実況:稗田阿求は放送席で立ち上がった。
『妹紅選手の「火の玉ストレート」遂にやぶられた~~~っっ!!!!大会26号ツーランホームラーーンっっ!!!!』
マウンドでは顔面蒼白の藤原妹紅が呆然と立ちつくしていた。照りつける太陽の光にその姿はかげろうのように霞んで見える。
その後ろでは小さなシルエットが今まさに悠然と二塁を回ったところであった。
紅魔ブラッディ・デビルズの4番 レミリア・スカーレットである。
そのカリスマ溢れる雄姿に球場のボルテージは最高潮に達していた。
センターのスコアボード下ではライトとレフト側のフェンスを乗り越えたファンがホームランボールにいっせいに群がっていた。
幻想郷は今まさに一大野球ブームが到来していた。
「甲子園?」
聞いたこともない言葉に博麗霊夢は首を傾げた。最初は新たな新興勢力が幻想郷入りしたのだろうかと思ったほどだ。
「野球の球場の名前のことよ。外の世界では『聖地』と呼ばれ多くの信仰を集めているわ。」
妖怪の賢者・八雲紫が幻想郷の夏の大イベントとして大野球大会を提案したのは、今から半年程前のことだ。
野球は幻想郷でももちろん知られていたが、以前ブームになったサッカーに比べればまだおとなしい。外の世界では老若男女問わず親しまれている野球を知らないのはもったいないと言うのである。
「ふ~ん聖地ねえ。。」
霊夢は茶をすすった。
「これが甲子園の図面よ。河童に工事をさせて、チームを作れば今年の8月には開幕できるわ。」
紫はどこから持ってきたのか球場の図面を広げて見せる。
「別にいいんじゃない?楽しそうだし。」
霊夢はいつものように淡白な反応だが、これでも本人は十分興味を持っているのである。
「さすが霊夢ね!話が早いわあ!」
紫は両手をぱんと合わせて笑顔で言った。
その日からさっそく郷中に大会開催の告知が成された。
文々。新聞は特集を組み、ルールーブックの小冊子を無料配布し、まんまと購読者を獲得していった。
もともとお祭り騒ぎが大好きな幻想郷である。瞬く間に各所で様々なチームが誕生していった。
郷の広場では至る所で大会に向けて白球を追う姿が見られるようになっていた。
「魔理沙を採られたのは、痛かったわねっ!」
霊夢はノックバットを振りぬいた。伊吹萃香は土をけって打球に飛び込むが、あと一歩のところでボールはグラブを掠めた。
どんまーーい。いい反応だよー。
その後ろで洩矢諏訪子がこぼれたボールを拾っている。
「仕方ありませんよ。ハマり役と言えばハマり役ですしねえ。」
霊夢の傍らで東風谷早苗はボールのいっぱい入ったカゴを手にあははと笑っている。早苗の提案で守矢と博麗が手を結ぶことになったのは一ヶ月ほど前のことであった。
(私達の手で神々の信仰を取り戻しましょう!)
