Coolier - 新生・東方創想話

ダウンタウンのドッペルゲンガー

2011/06/05 15:08:57
最終更新
サイズ
42.15KB
ページ数
1
閲覧数
1100
評価数
16/31
POINT
1930
Rate
12.22

分類タグ


5月25日

 目を覚ます。でも最近うまく眠れない。やってくるのは浅い眠りと覚醒の繰り返し。
 いつものことだ。
 私は背中を伸ばした。今、私の隣で寝ているのが、私の友達だった。私は起こそうか、いや寝かせておこうか、ちょっとだけ迷っていた。
 でもきっと起きるだろう。私達はどちらかが起きれば、もう片方も起きる。何故か知らないけど。かたっぽの視線を感じると、例え夢の中でもそわそわするのだった。
 彼女は言っていた。
 目覚める時は、必ず夢の中で躓くのだ、と。
 私はまだ夢の中で躓いたことが無い。
 私が見る夢は、いつも決まって知らない土地の事だった。
 私は小さな庭に佇んでいた。
 それは真四角の、小さな小さな庭だった。三方を木製の柵で囲まれ、私の後ろ側には家が建っている。そして東北の方向には獣道のようなものが走っている。
 庭の柵の傍には、ラベンダーの花が植えられている。また庭の真ん中には畑が作られていた。
 人の気配は無かった。
 畑には何か植えられていた。私は土を掘り返す。漸く、ごつごつとした泥まみれの塊を掻き出した。五つほど、赤子の頭のようなものが出てきた。
 馬鈴薯だ。

 私は起きてから、ある種の匂いを嗅ぎ取った。いつものことである。匂いは、この屋敷、或いはこの地底を包み込む空気のような感覚だった。不思議なことにそれは私の意志のままに自由に伸び縮みできる空気のような匂いだった。私は匂いをそっと、あの人に伸ばす。匂いはそっとあの人を包み込む。あの人は微笑む。
 あれだ。あの笑顔が憎たらしいのだ。判ったような笑顔だ。何もかも判ったようなあの、複雑な表情を混ぜ合わせて割ったような笑顔だ。爪を噛みながら、考えた。あの人は、この匂いの事をしっているな。憎たらしい。知っていながら、知らない振りをしているのだ。憎たらしい。全部判ったつもりで、ニコニコと笑っている。
 湖の街は雨だろうか。あの街には大きな湖が広がっている。湖には数年に一度、鱈の大群がやってくる。彼等の体を包み込む鱗は僅かな光も見逃さず、きらきらとこの地底に降り注ぐ光を、水面へ跳ね返す。私は一度、湖の汀に立つ、粗末なテントの群を見たことがある。
 粗末なテントは漂流してきた木の枝や、家の襤褸カーテンで拵えたテントの中から、鱈の大群を待ちわびているのだった。鱈はどこからとも無くやってくる、この地底に。いつかやってくる魚の大群にイメージを思い浮かべ、テントの隙間から湖をのぞき見ている。いつか友達と見に行きたいと思っている。そのテントが立ち並ぶ様を。魚の群が湖のどこかに開いている穴を通じて、気紛れな習性にまかせてやってきて、鱗が七色に光り輝く様を。
 すると、友達が目を覚ました。

 おはよう。
 おはよう。
 
 彼女は大きな羽を広げて、伸びをした。黒い翼が背中から生えている。私はこの翼をずっと昔、どこかで見たことがある。
 嘗て美術全集の中に出てきた堕天使の姿に似ているような気がする。
 
 私達は部屋を出るが、私は友達を引き止める。私の友達はまだ真っ裸だった。寝ぼけているな、と私は思った。取り敢えず下着を着けてあげた。
 私達は、交代でトイレに入ると、一目散に食堂に向かった。
 お腹が空いていた。
 食堂の大きなテーブルには、パンやゆで卵や、珈琲が置いてあった。ついでに書置きもあった。『今日は忙しくて中々皆さんのお世話を出来ないと思います。お燐はペットのご飯を上げてください。いつもの猫餌のカリカリで構いません。』
 私は猫餌のカリカリをお皿に取り分けると、庭のほうに運んだ。庭には犬や狸や、様々な動物が御行儀良くご飯を待っていた。私がカリカリを持っていっても騒がずに、やがて整然とカリカリを食べ始めた。まるで、炊き出しのような……。カリカリと動物の咀嚼する音が庭に響く。
 私は庭を見た。庭には色んな野菜や花が植えてあった。茄子や馬鈴薯や、龍の珠と言われる高さ七、八センチの茎の上に、扁平な枝を広げ、花が落ちてしまった址に、七ミリメートル弱の碧色の種子が可愛らしく身を寄せ合っている。全部、あの人が植えた。今日も地底の側壁から漏れる隠微な太陽光が、燦燦と照らし出している。私はまた伸びをした。
 食堂に戻ると、友達がテレビを見ていた。アンテナの調子が悪いらしく、ずっとつまみを弄くりながら、テレビの前に正座して座っていた。私も摘みを右に左に回してみたのだけれども、中々うまくいかなかった。砂嵐と天気予報が交互に画面の中へ飛び込んでくる、といった様相だった。

 私は天気予報に釘付けになった。本日は、快晴です。ただ二、三日後はどうかわかりません。私は全く自信がありません。二日後に台風が来るかもしれませんし、地震がくるかもしれませんし、槍が降ってくるかも知れません。

 私はその後、朝食を食べた。あの人が作ってくれた、美味しい食事だった。私はちょっとだけ焦げた目玉焼きをパンの上に乗せて、食べ始めた。美味しかった。私は人間の体をしているから、美味しいと感じるのだった。
 私は仕事の準備を始める。あの人が拵えてくださった大切なお洋服の上に、白いエプロンを付けた。この黒いドレスは私の職業服なのだ。手に軍手を嵌める。血や腐った肉で汚れないようにする為だ。
 私はそっと、あの人がこちらの気配を感じとらないように、屋敷を出た。屋敷の四方はステンドグラスがはめ込まれている。あらゆる場所から、七色の光が降り注ぐ。私は匂いをあの人の書斎に伸ばしてみる。あの人が静かに微笑んでいる。私のことを知ったかぶりを決め込んでいるあの人の事。あの人の感覚を感じ取る。微笑む。何故か嬉しくなる。見守られている感じがするのだった。
 私は川沿いに走る歩道を、手押し車を押しながら鼻歌を歌いながら進む。
 私は探し物をしている。
 
 私はあの人から教えてもらった、ある小説について考えてをめぐらせていた。
 いつか読みたいと思っている。だから文字を覚えている。あの人が教えてくれるのだ。ある種の使命感と憐憫を込めた感情を隠しながら。何なんだ。私のことを、きっと動物のちょっとした突然変異だと思っているに過ぎない。きっとかわいそうだと思っていやがる。私の夢は、あの人の知性を追い越して、いつか私が先生になってあげることなのだ。
 いいですか、貴方の大好きな文学というのは、傍観と、極端なドラマと、後は間接話法によって成り立っているんです。それだけなんです、とお教えするのが私の夢なのです。私はこの世で最高の小説は、フランツカフカの『審判』であり、ダンテの『神曲』であり、モリエルの『ミザントロオプ』であり、ゼーバルトの『アウステルリッツ』であることをあの人に教えてあげる。膝に乗せて、ゆっくりと読み聞かせてあげる。

