注意、このお話は東方projectの二次創作です。
オリ設定が存在します。
人によっては、残虐に感じる表現があります。 そういった文章が苦手な方は読むのを控えて下さい。
おお、これはこれは、旅のお方かな? へへ、少しあっしの話に付き合ってくだせえ。
何、つまらない話じゃあ、ござあせん。
この辺りの寺を知っておられますかな? そう、命蓮寺って寺なんですがね。
そこに見目麗しい僧侶がいるのを知ってますか?
いえ、白蓮住職ではなくて、その白蓮住職に付き従う一輪って娘っ子なんですよ。
すこーし、昔の話なんですが、彼女の昔話を聞いて下さいませんか?
お? おお、聞いて下さいますか。 さぁさぁ、酒も肴もあります。
少しの間ですが、付き合ってくだせえ。
~~~~~
昔々、寒村と呼んでも差し支えない村がありました。 その村の北側には、見渡す限りの山脈があったそうだ。
夏には乾いた熱風が吹き、何人も何人も人が死に、作物も良く育ってくれなかったそうだ。
山には入道が居て、そいつが村を襲っているんだ。 と村民は誰も彼も信じていました。
事実、山には凶悪な入道が住みついており、一度怒る毎に村人を何人も殺し、苦しめてきました。
先程、言った一輪は、そこの村の出身なんですよ。
名前……真名は存じませんが、彼女の名前を聞けば涙を流せずにはおれません。
彼女の二つ名は、守り守られし大輪と言います。 そして、名前の一輪。
大輪の一輪挿しと言えば、菊の花で間違いは無いでしょう。
姓である雲居も彼女のあるべき場所が何処なのかを示しているに違いありません。
そう、名前の事はどうあれ、彼女はあの村で人柱として生まれて来たのです。
凶悪な入道を封印する為の人柱としてです。
実母が、どういう気持ちかは解りません。
ただ、生まれた時から別れる罪悪感を和らげる為に弔いの名を付けたのかもしれません。
そうして、彼女は生を受けました。
ですが、その半生は幸せとは無縁でありました。
実の親はおらず、村では仲間外れ同然でした。
大人も子供も男も女も……老若男女の区別なく。
暴力を受け鎖で繋がれ、興味半分で色々とされました。
それでも、人柱の為、決して死なせはしなかったのです。 彼女は死ねませんでした。
死なせてくれませんでした。
そうして日が過ぎ、齢が十を超えました。
体も声も変わっていきました。
ある日の夜。 彼女は、大人達の会合に連れていかれたのです。
普段とは違う、村では一般的な服を纏い、薄汚れた顔も綺麗にされ、身なりも整えられました。
子供達は思いました。 大人達は彼女に酷い暴力を振るっているのだと。
興味本位で近づいた子供達は、家屋の中から聞こえる叫び声から、そう思ったのでしょう。
翌日から、彼女は夜になると、大人達に家に連れて行かれる様になりました。
村の女性は、汚いものでも見る様に冷たく当たる様になったのです。
すぐに死ぬから、誰もそれが間違っているとは思いませんでした。
どうせ死ぬから、どれだけ冷たくあしらっても問題はないと思っていたのです。
それから、間も無くしての事です。 一輪の体内に入道を封じ込める日が決まりました。
人間の体内に入道を封印すれば、封印された人間は死んでしまいます。
しかし、人間が死ぬと同時に宿った入道も死んでしまうのです。
その為に彼女は生まれて来ました。 その為の人柱なのです。
夜、山脈の麓。 村から真っ直ぐ北に進んだ場所。 村に禍を起こす入道の悪行を鎮める為に建てられた堂内。
その中央に一輪はうつ伏せに寝かされました。
