【注意事項】
・この作品は捏造設定が無数にあります
・オリキャラが出ます
・東方キャラが死亡します
・流血シーンやグロい表現があります
・救いはありません
・特定のキャラクターが好きな人は不愉快に感じます
・誤字、脱字多数ある…かな?
「こんにちは、美鈴さん」
人里から紅魔館へ長い道のりを歩いてやって来た阿求は、紅魔館の門を預かる妖怪「紅美鈴」に挨拶をした
「こんにちわです、阿求さん遠い所からご苦労様です。今日はどう言ったご用件でしょうか?」
「……はい、今日はパチュリーさんからお借りした本の返却と幻想郷縁起の改訂版のお届けに参りました」
阿求は用件を聞いてくる美鈴の人の良い笑顔に、数瞬見とれて返事が遅れてしまった事に内心苦笑した。
美鈴は、「そうですか。少しお待ちを…」と言って懐から長方形の黒い箱を取り出して、それに来客が来た事
を話しかけていた(紅魔館内に連絡を取る魔法の道具らしい)その間、阿求はその様子を見ながら、幻想郷
縁起に書いた紅美鈴の項目を思い出す。
紅美鈴…紅魔館の門を守護する門番で、紅魔館が幻想郷に来たとき、紅魔館と敵対し門を突破しようとする人妖
を門前にて、全て抹殺し「紅魔館の血に塗られた紅い盾」「真紅のケルベロス」と怖れられた、はずだったん
だけど、今やそんな恐ろしいイメージは微塵も感じられない。非常に温厚で人間臭くて、うっかりすると彼女が
妖怪である事を忘れてしまうほど。危険度は勿論のこと最低ランク(幻想郷縁起から抜粋)
「阿求さん、OKです。咲夜さんが迎えに来ます」
「阿求様、ようこそ紅魔館へ。遠いところからご苦労様です」
美鈴が言い終わると同時に、紅魔館のメイド長が現れた。時間を止めて来たのだろう。
「こにちわです。咲夜さん」
阿求は何度も紅魔館に来ているので、全く動じずに咲夜に挨拶をした。と言うか、初めて咲夜に会った時も動
じなっかた。幻想郷では非常識など当たり前。いちいち驚いていたら身が持たない。幻想郷では常識に囚わ
れてはいけないのである。
因みに、初対面のとき時間を止めて現れた咲夜に対して、全く動じなかった阿求様子に、咲夜は少し凹んだ
そうだ。
「ところで美鈴、あなた居眠りしてなかったでしょうね?」
「しっ…してませんよ!!咲夜さん!!してませんでしたよね?阿求さん!!」
「ええ…してませんでしたよ?」
「……………そうですか、珍しく真面目にやっていたのね…では、図書室の方に御案内します…」
咲夜は何故か、阿求の返答に少し気落ちしながら、紅魔館内部へと案内する。その様子を見送りながら美鈴
は思った
(咲夜さん…阿求さんに突っ込みを求めるのは無茶です)と
「お嬢様、パチュリー様、阿求様をお連れしました」
咲夜は阿求を紅魔館の大図書館に案内すると、図書館の机で何やら話し込んでいる紅い悪魔ことレミリア・ス
カーレットと、動かない大図書館こと、パチュリー・ノーレッジに来客を告げた。
「こんにちわです。レミリアさん、パチュリーさん」
「……こんにちわ、阿求。今日は何のよう?」
パチュリーがレミリアよりも先に返事する。阿求は咲夜が引いてくれた椅子に座ると、先日借りた本の返却と幻
想郷縁起の改訂版のお届け来たと告げた。
「あら?稗田家の当主自身が?そんなの従者にやらせればいいじゃない」
「いえ、家の者は家の事で忙しいので、邪魔してはいけないと思いましたので…それに又、本をお借りしたい
ので…こればかりは自分で選ばないといけませんし」
「フーン、いい心掛けだわねぇ、自分の従者に我侭ばかり言って困らせるどこぞの当主とは大違いだわ。そう
思わない?レミィ?」
そういって、パチュリーはレミリアの方を向いた。レミリアは、ムッとした顔でパチュリーを睨んだ。
「ところで阿求、今日はどうやってココまで来たのだ?人里から紅魔館まで結構な距離が有ると思うのだが?
あっ、ひょっとしてついに空を飛べる様になったとか!?」
「いえいえ、レミリアさん。私は唯の人間ですので飛ぶことは出来ないので歩いて来ました。空を飛ぶことが
出来れば幻想郷をもっと早く見て回る事が出来るのですが…まぁ、日頃座って書き物の仕事をしてますから、
良い運動になります」
「ほうほう、同じ座ってる者でも随分と違うな、そう思わないか?パチェ?」
レミリアはそういってパチュリーの方をニヤケ顔で見る。パチュリーは、咄嗟に本を開いて顔を隠すが不機嫌
になったのは丸分かりだった。
「あっ、あの……えーーと」
「お嬢様、パチュリー様、阿求様、お茶の準備が出来ました」
図書館を重苦しい雰囲気がおおったが、何時の間にか咲夜によって準備された心地よい紅茶の香りと香ば
しいクッキーの香りによって打ち払われた。流石は完全で瀟洒な従者だけの事はある
「それで、稗田の御当主様が、紅魔館に何の用かな?」
暫しの間、紅茶とクッキーで舌鼓を打った後、レミリアがパチュリーと同じ事を聞いた。仕切り直しと言ったと
ころか?
「…先日借りた本の返却と幻想郷縁起の改訂版のお届けに来ました……」
阿求はパチュリーに聞かれたときと同じ返答を返した。
「改訂版?」
「はい、つい最近、妖怪の山に守矢の神社が来ましたのでその事を付け足しました。あと、新しい項目を増や
して見ました」
阿求はそう言って鞄の中から借りていた数冊の本と幻想郷縁起の改訂版を机の上に置いた。
パチュリーは本を受け取ると使い魔の小悪魔を呼びつけ、もとの所に戻すようにと本を手渡す。受け取った小
悪魔は本を元の所に戻すため本棚の向こうへ消えていった。
「あと、よろしければ又、本を何冊かお借りしたいのですが?」
「ええ、良いわよ。阿求は必ず期限内に返却するから、安心して貸せるわ。それに比べ何処かのコソ泥の白
黒鼠と来たら…勝手に図書館に侵入して大量に本を盗って行くし、持って行った本は返さないし何が『借りて
行くだけダゼ、死ぬまでな』よ!それまで本が無事な保障なんて無いし、捨て食や捨て虫なんかされたら…
ゲホゲホゲホ…」
珍しく長文を大声で捲し立てるなと思ってたらやっぱり限界が来て咳き込んだ
「パチェ…またその話か…」
「…ゼー…ハー… だってもう盗まれた本は500冊超えてるのよ?館を守るべき門番はいったい何をしてるの
かしら?食い止める事はおろか、スペカを減らす事すら出来ないじゃない。全く!!いてもいなくても同じだわ
!!」
「パチェ、そう攻める事無いでしょ。美鈴は所詮はただの木っ端妖怪なんだから魔理沙が止められる訳無いじゃ
ない」
「実害を受けてるのは私なんだから何とかしてよ!全く、ここの従者は猫度が低すぎるのよ!」
「あのー…咲夜さん、一体何があったんです?」
客の阿求を置いてきぼりにしてエキサイトし出したレミリアとパチュリーを横目に、阿求は咲夜にたずねた
「何でも、パチュリーが行っている重要な魔法実験の資料を持って行かれたのでましたので、それで相当御
立腹なのです。私としても美鈴にはもっとしっかりしてもらいたいですわ。何度、注意しても御仕置しても居
眠りをして仕舞うのですから。外勤部隊の隊長としての自覚は有るのかしら……」
うわぁーと、阿求は思った。客人を前にして従者の愚痴や文句で盛り上がりますか?門や館を壊されたり汚
したり本を盗まれたりして腹が立つのは分かるけど、何も客人の前で…はぁ……
「レミリアさん、パチュリーさん、もし宜しければ、紅魔館で働くメイドの中で面白い妖精や妖怪が居たら教え
て欲しいのですが?あと、紅魔館周辺の危険地帯とか差し支え無ければ教えてください。今度再び改訂版
を出す事になったら是非載せたいので…いいでしょうか?」
阿求の言葉にレミリアとパチュリーは我に返った。見っとも無い所を見せた自覚が有るらしく顔が少々赤い
「あ…う…、紅魔館で働くメイドの中で面白い妖精や妖怪か…そ、そうだな咲夜そこら辺はどうなんだ?」
