おくさうへ
おくさう、おさはよさう。きょさうもかわさいいね
おくさうのかさわいいかおをみてさるとね、
あたいなんだかおかさしさくなっさちゃうんださ
もさうがまさんできなさい、おくさうとゆうじんのいっさせさんをこさえたいとおさもってる
だからあさたいはかけにでよさうとおもう。おくさうがこのあんごうをといて、
あたいさのへさやまでくるさことがでさきたら、あたいさとひさとつになさろう!
いさみがわさかったならば、あたいさのさへさやにきさておくされ!
さりん
「……っていう手紙が私の部屋にあったんです。怖いよぉ。」
朝、ドアをノックする音で起こされた私は、寝ぼけ眼でドアを空けた。
そこには、手紙を握り締めながら涙目になっている空が居たのだ。
事情を聞くと、上記のような意味不明な手紙が部屋の前に置かれていたらしい。
「確かにこれは……意味不明ね。」
文章を見てもまったく意味がわからない。全てひらがなな上に、使っている単語も意味不明なものだ。
まるでお空が書いたかのような文章、しかし受取人がお空な以上、これを書いたのは別の人物ということになる。
「『おくさう』、『あたいさ』、『さへさや』……さとり様ぁ、なんて意味ですかぁ?」
すがるように見つめてくるお空。ごめん、私にもさっぱりだ。
二人して頭をかかえていると、その間からひょっこりと一つの頭が割り込んできた。妹のこいしである。
「ねえねえ、なんの手紙?私にもみーせてっ!」
こいしはお空の手から手紙を奪い取り、まじまじと見つめる。そして……
「……なにこれ?」
首をかしげた。当然の反応である、この文章を見てすぐに意味がわかる人が居たら私はその人を尊敬する。
「うにゅっ、さ、さとりさま、みてみて!」
とそこで、お空が手紙の右の角を指差す。よく見るとそこには、小さく文字が書いてあった。
そこに書いてあった文章は……
ヒント:さとり様
「へ……私?」
思わず間抜けな声を出してしまった。
しかしそれも無理はない、急にヒントが私だと言われても、反応に困る。
「……つまり、お姉ちゃんは何かを知ってるっていうことだね。」
「うにゅ!さとり様!教えてください!!」
私につめよってくるこいしと空。
文章の意味?私が知るもんか、むしろ私が教えてほしい。
「はっ!!も、もしや!!」
さらに大声をあげるこいし。何かに気付いた様子である。
「この差出人の名前、『さりん』ってあるけど……これってもしかして、あのサリンじゃないかな!?」
な、なんですってー!?私とこいしの間に緊張が走る。
サリン……スキマ妖怪から聞いただけの話だが、外の事件でこの毒物を使った事件が発生したらしい。
外の世界にも地底世界があり、そこでは電車というものが走っているらしい。
そこに、サリンという毒物が投げ込まれ、多くの犠牲者を出したとかなんとか。
この手紙の差出人も『さりん』、そしてこの場所もまた地底……!もしそんな毒物が投げ込まれたとしたら……!!
「た、大変よ!これは犯行予告に違いないわ!!」
「うにゅ!?どういうことですか!?」
「この手紙は地底に『さりん』という毒物を投げ込むことを示唆しているのよ!
そしてそのターゲットは……お空、あなたよ。」
「な、なんで私が!?ひどいよ!!」
混乱する私と空。無理もない、このような犯行予告の手紙が届いて、混乱するなという方が無理である。
「と、とにかく地底のみんなに避難を……」
「待ってよ。」
慌てて動き出そうとする私の声を、底冷えしたこいしの声が遮った。
いつもよりも帽子を深く被って、表情を伺うことが出来ない。はっきり言って、すごく不気味である。
「ねえ、じゃあこの『ヒント:さとり様』ってなんのことかなあ?お姉ちゃん。」
「し、知らないわよ。とにかく今は、一刻も早い避難を……」
「嘘だっ!!!!」
カッ!!
こいしの目が見開かれ、私を強く睨みつけた。
「お姉ちゃん何か知ってるんでしょ!この手紙のことも、犯人のことも!」
「ば、ばか言わないで!私は何も知らないわよ!!」
「じゃあなんなのさ、この『ヒント:さとり様』って!こんな文章があるのに、関係ないって言い張るの!?」
「私の方こそ聞きたいわよ、何で私がヒントなのかって!!」
「お姉ちゃんはいっつもそう、みんなの隠し事はわかるくせに、自分だけは隠し事をして!!」
「そんなこと今は関係ないでしょう!だったらあなたも目を開けば……」
エスカレートする口論、言ってはいけない言葉まで飛び出す始末。
それを止めたのは……
「二人ともやめてよっ!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにした、お空の叫びだった。
お空の声を聞いて、私の頭は急激に冷えていく。それはこいしも同じようだった。
「……そうだね。ごめんねお姉ちゃん、ひどいこと言って。」
「いいえ、私の方こそ。……私を信じろとは言わない。疑わしいのは事実だわ。
だけど今は安全の確保が最優先。みんなを避難させなきゃ。犯人探しは、それからにしましょう。」
「そうだよ!お燐もまだ部屋にいるんだよ!!」
……!!