 本当は全部、あの人が教えてくれたことなのに。私はその妄想を設計する間、そのことをすっかり忘れているのだった。

 私は川沿いに走る道に並ぶ、電柱を目印に進んでいく。この地底の町というのは、ちょっとした法則がある。川沿いには木々が生茂り、緑が一直線に走っているのだった。電信柱はコンクリート製だけど、何故か曲がったり、倒れたりしている。何があったのかしら!
 私は川沿いを進む。あの人が大好きなブルグミュラーのアラベスクを口ずさむ。トゥットゥットゥットゥットゥッ、じゃららラン、じゃららラン、じゃららららん。じゃらららん。じゃらららああじゃららららん。
 やがて、その探し物を見つけた。どこからともなく流れてくる川の水とともに、川辺にそれは、打ち上げられていた。

 死体だった。

 男とも女とも判然としない死体が二つ、川辺にうち上げられている。
 私は死体を覗き込んでみる。
 死体は、最早人間の形を半ば失った肉の塊だった。腐っているが、何と言うかその赤黒い物体が何なのか、まるで判らない。
 でも川辺の臭気から、それが人間の死体だと直感する。
 私は手押し車に、何とかして死体を積み上げる。最初は手間取ったが、段々にコツをつかめてきた。
 何故ならこの地底にどこからとも無く流れてきて、積みあがっていく死体は、どれも子供の死体だったからだ。子供の死体は、運びやすく、また、私の腕力で原子力発電所に十分郵送可能だった。私はもってきた木の枝を、てこの原理でうまいこと手押し車に乗っけた。私の黒いドレスは、汗でびっしょりと濡れていた。中々力仕事なのだ。
 川の中州に椎の木が生えている。その枝に死体の腕が引っかかっていた。それは無視することにした。
 手押し車に乗っけた時、ずるりと、子供の死体の皮が呆気なくはがれてしまった。私は直径四十センチメートル大の、皮膚を思い切って川に投げてしまった。緩やかな流れに同化して、水の中に消えていった。
 私はせっせと手押し車を押しながら、死体を『穴』に運ぶ。私の友達が働いている。私の友達は『穴』の見張り番だった。私の役割は、その『穴』に死体を投げ込んで、火を絶やさないようにすることだった。それは神の火だった。神に返すべき炎だった。
 お前は一体、何の生まれ変わりなの。
 彼女はよくそんなことを、死体に向かって呟くのだった。『穴』の放り込む前に。
 その大きな穴の中には、炎が燃え盛っている。円錐状にほられた穴の中は、八段の崖が、階段のように下へ下へと続いていた。私は死体を穴の中へ投げ込んだ。
 ねえ。
 なに。
 仕事が終わったら遊ぼうよ。
 いいよ。あたい暇だし。
 仕事がひと段落すると、私達は良く仕事場から離れて遊んだ。あの人の視線が届かないような場所で遊んだ。大体二人で遊んだ。良く遊んだのは、遠くの団地が並ぶ場所だった。そこはいつも閑散としていた。団地は色褪せたコンクリートの塊だったけど、確かに人が住んでいるような気配だった。
 かくれんぼしよう。
 いいね。
 彼女は私の手を引いて、空を飛んだ。いち、にの、さんで空を飛んだ。穴をあっというまに飛び越え、小さな山を一つ越えた。彼女が羽ばたく度、黒い羽がいくつか飛び散った。いつもの、遊び場の団地に辿り着いた。
 私はある種の不安と期待を抱きながら、そっと団地が立ち並ぶ通路を掻き分けながら、彼女から逃げ回る。彼女は大きな翼を持っているから、気をつけなければならない。もしも見付かったら、私が鬼になる。
 団地は静まり返っていた。私達以外の、生命の気配というものをまるで感じなかった。私達だけの息遣いが、コンクリート製の墓石の間を、いったりきたりする。彼女の羽ばたきが聴こえる。私は草むらから草むらへとそろそろと、移動する。団地は四つのアパートメントが、東西南北にそれぞれ一つずつ屹立している。南側に建つアパートメントの、日陰に隠れてしまった、緑が生茂る公園に身を隠した。
 しかし早くも私は友人の気配を感じ取った。友人は私を探すのが上手い。私がどんな場所に隠れていてもあっという間に見つけてしまう。私は多くの団地を低い姿勢で走りながら場所を移動する。
 やがて私は地下の際へ辿り着く。
 地底は大きな大きな空洞だ。形がどうなっているのかは誰にも判らない。しかし誰かが作った『水門』と呼ばれる装置は、地底の際にそって設置されていた。地底の湿気は私達の生活を脅かす。食べ物に黴が生え、鍛冶職人の道具には錆び付き、家には苔が結ぶ。
 この土地に住んでいる以上、うまくこの湿気とは付き合っていく必要が有る。地底の天井から滴り落ちる水滴を効率的に排水しなくてはならない。兎に角異常な量だ。地底の町のあちらこちらには轍のような排水路が走っている。
 落ちて来た雨のような水滴は排水路を通り、やがてこの『水門』へ辿り着くのだった。『水門』を経てから、水滴の流れがどこへ行くのかは誰も判らない。さらに地下を流れる水脈へ繋がっていると聞いたことがある。
 地下の淵を象るように配置された石版のような『水門』の影に隠れた私は、お空を見つめた。
 これは訓練だと自分に言い聞かせている。
 その時、私の腕を掴むものがあり、その瞬間外へ豪快に引っ張られた。大変な怪力だった。
 友人の掴んだ手を離そうとし、こちらへひっぱろうとしたが逆に押し倒されてしまった。彼女は私に馬乗りになって嗤っている。
 こういうの好きなんでしょう?
 あたい好きじゃない。どいて。
 嘘。
 どけ。
 彼女は私の上着に手を突っ込んだ。私の乳房の中心を探し当てて、くすくす嗤いながら指の先で転がした。ひやりとした冷たい手を感じた。
 お前は一体、何の生まれ変わりなの?




5月26日

 私はご主人様に頼まれて、原稿用紙と本を買いに行く。
 その途中、橋を通らなければならない。私達の屋敷と街を結ぶアーチの橋だった。橋の下には大きな排水路が流れている。下水道も兼ねているので、酷い匂いがする。時折氾濫を起こし、下水が溢れることがあった。
 一軒の本屋に着くと、私は扉を開けた。
 店主は私を見るや、顔を顰めた。私は黙ってお金と本の題名が書かれたメモを渡した。店主は黙って原稿用紙を差し出した。しかし、お金に見合った枚数ではなかった。私は注意深く枚数を数えたが、どうしても足りない。私は説明を求めた。
 曰く、最近は物価が上がってしまい、このお代でぎりぎりの枚数なのだという。
 私は交渉することにした。