聖地で見事優勝すれば大変な信仰が得られる。というのは文々。新聞の喧伝文句である。これに目の色を変えたのは何も守矢一家だけではなかった。
(悪いな・。昨日レミリアに誘われたんだ。アリスも一緒だぜ。。)
魔理沙のすまなさそうな顔が脳裏に浮かんだ。霊夢の誘いに魔理沙は頭を掻きながらそう言っていた。
どうやら各勢力では大会に向けて水面下で引き抜き合戦が始まっているようであった。やはり大会で優勝し、信仰を得ると言うことは幻想郷では予想以上に重要なことのようだ。紅魔館では早々に戦力を整え、拡張された館の庭で慣熟練習が行われていた。
「外野いくわよ!」
霊夢はバットを振り抜いた。大きなフライが外野に伸びていく。
「ほい!」スキップするように諏訪子はグラウンドを走り抜ける。打球は軽々と彼女のグラブに納まっていた。
(まあ魔理沙もアリスも魔法使いだから。あのチームにはハマってるっちゃあハマってるけどね。)
霊夢はわいわいはしゃぐ諏訪子と八坂神奈子を見ながら、ぼんやりとそう考えていた。
「腋巫女ゴッド・マーズ!!これで行きましょう!!」
練習後の神社でのミーティングで早苗は鼻息も荒く宣言していた。
霊夢や神奈子らは唖然とした表情で固まっていた。
「いや、ちょ・・待ちなよ早苗・!こういうのはもっとカッコイイ名前をだねぇ・・。」
諏訪子はおたおたしながら早苗にすがりつく。その後ろで彼女らが連れて来た山の神様・秋姉妹が同じく口をあけて固まっている。
「そ、そうだよ早苗ぇ・・!もっとよく考えようよ・・。例えばさぁ・そう『御柱MS02・キャノンズ』なんてどうだい!かっこいいじゃあないか!!ね?」
「嫌ですそんなモビルスーツみたいな名前!!ゴッドマーズがいいんです!!腋巫女がいいんですーー!!」
早苗はいやいやと駄々をこねている。
「腋巫女・・いいじゃあないかぁ!!私はすきだねぇ・・!!力強いよ!!ゴッドマーズでいこうよぉ・・!ヒック・・!」
よこで転がっていた萃香が瓢箪を抱えてケラケラ笑っている。
「そうですよね!!そうですよね!!そう思いますよね!!わーーい!!萃香さん大好きーー!!」
早苗は得たりとばかりに萃香に抱きつく。その姿に二柱はショックを受ける。
「・・っ冗談だよ!!冗談!!ゴッドマーズなんて最高じゃん!!むちゃくちゃカッコイイよ!!」
「そうだよ・・!!六神合体だよ!!宇宙を駆ける大蛇(王者)だよ!!さすが早苗だねぇ!!」
二柱は手の平を返したようにはやしたて始める。その姿に早苗はわーいとバンザイして喜んでいる。
どうやら普段の守矢家ではのびのびとした教育方針がモットーらしい。。
「いいですよね!霊夢さん!!腋巫女ゴッドマーズで甲子園に殴りこみましょう!!ね!ね!!」
がしりと霊夢の肩をつかんで早苗はゆさゆさ揺さぶる。霊夢には最早発言権は与えられていなかった。
「・・もうなんでもいいわよ。いんじゃない・・? それで・。」
「わーーーい!!」
早苗は二柱に飛びついて頭をべたべた撫でてもらっている。
「あ、あたしらの意見は・・。」
傍らでは秋姉妹が空気と化して泣き崩れていた。
「そういえば今日はあの二人はどうしたんだい?見かけないけど?」
早苗の頭を撫でながら諏訪子はふと思い出したように言う。
「ああ、助っ人のこと?」
今日の練習とミーティングにはいつも嬉々としてやってくる二人の姿が無かった。珍しいことだ。
「あいつらはね球場の工事の手伝いよ。紫にうまいこと言いくるめられたんだわ。来週からはまた来ると思うけど。」
霊夢はあきれたように言う。郷の中心の平原で工事が始まった東方甲子園球場は半分以上その威容を形作りつつあった。
「しかし・・まさか甲子園を幻想郷に再現するなんてねえ。」
神奈子はさもあきれたように言う。守矢一家は最近まで外の世界で生活していたため、甲子園のことはよく知っていた。
今回の企画に諸手をあげて賛成したのも、ひとえに彼女らが熱烈な甲子園ファンだったからだ。
「甲子園ってそんなに凄いの?外の世界では。」
