Coolier - 新生・東方創想話

さて、今年もこの季節がやってきました

2009/09/28 04:55:05
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冬も深まる季節。
クリスマスが過ぎて数日、幻想郷にもこの日がきた。
そう、俗に言う大晦日である。

正月と言えば神社。神社と言えば博麗神社。
そしてお賽銭。

「いや、その繋がりはおかしい」

「ちょ、人のナレーションに突っ込まないでよ」

「ナレーションってあなたね……」

毎年、大晦日には彼女を好く魑魅魍魎たちが大集結する。
そしてどんちゃん騒ぎ、というのが例年であるが……

「だいだいよ? 何であなた達しかいないのよ」

年に一度のお賽銭フィーバーがぁぁとか叫んでる娘はほっておいて、遅ればせながら自己紹介をしておこう。
僕は森近霖之助という者だ。職業は……道具屋なのかな、一応。あんまり売らないけど。

「ひぃふぅみ……ひぃふぅみ……あぁぁ! 何度数えても三人!」

僕の目の前で頭を抱えて叫んでいる女の子は博麗霊夢。この神社の巫女にあたる。

「けど確かに、これだけ集まらないのも珍しいわね」

「私が知る限りでも、初めてですわ」

僕の横でくつろいでいるのが紅魔館の主人、レミリア・スカーレット。
そのさらに横で待機しているのが同メイド長の十六夜咲夜。
というか、くつろぎ過ぎだろう。
白いテーブル、ティーセットにパラソルまで完備とは、どこから出したんだろう。

……おや、うんうん唸っていた霊夢が何やらこっちを向きだしたな。

「とにかく、あなた達には他の分までお賽銭を入れてもらわないとね。期待してるわよ」

「巫女が面と向かってお賽銭を要求する神社ってのも、世界を探してここくらいだろうね」

「咲夜、今まで入れたこと無かったんだけど、お賽銭っていくら入れればいいの?」

「私も詳しいわけではありませんが……相場は5円だと聞いたことがあります」

「NOOOOOO! 断じてNOよ! 否!
いい? そもそも5円はご縁があるようにって意味で5円を入れるのよ。
そして10円はご縁が遠のくってことでタブーとされているわ。
ここで注目するのは5っていう数字ね。
5円でご縁があるなら、5万円ならその10000倍ご縁があるのよ!
入れなさい! 5万円入れなさい! そしたらあなた達の人生はバラ色よ!
私はこれで彼女ができました! 仕事もうまくいって宝くじもあたってウハウハです!」

「後半が色々とおかしくなってるよ……」

そもそも、吸血鬼が神様にお願いってのはどうなんだろうか。
よく知らないがキリスト教じゃなければいいんだろうか。

「っと、ともかく! こうなったらこのメンバーで年を越すわよ! はい、大掃除大掃除!」

「咲夜、お願いね」

「はい」

「NOOOOOO! 断じてNOOOO!」

最近、彼女のキャラがおかしい。
金欠のあまり変なものでも食べたのだろうか。
彼女はレミリアをビシっと指し、大声で主張した。

「いい? 大掃除はみんなでやるのよ。 あなただけやらないなんて言ってもそうは問屋が卸さないわ」

「あら、咲夜が私の分まで働くから作業量的には問題ないはずよ」

「そ・う・い・う 問題じゃあないのよ。 量じゃないわ、することに意味があるの」

まぁ、大掃除ってのはそういうもんだからね。
レミリアはふぅっとため息をつき、しぶしぶ提案を呑んだ。

「わかったわよ、それじゃあこの紅茶を飲み終わるまで待って頂戴」

そう言い、再びくつろぎモードに突入するレミリア閣下。
うーん、容姿はどう見てもただの小さな女の子なのに、様になるから不思議だ。
なんというか、オーラがあるというか…………

「今すぐ……っよ!」

そう言い、霊夢は彼女の紅茶を奪い取り、ぐいっと一気に飲み干した。

「ぼふぇぇぇぇ」

そして吐いた。

「それは私の血が入っているのよ」

そういう咲夜さんの声など届く余裕もなく、彼女はげんなりした様子で立て膝をつく。

「と、とにかくさっさと掃除するわよ……」

そう言い残し彼女は倉庫の方へと去っていった。
こうなったらうんと働かせて元を取るんだからだのブツブツ言ってるのが聞こえてしまった。
彼女は僕らを何かと勘違いしてるんじゃないだろうか。

