現在の季節は春。
ほんのりと暖かく、過ごしやすい陽気な昼下がり。
穏やかな雰囲気が流れる幻想郷。
しかし、幻想郷の一部では、そんな穏やかな雰囲気などとはかけ離れていた。
場所は博麗神社。
そこにいるのは博麗霊夢、霧雨魔理沙、魂魄妖夢、十六夜咲夜の4人。
それに加え、八雲紫、伊吹萃香、秋静葉、レティ・ホワイトロックの4人もいる。
ここに集まっている人物は、それぞれの季節を好む者達である。
霊夢と紫は春。
魔理沙と萃香は夏。
妖夢と静葉は秋。
そして、咲夜とレティは冬である。
人間組の個人的な主観と妖怪達の季節への思いがぶつかる。
しかし、なぜこのような討論が繰り広げられることになったのか。
理由は馬鹿らしいものである。
「やっぱり夏が一番だよな。どう考えても夏だ。他の季節はいらん」
その魔理沙の発言に、他三名は異論を口にする。
「あんた春の良さを分かってないの? お子様ね。これだから困るのよ、子供わ」
「魔理沙さんは何もわかってないですね。秋はいいですよ、とっても」
「常識的に考えて冬が一番いいでしょう。あなた達皆子供よ」
4人ともが別々の季節を口にし、空気が一変する。
「おいおい、なんだよ。それじゃあどの季節が一番最強か決めようぜ」
「最強って何よ。まぁ、この際にはっきりさせるのもいいかもしれないわね」
「いいでしょう、その季節が好きな人を連れてきて討論でもしましょう」
「妖夢に賛成するわ。一週間後の昼、博麗神社に集合でいいかしら?」
それを霊夢は了解すると、一同散っていった。
そして、今に至る。
「それじゃあ、始めましょうか?」
紫が口を開くと、早速霊夢は春の良さについて語り始めた。
「今の季節は春。この暖かさ、過ごしやすいと思わない?」
「夏の暑いくらいがちょうどいいんだよ。中途半端は嫌いだぜ。暑い方がなんというかテンションが上がる」
「あなたのテンションなんて知らないわ。それに中途半端じゃなくて、それがちょうどいいのよ」
睨みあう霊夢と魔理沙の間を割って入るように、妖夢の発言が飛ぶ。
「それなら、秋は暑くも無く、少し涼しいくらいでちょうどいいじゃないですか。温かいって言うよりは、少し涼しい方がいい気がしますけどね」
「過ごしやすい寒さなら冬でしょう。外の世界の冬はすごく寒いらしいけど、大してここの冬は寒くないでしょう? その寒さがむしろ心地いいわ」
後ろでレティが頷いている。
「まぁ、気温の話はいろいろ思うところがあるからいいわ。春と言ったら桜よ。よく博麗神社だったり白玉楼で宴をするでしょう? なのに春が一番好きではないというのは納得できないわ」
「よく言ったわ、紫。宴とかで騒ぐのが好きな魔理沙や萃香が夏が好きって言うのが納得できないのよ!」
流石にその言葉には逆らえない魔理沙と萃香。
しかし、ここで引いてしまうほど弱気ではない。
「宴は一部の限られた人物で楽しむもんだ。だけどね、夏には大きな祭りがある。人間だろうと妖怪だろうかわけ隔てのない祭り。みんなで騒いで楽しむ夏がいいんじゃないか」
「そうだぜ。お昼から広場で行われるステージ発表、人里にずらっと並んだ屋台、夜空には大きな花火……。夏でしか楽しめないことだぜ!」
