01.
変わり者として有名な幻想郷の紅白の巫女、博麗霊夢にだって、趣味の一つや二つくらいはある。その内の一つが自らの神社に備え付けてある賽銭箱の中身を確認することだが、これは趣味と言うよりは巫女の仕事の一環と言っても差し支えないだろう。加えて言えば、霊夢に限らず誰だって財産が増えるのは喜ばしい事だし、目の前に見えるお金でちょっと位の夢を見る程度の少女らしさはあっても罰は当たらないはずだ。惜しむらくはその、霊夢に夢を見せるべき賽銭がお世辞にも豊かだとは言えないことだが、本人は満足しているのであまり周りがとやかく言う事はない。下手にとやかく口を出した場合、その人物が妖怪ならば退治される可能性が高く、人間ならばその心配はないものの、霊夢の知り合いで、かつわざわざ神社に足を運ぶ者の中に毎回賽銭を入れる信心深い者などいない。よって愚痴と共に賽銭でも入れろとお小言を貰うに違いない。
まぁ、それはまだ良い。こんな事は、霊夢の一番の趣味に比べれば他愛のない部類に入る。問題は、その霊夢のもう一方の趣味だが、こちらの趣味は先に挙げた趣味に比べ、あまり知っている者はいない。それが単に偶然なのか、或いはまかりなりにもまだ年齢的には少女である霊夢が恥ずかしがって隠しているのかもしれない。後者ならどれ程多くの者が救われたかと思うが、恐らくは前者だろう。厄介な事にこの巫女は幸運に祝福されているらしい。
「ねぇ霊夢。今日もお出かけかしら?」
「紫じゃない。一緒に行く?」
「え、あ、いいえ。遠慮しておくわ」
さて、霊夢が出かけようとしている正にその時。スキマから紫が現れ、声を掛ける。突然何もない空間から人が現れたら普通は驚くはずだ。しかもそれが、幻想郷の大賢者なら尚更である。しかし、そこは長年の付き合いだろう、特段驚くわけでもなく自然体のまま返す霊夢。
「霊夢。貴女の本業は何かしら?」
「何を今更……巫女で、異変解決でしょう。教えてくれたのはあんただったはずだけど?」
「そう。そうなのよ」
せわしなく扇子を開けたり閉じたりしながら紫が言葉を続ける。その様子を鑑みるに珍しく不機嫌そうにしているのだが、霊夢は全く気付いていない。眼光は鋭く、獲物を狙う獅子とは良く言うが、これから霊夢がしようとしている事は正にその言葉がぴったり当て嵌まるのだから恐ろしい。そしてそれが分かっているだけに紫は不機嫌になるのだが。
「ねぇ霊夢」
「なによさっきから」
「まぁ、聞きなさい。貴女を幼い時から見ているけれど、貴女は本当に優秀よ。正直、巫女にしておくのが惜しいくらい。
でもね、だからこそもっとマトモな趣味を身に付けて欲しいのよ。
だって、貴女がこれから人里に行くのって……」
「私の勝手でしょ。直接手を出すわけじゃあないんだから良いじゃない」
「そうじゃなくて……」
「大体、あんたも悪いのよ」
ずいと紫に迫る霊夢。一方の紫は、扇子で口許を隠し、無表情を保っている。最も、霊夢にはそう見え、紫はそう出来ていると思っているだけで、端から見たら泣きそうな紫に霊夢が言い寄っているだけにしか見えない。
「紫がそのおっぱいを揉ませてくれたら、私は人里に行かなくてすむのに! 紫のケチ!」
「ちょっと、霊夢!」
紫の制止を振り切り、階段へ走り思い切り飛ぶ霊夢。助走を付けた状態で一気に空を飛び、あっという間に姿を消した。伸ばした紫の手は霊夢に届く事はなく、唯虚空を掻いただけになる。
空は紅い。月とも太陽ともつかない球体が宙に浮いていて、夏だと言うのに不快な寒さだけが身を包んでいた。
「……お願いだから、異変を解決してよ……」
紅い霧が幻想郷を包んで数日。けれど紅白の巫女は動かない。好みの子をストーキングすると言う自らの私欲を満たすために人里へ出る事はあっても、異変を解決する気は無い様だ。
紫の願いは本人に届く事無く、消えていった。今なら紫本人も分かるが、完全に泣き顔である。手塩に掛けて育ててきたはずなのに、なにがどうしてああなったのか。紫には全く分からなかった。
博麗霊夢。
彼女はとにかくおっぱいが大好きな不憫な子になってしまったようだ。
02.
おっぱいってなんだろう。
生物学的な意味では、乳児に栄養を与える手段の一つとしての母乳をもたらす身体の器官ということになる。
では、乳児以外はおっぱいに触ってはいけないのだろうか。例えば二次性徴を迎えた自らの身体の変化を確認するための手段として目視、または触るといった行為をとるだろう。
勿論この場合は、二次性徴を迎える年齢の女性が医学的知識を得ているケースは低いだろうから、大概はその変化に対する戸惑いの表れとして、自らの身体を触り、現実としてそれを粛々として受け入れる、いわば通過儀礼の様な物になる。他者を通じて社会に関わるにあたり、自らの身体の変化を理解する事は悪い事ではないし、恐らくは誰もが多かれ少なかれ自らの身体くらいは触ったりするだろう。だから、きっと他者には理解されるはずだ。
では、他人のおっぱいを触っていけないのだろうか。
乳児期から幼児期にかけて、栄養補給の意味合いをこめて母親のおっぱいに触る事はあるだろう。しかしこれは自ら触ると言うよりは、生きる為の選択肢の一つとして考えるべきである。乳児期から幼児期においての世界とは、自らと両親くらいでしか形成されていない。その為、母親のおっぱい以外から栄養を補給すると言う選択肢や知識を自ら得る事は難しく、またそれがこの世界においては通常であると判断出来るため、躊躇なくおっぱいに触る事が出来る。
また、この時期の子供は喜怒哀楽、とりわけ寂しさを解決する方法として母親のおっぱいに触ると言う事が多い。自らの世界の半分近くを占めるであろう母親の、しかも普段栄養を補給している器官は他の器官と比べて一番母性を感じる箇所であるのは言うまでもない。その母性を感じ取れる箇所に触る事で、精神的安らぎを得ることが出来るのも確かだ。
さて、では乳児期から幼児期を越えた時期になった今、母親でもない赤の他人のおっぱいに触る事は許されないのだろうか。
幻想郷の法律は寡聞にして知らないが、世間の風潮や一般的な常識と照らし合わせるとどうも宜しくないらしい。
だがしかし、待って欲しい。
先程「乳児期から幼児期にかけては母親のおっぱいを触ることで精神的安らぎを得る」と結論付けたが、これはそれ以外にも当て嵌まるのではないだろうか。
青年期になれば世界は広がり、いよいよ家族間だけではなく他者との交流をする事になる。その際に、お互いのおっぱいを触りあうことで精神的安らぎを獲得し、結果分かりあえるのではないか。つまりは――
そこまで考えたところで霊夢は思考を一旦切り離す。ゆるゆると首を左右に振り、ふっと溜息をつく。ここまでの思考は毎日やっていることであり、つまりは結論が出ていないと言う事でもある。それよりも今霊夢が一番考えて居る事は、いかにして紫のおっぱいを揉む事かと言う事だ。
「流石は幻想郷の大賢者ね。なかなかガードが硬くて揉みしだくどころか掠る事さえままならないわ……でも、その方が燃えるじゃない」
くくっ、と喉を鳴らして唇を歪める霊夢。どこをどう見ても異変を解決する正義の味方には見えない。どう見ても世界の悪である。
「でも、あのおっぱいはきっと素晴らしい弾力を秘めてるに違いないわ。その為に何年も修行をしてきたんだから」
決して紫にその気はないし、そんなために修行をさせたわけがない。実は純情を地で行く紫は、霊夢の行為を注意するだけでアップアップなのだが、それでも毎日霊夢に会いに来てくれている。一重にそれは愛でもあるが、やはり心のどこかに責任感もあるのだろう。
繰り返し言うが、紫は決して霊夢にその手の入れ知恵はしていない。寧ろ箱入り娘のように大切に大切に育ててきたのだが、気が付いたらこうなっていた。何度も頭を抱えた紫が白玉楼へ訪れていた歴史など、霊夢には分かるまい。
天性の才能と生まれ持っての幸運が最悪の方向へ辿り着いた結果がこの巫女である。
そんな時、紅い空の中を異変など全く気にせず人里へ向かう霊夢の目に、奇妙な物体が見えた。それは黒い球体で、ふよふよと動いている。はて、あれは何だろう。おっぱい至上主義の霊夢とて、人並み程度の好奇心は持ち合わせている。幸いその黒い物体は酷く遅く、警戒して速度を落とした霊夢でさえもあっさりと追いついた。
しかし、遠めで見ても近くで見ても、黒い物体の中身は分からない。近づけば中が見えるかもしれないと思った霊夢の思惑は外れたわけだが、ふと耳を傾けると、中から声が聞こえる。あーともうーともつかないその声は幼く、恐らくは女性だと思われた。
「ちょっと、アンタ」
「んー。あー?」
とり合えず話し掛けて見ると、黒い物体から返事が帰ってきた。今のを返事ととって良いのかどうかは分からないが、言葉と同時に黒い物体は消えうせ、中の少女が姿を表わしたのだから良いだろう。
赤い紐と黒い服。それから白い服で、金髪に赤いリボン。霊夢が見た順番に並べると、こうなる。というのも、霊夢が女性を見る時、最初に胸を見る。まるでそこに顔と名札があるんだと言わんばかりに、胸を見る。それからとって付けたかのように、一応顔を合わせる意味でも顔を見るのだ。
「アンタ、見たことないお……いや、顔ね」
「私もおねーさんは見たことない」
「アンタ、名前は?」
「ルーミア。妖怪」
妖怪、と聞いて霊夢がピクリと反応する。あまり記憶力の良い方ではない霊夢でも、ようやく巫女としての本業を思い出したらしい。異変に気付いているかは定かではないが。
「ふぅん。ルーミア。ルーミアね。よし、アンタ、目を瞑りなさい」
「なんで」
「良いから」
「あー。んー」
素直に目を瞑るルーミアの背後に回り、そして両手を伸ばす。
霊夢からして見れば、名前と胸のサイズはセットなのだ。サイズと大きさを言われればアイツの事だな、と分かるほど霊夢は胸で人を覚えている。無論紫の様に触らせてくれない者も居るが、というかそれが大半だが、ざっと見ただけで霊夢にはサイズが分かるから問題ない。
だから霊夢は躊躇なくルーミアの胸を揉んだ。少女の見た目同様に、まだ膨らみかけの身体をまさぐった。撫でて愛でて擦った。
「んー? んー!?」
