「力が欲しい……!」
ここ、守矢神社に唐突に乗り込んで来た豊穣の神――秋穣子はちゃぶ台をドンと叩いて力説した。
応対する羽目になった東風谷早苗は、漫画の主人公みたいですねえ、と微苦笑する。
帽子のぶどうを見ながら、あれって食べられるんでしょうかと考えるあたり余裕ではあるが。
「穣子様、いきなりどうしたんです?」
「どうもこうも秋なのよ、私たちの季節なのよ! それなのにほったらかしなんて、信仰とか力が足りてないとしか思えないわ!」
「そんなことないと思いますけど、まだ9月ですから人里の皆さんも夏と考えているだけでは」
「甘い、甘いわよ巫女!」
風祝なんですけどね。
だが、説明しても聞いてくれなさそうだと流すことにした。
「ねえ早苗、あなた12月は秋だと思う?」
「? いえ冬ですよね」
「ええそうよ、12月入ったらみんな冬だって考えるわよ、じゃあ秋は10月と11月だけってこと!? そんなの差別よ!」
「はあ」
「秋だけ短いなんておかしいの、だから今は秋なの! 間違ってるのは私じゃない、世界よ!!」
けなげに主張する穣子に、何かがくすぐられる。
某唐傘お化けがいれば、全力で逃げだすような素敵な笑顔を浮かべ。
「もう秋だけ2ヵ月でいいんじゃないですか?」
「巫女おぉぉぉぉ!?」
いい表情ごちそうさまです。
それにしても突然でしたね、と思い返す。
境内を掃除している所に押しかけてきた二柱の神は、早苗が呆然としているうちに居ついてしまった。
守矢の神といえば 「よく来たね、ゆっくりしておいき」 だの 「久しぶり~元気してた?」 だの、なんともフランクな対応だ。
敵対して欲しいわけではない、ただ仮にも信仰を集めあう相手なんだから、もうちょっと威厳ある態度が欲しい。
ため息をつく風祝を誤解したのか、最後の1人が申し訳なさそうに口を開く。
妹と同じ、黄金の稲を連想させるブロンドに、もみじの髪留めをつけた紅葉の神――秋静葉だ。
「ごめんね、山の巫女。穣子ったら言い出したら聞かないから」
「いえお気になさらず、でもどうしたんですか、お二方とも信仰が足りないわけでもないでしょう」
足りない、というのも控えめな言い方だ。
実のところこの秋姉妹、人里に関して言えば幻想郷一といって差し支えない信仰を得ている。
布教活動に熱心な風祝をして強敵と言わしめるほどだ。
「むしろ、あれだけ敬われてるのは羨ましいですよ。行く先々で、秋姉妹様がいらっしゃるからと言われる身にもなってください」
「……ごめん?」
「謝られることでもないんですけどね。別に両方の神を敬ってもいいので信仰も集まってきていますし」
それでも、やはり今まで身近で生活を支えてくれた姉妹に軍配が上がるらしい。
守矢は妖怪、秋姉妹は人里でリードという形で落ち着いているのが現状だ。
「でも、ここの神ほどの力があれば、信仰だってすぐ集まるんじゃない?」
「もちろん尊敬する神様ですし、かつては一国の信仰を集め、農業や狩猟についても御加護はあるんですが……」
どうも、性格的に細やかな加護には向いていない気がする。
期待されるとどこまでも張り切ってしまうというか、太陽いっぱい浴びなといいつつ日照を引き起こしたり、水がたくさんあるといいよねと言いつつ水害を引き起こしかねない。
まさかそんな事しないだろうとは思う――思うのではある、が。
なにせ地底の烏にトンデモ能力を与えたり、河童とあれこれ企んだりと前科がありすぎるため、秋姉妹の信仰を押しのけてまでの布教は躊躇してしまう早苗だった。
凶作で信仰無くなりました、では洒落にもならない。
「ちょっと巫女! しず姉とばっか話してないで私の話も聞いてよ!」
「はいはい聞いてますってば」
静葉と苦笑を交わすと穣子に向き直る。
「だからね、やっぱり私たちの扱いがなおざりなのは、力が足りないからだと思うの!」
