あけましておめでとうございます。博麗神社へようこそ♪
毎年元旦は年初めにして神社最大の稼ぎ時。正直疲れるし面倒だけど、私だって巫女としてここは頑張らなくちゃね♪
それにほら。これだけ多くの参拝客が神社に参ってお賽銭を投げ入れてくれると考えるだけで、俄然やる気がでるもの。
相変わらず妖怪が多い気がするけど、それは幻想郷だし仕方ないわね。それだけ博麗神社が愛されている証拠でもあるしね♪
東方十二憑 ~ Monster Organize Calendar.
壱憑ノ朝 ~ January.
けど、毎年元旦で頭を悩ませることが一つあるのよ。
そこ、毎年頭が春の癖にとか言うな!私だって悩みの一つや二つくらいあるのよ!
で、その肝心の悩みなんだけど、毎年毎年が奴等が来るのよ。
散々騒がしく暴れた挙句、賽銭もくれずに神社を嵐に来る奴等が……
何回も何回も大晦日のたびにきつい封印を施しても平然とそれを打ち破り、元旦に堂々と参拝という名の冷やかしにやってくる。
そう、地獄の鬼神と魔界の天使の迷惑コンビが……今年もやってきちゃった。
「「れいむ~♪今年も来たわよ~♪♪」」
「今年も来るなああああああああっ!!」
東方靈異伝 ~ The Highly Responsive to Prayers.
「年初めの神遊び ~鬼神天使巫女悪霊それと甘酒ね~」
「毎年毎年、参拝客を掻き分けてこっち来るのやめなさいよ! 年初めにして最大の稼ぎ時なのよ!!」
目の前の大人ほどの女性二人に向かって私は新年初怒鳴りをぶちかましてやったというのに……
うっわー、ニコニコと鑑賞してるわよ、こいつら! 毎年毎年腹が立つわね!!
というか後ろの参拝道は何よ。石畳に人一人妖怪一匹もいないし、そう思って周りを見渡したらみんな横道に避けてるし……モーセかあんた等は!
「我々ラストボスはこうして年初めに参拝客に恐怖と偉大さを示してやら無いと調子が狂ってね」
貫禄ある声でそう答えるのは一本角とポニーテールがチャームポイントの着物が似合う地獄の鬼神……矜羯羅(こんがら)だ。
剣使いの癖に鬼火と斬撃弾幕が得意な理不尽な奴よ。そんな奴はたくさんいるけどね。
「やはりラストボスは参拝客ぐらい手を出さずとも掻き分けないとね♪」
明るくも淑女的に振舞うのは六枚翼が神々しいと噂の魔界と天使……サリエルだ。
元祖第二形態ファイナルスペルは初期の私には強烈なトラウマだったわ。地霊殿の主人も再現不可能だったし。
「その行為が私や周りには迷惑行為なのよ! 敵キャラは他人を困らせて何ぼだけどね。せめて元旦くらいは……って!」
「そういえば菊理、元気してる?」
「元気してるかどうかは知らんが、のんびりはしている。地霊殿の動物に悪戯されても寝てるくらいにね」
「あら、相変わらずのほほんとしているわね。うちは幽玄魔眼がドライアイに悩まされるし、エリスは蝙蝠の世話ばかりで大変よ!」
「いやいや、平和でいいじゃないか☆ それと神玉は……」
「人の話を聞けぇーーーー!!」
私への挨拶を済ましたと勘違いしているボケなラスボス二人は早速世間話に移っていたわ。この境内での発言権は私にあるのよ!
周りも周りで横道からお捻りとか渡してるし……お願い!それはうちの賽銭箱に入れて、お願い!!
「ところで魅魔は元気しているか? 最近見ないようだが……」
「あまりの出番のなさにとうとう成仏したんじゃないの♪」
「失礼ね! あたしゃまだここにいるよ!」
あいつ等が余計なこと言うから、また厄介な奴が増えたじゃないの!
私の背後から突然実体化した緑の三角帽子は輪廻の悪霊、魅魔だ。
こいつもまた何度封印してもそれを打ち破り、気が付いたら博麗神社の神にまでなってしまったわ。
彼女が(祟り)神になってから賽銭が微妙に増えたが騒動も微妙に増えたというのが何かムカつくわ!
「お久しぶりね、魅魔。そちらから見た霊夢の調子はどうかしら?」
「相変わらずぐうたらしてるわね。どんなに修行しても次回作にはレベル1に戻ってる。まるで赤毛の冒険者だよ」
「鬼畜勇者でさえレベル10は維持してるのにね。彼女魔界の辺境でまた迷惑かけたのよ」
「その前は地獄の辺境にね。まあこちらは地獄側が原因なのだが……」
「いいわよ、矜羯羅。そのおかげで久々に地獄に故郷帰りできたしね☆」
完全に私は蚊帳の外のようね。はあ、今年も幸先悪いわ……次回作は幻想郷が水没でもするのかしら?
