走る走る。まだ夜が明けたばかりの薄暗い紅魔館を美鈴は走っていた。
分かれ道に差し掛かると、意識を集中し気配を探る。
「……こっちね」
そう呟くと、僅かに明かりの灯った廊下を駆け抜ける。
とりあえず逃げなければ。
一時でも良い、どこかに身を隠して対策を練らなければなるまい。
自分は紅魔館の門番だ、その職務に誇りも持っている。それゆえ紅魔館の外に逃げ出す訳にはいかない。
しかし、今自分の置かれている立場は何時もとは違う。
紅魔館に仇なす者の襲撃ならば、例えこの身が砕けようと侵入者を滅しよう。
腕が砕けたならばこの足で、足が砕けたならばこの牙で、牙が砕けたならばこの命で。
私は紅魔館の守護者だ。この命に代えても仇なす者を殲滅しよう。
だが今自分を追っているのは、私が守るべき者達。
昨日まで共に戦い、守り、笑いあっていた仲間達全てが敵となっていた。
美鈴は広い廊下の中央で立ち止まると息を整える為に目を閉じた。
此処ならば咄嗟に不意打ちを喰らう事は無い。乱れた息を整えながら状況を整理する。
取り敢えずは何処かに身を隠して時間が過ぎるのを待つのが賢明だろう。
時間が過ぎていけば、おそらくは十六夜咲夜とレミリア・スカーレットが出て来るだろう。
「待つ」と言う事の耐性の無さを考えればフランドールが出撃する事も考えられるが、紅魔館への被害を
考えればレミリアが出来うる限り押さえ込むはずだ。
パチュリー・ノーレッジがどう動くのかは不明だが、おそらく咲夜、次いでレミリアが出撃するというのが
妥当なところか。
ならば2人が出てくるまでは、出来る限り体力を温存しておきたい。
体力を温存しておいたからと言ってどうこう出来る相手ではないが、体力を消耗してしまっていれば
逃げる事もままならなくなってしまう。
その時、自分の前方に気配を感じた。未熟ではあるものの気配を殺している所を見ると、門番隊の隊員か。
「気を使う程度の能力」を持つ美鈴で無ければ、至近距離まで接近を許していた事だろう。
美鈴は後ろに下がるべきかと考えたが、相手の行動を見る限り自分に気が付いている様だ。
素早く辺りの気を探る。
どうやら前方から来る1人以外に近くには誰も居ない様だ。ならばと美鈴は拳を構え迎撃準備に入る。
体力は温存しておきたいが仕方が無い。出来うる限り一瞬で終わる様、浅く息を吐く。
相手が視界に入って来る。その顔を見て美鈴は一瞬目を見開いた。
肩まで伸ばしたセミロングの髪、門番隊に入ってまだ半年ではあったが真面目で大人しく、美鈴を良く
慕ってくれていた。もともとはショートカットであった髪を自分に憧れて伸ばし始めたと聞いた時には
なんだか恥ずかしかったのを良く覚えている。
お互いの表情が読み取れる位置まで来た時、彼女は不意に立ち止まった。
そしてゆっくりと美鈴に向かって一礼すると攻撃の構えをとる。それはまるで何時もの組み手の様だった。
美鈴はそんな彼女に小さく微笑む。しかし、直ぐに表情を引き締めると小さく、そして鋭く息を吐く。
瞬間、爆発的な速度で美鈴が詰め寄る。たとえ部下だろうとこの時ばかりは手加減などしない。
最大戦速・最大威力を持って自身の崩拳を打ち出そうとした時、カチリと小さな音が聞こえた。
「な!」
美鈴の目に映った物は無数の網と丸太。
それらが四方から一気に撃ち出される。咄嗟に交わそうとするが時すでに遅し。
「がはっ!」
体に走る激痛。ご丁寧にもワイヤーで編まれた投網が体の自由を奪い、無数の丸太が美鈴の体を
まるでゴムボールの様に弾き飛ばした。
美鈴の耳に届いたのは彼女の呟き。
「申し訳ありません、隊長。でも、隊長に教わったのですよ?「自分より遥かに強大な敵と戦う時は、一撃で
勝負を決めろ。その際、罠や飛び道具が使えるならば躊躇無く使え。点ではなく面による制圧戦闘を間断無く
行え。相手にかわす隙間など与えるな」って」
彼女はいつの間にこんなにも強くなったのだろう。
美鈴は薄れ行く意識の中、小さく微笑んだ。
美鈴の意識が戻った時、最初に目に入ったのは明らかに興奮しているメイド達だった。
辺りを見渡すと、どうやらここは紅魔館の大ホールらしい。
体が動かない。そう思い自分の体を見てみると、なにやら十字架に貼り付けられている。まるでキリストだ。
自分の直ぐ傍にはレミリアやフランドール、パチュリーがいる。
ズキリと頭が痛む。どうやら頭部にもダメージがあるらしい。
痛みを堪えながらメイド達を見る。興奮したメイド達は美鈴を取り囲み怪しげな踊りを踊っている。
なにやら呪文のような物を唱えている者までいる。
「ふんだら へんだら どがびがふんだ ふんだら へんだら どがびがふんっ!」
……アンタら何を召還する気だ!
