逃げる奴はキャラ崩壊が苦手な奴だ!
逃げない奴はよく訓練されたせいでキャラ崩壊に耐性が出来ちまった奴だ!
つまりは、そういう事。
以下本編
あの紅魔館の門番として人間達にも非常に有名な妖怪、紅美鈴氏(妖怪)が人里近くに店を開いたという話が、最近里では噂を独占している。
美鈴氏がかつて勤めていた紅魔館は普段通りに存在、ただ門番の不在、という状況である。何があったのかは依然として不明である。
ただ、店の方は開店の知らせなど何一つなかったにも関わらず初日から大盛況であり、もともと人間達からも好意的に思われていたのも手伝って、開店三日目の今も客足は衰えを知らない。
明日の新聞にはこの美鈴堂特集を組む。是非この機会にご購読を。
文々。新聞号外夏の特集号
時は数日前にさかのぼる。
「いやああああああああああっ!」
この日も紅魔館は相変わらず。
現在の美鈴は、
メイド服に黒ニーハイ、胸は若干(で済んだのは必死の抵抗の賜物)はだけているものの下着は無い。ニーハイもところどころ破かれ、挙げ句の果てには「大人の事情により割愛」まで身に着けさせられ、駄目押しの様に水を浴びせられての悲鳴が冒頭のものである。
「どうしてこんな事するんですかー!」
必死の抗議。
頬は紅潮、涙目、息遣いは荒く、座り込んでいるから上目遣い。
逆効果。
「美鈴がそうやって私を誘惑するからよ!愛してるわ美鈴っ!」
「ひぃっ!止めて下さい咲夜さん!」
そう、今美鈴を窮地に追いやっているのは美鈴の上司。上司であり、美鈴にとっては憧れでもある筈のメイド長、十六夜咲夜。
容姿端麗才色兼備、時に優しく、時に厳しい、卒業式で彼女を語っても全く嘘にならない存在。
そんな彼女は今、
「やっぱり大きいわねぇ美鈴の胸は。触り心地や良し!」
立派な変態となって美鈴を追い詰めていた。
「だからっ!私の胸を触らないでくださ……ひゃん!」
「あ、可愛い」
「仕事に戻ります!戻りますから!」
「これが今の貴女の仕事よ!」
「いじられる事が!?」
「せいっ!」
「ひゃあ!」
咲夜の指が器用に美鈴の体を弄り急所を突いていく。その度あげられる艶めかしい声に卒倒する妖精メイドまでいる始末。
「咲夜さんっストップストップ!」
「ふふ…だーめ。貴女の体も私のもの」
「待ちなさい咲夜!」
そこに飛び込む声は美鈴のものではなく、当然咲夜のものでもなく。
「お嬢様……!」
それはレミリア。紅魔館の主、レミリア・スカーレット。
「咲夜。美鈴を離してやれ。美鈴、来い」
「う……」
悔しそうに声を漏らすも、主に逆らうことなど出来ないのだろう。
ほっと胸を撫で下ろし、主に近づく。
刹那だった。
美鈴の唇が塞がれたのは正に一瞬の出来事。
「……んむ!?」
「ん、流石ね美鈴。美味よ。びみしい」
「お嬢様、それはおいしいと読みます」
「咲夜うるさい。……そうとも言う」
勝手に盛り上がる主従を尻目に、顔をその髪より紅にして戸惑う美鈴。え?え?と狼狽えてばかりなのを見て、レミリアはふと思った。
「あら、初めてだった?なら喜びなさい。このレミリアに初めてを捧げ…」
「いや初めてじゃないですけどそういう問題じゃないですよ!」
動揺を隠せない美鈴も微笑ましい可愛い押し倒したいと咲夜の思考が回り、その先の色々と宜しくない方向まで走りかけた時、爆音。
「ふざけるなぁっ!初めてじゃないだと!?誰だっ!初めては誰だぁっ!」
ガタン、と何か(主に壁)が砕けたような音と共にレミリアが叫んだ。
「え……つい先程、……咲夜さんに」
一瞬の間。
「咲夜ああああああ!そんな子に育てた記憶はないぞ!いつから人の愛の邪魔なんかする子になったあああ!」
「邪魔なんてしてませんわ!初めから美鈴は私のもの!お嬢様ともあろうお方がそんな簡単な事すらご存知ないのですか!」
「じゃかあしいいい!」
