Coolier - 新生・東方創想話

走れフラン

2010/08/14 15:34:09
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*1走れメロスのパロディになります。
  こういうのが苦手な人はブラウザの戻るボタンを押してください。

*2作品集122『悪魔のわがままな人形遣い』の設定をほんの少しだけ引っ張ってます。
  でも、アリスがレミリアをレミィと呼ぶことだけ押さえておけば、後は読んでなくても問題ありません。










 フランドールは激怒した。必ず、かの色欲放蕩の姉を更生させねばならぬと決意した。
フランに運命はわからぬ。フランは、姉の恋人である。姉を想い、花嫁修業をして暮らしてきた。
だから浮気に対しては、人一倍敏感であった。

きょう未明フランは地下室を出発し、図書館を越え廊下を歩き、館の4階にやって来た。
フランには父も、母も無い。500の、どうしようもない姉の2人暮らし・・・・・・だった。
この姉は、そこら中の少女に、手当たり次第に手を出していた。その上誰とも別れる様子が無い。
フランは、それゆえ、姉の動向を監視しに、はるばる4階までやって来たのだ。
先ず、妖精メイドから情報を集め、それから廊下をぶらぶら歩いた。

フランには親友がいた。古明地こいしである。今はこの紅魔館の食堂で食事をしている。
今朝方まで一緒に遊んでて、食事をしたら帰るらしい。

歩いているうちにフランは、館の様子を怪しく思った。なんか桃色である。
まだ夜明け前なので、ひっそりしているのは当たり前だが、けれどもそのせいばかりでは無く、館全体が妙に怪しい。
敏感なフランは、事情を察した。しばらく歩くと人形遣いに逢ったので、何があったのか、強く問いただした。
人形遣いは、頬を染め、あたりをはばかる低声で、わずかに答えた。

「レミィがね、激しかったの」
「・・・・・・」
「月が紅いから、というのよ。今夜は三日月なのにね」
「一緒にいたのはあなただけ?」
「いいえ、はじめは咲夜を。それから、パチュリーを。最後に私だったわ」
「なんてこと。相変わらず節操無しね」
「そうね、節操無しね。でも、それでこそレミィなのよ」

聞いて、フランは激怒した。「もう我慢できない!」
フランは直情的な少女であった。そのままの勢いで姉の寝室に突っ込んだ。

「何の用かしらフラン」

レミリア・スカーレットは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。
その姉の顔は、疲労の色があり、今夜が如何な夜であったかを偲ばせる。

「お姉様、浮気は許さないわ」
「浮気?」

姉は、憫笑した。

「私は浮気なんてしてないわよ」
「嘘よ!」
「嘘じゃないわ。なぜ姉を疑うの。なんの証拠も無いのに」

フランは足もとに視線を落とし瞬時に考えた。人形遣いも魔女もメイドも、姉の前では無実を証言するだろう。
姉の浮気を証明するには、心でも読めないと、追い詰めることはできない。

「お姉様、外出許可をちょうだい」
「ダメよ。あなたを外に出したら、何するか分からないもの」
「何もしないし、明日の夜明けまでには帰ってくるわ。約束する」
「逃がした小鳥はそうそう帰ってこないものよ」
「いいえ。帰ってくるわ。私は約束を守るもの。そんなに私が信じられないのならば、
 いいわ。こいしを置いて行くわ。もし私が明日の夜明けまでに帰ってこなかったら、こいしを好きにしなさい」

それを聞いて姉は、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言う。
どうせ外に出たら、浮かれて約束なんて忘れるに決まっている。ここは願いを聞いてやり、外に出してやるのも面白い。
そうして明日の夜明けにこいしちゃんを愛でて、その後フランを捕らえ、お仕置きするのも悪くない。

「その願い、聞いてあげるわ。こいしちゃんを呼んできなさい。明日の夜明けまでに帰ってくるのよ。
 少しでも遅れたら、こいしちゃんは好きにさせてもらうわ。なんならちょっと遅れてきなさい。
 そうしたら、2人まとめて可愛がってあげるから」

フランは口惜しく、地団駄踏んだ。
こいしはすぐに姉の寝室に召された。姉の、頭の天辺からつま先までを舐め回すような視線に、
身の危険を感じたこいしは、事情を説明する前に逃げ出したが、あっさりと姉に捕まった。

「お姉様、明日の夜明けまでは手を出してはだめよ」
「わかってるわ。明日の夜明けまでね。太陽が一片でも見えたら、こいしちゃんは私のものよ」
「お姉さん! ちょっと! 放してください!」

こしいは必死にもがいていたが、熟練した姉の手から逃れられるはずも無く、程なくして抵抗をやめた。




フランは、すぐに出発した。初夏、燦々と太陽が輝いていた。
フランはその朝、日傘を手に急ぎに急いで、地霊殿に到着したのは、その日の夕方。
地底の住民たちも仕事を終わらせ家路についている。こいしの姉、古明地さとりも仕事を終わらせ一息ついていた。
よろよろ飛んでくるフランの、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。事情を聞いてくる。