違う意味で頭痛がしてきた。
「あら、美鈴気が付いたのね」
美鈴の意識が戻った事に気が付いたレミリアが話しかけてくる。
「じゃあ、そろそろ始めましょうか」
そう言うとレミリアは右手を掲げ宣言する。
「傾注」
その言葉に興奮していたメイド達が一斉にレミリアに向き直った。
あれほど騒がしかった大ホールが静寂に包まれる。その様子に満足したのか、レミリアは小さく頷いた。
「紅魔館に忠誠を誓った諸君達に聞く!美鈴は好きか?」
「「「「「「好きです!!」」」」」
紅魔館に大音響が響く。パチュリーが少し顔をしかめた。
「ならば聞こう!諸君達は美鈴のおっぱいが好きか?」
「「「「「大好きです!!!」」」」」
先ほどよりも大きな声が紅魔館を揺るがす。
「よろしい!私も大好きだ!我々は一ヶ月前の「母の日」に紅魔館の母役である美鈴に自分達の愛情をぶつけた!
ならば今日この「ちちの日」には美鈴のおっぱいに思う存分自分達の愛情をぶつけようではないか!!」
「「「「「ウオォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」」」」」
皆が両手をワキワキとしながら叫ぶ姿は異様であった。
「あの、お嬢様?」
「あら、なにかしら?美鈴」
「もういろいろ諦めたんで結構なんですが、出来ればこの縄をほどいてもらえませんか?」
「ごめんね、それは出来ないわ」
「なんでですか!」
「事前に「ちちの日」に美鈴にさせたい事をアンケート取ったら、「緊縛」が1位だったのよ」
「ちょっと待て紅魔館!」
「まぁ、紅魔館内においての秘密結社「美鈴緊縛希望推進協議会」の地道な工作が実を結んだみたいね」
「なんですか?!その組織!」
「あら、知らないの?最近勢力を伸ばしてきた組織でね、かなりの人数が参加しているみたいよ」
「ちょっと!おかしいですよ!なんですソレ?誰かぁ!もう嫌だぁ!咲夜さ~ん!!」
「あら、その「美鈴緊縛希望推進協議会」の議長が咲夜よ?」
「……神は死んだ」
「ここは悪魔の棲む館「紅魔館」よ?神なんているはず無いじゃない」
その時、不意に咲夜が現れる。
「お嬢様、よろしいでしょうか」
「あら咲夜、何かしら?」
「さすがに美鈴を十字架に縛り付けるのはどうかと」
その言葉を聞いた美鈴は咲夜の顔を見る。その柔らかな微笑みは、まるで女神の様に見えた。
……嗚呼、この悪魔の棲む館にも神はいたのだ!!