高名な呪術師が、火を焚き秘術の紋様を床に書き込んでいきました。
ブツブツと呪文を唱えると、どういう原理か、彼女の背中に赤白い霧が吸い込まれていくではありませんか。
すぐ様、村人達は、彼女の四肢を押さえ付けます。
待機していた彫師が呪術師の指示通りに彼女の背中に刺青を施していったのです。
どれだけ、泣こうが叫ぼうが、誰も助けてはくれません。
村人達は、これで苦しみから解放されるという気持ちしかありませんでした。
一輪が、閉じられた堂の中でぐったりと伏していました。
露わになった背中には血が滲んでいます。 白く美しい女性の肌には、文字と紋様が刻まれていました。
突然、体を捻じった彼女は苦しそうに胸を掴み、口から噴水の様に血を吐きました。
しかし、その血は宙で霧散し、床に落ちて来る事はなかったのです。
入道が暴れていました。 体が爆発してしまうのではないかと言う程の苦しみ様です。
余りの痛みに獣の様に声をあげ、爪が剥がしながら床や壁を引っ掻きました。
床に倒れてはのたうち回り、打ち、擦った皮膚が所々で破れて血が滲みました。
村民の誰も彼もが、ああ、明日から入道の恐怖に遭わずに済むと思っていました。
元々、この為に生まれて来た一輪を誰も悲しまなかったのです。
翌朝、一輪の死体を回収しに来た村人でしたが、怪我だらけで気を失っている一輪を見て驚愕しました。
それから、彼女には過酷な……本当に過酷な……事が待ち受けていたのです。
北の山脈には、他にも凶悪な入道が何体も住みついていました。
彼女の体に他の入道が封印される事が決まったのです。
どうせ死ぬつもりで生かして来たから、死ぬまで続ければ良いと思ったのでしょう。
二体、三体と封印されました。
体の穴という穴から血を吹きだたせ、血涙を流し、生死の境を彷徨い衰弱しても死ねなかったのです。
元気が戻れば、夜は大人の家屋に連れて行かれ、昼は村人に迫害され、同年代の男に弄ばれました。
四体、五体……六体と封印されました。
体の骨が歪に曲がり、所々で盛大に折れました。 耳を塞ぎたくなる骨折音が響き渡り、まるで妖怪が降臨した如く、人非ざる叫び声で暴れました。
堂の中は、最初の綺麗さは無く、そこでは何度となく死闘が行われて来た荒れようであったそうです。
それでも、回復すれば今までと変わらない昼と夜が訪れていたのです。
ですが、人々の心に変化がありました。
入道が封印されれば人間は死ぬ。 その事は何であったのか。 漸く、人々は一輪の異常さに気が付きました。
死なない、死ねない。 不死身の人非ざる人間。もしや、彼女は妖怪ではないかと思い始めたのです。
彼女への迫害がやみました。 そう、とどめを刺す為にやめたのです。
村の西に行った所に火山がありました。 山から上がる真っ黒な煙は、他の入道の追随を許さぬ恐ろしさです。
黒く畏怖の対象であった漆黒の入道は絶対的な恐怖の体現者でした。
この日の為に建てた、特別な御堂。 各地より集められた高名な呪術者。
呪術による武器防具に身を包んだ兵士達。 その様相は、まさに戦でした。
その先頭には、一輪の姿がありました。
肩から腰まで背中全体を強力な呪術の刺青に覆われ、今までに封印される毎に彫られ続けた結果でした。
手首、足首、腰、首には、それぞれ封印した入道が外に出て来れない様に封印がされていました。
準備期間およそ一月。 満を持しての退魔儀式。
その儀式は丸一日を費やしました。 日の出前から始まった儀式が終わる頃には、天に月が上がっていたのです。
