深夜の永遠亭。
ガサゴソと物をあさる影が一つ。
その影がある壷を見つけた。
『触るな! 開けるな! キケン』と書いた紙がはってある。
「フフッ。するなと言われるとしたくなるのが性ってもんよ」
その者が蓋を開けようとした時、
「誰!?」
「ちっ」
見回りをしていた兎が侵入者を見つけた。
見つけられた侵入者は物凄い速さで去っていった。
「どうしたの?」
「あっ、師匠。すみません。誰かが侵入していたようですが逃げられてしまいました」
「そう……」
「どうしましょう」
「ふ~む」
そして夜は更けていった……
博麗霊夢の一日は一杯のお茶から始まる。
今日も霊夢は朝起きてからお茶を飲む準備をしていた。別に朝食がお茶というわけではない。朝食は朝食でちゃんととる。
しかし、お茶を縁側で一杯飲まないと朝食を準備する気力も出ないらしい。
「はー。今日も一日なにごともないといいわね。動くの面倒くさいし」
しかし、彼女はすでに何かが彼女の身に起きていることを知らない。
彼女がお茶を飲むために湯呑みに口をつけた時、それは起きた。
「!?? あっちっ!?」
お茶を口に含んだ時に感じた尋常じゃない熱さに霊夢は思わず吐き出してしまった。
霊夢はこんなに熱くした覚えはないのにと不思議に思い、手で急須を触って確かめる。霊夢ほどお茶を飲んでいると急須に触るだけでその温度がわかるらしい。
何度も持ち方を変えたりしたが、お茶の温度はいつもと同じで霊夢が一番最適だと思う温度である。
感覚が狂ったのか、それともさっきのは勘違いなのか確かめるためにもう一口飲んでみた。
「ぶっ!?」
やっぱり熱い。
自分の舌がおかしくなってしまったのかと霊夢が思い始めた時、空から高速でこっちに近づいてくる影が見えた。
どうせ魔理沙あたりだろう。今日は妙に早くに来るものだ。朝食くらいは出してやろうかな。
霊夢が朝食の準備をしようと中に入ろうと近づいてくる物体に背を向けた。
「ああああああ。霊夢ー! 止めてくれー!」
「は!?」
魔理沙が突っ込んできた。それも派手に、トップスピードで。
「ちょっと、なにする…の……よ?」
「いやー、何故か箒のコントロールがきかな…く……て?」
そこにいたのは魔理沙ではある。魔理沙であるのだが……何かが違う。
「あんた魔理沙よね?」
「失礼な! 私は魔理沙だぜ。それよりお前は霊夢だよな?」
「あたりまえでしょ。見てわからない?」
そう。霊夢もいつもと何かが違うのだ。
「「何? その耳と尻尾は?」」
二人の声が重なった。
二人は顔を見合わせてしばらくそのままだったが、同時にお互いが手鏡で自分の姿を見た。
「な、何よこれー!?」
「何でこんなものが付いてるんだ?」
二人がそれぞれ見たものはいつもとは違う自分の顔であった。
即ち、霊夢には猫の耳と尻尾、魔理沙には鼠の耳と尻尾が付いていた。
どうやら霊夢がお茶を熱いと感じたのも、魔理沙の箒のコントロールがうまくいかなかったのもこれが原因らしい。
「こ、これは……こんなことができるのは」
「ああ。結構数はしぼれるな」
「そうね。でも真っ先に疑うべきは……」
二人は顔を見合わせると、
「「スキマアアアアアアア!!」」
叫んで飛び立って行った。
八雲藍の一日は一つの油揚げから始まる。
この一つの油揚げは藍に一日の活力を与えてくれる。油揚げとは彼女にとって何事にも変えがたい存在である。(ただし橙は例外とする)
藍が油揚げを口の中に入れようとした時、とてつもない衝撃が起こった。
何事だと藍がその場所に駆けつけてみるとそこには霊夢と魔理沙がいた。
「いててて……。この姿だと飛ぶのは難しいな」
「……ウチに突っ込んだ時に気付くべきじゃないかしら」
「うるさいな。飛べると思ったんだよ」
