秋の夜長。私はひっそりと鍾乳石近くの窪みに隠れていた。
「くちゅん。誰かなぁ、私の噂をしているのは」
この時期になると気温は冷え込み、中の湿度も多少マシになる。
洞窟は私とって最高の場所だ。天敵もいないし、妖怪退治を行う人間もいない。
せいぜい来るとしたら、過って洞窟に迷い込んだ愚かな人間ぐらいだ。
そして今現在。私はその人間という愚かな生き物を食べるべく、ジッと身を潜めていた。
「まだかなぁー」
人間は私にとって好物だ。特に若い女の肉は歯ごたえがあって甘い。
一週間前に食べた女の子は、特に甘味があって一番歯ごたえが良かった
あー、あー、お腹空いたなぁ……。人間食べたいよ人間。あ、お婆さんの肉はいいや。
酸っぱすぎて美味しくないもん、あれ。
(ぐ~)
あ……。また鳴った。此処最近よく腹の音が鳴り続く。
あの女の子以来、何も食べていないからなぁ。
本当ならこの場所から動きたいけど、余計な体力も使うわけにもいかない。
私は軽く溜息を付いていた。すると、どこからともなく人の気配を感じた。
「もしかして人間!?」
私は心の中で喜んだ。やっと人間が喰べられる。ふふふ、楽しみだなー。
桶の中に身を隠した私は、ゆっくりと人間がいる場所まで移動を開始した
移動を開始してから数分後。私は生きの良い可愛い女の子を見つけた。黒髪で赤い着物。
黒い草履を履き、俯いた表情をしていた。とりあえず私はその女の子を幼女Aと呼ぶ事にした。
「ふぅ……どうしようお母さんとはぐれちゃったよぉ。しくしく」
幼女Aは目から涙をこぼしていた。可愛そうに、はぐれちゃったのね。
でも大丈夫。もうすぐ貴女は私に喰われるから悲しむ必要なんてないわ。
私は更にゆっくりとした速度で、幼女Aの背後まで近づいた。
大丈夫、この子はまだ私の気配に気づいていない。そーっと行けば気づかれることなんてない。
そう心の中でそう確信していたその時――
「誰かいるの?」
女の子は前触れもなく後ろに振り向いた。しまった。うかつだったわ。
このままだと私の姿がばれてしまう!
私は咄嗟に桶から離れた。軽やかな桶が転がる音が当たりに響く。
桶を置いてしまったためか、姿を隠そうにも、隠せない。
仕方ない。私は近くにある鍾乳石を背に、身を隠した。
「なんだろう……これ?」
先ほどまで泣いていた幼女Aは、近くに転がっている桶を手にした。
ちなみにこの桶は私、に取って体の一部でもあり、重要な通行手段だ。
この桶が無いと空に浮かぶだけでなく、どこからに移動するできない。
私は心の中で迂闊な行動に走った事に対し、激しく後悔した。
「お~、ん~」
今度は桶の中を見始めた。ん……そこにはええと。
「空っぽだぁ」
そりゃそうよ。中に誰もいませんよ。すると今度は幼女Aは桶の底を覗き込んだ。
「お?」
ああん。だめそんなところを見ないで!! 桶の裏底は私のプライベートが詰まっているのに!! うわーん!!
「ん~。変なの!」
へm変……? 私の裏底が変っ!! というかなんて変なのよっ! ゆ…許さないっ!!
