重松は77歳で死んだ。ある意味、大往生だった。
死因は爆死。
喜寿の祝いの一発芸で、全身に爆竹を巻きつけ着火する人間花火を敢行したら、心臓が麻痺ってしまったのだ。
生前からこんな馬鹿をやっては仲間や孫達を爆笑させた重松翁も、逝去されると皆が悲しみ悼んだ。
そして今日、命蓮寺にて重松の葬儀がしめやかに執り行われる運びとなった。
――◇――
「む。お前は誰だ?」
「貴方のご主人の青娥よ。今日は貴方にいいものを持ってきたの」
まだ空も白み始めない明け方、青娥は命蓮寺の墓場で運動会をする芳香のもとに訪れた。
贈り物という単語に、芳香はキュッキュと固い首をかしげる。
青娥はそんな反応も想定内だったのか、にっこり笑って片手で印を結ぶ。
すると、フワフワと長方形の箱がこちらに向かって低空浮遊してきて、足元に着地した。
大きさはちょうど人一人が入れる程度。無垢の一枚板を組み上げ、白木造りのシンプルな外観だ。
その箱の正体は、墓場という場所で見るとだいたい予想が付く。
「はい。芳香専用、特注の棺桶よ。素敵でしょ?」
やはり棺桶だった。
芳香は体質なのか長年の習慣なのか、棺桶が一番安眠できる寝床らしい。
昼間はお気に入りのマイ棺桶でグウグウと寝ているが、最近古くなってボロボロの棺桶を思い切って新調してみたのだ。
青娥がゆっくりと蓋を開けると、中には柔らかそうな絹製の白いクッションが敷かれ、周囲を純白の菊花で飾る青娥のニクい演出が施されている。
食う、寝る、青娥、に目が無い芳香は「うおぉ~」と手をばたつかせて全身で喜びを表現する。
青娥はその姿を見て、(奮発して買ってよかったわ~)とご満悦だ。
「青娥! 寝たい! 今すぐそれに寝たいぞぅ!」
「ふふふ、いいわよ」
そう青娥が許可するやいなや、芳香はピョンとダイブして棺桶に寝転がる。
もぞもぞと姿勢を整え手を下ろし、仰向けでシャキッと背筋を伸ばした寝姿となる。
くつろいでいる様に見えないが、これが芳香にとって一番楽な体勢なのだ。
芳香は棺桶の具合を確かめるように肩を揺らして、感想を述べる。
「おぉぉ~。いいぞ。すごくいい」
「それはなにより。じゃあ蓋を閉めて、このまま帰りましょうか」
「ああ。待って、青娥」
「?」
「今日はここでこのまま寝たい」
「……はい?」
また運んできた時と同じ様に芳香ごと棺桶を浮かび上がらせようとしていた青娥は、突然の不可解な要望に眉をひそめた。
「どうして? いつも私の部屋で寝ているでしょう」
「だって、見せたい。青娥から貰ったものだ。いいものだ。皆に見てもらいたいぞう」
「あらあら」
まるで新しい玩具を見せびらかしたい子供の様な発想だが、青娥は悪い気がしなかった。
むしろここまで大事で素晴らしい物だと認識された様で、贈った側としては冥加に尽きるというものだ。
「わかったわ。ただし今日だけよ」
「はーい。青娥大好き」
そう芳香は無邪気に笑うと、目を閉じて脱力する。
そして10数えるまもなく、棺桶から静かな寝息が聞こえてきた。
「相変わらず寝つきがいいわねぇ」
青娥はニヤニヤしながら芳香の頬を撫でる。だが芳香は微動だにもしない。
一度眠ると、テコでも耳元の発破でも起きないのだ。
しばらく芳香の寝顔を堪能した青娥は、手を離して名残惜しそうに蓋を閉める。
さて、一度はいいと言ったものの、ここは命蓮寺の敷地内。一言断っておくべきだ。
しかし今は尼僧にもかなり早い時間帯。
「……もう少し後に出直しましょうかね」
こうして青娥は念のため棺桶に魍魎除けの結界を施し、朝靄けぶる墓場の奥に姿を消した。
――◇――
一輪はピタリと静止した。視線の先には真新しい棺桶。
響子の代わりに朝の掃除に来た一輪は、墓場のど真ん中で棺桶を見つけた。
墓場に棺桶。一見自然だが、実際目の当たりにすると不自然極まりない。
一輪は少し警戒しながら棺桶に近づく。
外見で普通の棺桶より高価な造りらしいと分かった。しかも、魍魎除けの術式まで施されている。
どうやら雑魚妖怪の悪戯や罠の類ではないらしい。
少し気は引けたが、合掌してから蓋を開帳してみる。
(……女の子?)