「ふぅ……」

今日はいい天気、つまりいい掃除日和だ。
……たまにはこういう過ごし方もいいかもしれない。




─────────




え? え?
今、霊夢、何を、え?
あ、あれって間接キッ……
いやいやいや、冷静になるのよ私。
BE COOL。

「ふふ、掃除なんて私にはひげダンスより簡単だわ」

よし、完璧。カリスマカリスマ。

「「え?」」

「え?」




─────────




何やらおぜー様が妙なことを言っていた気がする。
たぶん気のせい。

「では、掃除を開始しましょう。 中を私とおぜー様がしますので、あなたは霊夢と外をお願いします」

「ん、りょーかい」

ここ、幻想郷には除夜の鐘はない。
年を越すのには何か区切りがあったほうがよい。
その区切りとして、大掃除があるのではないか。
もちろん年を越す前に綺麗にしておくという意味もあるだろう。
外の世界でそうだったように、その土地その土地で新年というものは特別なものなのだ。
それはこの幻想郷でも変わらない。

「ふふ」

「なぁに咲夜? いきなり」

「いえ」

外の世界、か。
恐らく生涯、この幻想郷から出ることはないだろう。
私は紅魔館で仕えると決めた時既に、ここに骨を埋める覚悟だった。
それなのにこんなにも自然に外の世界のことが出てくるとは。

「いいですか、掃除の基本は上からです。 上から下に順番に埃を落としていきます」

「この……はたき? だったわね、これを使うのね」

「そうです」

未練……は違う。未練はない。

「わぷ」

「あぁもう、顔が埃だらけですよ。 高い所は私がしますから」

思い出? いや、そんな感じではない。

「埃を落とし終わったら、次は掃き掃除です。 畳には茶葉を乾燥したものを使います」

「この箒を使うのね……」

箒は名前知っているんですね。

「魔理沙が乗っているもの」

なるほど。

「目に沿って……こう掃きます」

「こう…………ね」

あぁ、そうか。

「集めたわ」

「はい、それでは最後に拭き掃除です。 この雑巾で乾拭きをします」

「うぅ……これだけはしたくないわね、惨めだわ」

「ここまでやったら私も心を鬼にしますわ。 さぁ埃を取りましょう」

「埃より誇りが大事よ……」

私は十六夜咲夜。昔の咲夜ではない。

"外の世界〟

そこには過去の私がいて、そしてそれは私ではない。
自分であって、それは他人。
咲夜という人物がいて、私はその人をよく知っている。
だから、外の世界と繋がる。
ただ、それだけ。
そして……

「終わったー!」

「おぜう様……」

「え? ちょ、咲夜、わっ」

感じる、彼女を胸の中に。
抱擁はいい、その温かさを肌で感じることができる。

「すみません……もう少し、このまま」

きっとあなたは、驚いた顔をしていることでしょう。

「…………」

きっとあなたは、呆れた顔をしているでしょう。

「私、十六夜咲夜は」

いつまでも、この身尽き果てるまで。

「あなた様のものでございます」

「…………うん」

私は十六夜咲夜。
それは今年が終わっても、来年が始まっても。
幾度の新年を迎えようとも、変わらない。
レミリア・スカーレットに仕えるメイド。




─────────




「さて……」

霊夢と一緒にやれって言われたけど、その霊夢はどこに行ったのかな。
倉庫にはいなかったんだよなぁ。
もう一度倉庫に行ってみるか……

「んー?」

やっぱりいないな。

「それにしても、汚いなぁ」

珍しいこともある。
彼女はずぼらだが、掃除はきちんとする派だ。

「……ん…………さ」

ん?

「り…………ぁん」

何やら、倉庫の奥のほうから聞こえてくる。
僕は耳を澄ましてみた。

「霖之助さぁーん」

「げ」

彼女の声だ。
ちなみにこの"げ"は、彼女が嫌とかそういうのではない。
目の前の惨状の中に彼女がいるという事実に対する"げ"である。

「とにかく、助けないとな」

僕はひとまず目の前の物をどかしていくことにした。
というか、そうするしかない。
もし微妙な感覚で中に空洞が出来ている場合、誤って彼女を下敷きにしないように気をつけなければ。
慎重かつ大胆に、物を外に運び出していく。