ところがルーミアからして見ればたまったものではない。何が哀しくて初対面の同性に胸を揉まれなければならないのだ。その為必死に暴れ、霊夢の魔の手から逃れる。顔は恥ずかしさで真っ赤に染まり、目尻には涙が溜まっている。その手の人が見れば却って襲われる表情だが、ルーミアにはそんな事は分からない。ちなみに霊夢はその手の人だった。
「良い表情するじゃない、そそるわ。その芽吹き途中の苺、貰ったぁ!」
「いやー!」
はて、これのどこが異変解決なのだろうか。どう見ても犯罪現場である。
と、そこに水色の少女がやってくる。背中の羽を見るに人間ではなく妖精だろう。ルーミアと同じく少女の様な姿をした彼女は二人を見つけるや否や声を荒げる。
「ルーミア! 何やってんの!?」
「チルノ! 助けて!」
チルノ、と呼ばれた青い服を来た少女は二人よりも上空を飛んでいた。その為、急降下をもって二人に接近する。状況を分からないが、ルーミアが襲われていると言う事だけは理解出来たらしい。
「おい、そこの馬鹿! ルーミアから離れろ!」
「ちっ」
チルノが二人の間に割って入る様に飛び込む。以下に女性が好きでも激突は体が持たない。仕方なく霊夢はルーミアの胸から手を放し、一旦距離をおく。一方のルーミアはというと、すっかりチルノの後ろでベソをかいていた。
異変が起きている真っ昼間に胸を揉まれて平然としている奴がいたら、その方が寧ろ異変なのだが、霊夢からしてみればそんな事はどうでも良かった。
「アンタ、ルーミアに何してたのかは知らないけど、あたいの親友泣かせて唯ですむと思ってないでしょうね?」
「チルノ……」
貞操の危機を救って貰っただけではなく、ここまで啖呵を切られたらもう黙って居られない。元々チルノの事を好いていたルーミアだが、これで完全に恋に落ちきったと言っていいだろう。その実チルノもチルノで一応は知らない人間の前である手前、「親友」と称したが、正直な所親友以上に思っている。唯、言い出す切っ掛けと勇気が沸かないだけで、それ以上の関係になれるのであれば喜んでなるつもりだ。
だから、偶然にもルーミアを見つけた時は酷くドキドキしたチルノだが、近寄って見ればより動揺する状況だったので、こうして大見得を切っていると言うわけだ。
「何って、見りゃ分かるでしょ。スキンシップよ」
「お前のスキンシップは相手を泣かせることか」
「何で泣くのよ、ちょっと揉んだ位で」
「は?」
「え?」
てんで話が噛み合わない。しっちゃかめっちゃかも良い所である。スキンシップに揉むも泣くもないだろうに、一体目の前の巫女は何を言っているのだろうか。妖精と人間の言葉は似て比なるものに違いない、チルノはそう思った。そう思わないとやってられないと言うのもあったが。
霊夢も霊夢ではてと思っていた。それもそのはず、霊夢にとってのスキンシップは先程の行動なのだから。だから何故チルノが怒っているのかが分かっていないようだ。
「とにかく、そう言うのはどっか余所でやんなさいよ。ここからだったらあの紅い館が近いから」
「そこに女は居るのよね?」
「掃いて捨てるほど一杯居るよ」
「ほう……」
目の前の巫女の目が燦然と輝く。良く分からないが、この巫女はマトモに相手をしてはならない人種だと言う事だけは理解したチルノだった。
指を指しながら言ったチルノの言葉に口許を拭いながら―チルノからすれば、何故今の会話の流れで涎を拭いたのかは分からないが―、霊夢がその方向を見遣る。そこには確かに紅い館の様な物が見え、門の傍には微かに人影が見える。その瞬間、霊夢は両目をカッと見開き、次の瞬間にはチルノとルーミアの前から姿を消していた。余りにも突然の出来事だったのでチルノは咄嗟に反応できなかったが、まぁ良く考えれば変態が一人居なくなっただけの事である。何の事はない、平和が戻ってきたのだ。さてと思いなおし、背中に隠れていたルーミアに声を掛ける。
「ルーミア、もう大丈夫だよ。あの馬鹿はあたいが追い払ったから」
「そうなの……?」
実際は新たな餌を求めて旅立っただけなのだが、そんな事二人が知る由はない。チルノにとってはルーミアが無事ならばそれで良いのだ。
そのルーミアがおそるおそるチルノの背中から顔を出す。手だけは放さず、今度はチルノと向かい合う形になる。
「ね、居ないでしょ?」
「本当。チルノ……ありがとう」
そのままチルノの胸の中に顔をうずめるルーミアに、ようやく緊張が解けたのか、顔を真っ赤にする。どうした物かと両手をわきわきと動かし、ぎこちない動作でルーミアを抱き締めようとする。切っ掛けさえあれば、と普段から思って居たチルノである。これは一世一代のチャンスに違いない。そう思い立ち、強く抱き締める。
「ル、ルーミアは弱っちいから、最強のあたいが守ってあげる」
「……うん」
「だ、だからあたいから離れちゃ駄目だかんね?」
「うん……ずっと、一緒」
変な巫女に揉みしだかれて最悪の一日かと思って居たルーミアだが、まさか意中のチルノから告白がきけるとは。まさに災い転じて、と言う奴である。
もう気がつけば二人の頭から変態巫女の事がすっかり抜けていた。目の前の愛に比べたら異変も何のその、と言う事だろう。
1面・ルーミア&2面・チルノ CLEAR!
03.
チルノの指差した先は、紅い館の門だった。そこには門番らしき女性が一人、壁に寄りかかり目を瞑っている。それを確認して、霊夢の目は更に輝きを増す。このままあと数分空を滑降していたら、恐らく涎が飛行機雲の様になるだろう。誰もそんな風景は見たくないし、霊夢とて恥じらいはある。起こさない様に慎重に地上へ降り、そろりそろりと歩いて近づく。
(ふっ、さっきの微乳二人共とは違って、良い乳してんじゃないの)
しまりの無い口許からは荒く息が漏れているので、抜き足も差し足も全く意味はない。と、霊夢がその手を最大限まで伸ばせばその身体に届こうかと言う距離にまで近づいた時、突然門番の女性が姿を消した。実際に霊夢はその女性の胸を揉みしだくべく手を伸ばしており、それは同時に女性が唯姿を消しただけではなく、その場からいなくなっていると言う事に他ならない。
咄嗟の事に動揺する霊夢だが、まかりなりにも巫女である。それも唯の巫女ではなく、幻想郷の大賢者、八雲紫に惚れ込まれ、八雲紫の元で修行をした巫女だ。自分の斜め前から飛んできたナイフを後退しながら交わし、視線をその投擲の主へと向ける。
しかし、目の前には誰も居なかった。不思議に思い一歩足を前に踏み出した瞬間、首元に冷たい感触が走る。
「館に入る際にはまず許可を。最も、貴女の様な者に許可など降りませんが」
地面に刺さっていた筈のナイフが地面にない。居るはずのない人影が背後にある。
普通のものならそれだけでパニックをおこしそうなものだが、何故か霊夢は落ち着いていた。
「折角だから顔を見せなさいよ。メイドってのは客に顔も見せないの?」
「貴女が客なら見せますが、生憎本日この館に来客の予定はございません。とっととお引取り下さい」
取り付く島もないとはこの事だろうか。何時の間にか左腕を掴まれており、抜け出そうにも抜け出せない。首元に加え、耳元にも鋭い言葉の武器である。
しかし霊夢は慌てない。会話をしながら、隙を探す。
「ところで、さっきまでここに居た良いおっぱいの主は知らない?」
「……先程連れ戻しました。見間違いかと思ってたけれど、本当にそんな事をしようとしてたのね」
「そこにおっぱいがあるから揉むのよ。否、揉まないおっぱいはおっぱいじゃないわ」
「この腕へし折って良い?」
「あ、やめて。痛い、凄く痛い」
霊夢には見えないが、メイドの少女、咲夜は凄くげんなりしている。当たり前である、こんな変態が館に乗り込んできたら一大事に他ならない。彼女が仕える館の主やその妹、あるいは親友などといった、咲夜にとっては守らねばならない存在が何人も居る。そんな者達の前にこの変態巫女を通してしまったらきっと、明日からマトモな食事をくいっぱぐれる事になるだろう。
それに咲夜にとって、この館の主であるレミリア・スカーレットは何物にも変えがたい存在であるが、実の所、吸血鬼として何百年も生きているレミリアにとって、咲夜は頼もしい従者であると同時にからかい甲斐のある娘みたいなものだ。だから何かとちょっかいを出してくる事が多く、レミリアと霊夢はもしかしたら通じる物があるかも知れない。もしここでレミリア(変態)と霊夢(変態)が混じり合ったら、どんな化学反応を起こされるか分かったものではない。二人の間で解決してくれれば良いのだが、十中八九レミリアは咲夜を巻き込むだろう。そしてそれが手に取る様に分かるだけに、咲夜としては霊夢を館内に入れるわけにはいかなかった。
しかし、このままではいかないのは霊夢も同様である。霊夢には館内に誰が居るのかなど分からないが、きっと誰かしらが居るに違いない。ここで攻められる側に回っている場合ではないのだ。
「痛いのが嫌でしたら、お帰り下さい」
「……ん」
「? なんですか?」
「ならん!」
「!」
カッと霊夢は目を開き、腹を括る。まだ見ぬ胸の為に反撃を開始する。
ゴキッ、と鈍い音が響き、するりと霊夢が咲夜の拘束から逃れる。そして、瞬時に振り向き、右腕で咲夜の胸をムンズと掴む。
「肉を切らせて骨を断つ! 関節を外してあんたのおっぱいを揉むわ!」
「ひっ」
もにゅん。わざと自分から脱臼してまで得た胸の感触は、今日一日の中で最高の手触りのものだった。
「ふっは、やっぱりこうじゃなきゃ! よし、次ぃ!」
硬直したままの咲夜を見る事無く、踵を返し玄関へと走り去る霊夢。対して咲夜は、まるで放心したかの様にその場で固まったまま動かず、やがて霊夢が見えなくなるとへなへなとその場に座りこんでしまった。
「さ、触られた……揉まれた……」
咲夜にしてみれば、霊夢が訪れた理由は当然自らの主が起こした異変に関することだと思ったのだが、実はそれは大きな違いで、単になりゆきである。そんな事はつゆ知らず、加えて言えば異変を討伐する巫女があんな変態だとも知らなかった。咲夜の唯一にして最大の誤算はまさにその点で、更に言えば霊夢やレミリアの様な、性癖を剥きだしに出来る者への対応が下手だったのが運のつきである。
「幻想郷なんて嫌いよ……ぐすっ……」
紫が聞いたら一緒に泣きそうなセリフだが、多分紫も泣いて良い。
完全瀟洒なメイドは今日、たった一度のセクハラに完敗した。
3面・紅美鈴&5面・十六夜咲夜 CLEAR!