中には珍妙な服を着た少女が眠っていた。事実寝ているだけだが、一輪にはどこからどう見ても死体に見える。
何故棺桶が放置されているのだろう? 新手の葬り方なのだろうか。これがこの人の宗教なのだろうか。
ともかく、どの宗派でも棺桶を野ざらしは具合が悪かろう。
一輪は雲山に棺桶を持たせて、命蓮寺に運ぶことにした。
「――という訳で、しばらくここに安置してもよろしいでしょうか?」
「そうですね。もしかしたら、ご遺族の誰かが引き取りにくるやもしれません」
皆が起きだし活動し始めた頃、一輪は聖に事情を伝え、とりあえず本堂の隣の部屋に棺桶を置くことにした。
供養のためなら本堂に置くのが適当だが、今日は葬式を執り行うため使えない。
傍では星やナズーリンが、忙しそうに歩き回っていた。
「そういえば、もうすぐ重松さんとご遺族の方が到着します。棺桶の詮議は後にしましょう」
「分かりました」
そして聖と一輪は部屋から出て行く。棺桶の中身が寝息を立てていることに気づかないままに。
重松の葬儀は順調だった。
遺影の重松がダブルピースをしているのには少々違和感があったが、これは重松の生前からの意思らしい。
『しめっぽいのは嫌いだから、なるべく楽しく』
遺族もその言葉や意思を書いた書置きに共感し、なるべく重松が望んだ形通りに葬儀が進んだ。
さてプログラムナンバー12『孫による細かすぎて伝わらない一発ギャグ大会』が終わり、いよいよ出棺となった。
そのお色直しのため、遺族を寺の外で待機させ、重松の棺桶は隣の部屋に移された。
「……なぁ、お色直しって結婚式でやるものだろう。故人の衣装変えなんて、聞いたことが無い」
「まぁまぁナズーリン。これも重松さんのご意思なんです。私達もそれに沿いましょう」
「しかし、本当にこの衣装でいいんだよな。どう考えてもふざけ過ぎだろう。
私がこんなの着せられて送られでもしたら、死んでも死に切れないよ」
「ま、まぁ、これも歴としたご意思です。できるだけ従いましょう」
そう苦笑いして、一輪とナズーリンは重松の白無垢を用意した衣裳に着替えさせ、棺桶の蓋を閉める。
無垢の一枚板を組み上げ、白木造りのシンプルな棺桶た。
さて重松の棺桶を待ち上げ外に出ようとしたその時、玄関と本堂の2方向から声が聞こえてきた。
「ごめんください」
「ナズーリン、少しここへ」
二人はあららと顔を見合わせる。
予定が詰まっているが致し方ない。ナズーリンは聖の元へ、一輪が客の応対に当たることにした。
二人が部屋からでると、ちょうど星が通りかかった。
「ああご主人。重松さんを外へお運びしてくれないか」
「あ、はい。分かりました」
星が頷くのを確認して、ナズーリンは本堂へ行ってしまった。
星は部屋に入る。そして
「これですね」
真っ先に目に付く手前にあった棺桶を、虎の手力で慎重に運び出す。
最後まで星は、奥の方にある棺桶に気づかなかった。
――◇――
「どちら様でしょうか?」
「私は霍青娥と申します。こちらの墓地に置いてある棺桶のことで伺いました」
玄関にいたのは、青娥と名乗る空色の髪の女性だった。
一輪はそこで棺桶が置き去りにされた経緯を知った。
あの棺桶の少女が実は完全に死んでいないことにも驚いたが、聞けば青娥は豊聡耳神子に与する側らしい。
神子の仲間に対して思うところが無い訳でもないが、とりあえずその部下とやらを引き取ってもらうために、一輪は青娥を寺に通す。
「ここに運ばれていましたか。ご親切にありがとうございます」
「仏教では、死体をぞんざいに扱うことは冒涜とされていますから。これは道教でも同じでは?」
「耳に痛いですわね。でも芳香は蘇りました。死体ではありますが、もうその道理が通用する範疇を超えておりますわ」
「……ともかく、その芳香殿はこちらです。葬儀が終わるまで一緒に待機していただきたい」
若干険悪な雰囲気だが、一輪は青娥を件の部屋に案内する。
室内には、棺桶が一基安置されたままだ。
「ここまで運ばれたのに起きないなんて、芳香は本当に寝ぼすけさんねぇ」
青娥は今までの腹の底を見せない微笑から打って変わり、柔和な笑みを浮かべて棺桶を開ける。
刹那、青娥は蓋を開けかけた状態で固まった。
一輪は何だ何だと脇から覗き込む。そして、二人は見た。
ピンクのふんわりした生地のバルーンスカートに、真っ白なフリフリをふんだんにあしらった可愛らしいドレス。
それに身を包むは、頬や腕に残るヤケドの跡をおしろいや紅のお化粧で隠し、とてもやすらかな顔で永眠する重松老人であった。
青娥は完全に思考が停止した。ツッコミどころが多すぎて、脳が許容限界を超えたのだ。
だが、一輪の顔は青ざめる。重大な間違いに気づいたのだ。
「あ、こんなところにいたのですか。もう出棺だから、一輪も葬列に」
「もう出棺!? 星! この人を頼みます!」
一輪は自分を呼びに来た星の脇を脱兎の如く走り抜ける。星はこんなに慌てた一輪を初めて見た。
「そんなに焦らなくてもいいのに」
星は不思議そうだったが、とりあえず目の前の妙な姿勢で固まる女性を見て一言。
「あの、どちら様ですか?」
一輪は走った。廊下ではご法度の行為も、今は構っていられない。
取り返しがつかなくなる前に止めなければ。
近道のため、本堂を突っ切って外に出るルートを選択する。
一輪が本堂に駆け込んだ。
その真っ直ぐ先の外に通じる戸が開け放たれ、そこに聖の後姿が見えた。
(よかった。まだ出棺していない)
そう。今まさに棺が遺族の手によって担がれるところだった。
これなら間に合う。たとえ歩き出しても葬列は牛歩だ。絶対追いつける。
一輪は少し余裕が出て、走る速度を緩める。
その一輪の耳に、聖の厳かな声が流れ聞こえた。
「それではこれより、重松様の生前のご意思による『だんじり出棺』でお見送りを行います。
参列者の方々は、かけ声をお願いいたします」
え?
瞬間、棺が疾走した。
棺を担ぎ上げた男衆が短距離走のごとく猛烈な速さで駆ける。まるで弾丸だ。
周囲の人間も、目を潤ませながらソイヤソイヤ! と威勢のいいかけ声を唱和する。
だがそうこうしている間に、棺は地平の彼方へ消えていった。
一輪は息を切らせて、縁側からその惨状を眺めるのが精一杯。
そして、あえぎながらもコレだけは口に出す。
「ど……どんな出棺なのよぉぉぉ!!!」
――◇――
「お棺を取り違えた!?」
聖の信じられないといった声に、一輪は汗をだらだらかいて肯定する。
命蓮寺が始まってから前代未聞の大騒動に、一同はてんやわんやとなる。
「どどどどどうしましょう!?」
「落ち着きなさい! まずは素数を数えて落ち着くのです」
「そんな暇ないよ聖!