「何だか嫌な予感はしてたのよね」
「じゃあ注意くらいしてくれよ」
「そんなの自分で気付くべきことでしょ?」
「……おい。お前達、何しに来た」
霊夢と魔理沙が言い争いを始めたのを見て藍が少々眉をしかめながら至極当然なことをきいた。
「へっ? そうよ。これを見なさいよ」
そう言って霊夢は自分達に生えた耳と尻尾を見せる。
「ん? ……お前は霊夢じゃなくて橙なのか? 変身することが出来るようになったのか? えらいぞ橙! さすが橙だ! 今日はお祝いの料理を作ってやるからな。楽しみにしてろよ」
「「んなわけあるかー!!」」
何か凄い勘違いをし始めた藍に霊夢と魔理沙は改めて藍の思考回路の優先順位の一番上に君臨しているのは橙ということを実感した。
「むっ。そうかじゃあやっぱり霊夢なのか」
「残念そうな顔をするな」
「で? 何しに来たのだ。そんな格好して……。なんだ? 橙と友達になりたいのか? 橙と仲良くしたいのか? 悪いがお前のような奴と橙を友達にすることはできん! 私が認めた者しか橙の友になることは許さん!」
「好きでこんな格好してるわけじゃないわよ」
それは過保護すぎじゃないか?
「朝起きたらこんな姿になっていたんだぜ」
「そうなのか? だからってなんで……。あー、言っておくが紫様はやってないと思うぞ? 冬眠から覚めた後に寝たりないとか言って再び寝始めてから起きてないからな」
「いいから紫はどこにいるのよ」
それでも霊夢は納得できていないらしい。
「紫様なら寝室で寝てると言ってるだろうが」
「じゃあその寝室に案内しなさいよ」
「わかった、わかった。そのかわり紫様が犯人じゃないとわかったらとっとと出て行ってくれよ。こっちは朝食の途中だったんだ」
「はいはい……と言いたいところだが朝食まだ食べてないんだ。食べていっていいか?」
「あっ、魔理沙だけずるいわ。私も食べる」
「……あのなぁ」
仕方なく藍は二人を紫が寝ている部屋まで案内する。
それにしてもよく寝るものだ。冬眠から覚めてまたすぐ寝るとは、彼女は実は『睡眠の妖怪』だったりはしないだろうか。
藍につれられて霊夢と魔理沙の二人はある部屋の前まで来た。
「ここだぞ」
「「スキマめっ! ここにいたかっ!」」
二人は障子を蹴り破って部屋に侵入した。
その部屋はやけに広い部屋で中央に布団が敷いてあり、寝ている人影が見えた。
「起きなさいっ!」
「そして元に戻せっ!」
布団を剥ぎ取り、寝ている人物に掴みかかったが
「何これ」
「あー、これはあれだな。私達に喧嘩を売っているとみていいな」
布団の中には目当ての人物である八雲紫ではなく、布団をぐるぐる巻きにして縄で締めたものだった。手紙つきで。
その手紙には『残念、はずれよん☆』と書いてあった。
「プッ。アハハハハハハハハ」
霊夢が紙をビリビリに破いていると大笑いしながら紫が出てきた。それを霊夢と魔理沙の二人が睨みつけながら見ている。
「紫様。寝ていたのではないんですか?」
「あのねぇ。あんなに騒がれちゃ起きるに決まっているでしょう」
「いや、冬眠中はいくら騒いでも起きませんでしたが……」
「それはそれ、これはこれよ」
「ちょっと、そんなことより早くこれを戻しなさいよっ!」
そのまま朝食に移ろうかという雰囲気でやりとりしている藍と紫に霊夢が堪らず待ったをかけた。
紫は霊夢の方を見やると、違和感に気付いたのか不思議そうにジッと見つめた。
「霊夢……、確かに似合っているけどそういう趣味があったのね。ま、まあ、人にはそれぞれの楽しみがあるって言うから何も言わないけど……」
「ちがーうっ! 好きでこんな格好してるわけじゃないの」
「じゃあ何? 橙と友達になりたいの? 別に猫のコスプレなんてしなくてもいいと思うけど……」