04.
レミリア・スカーレットには妹が居る。名前はフランドール・スカーレットと言い、姉と同じく吸血鬼だ。とは言え見た目や中身はまるで違う。積極的に外に出る姉と違い、あまりその姿を外で見る事は出来ない。その為、紅魔館の内情を知らない者達の間では、やれ地下に幽閉されているだの、気が狂っているだの噂が色々と飛び交って居るようだが、フランドールに言わせれば狂って居るのは姉の方である。
まず、すぐ女に手を出す。
妹であるフランドールは勿論、この幻想郷に来る前からの知り合いだと言う魔女のパチュリーにもちょっかいを出す。まぁ、これに関してはパチュリーの方がレミリアを好いているらしく拒む仕草がないので置いておくとして、パチュリーのお抱え司書である小悪魔にも手を出す。その事でパチュリーとは以前喧嘩になった事があるのだが、全く懲りる事無く、最近では妖精メイドにも手を出す始末である。唯一の血の繋がった家族がこれでは幻滅しても仕方がない。その癖、変なところで淑女であるレミリアは手を出した相手に受けがよく、今まで大きなトラブルがないどころかちょっとしたファンクラブができるくらいだと言うのだからタチが悪い。
そんな訳で、姉であるレミリアにも外の世界にも対して期待が出来ないあまり、本人も知らない間に引きこもり癖がついてしまったのだ。
とは言え、まぁ、たまには部屋を出る時もある。三度の食事はなるたけ家族揃ってするのがルールだし、読書以外に特に趣味のないフランドールの部屋に、暇を潰せるものは多くない。それに、部屋でじっとしていると誰かしらが平和を乱しにやってくるのだ。それは概ね二人で、毎日やってきてはレミリアの話や恋の相談をしにやってくるパチュリーか、後はその当の本人であるレミリアのどちらかなのだから面倒になる。寧ろ、片方だけなら良い方で、日によってはパチュリーの長ったらしいレミリアの観察日記を聞かされた後、そのレミリアにセクハラをされる日に至っては最悪なのは間違いない。もしかしたら気が狂っているのはフランドールだというのも間違っていないのかもしれない。何しろそんなこんなで毎日苛々させられているのだから。
ちなみに、今日は運の悪い日だったらしい。偶にはと思って自室を出て数分後にはパチュリーに捕まり、彼女の自室である図書館に引きずり込まれていた。
「……それでね。レミィったら、私の為にコーヒーを淹れてくれてたのよ」
「へー。あー、凄いね」
何が哀しくて人の惚気なんぞ聞かなくてはいけないのだろうか。しかもその相手が自身の姉であるのは陰謀としか思えない。
「妹様はあまりレミィの事を良く思ってないみたいですね」
「当たり前でしょ。あいつのどこを好めって言うのよ」
「それは妹様の自由です。ちなみに私は全部好きですわ」
「……あっそ」
だれかこいつをとめてくれ。フランドールがそう思った瞬間、乱暴に扉が開く音がした。
はて不憫な妹の願いが通じたのだろうか、そうフランドールは振り向き、そしてすぐに手近にあった本をブン投げた。
「危ないわね、この館は来訪者に本をブン投げるのがもてなしなの?」
「この館では、両手に泣いてる女性を抱えて喜んでる変態を来訪者とは言わないのよ!」
レミリアより酷いのが来た。何を隠そう霊夢なのだが、フランドールにしてみれば変態は全員変態だ。片方にはパチュリーのお抱え司書を、もう片方には緑髪の妖精を抱きかかえてご満悦の笑顔である。正確には緑髪の妖精はこの紅魔館の住人ではなかったが、同じく霊夢に抱えられている小悪魔と仲が良く、良く会いに来る。今日も二人で逢引の予定だったのだが、夢は儚く潰え、霊夢によって揉みしだかれた。おかげですっかりぐったりとした二人はぺいっと霊夢に床に捨てられても、マトモに反応さえしなかった。否、出来なかったという方が正しいのだろう。
「さて、あんたらのどっちかがお嬢様とやら?」
「レミィに何の用かしら」
すっとパチュリーが席を立つ。
「いや、この館の主に会いたくてね。レミィってのが名前?」
「……貴女、巫女ね」
咲夜もそうだが、パチュリーにとっても今回レミリアが起こした異変について巫女が来ると言う事は分かっていた。いずれ巫女が来て、レミリアを倒しに来ると言う事もだ。この異変は主にレミリアが起こしたものではあるが、パチュリーも協力している。レミリアに頼まれたら例え異変でも断らないのがパチュリーである。
「レミィから聞いてるわ。意外に若い巫女ね」
パチュリーの言葉に何も答えず、鋭い目つきで睨み返す霊夢。
「……なかなか、出来そうね」
パタリ、と本を閉じ、パチュリーもまた、霊夢を見返す。愛するレミリアの為に、この巫女はここで倒しておかなければならないと思ったのだろう。
しかし、そんな二人を見ても、フランドールは違う感想を抱いていた。
それは普段変わり者の姉の相手をしているフランドールだからこそ分かる感覚で、パチュリーには分からないようだ。霊夢の鋭い視線はパチュリーの顔のやや下辺りにロックオンされており、決してずれる事はない。その目線を確認して、二人に聞こえないようフランドールは溜息を吐く。つまりは、同類と言う事である。類は友を呼ぶと言うが、増えてほしくない人種だってある。だというのに、どうしてそう言う連中に限ってフランドールの周りに集まるのだろうか。それは勿論誰にも分からない。
「そのレミィって奴の所まで案内しなさい」
「言われて案内すると思う?」
「いや、しない」
「そう、しない」
(して良いから。連れて行って構わないから。とっととどっかに行ってくんないかな)
げんなりしつつも、口は挟まない。下手に関係者になって、セクハラされるのはごめんだ、と言うのもあるが、基本的にフランドールは引っ込み思案なのである。でなければ、いかに姉の愛が激しくとも引きこもったりはしないだろう。フランドールからしてみれば多くない趣味の内の一つが読書で、読書をするにはこの図書館に来る事になるだけで、決してパチュリーと遊ぶために来たわけでもないのだ。弾幕だかなんだか知らないが、見ず知らずの他人と汗をかく行為など絶対に遠慮したい。出来る事なら自室の隅っこで体育座りをしていたいと思うくらいである。
両者の視線が混ざり、ぶつかり合う。じりじりと聞こえない音まで聞こえてきそうだ。
ぐっと霊夢が足を踏み込み、
パチュリーがなにやら魔法の詠唱を始めた、その瞬間。
バタンと乱暴に扉が開く音がして、今度ははっきりと外に溜息を吐き出した。どうやら今日は最悪の一日になるに違いない。
霊夢の背後の図書館のドアを開けて威風堂々と腕を組んでいるのは、何を隠そうレミリア本人である。
しかし霊夢はそんなレミリアを一瞥しただけで、再びパチュリーに視線を戻した。これにはパチュリーも驚きを隠せない。レミリアに会わせない為に戦おうとしていたのに、本人が自分から来てしまっただけではなく、霊夢がレミリアに反応しないのだ。当然だろう。
だから、動揺したままパチュリーはレミリアに声を掛けた。勿論、目の前の巫女からは目を放さずに。
「レミィ。どうしてここに」
「おいおい、挨拶だねぇ。理由がなきゃ、お前に会いに来ちゃいけないのかい?」
「別に、そう言うわけじゃないわよ」
「うん、やっぱりお前は可愛いな。一日に一回はお前の顔を見なきゃ気が済まないよ」
「もう……」
「……うざっ」
最後の言葉はフランドールのものである。他に人が、ましてや館とは無関係の者が居るのにもかかわらずこれである。レミリアにとって呼吸と女性を口説く事に違いはない。そんなレミリアにパチュリーを含む館の者は骨抜きにされているが、正直言ってフランドールからすれば鬱陶しいことこの上ない。