私の心の中に幼女Aに対する殺意が浮かび上がった。
もういい、喰べてやる。完全に身が滅ぶまで喰い尽してあげよう。ふふふ……。
私はできるだけ足音を立てないよう、ゆっくりと歩いた。一歩、二歩、三歩。じわりじわりと近づく中、幼女Aは自分の死を迎えることを知らず桶で遊んでいた。
よし、今だわ――
「ん?」
「こんにちは」
私は幼女の前に姿を現した。幼女Aはキョトンした顔を浮かべた。それもそのはず。
私だって幼女Aに負けないぐらい幼い顔立ちをしていたからだ。そのため普通の人間達は、私の顔を見ても驚く事はまずない。というより、大抵此方から襲っているせいか、普通の人間達は此方の顔を知る由もなかった。
「貴女、誰? もしかして、私と同じ……」
「だーるさんがこーろんだ」
「え?」
「だるまさんよ、私は」
だるまさん? と幼女は首を傾げた。ふふふ。これほどまでに簡単にに引っかかるとはね。
流石の私も驚きを隠せなかった。ちなみにだるまさんは只の喩えである。
「ねぇねぇ」
「なあにぃ?」
「その桶返してくれないかなぁ。それね、私の桶なの」
「え? そうなの」
うん、と私は満面の笑みで答えると、幼女Aは素直に桶を渡してくれた。
ふふふ。これで準備は整った。後はこの人間を喰い尽くすだけ。
「ねぇ。貴女、名前は?」
「え?」
私はどうやって幼女を喰べようか考えている最中の事だ。突然幼女Aから名前を聞かれた。
余りに唐突な質問だったのか私は少し焦ってしまった。
「き…キスメ。キスメって言うの」
私は恥ずかしいそうな表情を見せつつ、小さく答えた。勿論これは幼女Aを騙す演技である。
「キスメ、キスメちゃんと言うのねっ、宜しくっ」
「うん」
幼女Aは満面な笑みで私に挨拶をした。それに私も同様の態度で答えた。勿論これも演技だ。
「で、キスメちゃんはどうして此処にいるの?」
「ふふふ……。それは」
私は深く深呼吸をし、彼女にこう告げた。
「貴女を喰べるためよ」
「え?」
イタダキマス。ソシテ、サヨウナラ――
その瞬間、洞窟内の気温がほんの少し下がった。
「あー、美味しかったー。もうお腹パンパンだよぅ」
私は頬に付いた大量の血痕を服の袖で拭った。白い服は返り血、真っ赤に染まっていた。
「さて、今度は誰が来るのか楽しみねっ。うふふ」
そして私は桶の中に入り、この場を跡にした。もう此処には用は無い。新しい場所に移動して、獲物(にんげん)を探そう。生きの良い幼女をね、うふふ。
数日後――
洞窟の入り口近くに血の付いた一足の下駄が見つかった。それが下駄が誰の物だったのか未だに判ってはいない。
「くちゅん。誰かなぁ、私の噂をしているのは」
この時期になると気温は冷え込み、中の湿度も多少マシになる。
洞窟は私とって最高の場所だ。天敵もいないし、妖怪退治を行う人間もいない。
せいぜい来るとしたら、過って洞窟に迷い込んだ愚かな人間ぐらいだ。
そして今現在。私はその人間という愚かな生き物を食べるべく、ジッと身を潜めていた。
「まだかなぁー」
人間は私にとって好物だ。特に若い女の肉は歯ごたえがあって甘い。
一週間前に食べた女の子は、特に甘味があって一番歯ごたえが良かった
あー、あー、お腹空いたなぁ……。人間食べたいよ人間。あ、お婆さんの肉はいいや。
酸っぱすぎて美味しくないもん、あれ。
(ぐ~)
あ……。また鳴った。此処最近よく腹の音が鳴り続く。
あの女の子以来、何も食べていないからなぁ。
本当ならこの場所から動きたいけど、余計な体力も使うわけにもいかない。
私は軽く溜息を付いていた。すると、どこからともなく人の気配を感じた。
「もしかして人間!?」
私は心の中で喜んだ。やっと人間が喰べられる。ふふふ、楽しみだなー。
桶の中に身を隠した私は、ゆっくりと人間がいる場所まで移動を開始した
移動を開始してから数分後。私は生きの良い可愛い女の子を見つけた。黒髪で赤い着物。
黒い草履を履き、俯いた表情をしていた。とりあえず私はその女の子を幼女Aと呼ぶ事にした。
「ふぅ……どうしようお母さんとはぐれちゃったよぉ。しくしく」
幼女Aは目から涙をこぼしていた。可愛そうに、はぐれちゃったのね。
でも大丈夫。もうすぐ貴女は私に喰われるから悲しむ必要なんてないわ。
私は更にゆっくりとした速度で、幼女Aの背後まで近づいた。
大丈夫、この子はまだ私の気配に気づいていない。そーっと行けば気づかれることなんてない。
そう心の中でそう確信していたその時――
「誰かいるの?」
女の子は前触れもなく後ろに振り向いた。しまった。うかつだったわ。
このままだと私の姿がばれてしまう!