天井の大破と共に館の内装は無惨なものとなり、最悪の主従喧嘩が幕を開けた。
もっとも美鈴は早々にその場を離れ、もう一人、きっと自分と同じ様な目に合っているであろう彼女を、迎えに行ったのだった。
「まあ……流石に逃げたくなるでしょ?」
「あやややや……聞かなければ良かったような気すらします」
夕方も終わりに近く、地平線こそ紅く染まっているものの空は暗い。
客足が引いた頃になって、文がこれまでのあらすじインタビューをしに来たのに対して美鈴は淡々と答えていた所である。
「もう一人の被害者というのが貴女ですか?小悪魔さん」
「ええ…美鈴さんがあと五分遅かったらパチュリー様に貞操やら何やらを跡形もなく奪われてましたね。間違いなく」
紅い髪だと苦労するんだろうか、と思った文だったが、パーフェクトサボマスターな死神を思い出してその案を排除した。
「あれ?そういえば話にレミリアさんの妹さんが出てきませんでしたが……部外者さんですか?」
何となく気になった事を聞いたら、二人は凄い目で文を睨みつけた。
「文さん」
「は、はい!」
怖い。文は心底そう思った。
「フランドール様は現在隣の部屋でにお休みなっておられます」
「ははは」
文は土下座した。深く、深く。
「でも……」
ぼそっと囁かれた言葉。文は反射的にメモを構える。
「それでも大事なんですよね」
「紅魔館の皆さんが、ですか?」
「はい……だからかな。里には近いですけど、紅魔館寄りの此処に店を構えたのは」
そんな目にあってもそんな事を言うか、と文は呆れやれやれと頭を振った。
これじゃあこの店その内消えちゃうな、と思いながら。
「文さん帰っちゃいましたねー」
「こぁちゃん、私達は棚の整理でもしましょ」
「そりゃー得意分野です」
一方、紅魔館。
レミリアは苛立っていた。かつてないほどに苛立っていた。
「苛々する……苛々する……!美鈴はどこだ!」
「お嬢様!新聞を!新聞をご覧下さい!」
そこに駆け込む従者の手には見慣れた新聞。普段新聞など見ないレミリアだが、今ばかりは情報が欲しい。
「美鈴が……家出しました!」
「何だとっ!?」
「まさか……居なくなったって話の小悪魔とフランと一緒に?」
パチュリーも愕然とした。
咲夜もレミリアもパチュリーも、一つの疑問を抱く。
「何故?」
「ってアホレミィ!前から言ったじゃない!美鈴の門番詰所は狭すぎるのよ!」
「で、でもあれは美鈴が構わないって!」
「何言ってるのレミィ!美鈴は遠慮しちゃう子なのは周知の事実でしょうが!」
「しかしパチュリー様も人の事言えませんよ!小悪魔も出ていったんですよ!?」
「馬鹿言わないで頂戴!私に何の非があったと言うの!?」
「パチェ!何度も言ったでしょうあの図書館は埃っぽ過ぎるの!小悪魔は耐えきれなかったのよ!」
「そんな……あの子は平気だって!」
「さっきの自分の言葉を思い出せ!」
あーだこーだと姦しく騒ぐ三人だったが、結局正解にはかすりもしなかった。
「埒があかん……居なくなって一年も経つ気がする……美鈴のおっぱいにダイブしないと死ぬ……」
レミリアのそのダイブ辺りに皆が同意して、咲夜が言葉を発した。
「連れ戻しにいきましょう」
何で今までやらなかったんだろう。
翌朝も店は大繁盛だった。人妖問わず多くの者達が買っていく。
「あ、このテープ下さる?」
「はいはい~」
「美鈴ちゃんこれお願い!」
「はいどうもっ!」
「こぁちゃんこれ包んでもらえる?」
「一丁あがり!」
「フランドールちゃーん!この茶葉二袋ー!」
「はーい!」
三人で働きながら、美鈴はふと思う。
平和だ。
実に、実に、実に平和だと。
「フランドール様、そろそろお休みになっても……」
「平気!吸血鬼パワーはフルパワーだよ!」
「よく分からないけど了解です」
とても元気なフランドール。誰がこの幼く可愛らしい少女を悪魔の妹などと思うだろうか。