一輪の全身に走った痛み。 最早、痛みと言う生易しい言葉やものさしでは測れません。
声さえ上げられず、全身をビクビクと痙攣させました。
見る見る内に皮膚が黒く焦げていく。 立ち上る数筋の煙が、封印こそ出来たものの、肉体の崩壊を予感させました。
その時です。 突然意識を取り戻し、立ち上がった一輪が皆の方向を向きました。
誰も彼もが呆気に取られ、臨戦態勢を整える事さえ出来ませんでした。
入道にむざむざ肉の体を提供してしまった。 と戦慄したのです。
彼女は、ニコリと落胆とも悲哀とも取れる様な物悲しい表情を浮かべていました。
その数瞬後。 バタリとその場に倒れ落ち気を失いました。
一輪は気を失っている間に捨てられました。
最早、人間ではない。 体内に七体の入道を封印された者は手に余ったのです。
初めて自由を手に入れた。 まるで雲の中に居る様な心地の良さであったのでしょう。
泣いて泣いて……彼女は泣きました。 もう、あんな思いをしなくて良いと彼女自身が理解したからでしょう。
~~~~~
そん後は、流れ流れて命蓮上人って偉い僧侶が居る寺に流れたんですよ。
そこに居た当時の白蓮尼公に、過酷な半生を察せられて、抱き締められたんで。
大変な道を歩んで来たのね……もう苦しまなくて良いのよ。 って。
それからは、姐さん、姐さん、聖様だ。
いやぁ、彼女が笑顔を知る事が出来て、あっしは……あっしは……。
「雲山。 そんな所で何をしているの~? こっちに来て皆で呑みましょうよ~」
……こほん。
少し酔い過ぎてしまった様だ。
本日は、時雨を降らす雨雲を演じたい気分であったのだ。
ん? 話しの続きを教えろ……と申すか。
寺で二十を過ぎた一輪であったが、行脚の旅に行く事を命蓮上人より命じられた。
その旅の途中で会ったのが俺だ。
生まれた時より知っている、その少女。 憐れで不憫であったと記憶していた。
俺は、その時、人生に幕を引いてやるつもりであった。 もう苦しむ必要が無い様に……と。
だが、彼女の取った行動は、皆の知っての通りだ。
それから、一生守ってやるつもりだった。
守ってやるつもりだった……守れなかった。
何とも情けない気持ちで一杯だ。 それでも、今ああして笑顔で過ごせる事を感謝している。
誰に? ……誰だろうな? 船長ではないし、寅丸や鼠っ子でもない。
ぬえの奴でもなければ、白蓮殿でも無い。
……一輪に対してか? 自分でも分からなくなってきた。
ふむ、酒が無くなったか。 長い間引き留めて申し訳なかった。
また来てくれ。 その時は、話しを聞いてくれた礼に今日より旨い酒を用意しておこう。
この後、もしよろしければ、墓に手を合わせてくれないか?
墓石に名前は無い。 中に誰が眠っている訳でも無い。
大輪の菊が一輪だけ供えてある墓だからすぐに分かるだろう。
今日は酔い過ぎた。 そろそろ、寡黙な頑固親父に戻るとするかな。
オリ設定が存在します。
人によっては、残虐に感じる表現があります。 そういった文章が苦手な方は読むのを控えて下さい。
おお、これはこれは、旅のお方かな? へへ、少しあっしの話に付き合ってくだせえ。
何、つまらない話じゃあ、ござあせん。
この辺りの寺を知っておられますかな? そう、命蓮寺って寺なんですがね。
そこに見目麗しい僧侶がいるのを知ってますか?
いえ、白蓮住職ではなくて、その白蓮住職に付き従う一輪って娘っ子なんですよ。
すこーし、昔の話なんですが、彼女の昔話を聞いて下さいませんか?