「そりゃあそうさ。そこで野球が出来るなんて大変な名誉だよ?ましてや優勝なんてした日には信仰どころの騒ぎじゃあないよ。」
神奈子の言葉に霊夢はへーと感心する。なんかすごいのねえ。
「楽しみですよねぇ!私たちもあの甲子園で野球が出来るなんて!夢みたいです!」
早苗は手を組んでさもうれしそうな表情である。彼女らの反応を見るだけで甲子園と言うものがいかに人々の心に大きく影響しているか分かると言うものである。
『聖地』と呼ばれるのもあながち言い過ぎではないようだ。
こうして幻想郷の各地では大会に対する準備が着々と行われていった。
まわりの大歓声に内野席の霊夢は我に返った。
『どわーーーーーっっ!!!!!またいったーーーーーー!!!フランドール選手21号ソロホームらーーーーーーん!!!』
阿求の絶叫が場内に響き渡っている。
ダイヤモンドを見下ろすと満面の笑顔のフランドールがホームインしたところであった。ホームではチームメイトが総出で彼女を迎え入れていた。
その中にはあの彼女らの姿も見える。
フランはレミリアと飛び上がってお尻タッチを交わしている。『紅き双月』スカーレット姉妹のアベック弾はこれで15回目だ。
「妹紅もやられたかー!やっぱデビルズは優勝候補の筆頭だよ!」
霊夢の横で諏訪子がスコア帳を片手に悲鳴をあげている。
確かに恐るべき破壊力であった。各地で行われた予選リーグを含めても、どのチームもまだたった3,4試合しか消化していないのだ。
甲子園の熱戦は幻想郷で大反響を巻き起こしていた。
連日行われる試合には郷中の至る所から人妖が群がるように観戦におしよせていた。
幻想郷での野球はとにかく派手だ。弾幕のようにホームランが飛び交う。
試合は打ち合いのような形になるのが幻想郷スタイルであった。1試合に10度近く打席が回ってくることも珍しくない。
各チームにはたった数試合で二桁本塁打を超える打者がゴロゴロしている有様だ。
今は各地で予選リーグを勝ち抜いた強豪達が晴れて聖地甲子園に集結している。
そこには甲子園を彩る英雄・豪傑達の姿があった。
「おっかわ~り!!おっかわ~り!!幽々子様~~~!!!」
ガツン!!
『いったーーーーーー!!!!!!!西行寺幽々子、特盛り18号ホームラーーンーーーーーーーー!!!!!』
<八雲レインボー・ガールズ> 『おかわり様』こと西行寺幽々子。
バサッ!!!
『走ったーーーーーーー!!!!!早ーーい!!盗塁成功ーー27個目!!』
<天魔ドリーム・ウイングス> 『ブン屋の超特急』こと射命丸文。
ずどおっっ!!!
『見逃し三振~~~~~!!!!! バッター全く反応できません!!これで14個目の見逃し三振!!古明地こいしのナイスピッチング!!』
解説:森近霖之介。
『キャッチャーさとりも実にすばらしいリードだ。まるでバッター心理が筒抜けのようだね。』
<地霊殿グランド・ヘルズ> 『覚りバッテリー』古明地さとり・こいし姉妹。
そして・・
バキャッッ!!!!
ライトスタンド最上段のベンチが粉々に粉砕された。勢いを失わない打球だけが、弧を描いて大きくバウンドする。
場内は一瞬しいんと静まり返った。
どおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
次の瞬間地鳴りのような大歓声が球場を揺るがせる。
『ホ・・ホーームラーーーン!!!!8打席連続ーーーーーーーーっっっ!!!!』
阿求は声も割れんばかりに絶叫する。
大歓声の中、風見幽香はゆっくりと二塁ベースをまわった。
『お、恐るべき破壊力!!!!幻想郷最強!!!!太陽の悪夢!!風見幽香の大会新記録8打席連続ホーーームラーーーン!!!!』
<精霊フェアリー・テイルズ> 『太陽の悪夢』風見幽香。
聖地甲子園での決勝リーグにコマを進めたチームには、どれも1体で戦局を左右する実力を秘めたスラッガー達が名を連ねた。
幻想郷の人妖はそんな個性溢れるヒーロー達の活躍に沸きたった。
中でも観客が熱狂したのがスタンドに飛び込むホームランボールである。
ずどん!!
