Coolier - 新生・東方創想話

咲夜のお見舞い アフター

2011/04/13 13:20:03
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すごく大雑把なここまでのあらすじ(詳しくは"咲夜のお見舞い"を参照してください)
霊夢が寝込んだので深夜にも関わらずお見舞いにいった咲夜。寝ててろくに話せなかったので、レミリアの提案で再びお見舞いに行くことになった。

1.
「・・・結局、寝れませんでした・・・」
「・・・情けないわね」
読んでいた本をパタンと閉じて、パチュリーは幾分げっそりとした咲夜を見て、ため息をつく。
「大体、あなたは時を止められるんだから、眠くなるまで起きていればよかったじゃない」
「5時間くらい時を止めてみたのですが・・・」
パチュリーのため息はより一層大きくなった。
「はぁぁ・・・重傷ね」
少し考えた後、机の引き出しを開けて、小瓶を取り出す。
「なんですか?それは」
「栄養剤よ。せめてこれでも飲んでいきなさい」
「パッ、パチュリー様・・・ありがとうございます」
やつれた顔で精一杯の笑顔を浮かべる咲夜。見ていて不憫に思えてくるパチュリーだった。
「勘違いしないでね!あなたが下手に倒れたら、いろいろ面倒になるだけなんだから!」
だから、これはパチュリーなりの励ましの言葉だった。
咲夜は特に気にすることもなく、もう一度お礼を行って図書館を後にした。
図書館に静けさが帰ってきた。
「ふぅ・・・まったく。この上あの娘が泣いて帰ってくるようなことがあったら、あの巫女・・・どうしてくれようかしら」



「あら、咲夜。目の隈がすごいわよ?どうしたの?」
にやにやしながらレミリアが尋ねてくる。全部お見通しなのだ。
咲夜は、恥ずかしさで赤くなった顔を隠しながら、ティーセットを机に置いていく。
「いえ・・・ちょっと読書をしていて、寝るのが遅くなってしまいました」
「ふぅ~ん。神社に行く途中に倒れたりしないでよね?」
神社と言うフレーズを聞くだけで、咲夜の心拍数は上がってしまう。
すぅ~はぁ~・・・。レミリアに聞かれないように静かに深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「ふふっ・・・咲夜、これを飲んだら出かけるわよ」
咲夜が用意したティーに口をつけながら、レミリアはそう告げた・・・。



2.
からりと晴れ上がった空が幻想郷を余すところ無く照らす。景色は日の光を浴びて、美しく輝いている。
長い年月を経て、独特の色合いを帯びてきた博麗神社の石段も例外ではない。
そこに、少し不似合いなほど真っ白な日傘がやってきた。
「どうしてこんなに晴れているのかしら?妬ましいわねぇ」
生命と逆行しているものにとっては、この生命の輝きも毒でしかないのだ。
「まぁまぁ、お嬢様。神社までもう一息ですわ」
そうこのわがままなお嬢様をなだめながら、一歩また一歩と博麗神社に近づいていく。
夜に来るときと違い、朝の神社は身の清められような気がする。
ともすればすぐに脳裏をよぎる邪な心を振り払いながら、咲夜はついに最後の段を登った。

息が止まりそうになった。

咲夜の目に入ってきたのは、見慣れたはずの紅白。しかし、今日は違う。咲夜の頭の中よりも、その紅はより赤く、その白はより本当の白に近かった。その紅と白の間を緩やかに流れる黒髪もまた、この生命の光線を受けて輝いて見えた。
巫女は、そこにいるのが当然のように佇んでいたが、誰よりも浮き世離れしているようにも見えた。
気が付くと、胸の辺りをぎゅうっときつく押さえていた。
「あら、いらっしゃい。珍しいわねこんな真っ昼間に」
このまま動かないのでは無いかと思うほどに、神社と一体になっていた巫女は、あっさり動きだし、
「手みやげはもちろんあるのよね?」
一気に俗物にまで落ちていった。

