Coolier - 新生・東方創想話

混ぜてよ危険

2010/10/14 23:20:28
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リリカ・プリズムリバーは現在、重度のノイローゼの真っ只中にある。





三姉妹の長女のルナサは常日頃から陰鬱としていた。
勿論それは彼女の元々の気質でもあるが、彼女自身の演奏の影響を直に受けているからでもある。

三姉妹の次女のメルランは常日頃から狂騒としていた。
勿論それは彼女の元々の気質でもあるが、彼女自身の演奏の影響を直に受けているからでもある。

三姉妹の三女のリリカは姉達と比べれば、そう極端な躁鬱の気を持っていなかった。
それは彼女の気質でもあり、自分の演奏が精神に直接与える影響が少ないからでもある。

ならば、リリカは三姉妹の中でいつも平静でいるのか。
答えはそうではない。
彼女の精神は、姉達の両極端な演奏で常時激震に晒されているのである。
無論、彼女は音に対してある程度の……というか、かなりの耐性を持っている。
だが、人間が体力の低下に伴って免疫が弱くなるのと同様に、精神的な疲れにより彼女のその耐性は薄くなることがあった。

まあつまりは、そういうことである。



「しくじった……」
廃洋館、リリカの私室。
先程、リリカがルナサの部屋を覗いて「妹だ! 手をあげろー!」とボケたのに対し、「下がる」と答えになってるのかなってないのかよく分からない返事をされて部屋に戻ってから数刻。
リリカはずっとぶつぶつと呟きながら枕に頭を埋めていた。

連日のコンサートをこなし、新しい音集めにも余年のなかった月だった。
あまり急激に活動的に過ごすと、反動で少し休みたくなる。
疲労も手伝って、リリカはここ数日ベッドに倒れこんで過ごす時間が長かったのだ。
……本当なら、冥界の方にでも遊びに行きながらのんびりとさまよっていれば良かったのであるが。
実際、今まで似たようなことがあったとき彼女はそうしていた。
だが疲労と永い時の経過が、姉達の元で休むことが如何に危険かということを一時的に忘れさせてしまったのである。
「なんでここに残ったかなぁ……」
今彼女は、ルナサの演奏の影響を強く受けて抑鬱状態に陥っていた。
「(動きたくないし……1つ位は新しい音仕入れたいのに……次のコンサート後2日なのに……休みたいのに……)」
ゴロンゴロンとベッドの上を転がる。気を紛らわせるのにキーボードを手にする気力も起きなかった。
まあ、手にしなくても演奏は出来るのだが。
「ああ、練炭……居間に、ないよね……ちょっとだけメルラン姉さんの演奏聞きに行っても……ぐぐぐ」
気力を振り絞って大音量で演奏を開始してみるも、姉達がそれぞれ自室でしている演奏をかき消すことは出来なかった。
どうやら覚悟を決めるしかないらしい、とリリカは顔を上げる。上げたつもりだったが、現実には下を向いた状態から数cm顎が上がっただけであった。

このまま鬱の状態を続けて何も出来なくなるのは非常にまずい。だが、一時的にでもそれを回避する手段は簡単なのである。
姉の―――メルランの演奏を聞けばいい。今度は躁状態に偏っちゃうリスクがあるんだけどね、とリリカは自嘲気味に呟きながらベッドから転げ落ち、そのまま立ち上がらずゴロゴロとドアの前まで転がっていった。
片手をカーペットについてドアノブに手を伸ばしてなんとか自室を後にする。そしてローリング土下座を繰り返しながら、メルランの部屋の前に辿り着いた。
「姉さん……」
ドアを開けると、開ける前から聞こえていた騒音が何倍もの威力になってリリカの全身に襲いかかってきた。
「リリカじゃない、もっとシャキッとしなさいよ! ぐるぐるー!」
「イエッサー!」
ドアを閉めてリリカは逃げ出した。この間わずか2秒。