とにかく連絡だ。大声で叫べば届くかもしれない。響子はどこにいる?」
「それが、ノド風邪を引いて昨日から寝込んでいるのよ」
「クソっ! こんな時に限って!」
「こらナズーリン、口が悪いですよ。めっ」
「元はといえばご主人が悪いんだろうがぃ!」
「きゃいん!」
「あの~」
喧々諤々と荒っぽい話し合いをする一同に、青娥がのほほんとした声をかけた。
「皆さん、冷静に。私も少し驚きましたが、芳香はとても丈夫です。
生き埋めだって何日も耐えられますわ。後からゆっくり迎えに行っても大丈夫ですよ」
そう自分の部下の頑丈さを力説する青娥。
だが、青娥はなぜ皆がこんなに狼狽しているか、その理由が分かっていなかった。
それを説明するため、ナズーリンが前に出る。
「青娥だったか。青娥はこの国の葬り方をご存知か?」
「葬り方って……土葬でしょう。芳香もそうでしたよ」
やっぱりそう思っていたか。
ナズーリンはなるべく噛んで含める様に、簡潔な言葉で青娥の重大な勘違いを正す。
「それは大昔の話。今は火葬が一般的だ。無論、幻想郷もそのしきたりに準じている」
青娥はへぇー、と頷く。
だが、その内容が頭に染み渡った瞬間、顔色がみるみる一変する。
足がガクガクと震え、言葉がかすれる。
「じゃ……じゃあ芳香は……」
「ああ。このまま放っておくと、墓場じゃなくて焼場に直行する。
ところで、その芳香は炎にも耐えられるのかい?」
「芳香ああぁぁぁ!! 今行くわあぁぁぁ!!」
青娥は半狂乱状態になって寺の外に飛び出すと、そのまま遮二無二飛び上がる。
そして芳香が連れ去られた方向へと飛翔していった。
突然の出来事に皆は唖然としていたが、ここでようやく冷静な連携を思い出す。
「ナズーリン。あなたは青娥さんと棺桶を追ってください」
「わかった」
「星と村紗は火葬場に先回りを」
「わかりました!」「了解!」
「私と一輪はご遺族の方に事情を説明し、その後そちらに向かいます。
何としても最悪の事態は防ぐのです。いいですね」
聖の言葉に、全員が力強く頷く。そしてそれぞれの配置に散って行った。
「……すみません。こんなことになってしまうなんて」
「反省は後です。今は成すべきことをしましょう」
「――けけけ、あのゾンビもとんだ災難だねぇ」
人を小馬鹿にした様な口調の声に、一輪はむっと上を見上げる。
そこには予想通り、空中に逆さになって胡坐をかくぬえの姿があった。
「ぬえ! こんな時に高みの見物なんていい身分ね。こっちは大変なのよ」
「何よ。雁首揃えて異変に気づかなかったくせに。
というか、遺族も棺桶の中くらい見るでしょ。誰も気づかなかったの?」
皮肉を吐かれて癪に障るが、言われてみると一輪も気になった。
すると、聖が申し訳なさそうに説明する。
「確かに出棺の直前、棺の蓋を開けて最後のお別れを行いました。でも――」
『じいちゃん。長い間ありがとう。楽しかったよ』
『そのおべべ、エキゾチックでよく似合っているね』
『まったく、最後まで笑わせてくれるな』
『でも、重松らしいよ。寂しくなるな』
『重松さん』 『じぃじ』 『シゲさん』
『……何か、身長低くない?』
『そうだな。こんなに小さくなっちゃったんだな……』
『いやそーいうんじゃなくて……第一、これ女の子じゃないのか? 顔も違うし』
『服のせいでそう見えるんだよ。変わり果てた姿だけど、ほら綺麗な顔じゃないか。
まるで寝息が聞こえるみたいだぞ』
『そう……かなぁ』
『母ちゃん。あの顔に貼ってあるやつ何?』
『あれは……きっと白蓮様が有難いお言葉をしたためてくださったのよ。ナンマンダブ ナンマンダブ』
「――この様な具合で、誰も気づかず」
「「いや気づけよ!」」
さすがに一輪とぬえのツッコミがハモる。だが今さらそれを審議してもどうしようもない。
「ともかく降りてきなさい。皆で協力するのよ」
「嫌よ。あのゾンビ、夜中に近づいただけで見境なく襲ってくるんだもの。
それにあれは神子の仲間じゃない。放っておけばいいのよ」
「ぬえ!」
「ふん」
不機嫌に顔を逸らすぬえ。一輪も諌めはするが、実は内心チラッとその考えが頭をよぎっていたため、強く否定できない。
すると聖が口を開く。
「確かに芳香さんは、仏教を否定する立場に近い存在です」
「聖……」
「しかし、立場や主義が違うというだけで助けられる命を無視することは、仏教以前に正道から外れる行為です。
私は意識があるまま焼かれる程の罪が、芳香さんにあるとも思えません。
ぬえの気持ちは分かりますが、その意見を芳香さんが心配で飛び出した青娥さんに披露できますか?」
聖の静かだが意思を孕んだ反駁に、ぬえは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
そして、まるで逃げるようにそそくさと寺の陰に引っ込んでしまった。
一輪はそれを無言で見送った。自分に追う資格がないように思えたからだ。
「一輪、あまりぬえを責めないでください。
ぬえも一輪も、私の事を心配しての思慮だったのでしょう?