「ふぅ~ん・・・昨日来たんだ?」
居間に通され、三人でそこに座った。
お見舞いのために持ってきたケーキを食べながら、霊夢に今日の訪問理由を話す。
「え・・・えぇ、その・・・あなたはよく寝ていたからすぐに帰ったのだけれど・・・」
「ま、そんなわけで日を改めてこうやってわざわざ来てあげたのよ」
レミリアは胸を張って答えた。
「へぇ~日を改めてまでわざわざ来てくれるなんて、何か裏があるんじゃないの?」
怪訝な顔で霊夢は探りを入れてくる。お嬢様のことをほぼ全く信用していないようだ。
「別に何も無いわよ?ただ、あんたが倒れてから、うちの咲夜が上の空で困っていたのよ」
思わずお茶を吹きそうになる。霊夢が顔を覗いてくる。その視線を避けつつ、そんなことはないですよ?と精一杯取り繕う。
「ま、どうせそんなこと言って、あんたが私の弱ってる顔でも見に来たんでしょ?」
よかった。どうやら、お嬢様の冗談だと思ったようだ。・・・でも、少しだけ寂しい気分になった。
それからしばらく、まったりとした時間が流れた。
レミリアはケーキを食べ終わるとごろごろし始めた。500年洋館で過ごしてきたこのお嬢様にとって、畳やその匂いはまだまだ新鮮なようだ。
咲夜は霊夢に尋ねられて、もう少しだけ昨夜の状況を話した。魔理沙も来たことを告げると、霊夢は少しバツが悪そうな顔をして、その後、盗品の心配をした。
それからしばらく、霊夢は魔理沙の愚痴をこぼした。
たまに相づちを打ったりしながら、咲夜は霊夢の声に耳を傾ける。その口から自分の名前が出てこないのは、やはり寂しかった。
「・・・や?咲夜?・・・咲夜!!」
突然大声で名前を呼ばれて、ビクッと体が反応する。
声の主は、実際の主だった。どうやら、霊夢の声を聞いて安心して座ったまま眠ってしまったらしい。話の途中で寝てしまって気を悪くしていないだろうか?
「もう・・・咲夜、そろそろ帰るわよ?」
辺りをきょろきょろ見回す。霊夢はどこに行ったんだろう?
「霊夢は食器とかの片づけ中。もう帰るって言ってあるから、早く用意しなさい」
はいっと返事をしながら、外を見やる。もう日が暮れようとしていた。
ほとんど霊夢と話をしていない・・・。激しい後悔が襲ってきた。しかし、後悔してもどうにもならない。時を戻すことは出来ないのだから。
咲夜が立ち上がろうとすると、それを制止する手が伸びてきた。
「咲夜、やっぱりもう少し待っていて」
レミリアはそう言うと、一人で外に出ていく。
あっと言う間にレミリアの姿が消えた。
・・・仕方なく、咲夜は帰ってくるのを待つことにした。



3.
咲夜がぼーっと待っている、ちょうどその真上。博麗神社の屋根の上に、レミリアは静かに降り立った。
そこには、すでに先客が腰を下ろして沈んでいく太陽を眺めていた。
「このぐらいの光なら大丈夫なの?」
先客はどこか胡散臭い声でそんなことを言う。
「あまり気分は良くないけどね」
「ふ~ん。吸血鬼も難儀なものね」
「・・・それで、何の用なのかしら?・・・紫」
その声に応えるように、八雲紫は起きあがって、大きく伸びをした。
「えぇ、そう・・・昨夜の賭けを覚えている?」
昨夜、レミリアと紫は一つの賭けをした。
その内容は、単純なもので、咲夜が霊夢に手を出すかどうか。ハプニングによるものだったが、結果的に手を出したことになり、紫は賭けに勝ったのだった。
「ふむ・・・何か思いついたのね」
勝った紫は、レミリアから何か適当なものを貰うことになっていた。
「えぇ。素敵なものを思いついたのよ」
「あまり良い予感がしないわね、特にあんたが絡むと」
「うふふっ。よく言われるわ」
華やかに紫は笑みを浮かべた。そして、少し間を置いてから紫は告げる。
「咲夜を一日貰うわ」
・・・しばし沈黙が流れる。そして、レミリアはため息をついた。
「見かけによらず、以外とお人好しなのね。咲夜が紅魔館にいないとすっごく不安だけど、はぁ・・・しょうがないわね」
紫は笑みを絶やさず、そんなレミリアを見つめている。
「可愛い従者のためにもう人肌脱ぎますか」
「代わりに藍を紅魔館に向かわせるわ」
「便利だったらそのまま貰っちゃうかもしれないわよ?」
「そうなったら、あのウブなメイドを調教するしかないわね」
少女たちは笑いあった。



「お嬢様、遅いな・・・」
どこかに行ったきり、もう10分近く経っている。霊夢は、咲夜がまだ帰っていないのを見ても、まだいたのねと言ったきり何も言及しようとしない。
パタパタパタ
部屋の中に、一匹の黒いコウモリが入ってくる。
そのコウモリは部屋をぐるりと回ってから、咲夜の前に黒い手紙を置いていった。
「・・・読まないの?」
霊夢が促してくる。
手紙は封がされていなく中には紙が一枚だけ入っていた。
そこには、こう書かれていた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
咲夜へ
今日の貴女はメイドとして失格よ。
少し頭を冷やしなさい。
よって、今日一日貴女に暇を与えます。
紅魔館に帰ってきては駄目よ。
  主より
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