「ちがーうっ!」
「あら? よく見ると魔理沙もコスプレしてるのね。ト○&ジェ○ーごっこでもするの?」
「違うぜ。というか今まで私の存在に気付いていなかったのか……」
部屋の隅っこでしゃがんで何やら文字を書き始めた魔理沙はほおって置いて、霊夢が紫に詰め寄る。
「これあんたがやったんでしょ? さっさと戻しなさい。このままだとお茶が熱くて飲めないのよっ!」
「冷やして飲めば?」
「ダメよっ! あの温度で飲まないと飲んだ気がしないのよ!」
「ふぅん。でも、さっきから勘違いしているようだけど私は何にもやってないわよ。今まで寝てたし」
「嘘付けっ! こんなことするのはあんたぐらいしかいないのよっ! どうせ、面白そうだからーとか、暇だったからーとか、そういう理由でやったんでしょ」
「ああっ、悲しゅうございますわ。私はそんな疑い深く育てた覚えはないのに……」
「あんたに育てられた覚えはないっ!」
「いいじゃないそのままで。かわいいわよ」
「いいわけあるかーっ! 戻せ。三秒以内に戻さないと撃つっ! いーち」
「ああ、もう面倒ね。私今から朝食なの、後で相手してあげるからどっか行ってなさい」
「にーいっ!?」
霊夢が二まで数えたところで霊夢と魔理沙の足元の空間に穴ができた。
「このぉぉぉぉぉ」
「ぁぁぁぁぁ」
「お風呂に一人で入れなかったら私が入れてあげるからね~」
「誰があんたなんかに頼むかっ!」
霊夢の言葉が最後まで聞こえるか否かというところで穴は塞がった。
「さっ、藍。ご飯よ」
「本当にやってないんですか?」
「知らないわよ。私が今まで寝ていたのはあなたも知っているでしょう?」
「まあそうですが……。それより二人を何処へやったのですか?」
「うーん。どこだっけ?」
「……まっ、あの二人なら何処に行こうと心配はないですけどね」
二人は何事もなかったかのように朝食に向かった。
「いたたた……」
「ここ何処だ」
霊夢と魔理沙が落ちた場所あとある一室だった。
「え~と……」
「なんか来たことあるような気がするな」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
二人が部屋を見渡していると西行寺幽々子が泣きながら入ってきた。
「ああ。ここは白玉楼か」
「そうね。そうだったわね」
「お~い。私泣いてるんですけど」
「「そーですね」」
「いや、そーですねじゃなくて……」
「どうせ妖夢がご飯を作ってくれないとかそんなんでしょ?」
「聞くまでもないぜ」
「うっ。ま、まあそうなんだけど。でもちょっと違うのよ。何だかみょんなことになってるのよ」
「「みょんなこと?」」
「そうそう。妖夢の頭に耳があって尻尾があるのよ……ってあなた達にもあるのね」
「えっ!? 妖夢にも生えたの?」
「そうなのよ。最初はかわいかったんだけどそのうちに何故か刀を捨ててね、鎌を振り回し始めたのよ」
「「鎌?」」
「そうなのよ。それで私にも斬りかかってきたのよ」
「それで泣いてたの?」
「え? 泣いてたのはお腹がすいてたから……」
「「……」」
「なによぉ」
「まあ、いいや。とりあえず妖夢はどこだ?」
「さあ」
「さあって……。わからないの?」
「ええ。なんだかいつもの妖夢じゃなかったわ。あれはまるで鎌鼬よ」
「「鎌鼬だって?」」
「そ、そうよ。どうしたの? 二人して真っ青になって」
霊夢と魔理沙の二人の頭の中にはある考えがよぎっていた。
妖夢は『まるで鎌鼬』になったのではなく、本当に『鎌鼬』になってしまったのではないか。自分達もこのままいけば妖怪になってしまうのではないか。しかも妖夢は幽々子に斬りかかったというのだから、理性も無くなってしまうかもしれない。