「(やばいやばいこれは予想以上にやばいどう考えても異常だって今までこんなに影響受けやすいことってあったっけ? ないよね? いやある筈ないよこんなテンションぶっ飛んだ事ないし今にも頭爆発しそうだしえっていうか何? メルラン姉さんって普段こんなテンションで生活してるの? 大丈夫なの死なないのかなそれっていうかこんなに私が疲れてるとは思わなかったわまあ疲れてるから姉さんたちの近くが危険だってこと忘れてたんだろうけどそれにしたってこれはあんまりだわどうしようこのままだと裸で窓ガラス破って外に飛び出して天狗にパパラッチされるのも時間の問題かもしれないわどうするどうするよ私そこで私のターン! ドロー! ライフカード! ちょっと少ないよ選択肢もうちょっとちょうだいよ死ぬかルナサ姉さんのところ行くか諦めるか位しかないじゃんでもルナサ姉さんのところ行ったら明らかにこれ振り出しに戻るよねこれそれはちょっとやってらんないんだけどねえ誰か責任とってくれないのお嫁に貰ってくれてもいいから助けて死ぬ死んじゃうってこれ慣れれば痛くなくなるとかそういう問題じゃなくてさ私という人格が音をたてて崩壊していく気がしてくるんだよああそういえばメルラン姉さん前回の人気投票で私に順位抜かれてたよねざまぁ! 胸のサイズなんか関係なかったんだ良かった助かった終わったかと思ったよってこっちはまだ終わってない! そろそろ限界きた危ない何かどうにかしないとどうするあ、さっきのライフカード! これこれこれにしようって増えてないじゃんまままて慌てあわあわわわわこれは孔明のわっななな罠わな)」

彼女は華麗なタップダンスをおよそ3分ほど踊り続けていたが、自室の前に戻ってきた辺りでピタリと止まり大きく深く深呼吸をした。



「やってられるかァ―――!」


万感の思いを一点に集中させ踏み込んだリリカの大跳躍は、廃洋館の屋根を突き破って冥界をも貫き、天界の住人達を唖然とさせた後に大結界を突破。
成層圏を何事もなかったかのように通過した辺りで彼女は我に帰った。
廃洋館どころか、幻想郷にもこのままでは戻れない。
だが、彼女は帰る手段を持ちあわせていなかったし、騒霊であった。
永遠に宇宙空間をさまようのだ。そして死にたいと思っても死ねないので―そのうちリリカは考えるのをやめた。

が、結界の異変に気が付いた八雲紫にスキマで回収された。結界の修復のついでだった。
紫には小一時間程説教されたが、リリカは無事に幻想郷へと戻ってくることが出来たのだ。





数日後、そこにはコンサートで「宇宙空間で考えるのをやめる音」をどや顔で披露するリリカの姿があったとかなんとか。

おそらくはめでたい。
友人からのお題「大脱出」 ランセレによるメインキャラ指定「リリカ」
ごめんこれが限界だった。ちょっと修行してきます。

追記:こんなレベルの作品ばっかですが、評価ありがとうございます。ちびちび頑張ります。
軟骨魚類
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コメント



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3.90爆撃削除
リリカ・インザ・スカイ。
本当にあっさりと成層圏を突破されてびびりました。
確かに確かに、よく考えると、リリカは耐性がないとやっていけないなあ、と。
4.70名前が無い程度の能力削除
どうしてこうな(ry
7.100名前が無い程度の能力削除
俺がリリカを嫁にもらう。これで全て解決だろ?
8.90奇声を発する程度の能力削除
どうしてこうなった
12.100名前が無い程度の能力削除
なんというSS
勢いだけで笑ってしまった
15.90名前が無い程度の能力削除
これは面白かった
18.100名前が無い程度の能力削除
どうしてこうn(ry
22.90名前が無い程度の能力削除
実は東方界で一番ドヤ顔が似合う女、リリカ。
24.80名前が無い程度の能力削除
ドォーンwwwww
次は階段で足を切られて転ぶ音をお願いしますwww