「ご主人。足りない分のお代についてですが、何かお困りのことは無いでしょうか? 例えばこの素敵なお家は湿気によって随分侵食されているようにお見受けします。目に付かない場所も黴付いたりしているかもしれません。家の土台や支柱もくずくずになっているんじゃないでしょうか。私の手や足をご覧下さい。立派に育っているでしょう。私のご主人様の教育の賜物なのです。少し筋肉の付きが足りないのが玉に瑕ですが、どんな力仕事もこなせますし、この細いけれども良く動く指は、どんなにデリケートな修理仕事も一息でこなせます。螺子締めや釘打ちもお手の物です。と、いうのも水道管の修理や大工仕事は日ごろから屋敷で行なっている為で、経験も十分です。事実、あの支柱は少し腐っています。そのうちこのお店が倒壊しないうちに修理しなくては……。要りませんか、修理? そうですか。でも私は力仕事だけではなくて、勉強だって出来ます。ちょっとした計算や立派な文章だって、あっという間に作れてしまいます。だから私ならこのお店の店番もこなして見せます。私のご主人様の教育の賜物なのか、知的財産の適切な価格もつける事もできます。私は古今東西の本を読んでいますし、それに見合った知識も有しています。お客様が悩まされている疑問や悩みに対して、適切で正しい本をお奨めすることが出来ます。そして私は、ガチガチの人間の心を解さない、下らないインテリみたいな堅物では無いことを、ここにお約束致します。貴重な本を買いに来た、前途有る有能な貧乏な学生さんには、価格を勉強して差し上げますし、逆にものの価値がさっぱり判らない癖に、やたら小難しい本を読もうとするお金持ちにはうんと値段を吊り上げて、あの戸棚のニーチェ下らない解説本を売り払うことも出来ます。如何でしょうか。時にご主人、貴方の性別は我々の種族で言うところの雄とお見受けしますが、私の性別は雌です。え、どういうことですって? 私はまだ未経験ですが、その気になれば貴方の夜伽のお世話もしてあげれます。貴方は随分お年を召していますが、貴方が奥さんに隠れて私に触ったりすることで、十分にご満足いただけるのではないかと思います。その為、雄が雌に求めるいやらしい行為やしぐさというものもそれなりに学んでいます。そういう本も勉強の為に読みます。」

 ご主人は黙って私に原稿用紙をくれた。何故か青い顔をしていた。本は一週間後に届くらしい。私は任務遂行した。予定帳に『本屋へ。本をとりに』と書き込んで店を出た。振り返ると、ご主人はずっと青い顔をしていた。

 一瞬、妹様が見えたような気がした。 
 少し前だった。私はご主人が妹様と寝ているところを見てしまった。偶然屋根裏部屋の修理をするため、通風孔から屋根裏部屋に入ったのだった。あれの真似事をしているのをこっそり覗いてしまった。妹様というのはご主人の妹のことで、お二人は確かに血で繋がっているのだが、同時に、悲しいほど濃い、目に見えない絆というもので結ばれている。お二人は生きている限り、ずっと、離れなれない。

 帰り道だった。橋を渡ろうとすると、子供達が何かカルタ遊びのようなものをしていた。彼等は札付きの悪童と、噂があった。そのカルタは光ったり跳んだりして、奇妙な光景だった。私はその傍を通り過ぎようとすると一人の子供が刃物を出して、私に止まれ、と命令した。私は止まった。
 服を脱げ、と笑いながら命令してきた。私はドレスに挟んだ馬鹿でかい鋸ナイフを取り出した。血のりがついている。先ほど死体の手足を切り刻んだ鋸ナイフだった。仕事で使うナイフだったが、効果は覿面だった。
 子供は三人いたが、二人は一目散に逃げ出した。そのうちの一人の額に銃口を付きつけた。私は命令する。
 服を脱げ。全部置いていけ。
 
 裸で蹲っている子供の服を全部排水路に投げ捨てた。子供は背を丸め逃げてしまった。私はずっとその背中を見つめていた。

 私は屋敷に帰ると、早速ご主人様へ一日の出来事をお話した。ただし悪童に絡まれた事も正直に話した。どうもあの悪童達は、地底に住む鬼と繋がっている筈だ。気をつけなければならない。
 ご主人様は言った。彼等にも面子というものがあるから、貴方の身が危ないかもしれない。でもその行動は正しかった、と。貴方の身に何かあったら……。それ以上彼女は何も言わなかった。友達は一緒にご飯を食べていた。口いっぱいに、茹でた馬鈴薯と干し肉を軽く炒め、その上から半熟卵をかけたものを頬張っていた。
 友達の様子に変化が認めた。口を上下左右に動かしていた。その時、ぴたっと動きが止まった。私とご主人様、二人で彼女を見ていた。まるで二人で噴火寸前の火山を見ているようだった。彼女の大きな目に、涙が溜まる。口を窄め、必死に泣くまい、喚くまいと我慢していた。しかし、うっという呻き声とともにとうとう泣き出した。
 ご主人様はあっちへ走ったりこっちへ走ったりパニックを起こされているようだった。
 私は宥め様と彼女の手を握ったり、背中をさすったりしてあげたりしたが、一向に止まなかった。ご主人様は頭を抱え、顔をしかめていた。彼女の頭の中を見ようとしていている。しかし、駄目だった。顔を真っ赤になり、あっという間に倒れてしまった。ご主人様の頭が異常に熱かった。
 顔をぐしゅぐしゅにした彼女と、倒れたまま動かなくなったご主人様。取り敢えずご主人様を洗濯場まで運んだ。少し悩んだ末、洗濯機に頭から投げ込んだ。洗濯機から湯気が昇った。
 次は友達だ。
 泣き喚く彼女を抱きしめたりしたが、無駄だった。彼女の意味不明な泣き声に混じった言葉には、こんな断片があった。言いようの無い不安、由来の無い不安といったものを認めることが出来た。
 何故か一ヶ月に二、三回の頻度で、こういうことが起こるのだった。しかし私にはどうしようも無かった。放って置くしかなかった。そしてご主人様は必ず知恵熱を出して倒れる。やがて泣きつかれた彼女は、寝てしまう。
 やがて、ご主人様が目を覚まし、ずぶぬれになって戻ってくる。きっと、友達の深い深い心の奥に、降りて、癇癪の原因を探しだろうとしているのだが、その度に倒れてしまう。
 大事なのは、誰かが一緒に付いてあげている事である。両方とも。
 あぁ良かったです。良かった。あの子も泣き止んで。私はずぶ濡れだけれども、貴方の適切な判断で、助かりました。
 戻ってきた、ご主人様は笑った。




6月11日

 数日前から様々な準備を始めていた。鬼や悪童達の復讐があるかもしれない。
 手製のナイフだけでは心許無い。私は武器になるものを探したが、これといって使えそうなものは無かった。しかしこの日、願ってもいない獲物を見つけた。屋敷の納屋で、一丁の散弾銃を見つけ、また油紙に包まれた弾丸も見つけた。
 私は一旦散弾銃を分解し、状態を見た。随分古いものだったが、使えそうだった。再び元に戻し、何発か空に向かって打ち、照準の調整を行なった。
 気が付くと友人が自分の部屋から顔を出し、不安そうにこちらを見つめている。人差し指を咥えていた。さらに、持ち歩きしやすいように、銃床を鋸で切りつめた。
 私は、私の生活を脅かすものを、私の生活から離さなくてはならない。
 
 しかし一向にそれはやってこなかった。私は散弾銃を部屋のベッドの下に隠した。友達がいじって暴発しないように、弾は抜いた。


6月12日

 この日、友達が屋敷からいなくなった。私は探した。あらゆる場所。例えば郊外の草原。街の遊び場、水門。どこにもいない。

 彼女は不安定だ。危険でもあるが、彼女に迫る危険は私が取り除かないといけない。
 それが友達の役割なのだ。

 ご主人様は食事もとらず、日がな探し回って居るのだった。私も付き添っているが、元々体力が無いのに、ぼろぼろになって探す彼女を見るのはつらかった。いくら「あたいが一生懸命探しますって!」と言っても聞かなかった。