それとも宇宙空間まで飛ばされるのかしら? いやシリーズの法則からして大乱闘祭りかしら? どちらにしても私はのんびり茶も飲めないわけで……
「あら、霊夢が柄にもなく悩んでいるわよ」
「お前が悩むと頭から春が出てこなくなるぞ!」
「新年早々めでたく無い巫女だねえ」
煩い黙れ原因どもめ! そんなに心配ならば賽銭していきなさいよ!!
『ふ~ん、それなら……』
ちゃり~ん♪♪
あれ? 今綺麗に三人そろってお賽銭を入れたような……
私は初夢でも見ているのかしら? でもあの輝きは紛れもなく私への感謝と信仰の輝きであって……え? え?
『これでいいんでしょ、霊夢?』
「あ……あんた達……うっ……うっ……」
初泣きした。今私は猛烈に初泣きをしてこの世の素晴らしさを感動しているわ。
なんだかんだいってもあいつ等は神だったというわけなのよ……ばんじゃ~い!!
『れいむ~♪、あまざけのみたいの~☆ あまざけちょうだい♪』
「任せておきなさい! あんた達の為に最高の甘酒を振舞ってあげるわ!!」
****** いちつきなのかー ******
一般的に甘酒には二種類の製造方法があるの。米こうじと米の粥を混ぜて一日発酵させて作る本格的製法と酒粕と砂糖を混ぜて煮込む簡略製法よ。
あの三人に振舞うのはもちろん本格的製法のもの。手間はかかるけど、酒粕の刺激臭がなく、自然な甘味と酸味を味わえるのよ。
「全く、賽銭してくれた程度で甘酒を振舞うなんて私も甘いわね。うん、一日置いた甘酒は甘酸っぱい☆」
ギュルンギュルンギュルン!!
「冷まして良し、温めて良し、日本文化が生み出した素晴らしい飲み物ね♪」
本来甘酒は夏バテ予防に飲まれていた説が強い。それから元旦に温めて飲む習慣が後々始まったというそうよ。
甘酒に含まれている栄養素はビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、すべての必須アミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれているわ。
詳しくはわからないけど、要するに健康飲料ってわけよ。
ジャギィン!ジャギィイン!ジャギギィィイイン!!
……ってさっきから何か居間でうるさい金属音が鳴り響いているんだけど?
****** いちつきなのかー ******
「ちょっと、あんた達待つなら静かに待ちなさ……きゃああっ!!」
今切れた! 私の横を何か金属飛行物体が飛んできて私の黒髪をばっさり切った!
「ななななな何よ! それ!!」
私は三人が持っている金属物体を指差してガクガクと叫んだ!
見たところ独楽(こま)のようだけど、その周りには刃がこれでもかというほど施されていたわ。
「何って知らないのかい? ベイカタナだよ!」
「ベイゴマ+カタナでベイカタナ……わかりやすいでしょ!」
「霊夢もやるか? スリル満点で楽しいぞ♪」
私が九死に一生を得たというのにこいつ等はケラケラと楽しそうにベイカタナとやらを見せびらかしている。なんていう神経してるのよ!!
「冗談じゃないわよ! こっちは危うく首が飛ぶところだったのよ!!」
「そこがいいんだよ。地獄でも大流行でさ、大会規模になると鬼の首が面白いように……」
「ああぁぁーーっ!聞きたくない!聞きたくない! とにかくそういうのやるなら外でやりなさい! 元々独楽は外で遊ぶものでしょ!」
矜羯羅の恐るべき事実を遮断して外に行くように促す私。地底が恐れられているのは、もしやベイカタナの存在なのでは無いだろうか……
「霊夢がそういうなら、まだ参拝客が耐えないけど、外で遊ぶことにするよ……」
「ベイカタナは大勢のいる前でその殺戮力を発揮するからねえ……」
「うふふ……私達のベイカタナで何人死ぬかしら♪」
文々。新聞 元旦増大号 『元旦血染め式 博麗神社ベイカタナ大会』
元旦のめでたい雰囲気の中、矜羯羅、サリエル、魅魔の三名が刃のついたベイゴマ『ベイカタナ』大会を急遽開催した。
~中略~
なお、この大会で弾き飛んだベイカタナの影響で死者8名・負傷者90名が出た模様。
この影響で博麗神社の参拝客が減少するのは確実であろう。
「ちょっと待て! 外に出るな! 今すぐ甘酒を振舞うからおとなしくしてなさい!」
『えー』
「えー、じゃない!」
危ない危ない、参拝客大幅減少イベントが起こるところだったわ。全く、大量虐殺を笑いながら実行しようとするあたり、トップクラスの妖怪なだけはあるわ。
****** いちつきなのかー ******
「やっぱり、参拝した後の甘酒は温かくて良いわね~」
「そうだね~、元旦はやはりこれだね~」
「霊夢の作る甘酒は特に最高だよ~」
「まともな参拝をしてないくせによく言うわ~、ふぁ~」
どんな種族も甘くて温かい物に癒されるのは当たり前ね♪ 今こうして私達は心を一つにして待ったり中よ♪ あ~、目が線になるほど抜けていく~~~
