Coolier - 新生・東方創想話

レティの名産品

2008/02/23 03:34:17
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  十にんのニグロのこども ごはんをたべにいく
  ひとりがのどをつまらせて 九にんになった

  九にんのニグロのこども とてもよふかし
  ひとりがぐうぐうねすごして 八にんになった

  八にんのニグロのこども デヴォンへたびする
  ひとりがそこへのこるといって 七にんになった

  七にんのニグロのこども まきをわる
  ひとりがじぶんをまっぷたつ 六にんになった

  六にんのニグロのこども はちのすであそぶ
  まるはなばちがひとりをさして 五にんになった

  五にんのニグロのこども ほうりつべんきょう
  ひとりがどうにもならなくて 四にんになった

  四にんのニグロのこども うみへでる
  くんせいにしんがひとりのみこみ 三にんになった

  三にんのニグロのこども どうぶつえんへ
  おおきなくまがひとりをだきしめ ふたりになった

  ふたりのニグロのこども ひなたぼっこ
  ひとりがじりじりこげついて ひとりになった

  ひとりのニグロのこども ひとりぼっちでくらしていた
  けっこんして だれもいなくなった

「うちの幽々子様が行方不明なんです」
 そう切り出して玄関前を正座で陣取っているのは、首を越えぬ様に髪を切り揃え、脇に二振りの刀を置き、丸くてぷかぷか浮かぶ人魂をはべらせる、魂魄 妖夢と名乗る少女。
 同じ部屋、小さい窓に大きくない台所と三人四人で寝られるベッドから壁によけられたテーブルとその隣に並ぶ四つの壷。そこまで見渡せる玄関からの告白に、しっかり耳を傾けているのは妖夢から見て正面右、お茶で出迎えてくれた大妖精という妖精のみ。他の連中に、そんな素振りは全く見られない。
 テーブルを退けた部屋の真ん中にあぐらをかいて並ぶ妖精の少女と天狗の少女、チルノと射命丸 文は、股の間に銀色のボールを置いて、中の物体をすりこぎでぐいっぐいっ、と練っている。
 座って構える二人の間に頭一つが割り込む様に横たわる女性、レティは、両隣の二人がすりこぎで一練りする毎に、ボールの中にふぅ~、ふぅ~、と息を吹きつけている。

 あまりに自分等のことに没頭しすぎている三人に、妖夢は改めて尋ねる。
「あの、聞いてますか?」
 すると、声を張り上げたのは文。
「妖夢さん!見ればわかると思いますが、私達は今、全く手が離せないんです!」
 妖夢は眉を寄せた。
「あれ、食い付いてこないんですか?」
 文は全く取り合わず、レティの吹き込む息に合わせて黙々とすりこぎで練る。チルノも目を配っただけで、気にせず練る。同じく、レティの口は言葉を発さず、二つのボールに息を送り、その合間合間にベッドの方を見たり見なかったり。

 そうして、沈黙の作業時間が経過。レティは息を送るのを止め、傍らに置いてあった五つ目の壷を自分等の前に置く。チルノと文は練っていたボールの中身を壷に移し変える。
 三人が気にする雰囲気が全くないので、仕方なく大妖精が妖夢に質問。
「あ、あの、お話はわかりましたけど、どうして私達のところにきたのですか?人探しなら、西行寺様のお友達とかを訪ねられた方が宜しいと思います。正直、私達は西行寺様と特別仲が良いわけではありませんし」
 妖夢は手を叩き、得心がいった様子を表現。
「失礼しました。実はですね、幽々子様が『あいすくりーむが食べたい』と言い残していなくなられたのです。それでこちらに伺った次第です」
 そう言われて初めて、チルノは首を傾げながらも、文は強張った顔ながらも、妖夢をみた。
「へ?これのこと?」
 チルノはみっちり詰まった壷の中身を妖夢に見せた。そこに広がるのは乳白色の緩やかな山脈が光を受けてキラキラと輝く様。
「はい、それです」
 チルノの素朴な疑問を受けてから妖夢の即答。
「実をいいますと、幽々子様はここの『あいす』の愛好家なのです。他の『あいす』が甘くした牛乳を凍らせた程度の物に比べると、ここの『あいす』は全く違う。幽々子様を始め、多くの愛好家達がそう口を揃えて言います」
 しかしチルノは素っ気ないもので。
「ふ~ん。まっ、あたい達には関係ないけどね。配りたい人に配って、あとはあたい達で食べるだけだし」
 チルノの言葉に、文は密かに感動していた。「居候やっててよかった」と。
 そんなことは露知らず、チルノは鼻歌交じりで蓋を手に取り、壷の口を塞ぐ。そこから押し込むような動作が行われると、一陣の寒気が壷を中心に舞った。
「よし、あたいの最強パワー、注入完了」