「エット、面白いかどうかは分かりませんが、便利な能力を持った妖怪や妖精がいます」
「その能力とは一体どんな………………」
楽しい時間はとても早く過ぎ去るもので、たいした時間喋ってる自覚は無かったのに気が付くと数刻過ぎていっ
たその間に話題も稗田家が持っている蔵書の事や人里の事までに及んだ。特に稗田家が持っている蔵書につ
いてはパチュリーから質問攻め合って少々閉口した。ついでに今度何冊か持ってくる約束もした。
因みに咲夜は仕事の都合上、すでに退席していた。
「すっかり話し込んでしまいましたね」
紅魔館の図書室は地下にあるため外の様子は分からないが大体夕刻ぐらいに成っているだろう。
「レミィ、阿求は空を飛ぶことが出来ないから危ないわ。誰かに送らせた方がいいんじゃなくて?」
「そうね。途中で低級妖怪にでも襲われたら事だし…」
「いえいえ、結構です。護身用に博麗神社の御札や香霖堂で購入した道具とかありますので大丈夫です」
「いや、稗田家の御当主様を護衛もつけずに帰らして『妖怪に襲われて亡くなりました』なんて事になったらこっ
ちが困る。咲夜ーーー!!」
「はい、何で御座いましょうか?お嬢様」
レミリアが咲夜を呼んだ次の瞬間にはもう現れていた。
「咲夜、阿求を人里まで送ってやりたいので、誰かよこしなさい」
「では、美鈴を…」
「美鈴は勤務中でしょ。誰か他の者をよこしなさい」
「畏まりまいた」
と、次の瞬間にはその場から消えていた。能力の無駄遣いだと阿求はそっと思った
程なくして咲夜がメイドを一人連れてきた。羽が無いところを見ると妖怪メイドの様だ
「初めまして阿求様、人里までお送りさして頂きます『カルカ』と言います」
そう言って深々と御辞儀した。阿求もよろしくお願いしますと頭を下げた。
「カルカ、道中粗相の無いように」
レミリアはカルカに注意すると、まだ太陽が出ているので見送りが出来ない非礼を阿求に詫びた。咲夜も仕事が溜ま
っているので見送りが出来ない非礼を阿求に詫びた。
阿求は隣を歩くカルカと言う妖怪メイドを何時もの癖で繁々と観察した。
背は咲夜と同じぐらいで、茶色の髪の毛をショートカットにしていた。眼は釣り上がっていて瞳の色も茶色だ。
顔は丸顔でなかなかの美人さんだ。何となく猫の様な…
「あのー阿求様。何でしょうか?」
「エッ?はいっ、エート、カルカさんは何の妖怪かなーと思って…」
阿求は顔を赤くして慌ててそういった。そして、内心でまた悪い癖が出てしまったと頭を抱える
「…………私は、化け猫の妖怪です」
カルカは苦笑して答えた
「化け猫?猫の妖怪ですか…と言うと、八雲紫の式の式、橙さんの様な猫の妖怪ですか?」
「違います。猫の妖怪には変りませんが橙さんは『猫又』と言う妖怪で私は『化け猫』の妖怪で似て非なるも
のです」
「そうなんですか。違いと言うのは?」
「失礼ですがそこら辺はご自分で御調になられた方が良いかと…伝承によってかなり食い違っていますので…」
「そうですか…それにしても……酷い有様ですね」
阿求は図書室から玄関ホールへ続く廊下の方へ視線を向けた。廊下はあちこち壊れていたり修理中だったり
と酷い有様であった。来た時はそれ程でもなかったのは、咲夜が空間を上手く操って隠していたからだろう。
阿求とカルカには今ごろ「しまった!!」と慌てる咲夜の姿が浮んでいた。
「まぁ、想像は付くでしょうが魔理沙さんが強行突破した跡です。正門同様何度修理してもおっ付きません」
カルカは、ハァと溜息をついた
「魔理沙さんだけじゃありません。博霊の巫女も魔理沙さんと一緒に来た時は同じように紅魔館を荒らして行
くんです。その度に門番長…美鈴様はメイド長からナイフのお仕置き、パチュリー様は本を魔理沙さんに盗ら
れた腹いせにロイヤルフレアを撃込んだり…レミリア様は八雲紫様が能力を使って館内部に進入した責任を
取らしたり…他にも休憩休み無しとか食事抜きとか……美鈴様は散々な目に合ってるんですよ……」
阿求は言葉を失った。あまりにも美鈴に対する処遇が酷すぎて。
「美鈴様は、魔理沙さんや霊夢さんや紫様に『責任を取らされるのは私なんですから止めて下さい』と頭を下
げたのですが『無理』とか『善処するわ』と口先だけでして……」
阿求は頭を抱えたくなったが何とか堪えた。
「あーと…お客様に愚痴を…申し訳ありません。」
カルカは阿求に愚痴をこぼしていた事に気が付いて頭を下げた。阿求は「いえいえ」とにこやかに返した。そし
て、玄関ホールに向かおうとしたとき、窓の外からスペルカードを宣言する声が聞こえてきた
「恋符『マスタースパーク!!』」「霊符『夢想封印!!』」
ズドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンン!!!!
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そして、響き渡る爆発音と悲鳴、考えなくても分かる。魔理沙と霊夢のスペルカードを宣言する声と美鈴の悲
鳴だ
「阿求様!!ここは危険です!!裏口から退避しますのでシッカリと掴まっていて下さい!!」
カルカは驚きのあまり放心状態になっている阿求を抱え上げると、裏口に向かって廊下を全力飛行した。阿
求は抱え上げられた為に我に返りカルカに必死にしがみつく。
裏口に向かって飛行してる間にも背後では、爆発音や悲鳴そして魔理沙と霊夢の物とおぼしき楽しそうな笑
い声が聞こえて来ていた。
カルカは裏口から外に出ると一気に高度を上げて、紅魔館の様子を見る。紅魔館は正門は吹き飛び紅魔館
の敷地内の花壇が一部ではあるが酷く乱れ紅魔館の正面玄関口も崩れていた。さらに、数箇所で火災が発
生、メイド達が消火活動を行うという酷い有様だった。
「このまま人里まで御送り致します…」
「お願いします…」
阿求もカルカもあまりにも酷い状況に言葉が出ず、暫くしてからようやくそれだけを言った。
「本当に今日は有難う御座いました」
人里の入り口に到着した阿求は送ってくれたカルカに、何度も頭を下げて礼を言った
「どうです?送ってくれたお礼に、お茶でも飲んで行きませんか?」
「いえ、今回の襲撃で壊れた館の修理や掃除とかありますから…また今度お願いします」
「そうですか…大変ですね」
カルカは苦笑いをすると、深々と頭を下げると紅魔館に向かって飛んでいった。
それから10日たった日、紅魔館から借りた本を返却のために、阿求は再び紅魔館を訪れていた。10日前の
魔理沙と霊夢の襲撃で壊れた門は直っていた。更に此処から見る限りでは館の修理も終わってるみたいだ
った。
「美鈴さんこんにちわ」
「………エッ?アッ…えと?あ、阿求様でしたか?あのーえーと、そうだ!こんにちわです!!」
美鈴は阿求の挨拶に酷く驚いた様子で挨拶を返してきた
「………………あのー、美鈴さん大丈夫ですか?」
阿求は首をかしげた。確かに美鈴は時折立ったまま居眠りをしている事は知っては居たが、こんな間近まで
近づくまで気が付かないなんて事は無かった。たいてい、少なくとも5メートル以上近づけば必ず気が付いて
いたからだ
「えっ?あー大丈夫ですよ。ちょっと紅魔館の修理で疲れていただけです。ところで阿求様、今日はどう言
った御用ですか?」
「そうですか、無理しないで下さいね。今日は借りた本の返却とパチュリーさんと約束していた稗田家の蔵
書を何冊か持ってきました」
「そうですか、暫しお待ちを」
と、言って前回同様黒い長方形の箱を取り出して館内部へと連絡した。そのあいだ阿求は美鈴の顔を見て
みた。何時も見せている笑顔が無く何だかやつれている。目も少し虚ろのように感じた。
「阿求様、ようこそ紅魔館へ。遠いところからご苦労様です」