思わず美鈴は涙ぐんでしまう。
「……咲夜さん……」
咲夜は一度美鈴に微笑みかけると、レミリアに向き直った。
「どうせ緊縛するのならば、その、こう胸を強調する様に……」
「ええいっ!神は!神は居らぬか!!出あえ出あえ~いっっ!!!!」
美鈴の悲痛な叫びが木霊した。
---
その頃の博麗神社
「魅魔さま~」
「おやおや、どうしたんだい?今日は甘えん坊だねぇ」
「ちちの日だから仕方が無いんだぜ」
「そうかい、ちちの日なら仕方が無いねぇ」
霊夢は朝っぱらから人様の神社でちちくり合っている魔法使いと悪霊を出来るだけ視界に入れない様に
縁側でお茶を飲んでいた。
「ちちの日」とはこんな日だったか?去年まではもっと違っていた気がする。
霊夢は去年のちちの日の事を思い出そうとするが、まるで頭に霞がかかった様に思い出せない。
ひょっとして、これは異変ではないか?とも思ったが、特に危険性を感じないので放っておく事にした。
……めんどくさいし。
霊夢はちらりと魔理沙と魅魔を見て、すぐに視線を戻した。
「はぁ、霖之助さんの所にでも行こうかな……」
なんとなく居心地悪いしね。と誰に言うでも無く、小さく呟いた。
---
その頃のスキマ
「何故?!何故なの霊夢!そこは霖之助さんじゃなくて私でしょう!霊夢に甘えてもらう為だけに
「父と乳の境界」を操作したのに!!」
予想通りの真犯人。
---
紅魔館
十字架への磔を解かれ、代わりになんか表現するとアブナイ格好(主に胸)で縛られてる美鈴。
その隣に佇むレミリアが宣誓する。
「これより紅魔館のちちの日を開催する!!全員思う存分美鈴のおっぱいを堪能しろ!!」
湧き上がる歓声。横たわる美鈴は一人ドナドナを歌っている。
そんな中、レミリアは一人の少女を呼び寄せる。先程美鈴を捕らえた門番隊メイドである。
「さぁ、約束通り美鈴を捕らえた貴女には一番の権利をあたえるわ」
少女はレミリアに一礼すると美鈴に話しかけた。
「隊長、先程は申し訳ありませんでした。お怪我はありませんか?」
その言葉に美鈴は少女に優しく微笑みかける。
「大丈夫よ、体は頑丈だからね。貴女は気にしなくて良いから」
心から心配しているのであろう、伏目がちな少女を見て美鈴は思う。
……まぁ、おっぱいを触らせる位別に構わないか。それにレミリアもフランドールも咲夜もメイド達も、
紅魔館の皆は自分の娘の様なものだ。何を恥ずかしがる事がある。
「さぁ、いらっしゃい」
今だ俯いている少女に美鈴はやさしく微笑む。
母と娘のスキンシップの様なものだ。そう思うと、これはこれで楽しく思えてきた。
「はい!隊長!!」
美鈴の言葉に少女は笑顔になると、美鈴に向かって駆け出す。
そして美鈴の傍まで来ると見事なル○ンダイブをかました。
「たぁいちょおぉぉぉぉぉ!!!」
「ちょっと待って!何か想像してたのと違う!何か手の動きがヤラシイ!!ちょっやっいやぁぁぁ!!」
もう美鈴の絶叫はお約束になりつつあった。
---
その頃の永遠亭
「「「「えーりんさまぁ」」」」
代わる代わる永琳に抱きつき甘えるイナバ達を輝夜、鈴仙、てゐはほほえましく見ていた。
永琳は「あらあら」と困った様な表情をしながらも、どこか楽しそうだ。
そんな光景を見ていた輝夜であったが、皆の輪の外で一人座っている幼いイナバを見つける。
「どうしたの?貴女は永琳に甘えないの?」
やさしく問いかけた輝夜であったが、そのイナバは下を向いてしまう。
「あら、どうしたの?何でも言ってみなさいな」
輝夜はやさしく微笑みながら、イナバの頭をなでる。
やがて決心したのか、そのイナバは小さく、しかしはっきりと言った。
「……わたし……れーせんさまがいいです」
「ええ!私?!」
驚く鈴仙を尻目に、輝夜は「とんっ」と鈴仙に向かってイナバの背を押した。
「私が許可するわ。鈴仙に甘えてらっしゃい」
いきなり背を押されたイナバは、少し驚いた様だったが、やがて鈴仙に甘えるように抱きついた。
「あーっずるいー!わたしも!」
「わたしもれーせんさまがいい!!」
それを見ていた他のイナバ達も次々と鈴仙に抱きつく。
その様子を見ていた永琳は小さく呟いた。
「私も後でウドンゲに甘えようかしら?」
それは永遠亭の幸せな1コマ。
---
再び紅魔館