「さて……身体も温まったところで……福笑いでもしましょうか?」
そういってサリエルはその長いスカートの中から、ポスターのようなものを取り出した。もっとマシなところにしまいなさいよ。
それはさておき、ポスターにはのっぺらぼうな顔がでかでかと写っていて、ポスターの上には様々なパーツがちりばめられていたわ。
ふと、右端に写っていた見本を覗いてみたんだけど……
※みほん
_,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_
-''":::::::::::::`''> ゆっくりしていってね!!! <
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
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|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 'r ´ ヽ、ン、
::::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 ,'==─- -─==', i
r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i |
,' ノ !'" ,___, "' i .レ' L.',. ヽ _ン L」 ノ| .|
( ,ハ ヽ _ン 人! | ||ヽ、 ,イ| ||イ| /
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「…っぷ、何よこの間抜けな…ぷはぁっ、顔は……あはははは!!」
「間抜けな顔って……ぷはは……あんたと魔理沙の顔でしょ……いひひひひ!!」
これがまたおかしくておかしくて、私は魅魔とそろって爆笑したわ。
「誰よ、ぷぷっ……こんな可愛いようでムカつくイラスト描いた奴は……あははっはっ!」
「私のところのエリスが描いたのよ。にしてもあなた達笑いすぎ!」
「気持ちはわからんでもないがな……くくくっ!!」
「矜羯羅、あなたまで……」
完成品でさえ可笑しいのに、私達が目隠しで作ったらどうなるのよ!
まあ、そんなわけで私と魅魔、矜羯羅とサリエルに分かれて福笑い対決が始まったわ。
「ちゃんと誘導してよね、魅魔」
「任せときなさい! あっちよりいい作品に仕上げるよ!」
魅魔の誘導にしたがって私が並べて、左側のれいむの完成に挑むわ。
「全てはお前に任せるぞ、サリエル」
「そっちこそちゃんと動いてよね、矜羯羅」
一方、右側のまりさは矜羯羅が並べ役、サリエルが誘導役みたいね。負けないわよ!
****** いちつきなのかー ******
開始から3分ぐらいが経過したみたい。目隠しされているから状況はよくわからないけど、魅魔の威勢のいい声と私自身の手際速さから、私達のチームが優勢ね。
このまま完成させ……
「ところでさぁ……魔界に住んでる聖さんいるじゃない、クレリックの」
「ああ、彼女の魔法は芸術的で私は好きだぞ」
突然、サリエルと矜羯羅が話し合いを始めた。こんなときに何故、聖の話を……
「彼女、ロングヘアーに見えるけどさ……アレ実は修道帽なのよ」
「あれが?!」
「ええ、だから「南無三」って叫んだときにアレがずれてつるっぱげがテカテカと……」
「ぶっ!!」
「ぷはははははははっ!!」
次の瞬間、私の手元が狂い、魅魔の誘導が笑いへと変わってしまった。
だって……くく……あのロングヘアーがずれて……ぷぷぷ……つるっぱげ……あはは……
「あんた達ぷはは……笑い話で集中力切らすとかあははは……卑怯じゃないの!」
「こういうのは心理戦なのよ。どんな状況でも冷静にいられたほうが勝つものよ」
「そういうことだ。さすがに今のは私も吹きそうになったがな……くくく……」
何とも言えない悔しさでちょっと涙が出た。こういうとき目隠しは助かるわ。こんなのあいつ等に見せたくないもん!
「ははははははははは……はっくしょん!!」
するとさっきまで笑っていた魅魔がそのままの勢いでくしゃみをしたわ。
ちょっとこっちに唾が飛んで汚かったけど……
「あーっ!! まりさの顔が!!!」
「あはは……すまないねぇ……笑いすぎてくしゃみが出ちゃったようね……ぷくく……」
「こいつ……絶対わざとやってるわね……」
サリエルの悲鳴から察するに、どうやら魅魔はくしゃみでまりさの顔を吹き飛ばしたらしい。ナイス仕返しよ、魅魔☆
「やれやれ、またやり直しだな。今度は邪魔するなよ!」
「そっちこそね!」
私と矜羯羅は目隠し越しに睨み合った後、再びパーツを手にとって間抜け面へと置いていったのだった。
新年早々、如何様(イカサマ)なんてするもんじゃないわね。
****** いちつきなのかー ******
そして数分後……私達の福笑いが完成したわ。その出来はというと……これよ!