「ちょっと待ちなさい」
盛り上がる魔理沙と萃香の隣、おとなしげな静葉が対抗する。
「秋には収穫祭っていう大きな祭りがあるでしょう、忘れるはずがないわよね? 祭りだけが理由なら秋でもいいんじゃない?それじゃあちょっと理由としては弱いと思うわ」
その様子を静かに見守る咲夜とレティ。
他の季節に対して何もないように見える季節、冬。
しかし、反撃にかかる。
「あなた達は小さい頃とかに雪合戦とかして遊ばなかったの? かまくら作ってみたり、雪だるま作ってみたりしたでしょう。あの頃の思いは何処へいったのかしら?」
レティの一言で、辺りは静まり返る。
あの小さい頃の思い出を忘れるはずもない。
雪が降ってきたことに興奮しては、遊びあったあの頃の事を。
「そ、それとこれとは話が別よ!」
「別じゃないでしょう、霊夢。あなただってやった時あるでしょう。去年だってやってたでしょう?」
「ぐ……。咲夜、あんた見てたの?」
「楽しそうだから邪魔するのはやめたわ」
去年の冬、霊夢は魔理沙達と雪合戦をしていたのを思い出す。
疲れたけど、とても楽しかったのを覚えている。
「そんなのに惑わされてどうするの、霊夢」
「そ、そうね……」
冷静になれと言わんばかりの紫の声で、霊夢は落ち着く。
危うく冬の魅力にのまれてしまうところだった。
そんな雰囲気に負けない秋は、負けじと反撃。
「あなた達お米食べてるでしょう。実りの秋には様々な食材が採れるわ。果物だったり穀物だったり、魚とかも。マツタケとかは代表的な食品ね」
「ですよね、静葉さんの言うとおりです。秋は沢山の食材に合わせていろんなお料理を作る事が出来ます。咲夜さんならよくわかるでしょう」
「た、確かにそうね……」
してやったりと言った表情の静葉と妖夢。
秋は確かに沢山の魅力があるが、特に食に関しては凄まじい程の魅力がある。
しかし、食に関しては負けない自信を持つ季節があった。
「夏だって負けちゃいないぜ。特に野菜に関してはな。夏野菜は栄養満点だぜ」
「それに、私の名前にもあるスイカは冷やして食べるのが夏の定番だからね!」
秋と夏との怒涛の攻め。
春と冬はこれといって大きな収穫はない。
この話題では不利なのは目に見えていた。
「話は変わるけど、冬の寒さだからこそ楽しめるものというのがあるわ。特に霊夢、あなたならわかっているでしょう?」
霊夢はごくりと唾を飲み込む。
咲夜がその言葉を発するのを理解してしまったからだ。
「こたつと言う名の兵器よ。こたつに入ってお茶でも飲みながらみかんを食べる。どうかしら?」
「や、やめなさい咲夜」
「ほんのりと暖かくて思わず寝てしまいそうになるわよねぇ」
「だ、だめぇぇええええ!!」
「お、落ち着きなさい霊夢!」
霊夢が発狂してしまった。
春が好きな霊夢と紫にとって、こたつというものは最大のライバルとも言うべきだろう。
その魅力に溺れてしまった霊夢を落ち着かせる紫は必死だ。
そんな霊夢の様子を見て咲夜はふふふと笑ってみせる。
(紅魔のメイドめ……やってくれるわね!)
