※この作品は作品集177『今年もよろしくお願いします』の続編となっております。
オリキャラも出て来ますが、それでもよろしいと言う方のみお読み下さい。
年が明けて暫くした頃、幻想郷の各地でもそれぞれがそれぞれの新年を迎えていた。
◇新年:博麗神社境内
博麗神社で年末の宴会の後始末を手伝う慧音の前に、見知った顔が現れた。
「珍しいな、チルノはもう帰ったのにお前がまだ神社にいるなんて」
よく湖の氷精とつるんでいる名無しの大妖精は、その問いかけに軽く微笑んで答える。
「ええ。新年ですので、そのご挨拶をと思いまして」
そう言うと、改めて新年の挨拶を口にする。
「相変わらず妖精とは思えん位礼儀正しいな」
何気に失礼な言い方にも聞こえるが、妖精を知る者としては正しい意見だ。
妖精とは基本的に悪戯好きが多く、礼儀を備えている大妖精の様な固体は極めて稀な部類に入るのだから。
「今年もチルノちゃん達がご迷惑をおかけすると思うので、出来る機会があったらやっておかないとしそびれて仕舞いますから」
「変な所だけ妖精らしいんだな」
微笑を浮かべたままこちらに迷惑をかけると予告してくる大妖精に苦笑しながらも、それが彼女の良い所だと慧音は考えている。
こういう言うべき所は言う性格が好ましいと。
「それに、そんな私でも他の方々と一緒にいられる博霊神社でもないと挨拶もろくに出来ませんからね」
「成る程な。だから私が神社にいる間に来たと言うわけか」
いくら個人的に好ましいと思ってはいても、人里を守るという慧音の立場上あまり大っぴらに妖精を招き入れるわけにも行かない。
だからこそ、こうしてある意味中立地帯の神社を挨拶回りの場所に選んだと言うわけだ。
本当に妖精にしておくには惜しい娘である。
いや、妖精にしておくに相応しい娘であると言うべきだろうか。
「それに、チルノちゃん達を置いては帰れませんからね」
そう言うと、大妖精は石段の方へと顔を向ける。
慧音もつられて見てみると、その先では氷精や猫又、更には付近の妖精や小妖怪達が実に楽しそうに走り回っていた。
「まるであいつらの保護者だな」
「そう言うあなたも、巫女の保護者の様ではありませんか」
その言葉に、慧音も無言で頷いた。
大妖精と慧音が見つめる先で、氷精達は声にならないくらいはしゃぎまわっている。
◇新年:冥界・白玉楼
半人半霊の剣士は出かけようとしていた。
「さて、お節もお餅も用意したし、年始周りに行きますか」
「あ~、妖夢~ちょっと待って~」
出かけようとした白玉楼の庭師、魂魄妖夢の背中に、彼女の主から声がかかる。
その声に果てしなく嫌な予感を覚えたが、仕える者として無視するわけにも行かず、内心の動揺を悟られないように振り向く。
とは言っても旗から見ればバレバレの態度であったが。
「何でしょうか幽々子様」
そう言いながらも口の端が引くついている辺り、これから起こることをほぼ確信しているということだろう。
食いしん坊で幻想郷に名を轟かせている主の事だから、お雑煮を食べたいだとかお汁粉を食べたいだとか年越し蕎麦はもう無いのだとかその全部だとか言い出しかねないのだ。
「妖夢~、お節おかわり~」
だが、次に出て来た言葉は予想を上回るものだった。
「って、もう全部食べ尽くしたんですかアナタはっ!?」
流石の妖夢も驚いた。
少々自分が離れていても大丈夫なように、一般家庭なら十件分以上は楽に賄える位の量を用意しておいたのだから。
「えへへ~、新記録~」
おまけにもう出来上がっているらしく、真っ赤な顔でそんな事をのたまう始末。
だが、妖夢も彼女の剣術指南役を祖父から受け継いだ身。