「収穫祭にわざわざ招かれる神様はお二人くらいですよ、それで不満なんて贅沢です」
「う~… そうだけどさ~ 春や夏にも構ってくれてもいいじゃない」
「子どもですか穣子さんは」
既にさん扱いだ。
「みのりんはさびしんぼだからね」
「そんなんじゃない! だいたい姉さんだって悔しくないの!? 私たちにもっと力があれは、姉さんの力だってちゃんと分かってもらえるかもしれないのに!」
予想外の言葉に思わず静葉に目をやる。
豊穣の神である穣子はもちろん、静葉の力も自然界にとって欠かせないものだ。
あそこまでの信仰を得ている彼女たちなら、紅葉を司る能力も知れ渡っていると思っていたのだが。
「ほら、若い人たちにはあんまり、ね」
恥ずかしそうにこぼす静葉。
確かに、細かいことにこだわらない人里のことだ、秋といえば収穫、秋の神といえば収穫の神様とごっちゃになっているのかもしれない。
「それに、あんまり聞き覚えのいい神じゃないから」
「しず姉……」
「今はそうでもないけど、前は疎ましがられてんだよ、あいつのせいで森から緑が消える。あいつのせいで冬が始まる、だから――寂しさと終焉の象徴」
そう悲しそうに呟く。
重い空気が部屋にたちこめ、普段は明るい穣子もなんと言っていいものか迷っているようだ。
早苗はそれを打ち消すように、そんなことありませんと静かに口を開いた。
「紅葉して葉を落とすから木々は冬を越すことが出来ますし、落ち葉だって立派な栄養になるんじゃないですか」
「……早苗?」
外の世界の知識に、きょとんとする静葉。
「それに落ち葉って肥料みたいな物にもなりますし、そういう意味では、豊穣の神というのも間違ってないと思いますよ」
そう言って静葉を見る。
言われ慣れていないのか戸惑っていた静葉だが、やがて滲み出るような微笑みを浮かべた。
心底から、嬉しそうに。
「……ありがとう、早苗」
「本当のことを言っただけです、褒められる事はしてませんよ」
ふふ、と笑みを交わす。
今度、寺小屋のハクタク先生に伝えておきましょうかね、と湯のみを口に運ぶ。
空気が変わったのにほっとしたのか、穣子が再び気勢を上げる。
「早苗の言う通りだよ、姉さんだって豊穣の神なんだから胸張っていいんだよ」
「そうね、そうよね」
「里の皆は分かってないよ、姉さんだって立派な収穫の神なんだから!」
「……収穫の?」
「だてにカニを頭につけてるわけじゃ――」
瞬間、紅葉の髪飾りを付けた神の右腕が霞み――なんとも形容しがたい音が聞こえた。
例えるなら、よく握りこまれた拳で人体の急所であるレバーを貫いたような音だ。
緩い放物線を描いて、豊穣の神が視界から消える。
いいコブシしてますね~。
そんな言葉が脳裏をよぎった。
痛すぎる沈黙の中、終焉を象徴する神はちょこんと小首をかしげる。
「みのりんったら、お・ち・ゃ・め・さ・ん♪」
「……お、おねいちゃんキャラ違う、いや、えっとごめんなさい」
温厚な人ほど怒らせると怖いっていいますねと、見ようによってはカニに見えなくもない髪飾りに視線をやる。
子どもにからかわれたとか、嫌な過去でもあるんでしょうか。
聞いてみようとする早苗だが、静葉が微笑んだまま一言。
「なあに?」
にこり。
「いいえ、なにも?」
にっこり
やめましょう、命は惜しいです。
脇腹を押さえ、産まれたての小鹿のような足取りで戻ってくる穣子を見て、そう思う。
青息吐息の豊穣の神は、それでも涙ぐましく言葉を紡ぐ。
「そ、そう……お姉ちゃんがこんな誤解を受けないためにも、私たちには力が必要なの……!」
「穣子には言われたくないんだけど」
「それより大丈夫ですか、顔色悪いですよ」
だいじょーぶだいじょーぶと、震える手で親指を立てる豊穣の神。
脇腹を押さえながらでは威厳もなにもないが、このやる気の1割でもいいから、神奈子様たちにも見習ってほしいものだ。
「ですが、どうするおつもりですか、力が欲しいといっても簡単に手に入るものではありませんし」