お? おお、聞いて下さいますか。 さぁさぁ、酒も肴もあります。
少しの間ですが、付き合ってくだせえ。
~~~~~
昔々、寒村と呼んでも差し支えない村がありました。 その村の北側には、見渡す限りの山脈があったそうだ。
夏には乾いた熱風が吹き、何人も何人も人が死に、作物も良く育ってくれなかったそうだ。
山には入道が居て、そいつが村を襲っているんだ。 と村民は誰も彼も信じていました。
事実、山には凶悪な入道が住みついており、一度怒る毎に村人を何人も殺し、苦しめてきました。
先程、言った一輪は、そこの村の出身なんですよ。
名前……真名は存じませんが、彼女の名前を聞けば涙を流せずにはおれません。
彼女の二つ名は、守り守られし大輪と言います。 そして、名前の一輪。
大輪の一輪挿しと言えば、菊の花で間違いは無いでしょう。
姓である雲居も彼女のあるべき場所が何処なのかを示しているに違いありません。
そう、名前の事はどうあれ、彼女はあの村で人柱として生まれて来たのです。
凶悪な入道を封印する為の人柱としてです。
実母が、どういう気持ちかは解りません。
ただ、生まれた時から別れる罪悪感を和らげる為に弔いの名を付けたのかもしれません。
そうして、彼女は生を受けました。
ですが、その半生は幸せとは無縁でありました。
実の親はおらず、村では仲間外れ同然でした。
大人も子供も男も女も……老若男女の区別なく。
暴力を受け鎖で繋がれ、興味半分で色々とされました。
それでも、人柱の為、決して死なせはしなかったのです。 彼女は死ねませんでした。
死なせてくれませんでした。
そうして日が過ぎ、齢が十を超えました。
体も声も変わっていきました。
ある日の夜。 彼女は、大人達の会合に連れていかれたのです。
普段とは違う、村では一般的な服を纏い、薄汚れた顔も綺麗にされ、身なりも整えられました。
子供達は思いました。 大人達は彼女に酷い暴力を振るっているのだと。
興味本位で近づいた子供達は、家屋の中から聞こえる叫び声から、そう思ったのでしょう。
翌日から、彼女は夜になると、大人達に家に連れて行かれる様になりました。
村の女性は、汚いものでも見る様に冷たく当たる様になったのです。
すぐに死ぬから、誰もそれが間違っているとは思いませんでした。
どうせ死ぬから、どれだけ冷たくあしらっても問題はないと思っていたのです。
それから、間も無くしての事です。 一輪の体内に入道を封じ込める日が決まりました。
人間の体内に入道を封印すれば、封印された人間は死んでしまいます。
しかし、人間が死ぬと同時に宿った入道も死んでしまうのです。
その為に彼女は生まれて来ました。 その為の人柱なのです。
夜、山脈の麓。 村から真っ直ぐ北に進んだ場所。 村に禍を起こす入道の悪行を鎮める為に建てられた堂内。
その中央に一輪はうつ伏せに寝かされました。
高名な呪術師が、火を焚き秘術の紋様を床に書き込んでいきました。
ブツブツと呪文を唱えると、どういう原理か、彼女の背中に赤白い霧が吸い込まれていくではありませんか。
すぐ様、村人達は、彼女の四肢を押さえ付けます。
待機していた彫師が呪術師の指示通りに彼女の背中に刺青を施していったのです。
どれだけ、泣こうが叫ぼうが、誰も助けてはくれません。
村人達は、これで苦しみから解放されるという気持ちしかありませんでした。
一輪が、閉じられた堂の中でぐったりと伏していました。
露わになった背中には血が滲んでいます。 白く美しい女性の肌には、文字と紋様が刻まれていました。
突然、体を捻じった彼女は苦しそうに胸を掴み、口から噴水の様に血を吐きました。
しかし、その血は宙で霧散し、床に落ちて来る事はなかったのです。
入道が暴れていました。 体が爆発してしまうのではないかと言う程の苦しみ様です。
余りの痛みに獣の様に声をあげ、爪が剥がしながら床や壁を引っ掻きました。
床に倒れてはのたうち回り、打ち、擦った皮膚が所々で破れて血が滲みました。
村民の誰も彼もが、ああ、明日から入道の恐怖に遭わずに済むと思っていました。
元々、この為に生まれて来た一輪を誰も悲しまなかったのです。
翌朝、一輪の死体を回収しに来た村人でしたが、怪我だらけで気を失っている一輪を見て驚愕しました。
それから、彼女には過酷な……本当に過酷な……事が待ち受けていたのです。
北の山脈には、他にも凶悪な入道が何体も住みついていました。
彼女の体に他の入道が封印される事が決まったのです。
どうせ死ぬつもりで生かして来たから、死ぬまで続ければ良いと思ったのでしょう。