正月早々そんなだらしない生活をさせるつもりは無い。
「申し訳ありませんが食事は年始周りから帰って……」
「だめ?」
潤んだ瞳に上目遣いでそう告げられたとき、妖夢は己の敗北を知った。
台所で包丁を握る半霊の剣士は考える。
何か年々主の大食い早食いが悪化している気がすると。
妖夢は従者として、また負けた者として新年早々やり場の無い怒りを包丁を振るうことにより発散するしか無かった。
声にならないその鬱憤は、そのまま料理の山となって積もっていく。
余談だが、この時作られた料理は幽々子をして完食するのに三が日までかかったと言う。
その際正気に戻っていた妖夢は、珍しく沈んだ表情で稽古に励んでいたそうだ。
◇新年:魔法の森付近
新年会後、霧雨魔理沙は逃げ出した。
「新年会も盛り上げたし、これで掃除はチャラでいいだろ」
その言葉からも分かる通り、白黒の魔法使いは宴会後の片付けが嫌でとっとと逃げ出したのである。
「大体慧音も何だってあんなに口煩くなったのかねぇ。今までは神社にだってほとんど来ていなかったってのに」
〈それは貴女が人里の方達と完全に接点を失わないようにとの考えからです〉
「それにしたって今更だろ。私が魔法の森で暮らしだしたのはもう結構前だぜ」
〈それはあの方も自覚しておりますよ。ですが、今更でも貴女が人としての常識を忘れないようにしたいと言う想いからの行動です〉
「へっ、常識に囚われないのがここの流儀だろ」
どこかで聞いたような台詞を口走るが、ふと違和感に気付く。
私は今、誰と喋っている?
〈仰りたい事は分かりますが、やはり常識を知らないのと知っていて超えようとするのとでは意味が異なりますので〉
霊夢も慧音も他の連中に気を取られている隙に抜け出した筈だし、何よりもこの頭に直接響いてくる声には覚えが……
そう考えた矢先に、背後から箒を何者かに掴まれた。
〈そう言う訳で約束を違えるのは見過ごせません〉
それに対して魔理沙は何も言い返さなかった、いや、思考が硬直したために言い返せなかったと言う方が正しいだろう。
恐る恐る、ゆっくりと背後を振り返る。
まるで怪談話の様だな、と思う辺り、どこかしら現実逃避感があるのだろう。
そして、そこには予想通りの存在が、以前図書館で追い回されたトラウマのある覆面マッチョが自分の乗る箒を掴んで浮んでいた。
「新年早々マッチョかよぉ~!? つか、この前と服装変わってるし!?」
〈はい。今までの格好では他人の前に出るときに相手が驚いてしまうと慧音先生より指摘されましたので、現在はこのような服装をしております〉
そう、現在の彼は道着のような服を着ていた。
「マジでかっ!? すごいな慧音っ!!」
まだこれで二回目の対面だが、この妖怪が大人しく服を着るとは思っていなかっただけに、正論で押し通した人里教師の力量に純粋な尊敬を抱く。
〈そういう訳でして、あの方には恩義がありますのでこうして貴女の追っ手として参上した次第でして。一度掃除を手伝うと約束した以上、最後まで完遂していただきます〉
丁寧な口調で、だが力強く箒を引く力に魔理沙は逃げられないと悟った。
「~~~~~~~~~~~っ!!?」
完全に箒を抑えられた魔理沙は、声にならない泣き言を言いながら霊夢の許へと連行されていったのであった。
◇新年:博霊神社上空
地底の太陽こと八咫烏の力を得た地獄烏の霊烏路空、通称お空ははしゃいでいた。
生まれも育ちも地底の彼女は、今まで初日の出という物を見たことが無かったのだ。
「みてみてお燐っ、はつひのでがもうあんな高いところまで昇っているよっ!!」
「いや、そりゃ昇るでしょうよ太陽なんだから……」