美鈴が来客を告げた瞬間にはもう咲夜が来ていて、優雅に挨拶をしていた。
「こんにちわです。咲夜さん。今日は借りた本の返却の他に、パチュリーさんと約束していた稗田家の蔵書を
何冊か持ってきました」
「はい、では図書館にご案内いたします」
「あ、あのー、咲夜さん……」
咲夜が阿求を紅魔館へ案内しようと門を通ろうとしたとき、美鈴が咲夜に遠慮がちに声をかけた。その顔は何
かを必死に訴えていたが、咲夜は無視して阿求を紅魔館に案内した。
「咲夜さん、美鈴さんが何か言いかけていましたけど?」
「気のせいですわ。それよりもパチュリー様が、お待ちしていますので急ぎましょう」
咲夜はそう言うと館の中に阿求を連れて入っていった。
美鈴は咲夜と阿求が館内部に入って行くのを見届けると、大きな溜息をついて持ち場に戻った。そして、両
手でお腹を抑えてもう一度大きな溜息ついた。
(お腹が空いたなーーーー)
美鈴はそう思うと力無く俯いた。美鈴はもう10日間以上食事をしていなかった。
10日前、魔理沙と霊夢両名の襲撃により正門の全壊、紅魔館の庭の一部が吹き飛び館の玄関口が半壊、
魔理沙と霊夢が通った所廊下はメチャクチャになった。火災を消火するために撒いた水で水浸しになるなど
紅魔館の損害は大きかった。しかも魔理沙は一挙に50冊以上の魔道書を持って行くと言う徹底振り。
当時、レミリアはパチュリーの愚痴を散々聞かされて機嫌が悪かった。パチュリーは魔理沙に魔道書をいい
加減返す様に言うがが毎度の如く『返すさ、死んだらな』と返したのとまた新たに魔道書持って行かれた事に
より激怒。咲夜は襲撃で仕事が倍増した
ため激怒。しかも魔理沙と霊夢両名は何も悪びれた様子がなく、さも当然の様に御茶やお茶菓子をたかると
言う始末。それが、
レミリア、パチュリー、咲夜の怒りを倍増、そして何故かその怒りの矛先は美鈴へと向かい、例の如くお仕置
きのスペルカードと当分の間食事抜きの刑を美鈴は食らっていたのである。
理不尽此処に極まる
(はぁ…酷いよなぁー、悪いのは私じゃぁなくて魔理沙さんと霊夢さんなのに…だいたい、レミリア様やパチュ
リー様や咲夜さんですら遅れをとる相手に対して、所詮はただの木っ端妖怪でしかない私に一体どうしろと
言うのかなぁ?理不尽すぎるよ)
美鈴のお腹が派手な音を立てた
(はぁ…何か食べたい。コッペパンでもいいし…、そんなんじゃなくて、せめて野菜ぐらいは挟んで……野菜
サンドとか…いやいや、長い間何も食べてないんだから、肉系がいいよなぁー………………………)
お腹を押さえていた美鈴の手が力なく垂れ下がった。そして目から理性の色が無くなり虚ろになってきた。
(……………肉系…なら…カツサンド…かな…?イア、ステーキ…カかかナ………………………………)
力無く垂れ下がった手の爪が…短く切りそろえた爪が伸びて獣ような爪になった
(………二クが……タベタイ……にくガ…ニクヲタベタイ…二ク…ニクヲ……アノニクヲ……………………)
そして、美鈴の目から理性の色が……消えた
阿求は咲夜に案内されて図書館に入ると、前回と同じようにレミリアとパチュリーがいた。パチュリーが本を
読んでいるのは毎回同じだが今回は、何故かレミリアも本を読んでいた。
「こんにちわです、レミリアさん、パチュリーさん」
「あら、阿求。こんにちわ。遠い所からご苦労様」
「………阿求かこんにちわ。よく来たな」
阿求の挨拶にパチュリーは、本から顔を上げて挨拶したした後も顔を上げたままだったが、レミリアは挨拶が
済むと直ぐに読書に戻ってしまった。何時もとは違う対応に阿求は首を傾げた。そして、咲夜が引いてくれた
椅子に座ると、鞄のから数冊の本を取り出した。
「パチュリーさん、此方が先日お借りした本で、此方が家から持ってきた本です」
「有難う。阿求は必ず返すから安心して貸し出せるわ」
「パチュリーさん、また本を貸して欲しいのですが…家の者が新しいジャンルの料理に挑戦したいとかで、今
回は料理系の本も貸して欲しいのですが、有りますか?」
「あるわよ、後で小悪魔に案内させるから」
「有難う御座います。ところで……レミリアさん一体如何したのですか?読書に熱中してますけど?」
「ああ…あれね。レミィが暇だから何か面白い本は無いか?と言ったから薦めて見たら、スッカリ熱中してしま
ってね。何言ってもアノ調子…誰かさんは構ってもらえなくて寂しく思ってるでしょけど…ねぇ、咲夜?」
何時の間にかお茶の準備を終えていた咲夜は「そんな事有りませんわ」とソッポを向いた。
「もう最後のページみたいだから、もうじき構ってもらえるわよ」
「違います!!」
咲夜はそう力説する。程なくして本を閉じる音がすると同時にレミリアは大きく息をはいていった。
「はぁー、やっぱりズッコケシリーズは面白いわ」
(ズッコケシリーズて、児童書では………)
阿求が心の中でそう突っ込んだとき、図書館のドアが開かれ「失礼します」とメイドが三人入ってきた。二人
は小柄で背中に半透明の羽が生えている事から、妖精メイドでもう一人は…
「カルカさん、こんにちわ。阿求です」
「阿求様!?」
化け猫の妖怪、妖怪メイドのカルカだった。
カルカと妖精メイドは阿求の姿を見たとたん驚いて慌てだした。来客がある事を知らなかったのだろう
「あ、阿求さんこんにちはです。えーと、レミリア様にお話が有って来たのですが、来客中でしたか。申し訳あ
りません。時間を改めてお伺い致します」
カルカと妖精メイドは深々と頭を下げて退室しようとするが、レミリアは「構わないから話せ」と三人を呼び止
めた
「いえ、しかし…来客が有るのに…そのう…」
「私は、かまわないから話せと言ったのだけど?」
レミリアは三人を睨んでそう言った。睨まれた三人は驚いて直立不動の姿勢をとると話し始めた。
「じ、実は門番長の食事の事でお話がありまして…」
「美鈴の食事の事?」
「はい、その門番長は…その、10日ほど前の事で、レミリア様やパチュリー様や咲夜様がご立腹なのは分か
りますが、幾らなんでも……あのその…10日以上も食事抜きと言うのはどうかと…」
「何ですって!!!!!」
カルカが消え言いそうな声で、レミリアに美鈴の食事の事について抗議するのを聞いた阿求は立ち上がって
大声で叫んだ。その大声に驚いた一同は阿求を見る
「カルカさん!!美鈴さんが10日間以上も何も食べてないと言うのは本当ですか?!」
「は、はい、門番長から直に聞きましたので間違いないと思いますが……」
「あのう…私は門番隊の者ですが、10日前の襲撃の4日前にも魔理沙さんの襲撃がありましたんで、正確に
は13日ではないかと…」
カルカと共にやって来た妖精メイドの一人が遠慮がちに言う。
「何て事を!!貴方達は一体何を考えてるんですか!!」
「い、いや…美鈴は妖怪だし…妖怪だから飢えて死ぬような事は…」
レミリアは日頃声を荒げる事の無い阿求が声を張り上げたので酷く狼狽して言った。いや、狼狽しているのは、
レミリアだけでなくパチュリーや咲夜も狼狽した。
「そんな事を言っているのではありません!!10日前、私は幻想郷縁起の改訂版を持ってきましたよね?読
んでなっかたのですか?!それとも、幻想郷縁起自体読んだ事がなったのですか!?」
「あ…た、確かに受け取ったけど…それが…いったい…?」
レミリアは何故、阿求が声を荒げているのか分からない様子だった。パチュリーや咲夜も同じ様子だった。
その態度に業を煮やした阿求が鞄のから幻想郷縁起を取り出すと素早く『紅美鈴』のページを開くと三人に
見せて、ある文章を指差すが、狼狽のあまり頭の回転が鈍った三人には何の事だか分からなかった。
「いいですか!人間だって飢えに苦しめられると、理性がトンでカリバニズムに走ってしまう事が有るんです!