「その点について抜かりはないわ!」
不敵に笑うと、ぴっと人差し指を風祝に向ける穣子。
人を指しちゃいけません、という静葉の言葉にささっと引っ込めるあたり素直ではある。
怯えた表情は見なかったことにした。
「ねえ巫女、私がなんのためにここに来たと思ってるの?」
「まさか神奈子様に頼ろうというんですか? やめたほうがいいですよ、何をされるか私にも予想出来ませんから」
「……あんた、自分とこの神に向かって結構言うわね」
いえ、経験に基づいた忠告です。
核融合の力を与えられた、某烏とか烏とか烏とか。
「そうじゃなくて早苗、私はあなたに会いに来たのよ」
「……あの、私に力が欲しいと言われても困るのですが」
「なに言ってるの、あなた弾幕強いじゃない」
あっけらかんと言われて言葉に詰まる。
「そりゃ弱いとは思ってませんけど、まさか弾幕ごっこを習いにきたんですか?」
ちがうちがう、と首を振る穣子。
だったらなんなのでしょう。
「私考えたの、か弱い人間でありながら、弾幕ごっこで神や妖怪を圧倒する博麗と守矢の巫女、あんたたちには何か共通点があるんじゃないかって」
「共通点、ですか」
なんでしょうね、優しくて慈悲深いことでしょうか。
某オッドアイが聞いたら、嘘だと叫びそうなことを想像する。
「早苗の巫女服は昔から着てたものなんでしょ?」
「ええまあ」
「守矢と博麗の巫女。お互いを知らず、住んでいた場所も慣習も違うのに、ある一点だけは同じ、これは偶然の一致なんかじゃないわ」
そんな大層なものありましたっけ。
訝しむ早苗だが、力説している穣子は気付かない。
早苗と静葉を交互に見やり、そう、と確信に満ちた叫びを上げる。
「腋をあけた者が――世界を征する!」
無言の室内に、お茶をすする音が空しく響いた。
おそらく同士であろう静葉と無言でアイコンタクト。
「静葉様、お茶淹れ直してきますよ」
「あら、ありがと早苗」
「ちょっと2人とも、流さないでえぇぇ!」
紅葉の神が、重症患者を気遣うような瞳を自らの妹に向ける。
「……ねえ穣子、あなた疲れてるのよ」
「そんな目で見ないでよ、しずねえ!? この完璧な説のどこに穴があるっていうの!」
「穴しかないっていうか底がついてないと思うなあ」
そんな双子を尻目に、そっと眉間を押さえる。
まさかとは思うが、それを聞くためだけにわざわざ来たのだろうか、この神様は。
そう考えると、どうしようもない疲労感が襲ってくる。
「ま、間違ってた!? 早苗、私間違ってたの!?」
でも、その気弱げな表情良いですね。
と、逸れかけた思考を修正。
真面目な話、豊穣の神には申し訳ないが、この服にしても昔からの慣わしにすぎず、似ているのはおそらく偶然である。
腋をあけるだけで弾幕が上手くなるなら、今頃幻想郷は腋巫女パラダイスになっている。
だが、ここまで必死になっている神様を邪険にするのも躊躇われ、実際に体験してもらうのが一番かと妥協案を出すことにした。
「私が着ていたお下がりでよろしければ、少し着てみますか?」
「いいの!?」
どうも本気で試してみるらしい。
ちょっと待っててください、と母屋に向かう、
箪笥の奥にまとめてしまってあったから、見つけるのにそれほど時間はかからなかった。
手にした一回り小さい衣装に郷愁を覚えながら、穣子の元へ戻る。
「ありがとう! やっぱり早苗に相談してよかったよ!」
神器でも受け取るかのように両手で捧げ持つ穣子。
いえ、そんな立派なものじゃありませんから。
着替えてくるね、と言いつつ隣の部屋に駆け込む豊穣の神を、静葉と2人で生暖かく見守る。
「なんか、ほんとにごめんね」
「このくらいでしたらお安い御用です」
着付けが分からなかった言ってくださいね、と声をかけておいたが、大丈夫、神だからという良く分からない返事が返ってきた。
そんなものなのだろうか。