自然と手から手紙が落ちた。
手紙は滑空して、向かいに座っている霊夢の元へ行く。
重い沈黙が流れた。
「まっ、まぁ一日って書いてあるんだから、明日屋敷に戻ってちゃんと謝ればいいじゃない」
霊夢が励まそうとしてくれる。
ショックは大きかったが、いつまでも沈んでいるわけにはいかない。
とりあえず、今日の宿を確保しなければならないのだ。
すっと立ち上がり、霊夢にお礼を言う。

「ちょっと、どこ行くのよ?」
「いえ、帰れないとなった以上はどこか宿を探さないといけないので・・・いざとなれば野宿でも私は大丈夫ですし」
野宿をするのは、久しぶりだったが、一日くらいなら問題ないだろう。出来れば、風雨を凌げるところが良いが、この時間から宿を探すとなると、野宿も覚悟して置いた方が良さそうだ。
はぁっと大きなため息が聞こえた。
見ると、霊夢がうなだれている。
「あの、霊夢?どうしました?」
もう一度ため息をついて、霊夢は言った。
「どうして、巫女の私が野宿するかもしれない人間を放っておけるのよ」
意味がつかめず、ぽかんとする咲夜。
「一日くらい家に泊まっていきなさいよ。宿無しを追い返すわけにいかないじゃない」
「で、でも、迷惑でしょう?それに、持ち合わせもありませんし・・・」
「もう・・・頭の固い奴ね。じゃあ、メイドとして一日雇うわ。これなら文句無いでしょ?」
そこまで言われては固辞するわけにもいかない。それに、宿が確保できたことは素直にうれしかった。
「あっ…ありがとうございます!」
「あんたはあんまりうるさいタイプじゃないし、たまには誰かがいるのもいいわね」
何か、頭に引っかかるものを感じながらも、咲夜は霊夢に言われるままに仕事をこなす。
紅魔館と比べると、遙かに小さい敷地だったので、掃除はすぐに終わった。
そして、二人で肩を並べて夕食を作る。
誰かと一緒に作ったことなど無かったので、咲夜はそれだけでも幸せを感じていた。
「いただきます」
そういって、霊夢が食べ始めようとする。が、咲夜は立ったまま霊夢を見ている。
「どうしたの?」
「はい?」
「いや・・・どうして立ってるの?早く食べようよ」
霊夢は少し嫌な予感がした。
咲夜は答えに困っている。
「・・・・・・そうか、あんたそういえば、メイドだっけか。はぁっ・・・。紅魔館でどうしてるのかは知らないけど、家ではメイドだろうが何だろうが一緒に食べるのよ」
「そっ、そうなんですか・・・」
ようやく咲夜も座った。
改めて、二人でいただきますと言って、食べる。
霊夢はにこにこしながら話しかけてきた。
「一緒に食べた方がおいしいのにねぇ。主従関係なんてよくわからないわ。うーん、おいしい。合格点をあげるわ」
確かに、霊夢の言うとおり、一人で食べているときより何倍もおいしい気がした。こうして、霊夢がおいしそうに食べているのを見ているだけで、胸が満ち足りてくる。これは、きっと「誰か」じゃなくて、霊夢だからこそ、こんなにおいしくて幸せだと感じるのだろう。
「しかし、掃除といい料理といい、家に欲しいくらいね」
ごほっごほっ
不意打ちをくらい、咲夜はむせてしまった。
欲しいだなんて、そんな・・・
「ちょっと、大丈夫? ま、冗談よ冗談。あんたを貰ったら、あの吸血鬼まで付いてきそうだしね」
一概に否定できないところが、レミリア・スカーレット言う存在の怖いところだ。

二人で食器を片付けて、しばし休憩に入る。
紅魔館では、いつも慌ただしく動いているので、この時間は新鮮だ。霊夢の近くにいると、時はゆっくりと流れる。その流れに身を任せてしまったら、普通の時には戻ってこれなくなりそうなくらいに・・・。
でも、考えてみればおかしな話だ。自分は時を止めることだって出来るのだから。ただ・・・時を止めたとしても、私だけは普通の時間を歩んでいる。全てのモノの時が止まっても、私だけは動いている。それが、時々たまらなく怖くなる。全てが静止した世界に取り残されたら・・・。
そういえば、昔、霊夢が私の能力を便利だと言っていた。一度使ってみたいなんて笑いながら話していた。
でも、霊夢はすでに持っている。私の時間を遅くすることも早くすることも霊夢には出来るのだから。

