桜の蕾が開く、その頃に、優しい風が吹き抜ける。
広大な庭の中、これまでの寒さとは違い、ほのかな暖かみを帯びている。
どの桜も咲き始めたその頃に、それでも一つ、大きな桜の木は咲く気配がない。
春の息吹が乱れるこの場所に、まだ春が足りないのか、その桜は咲こうとしない。
その桜の手入れをするにもできない庭師は一人、ずっと桜を見つめていた。
優しく髪を揺らす、春風の中で。
桜の為に、集めましょう 作:へたれ向日葵
数多くの桜と共に、様々な木々が葉をつけ始めている。
そんな広大な庭を所持するのは、白玉楼という大きなお屋敷。
「またこの季節が来たけれど・・・。この桜だけは咲かないまま、か・・・」
その広大な庭には、もちろん庭師が、“一人”いる。
小さなその庭師の銀色の髪は春風に揺れ、その隣には、半透明の幽霊のような物体が浮遊している。
彼女は半人半霊。
故に飛んでいるのは本物の幽霊である。
何度もこの季節、春を迎えるも、一度として、一つの花弁も咲かせることはなかった。
そうした中で、ここの主たる者がふらり、彼女の隣に歩み立つ。
その主の手には、粗末な本が握られていた。
「そうね。いつまで経っても咲くことがないわね」
ゆったりとしたその表情は、どこか憂いのような色が見える。
桃色のその髪の上に、ふんわりとした帽子を被り、薄い青の着物を着ている。
扇子を広げ、唇を隠すその主は、妖艶であり、美しい。
「幽々子様、それは?」
主の名前、西行寺幽々子の名前を呼ぶ庭師。
「これはね、妖夢。大切な本なのよ?」
庭師の名前、魂魄妖夢の名前を呼ぶ主。
大切な本と言われるに相応しくない本を、ぺらぺらと振るってみせた。
「富士見の娘、西行妖満開の時、幽明境を分かつ、その魂、白玉楼中で安らむ様、西行妖の花を封印しこれを持って結界とする。願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、永久に転生することを忘れ・・・」
「ゆ、幽々子様?」
妖夢は、主が本を広げ、読み上げた内容が理解できなかった故、主に問う。
「勉強が足りないわねぇ」
「うむぅ・・・」
唸る妖夢にくるりと背を向け、扇子を閉じると、こう言った。
「妖夢、春を集めましょう」
「・・・え?」
一瞬躊躇うも、その言葉を、主が欲するものを集めれば、主が喜ぶことは容易に想像できるということを理解する。
春風に漂う桜の花弁が、ひらりひらりと揺れ、地に落ちる。
これほど大きな桜なのだから、綺麗な桜を咲かせるだろうし、大きな秘密が隠されているに違いない。
少しばかり楽しそうにしている主をみて、私はただ、
「それでは、春を集めに行って参ります。」
そう言い残し、桜の前に佇む主に背を向けて、幻想郷へと駆け出した。
暖かい、陽気な春を集めるために。
立派な、大きな桜を咲かせるために。
喜ぶ、主の顔を見るために。
桜の前に佇む彼女は、大きな木を優しく撫でて、呟いた。
「何が眠っていると言うのか。私に姿を見せてくれるかしら?」
幻想郷の春は、未だ遠い。
広大な庭の中、これまでの寒さとは違い、ほのかな暖かみを帯びている。
どの桜も咲き始めたその頃に、それでも一つ、大きな桜の木は咲く気配がない。
春の息吹が乱れるこの場所に、まだ春が足りないのか、その桜は咲こうとしない。
その桜の手入れをするにもできない庭師は一人、ずっと桜を見つめていた。
優しく髪を揺らす、春風の中で。
桜の為に、集めましょう 作:へたれ向日葵
数多くの桜と共に、様々な木々が葉をつけ始めている。
そんな広大な庭を所持するのは、白玉楼という大きなお屋敷。
「またこの季節が来たけれど・・・。この桜だけは咲かないまま、か・・・」
その広大な庭には、もちろん庭師が、“一人”いる。
小さなその庭師の銀色の髪は春風に揺れ、その隣には、半透明の幽霊のような物体が浮遊している。
彼女は半人半霊。
故に飛んでいるのは本物の幽霊である。
何度もこの季節、春を迎えるも、一度として、一つの花弁も咲かせることはなかった。
そうした中で、ここの主たる者がふらり、彼女の隣に歩み立つ。
その主の手には、粗末な本が握られていた。
「そうね。いつまで経っても咲くことがないわね」