まいしてや、美鈴さんは妖怪なんです!どんなに人間臭くても、どんなに温厚であっても妖怪なんです!!」
三人はようやく阿求が言おうとしてる事を理解したのだろう、三人とも目を見開いて真っ青になった。
「そこの三人!!このクッキーを大至急美鈴のところへ持って行け!!」
レミリアはお茶請けと出されていたクッキーをカルカに渡す。受け取ったカルカ三人は直ぐに走って、紅魔館
の門へと向かった。
「咲夜!!残り物でも何でも良いから直ぐに食べられる物を美鈴に持って行け!!早く!!今すぐに!!」
咲夜は返事すると時間を止めてキッチンに向かった。レミリアとパチュリーそれを見届けると大きな溜息をつ
いた。
「レミィ、私達……美鈴に謝らないと…こんな事、何回もあったし…美鈴は、ずっと一人で衝動を堪えていたん
だわ」
「そうだな…こんな単純な事すら考えられなかったなんて…私は…主失格だ…」
二人は俯いてそう呟いた。
暫くして、其処へ咲夜が現れて、今、二人にとって聞きたくない言葉を言った
「お嬢様…美鈴がいません…」
「美鈴がいない?!そんな筈は無いでしょう!!この時間美鈴は門番として門の所に居る筈でしょう!!」
「美鈴が門の所に居なかったので、館の中は時間を止めて探して見たんです!ですが…何処にも居ないん
です…」
「本当に探したのか?ちゃんと館の隅々まで探したのか!!」
咲夜はくまなく探した事をレミリアに告げた。そこへ、カルカと妖精メイドが戻ってきた
「レミリア様、咲夜様、門周辺を探したのですが門場長は居ませんでした。館内部に居るのではないでしょう
か?」
「館内部は、咲夜が時間を止めて探してくれたそうだ…」
「考えたくないけど…もしかして、人里に……?」
パチュリーの言葉に全員が沈黙する。今、此処では最も考えたくない選択肢だから。
「余計な詮索は後にして、取り合えず人里に行きましょう…」
暫しの沈黙の後、パチュリーの言葉に頷いて人里を目指す事にした。
阿求、レミリア、パチュリー、咲夜、カルカは大急ぎで人里へと向かった。阿求はカルカは空を飛べない阿求
を抱きかかえて飛行していた。
全員の顔色は悪い。考えまいと何度もするが如何しても最悪の光景ばかりが浮かんでしまうから
「レミリアさん、貴方の『運命を操る程度の能力』で何とかなりませんか?」
阿求がレミリアに提案するがレミリアは首を振った
「残念ながらその能力は万能ではなくて…如何しても能力にムラがあって、上手く変えられる時とそうでない
ときがあって…特に今は昼間だから魔力が…」
レミリアは悔しそうに俯いた。阿求は咲夜の方を向くと咲夜も俯いて言った。
「私の能力も何時でも長時間、時間を止める事は出来ないんです。先ほど紅魔館で美鈴を探すために長時間
止めたばかりですから…」
「私の調べだと、皆さんは今回だけではなく、他にも美鈴さんに色々と酷い事してますよね?何故そのような
事を?」
「……多分…その…紅魔館の連中て感情に乏しいから、感情豊かで反応が派手な美鈴が面白いから…その
…つい、おもちゃみたいに…それで…色々とやっている内にエスカレート…したんだと思う……美鈴の反応も
面白かったし……」
パチュリーは力なく言う。
「誰か止める様に言う人は居なかったんですか?」
阿求が尋ねるが全員首を振った。阿求は怒りを取り越して呆れてしまった。
阿求たちが到着したとき、人里は騒然としていた。
怒号と悲鳴が飛びかい、人々は右往左往し混乱のきわみの状態になっていて、何人かの怪我人が運ばれ
て傷の手当てを受けていて、その中にはあ大怪我で血濡れの『上白沢慧音』までもが其処に居た。混乱の
せいだろうか?阿求達が、人里に来たにも関わらず気が付いていない様子だ。
レミリア、パチュリー、咲夜、カルカは完全に血の気が引き蒼白になっていた。今の状況が理解出来ないの
だろう。いや、理解したくないと言ったところか?何故って考える限り最悪の状況しか思い浮かばなかったか
らだ。
しかし、突っ立て居てもどうにも成らないので覚悟を決めて、阿求たちは騒動の中心へと向かって行った。
この騒動の中心と言っていいのか分からないが、とにかく其処に行くと博麗霊夢と東風谷早苗がいた。
かなり激しい戦闘だったのだろう、二人ともあちこち傷だらけだった
特に、早苗は白い服を着ているので血の色が際立って惨く見えた。そして、2人とも一応に悲痛な顔で地面
に倒れている何かを見つめていた。
レミリア、パチュリー、咲夜、カルカ、そして阿求は地面に倒れている何かを見た。その何かは左腕が付け根
から無くなり、体のあちこちに切り傷があり、何箇所か大きく抉られその特徴ある衣類は血や泥で汚れ、ズタ
ズタになり襤褸頭巾のように成り果てていた。そして、その何かの頭は胴体から切断されて転がっていた。
地面に転がる頭は自分達がよく知る妖怪の特徴を持っていた。考えるまでも無く、間違いない筈なのに直ぐ
には認識出来なかった。
何故か?信じたくはなったから。目の前に横たわる何かが『紅美鈴』の死体だなんて考えたく無かったから!!
「レミリアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
霊夢がレミリアに気が付いたのだろう。憤怒の絶叫を張り上げてレミリアに掴みかかった。
「レミリア!!貴方いったい如何言うつもりで彼女に!美鈴に人里を襲わせた!!美鈴が!彼女が人を襲
うなんて絶対に自分からするわけない!!何で美鈴に人里を襲わせた!!しかも人を襲って食べたのよ!?
二人も!!何でこんな事をさせたの!?」
其処へ早苗が近づいてきた。彼女は顔に大きな痣があり割れた額からの出血で、顔の左半面が血塗れに
なっていた。
「それだけではありません!!他にも8人も殺害されたんですよ!8人も!!他にも重軽傷者が沢山出ました
!慧音さんは美鈴さんを止めようとして大怪我をされました!!あの優しい妖怪の代表格の方がが自分から
こんな事をする筈がありません!貴方が命じたんでしょう!!何故です!?黙ってないで何とか言ったらどう
ですか!!レミリア・スカーレット!!」
「わ…わたし…が…めいりんを………追詰めて…こん…こんな事に……もっと……もっと…気を配っていれ
ば…もっと…優しく…していたら…こんな事には……美鈴……ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさ
い…………」
レミリアは泣きながらひたすら謝罪の言葉を続けた。
「お嬢様!!お嬢様の責任ではありません!全ての責任はこの私に……………私が……めい…りんを苦し
めて……ご…ごめんなさい……美鈴…ごめんなさい……ごめんなさい…」
咲夜は俯き泣きながら謝罪の言葉を続けた。完全も瀟洒も捨てて…
パチュリーは、美鈴の頭を抱えて座り込み、美鈴にひたすらごめんなさいと謝罪の言葉を続けていた。
カルカは美鈴が人を襲った事、その結果、博麗霊夢と東風谷早苗に討たれたことを認めたくなくて現実逃避
していた。
阿求はその様子を見ながら幻想郷縁起を鞄から取り出して、紅美鈴のページを開いてある文章をに目をやっ
た。其処にはこう書かれていた
『美鈴は妖怪ではあるが、紅魔館から十分に食料を支給されるためか、全くと言っていいほど怖くない妖怪で
ある』と
・この作品は捏造設定が無数にあります
・オリキャラが出ます
・東方キャラが死亡します
・流血シーンやグロい表現があります
・救いはありません
・特定のキャラクターが好きな人は不愉快に感じます
・誤字、脱字多数ある…かな?