見れば先ほどまでの真面目な空気はどこへやら、パチュリーはあちこちに視線を彷徨わせ、頬を赤くしている。何が恥ずかしいのかレミリアの顔は見ない。乙女のつもりか、とフランドールは内心毒づく。
しかし、この状況に納得の言って無い者がもう一人居た。
「ま、待って!」
こちらも真面目な表情はとうに消えうせ、パチュリー以上に慌てた様子である。
「あ、アンタがレミリア?」
「ん。いかにもレミリア・スカーレットだよ」
「だ、だってアンタ……」
仮にも、本当に仮にもだが、この館の主であるレミリアに対して指を指す霊夢。あんぐりと口を開け、レミリアの頭からつま先まで見渡して、眉を顰める。怪訝そうな、というよりは残念そうな表情である。
事実、霊夢は今ショックを受けている。霊夢からして見れば、これだけ立派な館の主と言う事に、自身の性癖も重なって、かなりの妄想をしていたらしい。
「どっからどうみても、アンタ、唯のロリボディじゃない! 館の主でしょ!?」
失礼にも程がある。いつから館の主は豊満な体の持ち主でなければならないという決まりが出来たのだろうか。これにはパチュリーもがっくりと肩を落とし、フランドールに至ってはもうそろそろ本気でこの図書館を去ろうかと考えていた。しかしそうするには霊夢の真横を通過し、レミリアにどいてもらわねばならない。滅多なことでは自分から話し掛けたくない二人である。吸血鬼ながら、頭痛がしそうだった。
とは言え、果たしてこの言葉にレミリアがどう反応するのか。普段レミリアに意見するものなどフランドールを除いて誰一人居ない。そのフランドールの言葉も右から左、理解するよりも早く身体に手を出そうとするのだから、言葉より実力行使での抵抗の方が手っ取り早くなる。そう言う意味では、レミリアは正に唯我独尊だとも言える。
「……ふふ……」
「レミィ?」
「……言ってくれる……」
「レ、レミィ。巫女の言葉なんて気にしちゃ駄目よ。貴方には貴方の魅力があるわ」
フォローになっているのかいないのか、パチュリーがレミリアに言う。
やや下を向いてくつくつと笑ってるので、レミリアの表情は誰にも見えない。唯、まぁ、幾らレミリアが変態でも、まさか喜びはしないだろう。世の中にはそういう類の方向性に長けた変態も居るが。
やがて顔を上げるレミリア。その表情は不適な笑みで覆われている。この状況下、このメンバーでその表情にドキリとするのはパチュリーだけで、フランドールはもう関わらないように机の上の本を読むふりをして顔を隠しているし、霊夢に至っては言ってやった、くらいの表情をしている。妙に晴れ晴れとしているのが憎らしい。
「ふっ……はははははは! 甘いわ!」
「!」
「レミィ!?」
ひとしきり笑った後、霊夢に人差し指を突きつけるレミリア。
かつかつと数歩歩き、霊夢に指が触れるくらいにまで近づく。
「貴女は女性を乳でしか見ていないみたいだけど、それは間違いよ」
「何ですって?」
「人の魅力は人それぞれさ。確かにパチェは乳も良いが、それ以上に口許が良い。アイツの笑った時の口許はどんなワインよりも格別さ。
咲夜なら手だな。色々と負担を掛けすぎた所為でそこらの女の子の手とはまた違うが、それが良いんだ。職人気質とでも呼ぶべきかな。
美鈴は足だね。スリットから覗くあの足はヤバイだろう。ありゃ狙ってるとしか思えないね。何をって、私のハートをだよ。」
「……あの赤いのは」
霊夢が指差す先にはフランドール。本人は本で顔を隠しているのでそのやり取りには気付いていないが、会話は耳に届いていた。
(私の名前が出てこないのはなんでよ。いや、別に良いんだけどさ。ほっといて欲しいんだから良いんだけどさ)
そんなフランドールの様子にパチュリーはかすかに微笑む。素直になれない妹に果たして姉は気付いているのだろうか。それは定かではなかったが、少なくともパチュリーには伝わった。
ちなみに、パチュリーは普段笑わない。あまり感情を表に出すタイプではないのだ。なので、霊夢にとってはある意味、今のがパチュリーの笑顔を見る最初で最後のチャンスだったのだが、レミリアと向き合っていたので残念ながら見ていなかった。
「フランか。フランは特別さ。欠点なんてないよ、何てったって私の妹だからね。今の内に言っておくが、フランにちょっとでも疚しい感情を持って触れてみろ。お前の首と胴体が離れる事になる」
「……へぇ」
本で隠れているのは顔の横までだ。紅くなっている耳までは、隠せない。レミリアの角度からは見えないが、パチュリーには見えている。
(良いお姉様じゃない)
きっとフランドールは否定するだろうけれど。パチュリーはそう思った。
「それに、これはお前にも当て嵌まるよ。私は西洋生まれだからね、黒髪はそそる。
でも、お前の一番良い所は髪じゃない、瞳だ。お前の瞳は凄く良い。真っ直ぐで力強くて澄み切ってる。綺麗な瞳だ」
「……! (やだ、私ときめいてる!?)」
なんのこっちゃ、である。
レミリアよりも霊夢の方が背が高いため、必然的に見下す形になっている。更に今のレミリアの言葉で更に下を向いてしまった。フランドールとどちらの方が顔を赤くしているのだろうか。
「おいおい、折角人が褒めたのに目を逸らさないでくれよ」
「あっ……」
霊夢の顎を人差し指で触り、そのまま上―上と言っても、あくまでレミリアの目線に合わせるためなので、高くはない―へと持ち上げる。少しばかり潤んだ瞳と、火照った頬。それを見て、レミリアは最大限に微笑む。
「可愛い顔も出来るじゃないか。良いよ、紅霧は止めてあげるよ。その代わり、ちょっと、私の部屋に来てもらおうか」
「え、ええ? 何で?」
「触りたいんだろ。揉みたいんだろ。大丈夫、夜はこれからだ」
「あうう……」
そのまま霊夢の手を掴み、図書館を去ろうとするレミリア。しかしそうは問屋が卸さなかった。
凄まじい勢いで一冊の本がレミリアと霊夢の間に飛んでくる。霊夢は勘で、レミリアは持ち前の運動神経でそれをかわす。飛んできた方向には、フランドールが烈火の炎を纏い仁王立ちしていた。先程まで顔を隠していた本を投げたのだろう。恥ずかしさで赤かった顔は、今や憤怒の表情で満ちている。パチュリーはそんなフランドールを止めはしない。確かにレミリアの事を好いてはいるが、根本的に冷静である。止めに入ったところで力ではフランドールに勝てないと考えたのだろう。
或いは、パチュリーも同じ考えだったのかもしれない。
自分の目の前で、自分の好きな者が自分以外の誰かと仲良くしていたら、哀しくなる。
それが例え魔法遣いでも、吸血鬼でも。
親友でも、妹でも。
だからパチュリーは、フランドールを放置するという形を通して、半ばレミリアに訴えているのかもしれない。
「いや、違うのよフラン。まずは聞いて頂戴」
「お姉様の……」
「お、お姉様の?」
振り返ってくれとは言わないまでも、せめて優しくして欲しい。
レミリアにとってフランドールは妹で、パチュリーは親友なのかもしれないが。
彼女達には彼女達の想いがある。
だから、
「お姉様の、馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「にぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」
たまには罰を受けなさい。
静かにパチュリーは、そう呟いた。
滅多に見る事の出来ない、微笑みのままで。
05.