6月15日

 友達は居た。
 郊外の、さらにずっと奥にいった場所がある。そこは野原が広がり、さらに遠くには深い 
 野原を断ち切るように大きな車道が走っている。民家は数件ある程度。きっとだれが住んでいる。また野原には、牛が放牧されておりのんきに草などを食んでいる。
 その道の途中、小さな小さなバス停がある。そこに彼女はちょこんと座っていたのだった。手には小さなお手玉が握られていた。

 ずっと探していたの。
 うん。
 さとり様だって、探していたの。ずっと。
 ごめんね。
 ずっとご飯を食べていないの。心配で心配で、碌に喉を通らないのよ。あたいだって。
 ごめんね。
 彼女はぎゅっと自分の手を握っていた。何かに耐えるように。
 早く帰ろう。
 駄目。
 どうして。こんなところで、貴方は何をしていたの?ご飯も食べないで。
 ご飯は食べたの。
 彼女が指差すと、そこには蓮の葉が落ちていた。米粒がついている。彼女の話によると、おにぎりが包まれていたらしい。
 誰がくれたの?
 ゴドー。
 ゴドー?
 うん、ゴドー、二匹!
 二人では無くて?
 間違えたよ、二人!
 彼女はへへへと笑った。
 お空はだれか待ってたの?
 ゴドー、二人! 準備が出来たらまた来るって。
 それは貴方に何かくれるの?
 凄いもの、くれるって!
 私は説得した。それは不審者であり、きっと友達には何もあげないこと。また、本日の夕食は、私お手製のカレーライスであること、また夜にはご主人様が宮沢賢治のご本を読んでくださる等の約束をした(それは本来なら、土曜日にしかしてくれないはずだった)。しかし彼女は揺れ動いたが、このバス停でゴドーを待ちつづけることを固辞した。結局、日が暮れるまで待ち、誰も来なかったらお屋敷に戻るよう説得した。
 やがて夕暮れが訪れた。
 私の尤も大好きな時間だった。
 それは全てが赤く染まり、やがて静かに夜を迎える時間だった。
 地底でも夕焼けは訪れる。雪も降るし、雨も降る。
 夏の夕焼けは尤も美しく、また忙しない日中に比べ静かだった。涼しくて、心地が良い。私はぼろぼろのバス停の小屋の中で、彼女と夕暮れの野原を見つめていた。
 夕焼けの中で、私達は野原の向こう、森の際に立つ看板を見つめた。大きな看板は全部で八枚。それぞれ「関」「係」「者」「以」「外」「立」「入」「禁」「止」と書かれている。
 ゴドーはやってこなかった。彼女は泣いた。私は彼女の手を引いて、大きな車道を歩き出した。ここから屋敷まで、半日かかる。ご主人様は私達のことをうんと叱るだろう。目を涙でいっぱいにしながら。





6月31日

 午前中、不思議な死体を見つけた。
 私はいつものように、死体を探し回っていた。
 すると、街の人間達がやってきた。曰く、死体が転がっているから片付けて欲しいとのことだった。
 こういう依頼を受けるのは日常茶飯事だ。
 私はエプロンの紐をぎゅっと結びなおし、街へ向かった。
 死体は、街で一番の大きな煙突に引っかかっていた。
 煙突の天辺に上るための梯子に、引っかかっていた。
 町の者がひそひそと、煙突を指差しながら話していた。それによるとこうだ。あれは街で「傘男」と呼ばれていたそうだ。傘男は街中の傘をぶっ壊す鼻つまみ者であり、普段は大人しいが、一度壊すと止められないようだ。
 その時、一瞬。
 地面が揺れた。
 すると傘男の死体が落ちて来た。
 私は思わずよろけてしまったが、街の者達は傘男の死体の周りを取り囲んだ。あとは私のことを怪しい目つきで見ていた。
 酔っているんじゃないか?
 私と傘男だけが、この小さな揺れを感じていたらしかった。私は立ち上がり、ぺしゃんこに潰れてしまった男の死体を車に乗せると、一目さんに街を後にした。途中で内臓が垂れ、腕が千切れたが拾って元通り。その手にはしっかり折りたたみ傘が握られていた。よく見るとその傘も骨が折れ、壊れていた。

 私が帰ると、お風呂が沸いていた。ご主人様が沸かしてくれたのだ。
 服を脱ぎ、湯船に漬かる。
 すると友達も入ってきた。
 私は彼女の体を洗ってやり、その変わり彼女は私の体をぺたぺたと触る。彼女は興味本位で触る。私も触らせてやる。邪魔な時はやめろというが、基本的に自由に触らせてやる。髪の毛、顔、おっぱい、お腹、お尻、股、足を揉んだりする。触って形を変わったりする度にわぁとか不思議な声をあげる。
 ねぇ。
 何?
 前から気になっていたのだけれども。
 言って。
 貴方はおちんちんついてないの?
 ついてないよ。




7月1日

 ご主人様のお使いが終わり、ついでにその後、お土産でも買っていこうかと思い、甘味処へ寄った。
 そこには一人の女性が居たのだった。一人であんみつを突いていた。私はこの少女の事を、以前から知っていた。彼女は、例の悪童の頭領の鬼と一緒に歩いていたり、一緒の家に住んでいるという噂があった。
 饅頭をいくつか買い求めた。すると彼女から話し掛けてきた。
 貴方、あんまり見ないわね、どこの子なの?
 お姉さんこそ、誰?
 私? ここであんみつ食べてる普通の人よ。
 私は大きなお屋敷から来たんだ。ステンドグラスの綺麗なお屋敷だよ。
ステンドグラスって綺麗で、大好きよ。いつも綺麗だなぁって教会とかのステンドグラスを見るの、好きなの。
 私がいつもピカピカに磨いているんだよ。
 まぁ凄い。ねぇここで一緒にあんみつ食べない?
 私は一緒に食べることに決めた。あんみつはあまり好きではなかったけれども。
 あなた、可愛いのねぇ。いっつもお買い物に来ているの?
 そうだよ。ご主人様に頼まれるんだ。今日は干し魚と胡椒と、それから砂糖を買いに来たんだよ。ご主人様はいっつも干し魚と豆と胡椒で美味しいスープを作ってくれるし、砂糖と、庭で取れたイチゴを使ってジャムを作ってくれるんだ。
 まぁ優しいご主人様なのね。私、そんな優しい人に会ったことが無いわ。羨ましい。
 今度遊びにおいでよ。
 いいの? じゃあ遊びに行こうかしら。ところで貴方のご主人様の名前は、何ていうの?
 