「こんにちは、美鈴さん」
人里から紅魔館へ長い道のりを歩いてやって来た阿求は、紅魔館の門を預かる妖怪「紅美鈴」に挨拶をした
「こんにちわです、阿求さん遠い所からご苦労様です。今日はどう言ったご用件でしょうか?」
「……はい、今日はパチュリーさんからお借りした本の返却と幻想郷縁起の改訂版のお届けに参りました」
阿求は用件を聞いてくる美鈴の人の良い笑顔に、数瞬見とれて返事が遅れてしまった事に内心苦笑した。
美鈴は、「そうですか。少しお待ちを…」と言って懐から長方形の黒い箱を取り出して、それに来客が来た事
を話しかけていた(紅魔館内に連絡を取る魔法の道具らしい)その間、阿求はその様子を見ながら、幻想郷
縁起に書いた紅美鈴の項目を思い出す。
紅美鈴…紅魔館の門を守護する門番で、紅魔館が幻想郷に来たとき、紅魔館と敵対し門を突破しようとする人妖
を門前にて、全て抹殺し「紅魔館の血に塗られた紅い盾」「真紅のケルベロス」と怖れられた、はずだったん
だけど、今やそんな恐ろしいイメージは微塵も感じられない。非常に温厚で人間臭くて、うっかりすると彼女が
妖怪である事を忘れてしまうほど。危険度は勿論のこと最低ランク(幻想郷縁起から抜粋)
「阿求さん、OKです。咲夜さんが迎えに来ます」
「阿求様、ようこそ紅魔館へ。遠いところからご苦労様です」
美鈴が言い終わると同時に、紅魔館のメイド長が現れた。時間を止めて来たのだろう。
「こにちわです。咲夜さん」
阿求は何度も紅魔館に来ているので、全く動じずに咲夜に挨拶をした。と言うか、初めて咲夜に会った時も動
じなっかた。幻想郷では非常識など当たり前。いちいち驚いていたら身が持たない。幻想郷では常識に囚わ
れてはいけないのである。
因みに、初対面のとき時間を止めて現れた咲夜に対して、全く動じなかった阿求様子に、咲夜は少し凹んだ
そうだ。
「ところで美鈴、あなた居眠りしてなかったでしょうね?」
「しっ…してませんよ!!咲夜さん!!してませんでしたよね?阿求さん!!」
「ええ…してませんでしたよ?」
「……………そうですか、珍しく真面目にやっていたのね…では、図書室の方に御案内します…」
咲夜は何故か、阿求の返答に少し気落ちしながら、紅魔館内部へと案内する。その様子を見送りながら美鈴
は思った
(咲夜さん…阿求さんに突っ込みを求めるのは無茶です)と
「お嬢様、パチュリー様、阿求様をお連れしました」
咲夜は阿求を紅魔館の大図書館に案内すると、図書館の机で何やら話し込んでいる紅い悪魔ことレミリア・ス
カーレットと、動かない大図書館こと、パチュリー・ノーレッジに来客を告げた。
「こんにちわです。レミリアさん、パチュリーさん」
「……こんにちわ、阿求。今日は何のよう?」
パチュリーがレミリアよりも先に返事する。阿求は咲夜が引いてくれた椅子に座ると、先日借りた本の返却と幻
想郷縁起の改訂版のお届け来たと告げた。
「あら?稗田家の当主自身が?そんなの従者にやらせればいいじゃない」
「いえ、家の者は家の事で忙しいので、邪魔してはいけないと思いましたので…それに又、本をお借りしたい
ので…こればかりは自分で選ばないといけませんし」
「フーン、いい心掛けだわねぇ、自分の従者に我侭ばかり言って困らせるどこぞの当主とは大違いだわ。そう
思わない?レミィ?」
そういって、パチュリーはレミリアの方を向いた。レミリアは、ムッとした顔でパチュリーを睨んだ。
「ところで阿求、今日はどうやってココまで来たのだ?人里から紅魔館まで結構な距離が有ると思うのだが?
あっ、ひょっとしてついに空を飛べる様になったとか!?」
「いえいえ、レミリアさん。私は唯の人間ですので飛ぶことは出来ないので歩いて来ました。空を飛ぶことが
出来れば幻想郷をもっと早く見て回る事が出来るのですが…まぁ、日頃座って書き物の仕事をしてますから、
良い運動になります」
「ほうほう、同じ座ってる者でも随分と違うな、そう思わないか?パチェ?」
レミリアはそういってパチュリーの方をニヤケ顔で見る。パチュリーは、咄嗟に本を開いて顔を隠すが不機嫌
になったのは丸分かりだった。
「あっ、あの……えーーと」
「お嬢様、パチュリー様、阿求様、お茶の準備が出来ました」
図書館を重苦しい雰囲気がおおったが、何時の間にか咲夜によって準備された心地よい紅茶の香りと香ば
しいクッキーの香りによって打ち払われた。流石は完全で瀟洒な従者だけの事はある
「それで、稗田の御当主様が、紅魔館に何の用かな?」
暫しの間、紅茶とクッキーで舌鼓を打った後、レミリアがパチュリーと同じ事を聞いた。仕切り直しと言ったと
ころか?
「…先日借りた本の返却と幻想郷縁起の改訂版のお届けに来ました……」
阿求はパチュリーに聞かれたときと同じ返答を返した。
「改訂版?」
「はい、つい最近、妖怪の山に守矢の神社が来ましたのでその事を付け足しました。あと、新しい項目を増や
して見ました」
阿求はそう言って鞄の中から借りていた数冊の本と幻想郷縁起の改訂版を机の上に置いた。
パチュリーは本を受け取ると使い魔の小悪魔を呼びつけ、もとの所に戻すようにと本を手渡す。受け取った小
悪魔は本を元の所に戻すため本棚の向こうへ消えていった。
「あと、よろしければ又、本を何冊かお借りしたいのですが?」
「ええ、良いわよ。阿求は必ず期限内に返却するから、安心して貸せるわ。それに比べ何処かのコソ泥の白
黒鼠と来たら…勝手に図書館に侵入して大量に本を盗って行くし、持って行った本は返さないし何が『借りて
行くだけダゼ、死ぬまでな』よ!それまで本が無事な保障なんて無いし、捨て食や捨て虫なんかされたら…
ゲホゲホゲホ…」
珍しく長文を大声で捲し立てるなと思ってたらやっぱり限界が来て咳き込んだ
「パチェ…またその話か…」
「…ゼー…ハー… だってもう盗まれた本は500冊超えてるのよ?館を守るべき門番はいったい何をしてるの
かしら?食い止める事はおろか、スペカを減らす事すら出来ないじゃない。全く!!いてもいなくても同じだわ
!!」
「パチェ、そう攻める事無いでしょ。美鈴は所詮はただの木っ端妖怪なんだから魔理沙が止められる訳無いじゃ
ない」
「実害を受けてるのは私なんだから何とかしてよ!全く、ここの従者は猫度が低すぎるのよ!」
「あのー…咲夜さん、一体何があったんです?」
客の阿求を置いてきぼりにしてエキサイトし出したレミリアとパチュリーを横目に、阿求は咲夜にたずねた
「何でも、パチュリーが行っている重要な魔法実験の資料を持って行かれたのでましたので、それで相当御
立腹なのです。私としても美鈴にはもっとしっかりしてもらいたいですわ。何度、注意しても御仕置しても居
眠りをして仕舞うのですから。外勤部隊の隊長としての自覚は有るのかしら……」
うわぁーと、阿求は思った。客人を前にして従者の愚痴や文句で盛り上がりますか?門や館を壊されたり汚
したり本を盗まれたりして腹が立つのは分かるけど、何も客人の前で…はぁ……
「レミリアさん、パチュリーさん、もし宜しければ、紅魔館で働くメイドの中で面白い妖精や妖怪が居たら教え
て欲しいのですが?あと、紅魔館周辺の危険地帯とか差し支え無ければ教えてください。今度再び改訂版
を出す事になったら是非載せたいので…いいでしょうか?」
阿求の言葉にレミリアとパチュリーは我に返った。見っとも無い所を見せた自覚が有るらしく顔が少々赤い
「あ…う…、紅魔館で働くメイドの中で面白い妖精や妖怪か…そ、そうだな咲夜そこら辺はどうなんだ?」
「エット、面白いかどうかは分かりませんが、便利な能力を持った妖怪や妖精がいます」
「その能力とは一体どんな………………」
楽しい時間はとても早く過ぎ去るもので、たいした時間喋ってる自覚は無かったのに気が付くと数刻過ぎていっ
たその間に話題も稗田家が持っている蔵書の事や人里の事までに及んだ。特に稗田家が持っている蔵書につ
いてはパチュリーから質問攻め合って少々閉口した。ついでに今度何冊か持ってくる約束もした。
因みに咲夜は仕事の都合上、すでに退席していた。
「すっかり話し込んでしまいましたね」
紅魔館の図書室は地下にあるため外の様子は分からないが大体夕刻ぐらいに成っているだろう。
「レミィ、阿求は空を飛ぶことが出来ないから危ないわ。誰かに送らせた方がいいんじゃなくて?」
「そうね。途中で低級妖怪にでも襲われたら事だし…」
「いえいえ、結構です。護身用に博麗神社の御札や香霖堂で購入した道具とかありますので大丈夫です」
「いや、稗田家の御当主様を護衛もつけずに帰らして『妖怪に襲われて亡くなりました』なんて事になったらこっ
ちが困る。咲夜ーーー!!」
「はい、何で御座いましょうか?お嬢様」
レミリアが咲夜を呼んだ次の瞬間にはもう現れていた。
「咲夜、阿求を人里まで送ってやりたいので、誰かよこしなさい」
「では、美鈴を…」
「美鈴は勤務中でしょ。誰か他の者をよこしなさい」
「畏まりまいた」
と、次の瞬間にはその場から消えていた。能力の無駄遣いだと阿求はそっと思った
程なくして咲夜がメイドを一人連れてきた。羽が無いところを見ると妖怪メイドの様だ
「初めまして阿求様、人里までお送りさして頂きます『カルカ』と言います」
そう言って深々と御辞儀した。阿求もよろしくお願いしますと頭を下げた。
「カルカ、道中粗相の無いように」