「流石は霊夢ね、その気になれば解決してくれるじゃない」
「ん、まぁね」
「しかも最近は趣味の方も大人しくなって。私嬉しいわ、やっと分かってくれたのね」
「ねぇ紫」
「なぁに、霊夢」
「ちょっと一緒にお風呂入らない?」
「霊夢ぅ。分かってくれたんじゃないの?」
「ええ、確かに私は間違ってたわ。人の魅力は人それぞれ。今までは唯揉めば良いって思ってたけど、違ったわ。大事なのはシチュエーションよ」
「霊夢の馬鹿、もう知らない!」
「ああっ、紫!」
>東方妖々夢へ続く
変わり者として有名な幻想郷の紅白の巫女、博麗霊夢にだって、趣味の一つや二つくらいはある。その内の一つが自らの神社に備え付けてある賽銭箱の中身を確認することだが、これは趣味と言うよりは巫女の仕事の一環と言っても差し支えないだろう。加えて言えば、霊夢に限らず誰だって財産が増えるのは喜ばしい事だし、目の前に見えるお金でちょっと位の夢を見る程度の少女らしさはあっても罰は当たらないはずだ。惜しむらくはその、霊夢に夢を見せるべき賽銭がお世辞にも豊かだとは言えないことだが、本人は満足しているのであまり周りがとやかく言う事はない。下手にとやかく口を出した場合、その人物が妖怪ならば退治される可能性が高く、人間ならばその心配はないものの、霊夢の知り合いで、かつわざわざ神社に足を運ぶ者の中に毎回賽銭を入れる信心深い者などいない。よって愚痴と共に賽銭でも入れろとお小言を貰うに違いない。
まぁ、それはまだ良い。こんな事は、霊夢の一番の趣味に比べれば他愛のない部類に入る。問題は、その霊夢のもう一方の趣味だが、こちらの趣味は先に挙げた趣味に比べ、あまり知っている者はいない。それが単に偶然なのか、或いはまかりなりにもまだ年齢的には少女である霊夢が恥ずかしがって隠しているのかもしれない。後者ならどれ程多くの者が救われたかと思うが、恐らくは前者だろう。厄介な事にこの巫女は幸運に祝福されているらしい。
「ねぇ霊夢。今日もお出かけかしら?」
「紫じゃない。一緒に行く?」
「え、あ、いいえ。遠慮しておくわ」
さて、霊夢が出かけようとしている正にその時。スキマから紫が現れ、声を掛ける。突然何もない空間から人が現れたら普通は驚くはずだ。しかもそれが、幻想郷の大賢者なら尚更である。しかし、そこは長年の付き合いだろう、特段驚くわけでもなく自然体のまま返す霊夢。
「霊夢。貴女の本業は何かしら?」
「何を今更……巫女で、異変解決でしょう。教えてくれたのはあんただったはずだけど?」
「そう。そうなのよ」
せわしなく扇子を開けたり閉じたりしながら紫が言葉を続ける。その様子を鑑みるに珍しく不機嫌そうにしているのだが、霊夢は全く気付いていない。眼光は鋭く、獲物を狙う獅子とは良く言うが、これから霊夢がしようとしている事は正にその言葉がぴったり当て嵌まるのだから恐ろしい。そしてそれが分かっているだけに紫は不機嫌になるのだが。
「ねぇ霊夢」
「なによさっきから」
「まぁ、聞きなさい。貴女を幼い時から見ているけれど、貴女は本当に優秀よ。正直、巫女にしておくのが惜しいくらい。
でもね、だからこそもっとマトモな趣味を身に付けて欲しいのよ。
だって、貴女がこれから人里に行くのって……」
「私の勝手でしょ。直接手を出すわけじゃあないんだから良いじゃない」
「そうじゃなくて……」
「大体、あんたも悪いのよ」
ずいと紫に迫る霊夢。一方の紫は、扇子で口許を隠し、無表情を保っている。最も、霊夢にはそう見え、紫はそう出来ていると思っているだけで、端から見たら泣きそうな紫に霊夢が言い寄っているだけにしか見えない。
「紫がそのおっぱいを揉ませてくれたら、私は人里に行かなくてすむのに! 紫のケチ!」
「ちょっと、霊夢!」
紫の制止を振り切り、階段へ走り思い切り飛ぶ霊夢。助走を付けた状態で一気に空を飛び、あっという間に姿を消した。伸ばした紫の手は霊夢に届く事はなく、唯虚空を掻いただけになる。
空は紅い。月とも太陽ともつかない球体が宙に浮いていて、夏だと言うのに不快な寒さだけが身を包んでいた。
「……お願いだから、異変を解決してよ……」
紅い霧が幻想郷を包んで数日。けれど紅白の巫女は動かない。好みの子をストーキングすると言う自らの私欲を満たすために人里へ出る事はあっても、異変を解決する気は無い様だ。
紫の願いは本人に届く事無く、消えていった。今なら紫本人も分かるが、完全に泣き顔である。手塩に掛けて育ててきたはずなのに、なにがどうしてああなったのか。紫には全く分からなかった。
博麗霊夢。
彼女はとにかくおっぱいが大好きな不憫な子になってしまったようだ。
02.
おっぱいってなんだろう。
生物学的な意味では、乳児に栄養を与える手段の一つとしての母乳をもたらす身体の器官ということになる。
では、乳児以外はおっぱいに触ってはいけないのだろうか。例えば二次性徴を迎えた自らの身体の変化を確認するための手段として目視、または触るといった行為をとるだろう。
勿論この場合は、二次性徴を迎える年齢の女性が医学的知識を得ているケースは低いだろうから、大概はその変化に対する戸惑いの表れとして、自らの身体を触り、現実としてそれを粛々として受け入れる、いわば通過儀礼の様な物になる。他者を通じて社会に関わるにあたり、自らの身体の変化を理解する事は悪い事ではないし、恐らくは誰もが多かれ少なかれ自らの身体くらいは触ったりするだろう。だから、きっと他者には理解されるはずだ。
では、他人のおっぱいを触っていけないのだろうか。
乳児期から幼児期にかけて、栄養補給の意味合いをこめて母親のおっぱいに触る事はあるだろう。しかしこれは自ら触ると言うよりは、生きる為の選択肢の一つとして考えるべきである。乳児期から幼児期においての世界とは、自らと両親くらいでしか形成されていない。その為、母親のおっぱい以外から栄養を補給すると言う選択肢や知識を自ら得る事は難しく、またそれがこの世界においては通常であると判断出来るため、躊躇なくおっぱいに触る事が出来る。
また、この時期の子供は喜怒哀楽、とりわけ寂しさを解決する方法として母親のおっぱいに触ると言う事が多い。自らの世界の半分近くを占めるであろう母親の、しかも普段栄養を補給している器官は他の器官と比べて一番母性を感じる箇所であるのは言うまでもない。その母性を感じ取れる箇所に触る事で、精神的安らぎを得ることが出来るのも確かだ。
さて、では乳児期から幼児期を越えた時期になった今、母親でもない赤の他人のおっぱいに触る事は許されないのだろうか。
幻想郷の法律は寡聞にして知らないが、世間の風潮や一般的な常識と照らし合わせるとどうも宜しくないらしい。
だがしかし、待って欲しい。
先程「乳児期から幼児期にかけては母親のおっぱいを触ることで精神的安らぎを得る」と結論付けたが、これはそれ以外にも当て嵌まるのではないだろうか。
青年期になれば世界は広がり、いよいよ家族間だけではなく他者との交流をする事になる。その際に、お互いのおっぱいを触りあうことで精神的安らぎを獲得し、結果分かりあえるのではないか。つまりは――
そこまで考えたところで霊夢は思考を一旦切り離す。ゆるゆると首を左右に振り、ふっと溜息をつく。ここまでの思考は毎日やっていることであり、つまりは結論が出ていないと言う事でもある。それよりも今霊夢が一番考えて居る事は、いかにして紫のおっぱいを揉む事かと言う事だ。
「流石は幻想郷の大賢者ね。なかなかガードが硬くて揉みしだくどころか掠る事さえままならないわ……でも、その方が燃えるじゃない」
くくっ、と喉を鳴らして唇を歪める霊夢。どこをどう見ても異変を解決する正義の味方には見えない。どう見ても世界の悪である。
「でも、あのおっぱいはきっと素晴らしい弾力を秘めてるに違いないわ。その為に何年も修行をしてきたんだから」
決して紫にその気はないし、そんなために修行をさせたわけがない。実は純情を地で行く紫は、霊夢の行為を注意するだけでアップアップなのだが、それでも毎日霊夢に会いに来てくれている。一重にそれは愛でもあるが、やはり心のどこかに責任感もあるのだろう。
繰り返し言うが、紫は決して霊夢にその手の入れ知恵はしていない。寧ろ箱入り娘のように大切に大切に育ててきたのだが、気が付いたらこうなっていた。何度も頭を抱えた紫が白玉楼へ訪れていた歴史など、霊夢には分かるまい。
天性の才能と生まれ持っての幸運が最悪の方向へ辿り着いた結果がこの巫女である。
そんな時、紅い空の中を異変など全く気にせず人里へ向かう霊夢の目に、奇妙な物体が見えた。それは黒い球体で、ふよふよと動いている。はて、あれは何だろう。おっぱい至上主義の霊夢とて、人並み程度の好奇心は持ち合わせている。幸いその黒い物体は酷く遅く、警戒して速度を落とした霊夢でさえもあっさりと追いついた。
しかし、遠めで見ても近くで見ても、黒い物体の中身は分からない。近づけば中が見えるかもしれないと思った霊夢の思惑は外れたわけだが、ふと耳を傾けると、中から声が聞こえる。あーともうーともつかないその声は幼く、恐らくは女性だと思われた。
「ちょっと、アンタ」
「んー。あー?」
とり合えず話し掛けて見ると、黒い物体から返事が帰ってきた。今のを返事ととって良いのかどうかは分からないが、言葉と同時に黒い物体は消えうせ、中の少女が姿を表わしたのだから良いだろう。
赤い紐と黒い服。それから白い服で、金髪に赤いリボン。霊夢が見た順番に並べると、こうなる。というのも、霊夢が女性を見る時、最初に胸を見る。まるでそこに顔と名札があるんだと言わんばかりに、胸を見る。それからとって付けたかのように、一応顔を合わせる意味でも顔を見るのだ。
「アンタ、見たことないお……いや、顔ね」
「私もおねーさんは見たことない」
「アンタ、名前は?」
「ルーミア。妖怪」
妖怪、と聞いて霊夢がピクリと反応する。あまり記憶力の良い方ではない霊夢でも、ようやく巫女としての本業を思い出したらしい。異変に気付いているかは定かではないが。
「ふぅん。ルーミア。ルーミアね。よし、アンタ、目を瞑りなさい」
「なんで」
「良いから」
「あー。んー」
素直に目を瞑るルーミアの背後に回り、そして両手を伸ばす。
霊夢からして見れば、名前と胸のサイズはセットなのだ。サイズと大きさを言われればアイツの事だな、と分かるほど霊夢は胸で人を覚えている。無論紫の様に触らせてくれない者も居るが、というかそれが大半だが、ざっと見ただけで霊夢にはサイズが分かるから問題ない。