 私は教えてあげた。すると彼女が一瞬顔色を変えた。
 そうなのね。彼女が、貴方のご主人様なのね。
 
 私のご主人様は、街中の者から嫌われていた。街の人間は、厭わしいと感じていた。
 心が読める、というそれだけで。
 お屋敷は、由緒正しきお屋敷である。私はそこに仕える執事のようなものだ。お屋敷の面倒を見て、古き時代のよき姿のまま残しておくのが私の使命だ。ばかな民の心を読み、導くのがご主人様で、私は少しでもそのお手伝いを出来れば良い。

 ねぇ。私のお家に遊びに来ない?
 いいの?
 いいわよ。
 私はお姉さんの手を繋いだ。彼女は嬉しそうに、私を家まで引っ張っていった。
 私と彼女は家に付いた。近くには教会があり、私の屋敷ほどではないが、ほどほどに立派なお姉さんはお茶と焼き菓子をご馳走してくれた。お姉さんは美人なのに、微笑むと、何故か目じりが下がり、悲しそうな顔を見せるのだった。
 くせ毛を整え、部屋着にエプロンをつけた。
 いっぱい食べてね。
 私は一つ手に取り、お茶を飲みながら咀嚼した。
 もうじき、夏がくるわね。
 そうですね。
 私、思うんだけど、ことは何かが違う気がする。何かがやってくる気がするの。
 彼女の部屋には大きなポスターが貼ってあった。それは鮮やかな色彩でこんな風に書いてあった。
「貴方達を解放します。おそろしい地底の呪縛から開放します。」
 これは何のポスターなの?
 あら、いつからこんなものがあったのかしら。気が付かなかったわ。あの子がもらってきたのかしら。
 彼女は首をかしげた。

 ところで聞きたいことがあるんです。
 何でしょう?
 今度、ご主人様の誕生日があるんです。どんなプレゼントがいいと思いますか。お金はかからないほうがいいのです。
 そうねえ。私なら断然、花束ね。
 私はお礼をして、彼女の家を出た。私はその後、野原に行き、色んな花を摘んだ。喜んでくれるだろうか。

 誕生日というか、気がついたら彼女の存在を認識し始めた日だが、取り敢えず誕生日と呼ぶことにした。
 彼女に花束を渡すと、彼女は空中で三回くるりと回った。しなやかな体を大きく反らして、笑顔を見せた。




6月27日

 奇妙な物を見た。街の人たちが、例のカルタ遊びに興じている。一体いつからこんなものが流行りだしたのだろうか?
 その日、大きな馬車が空を飛んでいると誰かが言っていた。夜の街、すっかり暗闇に飲み込まれた街の上を、白い馬の馬車が飛んでいた。




7月10日

 街中にポスターが貼ってあった。それにはこんなことが書いてあった。
「自由は地上からやってくる!」
 私は一枚剥がした。
 今日もまた大きな死体が上がり、現場に向かう途中のことだった。それは大きな湖の汀に浮いていた。
 それは大きな死体だった。水につかっていたせいで、ぶよぶよに変色している。
 手には傘を持っていた。
 全く別の傘男だった。
 死体には大きな文字が彫ってあった。
 よく判らない文字だった。
 大きな死体を運ぶのは一苦労だった。この日はとても暑く、汗が絶え間なく流れた。また、車から手足がはみ出ている。匂いがひどく、運ぶ途中で二、三度吐いた。
 私は絶えず、男に彫られた文字を読もうとした。
 読めなかった。
 それは数字であることが判った。
 様々な数字が書いてあるのだけれども、一向に何なのか理解できなかった。
 
 その後、穴へ死体を放り込み、私の仕事は終わった。
 午後はご主人様と一緒に、茸摘みへ出かけた。友達も一緒についてきた。今日は茸のスープの作り方を教えてもらう日だった。
 裏の林には良い香りの茸がうんと生えている。
 茸は木の生え際にしっかりと生えている。三人で摘む。
 まずは大きな傘の茸。
 そこそこ大きな傘の茸。
 小さな茸もついでに摘みます。
 もっと小さな色白の茸も忘れずに。
 名前はあるらしいのですが、特に三人は気にしておりません。彼女の友達はただ単にお父さん、お母さん、おねえさん、おねえちゃんの妹と呼んでおります。
 沢山摘みました。ですが林には摘み切れないくらい沢山の茸や薬草や山菜が生えています。彼等が摘み切れない物は、狸や狐が食べたりします。時には街からこの林の茸を摘みにやってきます。彼女のご主人様は快く承諾します。
 三人は一杯の茸を抱え、屋敷に戻ります。彼女の友達は鼻歌を歌ったり、ご機嫌です。彼女達のご主人様は抱えきれないほどの茸を持っていますので、時々落とします。彼女はそっと拾って自分の籠に入れます。
 次に、裏で飼っている鶏を絞めます。屋敷には鶏小屋が無いので、お隣のおばあさんから鶏を一羽、茸と交換してきました。彼女の友達は不思議な言葉を鶏にかけると、さっと鶏の首に包丁を走らせました。血が一直線に、庭の中に飛びました。
 毛を毟ります。本来なら部位に切って食べやすいようにするのですが、今日はまるまる一匹使うので、そのままです。
 内臓を取り、庭の水道で綺麗に身を洗います。内臓や血が残っていたら残さず洗い落とします。彼女が鳥の血潮を洗い落とす為、水道水を庭にかけると、庭に虹が生まれます。
 その間、ご主人様は茸を切っております。
 ふたりで鶏を持って行きます。首の骨、足などを取り除きます。
 鍋に鶏がらを入れます。
 強火で煮ます。あくが沢山でます。おたまで丁寧にあくをとりのぞきます。
 続きまして香味野菜を持ってきます。彼女はご主人様に言われたとおり、裏の畑で取れたたまねぎ二つ、にんじん一本、西洋ねぎ一本、薬草数種を持ってきて、切ります。この薬草に、このお屋敷に代々伝わる味の秘伝が隠されています。
 彼女は起用に切って行きます。また、薬草を教えられたとおりの通りの分量を容易します。そして鍋に入れます。ご主人様は野菜を鍋に入れる瞬間、困ったような顔をしていましたが、ちょっとくらいのことは平気なのです。
 これで決められた時間(これも、秘伝の一つです)煮込むと、元となるスープが完成します。しっかりと煮込むまで、お茶でも読んで待ちましょう。
 次に用意したベーコン、にんにく、そして切り刻んだとりどりの茸を小さな鍋に入れ、オリーブオイルで温めます。
 ここでもお屋敷ご自慢のたまねぎと馬鈴薯が登場します。食べやすい大きさに切り、一緒に炒めます。とても良い香りがします。
 小さな鍋が焦げ付かない程度に温まったら、先ほどの基となるスープを入れます。このスープは他の料理でも使えます。シチューの基にしたり、煮込み料理に使います。
 灰汁が沢山出ますが、取り除きます。
 味付けは塩分の強めのバターで。最後に塩コショウを振って出来上がり。茸のスープです。

 お米や、チーズを入れても、美味しいですよ!
 今日のスープは、ちょっと玉ねぎの香りが強いです。




7月24日

 友達は今日も消えた。との知らせを受けたのは納屋で発見した自転車を直していたときだった。自転車があれば少しは死体運びも楽になるだろうかと思っていた。
 きっと例のゴドーに会いに行ったのだ。
 ゴドーとは何だろうか。私は自転車を放っておいて、探しに出る。長い長い道のりを彼女は進んでいく。ゴドーを求めて。
 今日は例の大きな野原ではなかった。
彼女は野原とは反対方向へ向かう。反対方向へは、これは高い高い電波塔が聳え立っている。 
 電波塔は鉄骨の、頑丈なものだった。地底の天井まで届きそうなほど高かった。
 電波塔の傍で、蹲っている。
 ずっと空を見ている。
 私はそっと彼女の傍へ近づいた。何かを言っている。彼女はずっと虚空に向かって話していた。

 貴方は何で私に近づいたの。え、くれるの、それ? そんなにくれるの! 私、嬉しいなぁ。だって私、馬鹿だから。きっと、これからもみんなに迷惑かけるの。だから、ちょうだい! 私、それ欲しい!