それでも、私の指示に従ってくれて感謝していますよ」
一輪の心象を汲んでか、さりげなくフォローの言葉をかける聖。
一輪は少し逡巡したが、今は芳香を助けるのが先決と気持ちを切り替え、聖と共に棺桶の追跡を開始した。
――◇――
「芳香! 芳香ぁ!! どこなの!?」
土地勘に疎い幻想郷の上空。青娥は結い上げた髪を振り乱し、目に一杯の涙を溜めてノドを枯らさんばかりに叫んだ。
普段の艶めかしく、大人の余裕を醸し出す姿は微塵も感じられない。
その取り乱した姿を例えるなら、釈迦に我が子を隠された鬼子母神そのものであった。
故に、ナズーリンは容易に青娥を見つけることができた。
「青娥! 落ち着いて! 話を」
「はぁっ!? これが落ち着けるわけないでしょ!!」
「ツッ!」
「あ……」
青娥をなだめようとしたナズーリンの小さな頬に、鮮やかな朱色が散る。
勢いよく振り抜いた腕がナズーリンに直撃したのを悟り、青娥は我に返った。
ナズーリンは患部に手をやりながら、青娥が正気になったことを見て取る。
「……ご、ごめんなさい」
「いい。私だって部下の子鼠や寺の仲間がこうなったら、穏便ではいられないさ。
それより、私についてきてくれると助かる。
棺桶の速度は異常だが、火葬場までの道筋は予想がつく。今からでも追いつくかもしれない」
ナズーリンの頼もしい言葉に、青娥はようやく頭の熱を下げて気丈に頷く。
そして二人は命蓮寺から続く街道沿いに飛び、棺桶を探した。火葬場の方向に針路を取りつつ、二人は目を凝らす。
「! いた。あれだ」
ナズーリンが前方を指差す。
その先には、土煙を巻き上げて全力疾走する棺があった。
四人の俊足が棺桶を前方へソイヤソイヤと威勢よく運搬する。まるで神輿を100倍速で見ているようだ。
よく見ると、棺桶の上で扇を両手に持ち担ぎ手に発破を掛ける人物がいる。
あれは重松の家内であるトメだ。
重松と同級のお年寄りであるはずだが、足腰をうまく使い、神業的なバランスで揺れる棺桶に立っている。
「くっ、なんて速さなの。全然追いつけない」
青娥が焦燥を滲ませて、怨めしく男衆を睨む。
信じられないことに、彼らは空を飛ぶ二人と速度が互角なのだ。距離が中々詰まらない。
「おーい止まれ! トメさん! 中の人は重松さんじゃないんだぁ!!」
ナズーリンが必死に叫ぶも、轟々と進行方向から吹きつける風が大声を押し流し、同じく疾走する男達とトメの耳元を塞いでいる。
そうこうしている内に、棺桶は人里の門柱をくぐっていった。
もうこんな所まで来たのかと青娥は不安を加速させるが、ナズーリンはしめた! と勝機を見出した表情になる。
「これは好機だ。
人里は建物が多いし道も細い。絶対に減速しないと長細い棺桶は曲がれない。
ぴったりと後ろに張り付いて、角に差し掛かったところで急加速だ」
ナズーリンの分析に、青娥は視線で同意を示す。
すると前方に、おあつらえ向きの曲がり角が出現した。進路は左。
よし。減速だ。追いつける、追いつける。
だがここで、ナズーリンの思惑はもろくも崩れ去る。
「ソイヤっセイ!」
「「「セイッ!」」」
トメが一喝。二枚の扇を左に指揮した刹那、棺桶が向きを90度変えた。
しかもただ方向転換しただけでない。
前方の二人が足をふんばり、後方の二人は全力で右に向かう。すると各自に独立した車輪で旋回するかのごとく、棺桶はぶん回される。
だが、トメが指定の方向を向いた瞬間に絶妙のタイミングで前進の合図を出す。
男衆は鬨をあわせ、寸分の狂いもなく猛ダッシュ。あっと言う間に棺桶を元の速さに乗せてしまう。
この間約1秒。無論、減速はない。
ナズーリンは口をあんぐりと開けて、想定外の事態を受け止める。
自分達でも減速しないと民家に激突しそうな直角の左折を、まさかあんなに軽々とやってのけてしまうとは。
「ぐうぅ! なぜ喪服であんな機動力が出せるんだ!?」
ナズーリンはそうイライラと吐き捨てる。
賢い策士は、自分が泥沼に嵌まってしまったことに臍を噛んだ。
曲がり角での減速は最早期待できない。むしろ路地ではこちらが引き離される公算が高い。
一旦高度をとり、上空から探査するべきか。しかし、どうやって異常事態を知らせる。
ナズーリンの任務は、棺桶に近づけなければ無意味なのだ。
悔しいが、ナズーリンはこの場所での接近を断念した。体勢を立て直し、人里から出たところを追跡するしかない。
だが、そんな計算を完了したナズーリンの手を、青娥がはっしと握る。
「な、何だい?」
「こうなったら、こちらが近道すればいいのです。
むこうがジグザグ曲がりながら進むなら、私達は真っ直ぐ突っ切れば棺桶の目の前に出られる筈です」
「……は?」
ナズーリンは混乱した。
青娥が言わんとすることは分かる。確かにそれなら追いつける。
でも、それができないから困っているのだ。
すると訳の分からないナズーリンの手を引いて、青娥はピタリと前方を駆ける棺桶を見据える。
折しも棺桶は右へ。やはり鮮やかな最小回転半径を描いて家屋の陰に消えてしまう。
だが、青娥はその後先には目もくれず、真っ直ぐ民家に突っ込んでいく。
「!!! ちょ、ま! まさかやめろせい」
ナズーリンの必死の願いは、壁の向こうに抜けた青娥に届かなかった。
「べぶっっっ!!」
「きゃあっ!!」
壁の外のナズーリンは、民家の壁へとモロに正面衝突。まるでカエルが轢き潰された様な少しまずい悲鳴をあげる。
一方青娥は壁に穴を開けたまではいいが、一人分の穴しか開けなかったせいでナズーリンが壁に引っかかり、激しく後ろへつんのめった。
普段一人でしか壁抜けをしない青娥が、慌てていた故の大惨事である。
腕の筋が多少伸びた程度で済んだ青娥は、あまりの衝撃に固まった民家の住人を尻目に、急いでまた壁から外に顔を出す。
するとそこには、顔から出せる液体を全て流して意識が混濁しているナズーリンがひっくり返っていた。
「嘘!? お、起きて。ねぇしっかりして! 貴方がいないと、私は道が分からないのよぉ!」
「うへへぇ……なんか、綺麗な電飾があしらわれたチーズの大行進が見えるぅ……」
「そっち行っちゃだめぇぇぇ!!」
青娥が力任せに揺さぶるが、ナズーリンは蘇ってこない。まさに阿鼻叫喚の絵図である。