そうだ、大事なことを忘れていた。まだお燐にこの事実を伝えていなかったのだ。
もはや巨大な陰謀がこの地霊殿を狙っているのは揺るがない事実。
「お姉ちゃん!」
「さとり様!」
私に目配せする二人。私もそれに頷く。
今やるべきことはただ一つ。一刻も早く、この事実をお燐にも伝えなければ!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドキドキ、ワクワク、ソワソワ。
あたいの部屋は今、そんな擬音でいっぱいだった。もちろん発生源は全部あたい。
「気付いてくれたかな~?お空にわかんなくても、さとり様やこいし様がいれば……」
ついに長年の想いを手紙に託した。
直接表現するのは恥ずかしくて出来なかったから、暗号にしたけど。
あんなの寺小屋の子供でもわかる程度のレベルだから、もう暗号なんか解けちゃってるだろうなー。
――……タ……タ……タ
ほら、足音が聞こえてきたよ。ついに想いを伝える時が……
――……ドタ……ドタ……ドタ……
ん?なんか足音大きくない?もしかしてさとり様とかも一緒?
――ドタドタドタ!!
って、なんか全力疾走してらっしゃるー!?
――バターン!!
「お燐!大変よ!この地霊殿、そして地底を『さりん』が包もうとしているわ!
私が真相へのヒントらしんだけどよくわかんないからとにかくお燐!避難するわよ!!急いで!!!」
えーっと………どうしてこうなった?
あたいは、必死な形相を浮かべている三人を、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。
了
おくさう、おさはよさう。きょさうもかわさいいね
おくさうのかさわいいかおをみてさるとね、
あたいなんだかおかさしさくなっさちゃうんださ
もさうがまさんできなさい、おくさうとゆうじんのいっさせさんをこさえたいとおさもってる
だからあさたいはかけにでよさうとおもう。おくさうがこのあんごうをといて、
あたいさのへさやまでくるさことがでさきたら、あたいさとひさとつになさろう!
いさみがわさかったならば、あたいさのさへさやにきさておくされ!
さりん
「……っていう手紙が私の部屋にあったんです。怖いよぉ。」
朝、ドアをノックする音で起こされた私は、寝ぼけ眼でドアを空けた。
そこには、手紙を握り締めながら涙目になっている空が居たのだ。
事情を聞くと、上記のような意味不明な手紙が部屋の前に置かれていたらしい。
「確かにこれは……意味不明ね。」
文章を見てもまったく意味がわからない。全てひらがなな上に、使っている単語も意味不明なものだ。
まるでお空が書いたかのような文章、しかし受取人がお空な以上、これを書いたのは別の人物ということになる。
「『おくさう』、『あたいさ』、『さへさや』……さとり様ぁ、なんて意味ですかぁ?」
すがるように見つめてくるお空。ごめん、私にもさっぱりだ。
二人して頭をかかえていると、その間からひょっこりと一つの頭が割り込んできた。妹のこいしである。
「ねえねえ、なんの手紙?私にもみーせてっ!」
こいしはお空の手から手紙を奪い取り、まじまじと見つめる。そして……
「……なにこれ?」
首をかしげた。当然の反応である、この文章を見てすぐに意味がわかる人が居たら私はその人を尊敬する。
「うにゅっ、さ、さとりさま、みてみて!」
とそこで、お空が手紙の右の角を指差す。よく見るとそこには、小さく文字が書いてあった。
そこに書いてあった文章は……
ヒント:さとり様
「へ……私?」
思わず間抜けな声を出してしまった。
しかしそれも無理はない、急にヒントが私だと言われても、反応に困る。
「……つまり、お姉ちゃんは何かを知ってるっていうことだね。」
「うにゅ!さとり様!教えてください!!」
私につめよってくるこいしと空。
文章の意味?私が知るもんか、むしろ私が教えてほしい。
「はっ!!も、もしや!!」
さらに大声をあげるこいし。何かに気付いた様子である。
「この差出人の名前、『さりん』ってあるけど……これってもしかして、あのサリンじゃないかな!?」
な、なんですってー!?私とこいしの間に緊張が走る。
サリン……スキマ妖怪から聞いただけの話だが、外の事件でこの毒物を使った事件が発生したらしい。
外の世界にも地底世界があり、そこでは電車というものが走っているらしい。
そこに、サリンという毒物が投げ込まれ、多くの犠牲者を出したとかなんとか。
この手紙の差出人も『さりん』、そしてこの場所もまた地底……!もしそんな毒物が投げ込まれたとしたら……!!