そんな考えがぐるぐる回りながら繰り返し浮かんできていた。
やがて霊夢と魔理沙は顔を合わせると、頷き合った。
「急ぐわよ。魔理沙」
「おお!」
「ちょ、ちょっと~。私のご飯は~?」
「「知るかっ!」」
食い下がる幽々子を振り払いながら外に出た。
その時、旋風が起きた。そしてその一瞬後、魔理沙は足に違和感を感じた。
「ん? なんだ」
足を見てみると足首がパックリ斬られている。
だが、血は出ていなかった。痛みもない。
そして目の前には鎌を持って、耳と尻尾を生やした妖夢がいた。
魔理沙は冷や汗を流した。
「おいおい。これじゃあ本当に鎌鼬じゃないか」
「魔理沙! 早く行くわよ!」
「え? 妖夢はどうするんだよ」
「そんなの幽々子に任せておけばいいのよ。早くしないと妖怪になる前に出血多量で死ぬわよ」
「血なんて出てないぜ?」
「今はね。……幽々子、自分の部下の面倒くらいみれるでしょ?」
霊夢が幽々子を見ると、彼女は笑い、
「ええ。あなた達はとっとと元に戻る方法でも探してきなさい」
「言われなくてもそうするわよっ!」
「終わったら朝食作ってね~」
「それは妖夢にしてもらえや」
霊夢と魔理沙が去ろうとすると、妖夢が風と共に追いかけようとする。その前に幽々子が刀を持って立った。
「そういえば、普段は剣術指導を私にしようとしていたわね~」
妖夢は幽々子を睨みつけている。
「ふふ。今日は剣術の稽古でもしようかしらね。……ねぇ、妖夢?」
「とりあえず。足を出しなさい」
霊夢と魔理沙は紅魔館まで来ていた。
永遠亭に向かおうと思ったが紅魔館の方が近かったし、もしかしたらと思い寄ってみたのだ。
「鎌鼬ってのは時間が経つと血が一気に出てくるものなのよ」
「へぇ~。そーなのかー」
治療を進めているとレミリア・スカーレットと十六夜咲夜がやって来た。
「あらあら。霊夢に魔理沙いらっしゃい」
「おじゃましてるわ」
「おう」
もしかしてっと思いここに来たのだが、やはり咲夜にも耳と尻尾が生えていた。
見た感じでは犬の物っぽい。
「それにしてもどういうことかしらね」
「どうやら、人間又は人間の血を引いてる者がこうなってるらしいわね」
「ん? それなら……こーりんもか? どんなになってるんだ、あいつは」
「見に行きたければ見に行けば?」
「いや、やめておくぜ」
「わん」
「「……」」
「わんわん」
「おい。咲夜は何言ってるんだ?」
「それが……『わん』しかしゃべれなくなったみたいなのよ」
「「まじ?」」
「まじよ」
「わん」
時が止まった。
霊夢と魔理沙の頭の中にはニャーニャー、チューチュー言ってる自分たちが走り回っていた。
「でもねぇ、それがまたかわいくも思えていっそこのままでもいいかなとも思ってたりして……って聞いてる?」
「「……」」
「わんわん」
「ああ、そうね。霊夢も魔理沙もこのまま猫と鼠になっちゃえば? 私が責任をもって飼ってあげるわよ? ふふ……いいわね、それ」
霊夢と魔理沙はまだ帰ってこない。咲夜は尻尾を振っている。レミリアは妄想を始めた。
丁度その場に来た美鈴は見て見ぬふりをしている。
「はっ。こんなことしている場合じゃないわ」
「そ、そうだぜ。早くしないと取り返しが付かなくなる」
霊夢と魔理沙は外に向かって走りだした。なんだかいつもより速く走れる気がする。
「あっ、ちょっとまちなさーい……行っちゃったわね。ん? あら美鈴いたのね」
「はい。人里の様子を見てきましたよ」
「どうだったの?」
「出会う人全員に耳と尻尾が生えていました」
「そう……」
「あっ、でも中には角が生えていたり、羽が生えている者もいましたよ」
「ようするに普通の人間がいなくなったことには違いないんでしょ?」
