慧音先生「おい!貴様等の中に、先生の帽子に昆虫ゼリーを塗った者が居るな!」
寺子屋の子供一同「……」
慧音先生「証拠が有るわけじゃ無いが、貴様等糞餓鬼共の中に犯人が居るって先生は信じているからな」
寺子屋の子供(秀才の半兵衛君)「僕等には先生の帽子に昆虫ゼリーを塗る動機がありません」
慧音先生『餓鬼の癖に動機とか難しい言葉を使うな! ……まあいい。半兵衛、お前は犯人じゃ無いな帰って良いぞ!』
放課後の寺子屋、そこの支配者慧音先生は怒っていた。鏡を見たら頭に乗ったあのミニチュアハウスみたいな帽子にカブトムシが止まっていた。それも特大サイズ!
カブトムシとかそういう昆虫が怖い慧音先生は、恐怖のあまり絶句し手で振り払おうと触れたところ手にヌルっとした感触がした。
え?何コレ?何コレ?って手についたそれは独特の甘い香りを芳香発していたのだった。
こういうことをする奴は決まっている。そう、可愛い教え子の糞餓鬼共に犯人が居るに違いないのだ。
半兵衛君「一抜け! アバヨ!」
寺子屋の子供(見た目も中身も典型的腕白クソガキ翔太君)「ずりぃ!」
疑いが晴れた半兵衛君は足取りも軽く、寺子屋から解放されて自宅へ帰って行った。
慧音先生「先生はな、今正直に言ってくれたら報復は成績に傷をつけるだけで許してやるぞ!」
この寺子屋の成績には何個か評価がある。その時の先生の気分によってレートが変わるのだが、米ドル換算にして花丸>〇>Δ>Xという順番が一般的だ。
慧音先生「貴様等、黙って居たら、永遠にこの寺子屋から帰れないぞ! 二度とお天道様がおがめると思うなよ!」
寺子屋の子供(一番良い子の浪子ちゃん)「……先生! 私が! 私がやりました!」
「ほう、貴様か。お前のような良い子が犯人だというのか?」
「は、はい。私がやりました。だから、もうこんな事はやめ」
「嘘をつくな貴様は犯人じゃ無い!」
「え? 私がは」
「眼を見れば! 分かる! 仲間をかばっての告白だろう。その心意気や良し貴様も帰って良いぞ!」
浪子ちゃんは解放されて寺子屋から家に帰ることを許された。だが、大好きな仲間達を置いて帰ることに後ろ髪をひかれながらも去って行った。
浪子ちゃん「……私、皆の事忘れないからね! 家に帰ったら、手を洗ってうがいするよ!」
翔太君「良い子ぶりやがって」
慧音先生「……よし、密告も募集しよう。密告した者にはそれ相応の寺子屋内での権利も与えよう」
寺子屋の支配者である慧音先生が与える権利、それは主に給食と休み時間の皇帝の使い道である。まさに食と皇帝の使用件が与えられるのだ。
慧音先生「仲間を売るのも気の毒だと思うが、貴様等にとって魅力的な提案だとおもうのだが?」
寺子屋の子供(寺子屋どころか人里一番の野心家の創想君)「犯人を知っています!」
「ほう、その犯人は誰だ?」
「……美奈ちゃんです」
美奈ちゃん「え? 私? 創想君、私犯人じゃ無い。なんでそんな事言うの?」
クラスのマドンナ的な美奈ちゃんに創想君は告白して振られた過去が有った。それから、すごく根に持って居たのだった。
だから、慧音先生に権力を貰いつつ、美奈ちゃんに復讐するという一石二鳥の策を考えたのだった。
「創想、美奈は犯人じゃないと言って要るぞ。証拠はあるのか?」
「しょ、証拠?」
「……無いんだな? 謝れば許すが?」
「ごめんなさい」
「……先生な、貴様のような仲間を売ってでも出世しようとする野心嫌いじゃないぞ。良し帰って良いぞ」
創想君は慧音先生に頭を撫でられて、ハニカミながら帰って行った。しかし、果たして明日以降どの面上げて寺子屋に来るつもりだろう。
その後も、慧音先生による犯人の選別が進んでいき、とうとう残り二人となった。
慧音先生「さて、残り2人だな。翔太、美奈。貴様等のうちどちらかが犯人という事だ」
美奈ちゃん「先生が返したお友達に犯人が居たんじゃないの?」
慧音先生「……いいや、先生の勘が貴様等二人のうちどちらかが犯人と思ったんだ」
美奈ちゃん「なんて横暴な」
慧音先生はなんと言われようが、自身が真実、歴史と聞く耳を持たない。一歩も譲らなかった。
翔太君「僕が犯人です!」
慧音先生「翔太……貴様か!」
「そ、そうだよ。先生の退屈な授業でも帽子に虫が集まって来たら面白いかなと思って、ついやっちゃったんだ!」
「……頭突きだけで帰れると思うなよ。美奈は帰って良いぞ」
翔太君は犯人じゃなかった。でも大好きな美奈ちゃんを守るために嘘を言ったのだった。
翔太君は何時もふざけているばかりのだったのに、今はただ、眼をつむり報復を待つだけだった。だがその心は、誇らしく思うのだった。
美奈ちゃんは寺子屋から解放されて帰って居たのだった。その帰り道考え事をしていた。
……美人先生という立場だけで、自分よりも男子にちやほやされる慧音先生の事が、美奈ちゃんは許せなかった。だから、
先生を倒す策を半兵衛君から貰い、こういう展開になるだろうから浪子ちゃんに頼んで犯人役をしてもらう予定だった。
しかし、予想外に浪子ちゃんが解放されてしまった。そして、一部始終を見ていたのだろうか創想君が密告した時は焦った。
最後まで残されていよいよ駄目かと思った時に翔太君が身代わりになってくれたのである。
翔太君も私の事が好きなんだと思い美奈ちゃんは嬉しかった。明日、翔太君とあったら褒めてあげようと思った。
最高でした
暴君が過ぎる
面白い!