二体、三体と封印されました。
体の穴という穴から血を吹きだたせ、血涙を流し、生死の境を彷徨い衰弱しても死ねなかったのです。
元気が戻れば、夜は大人の家屋に連れて行かれ、昼は村人に迫害され、同年代の男に弄ばれました。
四体、五体……六体と封印されました。
体の骨が歪に曲がり、所々で盛大に折れました。 耳を塞ぎたくなる骨折音が響き渡り、まるで妖怪が降臨した如く、人非ざる叫び声で暴れました。
堂の中は、最初の綺麗さは無く、そこでは何度となく死闘が行われて来た荒れようであったそうです。
それでも、回復すれば今までと変わらない昼と夜が訪れていたのです。
ですが、人々の心に変化がありました。
入道が封印されれば人間は死ぬ。 その事は何であったのか。 漸く、人々は一輪の異常さに気が付きました。
死なない、死ねない。 不死身の人非ざる人間。もしや、彼女は妖怪ではないかと思い始めたのです。
彼女への迫害がやみました。 そう、とどめを刺す為にやめたのです。
村の西に行った所に火山がありました。 山から上がる真っ黒な煙は、他の入道の追随を許さぬ恐ろしさです。
黒く畏怖の対象であった漆黒の入道は絶対的な恐怖の体現者でした。
この日の為に建てた、特別な御堂。 各地より集められた高名な呪術者。
呪術による武器防具に身を包んだ兵士達。 その様相は、まさに戦でした。
その先頭には、一輪の姿がありました。
肩から腰まで背中全体を強力な呪術の刺青に覆われ、今までに封印される毎に彫られ続けた結果でした。
手首、足首、腰、首には、それぞれ封印した入道が外に出て来れない様に封印がされていました。
準備期間およそ一月。 満を持しての退魔儀式。
その儀式は丸一日を費やしました。 日の出前から始まった儀式が終わる頃には、天に月が上がっていたのです。
一輪の全身に走った痛み。 最早、痛みと言う生易しい言葉やものさしでは測れません。
声さえ上げられず、全身をビクビクと痙攣させました。
見る見る内に皮膚が黒く焦げていく。 立ち上る数筋の煙が、封印こそ出来たものの、肉体の崩壊を予感させました。
その時です。 突然意識を取り戻し、立ち上がった一輪が皆の方向を向きました。
誰も彼もが呆気に取られ、臨戦態勢を整える事さえ出来ませんでした。
入道にむざむざ肉の体を提供してしまった。 と戦慄したのです。
彼女は、ニコリと落胆とも悲哀とも取れる様な物悲しい表情を浮かべていました。
その数瞬後。 バタリとその場に倒れ落ち気を失いました。
一輪は気を失っている間に捨てられました。
最早、人間ではない。 体内に七体の入道を封印された者は手に余ったのです。
初めて自由を手に入れた。 まるで雲の中に居る様な心地の良さであったのでしょう。
泣いて泣いて……彼女は泣きました。 もう、あんな思いをしなくて良いと彼女自身が理解したからでしょう。
~~~~~
そん後は、流れ流れて命蓮上人って偉い僧侶が居る寺に流れたんですよ。
そこに居た当時の白蓮尼公に、過酷な半生を察せられて、抱き締められたんで。
大変な道を歩んで来たのね……もう苦しまなくて良いのよ。 って。
それからは、姐さん、姐さん、聖様だ。
いやぁ、彼女が笑顔を知る事が出来て、あっしは……あっしは……。
「雲山。 そんな所で何をしているの~? こっちに来て皆で呑みましょうよ~」
……こほん。
少し酔い過ぎてしまった様だ。
本日は、時雨を降らす雨雲を演じたい気分であったのだ。
ん? 話しの続きを教えろ……と申すか。
寺で二十を過ぎた一輪であったが、行脚の旅に行く事を命蓮上人より命じられた。
その旅の途中で会ったのが俺だ。
生まれた時より知っている、その少女。 憐れで不憫であったと記憶していた。
俺は、その時、人生に幕を引いてやるつもりであった。 もう苦しむ必要が無い様に……と。
だが、彼女の取った行動は、皆の知っての通りだ。
それから、一生守ってやるつもりだった。
守ってやるつもりだった……守れなかった。
何とも情けない気持ちで一杯だ。 それでも、今ああして笑顔で過ごせる事を感謝している。
誰に? ……誰だろうな? 船長ではないし、寅丸や鼠っ子でもない。
ぬえの奴でもなければ、白蓮殿でも無い。
……一輪に対してか? 自分でも分からなくなってきた。
ふむ、酒が無くなったか。 長い間引き留めて申し訳なかった。
また来てくれ。 その時は、話しを聞いてくれた礼に今日より旨い酒を用意しておこう。
この後、もしよろしければ、墓に手を合わせてくれないか?