レミリアはカルカに注意すると、まだ太陽が出ているので見送りが出来ない非礼を阿求に詫びた。咲夜も仕事が溜ま
っているので見送りが出来ない非礼を阿求に詫びた。
阿求は隣を歩くカルカと言う妖怪メイドを何時もの癖で繁々と観察した。
背は咲夜と同じぐらいで、茶色の髪の毛をショートカットにしていた。眼は釣り上がっていて瞳の色も茶色だ。
顔は丸顔でなかなかの美人さんだ。何となく猫の様な…
「あのー阿求様。何でしょうか?」
「エッ?はいっ、エート、カルカさんは何の妖怪かなーと思って…」
阿求は顔を赤くして慌ててそういった。そして、内心でまた悪い癖が出てしまったと頭を抱える
「…………私は、化け猫の妖怪です」
カルカは苦笑して答えた
「化け猫?猫の妖怪ですか…と言うと、八雲紫の式の式、橙さんの様な猫の妖怪ですか?」
「違います。猫の妖怪には変りませんが橙さんは『猫又』と言う妖怪で私は『化け猫』の妖怪で似て非なるも
のです」
「そうなんですか。違いと言うのは?」
「失礼ですがそこら辺はご自分で御調になられた方が良いかと…伝承によってかなり食い違っていますので…」
「そうですか…それにしても……酷い有様ですね」
阿求は図書室から玄関ホールへ続く廊下の方へ視線を向けた。廊下はあちこち壊れていたり修理中だったり
と酷い有様であった。来た時はそれ程でもなかったのは、咲夜が空間を上手く操って隠していたからだろう。
阿求とカルカには今ごろ「しまった!!」と慌てる咲夜の姿が浮んでいた。
「まぁ、想像は付くでしょうが魔理沙さんが強行突破した跡です。正門同様何度修理してもおっ付きません」
カルカは、ハァと溜息をついた
「魔理沙さんだけじゃありません。博霊の巫女も魔理沙さんと一緒に来た時は同じように紅魔館を荒らして行
くんです。その度に門番長…美鈴様はメイド長からナイフのお仕置き、パチュリー様は本を魔理沙さんに盗ら
れた腹いせにロイヤルフレアを撃込んだり…レミリア様は八雲紫様が能力を使って館内部に進入した責任を
取らしたり…他にも休憩休み無しとか食事抜きとか……美鈴様は散々な目に合ってるんですよ……」
阿求は言葉を失った。あまりにも美鈴に対する処遇が酷すぎて。
「美鈴様は、魔理沙さんや霊夢さんや紫様に『責任を取らされるのは私なんですから止めて下さい』と頭を下
げたのですが『無理』とか『善処するわ』と口先だけでして……」
阿求は頭を抱えたくなったが何とか堪えた。
「あーと…お客様に愚痴を…申し訳ありません。」
カルカは阿求に愚痴をこぼしていた事に気が付いて頭を下げた。阿求は「いえいえ」とにこやかに返した。そし
て、玄関ホールに向かおうとしたとき、窓の外からスペルカードを宣言する声が聞こえてきた
「恋符『マスタースパーク!!』」「霊符『夢想封印!!』」
ズドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンン!!!!
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そして、響き渡る爆発音と悲鳴、考えなくても分かる。魔理沙と霊夢のスペルカードを宣言する声と美鈴の悲
鳴だ
「阿求様!!ここは危険です!!裏口から退避しますのでシッカリと掴まっていて下さい!!」
カルカは驚きのあまり放心状態になっている阿求を抱え上げると、裏口に向かって廊下を全力飛行した。阿
求は抱え上げられた為に我に返りカルカに必死にしがみつく。
裏口に向かって飛行してる間にも背後では、爆発音や悲鳴そして魔理沙と霊夢の物とおぼしき楽しそうな笑
い声が聞こえて来ていた。
カルカは裏口から外に出ると一気に高度を上げて、紅魔館の様子を見る。紅魔館は正門は吹き飛び紅魔館
の敷地内の花壇が一部ではあるが酷く乱れ紅魔館の正面玄関口も崩れていた。さらに、数箇所で火災が発
生、メイド達が消火活動を行うという酷い有様だった。
「このまま人里まで御送り致します…」
「お願いします…」
阿求もカルカもあまりにも酷い状況に言葉が出ず、暫くしてからようやくそれだけを言った。
「本当に今日は有難う御座いました」
人里の入り口に到着した阿求は送ってくれたカルカに、何度も頭を下げて礼を言った
「どうです?送ってくれたお礼に、お茶でも飲んで行きませんか?」
「いえ、今回の襲撃で壊れた館の修理や掃除とかありますから…また今度お願いします」
「そうですか…大変ですね」
カルカは苦笑いをすると、深々と頭を下げると紅魔館に向かって飛んでいった。
それから10日たった日、紅魔館から借りた本を返却のために、阿求は再び紅魔館を訪れていた。10日前の
魔理沙と霊夢の襲撃で壊れた門は直っていた。更に此処から見る限りでは館の修理も終わってるみたいだ
った。
「美鈴さんこんにちわ」
「………エッ?アッ…えと?あ、阿求様でしたか?あのーえーと、そうだ!こんにちわです!!」
美鈴は阿求の挨拶に酷く驚いた様子で挨拶を返してきた
「………………あのー、美鈴さん大丈夫ですか?」
阿求は首をかしげた。確かに美鈴は時折立ったまま居眠りをしている事は知っては居たが、こんな間近まで
近づくまで気が付かないなんて事は無かった。たいてい、少なくとも5メートル以上近づけば必ず気が付いて
いたからだ
「えっ?あー大丈夫ですよ。ちょっと紅魔館の修理で疲れていただけです。ところで阿求様、今日はどう言
った御用ですか?」
「そうですか、無理しないで下さいね。今日は借りた本の返却とパチュリーさんと約束していた稗田家の蔵
書を何冊か持ってきました」
「そうですか、暫しお待ちを」
と、言って前回同様黒い長方形の箱を取り出して館内部へと連絡した。そのあいだ阿求は美鈴の顔を見て
みた。何時も見せている笑顔が無く何だかやつれている。目も少し虚ろのように感じた。
「阿求様、ようこそ紅魔館へ。遠いところからご苦労様です」
美鈴が来客を告げた瞬間にはもう咲夜が来ていて、優雅に挨拶をしていた。
「こんにちわです。咲夜さん。今日は借りた本の返却の他に、パチュリーさんと約束していた稗田家の蔵書を
何冊か持ってきました」
「はい、では図書館にご案内いたします」
「あ、あのー、咲夜さん……」
咲夜が阿求を紅魔館へ案内しようと門を通ろうとしたとき、美鈴が咲夜に遠慮がちに声をかけた。その顔は何
かを必死に訴えていたが、咲夜は無視して阿求を紅魔館に案内した。
「咲夜さん、美鈴さんが何か言いかけていましたけど?」
「気のせいですわ。それよりもパチュリー様が、お待ちしていますので急ぎましょう」
咲夜はそう言うと館の中に阿求を連れて入っていった。
美鈴は咲夜と阿求が館内部に入って行くのを見届けると、大きな溜息をついて持ち場に戻った。そして、両
手でお腹を抑えてもう一度大きな溜息ついた。
(お腹が空いたなーーーー)
美鈴はそう思うと力無く俯いた。美鈴はもう10日間以上食事をしていなかった。
10日前、魔理沙と霊夢両名の襲撃により正門の全壊、紅魔館の庭の一部が吹き飛び館の玄関口が半壊、
魔理沙と霊夢が通った所廊下はメチャクチャになった。火災を消火するために撒いた水で水浸しになるなど
紅魔館の損害は大きかった。しかも魔理沙は一挙に50冊以上の魔道書を持って行くと言う徹底振り。
当時、レミリアはパチュリーの愚痴を散々聞かされて機嫌が悪かった。パチュリーは魔理沙に魔道書をいい
加減返す様に言うがが毎度の如く『返すさ、死んだらな』と返したのとまた新たに魔道書持って行かれた事に
より激怒。咲夜は襲撃で仕事が倍増した
ため激怒。しかも魔理沙と霊夢両名は何も悪びれた様子がなく、さも当然の様に御茶やお茶菓子をたかると
言う始末。それが、
レミリア、パチュリー、咲夜の怒りを倍増、そして何故かその怒りの矛先は美鈴へと向かい、例の如くお仕置
きのスペルカードと当分の間食事抜きの刑を美鈴は食らっていたのである。
理不尽此処に極まる
(はぁ…酷いよなぁー、悪いのは私じゃぁなくて魔理沙さんと霊夢さんなのに…だいたい、レミリア様やパチュ
リー様や咲夜さんですら遅れをとる相手に対して、所詮はただの木っ端妖怪でしかない私に一体どうしろと
言うのかなぁ?理不尽すぎるよ)
美鈴のお腹が派手な音を立てた
(はぁ…何か食べたい。コッペパンでもいいし…、そんなんじゃなくて、せめて野菜ぐらいは挟んで……野菜
サンドとか…いやいや、長い間何も食べてないんだから、肉系がいいよなぁー………………………)
お腹を押さえていた美鈴の手が力なく垂れ下がった。そして目から理性の色が無くなり虚ろになってきた。
(……………肉系…なら…カツサンド…かな…?イア、ステーキ…カかかナ………………………………)
力無く垂れ下がった手の爪が…短く切りそろえた爪が伸びて獣ような爪になった
(………二クが……タベタイ……にくガ…ニクヲタベタイ…二ク…ニクヲ……アノニクヲ……………………)
そして、美鈴の目から理性の色が……消えた
阿求は咲夜に案内されて図書館に入ると、前回と同じようにレミリアとパチュリーがいた。パチュリーが本を
読んでいるのは毎回同じだが今回は、何故かレミリアも本を読んでいた。
「こんにちわです、レミリアさん、パチュリーさん」
「あら、阿求。こんにちわ。遠い所からご苦労様」
「………阿求かこんにちわ。よく来たな」