ボールがスタンドに飛び込むと、いっせいに周りの観客たちがそのボールに群がる。
「ホームランボールには大変なご利益がある。」
野球があまり知れ渡っていなかった幻想郷では、宣伝文句として事前にそういった触れ込みがなされた。
神や巫女の打った打球には大変な神徳が備わっているとされ。
妖怪や吸血鬼の打球には無病息災やあらゆる厄災を跳ね返す、魔除けの効用があると言いふらされた。
そして試合に勝ち残った強いチームのボールほど、高い神徳が備わると言われたのだ。
大会運営委員長の八雲紫の策略が、幻想郷の人妖に大いに受け入れられていた。
野球はここ幻想郷においては、お祭り・神事といった行事に近い側面を持っていたのである。
決勝リーグ第4試合では「腋巫女ゴッドマーズVS命蓮寺ファンキーボーズ」 の白熱した試合が行われていた。
「6番 キャッチャー 伊吹萃香。」
ザシャ!!
人気選手の登場にスタンドから大きな歓声があがる。萃香は金棒のような真っ黒い長大なバットを手にして現れる。
『さあ、決勝リーグ第4試合。腋巫女ゴッドマーズ対命蓮寺ファンキーボーズ。両チーム1-1の同点で迎えた4回表。1塁にランナーを置いて<小さな巨人>伊吹萃香がゆっくりと右バッターボックス入っていくところです。』
阿求の実況が場内に心地よく響き渡る。スタンドでは鬼の打球を手に入れようと、グラブや虫取り網がさかんに揺れている。
萃香は首を仰向け、瓢箪の酒を一気にあおる。
ブーーーーーーッッッ!!!!!!!!
そして自らのバットに勢い良く酒を噴きつけた。内野席からはフラッシュが星の様に焚きつけられる。
場内からは待ってましたとばかり大喝采が湧き上がった。
『伊吹選手打席前の恒例の儀式です!!お客さんも大喜び!』
右のバッターボックスに入る萃香にスタンドからはいっせいにホームランコールが沸き起こる。
『おーっ・とスタンドからは早くも大~きなホームランコール。解説の森近霖之介さん、ここまでの伊吹選手、二打席全て空振り三振できていますが。森近さんはこの選手、どういった印象をお持ちでしょうか。』
解説の香霖堂店主、森近霖之介の渋い声が場内に響く、すっかり御馴染みのコンビである。
『ふむ。伊吹選手は典型的なプルヒッターと言えるだろうね。予選の3試合を見ても全て三振かホームランだ。まったく分かりやすい。非常に荒々しいがそこがまた実に魅力的な選手だ。バッティングも豪快そのもの。空振りで歓声が沸く選手といえるね。ここまで15本の本塁打を打っているが6番辺りでブンブン振り回されると、相手にとっては十分な脅威といえるだろうね。』
ずばあぁぁん!!!
萃香はピッチャー寅丸星のスライダーに豪快に空振りしている。球場からは大きなどよめきと拍手が沸き起った。
『これは豪快な空振り!スイングの音がココまで聞こえてきます。これは対峙するピッチャーの心境やいかにといった・・おや・?』
対するマウンドの星の挙動がおかしい。なにやら足元をきょろきょろ見回している。
『寅丸選手どうやらまたボールを無くしてしまったようです。セカンドのナズーリン選手があわてて駆け寄ります。命蓮寺の試合ではすでにお約束の光景です』
スタンドからは笑い声と「星後ろ~!」という声が上がる。
「おいおい~頼むよ~?」
打席では萃香が思わず苦笑。
「萃香~!!しっかり~!!」
ダグアウトから霊夢の声援が聞こえる。諏訪子や神奈子らの声もそれに混じっている。
1塁塁上の秋穣子が再びリードをじりじりと広げていく。
萃香は自分の身長よりも巨大な真っ黒の極太バットを高々と構える。
幻想郷野球のユニークなルールの一つとして、魔法や妖術を使うのが禁止されている以外は、道具は自由なものを使えるということがあった。
各自の特殊能力にあった道具を作り、あらかじめこういうものを持ち込むと申請して、それが通ればかなり破天荒な道具を使うことが出来るのだ。従って各選手のバットは、それぞれが非常に個性溢れる形のものになっていた。
ざっ!!