 私は彼女の目の前に出た。
 あっ。
 ここで何してたの?
 お話してたの。
 誰と?
 ゴドーと!
 どんな話?
 大事な話。
 聞かせてよ。
 内緒。
 あの街中のポスターも、ゴドーがやったの?
 うん。ゴドーのもあるよ。
 そう。ゴドーのもね。他の人も作っているのね。
 ねぇ。ゴドーはね、すっごいの。持ってるの。ぜったいなの。皆信じているの。皆、信じることでもの凄い力持ってるの。どんなことでも叶えてくれるの。
 私は考えた。それは、宗教のようなものなのだろうか。
 ねぇ、お燐はゴドーを持ってる?
 私は首を横に振った。持っていない。
 私が頼んであげる。貴方に、ゴドーが来てくれるように。
 私はいらない。貴方とご主人様がいるもの。
 その夜、私は例のポスターを眺めた。どうも一枚一枚書いているわけではない。大量印刷で拵えたものだ。
 私には、大きな印刷機は持っていないが、手は持っている。螺子締めや大工の出来る手を持っている。ご主人様のくれた。
 私は画用紙と水彩絵の具を使い、大きな文字を書いた。
『この国には自由もゴドーもいらない、地獄へ落ちろ』
 私の隣では、友達が絵を描いている。 
ポスターが五枚仕上がった。ポスターをビニール袋で包み、濡れないようにした。私は屋敷を抜け出した。直したばかりの自転車は、油も打ってあるし、ぴかぴかに磨いてある。夜の街を滑っていく。
 自転車で五箇所ほど、例の電波塔や野原のバス停、街の煙突付近等にポスターを貼った。




8月10日

 地底の中が俄かに慌しい。
 今日は一日中雨の日だった。河童を着、鞄を持ってご主人様はどこかへ出かけてしまった。雨の日はそうしてどこかへ出かけてしまう。ついていくのは許されない。誰も彼女の邪魔をしてはいけない。誰も邪魔してはいけない。
 街の妖怪達は随分噂しあっていた。
 彼等曰く、外の世界から人間がやってくるのだそうだ。
 何の話だろうか。
 外の世界について、私はあまり多くを知らない。何故なら私はこの地底を出たことが無いからだ。
 一度だけ、ご主人様に聞いたことがある。外はどうなっているのか、と。
 彼女は言った。そう大したことは無い、と。地底と何の違いも無いと。
 私と友人は傘をさしながら、ぶらぶらと屋敷へつづく道を歩いている。食事が終わった後の、散歩していたのだ。すると、街から離れた場所で、一人の鬼と出会ったのだった。鬼は小さな無人駅の軒の下で、お酒のビンを口に運びながら雨宿りしている。
 わたしが何も見なかったふりをして通り過ぎようとすると、鬼は私達に話しかけたのだった。
 お前は何によって生きるか。
 え。
 お前は何によって生きるか。
 友達が私の後ろに隠れた。
 もう、行こう。
 でも。
 答えんか、え? おい、聞こえているのか! こっちへ来い!
 こちらを睨み付けると、一角の鬼は雨の中こちらへやってきた。そして私の手を掴もうとした。
 知らないふりをしようというのか。え、お前は目の前の困難でも知らない振りをするのか。え、こんな簡単な質問にも答えられないのか、え!?
 やめて。
 止めようとした友達が間に入った。
 お前が答えるのか! え、何のために生きる!
 友達の腕を取ると、思いっきり引っ張った。お空が叫び声をあげた。無人駅まで彼女を引っ張ろうとした。
 手を離せ、この恥知らず。
 私は鬼の頬を力いっぱい殴った。鬼がしりもちをつく。その隙に二人で逃げ出した。友達は泣いていた。いつもの発作に似ていた。
 二人でずぶ濡れになり、私達は屋敷に向かって走り出した。
 ご主人様は帰っていなかった。風邪を引かせるといけないので、風呂を沸かし、友達を浴室に放り込んだ。
 私は着替えをすませると、ベッドの下から猟銃を取り出した。二連式の散弾銃に弾を装填した。窓の外から外を覗く。目の前の川が今にも氾濫しそうなほど、激しく流れている。鬼はやってこない。
 家の静寂がいつにもまして濃かった。
 私は耳を澄ませ、また窓の外に意識を集中した。
 もしあの鬼が既に、この屋敷に侵入していたら。
 硝子の割れる音がした。
 私はリビングへ走った。
 リビングには先ほどの大きな鬼が佇んでいた。そして初めて気がついた。鬼は女だ。
 出て行け。
 私が銃を構えようとすると、ずんずん歩いてきて私の腰を掴み、持ち上げた。そして壁に思い切り叩きつけられた。壁にかけた絵画が落ち、不意に鳩時計が鳴いた。
 悪かったよ。でも、お前が悪いんだぞ。私を侮辱したんだ。
 鬼の目はすわっている。
 私はもう酔いはさめてるんだ。極めてまっとうな判断だ。悪かったと思ってる。でも、お前も悪いんだ。
 顔をぶん殴られ、腹も蹴られた。
 顔をそっと触ってみる。血が流れ、どこかが切れている。
 私は殆ど真っ裸でこちらを見ている友達を認めた。
 こっちに来るな。こいつは頭がおかしいんだ。
 あの子、貰っていく。
 何だって?
 貰っていくよ。可愛いから。これで許してやる。本当は全部貰うところだが、私も悪かったと思っているし。
 駄目だ。
 また、蹴られた。鬼はスカートのようなものを掃いていた。私を蹴るたびに下着が見えた。
 貰っていくんだ。
 そんなの許さない。絶対に。
 私が言うんだから、そうなんだよ。決まっているんだよ。たった今決まったんだよ。私がいうんだからそうなんだよ。だってお前は私に出会ってしまったんだよ。私に。お前はずっと、オイチョをしていたんだ。私と。んで、膠着状態だったものが、今日あんたは偶然インケツ引いちまったのさ。
 あたいは知らない。お前となんか遊んでいない。
 知らなかったの? お前だけじゃないよ。あの可愛い女の子も、お前のご主人様も、この薄汚い地底の連中も、みんな私と賭けをしていたのさ。みんな知らないだけだよ。無知なんだよ。どんなに勉強してもね、判らないことがある。私にしか判らないことがある。そして今日、お前達は今日私と出会っちまった。私はためしに話しかけてみた。そしたらお前は賭けに負けた。お前は賭けてるもの、一番大切なものを差し出さないといけない。何故なら。
 鬼が笑った。
 たった今、インケツ引いて負けちまったからな。
 私は賭けていない。
 賭けてたんだよ。あの子を。この屋敷を。ご主人様を。何もかもを。お前が持っているもの全部。私には見えるんだ、そいつが私に対して何を賭けているのか。
 息苦しい。鼻血が止まらない。歯が折れた。彼女はこれから私を殺すだろう。恐怖は無かったが、失禁した。頭がぐらぐらとする。立とうとすると、無理だった。足の骨がいかれている。
 じゃあ、貰っていくから。
 やめて。持って行かないで。
 私から、その子を離さないで。
 血と小便にまみれ、私は鬼の足を掴んだ。