そんなことをしている間に、棺桶は人里を通り抜けた。
それは、棺桶が火葬場に到着するまでもう間もないことを意味していた。
――◇――
寅丸星は、空を飛べない村紗水蜜を背負って空中を駆ける。
なにせ自分の肩には、村紗の他に顔も知らない誰かの命がかかっている。急がない訳にはいかない。
村紗も、帽子が風で飛ばないよう押さえながら、それでも意志溢れる顔つきで火葬場を目指す。
寺で、棺桶に運ばれた人の説明をあらかた受けた。星と村紗は、芳香と呼ばれたその人の立場も理解した。
だが、それでも星は芳香のために力を振り絞って加速する。
星が責任を感じていたこともあるが、根底にあるのは『絶対に死なせない』という純粋な正義感であった。
また村紗も、一度門をくぐったなら、その人は寺の大事な客人であると考えている。
その客人が危機で聖から救出の命あれば、村紗は全力で解決にあたる。
大勢の人間を導き救わんとする神の代理人と、大勢の命を預かる船長。
この二人が一人のために手を組み、田んぼの上を通過する。
最早、事の円満解決は時間の問題である。
あっと言う間に人里が後ろに遠ざかる。
二人は使命感を胸に真っ直ぐ飛び、妖怪の山の麓に近づく。
霧の湖、湖のほとりに佇む紅魔館。
それも通り過ぎると、魔法の森が眼下に広がった。だが、この二人の飛行を止めるものなどいない。
眼下には濃い緑が濁流の様に流れ、凄まじい勢いで自分達が前進していることが明白であった。
そして、星が背中の村紗に一点の曇りもない真っ直ぐな声で話しかける。
「村紗」
「何?」
「火葬場は、こちらの方向であっているのですか?」
「星ストォォォップ! 両舷後進一杯! とりあえず止まれぇ!」
村紗はあらん限りの大声を出して星を制動する。
星も驚いて飛ぶのを止めた。
現在位置は魔法の森のど真ん中。どの方向を見ても濃い密度の原生林だ。
「……星。これは私の聞き違いであることを祈るわ。でも復唱願う。
あなた、今何て言った?」
「あの、火葬場は本当にこちらの方向なのかと……
とりあえず真っ直ぐ進んでみたけど、村紗が何にも言わないからこの方角で正しいのかな~って」
その言葉を聞いた途端、村紗は氷山が激突した時のマードック一等航海士も真っ青な程の汗を滝の様に流す。
「わ、私はいつも寺の番をしているから、火葬場の場所なんて知らないのよ。
星こそ、聖のお供でくっついて歩いているから、道程は知っているんじゃないの?」
「え? いや、私は……いつも聖の後ろをついて行くだけなので、詳しい道順はちょっと……」
そして、痛いほどの沈黙が3秒。
その沈黙が、怒りの村紗船長によって破られたのはコンマ2秒後である。
「どーすんのよぉぉ!! とんでもない回り道じゃない! 間に合わないわよこれぇ!」
「すみません! でも済んだことです。今後の対策を講じましょう」
「あんたが言う台詞じゃないよねそれ!?」
「とりあえず人里に戻って道を聞きましょう。いざ軌道修正!
……ところで、人里にはどう戻ったらいいですかね?」
「うわーん!! 自分で勝手に迷子になったー!」
魔法の森のど真ん中に、悲痛な叫びが木霊する。
それとほぼ同時刻。
幻想郷に煙が上がる。
その煙は細くたなびき、まるで生き物の様に大空へ流れていった――
――◇――
「うう……まだ頭がクラクラする……」
「頑張って! 今倒れられたら、私には打つ手が無くなるのよ」
そう励ましの言葉をかける青娥は、ふらふらと飛ぶナズーリンの案内で火葬場を目指していた。
人里でのナズーリンは本気で生命が危なかったが、青娥の仙術と妖怪が持つ生命力のおかげでなんとか持ち直した。
そして、二人は何とか火葬場の近くにまでやってきたのだった。
しかし、ナズーリンの表情は暗い。
体調がおもわしくないせいでもあるが、行けども行けども激走している棺桶に出会わないことに一抹の不安を感じていた。
そして、その悪い予想は現実となる。
「……! 見えた。あれが火葬場、だ……」
ナズーリンの語尾が固くなる。
青娥も急いでその方向に顔を向けるが、その表情は愕然としたものとなる。
煉瓦造りの建物に、高々とそびえる煙突。
その煙突からは、細長い煙が風にたなびいていた。
「……うそ……うそウソ嘘よ!」
青娥が最初は小さく、段々声を荒げて嘘と連呼する。
そして青娥は、猛スピードで火葬場に近づく。
すると建物の壁に一列に並んだ窯の蓋が確認できた。その中で一つだけ、人だかりができている窯がある。
蓋はぴったりと閉められ、職員とおぼしき人間が合掌をしながら念仏を唱えている。
その光景を目撃したことを引き金に、頭のどこかで否定していた事象が瞬時に脳内を侵す。
芳香の事は、もう手遅れである。
そう実感するのには、充分だった。
「イヤアアアァァァァァ!! 芳香ぁぁぁ! 芳香ぁぁぁぁぁ!!」
青娥の甲高い咆哮が、ナズーリンや職員の耳に突き刺さる。
もはや理性があるのかないのか分からない青娥は、窯の蓋に職員の制止も聞かずに飛びつく。
そして留め金をあっという間に外し、蓋を開ける。
だがそこには、絶望の炎がごうごうと燃え盛っていた。
至る所から火炎が噴射し、中の様子は全くうかがえない。
だが確実に言えることは、この中ではたとえキョンシーであろうと、生命どころか原形を留めることさえ不可能である、ということだ。
そんな煉獄を連想させる炎の奔流は、青娥の心を打ちのめした。
ナズーリンが青娥を引き離し、灼熱を封じる様に蓋が閉じられた。
何事かと職員らは問いたげだったが、ナズーリンは青娥の正面に回り込む。
その時の青娥の顔からは表情というものが抜け落ち、まるで能面だった。
だが、その瞳からハラハラと涙が落ち、地面を濡らす。
「…………め……しか」
「……青娥?」
「……ごめん……ごめん、芳香……間に合わなかった……」
言葉にすることで現実を存分に受け止めたのか、青娥の顔がくしゃりと歪む。
「青娥……」
「う……うう……あああああ! うわあぁぁぁ!!」
青娥は名前を呼んだナズーリンにもたれかかる様にしがみつき、そのまま魂消る程の悲鳴と嗚咽をあげてむせび泣く。
それはまさに、愛する者との突然の別離を嘆く姿そのものであり、皮肉にも火葬場という場所には適切な光景であった。