しばし衣擦れの音が響いて――。
「どうよ!? お姉ちゃん、早苗!」
心地よい音を立てて開いた襖の向こうには、ちび巫女が立っていた。
目安で選んだ代物だが、サイズもそれほど違いはないし、青白の衣装に金髪が新鮮ではある。
だが、自信満々に胸を張る穣子を見て、早苗は失望を隠しきれなかった。
「全然駄目ですね」
「な……っ! どういうこと、何かおかしかった!?」
そういうことではない。
もっと肝心ものが穣子には足りない、それが早苗を落胆させたのだ。
あなたは分かっていないとばかりに、言葉を叩きつける。
「なんですか、その誇らしげな態度は」
「え?」
「着慣れない服を着て恥ずかしがる姿がいいんです、今のあなたはただ服に着られているだけです!」
「ええー…?」
若干引き気味の豊穣の神を、冷めた視線が射抜く。
「穣子さん」
「な、なにかな早苗」
「あなたには失望しました……」
「いや待って、それ私が悪いの!?」
やっぱり小傘さんじゃないとダメですね、今度着せてあげましょう。
蒼い髪も風祝服に映えますし、あの子なら期待に応えてくれるはずです。
脳裏で逃げ出す小傘を捕まえて、洗脳まがいの説得を開始した時点で我に返る。
いけないいけない、こんな大事なことは後でゆっくり考えなくては。
それにおろおろする穣子に、少し反省。
「まあ冗談はさておき」
「冗談に聞こえなかったよ!?」
気のせいです。
黙殺し、続ける言葉を選ぶ。
今までが不真面目だったわけではないが、ここから先は冗談で言っていいことではない。
だから笑顔を消す。
神に仕える者としての顔で、鋭利に斬りこむ。
「本当は穣子様だって分かってるんでしょう、そんな事しても力はつかないって」
「何を言って――」
「いいえ、それだけじゃありません。私たちがこの幻想郷で布教を始めた時、おそらく信仰が最も多かった時でさえ、穣子様たちは弾幕ごっこが強いとは言えませんでした」
「……それは」
「穣子様たちが易々と他力本願に走るとは思えません。恐らくお二人で何度も練習したのでしょう? それでも何も変わらなかったのでしょう? でしたら――」
空気が凍る。
間違いなく、これは穣子たちを傷つける。
それでも一拍の間を置いて、早苗は重い口を開いた。
「それが穣子様たちの――神の器としての限界ではないでしょうか」
人間の生まれついての差とは比べ物にならないほど、神の格差は大きい。
全員が全員、力も神格も兼ね備えた万能の神ではないのだ。
おらそくそれは、秋姉妹も。
答えは沈黙。
穣子は強張った表情で視線を彷徨わせる。
そんな妹を見かねたのか、静葉が肩に手を置く。
「ねえ穣子、あなたの気持ちは分かるつもりよ、私も同じ立場だもの」
「……おねえ、ちゃん」
「今まで何度も話し合ってきたよね、何度も弾幕ごっこしてきたよね、それでも弾幕の腕はほとんど上がらなかった。だったら――」
穣子のぎゅっと握りしめた手から血の気が失せる。
聞きたくないとばかりに頭を振る。
「じゃあどうしろってのよ! 力無き神なんか意味ないじゃない!」
それは悲痛な叫びだった。
聞く者の胸を締め付ける震える慟哭。
「ねえ早苗、知ってる? 私たちって下手したらそこらの妖怪にだって弾幕ごっこで負けるのよ、そんな神様を人里の皆が信仰してくれると思う?」
「穣子様……」
「今はいいわよ、人里のみんなも私たちを慕ってくれてる、私たちもそれに応えてる、でも何かのきっかけでそれが崩れたらどうするの!?」
信仰が失われ、応える力も失った神の末路など決まっている。
早苗がこの幻想郷に来ることになった原因でもあるのだから。
「信仰が無くなって私が消えるだけならいい! でもそしたら皆はどうなるの? 凶作が、飢饉がきたら? お姉ちゃんの力がなくなって四季が乱れたらどうなると思ってるの!?」
「穣子!」
「怖いのよ、私たちのせいで誰かが苦しむのが!」