「時間が無いの。第三の目を貸して」
「貸してと言われて、おいそれと貸せるものではありません」

さとりは強情だった。
フランは想像した。
こいしが、頬を赤くし、「お姉ちゃん、私、好きな人が・・・・・・」
想像しきる前に、さとりは頭から伸びたコードを引きちぎった。
それを受け取ると、フランは、今来た方向に引き返した。




地霊殿を出て、旧都を過ぎ、そろそろ地底も半ばに到達した頃、フランは、はたと、とまった。
見よ、前方の川を。猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木端微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。
吸血鬼は流水を渡れない。フランは茫然と、立ちすくんだ。あたりを見渡したが、渡れそうな場所は無い。

「止まってなんていられないわ。道が無ければ作ればいいのよ」

フランは、レーヴァテインを川に叩きつける。数秒川底が見えるが、すぐに濁流に飲まれてしまう。
こんなところで諦めてはいられない。夜明けまでに帰らなければ、こいしは姉の毒牙にかかるだろう。
何度も何度も叩きつける。それでも道は開けない。

「おいおい、なんの騒ぎだ」

陽気な声がした。フランが振り返ると、頭に一本角を生やした鬼が、杯片手に興味深そうに見ていた。
フランは、藁にも縋る思いで事情を話す。

「なるほど。それなら、もう一度川を割ってくれないか。向こう岸まで運んでやろう」

フランは、レーヴァテインを叩きつける。
鬼は、フランを抱え、一歩、二歩、三歩で川底を歩き、濁流に飲まれる前に対岸までたどり着いた。

橋を直すという鬼に礼を述べて、フランは先を急いだ。一刻といえども、無駄には出来ない。
地底だからわからないが、すでに月も高く上ってしまっているだろう。




ぜいぜい荒い息をしながら飛び続け、飛びきって地上に出たが、
スペルの連続使用で魔力も枯渇し、ついに、がくりと地面に落ちた。
もはや蝿蚊ほどにも飛ぶ事もできない。草むらにごろりと転がった。
身体疲労すれば、精神もやられる。もうどうでもいいという根性が、心の隅に巣食った。

私は、よくよく不幸な妹ね。私は、きっとお仕置きされる。こいしもお姉様の愛人になる。
運命を操るお姉様を更生させるなんて、初めから出来なかったのかもしれない。
こいし、許して。あなたは私を待っているんでしょ。不安にかられながら待っているんでしょ。
私は飛んだよ。こいしを騙すつもりは無かったよ。信じて!
お姉様はきっとこいしを幸せにしてくれるよ。咲夜も、パチュリーも、人形遣いも、幸せそうだから。
心配しないで、私も一緒よ、2人で一緒にお姉様のものになりましょう。うふふ・・・・・・

ふと耳に、水の流れる音が聞こえた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
よろよろと起き上がって、見ると、岩の裂け目から、清水が湧き出ているのである。
水を両手で掬って、一口飲んだ。夢から覚めたような気がした。
飛べる。行こう。わずかながら希望が生まれた。空には満点の星が輝いていた。
日の出までには、まだ間がある。こいしが私を待っている。
いまはただその一事だ。飛べ! フラン。




私は信頼されている。先刻の、あの天使の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。
ああ、月が沈む。ずんずん沈む。待って。

妖怪妖精押しのけ、跳ねとばし、フランは紅い風のように飛んだ。
少しずつ沈んでゆく月の、何倍も早く飛んだ。
見える。はるか向うに小さく紅魔館の時計塔が見える。

「妹様!」 威勢のいい声が、風と共に聞えた。
「誰?」 フランは飛びながら尋ねた。
「美鈴です。もう、無駄です。飛ぶのはやめて下さい」
「まだよ。まだ夜は明けないわ」
「そういうではなくて、とにかくもう意味が無いのです」
「まだ月も沈んでいないわ」
「やめて下さい。飛ぶのをやめて下さい。これ以上進んでも妹様が傷つくだけです」
「私がどうなろうと問題ないわ。私の命すら問題ではない。邪魔をしないで美鈴」
「ああ、ならばもう止めません。間に合う間に合わないの話ではないのですが、
 もうお止めいたしません。どうぞご自分のやりたいようにやって下さい。」