「霖之助さぁーん」

「今いくよー!」

そう言い更に一歩踏み込む。
何やら変なものを踏んだ、カチっとか言った気がする。
金属類だろうか。

「違うのー。 途中に変なものあるかもしれないから気をつけてねー」

「へ?」

これはお約束という奴だろうか。
既に僕は足を離していた。
これは地雷というものらしい、用途は殺人。




─────────




「これは……どうしたのかしら」

「わかりかねます」

倉庫、というか、倉庫跡?
そんな感じね。

「あぁ、そこにいたのね」

真っ黒になっていたけど、すすでも掃っていたのかしら。

「霊夢、中の掃除は終わったわ」

「そ、う……」

「ピクピクしてるわね」

「していますね、あちらにも」

「…………」

全く、私に掃除をさせておいて寝るなんていい度胸ね。

「外の掃除は終わったのかしら?」

「ま、まだ……」

「……咲夜」

「仕方ありませんね」




─────────




けが人二名を床に伏せさせ、私は一人で外の掃除を終わらせた。
いつもの仕事に比べれば、赤子の手をひねるより簡単だった。
……例えがおかしい気がするけど、まぁいい。

そして今、これが茹で上がった。

「おぜー様、年越しそばです」

「そういえば、食べるのは初めてね」

いつもいつも、博麗神社の大晦日はどんちゃん騒ぎだったからだろう。

「美味しそー」

「この色は……関西風だね」

そして今日何もしていない二名がちゃっかりと座っている。

「あなた達、怪我はいいの?」

「いやぁ、寝たら直っちゃった」

「僕は半分人間じゃないからね」

皮肉が通じないのも考え物だ。

「後者はまだいいとして、霊夢、あなた変」

「なによぅ、咲夜に言われたくないわ」

「あら、あなたお腹が空いてないのね」

「わー! 食べる! 食べるから!」

「そろそろいただきましょう」

さすがおぜー様、普通にしてても場を取り仕切っているなんて。

「ん……」

あまり作ったことはなかったけど、まぁまぁ成功か。

「美味しい!」

「うん、昔を思い出す味だね」

「これが……おそば」

三人にも好評のようだった。

「っ!?」

目を滑らし、確認する。
……どうやら気づいたのは私だけのようだ。

(境内に"何か"がいる……)

数は……かなりいる。
殺気は感じないが、臨戦態勢はとれるようしておく。

(くるなら、きなさい)




─────────




「あー、美味しい」

今日は散々だった。
去年大晦日に宴会した時、大掃除と称した何やらよくわからないものがあった。
今考えれば、妖怪たちに倉庫の整頓を任せたのは大きなミスだった。
でも酔っていたしなぁ。

「ん?」

咲夜が何やら険しい顔をしている。

「どうしたの?」

「くる!」

次の瞬間、境内側の襖が吹っ飛んだ。
ついでに畳んであったふとんも吹っ飛んだ。
って何言ってるんだ私。

「おいーーーーっす! 年越しにきたぜー」
「魔理沙ぁ、今日は二人で年を越そうって言ったじゃない」
「あら、魔理沙は私と年を越すのよ」
「ついさっき寺小屋の大掃除が終わってな、参拝にきたぞ」
「とか言っちゃってー、慧音ったらおそば目当てなんじゃないのー?」
「誰かさんみたいに食い意地は張ってないんじゃない?」
「でたー、また喧嘩ですよ」
「本当、飽きないわねぇ」
「はいはい、いい加減にしないとおそばにあの薬入れときますからね」
「大ちゃん! 早く早く!」
「チルノちゃんこのおもち重いよぅ、手伝ってー」
「ネタの匂いするところに参上! 射・命・まぶっ」
「何か今あたったかな? 霊夢ー! 酒持ってきたぜー。 つってもいつもの瓢箪のだけど」
「ちょ、紫様狭いですって! 三人一気は無理でしょ」
「あら? 私が太ったと?」
「ぶるぁぁぁぁぁぁ」


来るわ来るわ、魑魅魍魎。
あぁ、そんなとこに生もの置かないで。
ああそこ、お賽銭は現金しか受け付けないわ。
ってそのおそばは私のよ!

「あぁぁぁ もう!」

「最後は結局いつも通りね」

「レミリア……」

「ふふ……今年一年、お疲れいむ」

「え」

「あら、私には労いの言葉はなし?」

「……はいはい…………お疲れみりあ」




いつの間にか、年はあけていた。

今年も、良い年でありますように……
「変なの混じってるんだけど」

「ぶるぁぁぁぁぁぁ!」
ハリー
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コメント



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15.30名前が無い程度の能力削除
あー、最後がスベり過ぎですね。
16.70名前が無い程度の能力削除
で、特徴的な叫び声の正体は如何に。
17.40名前が無い程度の能力削除
途中までは悪くないと思います。

最後が無理に狙った感じがしますね、このままの空気で流しても私的にはよかったかと。
18.100名前が無い程度の能力削除
若本の兄貴がいると思ったがそんなことはなかったぜ!
21.100名前が無い程度の能力削除
地雷wwwなぜにwww
三月精では蕎麦くってましたが…その前ってことか…
26.100名前が無い程度の能力削除
ぶるぁぁぁぁぁぁ!