「さて・・・と、そろそろ入りましょうか」
霊夢の声によって、私は現実に引き戻された。
そのまま、すっくと立ち上がる霊夢。私のそばにくると、手を差し伸べてきた。
訳も分からず、彼女の手を握る。じんわりと暖かくて柔らかい手。その手に導かれるように、私は立った。
「あの・・・入るってどこに?」
「どこにって、お風呂に決まっているでしょ」
心臓の動悸がやばいことになっている。
どういうことだろう?いや、まず落ち着け私の心臓。
霊夢はお風呂に入ると言っている。そして、私は霊夢の手に引かれて立ち上がった。
いや、これは状況証拠だけで、早合点かあるいは某軍師の罠かもしれない。「お風呂に入ってくるから、その間にいろいろよろしく」と言うだけかもしれない。霊夢ならあり得る。
私がそうして、あれこれ考えていると、霊夢が終止符を打った。
「背中の洗いっこでもする?・・・というか、突っ立ってないで早く行くわよ」
私はもう、メイドインヘブンだった。



4.
「えぇっ・・・これに二人で入るんですか?」
「何よ? そっちの方が安上がりで効率的でしょ」
咲夜の淡い期待は、想像以上に期待通りだった。
風呂は、二人がやっと入れる程度の大きさしかなかった。
「…魔理沙とかとも一緒に入ってるんですか?」
「うーん、たまにね。あいつはあんまり風呂に入りたがらないし。すごくキノコ臭かったらたたき込むけど」
「そう・・・」
「ほら、ぼーっとしてないで早く入りましょう、冷めたら面倒だわ」
そういって、霊夢は何の気兼ねもなく服を脱ぎ始めた。頭の大きなリボンも解かれて、髪の毛がふわっと舞い、垂れ下がる。今まで寝ていたからか、少し汗っぽい匂いがする。病み上がりの肌は、まだ微熱を帯びて、うすく桃色に染まっている。
そのすべてが咲夜を魅了し、咲夜の時を止めさせた。
「よしっと。服は適当にここら辺に置いておいてね・・・って、まだ恥ずかしがってるの? 別に裸見たからどうこうって訳でもないでしょ」
確かに、あまり待たせるのも迷惑だ。そう思って、服を脱ぎ始めるが、頭がぼーっとしてしまい、いまいちうまく脱げない。ボタン一つにも苦戦してしまう。
「あーっ! じれったいわねぇ」

結局、霊夢が服を脱がす羽目になった。
まったく、今日のこいつはどうしたのかしら?これじゃあ、どっちが病人だかわからないわ。
そう思いながら、メイド服のボタンを一つ一つはずしていく。
そして、とりあえず上はブラジャーだけになった。それも外そうとすると、
「あっ、も、もう大丈夫だから、自分で外してすぐ入るから、先に入っていてください!」
さすがに抵抗があるようだ。霊夢は、嘆息して咲夜の言うとおり、先に入っていることにした。

ジャブッ

昨日は一日寝込んでいたので、一日ぶりのお風呂。体にお湯が染み渡る。
「はぁああ~~」
思わず声も出てしまう。
咲夜って意外と色白なんだなぁ・・・。紅魔館の風呂に秘密があるのだろうか?
そもそも、あの洋館に風呂ってあるのだろうか?まぁ、どっちでもいいか・・・。
そんな取り留めもないことを考えていると、カララッと風呂場の引き戸を開けて、咲夜が入ってくる。手とタオルで局部を隠している。
こうやって、誰かと一緒に入ったことはないのだろうか。
「何隠してるのよ? 一人の時もそうやって入っているの?」
霊夢はわざと意地悪く質問してみた。
「それは・・・隠していません・・・でも・・・」
といって、咲夜はもじもじしている。
「ちょっと、気持ち悪いわよ? 女同士なんだから、もっと堂々としなさいよ」
「・・・・・・」
今度は落ち込んだ。あんまりじっくり話したことは無かったが、よく表情が変わって思ったよりも面白い。

霊夢は、浴槽の縁に肘を置いて、咲夜をじっと見る。
その視線を避けるように顔を反らして「そ、それもそうですね」なんて言いながら、静かにタオルを取る。
その仕草や、プロポーションにドキッとしてしまう。何を考えているんだ女同士で。でも、よく考えてみれば、メイドなんて力仕事以外の何者でもないし、こいつの戦闘スタイルも力技だ。締まるところがきちんと締まっているから、見ほれてしまうのも無理は無い。
「は、入ったら?」
ジャブジャブとわざと音を鳴らして、咲夜が入るスペースを作ってやる。音を立てたのは、照れ隠しと沈黙対策だった。
「じゃあ・・・失礼して・・・」
そっと、それでいて流れるような動作で湯船に入ってくる。どっかの誰かさんとは大違い。
あの白黒のバカは、ここぞとばかりに飛び込んでくるから、霊夢はとばっちりで大変な目に遭う。その度に注意するのだが、
「入浴もパワーだぜ! キリッ」
と意味の分からないことを言う始末。
まぁ、あいつがこんな風に入ってきたら、鳥肌がたつけど。