心の中で咲夜を恨む紫。
しかし、そんなことをしても討論なので意味はない。
「春にはね、沢山の生き物たちが活動し始めるの。生命の素晴らしさを学ぶことができるのよ。蝶は可憐に舞っているし、綺麗な花が沢山咲き誇り、鳥たちが飛来する。春は素晴らしいものよ」
「それなら夏だって、カブトムシとかクワガタとかかっこいい虫達が沢山出てくるぜ。川には沢山の魚たちが泳いでる。ここにも生命を感じるだろう」
「カブトムシとか気持ち悪いだけよ。あれの何処がかっこいいかわからないわ」
咲夜のその一言に、魔理沙は反論する。
「な、気持ち悪いだと!? 何もわかってないな!」
「解らなくて結構だわ。冬は虫とか少なくていいわ」
「何も知らないからそんなことが言えるんだぜ。冬はなぁ、寒いから小さな虫とかがいっぱい集まって気持ち悪いんだぜ。毛虫だったり小さいカメムシだったりが集まったりして、よっぽど夏のカブトムシとかのほうがいいぜ!」
「な、そんなの森とかに過ごしてるから冬の虫の群れを見るだけでしょう!」
長所を言い合うどころか、貶し合いへと変化していた。
そんな中、紫は霊夢を正気に戻すために少しばかり退席する。
「秋なんて紅葉楽しんだらその後は葉が沢山落ちて結局はめんどくさいだけよね」
「落ち葉で焼き芋を食べたりするっていう思考はないんですか?」
「じゃあ落ち葉無くなるほど芋食ってればいいぜ」
「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか! 夏なんてセミが煩くて暑苦しいし、冬に関しては雪が積もれば雪かきしなきゃいけないし、いいことないじゃないですか!」
一触即発な状況。
いや、これはもうすでに爆発しているのかもしれない。
「夏がどう考えても最強だぜ! なぁ、萃香!」
「あぁ、そうさ。夏以外に考えられないね!」
「そうやって暑さで頭がやられたから夏を押すんでしょうね。秋の良さが分からないなんてどうにかしてますよね、静葉さん」
「全くだわ。だからそうやって熱苦しいほどに語るんでしょうね」
「冷静を装ってても結局はあなた達も信者みたいな発言してるじゃない。冬の良さが分からないなんて残念な人たちよね、レティ」
「本当にね。残念な人たちだわ」
夏と秋と冬。
それぞれがにらみ合い、魔理沙が口を開いた。
「埒が明かないぜ、表へ出ろ! 弾幕ごっこだ! 夏が最強だって事を教えてやるぜ!」
「結局はこうなる運命だったのですね……。いいでしょう!秋がいいということを思い知らせてあげます!」
「あなた達の頭を冷やしてあげるわ。冬の寒さを思い出すと共にね」
六人は外へと出ると、派手に弾幕ごっこを始めた。
そんな六人をよそに、ようやく正気に戻った霊夢は辺りを見回す。
「あれ……。魔理沙達は?」
「春の良さに負けて皆諦めて帰ったのよ。私たちの勝利だわ、霊夢」
「あぁ、やっぱり春が最強だったのね……」
何故か外で弾幕ごっこをしている六人を眺めながら、霊夢と紫はお茶を啜った。
霊夢は、元気ねぇと呟きながらそれを見つめているだけだった。
霊夢たちじゃなくても炬燵とかは魅力的でしょうけども……。
それぞれの季節の魅力とか貶し合いになっていく展開とか面白かったです。
脱字の報告です。
>レティ・ホワイト
『ホワイトロック』ですよ。
評価ありがとうございます。
確かに季節にはその季節の魅力がありますから、これが好き!ってはっきり言えと言われても難しいですね。
みんなちがってみんないいとはまさにこの事。
誤字指摘ありがとうございます。
名前間違えるとか…だめだこりゃ。
無駄に報告
『あたたかい』は
気温的な意味→暖かい
物体的な意味→温かい
いくつか使い分けできてませんでしたよ、細かいながらすみません。
これだから困るのよ、子供わ→子供は
そう言いたいところですが、これ程コントラストのはっきりした四季がある。
これだけでもこの国に住んでいる価値がある、と私は思います。 ね? 閻魔様。
評価ありがとうございます。
夏は部活でずっと走って嫌なほど暑い思いをしたのを覚えています。
無駄ではありません、嬉しい報告です。
誤字指摘ありがとうございます。
>コチドリ 様
評価ありがとうございます。
春いいよ、春。
確かに、四季に富んでいるからこれほど素晴らしいことはありませんね、小町。
>それじゃあちょっと理由としては不可欠だと思うわ→ん? 不可欠とは絶対必要なこと、の意味で
使用される語句なので、ちょっと文脈には合っていないかと。「理由としては弱いと思うわ」みたいな
感じの方が良いのではないでしょうか。
4人で意見が別れたというならここは多数決として早苗さんに最後の票を決めてもらうというのは。
どういうシチュエーションで最初の魔理沙の発言が出たんでしょうね?