「えいっ!」
「わぁ!投げちゃ駄目ですよ!」
「ごめんなさーい!」
とても、平和だった。
「あら、珍しい顔ぶれ」
昼食時となり、一時的に客が減っていく。
ちょうどそんな時間に、彼女はやってきた。
「えーっと、博麗の……」
「霊夢よ。久し振りね。門番さん」
「元、です。平和を求めて幾星霜」
「……お疲れ。と、そうよ、買い物に来たの。緑茶、ある?」
棚をざーっと眺めながら、霊夢はそんな事を言い、美鈴の持ってきた茶葉からどれにしようか迷い始めた。
「あ、良い香り……ねぇ、美鈴……だっけ?」
「そうですよ。何でしょう?」
霊夢はものすごく嫌そうな表情を見せた。
「ここに来たのも理由があんのよ」
「緑茶以外に、ですか」
「そ。緑茶はおまけ」
そう言うと、店の入り口の方を親指で指した。
「んー?……」
小悪魔も、フランド-ルもその指の差す方へ視線をやり、
「あっ!!」
叫んだ。
「お嬢様!それに咲夜さんにパチュリー様まで!?」
とても申し訳なさそうにしている三人が、そこにいた。
30分前の事である。
「霊夢―!」
「何よレミリア……それに今日は人数が多いのね。普段は咲夜だけなのに引き籠りまで外に?」
「大事件なのよぉ!」
「知ってるわよ……門番でしょ?それがどうかした?」
「私達、何が悪かったのか色々話したんだけどこれだっていう結論が出ないのよ……このままじゃまた同じ過ちを繰り返してしまうから……連れ戻す前に、自分達の非を確かめたいの」
「ふぅん」
霊夢は、このプライドの高い吸血鬼がこうまで思うことを珍しく思い、また、暇だったのも手伝って話を聞く事に決めた。
「ったく、普段何してるのよ?」
「服脱がせたり、着せ替えしたり、体舐めたりして大事にしてるから、それでカバーできてたと思ってたの」
「は?」
「でもね、やっぱり詰所が狭いのが悪かったのかなぁ……小悪魔に至ってはあんな埃っぽい所で生活だしね。フランももっと遊び道具あげなきゃいけないのかなぁって」
「待て。あんた達昼間っから何してる……ナニしてるわけ?」
「そうだけど。……それ?」
「常識的に考えて、それ」
霊夢は、話なんて聞かなきゃ良かったと思った。
そして、今更ながらに自分達がやってきたことを恥ずかしく思ったのか、霊夢に話し合うきっかけを作って欲しいなどと頼み出す始末である。
今度咲夜が和食でフルコースを御馳走するという報酬をつけて、やっと承諾してもらったのだ。
「―――って訳だからさ。あいつらも反省してるみたいだし、話し合うくらいはしてやってよ」
「……気付いてなかったんですか、恥ずかしいって」
「なかったみたいね、馬鹿だから」
「ごめんなさい……」
項垂れる三人。
「ほら、お嬢様が泣いてちゃ示しがつきませんよ?」
「お姉様、泣き虫れみりゃとか呼ばれちゃうよ?」
「……最悪だ」
「私達も何も言わずに飛び出したのはずるかったですし。話し合えば意外と解決したかもしれなかったですもんね。こちらこそすみませんでした」
「それじゃあ……」
「はい、私達三人、これからも一緒に働かせて頂きます!」
人気になりすぎた為、美鈴堂は潰す訳にはいかず、どうしようかと思案に暮れられていたが、レミリアが紅魔館の敷地へと店自体を移動させ、そこで今まで通り営業は続けられるようになったという。
***
「いやぁ、しっかし、お嬢様方にも分かっていただけて本当に良かった」
その夜、風呂から上がった美鈴は自室でのんびりしていた。
今日は本当に良い日だった。
あの後すぐに店をいったん閉店させ館に戻ったのだが、誰も胸を弄ったり体にあんなことやこんなことをしたりしなかった。
これからもこうやって暮せる、そう思うと自然と笑みが零れた。
コンコン、とノックの音。
「どうぞー。あ、咲夜さん」