「ふぅ・・・暖かいですね」
ちゅぷっ
髪を少し掻き揚げながら、咲夜は幸せそうな顔をする。
こういう仕草とか狙ってやっているのだろうか? すごくからかいたくなってくる。
「お嬢様は大丈夫かしら・・・」
咲夜はそういって、天井を見上げた。
霊夢はちょっと面白くない。
「しっかし、あんたも物好きよね。あんな吸血鬼のメイドなんて・・・」
前々から少し疑問に思っていたが、ぶっきらぼうにそう言ってしまった。仮にも使えている主人に対してそんな言われ方をしたら、怒るのが当然だろう。
でも、咲夜は、首を振って柔らかく笑って言う。
「ううん、あんな吸血鬼でもお嬢様はお優しいんですよ? うーん・・・優しいというか・・・裏があるようで裏が無い・・・」
自分でも、優しいというのはしっくりこなかったのか、咲夜は探すように言葉を紡ぐ。
「人間は・・・やっぱり裏表があるでしょう? すべてがそうかはわからないけど、簡単に信用することは出来ないし・・・でも、妖怪は人間に対して圧倒的な力があるのだから裏表を用意する必要は無い・・・だからかしら・・・開けっぴろげで堂々としていて・・・憧れ・・・なのかしら」
やっぱり、咲夜の話は面白くなかった。咲夜にここまで言わせるなんて・・・なんだかわからないけど、もやもやとしたものが、霊夢の体の奥からじわじわと染み出してくる。
それは、行き場を失って、小さなため息として出てきた。咲夜は、はっと我に返ってばしゃばしゃと手を振りながら、「つまらない話をしてごめんなさい」とか言う。本当にその通りだ。どうしてこんな気持ちにならなければいけないのだろう? 霊夢は自分から話を振っておいて、咲夜を恨めしく思った。そして、報復してやろうとも思った。
「そうよっ! 何いきなりシリアスになってるのよっ、このっ!」
ツンッ
「ひゃんっ!?」
霊夢にいきなり怒られて、呆気に取られていた咲夜は突然のツンツン攻撃に、全くの無防備だった。
「あはっ、意外ともち肌ね・・・それに、柔らかいし」
「あっ! ちょっとっ、霊夢!? あぁんっ」
バシャバシャツンツンムニュムニュフニフニ
「やっ、やだっ!? んんっ、もうっ」
「ちょっと揉んだくらいで変な声ださないで」
その言葉を聞いて、咲夜はむっとした顔をする。
「やりましたね・・・こっちだって!!」
ムニュッ
咲夜の手が霊夢の胸をやや乱暴に掴んだ。んっと霊夢は思わず声を上げてしまう。
「・・・・・・・・・・・・」
・・・それきり、咲夜の手が止まってしまう。
「ど、どうしたの?」
「・・・・・・ぶくぶく・・・」
目の前で咲夜がゆっくりと沈んでいく。湯船に少しずつ赤いものが混じってきた。
「咲夜!? 咲夜っ!! ちょっと、なにこれ血? 咲夜ー!!!」
気を失った咲夜をどうにか湯船から引きずり出した。とんだ災難だ。おそらくのぼせてしまったんだろう。鼻血が出ていた。不謹慎だが、のびて鼻血を少し出している咲夜の間抜けな顔に笑ってしまう。
それと同時に、さっきの自分の行動にも赤面する。
咲夜の胸、柔らかくて揉みやすいし気持ちよかったな。・・・どうやら、自分ものぼせているようだった。病み上がりの所為もあるのだろう。
「はぁ・・・病み上がりなのにぶり返しちゃうわね・・・」
咲夜を引きずりながら、ため息をつく霊夢だった。



5.
それは、ある晴れた昼下がり。お嬢様の付き添いで博麗神社を訪れた私は、特にすることも無いので、神社の境内を散歩していた。
その頃は、まだ霊夢に対して特に何も思っていなかった。紅魔館での一件から、少し時が経っていた。首謀者であるお嬢様が神社を訪ねてきても、霊夢は気だるそうに対応するだけで、拒みはしなかった。変わった人間だなと思った。
変わっているのは、私も同じだったけど・・・。
そうして、お嬢様がひとしきり騒ぎ昼寝をしているときだった。私の隣にそっと霊夢がお茶を置いた。
「ありがとうございます」
私は、そのとき縁側から境内を眺めていた。
強い日差しが降り注いで、石畳が異様なほど白く輝いている。
霊夢は短く返事をして、私の隣に腰掛けた。
何もしゃべることなく時間が過ぎていく。お茶が無くなったら、何も言わないのに入れてくれる。
蝉の声も遠く、僅かな夏の音を聞きながら、時間が流れることに身を任せる。普段の私だったら、絶対に過ごさないだろう時間の使い方。・・・霊夢はいつもこんな日常を送っているのだろうか?
その日は、他に何も無く、お嬢様が起きたら私たちはごく自然に別れた。
でも、このときから私は霊夢に興味を持ち始めた。