うんざりした口調でそう口に出すのは、お空の友人の火車、火焔猫燐、通称お燐。
「ねぇ、そろそろ帰らないかい? 初日の出ってのは昇るまでが見所なんだからさ」
その言葉にお空は「え?」と驚いた顔で振り返り。
「そうなの?」
と、真顔で聞いてきた。
どうやら初日の出という物をよく分かっていなかったようだ。
「そうだよ。お天道様が山の向こうから顔をだす所までが初日の出で、その後は親しい連中と正月を楽しむのが普通なのさ」
「へぇ~、それじゃあさとり様達ももうはつひのでは見ていないんだ」
「ああ。むしろとっくに地霊殿へ戻っているだろうね」
「そっかあ。でも残念だね、せっかく皆で空を見られたのに」
改めて言うが、地底生まれで地底育ちのお空もお燐も空を知らなかった。
だからこそ、こうして皆で空を見られる初日の出を心待ちにし、今もこうして空を見てはしゃいでいる。
お燐が年明け早々こんな所にいるのも、隣で楽しそうにしているお空を見るのがまんざらでもなかったからだ。
我ながらお空と大差ない考えしているなぁ、そう思い始めたお燐の耳に、とても聞き捨てならない発言が飛び込んできた。
「よお~っし、私もあのはつひのでに負けない位すごいの打ち上げるぞお~!!」
「って、何空に向かってメガフレアやろうとしてんのさお空っ!」
「だって太陽が昇るまでがはつひので何でしょ? だったらいっぱい昇ればそれだけさとり様達もいっぱい空を見られるじゃない」
無邪気な表情で物騒なことを言う地獄烏。
それを地獄猫が慌てて止めに入ろうとするが、一歩遅かった。
「そ~お~れっ!!」
そんな掛け声と共に開放される太陽神の遣いの力。
その輝きを間近で見ながら、お空が楽しそうならそれでもいいか……と思いながらお燐は意識を手放した。
現実逃避しただけだとも言えるが。
声にならない位に楽しそうに放たれた地底の太陽により、天界の底が少々焦げたのはご愛嬌……で済んだのは新年の奇跡と言う他無かった。
◇新年:博麗神社鳥居前
新年の幻想郷を、博麗の巫女は見ていた。
「ったく、今年も騒がしい年になりそうね」
幻想郷の各地から響く合唱に、霊夢はそんな事を呟く。
その背中を見つめながら、上白沢慧音は満足気に微笑んだ。
了
オリキャラも出て来ますが、それでもよろしいと言う方のみお読み下さい。
年が明けて暫くした頃、幻想郷の各地でもそれぞれがそれぞれの新年を迎えていた。
◇新年:博麗神社境内
博麗神社で年末の宴会の後始末を手伝う慧音の前に、見知った顔が現れた。
「珍しいな、チルノはもう帰ったのにお前がまだ神社にいるなんて」
よく湖の氷精とつるんでいる名無しの大妖精は、その問いかけに軽く微笑んで答える。
「ええ。新年ですので、そのご挨拶をと思いまして」
そう言うと、改めて新年の挨拶を口にする。
「相変わらず妖精とは思えん位礼儀正しいな」
何気に失礼な言い方にも聞こえるが、妖精を知る者としては正しい意見だ。
妖精とは基本的に悪戯好きが多く、礼儀を備えている大妖精の様な固体は極めて稀な部類に入るのだから。
「今年もチルノちゃん達がご迷惑をおかけすると思うので、出来る機会があったらやっておかないとしそびれて仕舞いますから」
「変な所だけ妖精らしいんだな」
微笑を浮かべたままこちらに迷惑をかけると予告してくる大妖精に苦笑しながらも、それが彼女の良い所だと慧音は考えている。
こういう言うべき所は言う性格が好ましいと。
「それに、そんな私でも他の方々と一緒にいられる博霊神社でもないと挨拶もろくに出来ませんからね」
「成る程な。だから私が神社にいる間に来たと言うわけか」