 レティから。
「ご苦労様、チルノちゃん、それに文ちゃん。それと妖夢さん、さっきの話だけど」
 身構える妖夢。
「何でしょう」
「放っておけば。冬は色々と思うところもあるでしょうから、それを満喫すれば戻ってくるわよ、きっと」
「きっと、って。つまり、幽々子様がどこにいるか知らないんですね」
「今日に限って言えば、そんなに心配しなくてもいいと思うわよ。きっと」
 妖夢はただ、肩を落として息を吐く。しかし、レティは気にもせず、梱包したばかりの『あいすの壷』を一つ抱えて立ち上がった。
 チルノ。
「どこいくの?」
「貸し切りのお礼も兼ねてお見舞いよ」
 チルノはよくわからなかったが、とりあえず見送る。
「いってらしゃーい」
「はい、いってきます」
 レティは妖夢の隣を抜け、玄関を通り、家から出た。

 それから。
 妖夢は刀を手に取り、立ち上がる。
「私も失礼させてもらいます。レティさんの言うように、幽々子様が帰られているかもしれません。ですが、もしかしたらまたお邪魔するかもしれませんので、その時はご容赦を」
 それを聞いた大妖精は、台所にボールとすりこぎを放り込んだまま、壁に並んだ四つの内一つの『あいすの壷』を持って玄関に走る。
「はい、妖夢さん」
 大妖精から手渡された『あいすの壷』を、妖夢は受け取った。
「ありがとうございます。では、改めて失礼します」
 妖夢は深く頭を下げてから家を出た。

 程なくして。
 立ち上がったチルノは、一緒に思ったことも口にする。
「よし、あたいも向こうの館に『あいす』を届ける!」
「そういえば一緒に住んでみて気が付きましたけど、チルノさんって、何でか紅魔館で客としてもてなされますよね」
 文は不思議そうにつぶやいた。しかし、台所でボールとすりこぎを洗う大妖精は。
「ええ、本当に。スカーレット様は心の広いお方です」
「そう。だからあたいも、どどーんと器のおっきい所を見せる為に、出来立ての『あいす』をプレゼントするのよ」
 文は口にしなかった、「だからか」と。
「じゃ、行ってくる」
 チルノは『あいすの壷』、三つある内の一つを選んで家から出る。

 間もなくして。
 洗い物を済ませた大妖精は壁の『あいすの壷』を見て、気付く。
「あ~!チルノちゃん、それは黒蜜、ラズベリーはこっちだよ!」
 壁にある『あいすの壷』、二つの内の一つを取って大妖精は家を飛び出す。

 しばらくして。
 文がひとり、『あいすの壷』も一つ。
 唾を飲み込む文。凝視する文。
 長期戦、かつ一人では、独占の誘惑への敗北は必至。だから、文は負ける前に家を出た。

 もう少しして。
 壁際にぽつんと一つ、『あいすの壷』。そして、ベッドの下から這い出る何か。
 それは少女。直立した彼女は香る様な桜色の髪を散らしつつ、同室の台所からスプーンを拝借、『あいすの壷』を部屋の中央まで持って歩いた後、乱れた衣服を正しては帯を締め直し、『あいすの壷』を前に両膝をつく。
 この少女、西行寺 幽々子は壷に向かって深々と頭を垂れて一言。
「いただきます」
 蓋を開け、甘く香る冷気が漏れるのを見て幽々子は、ほ、と溜め息。
 スプーンで掬い上げた光輝する純白を口に含んで、ほ、と溜め息。
 そうしてゆっくりと、しかしすっかりと、あいすを平らげてから、幽々子は家を出る

 そして、誰もいなくなった。
幻想郷イチのパティシエであるレティ・ホワイトロックが
丹精込めて作り上げた『あいすくりーむ』は『レティ・ボーゲン』と呼ばれ……


いや、なんでもない、忘れてくれ
やっぱりレティが好き
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コメント



0.1090簡易評価
1.80SIG削除
初めの引用が長いな~って思ってたら最後のゆゆ様に驚かされました。
ゆゆ様かわいいよ
4.70三文字削除
レティ・ボーゲンもいいけど、チルゲンダッツも捨てがたい・・・


6.80煉獄削除
レティ・ボーゲンか・・・美味しそうだな。
それはそうと雪(レティ)見大(大妖精)福とかありませんか?(マテ)
7.100名前が無い程度の能力削除
寒い時って何故かアイス食べたくなりますよね。
それはそうと、テンポのよいすばらしいssでした。
9.90名前が無い程度の能力削除
ちょ、幽々子さま!?どこから出てきてるんですかww
29.100名前が無い程度の能力削除
そして誰も居なくなったが言いたかっただけか。
ゆゆ様マジフードファイター。
30.80ずわいがに削除
これはちょっとしたホラーやでぇ
ゆゆ様どうせ妖夢が貰ってるやないかーい、ていうかレティさん気付いとったんかーい