恐ろしくてたまらないとばかりに、己を抱きしめる豊穣の神。
溜め込んできた感情を絞りだすように吐き出すその姿は、ガラス細工のように儚い。
「私には……そんなの耐えられない……!」
多分それが、この優しすぎる神様の本心。
誰よりも人の近くで、誰よりも人を見守ってきた、誰よりも――人恋し神様。
そんな彼女だからこそ、早苗もなんでもないことのように答える。
「別にそのままでいいんじゃないですか」
弾かれるように顔を上げると、風祝を睨みつける穣子。
それでも視線は逸らさない。
「あんたは……! そうね、あんたのとこの神様は大したもんだからね、私たちがいなくなったほうが上手くやっていけるかもね!」
「穣子、やめなさい!」
侮蔑は甘んじて受ける。
先に豊穣の神を傷つけたのは早苗だ。
だが――いや、だからこそ、これだけは言っておかなければならない。
「弾幕ごっこが弱くて何がいけないんですか」
ああ、本当にこの神様はこんなにも怖がりなくせに。
「力がなくて何が悪いんですか」
「あんた聞いてなかったの! 力がない神なんて――」
「だからなんです?」
「だから……っ!」
「里の人たちは、長い、とても長い間、穣子様と静葉様が実りを約束してきてくれたのを知っています」
こんなにも臆病なくせに。
「人間が静葉様と穣子様を信じるように、穣子様もその絆を信じてあげてくれませんか」
こんなにも――人間が好きなんですね。
「だから、あなたたちは、今のあなたたちのままでいいと思います」
沈黙が落ちる。
説教まがいの真似なんて性に合わないんですよね、と嘆息。
だが、この神様が人間のことを本当に大切に想っているのは伝わってきた、ならばそれに応えるのも人間の早苗であるべきだ。
怒ってないでしょうか、と穣子を伺う。
「なんか偉そうなこと言っちゃってすみませんでした」
「……別にいいわよ、なによ、そのくらい早苗に言われなくても分かってるわよ」
不貞腐れたように呟く豊穣の神。
だが、どこかすっきりしたような表情で、あーあと背を伸ばす。
「早苗に心配されなくても、私は豊穣の神よ、このくらいでへこたれるわけないでしょ、さっきのはただの愚痴よ愚痴」
「そうだね、穣子は偉いもんねー」
「だー! お姉ちゃん、頭撫でないで!」
いつもの調子が戻ったようで安堵する。
あんな空気は、この姉妹には似合わない。
「あのさ、早苗」
「はい、なんですか?」
「……ごめん、そんでありがとね」
照れくさそうな豊穣の神に、ふわりと微笑む。
「御礼を言われることはしてません、でもそうですね」
「なによ」
「秋になったらお芋でも食べたい気分です」
「だからもう秋だって言ってるでしょ! ……まあ、とっておきを食べさせてあげるから腰抜かさないでよ」
期待してますね、と早苗。
と、思い出したように穣子が続ける。
「あとね、さっき限界がどうとか言ってたけど」
「それはあくまで予想ですから――」
「んな事どうでもいいのよ、たたこれだけは言っておきたくてね」
不敵に笑い宣言する。
「限界なんか知ったこっちゃないわ、神様なめんな人間!」
にっと笑うと、強風が舞い――そっと目を開けた先には元の衣装の穣子が悠然と立っていた。
早苗はあっけに取られ、ややあって笑い出す。
本当に、ああ、本当にこの幻想郷は面白い。
「じゃあね早苗、また来るから期待して待ってなさいよ!」
そう言って素足で境内に降りると、元気よく駆けていく。
来た時と同様に、本当に嵐のような神様だ。
「ほら、お姉ちゃんも早く!」
「ちょっと待ちなさい、穣子!」
置いていかれた静葉が慌てて声を上げる。
「静葉さんもお元気で」
「早苗もありがとう、あの子が悩んでたのは知ってたけど、やっぱり人間のあなたに言ってもらえて安心したと思うわ」
「さびしんぼだからですか?」
「自慢のさびしんぼですから」
そう言って笑いあう。