※完成品
_人人人人人人人人人人人人人人人人_
_,,. ... , ;;ヾ >ゆっくりした結果がこれだよ!!! <
ヽ:::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
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「ぷぷっ……」
「くくっ……」
「うはっ……」
「うふふ……」
『あーっはっはっはっはっはっは!!!!』
これはもう笑うしか無いでしょ! 見本でさえ間抜けな顔がさらにあられもない姿になったのだから……
「こ、これなによ、あはは! すっごい不細工くくく……」
指差して涙を流すほど汚い顔で笑うサリエル。魔界の天使の称号が台無しね。
「指示出したの、ははっ、お前等だろ……ふはっは! 真面目にやれよ……あっはっははぁ!!」
畳をドンドン叩いて笑いを表現する矜羯羅はある意味鬼神らしかった。でもうちの畳は壊さないでほしいわ!
「にしてもほんと酷いわね、あははは……これ誰の顔よ……ぷっ♪」
腹を抱えて前後に揺れているのは私。だって本当にこの顔……あはははは!!
「あんたと魔理沙だよ、ぷっはははっ!! 満身創痍(ゲームオーバー)の顔なんてまさにこれよ! あーっはっはっはっは……」
笑いながらごろごろ転がる魅魔の顔も大して変わらないでしょ! 失礼な奴ね!!
『はーーーっはっはっはっはっはっはっはっは……』
私達は恩讐なんかを賽銭箱に投げ入れて、楽しく楽しく笑い続けた。福笑いの周りで爆笑する少女達は新年早々縁起の良いものね♪
……いや、誰がなんと言おうと縁起が良いんだってば! 少女じゃない? そういうことは言っちゃ駄目よ!!
****** いちつきなのかー ******
「ふう、今年も年初めによく飲んでよく笑った♪」
「やっぱり甘酒は博麗神社ね☆ 山のところの神社はありがたみがないのよ、なんとなく?」
「矜羯羅もサリエルも嬉しいこというわね(はぁと) まあ私が神様として君臨しているから当然といえば当然だけどね♪」
「だから何時あんたがここの神になったっていうのよ、魅魔!」
今年も散々騒いで矜羯羅とサリエルが帰っていく。でもって魅魔は今年も残っている。そして私も巫女をしている。
何だかんだ言いながら、この恒例は続いているのね……
「とりあえず、来年からベイカタナは他所でやってよね!」
「えー」
「えー、じゃない!!」
私が巫女として異変として挑み、対峙して退治した本格的な相手。それが地獄の鬼神と魔界の天使である彼女達だったわ。
思い返せば、あの時は初めての地獄と魔界にわくわくしつつも、ビクビクしてたわね。今は変な奴等が増えたからそれほどでも無いけど♪
「それじゃあ、締めに博麗神社でお参りと行こうか、サリエル?」
「お参りねえ……まるで初詣みたいで楽しいわ♪」
「あんたら……もしかして初詣じゃなくて冷やかしに来たって言わないわよね?」
とんでもない相手はとんでもなく強くて……いざ、倒れ逝くそのときまで死なばもろとも、って覚悟で戦っていたっけ。
でもその相手はこうしてごく普通?に参拝しているわ。不思議で素敵なことね。
「さあさあ、早くお参りしなさい。御二人さん☆」
「だから何で魅魔が仕切ってるのよ!」
「私は神だよ?」
「どの口でそれをほざくか!!」
「えーむ、くひひっぱふろひゃーうぇーれー!!」
今口を引っ張っている相手とも始めて地獄で出会ったんだっけ? あの時は……いや、今も苦しめられてはいるけど、神社で割と仲良くやっている。
本当に……不思議で素敵なことね。
「昨年、地獄は温泉と怨霊だらけでめでたい祭りが行えました」
「昨年、魔界は観光客が増えて大量殺戮が増えました」
『これもひとえに博麗霊夢と魅魔の呪いのおかげです☆』
……って、こら! 人が綺麗に感傷に浸っているというのに!!
『今年も霊夢が1面で満身創痍になりますように♪』
「不吉なこと祈ってんじゃねえええええええーーーっっ!!!」
「きゃあきゃあ、霊夢が夢想天生使ったわよ♪」
「こりゃかなわんな!逃げるぞー♪」
こいつらは毎年私の満身創痍を祈願してくるのよ! しかも毎年的中するから本当にイライラ来るわ!