ナズーリンもその取り乱し様に心を締めつけられ、そっと背中を撫でながら謝罪の言葉を漏らす。
「青娥……すまなかった。私がついていながら、こんな」
「うう……芳香ぁ……ごめんなさい」
「青娥、泣かないでくれ」
「あああああ……あうう……」
「せーが、どうして泣いてる?」
「だって……芳香が、芳香がぁ」
「おう? 私がどーかしたか?」
青娥はしばらく間があって、弾かれた様に後ろを振り向く。
ナズーリンは、とっくに信じられない物を見る様な目つきで発言の主を眺めていた。
そこにいたのは、蒼白い顔にお札をつけ、小首をかしげる前ならえのキョンシーが一人。
そう、先ほど焼かれたはずの芳香その人であった。
「……芳香?」
「おーう。なんだー?」
「芳香……っ」
「おお。私のことだよなー……私は誰だ?」
呆然と呟く青娥に、あっけらかんと答える芳香。
次に語尾を震わしながら名前を呼ぶ青娥に、相変わらずとぼけた返答をする芳香。
それだけで青娥が芳香を認識して、抱きしめるため地を蹴るのには充分だった。
「芳香! 芳香ぁぁぁ!」
「おおう! せーががうぉぉ!!」
青娥は芳香をひしと抱きすくめ、芳香は後ろに倒れそうになる。
だがなんとか腕を青娥の両脇に入れて支えると、芳香はとりあえず泣きじゃくる青娥を落ち着かせようと両腕を上下させて精一杯背中を撫でようとする。
だがそれはむしろ青娥の脆い部分を刺激した様で、ますます青娥は女児のごとくわんわんと泣き崩れる。
一方のナズーリンは、そんな感動の再会を呆気にとられて見つめていた。
「そんな、いったいどうして」
信じられないという口調でそう漏らしたナズーリンの視界の端に、懸命に走ってくる二人組が見えた。
「はぁはぁ……間に合ったのね」
「ぎりぎりでしたが、通じたようです」
「一輪に聖。通じたって、どういうことだい?」
現れたのは、遺族と棺桶を追いかけていた二人。後ろの方にはわらわらと人の集団がついてきている。
どうやらこの二人は、この奇跡の種を知っているらしい。
ナズーリンが二人に尋ねると、一輪はこう答えた。
「火葬場に連絡をしたのよ。それでお棺の取り違えを伝えたの」
「連絡って……大声が使えない今、どうやって」
「狼煙を上げたのです」
「の、のろし?」
聖はそう言って命蓮寺の方角の上空を指差す。
そこには赤茶けた色の細い煙が、なんとカタカナの形に一筆書きの短文となって、でかでかとたなびいていた。
少し風に流されて崩れてはいるが、充分こう読めた。
『キンキュウジタイ カンオケノ ナカハ シゲマツニアラズ
スミヤカニ カソウ テイシセヨ』
「すごい……ちゃんと伝わるじゃないか。こんなこと誰が」
ナズーリンが感嘆するのも無理はない。
こんな物理法則を捻じ曲げられる輩は、幻想郷にも数えるほどしかいないだろう。
そのような特殊能力を惜しげもなく披露した張本人の名が、一輪から明かされた。
「ぬえとマミゾウさんよ」
「ええ!? 親分と、あのぬえが」
「そう。私たちがご遺族に状況を説明していたら、ぬえが話に割り込んできて――」
『ねぇ、一輪』
『ぬえ……何か用なの?』
『そんなおっかない顔しないでよ……要は棺桶を焼くな、って火葬場に伝わればいいんだよね。
だったら、マミゾウ親分なら何とかできるかも』
『ええ!? 本当?』
『まぁ、頼んでみる』
『でもどーゆー風の吹き回し? 急に協力的になって』
『それは……
私もいろいろ考えたんだけど、単純に……私だったら大事な人が、何の前触れも別れも無しに燃やされるのは嫌だな……って』
『ぬえ』
『……何、聖』
『その意義や良し。分かってくれて、ありがとう』
『ふん……』
「――それで、ぬえがマミゾウさんに頼んで、マミゾウさんの力を込めた落ち葉を燃して作った煙を、ああいう風に化けさせてもらったのよ」
「半分は賭けでした。そもそもこの作戦は火葬場の職員がこちらの方を見ていて、なおかつ文章の意味を察していただくことが前提でしたから。
しかし、優秀な観察眼と御仏のご意思のお陰で、最悪の結果は回避した様です」
そう、聖は清々しい表情で莞爾として笑う。
「じゃ、じゃあ今そこの窯で焼いているのは何者だい?」
概ね状況を理解したナズーリンが最後の疑問を投げかけると、答えは先程まで立ちん坊だった職員の一人から返ってきた。
「ああ、こちらはとある農家から火葬を依頼された農耕馬のご遺体です。
ここは馬頭観音もお祀りしていて、特別な依頼があった時にこうして稼働しています」
「つまり……中は人じゃなくて馬だったのか」
ここまできて、ナズーリンはようやく安心から力が抜け、地面へ腰を下ろす。
そこから聖たちの斜め後方をよく見ると、ナズーリンと同じように喪服の男衆が肩で息をして空の棺桶の周りにへたりこんでおり、その男たちをトメが「よくやった。感動した!」と声をかけて慰労していた。
ナズーリンがその様子をやれやれと見つめていると、背後に気配を感じた。
振り返るとまだ涙が乾ききっていない青娥が、やおら地面に三つ指をついて頭を下げる。
「ナズーリン、皆さん……本当に、本当にありがとうございます」
「いやいや、頭を上げてくれ。私はそういうのが苦手なんだ」
「私たちは当然のことをしたまでです」
ナズーリンはむず痒そうに青娥の体を起こしてやり、聖もそれに微笑みを持って追随する。
そんな姿を目の当たりにして、一輪は青娥の印象を改めた。
死体を使役することに抵抗はあるが、青娥は残酷でも冷血でもないことが充分に分かった。
それに、一輪は純粋に嬉しかった。
「せーが。泣くのイヤ。だめ。せーがは笑ってるのが、一番いいぞう」
そう芳香に語りかけられて、ようやく柔和な表情を見せる青娥を守れてよかったと思う。
次に会う時は、初対面の様なわだかまりも消えているだろう。
一輪はそう確信していた。
そして遺族の一団が本物の棺桶と共にここへ到着する。
先頭の人間が持つ遺影の中で、重松が騒動の終結をダブルピースで祝福しているのだった――
「あれ、何か足りない様な……」
――◇――
「……ヤードを回せ、船を止めろ。船長の命令だ。ヤードを回せ、船を止め」
「村紗、とりあえずこっちが人里の様な気がします。さぁ行きましょう」
「とりあえず、気がします、で針路を修正できるかぁ!!