それから、少し経った昼下がり。
前とほぼ同じシチュエーションで、霊夢は、やっぱり私の隣に腰掛けた。気が付くと、私は霊夢に自分の悩みについて話していた。
「・・・昔は、この能力が大嫌いでした。この能力の所為で、私は他の人間とは違うのだと言うことを痛感してきました。でも・・・紅魔館で働いているうちにそれが変わってきました」
霊夢は私が話している間、時折お茶を飲むだけで促すことも急かすこともせず、ただ黙って聞いてくれた。
「この能力があったから、私は紅魔館で働くことが出来た。仕事は大変な時もあるけど、それでもこの能力も悪くないかもって思い始めたんです」
ずずっ
ちゃんと聞いていることをアピールするように、霊夢はお茶をすする。
私は、次の話をしようかどうか少し躊躇した。と言うよりは、正気に戻ったのかもしれない。
いつの間にか、この博麗の巫女の術中にハマってしまっている・・・。この空間に当てられている・・・。だって、こんな話を自分からするなんて・・・メイド失格だ。
私は、やっぱり忘れてもらおうと思って、霊夢に言おうとした・・・が、それは霊夢の言葉に遮られてしまった。
「神社って言うところは、神様がいらっしゃるところなの。神様は私たちのことを見ているのね。・・・だから、神様の前では職業とか性別や身分も関係ないのよ。・・・妖怪だと多少問題があるけれど。私に話していると思わないで、神様に話していると思えば? うちの神様はすごいのよ? ・・・多分ね」
ずずっ
話の締めくくりにお茶を飲む。
霊夢は、言いたいことだけ言うと、それきり黙ってしまった。・・・あとは、私次第と言うことだ・・・。
なんだか、霊夢はずるいなと思った。

「時が・・・進まなくなったら・・・どうしますか?」

ずずっ
霊夢は相変わらず静かにお茶を飲む。
「もし、周りの人たちの動きが全て止まってしまったら・・・どうすればいいんでしょうか?」
「それは、前言ってた時を止めるって言う手品のこと?」
あれは、手品ではないのだが・・・信じてもらえないのならしょうがない。私はそれでも、話を続けた。
「そうです。私のこの能力がもし正常に機能しなくなって、静止空間に一人置き去りにされてしまったら・・・・・・昔は、それでもよかった。何度か、永遠に止まればいいと思ったこともあります。でも・・・」
その言葉を、霊夢が引き継いでくれた。
「そうね。時間が止まっちゃったら、お茶も沸かないし、異変も起こらないし・・・って、それはいいことか。進むからおもしろいのよね、きっと。でも、悩む必要なんて無いんじゃないの?」
その言葉を受けて、私は霊夢を凝視した。
臆することなく、霊夢は言う。
「時が止まるなんて事無いんだから。・・・もし、あんたが時を止めているって言うんなら、それは多分、時を止めていると思いこんでいるだけだと思う。」
そう言った後、霊夢は縁側から庭に降りて、手を後ろに組みながら、私の正面に来た。
「もし時が本当に止まったなら、あんたの時が動き出すまで私が揺すってあげる。・・・とにかく、色々して動かしてあげるから安心しなさい!」
何故か、その言葉を聞いた途端、私の視界は霞んでしまった・・・。何か言わなければならないのに、言葉をなかなか発せない。なんとか言葉を紡ぐ。
「なっ・・・んで、わ、たしなんかのために・・・」
そのとき、ようやく気付いた。私は、霊夢の前で涙を流していたのだ。
そんな私を見て、霊夢は少し困った顔をして、そして、また笑った。
「巫女は、どんな小さな異変も見逃さないのよ?」



6.
「んんっ・・・はっ」
咲夜は、反射的にばっと起きあがる。
・・・頭がふわふわする。
それでも、なんとか辺りを見回す。どうやら居間のようだ。咲夜は布団の上に寝ていた。
「あっ!?」
いろいろと思い出して、また倒れそうになった。危ない危ない・・・。
「うん・・・あぁ、起きた? ここまで運ぶの大変だったのよ?」
「あ、その、あのときはご迷惑をおかけしまして」
深々と頭を下げる。真っ赤な顔も隠せて一石二鳥だ。
「まぁ、別にいいけどね。それより・・・と、とりあえず、ちゃんと服を着替えたら?」
なぜか霊夢は顔を背けた。
いやな予感がして、下を見てみると、タオルがはだけていた。咲夜は、タオルしか装備していなかったのだ。
「いやぁああああ!!!」
叫ぶと同時に、周りの一切の音が消えた。突差に時間を止めてしまったようだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
いつもの空間。何も音のしない世界。深呼吸を繰り返して、どうにか落ち着く。
今日だけで、何度パニックになったか・・・。霊夢に迷惑をかけっぱなしだ。
ちらと霊夢の方を見る。
背けた霊夢の顔はほんのりと赤くなっている。
それは、お風呂に入って血行が良くなった所為だろうか?
それとも・・・・・・。
「霊夢・・・ごめんなさい。あなたの前にいると、私はもう普通でいることが出来ません・・・。すごくドキドキしてしまって、まともに顔も見れなくて・・・どうしたらいいんだろう・・・?」
時が止まっているのを良いことに、私は思っていることを全て霊夢に伝える。返事が無いとわかっていても。返事が無いからこそ・・・。