まだ夜は明けぬ。最後の死力を尽くして、フランは飛んだ。
月は地平線に没し、東から一片の光が見えはじめた時、フランは疾風のごとく姉の部屋に突入した。間に合った。




「そこまでよ!」

こいしの顎を持ち上げ、今まさに唇を奪おうとしていたレミリアは動きを止める。

「こいし」

フランは眼に涙を浮かべて言った。

「私を殴って。力いっぱいに殴って。私は、途中で一度、悪い夢を見たの。
 もしこいしが殴ってくれないと、友達でいる資格が無いの。だから殴って」

こいしは、すべてを察した様子で、しかし首を横に振った。横に振ってから優しく微笑み、

「フランいいの。だって私、フランが戻ってこなければいいな、って思ってたんだから」













フランは、錆び付いた時計のように、首を姉に振った。

「お姉様、こいしには手をだすなって、あれほど言っておいたわよね」
「ええ、だから手は出してないわ。ずっとお話してただけで、ねっ、こいしちゃん」
「そうだよ、フラン。あとレミリアさん、こいしちゃん、はやめてよ。こいしって呼んで」
「ごめんなさい。今から一人前のレディになるのに、失礼だったわね。こいし」

フランは手をきゅっと握る。哀れ、右手の第三の目は握り潰される。
だがいらぬ。もうこんなものいらぬ。証拠など、証明など、初めから必要なかったのだ。

「お姉様、それは詭弁よ」

フランは激怒した。
必ず、この救いようの無いバカを力いっぱい殴らねばならぬと決意した。
フランは浮気を許さない。姉はフランのものである。姉が生まれた瞬間から、そう決まっているのだ。

「覚悟はいい?」
「是非も無し」

胸を張るレミリアに、フランの、容赦ないアッパーが、炸裂した。
天井を突き抜けて飛んでいくレミリア。身動きせず受けたのは、天晴れであるか、愚かであるか。
フランは、にやりと笑ってこいしを見る。こいしも、負けないぐらいににやりと笑う。

「一応聞くけど、諦める気、ある?」
「無いよ。ぜんぜん無いよ。フラン」
「今からはライバル同士ね。こいし」

硬く握手をする2人。あれも一つの友情か。物陰から様子を伺っていた、紅美鈴はひそかに呟いた。









「妖怪500年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」

ゆっくりと太陽が昇る。
屋根から、頭だけ生えているレミリアは、世の儚さを歌っていた。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
オチに悩みましたが、こういう形になりました。
題名を、飛べフラン、にすべきか最後まで考えました。だって走ってないもん。
後さとりんごめん。

誤字脱字指摘事項等あれば教えていただけるとうれしいです。
ではお粗末さまでした。
clo0001
http://twitter.com/clo0001
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コメント



0.2050簡易評価
7.100名前が無い程度の能力削除
もうみんなでにゃんにゃんしちゃえばいいじゃない。
9.90山の賢者削除
これも違う意味でカリスマか。
なんだか原型を留めていない気がする。
11.100tukai削除
これはひどいメロスですね。もう全員レミィの嫁でいいよ……。
地味にフランちゃんも酷くて、やっぱこいつら姉妹ですね。
13.70名前が無い程度の能力削除
潰され損のとある目玉に誰か言及してやれよw
14.10高純 透削除
いやいや、こいしはさとりの嫁でしょ。常識的に考えて。さとこいこそがジャスティスなのであって、レミこいなどもってのほかである。と言う、私の趣味を除けば話としては良かった……のかなぁ?
15.100名前が無い程度の能力削除
良し
16.100再開発削除
流石はお嬢様だぜぃ…話術だけでこいしを落としてしまった…。

そしてフランドールの服は破けて真っ裸なんですね、わかります。
18.無評価乃理削除
この紅魔館内で、美鈴は平気なんだろうか?
もしかして、美鈴も…!?
19.100名前が無い程度の能力削除
さすがお嬢様だ、俺達にできない事を平然t
欲望に忠実で今を全力で楽しむ姿こそお嬢様の魅力なのです
22.80名前が無い程度の能力削除
「(百合に)走れフラン」ですね。わかります。
23.70名前が無い程度の能力削除
第三の目を引きちぎる漢気を見せたのに、さとりが不憫でならぬ……!
25.80名前が無い程度の能力削除
なんというレミリアハーレム…!
27.90名前が無い程度の能力削除
なんてこったw
34.80名前が無い程度の能力削除
なにこれwww
35.100名前が無い程度の能力削除
妹様マジ外道
37.80名前が無い程度の能力削除
きた!メロスきた!これで勝つる!
こっちはまるで原形をとどめずぶっ飛んだなぁw
妹様の独占欲の強さは半端じゃないぜ!
51.80幻想削除
最後のセリフに笑いました。
ナイスカリスマ!
52.80名前が無い程度の能力削除
妹を寝取られ、サードアイを握り潰され。さとりさん不憫だなww
53.100名前が無い程度の能力削除
500のどうしようもない姉www
55.80名前が無い程度の能力削除
これはひどいwww
61.100名前が無い程度の能力削除
さとり様…
66.100サク_ウマ削除
畜生笑った。アレンジ見事でした。面白かったです。