はぁ……何でうちの神社はこういう願いばかりかなえてくれるのかしら? そんでもって私はお約束の一言を言ってこいつ等を見送るの、毎年ね。
「全く、また来年も来なさいよね!!」
ああ、だから毎年来るのね、あの鬼神と天使は……私はその一言を毎年忘れて怒鳴り散らすのね……
それで、悪霊の一言で綺麗にまとまるのよね。毎年毎年……
「それじゃあ、今年も良い年になるよう、よろしくお願いするよ☆」
はいはい、良いお年を……♪
毎年元旦は年初めにして神社最大の稼ぎ時。正直疲れるし面倒だけど、私だって巫女としてここは頑張らなくちゃね♪
それにほら。これだけ多くの参拝客が神社に参ってお賽銭を投げ入れてくれると考えるだけで、俄然やる気がでるもの。
相変わらず妖怪が多い気がするけど、それは幻想郷だし仕方ないわね。それだけ博麗神社が愛されている証拠でもあるしね♪
東方十二憑 ~ Monster Organize Calendar.
壱憑ノ朝 ~ January.
けど、毎年元旦で頭を悩ませることが一つあるのよ。
そこ、毎年頭が春の癖にとか言うな!私だって悩みの一つや二つくらいあるのよ!
で、その肝心の悩みなんだけど、毎年毎年が奴等が来るのよ。
散々騒がしく暴れた挙句、賽銭もくれずに神社を嵐に来る奴等が……
何回も何回も大晦日のたびにきつい封印を施しても平然とそれを打ち破り、元旦に堂々と参拝という名の冷やかしにやってくる。
そう、地獄の鬼神と魔界の天使の迷惑コンビが……今年もやってきちゃった。
「「れいむ~♪今年も来たわよ~♪♪」」
「今年も来るなああああああああっ!!」
東方靈異伝 ~ The Highly Responsive to Prayers.
「年初めの神遊び ~鬼神天使巫女悪霊それと甘酒ね~」
「毎年毎年、参拝客を掻き分けてこっち来るのやめなさいよ! 年初めにして最大の稼ぎ時なのよ!!」
目の前の大人ほどの女性二人に向かって私は新年初怒鳴りをぶちかましてやったというのに……
うっわー、ニコニコと鑑賞してるわよ、こいつら! 毎年毎年腹が立つわね!!
というか後ろの参拝道は何よ。石畳に人一人妖怪一匹もいないし、そう思って周りを見渡したらみんな横道に避けてるし……モーセかあんた等は!
「我々ラストボスはこうして年初めに参拝客に恐怖と偉大さを示してやら無いと調子が狂ってね」
貫禄ある声でそう答えるのは一本角とポニーテールがチャームポイントの着物が似合う地獄の鬼神……矜羯羅(こんがら)だ。
剣使いの癖に鬼火と斬撃弾幕が得意な理不尽な奴よ。そんな奴はたくさんいるけどね。
「やはりラストボスは参拝客ぐらい手を出さずとも掻き分けないとね♪」
明るくも淑女的に振舞うのは六枚翼が神々しいと噂の魔界と天使……サリエルだ。
元祖第二形態ファイナルスペルは初期の私には強烈なトラウマだったわ。地霊殿の主人も再現不可能だったし。
「その行為が私や周りには迷惑行為なのよ! 敵キャラは他人を困らせて何ぼだけどね。せめて元旦くらいは……って!」
「そういえば菊理、元気してる?」
「元気してるかどうかは知らんが、のんびりはしている。地霊殿の動物に悪戯されても寝てるくらいにね」
「あら、相変わらずのほほんとしているわね。うちは幽玄魔眼がドライアイに悩まされるし、エリスは蝙蝠の世話ばかりで大変よ!」
「いやいや、平和でいいじゃないか☆ それと神玉は……」
「人の話を聞けぇーーーー!!」
私への挨拶を済ましたと勘違いしているボケなラスボス二人は早速世間話に移っていたわ。この境内での発言権は私にあるのよ!
周りも周りで横道からお捻りとか渡してるし……お願い!それはうちの賽銭箱に入れて、お願い!!
「ところで魅魔は元気しているか? 最近見ないようだが……」
「あまりの出番のなさにとうとう成仏したんじゃないの♪」
「失礼ね! あたしゃまだここにいるよ!」
あいつ等が余計なこと言うから、また厄介な奴が増えたじゃないの!
私の背後から突然実体化した緑の三角帽子は輪廻の悪霊、魅魔だ。
こいつもまた何度封印してもそれを打ち破り、気が付いたら博麗神社の神にまでなってしまったわ。
彼女が(祟り)神になってから賽銭が微妙に増えたが騒動も微妙に増えたというのが何かムカつくわ!
「お久しぶりね、魅魔。そちらから見た霊夢の調子はどうかしら?」
「相変わらずぐうたらしてるわね。どんなに修行しても次回作にはレベル1に戻ってる。まるで赤毛の冒険者だよ」
「鬼畜勇者でさえレベル10は維持してるのにね。彼女魔界の辺境でまた迷惑かけたのよ」
「その前は地獄の辺境にね。まあこちらは地獄側が原因なのだが……」
「いいわよ、矜羯羅。そのおかげで久々に地獄に故郷帰りできたしね☆」
完全に私は蚊帳の外のようね。はあ、今年も幸先悪いわ……次回作は幻想郷が水没でもするのかしら?