8月18日

 私が寝ている間、いろんなことがあったようだった。
 寝ているといっても、例によって浅い眠りと覚醒の繰り返しだった。私は何と無く、外で何が起きているのか知っていた。
 私のなかにも、色んなことがあった。
 まず夢を見ていた。それはあの、知らない土地の光景だった。私はまた庭に佇んでいた。庭は、雪で真っ白になっていた。地底のどこか。広い広い地底のどこか。
 庭では二人の女の子が遊んでいる。
 私の夢に人の形をしたものが出てきたのは、初めてだった。
 私はその二人を見たことがあった。
 一番私の傍にいる女性だった。
 二人でかまくらを作っている。
 私は彼女達に話しかけようとしたが、何を言っても上手く伝わらなかった。
 これはこの人の、思い出なのだと思った。家からは、ブルグミュラーのアラベスクが流れている。
 私はかまくらの中を覗こうとしたら、思いっきり躓いた。

 私が目を開けたとき、友達が居た。わっと泣くと私に抱きついた。いつもの発作とは違う、普通に泣いている。傍にはご主人様がいる。
 鬼は?
 追い払いました。
 でも……。
 追い払いました。気にしなくていいです。
 はい。
 地底の天井から落ちてくる水滴は、徐々に勢いを増し、やがて小さな滝のようになった。やがて天井に穴が開いた。地底はパニックに陥った。しかし、パニックになった後、籠のようなものがゆっくりと降りてきた。
 それには地上の世界からやってきた使者達だった。彼女達はあっという間に地上の技術を使って地底を征服してしまった。地底の連中も抵抗したが、無駄だった。彼等は町を壊しまくり、その結果この屋敷にも来たのだそうだ。
 しかし人間達はこんなことを話していた。
 黒猫に邪魔されたのだという。
 抵抗する地底の民を蹴散らし、殺し、捕虜にしながら人間は進んだ。屋敷のものを物色して、屋敷の徴収しようとしたらしい。だが、黒猫が絶えず邪魔をし、彼等は不気味に思った。そして屋敷への侵攻は諦めたのだという。黒猫は突如、消えてしまった。
 勇敢な黒猫として、皆から称えられたらしい。
 屋敷は多少あらされたが、大きな被害は蒙っていなかった。
 となりの鶏をくれるおばあさんの家は、徹底的にあらされ、鶏は全て居なくなっていた。おばあさんもどこかへ消えてしまっていた。
 私は少しずつ歩けるようになった。
 お空に付き添われながら、必死に歩く訓練をした。
 何故なら私には仕事がある。街には死体が溢れているからだ。
 死体の放つ悪臭が、街を包んでいた。また、私達の屋敷で飼われている熊や鹿や狸や犬がバイオリンやオルガンを持ち出して、弾いていた。葬送歌だった。
 街は全てがめちゃくちゃだった。
 いつも行く本屋も、八百屋も、甘味処も荒らされていた。一体どんなやつがここにやってきたのだろうか。中には地上に連れて行かれた者もいるという噂だった。ポスターも増えていた。歓迎巫女様魔法使い様と書かれたポスターだった。よく判らないが、兵士のことらしい。
 今まで作られていたポスターは、地底の住民達が作っていたのだった。

 友達も少し変わっていた。
 彼女の顔つきは少し鋭くなった。ご主人様が言うには、地上の人間(例の巫女様、魔法使い様らしい)が攻めて来た際、先陣を切って抵抗したらしい。言葉も前と違って、考えて使うようになり、成長したらしかった。ただ、物忘れはいつもの通り。指を咥える癖は直った。発作も無くなった。何かが違う。

 ご主人様は口数が何故か多くなった。
 以前より明るくなり、色んな民と交流も持つようになった。昔のように閉じこもることも無くなった。ただ妹様の話をすると、何も言わなくなってしまう。恐ろしく不気味だった。 

 彼女は言った。地上の連中が攻めて来た際、街中から人が居なくなったらしい。
 私は想像した。一斉に人が消えた街のことを。
 ゴドーは現れた?
 一回だけね。
 何か貰ったの?
 よく判らない。
 
 彼女は首を横に振った。


 私は……。














 
 ずっと昔のことだった。
 ずっとずっと昔の話だった。
 私がまだ、小さな四本の足で歩いていた時の事だった。
 庭に、小さな木が植えられている。成長途中の、しらかしの木だった。
 私はしらかしの木の下に、小さく揺れているものを感じた。
 初めは何なのだろうかと思い、遠くからその揺れているものを、見つめていた。
 その揺れているものは光だった。
 光は木の下で揺れていたが、光は消えてしまった。
 目を凝らすと光はそこら中に満ちていることが判った。屋敷の中、庭。光は時折、不思議な形になった。形は色んな形に変形した。変形した光はあちらこちらに、姿を変える生き物だった。
 それは風に乗って、どこかへ飛ばされていった。
 私はその姿を追いかけた。風に乗ったそれは、ぐんぐん突き進んでいく。私は壁から壁へ、家から家へと駆け抜ける。
 それが辿り着いたのは、教会だった。今はもう、火事で無くなってしまったけれども。
 教会の十字架の先に光が止まる。
 あれは天使なのかしら。
 猫は首を傾げる。
 猫は昔、聞いたことがあった。それは嘗て、ご主人様が生まれた場所であるということ。そうか。これはきっとご主人様の生きた場所に宿る何かなのだと、判った。屋敷に戻ると、光が満ちていることが判った。私はその光に触れてみる。特に何も感じない。光は陽光と一緒に溶けて消えた。人生で一度だけ見えたそれを、忘れることは出来なかった。

 私と友達、二人で自転車にまたがり、街へ向かう。その途中、そんなことを友達に話してやった。
 友達は何も言わず、荷台からぼんやり風景を眺めている。
 あれはご主人様を見守っているの。
 私は言った。
 きっとご主人様のお父さんとお母さんだ。
 ぽつりと、彼女が言った。
 あの日から、地底から死体が消えた。沢山の死体を片付けた後、死体は出現しなくなってしまった。
 たまに頼まれて仕事に行くと、老衰や病気で死んだ者の死体を引き取る程度。徐々に仕事は減った。
 地上から人が降りてくるようになり、私達の地底は徐々に賑やかになっていった。観光地みたいになっていった。いつも行っていた本屋は、お土産屋になっていた。
 ちょっと寄り道しようか。
 私達はちょっと寄り道をした。自転車のペダルをこぎ、私達がやってきたのは砂漠、とよばれている地帯だった。
 これほど湿気の多い場所にも係らず、このように何もかも砂の土地がある。
 本当に何も無い。ただ砂だけ延々と地平線まで延びている。
 昔は大きな街があったらしいが、砂の侵食が進み、街そのものを飲み込んでしまった。街の名残を残すのは、今では砂漠の真ん中に立つ、時計塔だけだった。時計は止まったままだったが、レンガで出来た時計塔は頑丈そうだ。
 こんなところ、あったんだ。知らなかったよ、私。
 彼女は言った。
 私は言った。死体を捜していると、色んな場所が判る。死体は少なくなったけど。でも探検は出来る。だから、明日からは一緒に自転車で死体を捜しに行こう、と。地底はまだ広いし、きっと驚きや発見があるんだ。
 彼女は言った。
 でも、でもね。指を差した先には、地底に開いた穴。一時間に一度、電気で動く籠がおりてきて、それは地上との交通路らしかった。
 私、今は地上に行きたい。もっといっぱい見たいの。ご本で見たもの、全部みたい! 太陽も月も、星も全部みたい! 
 駄目だよ! 外は危険で溢れているの。貴方はここで生きなきゃ。あたい達は、ここじゃないと生きられないの。あたい達は、ここじゃないと生きられないの! 貴方は屋敷は大事じゃないの?
 大事だよ。大好きだよ。みんな。でも、いつか出て行かなくちゃいけないような……。
 そんなの異常だ。
 嫌だよぅ。外に出たいよ。ねえ、お燐も一緒にお外に出ましょうよ。ご主人様も妹様もいっしょに! 外に。楽しいよ。
 嫌だ。私は外に出たくない。私には屋敷があるんだ。
 その時、あの揺れが再び私達を襲った。今度は長く、横に振れるように地面が動いた。私はとっさに彼女を押し倒した。
 何するの?
 判らないの? 揺れてるの! 身を小さくして。危険よ。きっとあの籠のせいよ。きっとおかしくなっちゃったのよ。全部、あいつらのせいだ! あいつらが余計なものを持ってきたんだ。全部おかしくなったんだ。
 違うよ。揺れていないよ。気のせいだよ。ほら、全然平気だよ。確かにあいつらめちゃめちゃやったけど、逆に良くなっているかもしれないよ!?
 彼女は私の体をはねのけ、ぴょんと立ち上がった。彼女の姿が二重や三重に増えた。
 私は恐怖と揺れの酔いのあまり、砂に胃液を吐いた。内臓が痙攣して、思わずまた倒れた。
 助けて上手く歩けない。