ゆったりとしたその表情は、どこか憂いのような色が見える。
桃色のその髪の上に、ふんわりとした帽子を被り、薄い青の着物を着ている。
扇子を広げ、唇を隠すその主は、妖艶であり、美しい。
「幽々子様、それは?」
主の名前、西行寺幽々子の名前を呼ぶ庭師。
「これはね、妖夢。大切な本なのよ?」
庭師の名前、魂魄妖夢の名前を呼ぶ主。
大切な本と言われるに相応しくない本を、ぺらぺらと振るってみせた。
「富士見の娘、西行妖満開の時、幽明境を分かつ、その魂、白玉楼中で安らむ様、西行妖の花を封印しこれを持って結界とする。願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、永久に転生することを忘れ・・・」
「ゆ、幽々子様?」
妖夢は、主が本を広げ、読み上げた内容が理解できなかった故、主に問う。
「勉強が足りないわねぇ」
「うむぅ・・・」
唸る妖夢にくるりと背を向け、扇子を閉じると、こう言った。
「妖夢、春を集めましょう」
「・・・え?」
一瞬躊躇うも、その言葉を、主が欲するものを集めれば、主が喜ぶことは容易に想像できるということを理解する。
春風に漂う桜の花弁が、ひらりひらりと揺れ、地に落ちる。
これほど大きな桜なのだから、綺麗な桜を咲かせるだろうし、大きな秘密が隠されているに違いない。
少しばかり楽しそうにしている主をみて、私はただ、
「それでは、春を集めに行って参ります。」
そう言い残し、桜の前に佇む主に背を向けて、幻想郷へと駆け出した。
暖かい、陽気な春を集めるために。
立派な、大きな桜を咲かせるために。
喜ぶ、主の顔を見るために。
桜の前に佇む彼女は、大きな木を優しく撫でて、呟いた。
「何が眠っていると言うのか。私に姿を見せてくれるかしら?」
幻想郷の春は、未だ遠い。
雰囲気は良いと思うのでもっと長く文章が書けるように練習した方がいいと思う
本作が妖々夢異変のプロローグだということは理解出来るんだけどだから何?となってしまう
わざと多くを書かない良作も沢山存在するけれど、先ずは普通に書いてった方が慣れると思う
例えばあくまで書き方の一つだけれども、1.どのキャラが、2.どんな行動を起こして、あるいは何かに遭遇して、3.その結果どうなって、4.どう心情に変化があったか
大まかにそういうのを決めてから話を膨らませてみるとかどうだろうか
妖々夢は私も大好きなので、話を変えるなり文章を練り直すなりしてまた投稿してもらえるととても嬉しい
今作は初投稿だし、これから他の作者の作品を読みつついろいろ書いていけば必ず上手くなれると思う
それと目についたところとして、一人称視点(後ろから9行目・主をみて、私はただ~)と三人称視点(後ろから18行目・妖夢は、主が本を広げ~)は、ごちゃごちゃするからどちらかに統一した方がいいかなとも
知らないことがいいって、何だか複雑ですよね。
知りたいと思うことは悪くないのに。
評価、ありがとうございます。
>3
さすがに短すぎたなぁと改めて思います。
自分が書くのは短めになってしまうので、長めに書けるよう心がけたいところですね。
非常に参考になる評価、ありがとうございます。
視点がおかしくなってしまうのは悪い癖です、直さねば…。
ありがとうございました。
やおいと言われればそれまでですが、
このような本編に描かれていない「異変と異変の間」の描写も、読んでいて悪い気はしません。
内容に対して決して短くはないと思います。
細かい事を言えば、
「主の名前、西行寺幽々子の名前を呼ぶ庭師。」
「庭師の名前、魂魄妖夢の名前を呼ぶ主。」
は不要だったと思います。
SSというのはオリジナルキャラでない限り、読み手は登場人物をすべて知っているのが前提ですから。
SSでなかったとしても、「名前を呼ぶ」という紹介の仕方だけはいただけません。少しくどい気がします。
本作品において苗字は重要なウェイトを占めていないので、何気なく下の名前だけが会話に登場すればそれでよいと思います。
なるほど・・・。
確かに、登場人物はわかってるはずですし、無駄な文章ですね。
貴重な評価、ありがとうございました
評価ありがとうございます!
無知っていろんな意味で怖いものです…
嘆くのでしょうかね…。