「た、大変よ!これは犯行予告に違いないわ!!」
「うにゅ!?どういうことですか!?」
「この手紙は地底に『さりん』という毒物を投げ込むことを示唆しているのよ!
そしてそのターゲットは……お空、あなたよ。」
「な、なんで私が!?ひどいよ!!」
混乱する私と空。無理もない、このような犯行予告の手紙が届いて、混乱するなという方が無理である。
「と、とにかく地底のみんなに避難を……」
「待ってよ。」
慌てて動き出そうとする私の声を、底冷えしたこいしの声が遮った。
いつもよりも帽子を深く被って、表情を伺うことが出来ない。はっきり言って、すごく不気味である。
「ねえ、じゃあこの『ヒント:さとり様』ってなんのことかなあ?お姉ちゃん。」
「し、知らないわよ。とにかく今は、一刻も早い避難を……」
「嘘だっ!!!!」
カッ!!
こいしの目が見開かれ、私を強く睨みつけた。
「お姉ちゃん何か知ってるんでしょ!この手紙のことも、犯人のことも!」
「ば、ばか言わないで!私は何も知らないわよ!!」
「じゃあなんなのさ、この『ヒント:さとり様』って!こんな文章があるのに、関係ないって言い張るの!?」
「私の方こそ聞きたいわよ、何で私がヒントなのかって!!」
「お姉ちゃんはいっつもそう、みんなの隠し事はわかるくせに、自分だけは隠し事をして!!」
「そんなこと今は関係ないでしょう!だったらあなたも目を開けば……」
エスカレートする口論、言ってはいけない言葉まで飛び出す始末。
それを止めたのは……
「二人ともやめてよっ!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにした、お空の叫びだった。
お空の声を聞いて、私の頭は急激に冷えていく。それはこいしも同じようだった。
「……そうだね。ごめんねお姉ちゃん、ひどいこと言って。」
「いいえ、私の方こそ。……私を信じろとは言わない。疑わしいのは事実だわ。
だけど今は安全の確保が最優先。みんなを避難させなきゃ。犯人探しは、それからにしましょう。」
「そうだよ!お燐もまだ部屋にいるんだよ!!」
……!!
そうだ、大事なことを忘れていた。まだお燐にこの事実を伝えていなかったのだ。
もはや巨大な陰謀がこの地霊殿を狙っているのは揺るがない事実。
「お姉ちゃん!」
「さとり様!」
私に目配せする二人。私もそれに頷く。
今やるべきことはただ一つ。一刻も早く、この事実をお燐にも伝えなければ!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドキドキ、ワクワク、ソワソワ。
あたいの部屋は今、そんな擬音でいっぱいだった。もちろん発生源は全部あたい。
「気付いてくれたかな~?お空にわかんなくても、さとり様やこいし様がいれば……」
ついに長年の想いを手紙に託した。
直接表現するのは恥ずかしくて出来なかったから、暗号にしたけど。
あんなの寺小屋の子供でもわかる程度のレベルだから、もう暗号なんか解けちゃってるだろうなー。
――……タ……タ……タ
ほら、足音が聞こえてきたよ。ついに想いを伝える時が……
――……ドタ……ドタ……ドタ……
ん?なんか足音大きくない?もしかしてさとり様とかも一緒?
――ドタドタドタ!!
って、なんか全力疾走してらっしゃるー!?
――バターン!!
「お燐!大変よ!この地霊殿、そして地底を『さりん』が包もうとしているわ!
私が真相へのヒントらしんだけどよくわかんないからとにかくお燐!避難するわよ!!急いで!!!」
えーっと………どうしてこうなった?
あたいは、必死な形相を浮かべている三人を、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。
了
まあそれだけ、「さりん」のインパクトがでかかったんでしょうな
面白かったです
そして、このレベルの暗号が解けない皆がまたw
TAMさんは、本当さとりの扱い方に長けていますよねえ。
あとあたいって聞いて氷の妖精を思い浮かべた俺は死んだ方がいいと思うんだ
しかし、もちっとがんばろうぜ地霊殿諸君w
なんという羞恥プレイw
暗号を一瞬で解いた私はさとりんに尊敬してもらえる!!
お燐のあとがき羞恥プレイを想像するだけでニヤニヤが止まりません
しかもおさわりまさでさりんをひさっぱるとはさww