あまりに唐突すぎてなぜその4人が集まってたのか、どういう話の流れでそういう話題になったのかその経緯がちょっと欲しかったような気がします。
魔理沙の小学生男子な脳みそと最強はやはりKOTATUなのが妙にツボにきたww
誤字四天王wwwwwwwwwww
「レティ・ホワイトの4人もいる。」ホワイトロック
「人間組の個人的な主観と妖怪達の季節への重いがぶつかる。」思いが
「実りの秋には様々な食材が取れるわ。」採れる(魚もあるからまとめて『取れる』でもいいかも)
「河には沢山の魚たちが泳いでる。ここにも生命を感じるだろう」川
評価ありがとうございます。
早苗さんも出すべきでした…。完全にアウトオブ眼中でした。
自分には唐突過ぎるのことがよくありますね、それでどうにかしようとしてる感じがするので俺を直さねばなぁ。
小学生男子な脳みそwww
今回も誤字指摘ありがとうございます。
毎度お世話になります……。
評価ありがとうございます。
結局は春が最強なんですよ、きっと。
幻想郷の人たちはみんな頭が春です。
重度なオイラは必要以上に外出も出来ず、鼻は詰まりっぱなし、ちょっとつつくと鼻血がでる、外に洗濯物を干せないから乾燥機回すしかなくて電気代が嵩む、マスク代が嵩む、薬代がががetc...
ちくしょー、リリーこっち来んなよお!
個人的には初秋と真冬が好き。
……最近暑くなってきたなぁ。
評価ありがとうございます。
花粉症…自分はかかってるのかかかってないのかわからない程なんで大丈夫ですが…。
リリーは悪くないよ!
>15 様
評価ありがとうございます。
ですよね、四季があるから色とりどりの景色とかがあるんですよね。
初秋いいですねぇ。
真冬は雪降って色々大変なのでパスですね
相変わらずの執筆スピードですね……ねたま、いやいや、羨まし…いやいや、流石です
結局はどの季節が最強なんでしょうかね
個人的には春が好きです
評価ありがとうございます。
ネタがあかれば即日執筆で上げますから出来立てほやほやです。
だから誤字が多(ry
私も春好きですね。
桜大好きよ。
評価ありがとうございます。
春好きな人結構多いですねぇ。
個人的な好みでは秋と夏が好きですね…
評価ありがとうございます。
幽香さんどんな花だって咲かせちゃうよ!
もうどの季節も好きすぎておかしくなりますわ。
オレは悲しい人間だからよ、いつも隣の芝は青い状態なんだ
評価ありがとうございます。
そんなことしたら四季のしっかりとしない、面白みのないものになりそうですね。
隣の芝は青い状態……良く分かりません、すみません。
ご飯おかずにご飯何膳でも行ける。いや、マジで。
神様お百姓様に感謝。
評価ありがとうございます。
お米食べろ! いやぁ、お米は飽きませんね。
ご飯おかずにご飯だと……、できますね!
ほんと、神様に感謝ですわ。
リリー「春ですよ~ (哀」
⑨「夏になるとみんなアタシにかしずくのよ。アタシったらサイキョーね」
稔子「秋の実りは私が育てたのに」
もこ「外で寝ると熱くないから冬はいいな。何故か私の周りだけ雪が積もらないんだけどな」
妹紅は無理やりこじつけました。冬ネタって意外と少ないですね
評価ありがとうございます。
妹紅は頭に雪積もってもそのまま放置してる感じがするんですよね、だから周りに雪が積もらないって言うのは私的には(ry
冬は書くの大変でしたわ。
幽香「季節ごとに違う花が咲いていいじゃない。みんな違ってみんないいわ。」
評価ありがとうございます。
ほのぼのとしたような雰囲気が伝わったのなら幸いです。
幽香さんは心の母。
それに何より、秋は『風神録』の季節ですからね!
評価ありがとうございます。
秋いいですよね~、私も凄い好きです。
風神録の季節ですねぇw