阿求の挨拶にパチュリーは、本から顔を上げて挨拶したした後も顔を上げたままだったが、レミリアは挨拶が
済むと直ぐに読書に戻ってしまった。何時もとは違う対応に阿求は首を傾げた。そして、咲夜が引いてくれた
椅子に座ると、鞄のから数冊の本を取り出した。
「パチュリーさん、此方が先日お借りした本で、此方が家から持ってきた本です」
「有難う。阿求は必ず返すから安心して貸し出せるわ」
「パチュリーさん、また本を貸して欲しいのですが…家の者が新しいジャンルの料理に挑戦したいとかで、今
回は料理系の本も貸して欲しいのですが、有りますか?」
「あるわよ、後で小悪魔に案内させるから」
「有難う御座います。ところで……レミリアさん一体如何したのですか?読書に熱中してますけど?」
「ああ…あれね。レミィが暇だから何か面白い本は無いか?と言ったから薦めて見たら、スッカリ熱中してしま
ってね。何言ってもアノ調子…誰かさんは構ってもらえなくて寂しく思ってるでしょけど…ねぇ、咲夜?」
何時の間にかお茶の準備を終えていた咲夜は「そんな事有りませんわ」とソッポを向いた。
「もう最後のページみたいだから、もうじき構ってもらえるわよ」
「違います!!」
咲夜はそう力説する。程なくして本を閉じる音がすると同時にレミリアは大きく息をはいていった。
「はぁー、やっぱりズッコケシリーズは面白いわ」
(ズッコケシリーズて、児童書では………)
阿求が心の中でそう突っ込んだとき、図書館のドアが開かれ「失礼します」とメイドが三人入ってきた。二人
は小柄で背中に半透明の羽が生えている事から、妖精メイドでもう一人は…
「カルカさん、こんにちわ。阿求です」
「阿求様!?」
化け猫の妖怪、妖怪メイドのカルカだった。
カルカと妖精メイドは阿求の姿を見たとたん驚いて慌てだした。来客がある事を知らなかったのだろう
「あ、阿求さんこんにちはです。えーと、レミリア様にお話が有って来たのですが、来客中でしたか。申し訳あ
りません。時間を改めてお伺い致します」
カルカと妖精メイドは深々と頭を下げて退室しようとするが、レミリアは「構わないから話せ」と三人を呼び止
めた
「いえ、しかし…来客が有るのに…そのう…」
「私は、かまわないから話せと言ったのだけど?」
レミリアは三人を睨んでそう言った。睨まれた三人は驚いて直立不動の姿勢をとると話し始めた。
「じ、実は門番長の食事の事でお話がありまして…」
「美鈴の食事の事?」
「はい、その門番長は…その、10日ほど前の事で、レミリア様やパチュリー様や咲夜様がご立腹なのは分か
りますが、幾らなんでも……あのその…10日以上も食事抜きと言うのはどうかと…」
「何ですって!!!!!」
カルカが消え言いそうな声で、レミリアに美鈴の食事の事について抗議するのを聞いた阿求は立ち上がって
大声で叫んだ。その大声に驚いた一同は阿求を見る
「カルカさん!!美鈴さんが10日間以上も何も食べてないと言うのは本当ですか?!」
「は、はい、門番長から直に聞きましたので間違いないと思いますが……」
「あのう…私は門番隊の者ですが、10日前の襲撃の4日前にも魔理沙さんの襲撃がありましたんで、正確に
は13日ではないかと…」
カルカと共にやって来た妖精メイドの一人が遠慮がちに言う。
「何て事を!!貴方達は一体何を考えてるんですか!!」
「い、いや…美鈴は妖怪だし…妖怪だから飢えて死ぬような事は…」
レミリアは日頃声を荒げる事の無い阿求が声を張り上げたので酷く狼狽して言った。いや、狼狽しているのは、
レミリアだけでなくパチュリーや咲夜も狼狽した。
「そんな事を言っているのではありません!!10日前、私は幻想郷縁起の改訂版を持ってきましたよね?読
んでなっかたのですか?!それとも、幻想郷縁起自体読んだ事がなったのですか!?」
「あ…た、確かに受け取ったけど…それが…いったい…?」
レミリアは何故、阿求が声を荒げているのか分からない様子だった。パチュリーや咲夜も同じ様子だった。
その態度に業を煮やした阿求が鞄のから幻想郷縁起を取り出すと素早く『紅美鈴』のページを開くと三人に
見せて、ある文章を指差すが、狼狽のあまり頭の回転が鈍った三人には何の事だか分からなかった。
「いいですか!人間だって飢えに苦しめられると、理性がトンでカリバニズムに走ってしまう事が有るんです!
まいしてや、美鈴さんは妖怪なんです!どんなに人間臭くても、どんなに温厚であっても妖怪なんです!!」
三人はようやく阿求が言おうとしてる事を理解したのだろう、三人とも目を見開いて真っ青になった。
「そこの三人!!このクッキーを大至急美鈴のところへ持って行け!!」
レミリアはお茶請けと出されていたクッキーをカルカに渡す。受け取ったカルカ三人は直ぐに走って、紅魔館
の門へと向かった。
「咲夜!!残り物でも何でも良いから直ぐに食べられる物を美鈴に持って行け!!早く!!今すぐに!!」
咲夜は返事すると時間を止めてキッチンに向かった。レミリアとパチュリーそれを見届けると大きな溜息をつ
いた。
「レミィ、私達……美鈴に謝らないと…こんな事、何回もあったし…美鈴は、ずっと一人で衝動を堪えていたん
だわ」
「そうだな…こんな単純な事すら考えられなかったなんて…私は…主失格だ…」
二人は俯いてそう呟いた。
暫くして、其処へ咲夜が現れて、今、二人にとって聞きたくない言葉を言った
「お嬢様…美鈴がいません…」
「美鈴がいない?!そんな筈は無いでしょう!!この時間美鈴は門番として門の所に居る筈でしょう!!」
「美鈴が門の所に居なかったので、館の中は時間を止めて探して見たんです!ですが…何処にも居ないん
です…」
「本当に探したのか?ちゃんと館の隅々まで探したのか!!」
咲夜はくまなく探した事をレミリアに告げた。そこへ、カルカと妖精メイドが戻ってきた
「レミリア様、咲夜様、門周辺を探したのですが門場長は居ませんでした。館内部に居るのではないでしょう
か?」
「館内部は、咲夜が時間を止めて探してくれたそうだ…」
「考えたくないけど…もしかして、人里に……?」
パチュリーの言葉に全員が沈黙する。今、此処では最も考えたくない選択肢だから。
「余計な詮索は後にして、取り合えず人里に行きましょう…」
暫しの沈黙の後、パチュリーの言葉に頷いて人里を目指す事にした。
阿求、レミリア、パチュリー、咲夜、カルカは大急ぎで人里へと向かった。阿求はカルカは空を飛べない阿求
を抱きかかえて飛行していた。
全員の顔色は悪い。考えまいと何度もするが如何しても最悪の光景ばかりが浮かんでしまうから
「レミリアさん、貴方の『運命を操る程度の能力』で何とかなりませんか?」
阿求がレミリアに提案するがレミリアは首を振った
「残念ながらその能力は万能ではなくて…如何しても能力にムラがあって、上手く変えられる時とそうでない
ときがあって…特に今は昼間だから魔力が…」
レミリアは悔しそうに俯いた。阿求は咲夜の方を向くと咲夜も俯いて言った。
「私の能力も何時でも長時間、時間を止める事は出来ないんです。先ほど紅魔館で美鈴を探すために長時間
止めたばかりですから…」
「私の調べだと、皆さんは今回だけではなく、他にも美鈴さんに色々と酷い事してますよね?何故そのような
事を?」
「……多分…その…紅魔館の連中て感情に乏しいから、感情豊かで反応が派手な美鈴が面白いから…その
…つい、おもちゃみたいに…それで…色々とやっている内にエスカレート…したんだと思う……美鈴の反応も
面白かったし……」
パチュリーは力なく言う。
「誰か止める様に言う人は居なかったんですか?」
阿求が尋ねるが全員首を振った。阿求は怒りを取り越して呆れてしまった。
阿求たちが到着したとき、人里は騒然としていた。
怒号と悲鳴が飛びかい、人々は右往左往し混乱のきわみの状態になっていて、何人かの怪我人が運ばれ
て傷の手当てを受けていて、その中にはあ大怪我で血濡れの『上白沢慧音』までもが其処に居た。混乱の
せいだろうか?阿求達が、人里に来たにも関わらず気が付いていない様子だ。
レミリア、パチュリー、咲夜、カルカは完全に血の気が引き蒼白になっていた。今の状況が理解出来ないの
だろう。いや、理解したくないと言ったところか?何故って考える限り最悪の状況しか思い浮かばなかったか
らだ。
しかし、突っ立て居てもどうにも成らないので覚悟を決めて、阿求たちは騒動の中心へと向かって行った。
この騒動の中心と言っていいのか分からないが、とにかく其処に行くと博麗霊夢と東風谷早苗がいた。
かなり激しい戦闘だったのだろう、二人ともあちこち傷だらけだった
特に、早苗は白い服を着ているので血の色が際立って惨く見えた。そして、2人とも一応に悲痛な顔で地面
に倒れている何かを見つめていた。
レミリア、パチュリー、咲夜、カルカ、そして阿求は地面に倒れている何かを見た。その何かは左腕が付け根
から無くなり、体のあちこちに切り傷があり、何箇所か大きく抉られその特徴ある衣類は血や泥で汚れ、ズタ
ズタになり襤褸頭巾のように成り果てていた。そして、その何かの頭は胴体から切断されて転がっていた。
地面に転がる頭は自分達がよく知る妖怪の特徴を持っていた。考えるまでも無く、間違いない筈なのに直ぐ
には認識出来なかった。
何故か?信じたくはなったから。目の前に横たわる何かが『紅美鈴』の死体だなんて考えたく無かったから!!
「レミリアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
霊夢がレミリアに気が付いたのだろう。憤怒の絶叫を張り上げてレミリアに掴みかかった。
「レミリア!!貴方いったい如何言うつもりで彼女に!美鈴に人里を襲わせた!!美鈴が!彼女が人を襲
うなんて絶対に自分からするわけない!!何で美鈴に人里を襲わせた!!しかも人を襲って食べたのよ!?
二人も!!何でこんな事をさせたの!?」
其処へ早苗が近づいてきた。彼女は顔に大きな痣があり割れた額からの出血で、顔の左半面が血塗れに
なっていた。
「それだけではありません!!他にも8人も殺害されたんですよ!8人も!!他にも重軽傷者が沢山出ました
!慧音さんは美鈴さんを止めようとして大怪我をされました!!あの優しい妖怪の代表格の方がが自分から
こんな事をする筈がありません!貴方が命じたんでしょう!!何故です!?黙ってないで何とか言ったらどう
ですか!!レミリア・スカーレット!!」
「わ…わたし…が…めいりんを………追詰めて…こん…こんな事に……もっと……もっと…気を配っていれ
ば…もっと…優しく…していたら…こんな事には……美鈴……ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさ
い…………」
レミリアは泣きながらひたすら謝罪の言葉を続けた。
「お嬢様!!お嬢様の責任ではありません!全ての責任はこの私に……………私が……めい…りんを苦し
めて……ご…ごめんなさい……美鈴…ごめんなさい……ごめんなさい…」
咲夜は俯き泣きながら謝罪の言葉を続けた。完全も瀟洒も捨てて…
パチュリーは、美鈴の頭を抱えて座り込み、美鈴にひたすらごめんなさいと謝罪の言葉を続けていた。
カルカは美鈴が人を襲った事、その結果、博麗霊夢と東風谷早苗に討たれたことを認めたくなくて現実逃避
していた。
阿求はその様子を見ながら幻想郷縁起を鞄から取り出して、紅美鈴のページを開いてある文章をに目をやっ
た。其処にはこう書かれていた
『美鈴は妖怪ではあるが、紅魔館から十分に食料を支給されるためか、全くと言っていいほど怖くない妖怪で
ある』と
あと、「人間を食べる」という欲求に支配されているのであれば、最初に狙われるべきは咲夜かと。
細かい点ですが、そこが少し疑問点でした。
「飢えは理性を失わせる」というのは、身近に摂食障害の方がいるので何となくですが理解できます。
生物は普段、肉体が精神に従い、危機が迫れば精神が肉体に従う、というように出来ているのでしょうね。
グロが必要な描写ならもっと話を作りこんでください。既に出てますが霊夢が理不尽すぎます。
ギャグならいいんですが、シリアスでこれはひどすぎます。
人の家壊す様な方に物の道理は説かれたくないぜ
>霊夢怒ってるけどそもそもの元凶の一人ですよね?
霊夢は紅魔館の主要人がまさか美鈴に対して、十数日間にも及ぶ食事抜きの罰を与えるなどと、思って無かった
からです。
>13>16>17
注意事項に書いて在るように、公式の設定を無視して捏造設定を複数使っています。また、アポを取らずに入ろ
うとした霊夢を勝手に入らないでと、呼び止めた美鈴を吹き飛ばす二次作品が複数あったので、それで深く考え
ずに使ってしまいました。不愉快な気分させてしまって申し訳ないです
>「人間を食べる」という欲求に支配されているのであれば、最初に狙われるべきは咲夜かと。
補足説明をさしてもらうと、肉食系の野生動物と同じです。獲物を狩るとき怪我や等で弱った草食系動物や子供
などを優先的に狙います。その方が仕留め止めやすいからです。美鈴も同じで自分より強い人間より空を飛べな
い弾幕をはれない普通の人間が群で居る人里の方が、当然狩り易いからです。
(日本猿が人の持っている食べ物を奪うため、襲い掛かる事件が各地でありますが、狙われ易いのは、女性と子
供です)
>「飢えは理性を失わせる」
この事は歴史が証明していますから、天保の大飢饉とか大戦のときの日本軍…特に南方方面の事とかアンデスの
聖餐とか…
そもそも食料は紅魔館にもあるわけで、守護者のいる里を狙うよりつまみ食いの方が断然楽だ。
「ああ~、牛丼がくいて~」なノリで人を狩りに行ったのだろうか。精神的に余裕あり過ぎでは?
極限まで腹減ってたら獲物を選ぶなんてゆとりはないと思うけどなぁ。私なら手当たり次第に近い物から食う。
魚がいれば食う、草が生えてりゃ食う、食えそうなら取りあえず何でも食う、っていうくらい飢餓というのは辛いはず。
せっかくの題材なだけに、あえて無理やり悲劇にしたのはちょっと残念だったです。
幻想郷中の門を破り、食料庫を襲いまくっては「飢え」の恐怖を振りまく逆襲の美鈴が見たかった…。今後に期待。
咲夜噛んだでしょw
とまあ、目立つ箇所に誤字が散見されるのでちょっと推敲がたりないのでは?
美鈴が食人衝動ではなく、単に飢餓感に苛まれて人里を襲ったというのなら
美鈴にとって紅魔館の厨房に忍び込んだり、人里の飲食店で無銭飲食することより、
人を食い殺すことのほうが禁忌感が薄いということになります。
ですが作中の美鈴の描写からは、彼女がそのような特異な精神構造をしているとは思えないのでそこに違和感。
そして一緒に住んでる紅魔館の面々より、阿求の方が美鈴の危険性について正確に把握してるのが違和感。
そもそも「食事を支給されてるから~」は阿求の推測にしか過ぎないじゃないですか。
こういったショッキングな結末があったり禁忌を犯すような作品では、読者に「いや、~~すればいいじゃん」
と思わせないように設定を作らないとダメだと思うんですよ。
どうしても人以外に食べるものがなかった、あるいは人でないといけない設定作りや物語の展開があって
初めて人食いの禁忌を犯すことができるんじゃないですかね。
わざわざ美鈴を生贄にしてまで書かなきゃいけない話かは、はなはだ疑問です。
ていうか、はっきり言ってわたしには作者の命より美鈴の方が重いです。
不愉快。