Coolier - 新生・東方創想話

ルーミアとレミリアがハロウィンデートする話。

2019/10/31 23:46:52
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「そーなのかー!!」
「わーびっくりした!! なに!?」
 紅魔館の優雅なティータイムを破ったのは、突然のそーなのかー。
 危うく紅茶を噴霧しそうになったレミリアが振り向くと、ホールの扉を開けて入ってきたのはルーミアだった。
 見ればルーミアは、なぜか頭にかぼちゃ(未加工)を乗っけて暗幕をマントみたいに巻いたヘンな格好をしている。
「れみちょん、れみちょん」
 いつもののほほーんとした顔でちょこちょこ歩いてくるルーミア。
「えっとー」
「……」
「……」
「……」
「とりー!」
「鶏?」
 何を言っているのかぜんぜんわからない。
「えーと……何言ってるのあんた」
「今日はー、とりー!ってするとお菓子もらえるんでしょー?」
「お菓子ぃ?」
「お嬢様、ルーミアちゃんはハロウィンのことを言ってるのでは?」
 いつものごとく傍に控えていた咲夜が、レミリアに耳打ちする。
「あーうん、それー」
「あのねえ、あんたハロウィンっていつだかわかってる?」
「わかんないー。でもね、るーみゃもはろうぃんっていうのやってみたかったのー」
「あんたねえ……ハロウィンは10月31日、明日よ明日」
「そーなのかー」
「あとね、ハロウィンのときに言うのは『トリックオアトリート』。『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』って意味よ」
「そーなのかー。れみちょんいろんなこと知ってるんだねー。すごいなー」
 その言葉に即座に機嫌を良くしたレミリアは、椅子の上にふんぞり返る。
「まー私も夜の王だから!? 民草の風習くらい知ってて当然なんだけどね!? ふふーん!!」
「じゃーねー、れみちょんもいっしょにはろうぃんしよー?」
「へ?」
「ねーねーれみちょん、いっしょにはろうぃんしよー?」
「だーもうくっつくな! あんただけでやればいいでしょ!」
「えーだってー、おともだちといっしょにはろうぃんしたいのー。むいむい」
「あーそんなとこに顔突っ込むな! わかった、わかったから!」
「えへへー」
 うれしそうにふにゃふにゃ笑っているルーミアにため息ひとつついて、レミリアはルーミアの格好を上から下まで眺める。
「……で、あんたそのヘンなカッコはなんなの?」
「はろうぃんのときってー、みんなこういうかっこするんでしょー?」
「ああ、仮装のこと? って、あんたこれかぼちゃ頭に乗っけてるだけじゃないの」
「だめかなー?」
「これを仮装って言い張る勇気はある意味アリかもしんないけど……あんた他に服とか……持ってるわけないか」
 はぁ、とこれみよがしに大きなため息をついて見せたレミリアは、きょとんとしているルーミアの鼻先にずびしっと指先を突きつけた。
「仕方ないから、服は貸してあげる。明日またここに来なさい。適当に見繕ってあげるから。私と一緒にいるんだから、それ相応の品格ってものをね……」
「れみちょんありがとー!」
「だーからもういちいちひっつくんじゃな……あっバカどこ触って、やぁぁんっ♥ らめぇぇっ♥」
 そんなこんなでハロウィン当日の紅魔館。
「まあ、これで多少は見られるようになったんじゃないの?」
 門の前では、豪奢なドレスを身にまとったレミリアがいつものようにふんぞり返っている。
 その横で、あちこちにかぼちゃの意匠をあしらった可愛らしいドレスを着たルーミアがくるくるはしゃいでいる。
「わー、かわいいなー! れみちょんありがとー!」
「ふふーん、思う存分感謝して崇め奉ってもいいのよ!?」
「それ用意したの咲夜じゃないの」
「咲夜は私の従者なんだからいーのよおんなじことよ!」
 めんどくさそうな顔をしながら門の前まで見送りに来てくれたパチュリーのツッコミに、レミリアはさらにふんぞり返って答える。
 そんないつものやり取りを、咲夜と美鈴はにこにこしながら見つめていた。
「そんじゃ、いってきまーす! ほられみちょん、いこー?」
 そう言ってルーミアは、レミリアの手を取った。
「あーもうわかったってば……それじゃ、行ってくるから留守番ちゃんとするのよー!」
 ハロウィンの夜空にふわりと飛び上がった二人は、人里の方に飛んでいくのだった。
「……ってあんた、これからどこ行くつもりなのよ」
「んーと、てきとー」