今信号弾のスペル作るから! それで助けを呼ぶから!」
その日の深夜。先回りをするはずの船長とご本尊コンビは、未だ樹海を彷徨っていた。
「はぁ。でもこんな真夜中、しかも魔法の森のど真ん中で信号弾を上げても、果たして誰か気づきますかねぇ?」
「何でこの子は恐ろしく冷静なのよぉ!! メーデーメーデー! たーすけてぇ!」
そして魔法の森に、村紗の不憫な叫びが響く。
その二日後、魔理沙がげっそりと痩せた村紗と何故か心身ともに健康なままの星を発見、救出。
命蓮寺に帰った二人は、それぞれ心配していた一輪とナズーリンに泣きながらビンタされるという理不尽を味わったとさ。
【終】
死因は爆死。
喜寿の祝いの一発芸で、全身に爆竹を巻きつけ着火する人間花火を敢行したら、心臓が麻痺ってしまったのだ。
生前からこんな馬鹿をやっては仲間や孫達を爆笑させた重松翁も、逝去されると皆が悲しみ悼んだ。
そして今日、命蓮寺にて重松の葬儀がしめやかに執り行われる運びとなった。
――◇――
「む。お前は誰だ?」
「貴方のご主人の青娥よ。今日は貴方にいいものを持ってきたの」
まだ空も白み始めない明け方、青娥は命蓮寺の墓場で運動会をする芳香のもとに訪れた。
贈り物という単語に、芳香はキュッキュと固い首をかしげる。
青娥はそんな反応も想定内だったのか、にっこり笑って片手で印を結ぶ。
すると、フワフワと長方形の箱がこちらに向かって低空浮遊してきて、足元に着地した。
大きさはちょうど人一人が入れる程度。無垢の一枚板を組み上げ、白木造りのシンプルな外観だ。
その箱の正体は、墓場という場所で見るとだいたい予想が付く。
「はい。芳香専用、特注の棺桶よ。素敵でしょ?」
やはり棺桶だった。
芳香は体質なのか長年の習慣なのか、棺桶が一番安眠できる寝床らしい。
昼間はお気に入りのマイ棺桶でグウグウと寝ているが、最近古くなってボロボロの棺桶を思い切って新調してみたのだ。
青娥がゆっくりと蓋を開けると、中には柔らかそうな絹製の白いクッションが敷かれ、周囲を純白の菊花で飾る青娥のニクい演出が施されている。
食う、寝る、青娥、に目が無い芳香は「うおぉ~」と手をばたつかせて全身で喜びを表現する。
青娥はその姿を見て、(奮発して買ってよかったわ~)とご満悦だ。
「青娥! 寝たい! 今すぐそれに寝たいぞぅ!」
「ふふふ、いいわよ」
そう青娥が許可するやいなや、芳香はピョンとダイブして棺桶に寝転がる。
もぞもぞと姿勢を整え手を下ろし、仰向けでシャキッと背筋を伸ばした寝姿となる。
くつろいでいる様に見えないが、これが芳香にとって一番楽な体勢なのだ。
芳香は棺桶の具合を確かめるように肩を揺らして、感想を述べる。
「おぉぉ~。いいぞ。すごくいい」
「それはなにより。じゃあ蓋を閉めて、このまま帰りましょうか」
「ああ。待って、青娥」
「?」
「今日はここでこのまま寝たい」
「……はい?」
また運んできた時と同じ様に芳香ごと棺桶を浮かび上がらせようとしていた青娥は、突然の不可解な要望に眉をひそめた。
「どうして? いつも私の部屋で寝ているでしょう」
「だって、見せたい。青娥から貰ったものだ。いいものだ。皆に見てもらいたいぞう」
「あらあら」
まるで新しい玩具を見せびらかしたい子供の様な発想だが、青娥は悪い気がしなかった。
むしろここまで大事で素晴らしい物だと認識された様で、贈った側としては冥加に尽きるというものだ。
「わかったわ。ただし今日だけよ」
「はーい。青娥大好き」
そう芳香は無邪気に笑うと、目を閉じて脱力する。
そして10数えるまもなく、棺桶から静かな寝息が聞こえてきた。
「相変わらず寝つきがいいわねぇ」
青娥はニヤニヤしながら芳香の頬を撫でる。だが芳香は微動だにもしない。
一度眠ると、テコでも耳元の発破でも起きないのだ。
しばらく芳香の寝顔を堪能した青娥は、手を離して名残惜しそうに蓋を閉める。
さて、一度はいいと言ったものの、ここは命蓮寺の敷地内。一言断っておくべきだ。
しかし今は尼僧にもかなり早い時間帯。
「……もう少し後に出直しましょうかね」
こうして青娥は念のため棺桶に魍魎除けの結界を施し、朝靄けぶる墓場の奥に姿を消した。
――◇――
一輪はピタリと静止した。視線の先には真新しい棺桶。
響子の代わりに朝の掃除に来た一輪は、墓場のど真ん中で棺桶を見つけた。
墓場に棺桶。一見自然だが、実際目の当たりにすると不自然極まりない。
一輪は少し警戒しながら棺桶に近づく。
外見で普通の棺桶より高価な造りらしいと分かった。しかも、魍魎除けの術式まで施されている。
どうやら雑魚妖怪の悪戯や罠の類ではないらしい。
少し気は引けたが、合掌してから蓋を開帳してみる。
(……女の子?)