だから霊夢は躊躇なくルーミアの胸を揉んだ。少女の見た目同様に、まだ膨らみかけの身体をまさぐった。撫でて愛でて擦った。
「んー? んー!?」
ところがルーミアからして見ればたまったものではない。何が哀しくて初対面の同性に胸を揉まれなければならないのだ。その為必死に暴れ、霊夢の魔の手から逃れる。顔は恥ずかしさで真っ赤に染まり、目尻には涙が溜まっている。その手の人が見れば却って襲われる表情だが、ルーミアにはそんな事は分からない。ちなみに霊夢はその手の人だった。
「良い表情するじゃない、そそるわ。その芽吹き途中の苺、貰ったぁ!」
「いやー!」
はて、これのどこが異変解決なのだろうか。どう見ても犯罪現場である。
と、そこに水色の少女がやってくる。背中の羽を見るに人間ではなく妖精だろう。ルーミアと同じく少女の様な姿をした彼女は二人を見つけるや否や声を荒げる。
「ルーミア! 何やってんの!?」
「チルノ! 助けて!」
チルノ、と呼ばれた青い服を来た少女は二人よりも上空を飛んでいた。その為、急降下をもって二人に接近する。状況を分からないが、ルーミアが襲われていると言う事だけは理解出来たらしい。
「おい、そこの馬鹿! ルーミアから離れろ!」
「ちっ」
チルノが二人の間に割って入る様に飛び込む。以下に女性が好きでも激突は体が持たない。仕方なく霊夢はルーミアの胸から手を放し、一旦距離をおく。一方のルーミアはというと、すっかりチルノの後ろでベソをかいていた。
異変が起きている真っ昼間に胸を揉まれて平然としている奴がいたら、その方が寧ろ異変なのだが、霊夢からしてみればそんな事はどうでも良かった。
「アンタ、ルーミアに何してたのかは知らないけど、あたいの親友泣かせて唯ですむと思ってないでしょうね?」
「チルノ……」
貞操の危機を救って貰っただけではなく、ここまで啖呵を切られたらもう黙って居られない。元々チルノの事を好いていたルーミアだが、これで完全に恋に落ちきったと言っていいだろう。その実チルノもチルノで一応は知らない人間の前である手前、「親友」と称したが、正直な所親友以上に思っている。唯、言い出す切っ掛けと勇気が沸かないだけで、それ以上の関係になれるのであれば喜んでなるつもりだ。
だから、偶然にもルーミアを見つけた時は酷くドキドキしたチルノだが、近寄って見ればより動揺する状況だったので、こうして大見得を切っていると言うわけだ。
「何って、見りゃ分かるでしょ。スキンシップよ」
「お前のスキンシップは相手を泣かせることか」
「何で泣くのよ、ちょっと揉んだ位で」
「は?」
「え?」
てんで話が噛み合わない。しっちゃかめっちゃかも良い所である。スキンシップに揉むも泣くもないだろうに、一体目の前の巫女は何を言っているのだろうか。妖精と人間の言葉は似て比なるものに違いない、チルノはそう思った。そう思わないとやってられないと言うのもあったが。
霊夢も霊夢ではてと思っていた。それもそのはず、霊夢にとってのスキンシップは先程の行動なのだから。だから何故チルノが怒っているのかが分かっていないようだ。
「とにかく、そう言うのはどっか余所でやんなさいよ。ここからだったらあの紅い館が近いから」
「そこに女は居るのよね?」
「掃いて捨てるほど一杯居るよ」
「ほう……」
目の前の巫女の目が燦然と輝く。良く分からないが、この巫女はマトモに相手をしてはならない人種だと言う事だけは理解したチルノだった。
指を指しながら言ったチルノの言葉に口許を拭いながら―チルノからすれば、何故今の会話の流れで涎を拭いたのかは分からないが―、霊夢がその方向を見遣る。そこには確かに紅い館の様な物が見え、門の傍には微かに人影が見える。その瞬間、霊夢は両目をカッと見開き、次の瞬間にはチルノとルーミアの前から姿を消していた。余りにも突然の出来事だったのでチルノは咄嗟に反応できなかったが、まぁ良く考えれば変態が一人居なくなっただけの事である。何の事はない、平和が戻ってきたのだ。さてと思いなおし、背中に隠れていたルーミアに声を掛ける。
「ルーミア、もう大丈夫だよ。あの馬鹿はあたいが追い払ったから」
「そうなの……?」
実際は新たな餌を求めて旅立っただけなのだが、そんな事二人が知る由はない。チルノにとってはルーミアが無事ならばそれで良いのだ。
そのルーミアがおそるおそるチルノの背中から顔を出す。手だけは放さず、今度はチルノと向かい合う形になる。
「ね、居ないでしょ?」
「本当。チルノ……ありがとう」
そのままチルノの胸の中に顔をうずめるルーミアに、ようやく緊張が解けたのか、顔を真っ赤にする。どうした物かと両手をわきわきと動かし、ぎこちない動作でルーミアを抱き締めようとする。切っ掛けさえあれば、と普段から思って居たチルノである。これは一世一代のチャンスに違いない。そう思い立ち、強く抱き締める。
「ル、ルーミアは弱っちいから、最強のあたいが守ってあげる」
「……うん」
「だ、だからあたいから離れちゃ駄目だかんね?」
「うん……ずっと、一緒」
変な巫女に揉みしだかれて最悪の一日かと思って居たルーミアだが、まさか意中のチルノから告白がきけるとは。まさに災い転じて、と言う奴である。
もう気がつけば二人の頭から変態巫女の事がすっかり抜けていた。目の前の愛に比べたら異変も何のその、と言う事だろう。
1面・ルーミア&2面・チルノ CLEAR!
03.
チルノの指差した先は、紅い館の門だった。そこには門番らしき女性が一人、壁に寄りかかり目を瞑っている。それを確認して、霊夢の目は更に輝きを増す。このままあと数分空を滑降していたら、恐らく涎が飛行機雲の様になるだろう。誰もそんな風景は見たくないし、霊夢とて恥じらいはある。起こさない様に慎重に地上へ降り、そろりそろりと歩いて近づく。
(ふっ、さっきの微乳二人共とは違って、良い乳してんじゃないの)
しまりの無い口許からは荒く息が漏れているので、抜き足も差し足も全く意味はない。と、霊夢がその手を最大限まで伸ばせばその身体に届こうかと言う距離にまで近づいた時、突然門番の女性が姿を消した。実際に霊夢はその女性の胸を揉みしだくべく手を伸ばしており、それは同時に女性が唯姿を消しただけではなく、その場からいなくなっていると言う事に他ならない。
咄嗟の事に動揺する霊夢だが、まかりなりにも巫女である。それも唯の巫女ではなく、幻想郷の大賢者、八雲紫に惚れ込まれ、八雲紫の元で修行をした巫女だ。自分の斜め前から飛んできたナイフを後退しながら交わし、視線をその投擲の主へと向ける。
しかし、目の前には誰も居なかった。不思議に思い一歩足を前に踏み出した瞬間、首元に冷たい感触が走る。
「館に入る際にはまず許可を。最も、貴女の様な者に許可など降りませんが」
地面に刺さっていた筈のナイフが地面にない。居るはずのない人影が背後にある。
普通のものならそれだけでパニックをおこしそうなものだが、何故か霊夢は落ち着いていた。
「折角だから顔を見せなさいよ。メイドってのは客に顔も見せないの?」
「貴女が客なら見せますが、生憎本日この館に来客の予定はございません。とっととお引取り下さい」
取り付く島もないとはこの事だろうか。何時の間にか左腕を掴まれており、抜け出そうにも抜け出せない。首元に加え、耳元にも鋭い言葉の武器である。
しかし霊夢は慌てない。会話をしながら、隙を探す。
「ところで、さっきまでここに居た良いおっぱいの主は知らない?」
「……先程連れ戻しました。見間違いかと思ってたけれど、本当にそんな事をしようとしてたのね」
「そこにおっぱいがあるから揉むのよ。否、揉まないおっぱいはおっぱいじゃないわ」
「この腕へし折って良い?」
「あ、やめて。痛い、凄く痛い」
霊夢には見えないが、メイドの少女、咲夜は凄くげんなりしている。当たり前である、こんな変態が館に乗り込んできたら一大事に他ならない。彼女が仕える館の主やその妹、あるいは親友などといった、咲夜にとっては守らねばならない存在が何人も居る。そんな者達の前にこの変態巫女を通してしまったらきっと、明日からマトモな食事をくいっぱぐれる事になるだろう。
それに咲夜にとって、この館の主であるレミリア・スカーレットは何物にも変えがたい存在であるが、実の所、吸血鬼として何百年も生きているレミリアにとって、咲夜は頼もしい従者であると同時にからかい甲斐のある娘みたいなものだ。だから何かとちょっかいを出してくる事が多く、レミリアと霊夢はもしかしたら通じる物があるかも知れない。もしここでレミリア(変態)と霊夢(変態)が混じり合ったら、どんな化学反応を起こされるか分かったものではない。二人の間で解決してくれれば良いのだが、十中八九レミリアは咲夜を巻き込むだろう。そしてそれが手に取る様に分かるだけに、咲夜としては霊夢を館内に入れるわけにはいかなかった。
しかし、このままではいかないのは霊夢も同様である。霊夢には館内に誰が居るのかなど分からないが、きっと誰かしらが居るに違いない。ここで攻められる側に回っている場合ではないのだ。
「痛いのが嫌でしたら、お帰り下さい」
「……ん」
「? なんですか?」
「ならん!」
「!」
カッと霊夢は目を開き、腹を括る。まだ見ぬ胸の為に反撃を開始する。
ゴキッ、と鈍い音が響き、するりと霊夢が咲夜の拘束から逃れる。そして、瞬時に振り向き、右腕で咲夜の胸をムンズと掴む。
「肉を切らせて骨を断つ! 関節を外してあんたのおっぱいを揉むわ!」
「ひっ」
もにゅん。わざと自分から脱臼してまで得た胸の感触は、今日一日の中で最高の手触りのものだった。
「ふっは、やっぱりこうじゃなきゃ! よし、次ぃ!」
硬直したままの咲夜を見る事無く、踵を返し玄関へと走り去る霊夢。対して咲夜は、まるで放心したかの様にその場で固まったまま動かず、やがて霊夢が見えなくなるとへなへなとその場に座りこんでしまった。
「さ、触られた……揉まれた……」
咲夜にしてみれば、霊夢が訪れた理由は当然自らの主が起こした異変に関することだと思ったのだが、実はそれは大きな違いで、単になりゆきである。そんな事はつゆ知らず、加えて言えば異変を討伐する巫女があんな変態だとも知らなかった。咲夜の唯一にして最大の誤算はまさにその点で、更に言えば霊夢やレミリアの様な、性癖を剥きだしに出来る者への対応が下手だったのが運のつきである。
「幻想郷なんて嫌いよ……ぐすっ……」
紫が聞いたら一緒に泣きそうなセリフだが、多分紫も泣いて良い。
完全瀟洒なメイドは今日、たった一度のセクハラに完敗した。
3面・紅美鈴&5面・十六夜咲夜 CLEAR!