萃香は腰をぐっと沈め構える。金棒のようなバットが天を衝いて輝く。
――鬼に金棒―― とうい言葉がある。
元々強いものが、武器を持ったり、得意の道具を手にしたりすることで手がつけられない状態になるという意味であるが、それはいにしえの鬼の姿に対する畏怖から生まれた言葉だ。
ただでさえ強大な力を持つ鬼が、ひとたび金棒を手にした姿は、見るものを絶望の淵に叩き落とした。
その姿は百年も千年も、鬼の脅威がなくなった現代においてさえ、人々の心に深く焼きついているのだ
ぐばあ!!
寅丸星は投球動作に入った。
ショートの多々良小傘がかなり後よりに位置して、ぐっと緊張する姿がチラリと映った。
ビシイ!!
星の指から、ボールが弾かれる音が聞こえてきた。渾身のストレートが唸りをあげて迫ってくる。
萃香の細い腕に力がこもった。
唇の端が不敵に釣り上がる。
星があっという顔をした。
ピッチャーは打たれるとき、バッターがバットを出す前からそれが分かることがあるという。
萃香の巨大なバット「鬼の金棒」が抜群のスピードで襲い掛かる。
「っでぇぇっl!!!」
ガッッッ!!!
萃香のバットが星のストレートを完全に捉えていた。
――――――バキャャッッ!!!!
レフトスタンド最上段。命蓮寺の看板が粉々に粉砕されていた。
どあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!
『いったいったいったーーーーーーー!!!!!!鬼の金棒一閃ーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!』
甲子園球場は割れんばかりの大歓声に包まれていた。負けじとばかり阿求は叫ぶ。
『命蓮寺をリードするツーランホーームラーーーン!!!!!!大会16号ーーーーーーーーーーっっ!!!』
大歓声の中、萃香は無邪気な笑顔でホームインする。
霊夢達はダグアウトから飛び出し、一斉に彼女を出迎えた。
「萃香ちゃーーん!!!」
先にホームインした秋穣子が萃香に抱きつく。神奈子はばしりと萃香の頭をしばきあげる。
「わっはっはっ!どんなもんだい!」
萃香はからからと笑って瓢箪を傾ける。
はるかレフトスタンドでは命蓮寺の『今沸き起こる!仏の力!―命蓮寺―』の看板の半分が見るも無残に吹き飛ばされていた。 白蓮涙目。
その下ではお約束のようにホームランボールの争奪戦が繰り広げられている。
カキーーーン!
やや控えめの打撃音が聞こえてきたのは、萃香がベンチに満足そうに腰を下ろした直後だった。
『こぉーれも上がったーー!!!ライトぬえ選手懸命に下がる!どうだ!?入るか?入るか?入ったーーーー!!二者連続ーーーーーー!!』
ライトの最前列でポーンと打球が弾んだ。
7番:サード永江衣玖が控えめに一塁をまわった。
「やたーーーーーー!!!衣玖ーーーーー!!!衣玖ーーーーー!!!バンザーーーーイ!!」
ダグアウトから天界の助っ人:比那名居天子が大はしゃぎで飛び出す。
最終的に腋巫女ゴッドマーズに参加した最後の2人である。
『伊吹選手に続いて永江選手もホーームラーーン!!腋巫女ここで一気にホームラン攻勢だーーーーー!!』
沸き立つスタンドの歓声の中、衣玖は控えめに一塁をまわり、二塁塁上でぴたりと止まって・・
フィーーバーーー!!!