いくら個人的に好ましいと思ってはいても、人里を守るという慧音の立場上あまり大っぴらに妖精を招き入れるわけにも行かない。
だからこそ、こうしてある意味中立地帯の神社を挨拶回りの場所に選んだと言うわけだ。
本当に妖精にしておくには惜しい娘である。
いや、妖精にしておくに相応しい娘であると言うべきだろうか。
「それに、チルノちゃん達を置いては帰れませんからね」
そう言うと、大妖精は石段の方へと顔を向ける。
慧音もつられて見てみると、その先では氷精や猫又、更には付近の妖精や小妖怪達が実に楽しそうに走り回っていた。
「まるであいつらの保護者だな」
「そう言うあなたも、巫女の保護者の様ではありませんか」
その言葉に、慧音も無言で頷いた。
大妖精と慧音が見つめる先で、氷精達は声にならないくらいはしゃぎまわっている。
◇新年:冥界・白玉楼
半人半霊の剣士は出かけようとしていた。
「さて、お節もお餅も用意したし、年始周りに行きますか」
「あ~、妖夢~ちょっと待って~」
出かけようとした白玉楼の庭師、魂魄妖夢の背中に、彼女の主から声がかかる。
その声に果てしなく嫌な予感を覚えたが、仕える者として無視するわけにも行かず、内心の動揺を悟られないように振り向く。
とは言っても旗から見ればバレバレの態度であったが。
「何でしょうか幽々子様」
そう言いながらも口の端が引くついている辺り、これから起こることをほぼ確信しているということだろう。
食いしん坊で幻想郷に名を轟かせている主の事だから、お雑煮を食べたいだとかお汁粉を食べたいだとか年越し蕎麦はもう無いのだとかその全部だとか言い出しかねないのだ。
「妖夢~、お節おかわり~」
だが、次に出て来た言葉は予想を上回るものだった。
「って、もう全部食べ尽くしたんですかアナタはっ!?」
流石の妖夢も驚いた。
少々自分が離れていても大丈夫なように、一般家庭なら十件分以上は楽に賄える位の量を用意しておいたのだから。
「えへへ~、新記録~」
おまけにもう出来上がっているらしく、真っ赤な顔でそんな事をのたまう始末。
だが、妖夢も彼女の剣術指南役を祖父から受け継いだ身。
正月早々そんなだらしない生活をさせるつもりは無い。
「申し訳ありませんが食事は年始周りから帰って……」
「だめ?」
潤んだ瞳に上目遣いでそう告げられたとき、妖夢は己の敗北を知った。
台所で包丁を握る半霊の剣士は考える。
何か年々主の大食い早食いが悪化している気がすると。
妖夢は従者として、また負けた者として新年早々やり場の無い怒りを包丁を振るうことにより発散するしか無かった。
声にならないその鬱憤は、そのまま料理の山となって積もっていく。
余談だが、この時作られた料理は幽々子をして完食するのに三が日までかかったと言う。
その際正気に戻っていた妖夢は、珍しく沈んだ表情で稽古に励んでいたそうだ。
◇新年:魔法の森付近
新年会後、霧雨魔理沙は逃げ出した。
「新年会も盛り上げたし、これで掃除はチャラでいいだろ」
その言葉からも分かる通り、白黒の魔法使いは宴会後の片付けが嫌でとっとと逃げ出したのである。
「大体慧音も何だってあんなに口煩くなったのかねぇ。今までは神社にだってほとんど来ていなかったってのに」
〈それは貴女が人里の方達と完全に接点を失わないようにとの考えからです〉
「それにしたって今更だろ。私が魔法の森で暮らしだしたのはもう結構前だぜ」
〈それはあの方も自覚しておりますよ。ですが、今更でも貴女が人としての常識を忘れないようにしたいと言う想いからの行動です〉
「へっ、常識に囚われないのがここの流儀だろ」
どこかで聞いたような台詞を口走るが、ふと違和感に気付く。
私は今、誰と喋っている?