「まあ、そうですね」
「まっ、その内に霊夢達が解決するでしょ。それが無理だったらあのスキマがなんとかするだろうし」
「はあ」
「私はこの状況を楽しむことにするわ。咲夜、お手」
「わん」
「取り合えず永遠亭よ。あいつ等が変な薬とかばら撒いたのよ」
「おいおい。お前真っ先に紫を疑っていたのはどこへいったんだ?」
「ん~、なんだかこの体になってからいつも来るはずのピーンって感じが来ないのよね」
「マジか?」
「あら? お二人ともどうしたんですか?」
「「ん?」」
二人が善後策について話していると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声のする方を見てみると、湖から上半身だけを出している東風谷早苗がいた。
「なんだ早苗じゃないか。何してるんだそんな所で」
「霊夢さんも魔理沙さんも何ですか? コスプレですか?」
「違うわよ。朝起きたらこうなってたのよ。正真正銘、本物の耳と尻尾よ。……ところで早苗は何でそんな所にいるの?」
「……それは大変ですねー。魔理沙さんもそうなんですか?」
「ああ、そうだぜ。困ってるんだ。……ところで早苗はなんでそんな所にいるんだ?」
「…………それは大変ですねー。それで今は元に戻る方法を調べているところですか?」
「そうよ。……ところで早苗はそんな所で何してるの?」
「…………………そうですか。がんばってください。では私はこれで失礼しまぶがああ!?」
「「まてーい!」」
後ろを向いて去ろうとした早苗を霊夢と魔理沙が湖から引っ張り上げる。
しかし湖から引っ張り上げられた早苗の体を見て霊夢と魔理沙も驚いた。
「お、おいおい」
「こ、これは……」
「ぎゃあああああああああ。苦しいいいいいい。息が出来ないいいい……あれ? 息できる。呼吸できてる……やったー。やりましたよ、お二人とも。早苗は、早苗は地上に帰って来れました!」
「そ、そう。よかったわね」
泣いて喜びはじめる早苗をよそに霊夢と魔理沙は未だに呆然としていた。
「ね、ねえ。魔理沙」
「何だ?」
「あれは、あれかしら。人魚なのかしら?」
「そうだろうぜ」
「なんで私が猫で、早苗が人魚なの!?」
「いや、それは……」
魔理沙が霊夢と早苗の胸を見比べる。
「人魚はその……大きい方がいいと思うぞ?」
「むがーーーーー! どうせ私の胸なんて……」
霊夢は地面に文字を書き始めてしまった。
魔理沙は仕方なく霊夢が回復するまで早苗にこれまでの経緯を聞くことにした。
「早苗も朝起きたらそうなっていたのか?」
「え? はい。起きたらこうなっていて、夢かと思ってまた寝ようとしたんですよ。そしたら息が出来なくなって、無我夢中で水を探したんです。あとは……」
「ああー、もういい。大体わかった」
「……そっちから聞いておいてそれはないんじゃないですか」
「長くなりそうだしな」
「まあいいでしょう。これから、この異変の解決に向かうんですよね? 地上での呼吸も出来るようになったし、私も行きますよ」
「んー。でもお前長い間水から出れないんじゃないのか?」
「え? 大丈夫ですよ」
そう言うと早苗は水に手を入れて、大きな水の玉を作った。玉は早苗の周りを飛んでいる。
「これがあれば大丈夫です」
「……お前そんなことできるのか?」
「ええ! 奇跡の力と人魚の力でバッチリです!」
「え? 人間だった時の力も使えるのか?」
「はい。風だって起こせますよ」
「……じゃあなんで私は箒に乗れないんだ?」
「もしかすると最初は人間の時の力が使えないけど妖怪化が進むにつれて元の力も戻ってくるとか? 私も最初は風を起こせませんでしたし」
「おお、そうか。じゃあ試してみるか」
魔理沙は箒に乗ってみる。