 彼女が私の肩を抱きしめる。
 ごめんね。知らなかったんだ。こんなこと。大丈夫、ずっと傍についているから。地上には無理に連れて行かないよ。一緒に帰ろう、ね。おんぶしてあげるから。自転車は後でとりに行くから。私、一人で自転車に乗れる様になったんだよ。

 揺れが小さくなるに連れて、こんなことを考えた。
 確かに外の世界に、彼女を連れて行くのは結果的に、彼女の為になるかもしれない。情緒教育になるし、何より彼女が行きたいと行っているのだ。一緒に行くためには、私も勉強しなくてはならない。まずは、外に出て、何があるのかを学ばなくてはならない。私達を敵視しているものも多いだろう。初めに、あいつらに取り入ってみよう。また、難しい計算や言葉も覚えないといけないだろう。外で新しい商売も考える必要があるかもしれないからだ。地底のばかな民から集まった税と、私の死体処理の仕事だけでは屋敷は逼迫していくのは目に見えていた。何より私が屋敷を支えているのだ。
 それに地上の連中の考え方も学ばないと。とてもじゃないが、私達と連中には、考え方に差異があるのだ。まずは異常な連中の考えも、勉強しなくてはならない。紙に複雑な計算式や新しい言葉の作文を書いて、書いて、また書いて……。





 
よんでくださって有難う御座います。
佐藤厚志
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.500簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
いい
2.90奇声を発する程度の能力削除
言葉で表せない何かがありました
3.10名前が無い程度の能力削除
何でそんなに東方嫌い何ですか?
4.80名前が無い程度の能力削除
いつの間にかおわりまで読まされていた。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
この作品に点数をつけること。今それをすることは早計でしかなく、生粋の愚か者である私にはやはり難しい。
今作を読んで思った。あなたの文章を画面上で読むのは正直苦痛だ(嬉しい事に)。
某合同誌に掲載されていたあなたの話を先に読んでいたが為に余計そう感じるのやもしれませぬ。
しかるべき媒体で読みたいと乞い願う。

ただただ惹かれるばかり。
7.100名前が無い程度の能力削除
こんなに意味不明なSSは久しぶりだ。
こんなに意味不明なSSを最後まで読んだのは初めてだ。
8.100名前が無い程度の能力削除
時々ふふっと笑いながら読み進めてた。ギャグなのか偶然なのか判断のしづらい所です。
しかし、なんですね。慣れてるつもりだったけどやっぱりアクが強い。読んでる最中に「え、地底なの」とか「いや、地底だとはさっき言ってたけど夕陽あるの」とか混乱しながら読んでました。何か普通に人間居るし。
でもそう言うもんなんだと思って読むとあら不思議。すんなり入って来る。面白かったです。
でも九十点なのはなんだろう、きっと勘と言うか、べた褒めするのも違うと言うか。自分で完全に理解できなかったからかなあ。分かってないのに百点付けるのもどうかと言う感じで。
あれだ、九十点が似合う作品ってのも中々無いですよ、と。
ああ、でもこんな事書いてる間に百点入れたくなってきた。クソッ、惑わされてるな、俺。
10.100名前が無い程度の能力削除
少しばかりロシアの古典っぽい、あるいは明治から大正にかけての日本文学っぽい、じっとりと不安に駆られる文章でした。
脱字が惜しい気がしました。
11.100名前が無い程度の能力削除
佐藤さんの作品でこの手の青春ものっぽいのが読めるとは、とっても嬉しい

これからもこういうの読ませてくれると最高だなあ
14.100名前が無い程度の能力削除
読み終わった後に、思わず息を吐いてしまうような感じ。
素敵でした。
17.90名前が無い程度の能力削除
合う合わないが強い作品。私には合わないが、
結局最後まで読んだ。
納得いかないのはタイトルと内容の関連性がわからないこと。
わかる人にはわかるのですかね?
まあ、わかろうと思いませんが。
表現、構成は非常に上手いと思います。
19.無評価名前が無い程度の能力削除
わからんというのが正直な感想
故意に言葉を削ってるのかこういった物語なのか
どこか漂う不安さと雰囲気は良かった、自転車に乗ったりバス停があったり、普通に東方SSやったら出せないアイテムが自然に出てくる
自分には点数がつけられん作品です
25.90名前が無い程度の能力削除
>こういうの好きなんだしょう?
好きなんでしょうの誤字かと

話がどこへ向かったのかよく分らなかったんだけど、最後まで読んでしまったしこの点数で
26.80名前が無い程度の能力削除
不気味系ナンセンス
27.100かたる削除
もうかれこれ十回ほど読み返したのですが、ついに感想をうまく言語化できませんでした。
とにかく佐藤さんの描く地底世界はいつも私の想像の斜め上で、読むたびにそのギャップからくる「読む楽しさ」がたまらないのです。作中の言い回し、描写、構成、世界観。どれをとっても刺激的で、かつ魅力的です。勉強させていただきます。
素晴らしい作品をありがとうございました。
29.無評価100点削除
貴方の作品がとても好きです。
どうか貴方の地霊殿をもっとみせてくださいな。
…些か残酷なさとりの妖怪が見たいです。
次回作を本当に、本当に楽しみにしております。
30.100白木の水夫人形削除
面白かったのです
32.90保冷剤削除
僭越ながらこういう文章になるときの癖を知っている気がします。なんかもうとてつもなく前のめりでギンギンに滾っているときなんかがそうです。だというのに不思議なことに内容それそのものは沈痛とさえいえるほど重っ苦しい。
地底解放や耐乏生活も友人や慕う主人がいれば十分に楽しい物になることは想像に難くないしよく解るのですが徹底してその裏側というか、キツイ面を強調している。地霊殿をして葬儀場というかフューネラルな場所としているのは含蓄深いなと思いました。まだなにかある気はするので、ゆっくり読み込むことにします。
33.100名前が無い程度の能力削除
ペットたちは、こうであったんですね。
読めて嬉しいです。ありがとうございます。