それとも宇宙空間まで飛ばされるのかしら? いやシリーズの法則からして大乱闘祭りかしら? どちらにしても私はのんびり茶も飲めないわけで……
「あら、霊夢が柄にもなく悩んでいるわよ」
「お前が悩むと頭から春が出てこなくなるぞ!」
「新年早々めでたく無い巫女だねえ」
煩い黙れ原因どもめ! そんなに心配ならば賽銭していきなさいよ!!
『ふ~ん、それなら……』
ちゃり~ん♪♪
あれ? 今綺麗に三人そろってお賽銭を入れたような……
私は初夢でも見ているのかしら? でもあの輝きは紛れもなく私への感謝と信仰の輝きであって……え? え?
『これでいいんでしょ、霊夢?』
「あ……あんた達……うっ……うっ……」
初泣きした。今私は猛烈に初泣きをしてこの世の素晴らしさを感動しているわ。
なんだかんだいってもあいつ等は神だったというわけなのよ……ばんじゃ~い!!
『れいむ~♪、あまざけのみたいの~☆ あまざけちょうだい♪』
「任せておきなさい! あんた達の為に最高の甘酒を振舞ってあげるわ!!」
****** いちつきなのかー ******
一般的に甘酒には二種類の製造方法があるの。米こうじと米の粥を混ぜて一日発酵させて作る本格的製法と酒粕と砂糖を混ぜて煮込む簡略製法よ。
あの三人に振舞うのはもちろん本格的製法のもの。手間はかかるけど、酒粕の刺激臭がなく、自然な甘味と酸味を味わえるのよ。
「全く、賽銭してくれた程度で甘酒を振舞うなんて私も甘いわね。うん、一日置いた甘酒は甘酸っぱい☆」
ギュルンギュルンギュルン!!
「冷まして良し、温めて良し、日本文化が生み出した素晴らしい飲み物ね♪」
本来甘酒は夏バテ予防に飲まれていた説が強い。それから元旦に温めて飲む習慣が後々始まったというそうよ。
甘酒に含まれている栄養素はビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、すべての必須アミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれているわ。
詳しくはわからないけど、要するに健康飲料ってわけよ。
ジャギィン!ジャギィイン!ジャギギィィイイン!!
……ってさっきから何か居間でうるさい金属音が鳴り響いているんだけど?
****** いちつきなのかー ******
「ちょっと、あんた達待つなら静かに待ちなさ……きゃああっ!!」
今切れた! 私の横を何か金属飛行物体が飛んできて私の黒髪をばっさり切った!
「ななななな何よ! それ!!」
私は三人が持っている金属物体を指差してガクガクと叫んだ!
見たところ独楽(こま)のようだけど、その周りには刃がこれでもかというほど施されていたわ。
「何って知らないのかい? ベイカタナだよ!」
「ベイゴマ+カタナでベイカタナ……わかりやすいでしょ!」
「霊夢もやるか? スリル満点で楽しいぞ♪」
私が九死に一生を得たというのにこいつ等はケラケラと楽しそうにベイカタナとやらを見せびらかしている。なんていう神経してるのよ!!
「冗談じゃないわよ! こっちは危うく首が飛ぶところだったのよ!!」
「そこがいいんだよ。地獄でも大流行でさ、大会規模になると鬼の首が面白いように……」
「ああぁぁーーっ!聞きたくない!聞きたくない! とにかくそういうのやるなら外でやりなさい! 元々独楽は外で遊ぶものでしょ!」
矜羯羅の恐るべき事実を遮断して外に行くように促す私。地底が恐れられているのは、もしやベイカタナの存在なのでは無いだろうか……
「霊夢がそういうなら、まだ参拝客が耐えないけど、外で遊ぶことにするよ……」
「ベイカタナは大勢のいる前でその殺戮力を発揮するからねえ……」
「うふふ……私達のベイカタナで何人死ぬかしら♪」
文々。新聞 元旦増大号 『元旦血染め式 博麗神社ベイカタナ大会』
元旦のめでたい雰囲気の中、矜羯羅、サリエル、魅魔の三名が刃のついたベイゴマ『ベイカタナ』大会を急遽開催した。
~中略~
なお、この大会で弾き飛んだベイカタナの影響で死者8名・負傷者90名が出た模様。
この影響で博麗神社の参拝客が減少するのは確実であろう。
「ちょっと待て! 外に出るな! 今すぐ甘酒を振舞うからおとなしくしてなさい!」
『えー』
「えー、じゃない!」