「美鈴、本当に今まではごめんなさい……私達、本当に恥ずかしい事をしていたわ」
「良いんですよ、分かって頂けて何よりです」
咲夜は良かった、と呟いて、立ち上がった。
「咲夜さん?」
「美鈴」
どん、
と、美鈴の体は押し倒されベッドの上へ。
「さささ咲夜さん!?」
「ああ、やっと手を出せるわ!」
「ちょっと!?ちょっと!?待って下さい!え?どうして?」
「ふふふ、良いのよ、照れなくて。こういう事、だったんでしょう?」
服の内側に滑り込ませた手が、いやらしい動きを展開する。
「ちょっ……約束と違う……ひゃんっ」
「美鈴こそ、何を言ってるの?」
当然の事を言うように、咲夜は美鈴に止めを刺した。
「こういう事は、『昼間っから』する事じゃないものね。ムードを気にする貴女達に気を使えなかった私達を、許して……」
叫び声は、紅魔館の三か所から響いた。
作品は面白かったです
して作品。ちょっとわかりにくいところもあったのですが楽しめました。ごちそうさまです。
もういっその事、屋敷全体ピンクに塗り替えてしまえばいいよwww
似たような状況になってそうな人、幻想郷に多いなあ……
と思ったら2/3は人外か
もうやだこの紅魔館www
>何で今までやらなかったんだろう。
本当になwwwww
想像してたのと、まったく違ったぜ☆
かわえぇwwww
そう思っている自分が居た
それではコメント返事させて頂きますね!
1>
誤字指摘ありがとうございます。何で間違えたんだろう……。
楽しんで頂けて幸いでした。
2>
うわぁ同じ世界の住人様が!実は明日……時間的に今日が予備校の開始日だったりする私ですが、のんびり書いていきたいと思っています。
お互いに頑張りましょうね!(とイベント参加の準備をしながら
4>
桃魔館ですね分かります←
そんな紅魔館も大好きです。みんな幸せに死(と隣)合わせ。大変大変。
10>
悪意無き加害者ほどたちの悪い加害者はいない、そういう事ですね。
大好きすぎちゃうだけなのよ、そうなのよ。幻想郷はいるならこういうやつらばっかり。きっと。
13>
人外でも人でも同じです。見た目同じで言葉が通じれば。
実際にいるととことん面倒くさい。本当に。
14>
咲夜『いらっしゃい。貴方が美鈴を奪う可能性が無いと判断されるまで雇えないけどね』
私は無理そうです。後は……まかせた……。
19>
耐性の付いていたあなたは立派なこっち側の人です。いらっしゃい。
紅魔館はいつも通りでした。あーあ。
20>
美鈴です、美鈴堂ですよ。
イメージは香霖堂でした。香霖ライバル店出現に涙目。
21>
貴方は生粋の壊れ紅魔館好きですね!
私もです!
22>
フランちゃんが可愛いのは最早常識。常識にとらわれなくなっても常識として存在するっ!
23>
大真面目でございます。みんな。真顔。
31>
えっ
みんな!神様がここにいるよ!
34>
ベクトルの違いというと、こういう事か。
美鈴たち→まっすぐ
咲夜たち→あっち
40>
良い紅魔館、ええ、良い紅魔館ですとも。
ははは、素敵な光景だな~(遠い目
皆様ありがとうございます。
これからも地道地道に書いていきますのでどうかよろしくお願い致します。
よし、紅魔館に就職願い再提出してくる。
最近さくめーがめっきり減っちゃいましたからねぇ。貴重な補給、ありがとうございますv
ずわいがに さん>
そういえば最近書いてなかったですねー。
少し前まで変態紅魔館の素敵な作品を書かれてた方もなかなか見なくなってしまって悲しいです。
さくめー補充出来てよかったですー! ありがとうございます!
これからも地道に……がまた随分と日を開けていますが。うーん書きたい。
54>
お褒めに預かり光栄でございます!w
もっと酷い作品も書いていきたいですねww
あるがとうございます!
従者組の皆様に幸多からん事を……。