽子を被り、いつもの箒に跨る、後ろにアリスを乗せ空へと飛んだ。
「魔理沙?霊夢にもちゃんと、心配掛けてごめんなさいって謝りなさいよ?」
「あー、分かってる」
やれやれといった感じの態度が背中越しに伝わってくる。
「私さ」
「ん?」
「魔法の研究諦めかけてたけどさ、もっともっと頑張ってアリスに負けないぐらいになってみせるぜ!」
「あら、随分大きく出たわね?」
「目標はでっかいほうがいいしな」
そう言い速度を上げた。
アリスが居てくれればきっと大丈夫。
今はとてもそんな気分だ。
そういうときに、心配してくれるアリスがいるのは幸福なことだろうなと。
魔理沙とアリスの役割が逆転したような感じで、良かったです。
イッヒフンデルトデルシャヴァルツ