「おねえちゃーん、ほら早く帰って修行するよー!」
「はいはい、今行くから」
姉妹の声が、いつままにか涼しさを感じさせるようになった風に消えていく。
見上げれば天は高く、季節はもう――。
「秋ですかね、人恋し神様?」
◆ ◆ ◆
「チルノ、元気にしてた?」
秋があるから冬が来る。
動物たちは冬眠に、木々はその葉を落とし束の間の休眠に入る。
大地はその身に栄養を蓄え、来年の命を育む準備を始め。
そして人々は、1年の苦労をねぎらい翌年への粮とする。
「春ですよー!」
冬があるから春が来る。
森は溜め込んだ力を使い、その身を若葉色に染めあげていく。
長い冬眠を終えた獣は喜びの声を上げ、山野に賑わいを与え。
畑には新鮮な野菜がその姿を見せる。
「今年の向日葵もいい子たちばかりね」
春があるから夏が来る。
青々とした葉を茂らせた木々は、全身でその身に太陽を浴び。
山野には色とりどりの花々が彩りを与え。
水田では、稲がその身を誇らしげに伸ばしていた。
そして、季節は巡り――。
高く澄み渡った空の下。
木々がその身を色鮮やかに染め上げる参道を、2人の少女が歩いている。
爽やかな風を受け、楽しそうに笑いあう彼女たちは、箒を手にした目的の人を見つけその歩みを止めた。
姉妹は自慢のお土産を高くかかげ、こぼれるような笑みを浮かべ宣言する。
「――お待たせ、今年も秋が来たよ!」
あの替え歌は、うp主の愛を感じますよね
負けました、秋姉妹もいいもんだなあ
>限界なんか知ったこっちゃないわ、神様なめんな人間!
ここのやりとりで穣子に惚れた
>自慢のさびしんぼですから
静葉様を姉にくださいorz
「人恋し神様」一面道中の曲だっけか
曲のタイトルを上手いこともってきましたね
なんか色々考えさせられたぜ
うむ、秋姉妹なめんなっ!!
なんかすっごい癒された
秋姉妹好きになれたぜ、あんたの勝ちだ・・・
前から好きだったけど、更に秋姉妹が好きになりましたー^^
これぞ秋姉妹って感じですね
秋色の幻想動画は愛にあふれてたなあ
秋姉妹専門の動画サイト(マジ話)Aki tubeもお勧めですよ
秋姉妹に惚れ直しましたよ
人々が神を信じるように、神も人々を信じる。
温かい物語でした。
所々に入るS苗さんも良かったです。
小傘逃げてー
>巫女おぉぉぉぉ!?
ここで既に色々と持ってかれました。
秋姉妹大好きです^^
ほのかに漂うS苗さんがたまらない一品でしたw
そう言いながら腕立てする俺に隙はなかった
秋姉妹がとってもラブリーだぜい
振り回されてる姉さん素敵です
>某唐傘お化けがいれば、全力で逃げだすような素敵な笑顔を浮かべ。
で、ああ小魚さんかと判らせる貴方の風祝詞様の性格は素敵ですw
秋姉妹大好きな私のハートにクリティカルヒットしたz・・・
やっぱり作者さん方も、いろいろ考えてるんですね。
構成もしっかりしているし、キャラも生き生きしていてGJ。
さて、腕立て伏せしてこよう。
かっこいいです、秋姉妹!
オリキャラは褒め言葉なんだよ・・・うん・・・
あんたの思惑通り好きになっちまったぜ
ラスト近くの人間から神様への言葉があったかいな
ほのぼの? しみじみ? なんていうんだろうかな、こういうのは
S苗さん→おびえる心や泣き顔を食べる妖怪
みたいな認識になってきました
実際、秋は好きなんだけどね
とりあえず秋が嫌いな人間はあんまいないと思いまーす
腋か・・・うん
…四季が 乱 れ る …
えーきさまのことですねわかりm
>「力がなくて何が悪いんですか」
>「里の人たちは、長い、とても長い間、穣子様と静葉様が実りを約束してきてくれたのを知っています」
Sな早苗さんですが(Sもすてきなんですが)、良いこと言いますね。
感動しました。
俺が女だったら間違い無く惚れてたぜ
秋が訪れる度に人に笑顔を見せてくれるのであろう神様たちが好きになりました。
面白かったです!