「好きです・・・霊夢。貴女のことが好き。・・・でも、きっと
貴女が知ってしまったら、今のままではいられなくなってしまう。私は・・・どうしたら・・・」


「・・・・・・」
「・・・あの、さ。”今”なんて一秒ずつ幻想入りしてるのよ?関係が変わらないなんて、時が止まってるのと一緒よ」
「・・・・・・え?」
「だから、前に言ったでしょう? 進むからおもしろいのよ。進んだから・・・・・・あんたにも会えた」
何が・・・起こっているんだろう?・・・霊夢が動いている。
おかしい・・・おかしい・・・。時を止めたはずなのに・・・。
「さっきのあんたの言葉・・・私は・・・咲夜のことをそんな風に考えたこと無かったから、自分の気持ちがわからないわ」
なんだか、熱い。全身が熱い・・・霊夢が何を言っているのかよく聞こえない。
「でも・・・咲夜がそう思ってくれてるって言うのは・・・まcぁ、その・・・あれね・・・・・・悪く・・・ないかな」
私は・・・私は・・・。
「・・・って聞いてる? うわっ!? 何であんた泣いてんのよ? ・・・・・・はぁ」
急に圧迫感を感じた。
うつむいて泣いていた私は、顔を上げて状況を確認しようとする。
私の顔の横に、霊夢の顔があった。
どうやら・・・抱きしめられているようだ。
「れっ、霊夢!?」
「・・・落ち着いた?」
耳元でそんなことを言われて、どうして落ち着いていられよう?
心臓は張り裂けそうなほどに高鳴っている。
「・・・まったく。人の気持ちをなんだと思っているのかしら」
「なっ・・・何を・・・!?」
「妖怪退治よ」
霊夢は、ぽんっと私を押した。、私はなす術なく布団に倒れ込む。私は霊夢を上から見上げる形になった。
「よっ・・・妖怪退治って・・・」
霊夢はじっと天井をにらみつけている。
「まさか、ここまで悪趣味な奴だとはね! そこから見てるのはわかってるのよ、紫!」
スキマ妖怪の名前が出てきて、私もとっさに霊夢が見ている方を見てみる。
小さな水晶のような物が浮かんでいた。
そして、そこである可能性に気づく。
時を止めたはずなのに、なぜ霊夢は動けたのか・・・。

紫が、ゆっくりと私の方を見て言う。
「ばれちゃったみたいね」
私は、余裕の笑みを絶やさずに返してやる。
「”ばらした”の間違いでしょう?」
まったく。今日一日の約束だからって、零時になったらばらすというのも律儀な女だ。それとも・・・。これは、咲夜にとって最大の敵ね。
「フフフ。それはそうと、私はせっかくだから顔を出すけれど、貴女はどうする?」
「そうね。もう咲夜も気付いているだろうし、あれはもう私のメイドに戻っただから、連れ帰るわよ」
そう言って、私は屋根から降りた。