スタンドからはここぞとばかりに大合唱が起る。
『おおっと!こーれは永江選手お決まりのパフォーマンス!お客さんも大合唱!これをする為にわざわざ応援に駆けつけるお客さんも今では
少なくありません。とりあえず私達も・・フィーーバーー!!』
放送席では阿求と香霖が揃って腰に手を当て、指を突き上げていた。
衣玖は控えめにホームイン。次の打者、東風谷早苗とぱちーんと手を合わせる。
ナインは総員フィーバーポーズでお出迎えである。
――8回裏――
痛烈な打撃音が鳴り響いた。
『ああーーーっっと!!!聖白蓮選手痛烈な当たりーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!』
白蓮の弾丸ライナーが右中間の最深部に向かって伸びていく。長打コースである。
「しまった・・!」
マウンド上で博麗霊夢はその打球を絶望的に振り返る。1死の後まさかの3連打だ。
三塁のナズーリンが塁を蹴った。このままでは一塁走者の雲居一輪まで生還してしまう。
「諏訪子!!」
霊夢は叫ぶ。
ライト洩矢諏訪子は外野の芝を蹴って、たたたたと軽快に打球に向かって走っていた。
「キョロちゃんじゃーーーんぷ!!」
諏訪子は十分な助走の後、打球にむかってびよよ~~~んと跳躍する。
パシイィィ!!!
『ぬあーーーーーーーー!!!!???捕った捕ったーーー!!!!捕っているーーーーーーー!!!!』
阿求の実況放送が絶叫する。
「うそぉぉ!!??」
白蓮も目ん玉が飛び出さんばかりにビックリ。
小回りの得意な三塁走者ナズーリンはあわてて帰塁する。
『ああーーっと!!しかしナズーリン選手俊敏!!犠牲フライになりそうだーーーーー!!!』
三塁ベースを踏んだナズーリンはクルリと向きを替え、ホームに向かって再度突っ込む。距離は十分だ。
「神奈子!」
諏訪子はカバーに入ったセンター八坂神奈子に中継。
神奈子は右中間最深部から体を割ってがばあ!とボールを掲げる。
「往生せい!!」
――オン!!バシラ!!キャノン!!!――
「シューーーーーーーッッッッ!!!!」
―――ドウッッ!!!!
レーザービームどころの騒ぎではない、波動砲のような返球がホームに向かって一直線に伸びていった。
どごおおおおお!!!!!!!
返球はキャッチャー萃香のミットにストライクで収まった。萃香はすかさず滑り込むナズーリンにミットを合わせる。
「ぐっ・・・!!!」
ナズーリンは小さな体を必死に捻ってホームに身を滑り込ませた。
ズバアアアアァァァ!!!!!!
・・・・・・・。
一瞬、時が止まったかのような静寂が訪れる。
「ア、アウトーーーーー!!!アウト!!アウトーーー!!」
主審:四季映姫・ヤマザナドゥの右手が高々とあがった。
どおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
甲子園に地鳴りの様な大歓声が沸き起こった。
「ば・・ばかな・・!!」
『な・・・何ということだーーーっっ!!!守矢二柱のスーパープレーーーーーーーーーーー!!!!』
大歓声の中、諏訪子と神奈子は笑顔でグラブを合わせている。
『これが守矢の神力ーーーーーー!!!!!必殺キョロちゃんダイブ・御柱波動キャノン大炸裂ーーーーーーーーー!!!!』
スタンドは気が狂わんばかりの大熱狂振りだ。
郷中から集まった人妖が飛び上がって大喝采を送っている。
「ふはははは。かしこめ、かしこめ。」
八坂神奈子は豪快に笑ってその声援に答えていた。
「ふん・・。なかなかやるじゃあないか。」
興奮冷めやらぬ内野スタンド。
放送席より目立つ真っ赤な日よけのテントの中で、紅魔ブラッディ・デビルズのレミリア・スカーレットは不敵な笑みを浮べていた。
「油断ならないチームですわ。」
その傍らで十六夜咲夜はトロピカルドリンクを差し出す。
「迫力のある打線だわ。中軸に火力のある打者をあつめてる印象ね。」
咲夜の側ではアリスがブレインとしての意見を述べている。