「おお! 乗れる。乗れるぞ! やったぞ霊夢!」
「そうよかったわね……」
「あっ。霊夢さん復活したんですね」
早苗が霊夢に近づこうとすると、
「あああああああ!? 早苗。それを纏ながら近づくなあああ」
「へ? ああ、そっか。霊夢さんは猫だから水が駄目なんですね。なんだかもうすでに猫化が進んでますね」
「う~。確かに妙に魔理沙に噛り付きたい欲求に駆られる時があるわ」
「……霊夢。私の半径5M以内に入るな」
「私は妙に誰かを湖に引きずり込みたい気分になったりしますね」
「「……さっさと湖から離れるわよ(ぞ)」」
引きずり込まれては堪らない。霊夢と魔理沙は足早に去る
「あっ、待ってくださ~い」
早苗もそのあとについて行く。水の玉を伴って。
「結局水の中じゃないとだめなんじゃないか」
「いいじゃないだすか。そのために玉を用意していたんですから」
「いや、まあそうなんだが」
あの後しばらくすると早苗は苦しみだし、すばやく水の玉の中に入ったのだ。
今は顔だけだして浮いている。
「なんかこうして見てみると不気味だな」
「なにがですか?」
「お前がだよ!」
確かに異様としか言いようがない光景である。
「ところで早苗には耳は生えてこなかったんだな」
「生えてますよ」
そう言って早苗が耳を見せると、人間の耳があった場所にはヒレが付いていた。
「……これ耳っていうのか?」
「耳ビレです」
「何それ? 聞いたことないぞ。耳ビレって何だよ?」
「耳ビレは耳ビレです。ところでさっきから霊夢さんは静かですね」
「そうだな。どうしたんだ?」
「霊夢さん? 聞いてますか?」
「にゃー……。にゃ!?」
「「!?」」
「へ? 今、私何て言った?」
「……」
「これは急いだ方がよさそうだぜ」
「そ、そうね」
三人は迷いの竹林の中を急いで進んでいき、やがて目当ての建物が見えてきた。
「おーい。誰かーいるかー?」
「いないならいないって言いなさい! 返事しないと撃つわよー」
しばらくすると、建物の中から今回の異変の黒幕と三人が思っている人物、八意永琳が出てきた。
「そろそろ来る頃だと思っていたわ」
「ほー、ってことは今回の件の黒幕はお前か?」
「違うわよ」
「じゃあ誰よ。あんたが違うって言うなら、つれてきなさいよ」
「つれてくるもなにもねえ」
ここで永琳は魔理沙を見た。
「な、何だよ」
「犯人は何処かの泥棒猫だしねえ。まあ、今は猫じゃなくて鼠みたいだけど?」
永琳の言葉を聞いて霊夢と早苗が同時に魔理沙をジト目で見る。
「な、何を根拠に言ってるんだ? 証拠は? 証拠はあるのか?」
「昨日ね。とある薬の入った壷が盗まれたわ」
「……」
「その薬はね、人間を妖怪化させる効果があるから触れてはいけないと注意書きがあったはずなんだけどね。でも盗まれたのよ」
「……」
「その泥棒を見たという私の弟子がね、特徴を覚えていたわけ。その特徴が魔理沙そっくりなんだけど。そこんところどうかしら?」
「あー……」
魔理沙は助けを求めるかのように霊夢を見たが、霊夢は物凄い目付きで睨んでくる。魔理沙が見た中で一番怖い目だった。
そして次に早苗を見たが、早苗はただただ笑っているだけだった。
魔理沙の心の耳には『正直に白状しやがれコンチクショー』という声が聞こえてきていた。
「はは……」
「まーりーさー。どういうこと?」
「いや……。だって、開けるなって言われると開けたくなるじゃないか」
「まーりーささーん。何処で開けたんですかー?」
「……帰り道の空で開けたなあ。そういえば粉みたいなのがボワーって出てきたような」
「何でそれを先に言わないのよっ!」
「そうですよっ! 馬鹿ですか? 生粋の馬鹿ですか?」