一番で美鈴のおっぱいを堪能した少女は、今だ興奮が覚めやらぬのか、荒い息で自分の両手を
見つめていた。
離れた所では、美鈴が他のメイド達にもみくちゃにされている。
「どうだった?」
不意に話しかけられた少女は驚いて振り返る。そこに立っていたのはメイド長・十六夜咲夜だった。
まさかメイド長に話し掛けられるとは思っても見なかったのか、あわてて返事をする。
「あの、無我夢中であまり覚えて無いんです。ただ、この手の感触だけは覚えています」
「…そう」
咲夜はやさしく微笑むと少女に語りかける。
「貴女に良い事を教えてあげるわ。今回、各部隊の班長以上の者は美鈴の胸を下着の上から触れるわ」
少女の目が驚きに見開かれる。
「……そして、レミリアお嬢様やフランドール様、それにパチュリー様に私と小悪魔の5人と、各部隊の
副長以上の者は「生」で触れるのよ」
「な……生……」
わなわなと震える少女の肩に咲夜はやさしく手を置くと、小さく微笑む。
「頑張りなさい。貴女ならきっと直ぐに昇進できるわ」
咲夜の言葉に少女は力強く頷いた。
傍から見ていると「やる気のある新人と、厳しいながらもやさしく見守る上司」なのだが、
何故かあまり感動出来なかった。
---
その頃の守矢神社
「……あの、八坂様?」
「なんだい?早苗」
「その……少し恥ずかしいです」
神奈子に抱きしめられている早苗。その言葉通り恥ずかしいのか顔が真っ赤になっている。
「恥ずかしがらなくても良いじゃないか。昔、早苗が子供の頃はこうしてよく抱っこしたんだよ?」
「でも、今は子供じゃありません」
「いつまでたっても、例え早苗がおばあちゃんになっても私の可愛い娘さ」
神奈子の言葉に、早苗はよりいっそう真っ赤になって俯いてしまう。
「……諏訪子。そんな所に隠れてないで出て来たらどうだい?」
神奈子がそう言うと、柱の影から諏訪子が現れた。
「別に隠れてる訳じゃ……」
「そうかい。それよりこっちにおいでよ、諏訪子も抱っこしてやろう」
「な!馬鹿言ってんじゃないよ、なんで私が……」
そう言う諏訪子を、神奈子は引き寄せると早苗と共に抱きかかえた。
「まぁまぁ、一年に一度位は蛇に抱きしめられる蛙ってのもオツなもんだろう?」
「……ばーか」
そう言って諏訪子は神奈子の胸に顔を埋めた。
---
そして紅魔館
狂乱のちちの日も終わりを迎えようとしていた。
レミリアは自室で就寝前の紅茶を飲んでいた。
美鈴はグッタリとした様子で自室に引き上げて行った。まぁ美鈴の事だ、明日には復活しているだろう。
レミリアは今日の事を思い出す。中々楽しいイベントだった。こんなにも満足したのは久し振りだ。
残っていた紅茶を飲み干すと、レミリアは寝室に向かおうとする。
その時ティーセットを片付けていた咲夜がレミリアに話しかけた。
「お嬢様、少し提案があるのですが宜しいですか?」
「提案?」
振り返ったレミリアは怪訝な表情で聞き返す。
「ええ、実はとあるメイドからの提案なのですが、私自身にも魅力的な提案に思えましたので」
「言ってみなさいな」
「……8月1日を「パイの日」とするのはいかがでしょう」
「採用!」
レミリアと咲夜は、ニヤリと笑い合った。
地霊殿にもちちの日はあるって。お空にはあるって。
そっちの父の日ですか、恐れ入りましたww
オチひでぇwww
美鈴の愛されっぷりというか紅魔館にいる全員の相手は凄いですね。
他のちちの日も良かったですが、永遠亭組がほのぼのとしてて良いですね。
面白かったですよ。
オツってかパイオツだな
風神録以前だったら神も歩いて来てくれたろうに
とにかくGJ!
wwwwwww
勿論いい意味で
いいぞもっとやれwww
いまは こうかい していない。 あれ、目の前が赤くて白・・・い・・・・・・(失血死
しかし咲夜さん緊縛ってwww
凄く酷い
そして羨ましい
おっぱいおっぱいぽおあ
しかし他所のほのぼのファミリーっぷりに比べ、紅魔館のインモラリティが若すぎる。
これはひどい……はずなのに何故かほのぼのしてしまった。
守矢組が可愛らしくて癒された。
俺……神奈子様みたいな人と結婚するんだ……。
美鈴がいつか転職してしまわないか激しく不安である…
大きいおっぱい!!
おっぱいめーりん!!
もっとやれ!
いやむしろそれが良いのですがね!
期待以上の内容でした。
うぅ~ん、おっぱ(ry