「三番:比那名居天子、四番:洩矢諏訪子、五番:八坂神奈子、六番:伊吹萃香・・。いづれもウチに劣らぬ強力打線だわ。」
<七色の安打製造機>アリス・マーガロイドは目下大会首位打者の地位にある。
「エースの博麗霊夢、東風谷早苗(レフト兼用)の二本柱は驚異的な防御力を誇っているわ。チーム防御率も地霊殿に匹敵する。」
パチュリー・ノーレッジは本に目を落としたままつぶやく。
「守備も内野の秋姉妹の二遊間コンビが息の合った実にいい仕事をしています。攻防兼ね備えたレベルの高いチームですよ。」
紅美鈴も腕を組んで頷いている。
「フフフフ・・」
レミリアはさもうれしそうに笑う。大会本塁打王を独走している彼女はその実力も申し分ない。
「そうねえ。強敵だわ。でもいづれにせよウチの相手じゃないわね。八雲も地霊殿も風見も、そして腋巫女共も・・。」
レミリアのカリスマ溢れる言葉に周りの者達も凶悪な笑顔を浮べる。
「この<紅き双月>レミレア・スカーレットとフランドール・スカーレットが居れば、幻想郷に敵はいないわ。そうだろう?」
咲夜は、はっと小さく一礼する。
首から綿の飛び出したぬいぐるみを抱えているフランドールが「ウフフフ」と笑っている。
「それにあなたがいれば、、、この最強のクリーンナップがあれば甲子園に敵は無いわ。そうでしょ?」
レミリアはそう言って奥の人影に不気味に笑いかけた。
とんがり帽子を目深に被り、座席の背に足を投げ出している白黒の人物がニヤリと口の端を吊り上げていた。
本塁打成績 10傑 決勝リーグ第1戦終了時
レミリア・スカーレット 26
霧雨魔理沙 23
フランドール・スカーレット 21
伊吹萃香 19
西行寺幽々子 18
洩矢諏訪子 18
八坂神奈子 17
射命丸文 15
八雲紫 15
霊烏路空 15
他4名
(了)
これくらいぶっ飛んでないと東方でスポーツSSは微妙ですからね。
ただ、素材がいいだけに、もっと妄想力が欲しかったところです。
乱打線が目立ちましたが、
日々弾幕で鍛えられている東方キャラたち、もっと異様なピッチングで打者を押さえられそうだなと思ったり。
妹紅の火の玉がありなら、ルーミアや雛、ぬえ辺りが投げるとどうだろうとか
文はむしろバントでホームインできるんじゃないかとか、もっとぶっ飛んでよかったです。
そして、キャラ名の誤字は致命的。やっぱり気になってしまいました。
>萃香のバットが聖のストレートを完全に捉えていた。
投げていたのは星ちゃんでは?
>永江依玖
衣玖さん。
6番様 誤字直しました。ご指摘ありがとうございます。いやあむずかしいですねえ・・。衣玖さんまったく気づき
ませんでした。。
文ちゃんのランニングホームランネタはやろうかと思ったんですけどやめました。バントホームラン!その手が
ありましたねえ!!ピッチャーのことに関してはあんまり詳しくないんで大味になってしまうのです・・。
純粋に笑えたわ
子どもの頃読んでたコロ〇ロに通ずるものがあって懐かしさを感じた。
ここのスポーツ物が神隠しにあったように連載が止まるから、
完結する奴があっても良いんじゃないかと。
お願いなのだ。
地味なのか派手なのかわかんなくてワラタ
14番様 フィーーバーー!!! シャキーン!! 超門番
16番様 楽しんでいただけましたか?初めてだったんで読んでいただけてうれしいです! 超門番
19番様 しゅゅゅゅーーーーーーーーー!!!!!!!!! 超門番
20番様 『小学6年生』みたいなのですか?そんなノリです!! 超門番
22番様 ええーー!?ありがたいんですけど。もう夏休み終わっちゃったしなあ・・・ 超門番
24番様 パワプロ基準です!・・でもないですねえ・・ 超門番
26番様 確かに笑えます・・!! 超門番
SAS様 あ、ありがとうございます。光栄です!! 次・・あると思うんですけど・・あればまた読んでください! 超門番
ボーズw
そうだけどさw
しかしマリサめどんなバットを用意したんだ…