04.
レミリア・スカーレットには妹が居る。名前はフランドール・スカーレットと言い、姉と同じく吸血鬼だ。とは言え見た目や中身はまるで違う。積極的に外に出る姉と違い、あまりその姿を外で見る事は出来ない。その為、紅魔館の内情を知らない者達の間では、やれ地下に幽閉されているだの、気が狂っているだの噂が色々と飛び交って居るようだが、フランドールに言わせれば狂って居るのは姉の方である。
まず、すぐ女に手を出す。
妹であるフランドールは勿論、この幻想郷に来る前からの知り合いだと言う魔女のパチュリーにもちょっかいを出す。まぁ、これに関してはパチュリーの方がレミリアを好いているらしく拒む仕草がないので置いておくとして、パチュリーのお抱え司書である小悪魔にも手を出す。その事でパチュリーとは以前喧嘩になった事があるのだが、全く懲りる事無く、最近では妖精メイドにも手を出す始末である。唯一の血の繋がった家族がこれでは幻滅しても仕方がない。その癖、変なところで淑女であるレミリアは手を出した相手に受けがよく、今まで大きなトラブルがないどころかちょっとしたファンクラブができるくらいだと言うのだからタチが悪い。
そんな訳で、姉であるレミリアにも外の世界にも対して期待が出来ないあまり、本人も知らない間に引きこもり癖がついてしまったのだ。
とは言え、まぁ、たまには部屋を出る時もある。三度の食事はなるたけ家族揃ってするのがルールだし、読書以外に特に趣味のないフランドールの部屋に、暇を潰せるものは多くない。それに、部屋でじっとしていると誰かしらが平和を乱しにやってくるのだ。それは概ね二人で、毎日やってきてはレミリアの話や恋の相談をしにやってくるパチュリーか、後はその当の本人であるレミリアのどちらかなのだから面倒になる。寧ろ、片方だけなら良い方で、日によってはパチュリーの長ったらしいレミリアの観察日記を聞かされた後、そのレミリアにセクハラをされる日に至っては最悪なのは間違いない。もしかしたら気が狂っているのはフランドールだというのも間違っていないのかもしれない。何しろそんなこんなで毎日苛々させられているのだから。
ちなみに、今日は運の悪い日だったらしい。偶にはと思って自室を出て数分後にはパチュリーに捕まり、彼女の自室である図書館に引きずり込まれていた。
「……それでね。レミィったら、私の為にコーヒーを淹れてくれてたのよ」
「へー。あー、凄いね」
何が哀しくて人の惚気なんぞ聞かなくてはいけないのだろうか。しかもその相手が自身の姉であるのは陰謀としか思えない。
「妹様はあまりレミィの事を良く思ってないみたいですね」
「当たり前でしょ。あいつのどこを好めって言うのよ」
「それは妹様の自由です。ちなみに私は全部好きですわ」
「……あっそ」
だれかこいつをとめてくれ。フランドールがそう思った瞬間、乱暴に扉が開く音がした。
はて不憫な妹の願いが通じたのだろうか、そうフランドールは振り向き、そしてすぐに手近にあった本をブン投げた。
「危ないわね、この館は来訪者に本をブン投げるのがもてなしなの?」
「この館では、両手に泣いてる女性を抱えて喜んでる変態を来訪者とは言わないのよ!」
レミリアより酷いのが来た。何を隠そう霊夢なのだが、フランドールにしてみれば変態は全員変態だ。片方にはパチュリーのお抱え司書を、もう片方には緑髪の妖精を抱きかかえてご満悦の笑顔である。正確には緑髪の妖精はこの紅魔館の住人ではなかったが、同じく霊夢に抱えられている小悪魔と仲が良く、良く会いに来る。今日も二人で逢引の予定だったのだが、夢は儚く潰え、霊夢によって揉みしだかれた。おかげですっかりぐったりとした二人はぺいっと霊夢に床に捨てられても、マトモに反応さえしなかった。否、出来なかったという方が正しいのだろう。
「さて、あんたらのどっちかがお嬢様とやら?」
「レミィに何の用かしら」
すっとパチュリーが席を立つ。
「いや、この館の主に会いたくてね。レミィってのが名前?」
「……貴女、巫女ね」
咲夜もそうだが、パチュリーにとっても今回レミリアが起こした異変について巫女が来ると言う事は分かっていた。いずれ巫女が来て、レミリアを倒しに来ると言う事もだ。この異変は主にレミリアが起こしたものではあるが、パチュリーも協力している。レミリアに頼まれたら例え異変でも断らないのがパチュリーである。
「レミィから聞いてるわ。意外に若い巫女ね」
パチュリーの言葉に何も答えず、鋭い目つきで睨み返す霊夢。
「……なかなか、出来そうね」
パタリ、と本を閉じ、パチュリーもまた、霊夢を見返す。愛するレミリアの為に、この巫女はここで倒しておかなければならないと思ったのだろう。
しかし、そんな二人を見ても、フランドールは違う感想を抱いていた。
それは普段変わり者の姉の相手をしているフランドールだからこそ分かる感覚で、パチュリーには分からないようだ。霊夢の鋭い視線はパチュリーの顔のやや下辺りにロックオンされており、決してずれる事はない。その目線を確認して、二人に聞こえないようフランドールは溜息を吐く。つまりは、同類と言う事である。類は友を呼ぶと言うが、増えてほしくない人種だってある。だというのに、どうしてそう言う連中に限ってフランドールの周りに集まるのだろうか。それは勿論誰にも分からない。
「そのレミィって奴の所まで案内しなさい」
「言われて案内すると思う?」
「いや、しない」
「そう、しない」
(して良いから。連れて行って構わないから。とっととどっかに行ってくんないかな)
げんなりしつつも、口は挟まない。下手に関係者になって、セクハラされるのはごめんだ、と言うのもあるが、基本的にフランドールは引っ込み思案なのである。でなければ、いかに姉の愛が激しくとも引きこもったりはしないだろう。フランドールからしてみれば多くない趣味の内の一つが読書で、読書をするにはこの図書館に来る事になるだけで、決してパチュリーと遊ぶために来たわけでもないのだ。弾幕だかなんだか知らないが、見ず知らずの他人と汗をかく行為など絶対に遠慮したい。出来る事なら自室の隅っこで体育座りをしていたいと思うくらいである。
両者の視線が混ざり、ぶつかり合う。じりじりと聞こえない音まで聞こえてきそうだ。
ぐっと霊夢が足を踏み込み、
パチュリーがなにやら魔法の詠唱を始めた、その瞬間。
バタンと乱暴に扉が開く音がして、今度ははっきりと外に溜息を吐き出した。どうやら今日は最悪の一日になるに違いない。
霊夢の背後の図書館のドアを開けて威風堂々と腕を組んでいるのは、何を隠そうレミリア本人である。
しかし霊夢はそんなレミリアを一瞥しただけで、再びパチュリーに視線を戻した。これにはパチュリーも驚きを隠せない。レミリアに会わせない為に戦おうとしていたのに、本人が自分から来てしまっただけではなく、霊夢がレミリアに反応しないのだ。当然だろう。
だから、動揺したままパチュリーはレミリアに声を掛けた。勿論、目の前の巫女からは目を放さずに。
「レミィ。どうしてここに」
「おいおい、挨拶だねぇ。理由がなきゃ、お前に会いに来ちゃいけないのかい?」
「別に、そう言うわけじゃないわよ」
「うん、やっぱりお前は可愛いな。一日に一回はお前の顔を見なきゃ気が済まないよ」
「もう……」
「……うざっ」
最後の言葉はフランドールのものである。他に人が、ましてや館とは無関係の者が居るのにもかかわらずこれである。レミリアにとって呼吸と女性を口説く事に違いはない。そんなレミリアにパチュリーを含む館の者は骨抜きにされているが、正直言ってフランドールからすれば鬱陶しいことこの上ない。
見れば先ほどまでの真面目な空気はどこへやら、パチュリーはあちこちに視線を彷徨わせ、頬を赤くしている。何が恥ずかしいのかレミリアの顔は見ない。乙女のつもりか、とフランドールは内心毒づく。
しかし、この状況に納得の言って無い者がもう一人居た。
「ま、待って!」
こちらも真面目な表情はとうに消えうせ、パチュリー以上に慌てた様子である。
「あ、アンタがレミリア?」
「ん。いかにもレミリア・スカーレットだよ」
「だ、だってアンタ……」
仮にも、本当に仮にもだが、この館の主であるレミリアに対して指を指す霊夢。あんぐりと口を開け、レミリアの頭からつま先まで見渡して、眉を顰める。怪訝そうな、というよりは残念そうな表情である。
事実、霊夢は今ショックを受けている。霊夢からして見れば、これだけ立派な館の主と言う事に、自身の性癖も重なって、かなりの妄想をしていたらしい。
「どっからどうみても、アンタ、唯のロリボディじゃない! 館の主でしょ!?」