墓石に名前は無い。 中に誰が眠っている訳でも無い。
大輪の菊が一輪だけ供えてある墓だからすぐに分かるだろう。
今日は酔い過ぎた。 そろそろ、寡黙な頑固親父に戻るとするかな。
姉さん・・・!
いいですね。
段落の先頭に空白を入れて貰えると、携帯とかで読んだ時に折り返しなのか改行なのか迷わなくて済むので、もっとテンポよく読めるようになるのではないかと思います。
・絶対的な恐怖の体現者であった。
の二か所だけは他と同様敬体にしておくのがよかったのではないかと。(細かすぎる指摘)
気になるのは、語り部が雲山であるというところです。
酒が入っていたとしても、一輪にとって知られたくないであろう内容の過去を
どこの誰とも分からない旅のお方にベラベラと喋るのだろうか? と。
(まあ、波線で囲われたパートはあくまで読者向けで雲山はそのうち話して
大丈夫そうなところだけ取捨選択したのであろうと考えましたが、
ハードすぎてあまり大丈夫なところがあるようにも思えないorz)
やはり全体を寺の内輪で完結させるようにした方が自然なのかなぁと。
作者の精神の有り様が本当に気持ち悪い。
実力云々じゃなくずっとこういう評価だと思う。
まずキャラが全然可愛くない
この作品を読んでから、改めて深秘禄での一輪のはっちゃけた言動を見直すと、辛い過去を乗り越えて、今はなんだかんだで幸せに過ごしているのだなあ、という気がして救われた気持ちになります
ただ、ひとつ難点を挙げると
村人が一輪を虐待する動機が薄いと言うか、その辺りの描写が抜け落ちてるように感じられて、ただただ虐待を受ける一輪にモヤモヤしてしまいました
元より人柱として生まれて人柱として死ぬ、という過酷な運命を背負った少女に対して、そこへ更に虐待を加える村人の心理とは如何なものだったのでしょうか?例えば、入道に苦しめられてきた鬱憤を晴らす為、腹いせに虐待を加えていた、という風に想像も出来るのですが、それでも何処か腑に落ちない感じは抜けません
この辺りに納得のいく描写があれば、自分の中では満点でした
それではまた、次回作に期待しています
お話としては面白いとは思うのですが、ちょっと雲山の立ち位置がわかりにくいですね。
雲山は当時その村のあたりにいて、それで一輪や村のことをずっと見ていたということでしょうか。
それなら一輪の事を助けてもよさそうですし、なんというか雲山が当時どこで何をしていてなぜ一輪の事を詳しく知っているのかよくわかりません。
村を襲っていた入道とは別なんですよね?
また、
>それからは、姐さん、姐さん、聖様だ。
いやぁ、彼女が笑顔を知る事が出来て、あっしは……あっしは……。
からすると、一輪は寺では割と幸せに過ごしていたように感じるのですが、ではなぜ雲山は一輪を死なそうとしたのでしょうか?
寺流れ着いてからの事をその時の雲山は知らなかったとか、今が幸せでも過去のトラウマに一輪が苦しんでいたとか想像してみましたが、もっと説明が欲しいですね。
一輪の名前や二つ名からこういったお話を作る発想はすごいなと感じます。
正直かなりハードな内容ですが、ここの他の方の作品だってむやみに可哀想な設定やら過去やらをキャラにくっつけてるのはごまんとありますからね。
注意書きがありますし、このくらいならこっちでも問題ないくらいの表現かなとは思います。
ただ『人によっては、不快に感じる表現があります。』という言葉では不十分かと。
はっきりと『残虐は表現があります』くらいは言っていいんじゃないでしょうか。
酒が入ればなにいってもいいわけじゃないぞ