私は咄嗟に桶から離れた。軽やかな桶が転がる音が当たりに響く。
桶を置いてしまったためか、姿を隠そうにも、隠せない。
仕方ない。私は近くにある鍾乳石を背に、身を隠した。
「なんだろう……これ?」
先ほどまで泣いていた幼女Aは、近くに転がっている桶を手にした。
ちなみにこの桶は私、に取って体の一部でもあり、重要な通行手段だ。
この桶が無いと空に浮かぶだけでなく、どこからに移動するできない。
私は心の中で迂闊な行動に走った事に対し、激しく後悔した。
「お~、ん~」
今度は桶の中を見始めた。ん……そこにはええと。
「空っぽだぁ」
そりゃそうよ。中に誰もいませんよ。すると今度は幼女Aは桶の底を覗き込んだ。
「お?」
ああん。だめそんなところを見ないで!! 桶の裏底は私のプライベートが詰まっているのに!! うわーん!!
「ん~。変なの!」
へm変……? 私の裏底が変っ!! というかなんて変なのよっ! ゆ…許さないっ!!
私の心の中に幼女Aに対する殺意が浮かび上がった。
もういい、喰べてやる。完全に身が滅ぶまで喰い尽してあげよう。ふふふ……。
私はできるだけ足音を立てないよう、ゆっくりと歩いた。一歩、二歩、三歩。じわりじわりと近づく中、幼女Aは自分の死を迎えることを知らず桶で遊んでいた。
よし、今だわ――
「ん?」
「こんにちは」
私は幼女の前に姿を現した。幼女Aはキョトンした顔を浮かべた。それもそのはず。
私だって幼女Aに負けないぐらい幼い顔立ちをしていたからだ。そのため普通の人間達は、私の顔を見ても驚く事はまずない。というより、大抵此方から襲っているせいか、普通の人間達は此方の顔を知る由もなかった。
「貴女、誰? もしかして、私と同じ……」
「だーるさんがこーろんだ」
「え?」
「だるまさんよ、私は」
だるまさん? と幼女は首を傾げた。ふふふ。これほどまでに簡単にに引っかかるとはね。
流石の私も驚きを隠せなかった。ちなみにだるまさんは只の喩えである。
「ねぇねぇ」
「なあにぃ?」
「その桶返してくれないかなぁ。それね、私の桶なの」
「え? そうなの」
うん、と私は満面の笑みで答えると、幼女Aは素直に桶を渡してくれた。
ふふふ。これで準備は整った。後はこの人間を喰い尽くすだけ。
「ねぇ。貴女、名前は?」
「え?」
私はどうやって幼女を喰べようか考えている最中の事だ。突然幼女Aから名前を聞かれた。
余りに唐突な質問だったのか私は少し焦ってしまった。
「き…キスメ。キスメって言うの」
私は恥ずかしいそうな表情を見せつつ、小さく答えた。勿論これは幼女Aを騙す演技である。
「キスメ、キスメちゃんと言うのねっ、宜しくっ」
「うん」
幼女Aは満面な笑みで私に挨拶をした。それに私も同様の態度で答えた。勿論これも演技だ。
「で、キスメちゃんはどうして此処にいるの?」
「ふふふ……。それは」
私は深く深呼吸をし、彼女にこう告げた。
「貴女を喰べるためよ」
「え?」
イタダキマス。ソシテ、サヨウナラ――
その瞬間、洞窟内の気温がほんの少し下がった。
「あー、美味しかったー。もうお腹パンパンだよぅ」
私は頬に付いた大量の血痕を服の袖で拭った。白い服は返り血、真っ赤に染まっていた。
「さて、今度は誰が来るのか楽しみねっ。うふふ」
そして私は桶の中に入り、この場を跡にした。もう此処には用は無い。新しい場所に移動して、獲物(にんげん)を探そう。生きの良い幼女をね、うふふ。
数日後――
洞窟の入り口近くに血の付いた一足の下駄が見つかった。それが下駄が誰の物だったのか未だに判ってはいない。
演技と見せかけて、キスメさんが本気で恥ずかしがっているように見えてしまって、可愛かったです。
表現力を気にしているみたいですが、どちらかというと構成に気を使うとよりよくなるかなと思ってしまいました。
幼女来た。食べた。終わり! と、本当に脳みそに残ることなくサラっと流れやすいため、コメントがしにくいなあと。
他の作品を読んだり、頭の中で練る中で、面白そうなテーマや展開を考えるとよいかもしれません。
そんな余計なお世話コメント。
恐怖を感じる前に終わったんで、分量や展開などに気をつかうと良いかも。
ご指摘有難うございます。展開ですね。今後の作品執筆に生かせるよう努力していきます。
>11氏
ありがとうございます。確かに分量と展開に気を使うべきでした。ご指摘ありがとうございます。
だがそれがいい
わからん。だれかおしえて