危ない危ない、参拝客大幅減少イベントが起こるところだったわ。全く、大量虐殺を笑いながら実行しようとするあたり、トップクラスの妖怪なだけはあるわ。
****** いちつきなのかー ******
「やっぱり、参拝した後の甘酒は温かくて良いわね~」
「そうだね~、元旦はやはりこれだね~」
「霊夢の作る甘酒は特に最高だよ~」
「まともな参拝をしてないくせによく言うわ~、ふぁ~」
どんな種族も甘くて温かい物に癒されるのは当たり前ね♪ 今こうして私達は心を一つにして待ったり中よ♪ あ~、目が線になるほど抜けていく~~~
「さて……身体も温まったところで……福笑いでもしましょうか?」
そういってサリエルはその長いスカートの中から、ポスターのようなものを取り出した。もっとマシなところにしまいなさいよ。
それはさておき、ポスターにはのっぺらぼうな顔がでかでかと写っていて、ポスターの上には様々なパーツがちりばめられていたわ。
ふと、右端に写っていた見本を覗いてみたんだけど……
※みほん
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「…っぷ、何よこの間抜けな…ぷはぁっ、顔は……あはははは!!」
「間抜けな顔って……ぷはは……あんたと魔理沙の顔でしょ……いひひひひ!!」
これがまたおかしくておかしくて、私は魅魔とそろって爆笑したわ。
「誰よ、ぷぷっ……こんな可愛いようでムカつくイラスト描いた奴は……あははっはっ!」
「私のところのエリスが描いたのよ。にしてもあなた達笑いすぎ!」
「気持ちはわからんでもないがな……くくくっ!!」
「矜羯羅、あなたまで……」
完成品でさえ可笑しいのに、私達が目隠しで作ったらどうなるのよ!
まあ、そんなわけで私と魅魔、矜羯羅とサリエルに分かれて福笑い対決が始まったわ。
「ちゃんと誘導してよね、魅魔」
「任せときなさい! あっちよりいい作品に仕上げるよ!」
魅魔の誘導にしたがって私が並べて、左側のれいむの完成に挑むわ。
「全てはお前に任せるぞ、サリエル」
「そっちこそちゃんと動いてよね、矜羯羅」
一方、右側のまりさは矜羯羅が並べ役、サリエルが誘導役みたいね。負けないわよ!
****** いちつきなのかー ******
開始から3分ぐらいが経過したみたい。目隠しされているから状況はよくわからないけど、魅魔の威勢のいい声と私自身の手際速さから、私達のチームが優勢ね。
このまま完成させ……
「ところでさぁ……魔界に住んでる聖さんいるじゃない、クレリックの」
「ああ、彼女の魔法は芸術的で私は好きだぞ」
突然、サリエルと矜羯羅が話し合いを始めた。こんなときに何故、聖の話を……
「彼女、ロングヘアーに見えるけどさ……アレ実は修道帽なのよ」
「あれが?!」
「ええ、だから「南無三」って叫んだときにアレがずれてつるっぱげがテカテカと……」
「ぶっ!!」
「ぷはははははははっ!!」
次の瞬間、私の手元が狂い、魅魔の誘導が笑いへと変わってしまった。
だって……くく……あのロングヘアーがずれて……ぷぷぷ……つるっぱげ……あはは……
「あんた達ぷはは……笑い話で集中力切らすとかあははは……卑怯じゃないの!」
「こういうのは心理戦なのよ。どんな状況でも冷静にいられたほうが勝つものよ」
「そういうことだ。さすがに今のは私も吹きそうになったがな……くくく……」
何とも言えない悔しさでちょっと涙が出た。こういうとき目隠しは助かるわ。こんなのあいつ等に見せたくないもん!
「ははははははははは……はっくしょん!!」
するとさっきまで笑っていた魅魔がそのままの勢いでくしゃみをしたわ。
ちょっとこっちに唾が飛んで汚かったけど……
「あーっ!! まりさの顔が!!!」
「あはは……すまないねぇ……笑いすぎてくしゃみが出ちゃったようね……ぷくく……」
「こいつ……絶対わざとやってるわね……」
サリエルの悲鳴から察するに、どうやら魅魔はくしゃみでまりさの顔を吹き飛ばしたらしい。ナイス仕返しよ、魅魔☆
「やれやれ、またやり直しだな。今度は邪魔するなよ!」
「そっちこそね!」
私と矜羯羅は目隠し越しに睨み合った後、再びパーツを手にとって間抜け面へと置いていったのだった。
新年早々、如何様(イカサマ)なんてするもんじゃないわね。
****** いちつきなのかー ******
そして数分後……私達の福笑いが完成したわ。その出来はというと……これよ!