失礼にも程がある。いつから館の主は豊満な体の持ち主でなければならないという決まりが出来たのだろうか。これにはパチュリーもがっくりと肩を落とし、フランドールに至ってはもうそろそろ本気でこの図書館を去ろうかと考えていた。しかしそうするには霊夢の真横を通過し、レミリアにどいてもらわねばならない。滅多なことでは自分から話し掛けたくない二人である。吸血鬼ながら、頭痛がしそうだった。
とは言え、果たしてこの言葉にレミリアがどう反応するのか。普段レミリアに意見するものなどフランドールを除いて誰一人居ない。そのフランドールの言葉も右から左、理解するよりも早く身体に手を出そうとするのだから、言葉より実力行使での抵抗の方が手っ取り早くなる。そう言う意味では、レミリアは正に唯我独尊だとも言える。
「……ふふ……」
「レミィ?」
「……言ってくれる……」
「レ、レミィ。巫女の言葉なんて気にしちゃ駄目よ。貴方には貴方の魅力があるわ」
フォローになっているのかいないのか、パチュリーがレミリアに言う。
やや下を向いてくつくつと笑ってるので、レミリアの表情は誰にも見えない。唯、まぁ、幾らレミリアが変態でも、まさか喜びはしないだろう。世の中にはそういう類の方向性に長けた変態も居るが。
やがて顔を上げるレミリア。その表情は不適な笑みで覆われている。この状況下、このメンバーでその表情にドキリとするのはパチュリーだけで、フランドールはもう関わらないように机の上の本を読むふりをして顔を隠しているし、霊夢に至っては言ってやった、くらいの表情をしている。妙に晴れ晴れとしているのが憎らしい。
「ふっ……はははははは! 甘いわ!」
「!」
「レミィ!?」
ひとしきり笑った後、霊夢に人差し指を突きつけるレミリア。
かつかつと数歩歩き、霊夢に指が触れるくらいにまで近づく。
「貴女は女性を乳でしか見ていないみたいだけど、それは間違いよ」
「何ですって?」
「人の魅力は人それぞれさ。確かにパチェは乳も良いが、それ以上に口許が良い。アイツの笑った時の口許はどんなワインよりも格別さ。
咲夜なら手だな。色々と負担を掛けすぎた所為でそこらの女の子の手とはまた違うが、それが良いんだ。職人気質とでも呼ぶべきかな。
美鈴は足だね。スリットから覗くあの足はヤバイだろう。ありゃ狙ってるとしか思えないね。何をって、私のハートをだよ。」
「……あの赤いのは」
霊夢が指差す先にはフランドール。本人は本で顔を隠しているのでそのやり取りには気付いていないが、会話は耳に届いていた。
(私の名前が出てこないのはなんでよ。いや、別に良いんだけどさ。ほっといて欲しいんだから良いんだけどさ)
そんなフランドールの様子にパチュリーはかすかに微笑む。素直になれない妹に果たして姉は気付いているのだろうか。それは定かではなかったが、少なくともパチュリーには伝わった。
ちなみに、パチュリーは普段笑わない。あまり感情を表に出すタイプではないのだ。なので、霊夢にとってはある意味、今のがパチュリーの笑顔を見る最初で最後のチャンスだったのだが、レミリアと向き合っていたので残念ながら見ていなかった。
「フランか。フランは特別さ。欠点なんてないよ、何てったって私の妹だからね。今の内に言っておくが、フランにちょっとでも疚しい感情を持って触れてみろ。お前の首と胴体が離れる事になる」
「……へぇ」
本で隠れているのは顔の横までだ。紅くなっている耳までは、隠せない。レミリアの角度からは見えないが、パチュリーには見えている。
(良いお姉様じゃない)
きっとフランドールは否定するだろうけれど。パチュリーはそう思った。
「それに、これはお前にも当て嵌まるよ。私は西洋生まれだからね、黒髪はそそる。
でも、お前の一番良い所は髪じゃない、瞳だ。お前の瞳は凄く良い。真っ直ぐで力強くて澄み切ってる。綺麗な瞳だ」
「……! (やだ、私ときめいてる!?)」
なんのこっちゃ、である。
レミリアよりも霊夢の方が背が高いため、必然的に見下す形になっている。更に今のレミリアの言葉で更に下を向いてしまった。フランドールとどちらの方が顔を赤くしているのだろうか。
「おいおい、折角人が褒めたのに目を逸らさないでくれよ」
「あっ……」
霊夢の顎を人差し指で触り、そのまま上―上と言っても、あくまでレミリアの目線に合わせるためなので、高くはない―へと持ち上げる。少しばかり潤んだ瞳と、火照った頬。それを見て、レミリアは最大限に微笑む。
「可愛い顔も出来るじゃないか。良いよ、紅霧は止めてあげるよ。その代わり、ちょっと、私の部屋に来てもらおうか」
「え、ええ? 何で?」
「触りたいんだろ。揉みたいんだろ。大丈夫、夜はこれからだ」
「あうう……」
そのまま霊夢の手を掴み、図書館を去ろうとするレミリア。しかしそうは問屋が卸さなかった。
凄まじい勢いで一冊の本がレミリアと霊夢の間に飛んでくる。霊夢は勘で、レミリアは持ち前の運動神経でそれをかわす。飛んできた方向には、フランドールが烈火の炎を纏い仁王立ちしていた。先程まで顔を隠していた本を投げたのだろう。恥ずかしさで赤かった顔は、今や憤怒の表情で満ちている。パチュリーはそんなフランドールを止めはしない。確かにレミリアの事を好いてはいるが、根本的に冷静である。止めに入ったところで力ではフランドールに勝てないと考えたのだろう。
或いは、パチュリーも同じ考えだったのかもしれない。
自分の目の前で、自分の好きな者が自分以外の誰かと仲良くしていたら、哀しくなる。
それが例え魔法遣いでも、吸血鬼でも。
親友でも、妹でも。
だからパチュリーは、フランドールを放置するという形を通して、半ばレミリアに訴えているのかもしれない。
「いや、違うのよフラン。まずは聞いて頂戴」
「お姉様の……」
「お、お姉様の?」
振り返ってくれとは言わないまでも、せめて優しくして欲しい。
レミリアにとってフランドールは妹で、パチュリーは親友なのかもしれないが。
彼女達には彼女達の想いがある。
だから、
「お姉様の、馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「にぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」
たまには罰を受けなさい。
静かにパチュリーは、そう呟いた。
滅多に見る事の出来ない、微笑みのままで。
05.
「流石は霊夢ね、その気になれば解決してくれるじゃない」
「ん、まぁね」
「しかも最近は趣味の方も大人しくなって。私嬉しいわ、やっと分かってくれたのね」
「ねぇ紫」
「なぁに、霊夢」
「ちょっと一緒にお風呂入らない?」
「霊夢ぅ。分かってくれたんじゃないの?」
「ええ、確かに私は間違ってたわ。人の魅力は人それぞれ。今までは唯揉めば良いって思ってたけど、違ったわ。大事なのはシチュエーションよ」
「霊夢の馬鹿、もう知らない!」
「ああっ、紫!」
>東方妖々夢へ続く
続編に期待をこめて
「んー姉ちゃんええ乳しとるのー」とか言ってる
に10ジンバブエドル
ところで>13を想像してしまって想像を絶する悲しみが俺を襲った。
汚い。さすが>13きたない。お前ハイスラでボコるは
この紅魔館でお話一本読んでみたいですね
天性の才能だけでは隠された乳には気付けんのだよ!
それはそうとゆかりん可愛いwww苦労人っすねwww
この霊夢には是非とも月の都へ行って頂きたい。
Innocent Keyのあたまわるい歌を思い出しました。。。あうあ。
以下、気になった点をば。
最も、霊夢にはそう見え、 -> 尤も、霊夢にはそう見え、
状況を分からないが、 -> 状況は分からないが、
以下に女性が好きでも -> 如何に女性が好きでも
勇気が沸かないだけで、 -> 勇気が湧かないだけで、
指を指しながら -> 指を差しながら (次章冒頭と合わせるとこちらの方が。)
最も、貴女の様な者に許可など降りませんが -> 尤も、貴女の様な者に許可など下りませんが
どんな化学反応を起こされるか -> どんな化学反応を起こすか (この場合レミリアと霊夢が起こすのではと)
レミリアにとって呼吸と女性を口説く事に違いはない。 -> レミリアにとって呼吸とは女性を口説く事に違いない。
納得の言って無い -> 納得の行って無い
指を指す霊夢。 -> 指を差す霊夢。
でもないなw
これはひどいとコメントしたくなる異聞紅魔郷だがレミリアと紫様が可愛かったので全て許せ
るw
赤面物の内容じゃあないですかあ、やあだあ!!!
(バカにしてる訳じゃ無いんですよ···?)