7.
「さて・・・説明して貰うわよ! 紫!」
私はありったけの剣幕で、紫をにらみつけた。咲夜は、私の後ろでオロオロしている。
怒鳴られた当の本人は、飄々とした顔で、
「別に説明することは何も無いけど?」
と言ってきた。
私が、絶句していると、もう一人。今回の首謀者と思われる妖怪が部屋に入ってきた。
「貴女達二人が煮えきらないから、こうして私たちが手伝ってあげていたのよ」
その吸血鬼はさらりとそんなことを言う。
「余計なお世話よ!! 人の気持ちをなんだと思っているのよ!?」
そう言って、私は咲夜の方を見る。
さすがに、タオルのままでは風邪を引くので、すでに自分の服に着替えている。
「あんた達の気まぐれで、咲夜がどれだけ苦労したと」
「霊夢、もういいんです」
それまで黙っていた咲夜が口を挟む。
予想外のところから声がしたので、私は口ごもってしまった。
「思えば、昨夜からずっとお嬢様に振り回されているような気がしました。でも、それを甘んじて受け入れてきたのは私です。だからいいんです」
「だからって・・・」
「それに・・・私がこうなったらいいなって事がどんどん現実になっていって、少し怖かったけれど、すごく嬉しくて・・・だから、逆にお礼を言わせて欲しいくらいです。ありがとうございます」
その言葉を聞いて、私の中の怒りはすっと消えてしまった。たぶん、怒るのがアホらしくなったんだと思う。
紫の方を見ると、珍しく面食らった顔をしていた。予想が外れたのだろう。
どう考えても、怒るべき立場の人間が感謝するなんて・・・。
「霊夢。もうこんな事はしないから安心しなさい。・・・それから・・・ごめんなさいね」
さらに珍しく私に謝って、紫はさっさとスキマから帰って行った。
レミリアが、くすっと笑ったのが聞こえてきた。
「霊夢。私は便乗しただけだから謝らないわよ? それに、監視していたのも、うちのメイドに手を出さないかと思って見張っていただけだし」
明らかに一番楽しんでいたのはレミリアに違いないのだが、突っ込むのも馬鹿らしいので言わせておいた。
「さぁ、咲夜。帰るわよ? 頭は冷えたかしら?」
「・・・はい。とても」
その表情を見て、私は少し不安になった。
さっきの咲夜の告白の答え。あれはちゃんと伝わっていたのだろうか?今の咲夜の表情は何か吹っ切れたような顔をしている。
咲夜・・・私は・・・。
今にも帰ろうとしている咲夜の後ろ姿に向かって、私は言った。
「咲夜。私も好きよ。貴女のことが・・・」




ex1.
ちょうど、日が空の真ん中に居座っている昼時。人々が行き交う里の中心に奇妙な二人の組み合わせがあった。
メイドと巫女。
和なのか洋なのか統一して欲しいところだが、本人達は一向にそんなことを気にしている素振りはない。
「今日は、買い物に付き合ってくれてありがとう」
「私も、そろそろ買わないといけなかったから、ついでよ。ついで」
霊夢はそう言うと、咲夜の手を引っ張る。
「さぁ! 早いところ買い物を済ませて神社でお茶でもしましょう!」
霊夢に手を引かれながら、咲夜はあの言葉を思い返していた。

前に進めて、本当によかった。


ex2.
「ふーん・・・そんなことがあったんだ」
目の前の少女が、今まで読んでいた本から視線を上げて、私を見る。
少し薄暗い図書館で、レミリアはパチュリーに顛末を説明していた。咲夜が不在の日に一番苦労したのは、パチュリーだった。一応、話しておくのが筋かなとレミリアは珍しく思った。
「・・・それで、貴女は能力を使ったの?」
やっぱり、それが来たか・・・。パチュリーは、相変わらず鋭い。
数秒、間を置いてから私は話す。
「使っていないわ」
それを聞いて、パチュリーは、ほんの少しだけ驚いた顔をした。
「ということは、あの子が力を使えなかったか・・・それとも、あの巫女の能力か」
「咲夜が時を止めたくなかったっていうのは、ありそうね。でも・・・」
そう、今となってはどちらでもいい事だ。
パチュリーは、再び本を読み始めた。
私は、自室に戻ろうとして、最後に一言だけ今ここにはいない従者と紅白の巫女に宣言をした。

「咲夜…私がいるときにノロケたらグングニルよ!」
危うく、一年越しの続編になるところでした。
空いた時間に書いていたのですが、どんどん話が長くなってきて、展開に頭を悩ませ今日までかかりました。
一人称と三人称が交互に出たり、一人称のキャラが変わったりしますが、試みです。読みにくかったらすみません…。あと、今回話を書いていて、改めて東方の奥深さを痛感しました。そして、僕は無知だった…。
mezashiで作者検索をすれば、すぐに前の話が出てくるので、興味がある方は覗いてやってください
mezashi
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コメント



0.740簡易評価
2.100奇声を発する程度の能力削除
さっぱりした甘さの良い咲霊でした
5.100名前が無い程度の能力削除
ヒューッ! 好きだぜ
7.100名前が無い程度の能力削除
咲霊を堪能。ありがたや
続編とは嬉しい限りです。是非ともシリーズ化を目指してもらいたいッ…!
10.100名前が無い程度の能力削除
代わりに濫を×代わりに藍を○ 物語は楽しかったです!
11.無評価mezashi削除
皆さん、コメントありがとうございます!
誤字を早速直させていただきました。ご指摘ありがとうございました。
14.40名前が無い程度の能力削除
咲霊おいしいです。
良いモノを読ませていただきました。

……ですが。

博霊× 博麗○ 頼むからこんな酷い間違い方はしないで……
15.無評価mezashi削除
ご指摘ありがとうございます。すみません…。
修正しました。