※完成品
_人人人人人人人人人人人人人人人人_
_,,. ... , ;;ヾ >ゆっくりした結果がこれだよ!!! <
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「ぷぷっ……」
「くくっ……」
「うはっ……」
「うふふ……」
『あーっはっはっはっはっはっは!!!!』
これはもう笑うしか無いでしょ! 見本でさえ間抜けな顔がさらにあられもない姿になったのだから……
「こ、これなによ、あはは! すっごい不細工くくく……」
指差して涙を流すほど汚い顔で笑うサリエル。魔界の天使の称号が台無しね。
「指示出したの、ははっ、お前等だろ……ふはっは! 真面目にやれよ……あっはっははぁ!!」
畳をドンドン叩いて笑いを表現する矜羯羅はある意味鬼神らしかった。でもうちの畳は壊さないでほしいわ!
「にしてもほんと酷いわね、あははは……これ誰の顔よ……ぷっ♪」
腹を抱えて前後に揺れているのは私。だって本当にこの顔……あはははは!!
「あんたと魔理沙だよ、ぷっはははっ!! 満身創痍(ゲームオーバー)の顔なんてまさにこれよ! あーっはっはっはっは……」
笑いながらごろごろ転がる魅魔の顔も大して変わらないでしょ! 失礼な奴ね!!
『はーーーっはっはっはっはっはっはっはっは……』
私達は恩讐なんかを賽銭箱に投げ入れて、楽しく楽しく笑い続けた。福笑いの周りで爆笑する少女達は新年早々縁起の良いものね♪
……いや、誰がなんと言おうと縁起が良いんだってば! 少女じゃない? そういうことは言っちゃ駄目よ!!
****** いちつきなのかー ******
「ふう、今年も年初めによく飲んでよく笑った♪」
「やっぱり甘酒は博麗神社ね☆ 山のところの神社はありがたみがないのよ、なんとなく?」
「矜羯羅もサリエルも嬉しいこというわね(はぁと) まあ私が神様として君臨しているから当然といえば当然だけどね♪」
「だから何時あんたがここの神になったっていうのよ、魅魔!」
今年も散々騒いで矜羯羅とサリエルが帰っていく。でもって魅魔は今年も残っている。そして私も巫女をしている。
何だかんだ言いながら、この恒例は続いているのね……
「とりあえず、来年からベイカタナは他所でやってよね!」
「えー」
「えー、じゃない!!」
私が巫女として異変として挑み、対峙して退治した本格的な相手。それが地獄の鬼神と魔界の天使である彼女達だったわ。
思い返せば、あの時は初めての地獄と魔界にわくわくしつつも、ビクビクしてたわね。今は変な奴等が増えたからそれほどでも無いけど♪
「それじゃあ、締めに博麗神社でお参りと行こうか、サリエル?」
「お参りねえ……まるで初詣みたいで楽しいわ♪」
「あんたら……もしかして初詣じゃなくて冷やかしに来たって言わないわよね?」
とんでもない相手はとんでもなく強くて……いざ、倒れ逝くそのときまで死なばもろとも、って覚悟で戦っていたっけ。
でもその相手はこうしてごく普通?に参拝しているわ。不思議で素敵なことね。
「さあさあ、早くお参りしなさい。御二人さん☆」
「だから何で魅魔が仕切ってるのよ!」
「私は神だよ?」
「どの口でそれをほざくか!!」
「えーむ、くひひっぱふろひゃーうぇーれー!!」
今口を引っ張っている相手とも始めて地獄で出会ったんだっけ? あの時は……いや、今も苦しめられてはいるけど、神社で割と仲良くやっている。
本当に……不思議で素敵なことね。
「昨年、地獄は温泉と怨霊だらけでめでたい祭りが行えました」
「昨年、魔界は観光客が増えて大量殺戮が増えました」
『これもひとえに博麗霊夢と魅魔の呪いのおかげです☆』
……って、こら! 人が綺麗に感傷に浸っているというのに!!
『今年も霊夢が1面で満身創痍になりますように♪』
「不吉なこと祈ってんじゃねえええええええーーーっっ!!!」
「きゃあきゃあ、霊夢が夢想天生使ったわよ♪」
「こりゃかなわんな!逃げるぞー♪」
こいつらは毎年私の満身創痍を祈願してくるのよ! しかも毎年的中するから本当にイライラ来るわ!
はぁ……何でうちの神社はこういう願いばかりかなえてくれるのかしら? そんでもって私はお約束の一言を言ってこいつ等を見送るの、毎年ね。
「全く、また来年も来なさいよね!!」
ああ、だから毎年来るのね、あの鬼神と天使は……私はその一言を毎年忘れて怒鳴り散らすのね……
それで、悪霊の一言で綺麗にまとまるのよね。毎年毎年……
「それじゃあ、今年も良い年になるよう、よろしくお願いするよ☆」
はいはい、良いお年を……♪
俺が毎年飲んでいた甘酒は簡略な方だったのかー。
読み物として面白かったです。
これからに期待します。
ただただ喧しいだけになっていました。
旧作が好きな者の身としてこれは嬉しいです。がんばってください!
魅魔様がでてるのも、
個人的にはすごいうれしいです!