「あんたねぇ……っていうか、あんた一応妖怪でしょ? そんなほいほい人里に行ってもいいの?」
「えーだいじょぶだよー」
「ほんとかしらね……まあいいわ! たまには下々の者にこのレミリア様の尊顔を拝ませてあげるのもいいでしょ!」
 とかなんとか言いながら、二人はたくさんの人で賑わっている人里に降りた。
 人里もハロウィンで盛り上がっているのか、そこかしこで子どもたちが民家の戸をたたき、元気な声で「トリックオアトリート!」と声をかけている。
 ルーミアはレミリアの手をとって、慣れた足取りでちょこちょこ歩いていく。
 その先にあるのは、オレンジ色のランプを軒先に掲げたお菓子屋だった。
「おばーちゃーん! えっとー……とりー!」
「あんたいい加減覚えなさいよ……」
「おや、ルーミアちゃんじゃないかい。はいお菓子」
 店先に出てきた老婆は、しわだらけの顔をさらにしわくちゃにして微笑んだ。どうやらルーミアとも顔なじみらしい。顔と同じしわだらけの手で、ルーミアに袋入りのクッキーを手渡してくれた。
「わーいありがとー!」
「ん? そっちの子は誰だい? 見かけない子だねぇ」
「おともだちのれみちょんだよー。ほられみちょん、れみちょんもとりー!って」
「えっあっえーと……と、と、トリックオアトリート……」
 人里にはめったに行かないせいもあって、年を経た人間とはあまり話し方ことがないレミリアは、どうにもやりにくい感じだ。
 そんなレミリアに、老婆は同じように微笑んでお菓子を渡そうとするが、店の中にはもうお菓子が残っていないようだ。
「すまないねえ、もうお菓子が残ってないんだよ……」
「おばーちゃん、だいじょぶだよー」
 申し訳無さそうに言う老婆に、ルーミアが明るい声をかける。
 ルーミアは袋を開けて、レミリアにクッキーを差し出した。
「はんぶんこー」
「あ……ありがと……」
 レミリアは小さな声でお礼を言うと、クッキーを受け取る。
 一口かじると、咲夜の作ったお菓子とはまた違う、素朴な味が口の中に広がった。
「ほほほ、ルーミアちゃんはお友達思いのいい子じゃのう」
「えへへー。るーみゃはいい子なのかー。それじゃ、おばーちゃんばいばーい」
 ふにゃふにゃーと手を振りながら、ルーミアはまたレミリアの手を取って、夜空に飛び出した。
 眼下に目をやれば、人里の明かりが眩しい。
「はいれみちょん、クッキー食べよ?」
 なんとなく人里の明かりを眺めていたレミリアの鼻先に、ルーミアがクッキーを差し出す。
 クッキーを受け取りつつルーミアの顔を覗き込むと、ルーミアはクッキーを美味しそうに頬張りながら、いつもののんきな顔をしている。
 その様子がなんだかおかしくて、レミリアは小さく笑みを漏らした。
「あんた、いっつもあんな調子で人里に行ってるの? 妖怪のくせに」
「うんー。たまに霊夢に見つかって怒られちゃうのー。れみちょんも遊びに来ればいいのにー」
「ふふん、高貴な吸血鬼はみだりに下々の町なんかに行ったりしないのよ」
「えー。るーみゃ、もっとれみちょんとデートしたいなー」
「んごっふ!?」
 いきなりの発言に、レミリアはクッキーを喉につまらせてしまう。
「げーほげほげほ! あ、あんたいきなり何言って……」
「だってー、れみちょんといるとたのしいしー……」
 ルーミアは、楽しそうにその場でくるくる回って見せる。
「こんなかわいいかっこしたのはじめてー。うれしいなー」
 えへへー、と無邪気な顔を向けてくるルーミアに、レミリアは顔が赤くなるのを止められない。
「ねー、れみちょーん」
「だーもう近い近い近い! グイグイ来るわねあんた……」
「えへへー」
「別に褒めてないっての。まったく……」
 苦笑を漏らしつつ、クッキーを一口かじる。
 なぜかさっきより、甘い気がした。
イベント系のSSはどうしてこうギリギリ投稿になってしまうのか。
人形使い
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コメント



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2.90奇声を発する程度の能力削除
楽しめました
4.100名前が無い程度の能力削除
かわゆ
6.90封筒おとした削除
読んでて溶ける
7.80ヘンプ削除
ルーミアとレミリアが可愛かったです。
9.100終身削除
レミルミ?ルミレミ?そういうのもあるのか…!(外見には)レミリアもルーミアも年相応な感じがしてそれをほんわか眺めてる紅魔館の人々とかおばちゃんも含めてやり取りがとても可愛らしくて癒される空気が良かったです