「まあいいじゃないか。こうして元に戻せる場所に来れたんだしな」
そう言って魔理沙は永琳を見た。
だが永琳は首を横に降った。
「治せないわよ」
「「「へ?」」」
永琳の言葉に呆然とする三人。
やがて霊夢と早苗が魔理沙の方を向いた。
「どうしてくれようか」
「そうですね。取り合えずお仕置きは必要なんじゃないでしょうか」
「お、落ち着け。二人とも。話せばわかる」
「ふふふふふ。喰らいなさいっ! 猫符『キャッツウォーク』」
「それ別の奴の技だろーが!」
「いきますよ~。水符『人魚のポロロッカ』」
「おいいいいいいっ! それも何処かで聞いたことあるぞ!?」
霊夢と早苗が繰り出した技に魔理沙は抗議の声を上げながら撃沈した。
「……まだ足りないわね」
「そうですね」
「人間としての自覚が残っている内に魔理沙にいろんな物を奢らせるわよ」
「いいですね~」
霊夢と早苗は魔理沙を引きずって、何を買わせるか楽しそうに話しながら人里に向かっていった。
「あらら~行っちゃたわ~」
「師匠」
「あら、どうしたの」
「治す方法ありますよね。というか解毒剤ありますよね」
「あるわよ」
「なんで嘘ついたんですか?」
「今日は四月一日。エイプリルフールよ」
「はあ?」
「まっ、後で小型ミサイルに積んで上空からばら撒かせるからいいのよ」
「そうですか」
「ひええええ~。私のお金がああああああああああ」
「まだまだよ」
「霊夢さん。そろそろ許してあげてもいいんじゃ……」
今日も幻想郷は平和です。
の間違いだろうか。
まあ犬咲夜さんはもらっていきまs。
三角帽子と杖を持たせたせてマントを羽織らせたら…
人魚じゃなくて祟り神が出来上がるって頭に浮かんだ
やべえ、これは神だ。まさしく神だ
神々しすぎる・・・
猫霊夢とかミッ○ー魔理沙とか犬咲夜とかどうでもいい
人魚早苗が最高すぎるぅうううううう!
ところでなんで妖夢が蟷螂なん?何で一匹だけ昆虫!?
というかつりがねむしに寄生される妖夢想像したのは俺だけか!?
いいね!
↑鎌鼬はカマキリじゃなくてイタチの妖怪ですよ~
×「何それ? 聞いたことぞ。耳ビレって何だよ?」
○「何それ? 聞いたことないぞ。耳ビレって何だよ?」
なかなか面白いですな。
さて、と飯も食ったし缶詰持って幻想郷に行くか。
ちょっとオチに安心しました。
なんて為になるタイトルw
俺には、選べない
いいですけど、ちゃんとお嬢様に許可をもらってくださいねwww
>7様
私もです
>脇役様
あああああああっ!? ホントだ! その発想はなかったです
>14様
その後、人魚早苗は幻想郷に海を作ったとさ(嘘)
>16様
一部の地域では鎌の付喪神とされているところもあるみたいですよ
>19様
藍様はこんなもんだと思います
>23様
ありがとうございます
>24様
さあ?
>25様
私はさらにその有頂天を突破したもうひとつ先に行きました
>26様
いいですけど、斬られないように注意してください
>27様
あっ、マタタビも持っていくといいですよ
>30様
安心していただいて何よりです
>34様
為になりましたか? そうですか。恐縮です
>35様
それはカマキリですよ。妖夢はカマイタチです
>38様
それでも選ばないといけないのです。……あれ? 選ばないといけないのか?
>41様
その通りです。美鈴が見た角の生えているのは、けーねです
湖に人魚早苗は新鮮ww
うーむ、人魚伝説は川にもあるし、一概に人魚=海の妖怪とは断言できないと思いますが、でも人魚=海というイメージはありますよね
>52様
他の方やお嬢様とよく話し合ってくださいね
>53様
え? そうなんですか? ネタかぶりですか?
……なんかすみません。
………それってどんな動画なんでしょうか