〈仰りたい事は分かりますが、やはり常識を知らないのと知っていて超えようとするのとでは意味が異なりますので〉
霊夢も慧音も他の連中に気を取られている隙に抜け出した筈だし、何よりもこの頭に直接響いてくる声には覚えが……
そう考えた矢先に、背後から箒を何者かに掴まれた。
〈そう言う訳で約束を違えるのは見過ごせません〉
それに対して魔理沙は何も言い返さなかった、いや、思考が硬直したために言い返せなかったと言う方が正しいだろう。
恐る恐る、ゆっくりと背後を振り返る。
まるで怪談話の様だな、と思う辺り、どこかしら現実逃避感があるのだろう。
そして、そこには予想通りの存在が、以前図書館で追い回されたトラウマのある覆面マッチョが自分の乗る箒を掴んで浮んでいた。
「新年早々マッチョかよぉ~!? つか、この前と服装変わってるし!?」
〈はい。今までの格好では他人の前に出るときに相手が驚いてしまうと慧音先生より指摘されましたので、現在はこのような服装をしております〉
そう、現在の彼は道着のような服を着ていた。
「マジでかっ!? すごいな慧音っ!!」
まだこれで二回目の対面だが、この妖怪が大人しく服を着るとは思っていなかっただけに、正論で押し通した人里教師の力量に純粋な尊敬を抱く。
〈そういう訳でして、あの方には恩義がありますのでこうして貴女の追っ手として参上した次第でして。一度掃除を手伝うと約束した以上、最後まで完遂していただきます〉
丁寧な口調で、だが力強く箒を引く力に魔理沙は逃げられないと悟った。
「~~~~~~~~~~~っ!!?」
完全に箒を抑えられた魔理沙は、声にならない泣き言を言いながら霊夢の許へと連行されていったのであった。
◇新年:博霊神社上空
地底の太陽こと八咫烏の力を得た地獄烏の霊烏路空、通称お空ははしゃいでいた。
生まれも育ちも地底の彼女は、今まで初日の出という物を見たことが無かったのだ。
「みてみてお燐っ、はつひのでがもうあんな高いところまで昇っているよっ!!」
「いや、そりゃ昇るでしょうよ太陽なんだから……」
うんざりした口調でそう口に出すのは、お空の友人の火車、火焔猫燐、通称お燐。
「ねぇ、そろそろ帰らないかい? 初日の出ってのは昇るまでが見所なんだからさ」
その言葉にお空は「え?」と驚いた顔で振り返り。
「そうなの?」
と、真顔で聞いてきた。
どうやら初日の出という物をよく分かっていなかったようだ。
「そうだよ。お天道様が山の向こうから顔をだす所までが初日の出で、その後は親しい連中と正月を楽しむのが普通なのさ」
「へぇ~、それじゃあさとり様達ももうはつひのでは見ていないんだ」
「ああ。むしろとっくに地霊殿へ戻っているだろうね」
「そっかあ。でも残念だね、せっかく皆で空を見られたのに」
改めて言うが、地底生まれで地底育ちのお空もお燐も空を知らなかった。
だからこそ、こうして皆で空を見られる初日の出を心待ちにし、今もこうして空を見てはしゃいでいる。
お燐が年明け早々こんな所にいるのも、隣で楽しそうにしているお空を見るのがまんざらでもなかったからだ。
我ながらお空と大差ない考えしているなぁ、そう思い始めたお燐の耳に、とても聞き捨てならない発言が飛び込んできた。
「よお~っし、私もあのはつひのでに負けない位すごいの打ち上げるぞお~!!」
「って、何空に向かってメガフレアやろうとしてんのさお空っ!」
「だって太陽が昇るまでがはつひので何でしょ? だったらいっぱい昇ればそれだけさとり様達もいっぱい空を見られるじゃない」
無邪気な表情で物騒なことを言う地獄烏。
それを地獄猫が慌てて止めに入ろうとするが、一歩遅かった。
「そ~お~れっ!!」
そんな掛け声と共に開放される太陽神の遣いの力。
その輝きを間近で見ながら、お空が楽しそうならそれでもいいか……と思いながらお燐は意識を手放した。
現実逃避しただけだとも言えるが。
声にならない位に楽しそうに放たれた地底の太陽により、天界の底が少々焦げたのはご愛嬌……で済んだのは新年の奇跡と言う他無かった。
◇新年:博麗神社鳥居前
新年の幻想郷を、博麗の巫女は見ていた。
「ったく、今年も騒がしい年になりそうね」
幻想郷の各地から響く合唱に、霊夢はそんな事を呟く。
その背中を見つめながら、上白沢慧音は満足気に微笑んだ。
了
もし作者さんがこのようなSSの投稿を続けていかれるのなら「創想話ジェネリック」への投稿を勧めますし、あえてこの投稿場で現状から脱却したいのであればコメントにその旨を書けば多くの方が丁寧に改善点を挙げてくださるでしょう