中には珍妙な服を着た少女が眠っていた。事実寝ているだけだが、一輪にはどこからどう見ても死体に見える。
何故棺桶が放置されているのだろう? 新手の葬り方なのだろうか。これがこの人の宗教なのだろうか。
ともかく、どの宗派でも棺桶を野ざらしは具合が悪かろう。
一輪は雲山に棺桶を持たせて、命蓮寺に運ぶことにした。
「――という訳で、しばらくここに安置してもよろしいでしょうか?」
「そうですね。もしかしたら、ご遺族の誰かが引き取りにくるやもしれません」
皆が起きだし活動し始めた頃、一輪は聖に事情を伝え、とりあえず本堂の隣の部屋に棺桶を置くことにした。
供養のためなら本堂に置くのが適当だが、今日は葬式を執り行うため使えない。
傍では星やナズーリンが、忙しそうに歩き回っていた。
「そういえば、もうすぐ重松さんとご遺族の方が到着します。棺桶の詮議は後にしましょう」
「分かりました」
そして聖と一輪は部屋から出て行く。棺桶の中身が寝息を立てていることに気づかないままに。
重松の葬儀は順調だった。
遺影の重松がダブルピースをしているのには少々違和感があったが、これは重松の生前からの意思らしい。
『しめっぽいのは嫌いだから、なるべく楽しく』
遺族もその言葉や意思を書いた書置きに共感し、なるべく重松が望んだ形通りに葬儀が進んだ。
さてプログラムナンバー12『孫による細かすぎて伝わらない一発ギャグ大会』が終わり、いよいよ出棺となった。
そのお色直しのため、遺族を寺の外で待機させ、重松の棺桶は隣の部屋に移された。
「……なぁ、お色直しって結婚式でやるものだろう。故人の衣装変えなんて、聞いたことが無い」
「まぁまぁナズーリン。これも重松さんのご意思なんです。私達もそれに沿いましょう」
「しかし、本当にこの衣装でいいんだよな。どう考えてもふざけ過ぎだろう。
私がこんなの着せられて送られでもしたら、死んでも死に切れないよ」
「ま、まぁ、これも歴としたご意思です。できるだけ従いましょう」
そう苦笑いして、一輪とナズーリンは重松の白無垢を用意した衣裳に着替えさせ、棺桶の蓋を閉める。
無垢の一枚板を組み上げ、白木造りのシンプルな棺桶た。
さて重松の棺桶を待ち上げ外に出ようとしたその時、玄関と本堂の2方向から声が聞こえてきた。
「ごめんください」
「ナズーリン、少しここへ」
二人はあららと顔を見合わせる。
予定が詰まっているが致し方ない。ナズーリンは聖の元へ、一輪が客の応対に当たることにした。
二人が部屋からでると、ちょうど星が通りかかった。
「ああご主人。重松さんを外へお運びしてくれないか」
「あ、はい。分かりました」
星が頷くのを確認して、ナズーリンは本堂へ行ってしまった。
星は部屋に入る。そして
「これですね」
真っ先に目に付く手前にあった棺桶を、虎の手力で慎重に運び出す。
最後まで星は、奥の方にある棺桶に気づかなかった。
――◇――
「どちら様でしょうか?」
「私は霍青娥と申します。こちらの墓地に置いてある棺桶のことで伺いました」
玄関にいたのは、青娥と名乗る空色の髪の女性だった。
一輪はそこで棺桶が置き去りにされた経緯を知った。
あの棺桶の少女が実は完全に死んでいないことにも驚いたが、聞けば青娥は豊聡耳神子に与する側らしい。
神子の仲間に対して思うところが無い訳でもないが、とりあえずその部下とやらを引き取ってもらうために、一輪は青娥を寺に通す。
「ここに運ばれていましたか。ご親切にありがとうございます」
「仏教では、死体をぞんざいに扱うことは冒涜とされていますから。これは道教でも同じでは?」
「耳に痛いですわね。でも芳香は蘇りました。死体ではありますが、もうその道理が通用する範疇を超えておりますわ」
「……ともかく、その芳香殿はこちらです。葬儀が終わるまで一緒に待機していただきたい」
若干険悪な雰囲気だが、一輪は青娥を件の部屋に案内する。
室内には、棺桶が一基安置されたままだ。
「ここまで運ばれたのに起きないなんて、芳香は本当に寝ぼすけさんねぇ」
青娥は今までの腹の底を見せない微笑から打って変わり、柔和な笑みを浮かべて棺桶を開ける。
刹那、青娥は蓋を開けかけた状態で固まった。
一輪は何だ何だと脇から覗き込む。そして、二人は見た。
ピンクのふんわりした生地のバルーンスカートに、真っ白なフリフリをふんだんにあしらった可愛らしいドレス。
それに身を包むは、頬や腕に残るヤケドの跡をおしろいや紅のお化粧で隠し、とてもやすらかな顔で永眠する重松老人であった。
青娥は完全に思考が停止した。ツッコミどころが多すぎて、脳が許容限界を超えたのだ。
だが、一輪の顔は青ざめる。重大な間違いに気づいたのだ。
「あ、こんなところにいたのですか。もう出棺だから、一輪も葬列に」
「もう出棺!? 星! この人を頼みます!」
一輪は自分を呼びに来た星の脇を脱兎の如く走り抜ける。星はこんなに慌てた一輪を初めて見た。
「そんなに焦らなくてもいいのに」
星は不思議そうだったが、とりあえず目の前の妙な姿勢で固まる女性を見て一言。
「あの、どちら様ですか?」
一輪は走った。廊下ではご法度の行為も、今は構っていられない。
取り返しがつかなくなる前に止めなければ。
近道のため、本堂を突っ切って外に出るルートを選択する。
一輪が本堂に駆け込んだ。
その真っ直ぐ先の外に通じる戸が開け放たれ、そこに聖の後姿が見えた。
(よかった。まだ出棺していない)
そう。今まさに棺が遺族の手によって担がれるところだった。
これなら間に合う。たとえ歩き出しても葬列は牛歩だ。絶対追いつける。
一輪は少し余裕が出て、走る速度を緩める。
その一輪の耳に、聖の厳かな声が流れ聞こえた。
「それではこれより、重松様の生前のご意思による『だんじり出棺』でお見送りを行います。
参列者の方々は、かけ声をお願いいたします」
え?
瞬間、棺が疾走した。
棺を担ぎ上げた男衆が短距離走のごとく猛烈な速さで駆ける。まるで弾丸だ。
周囲の人間も、目を潤ませながらソイヤソイヤ! と威勢のいいかけ声を唱和する。
だがそうこうしている間に、棺は地平の彼方へ消えていった。
一輪は息を切らせて、縁側からその惨状を眺めるのが精一杯。
そして、あえぎながらもコレだけは口に出す。
「ど……どんな出棺なのよぉぉぉ!!!」
――◇――
「お棺を取り違えた!?」
聖の信じられないといった声に、一輪は汗をだらだらかいて肯定する。
命蓮寺が始まってから前代未聞の大騒動に、一同はてんやわんやとなる。
「どどどどどうしましょう!?」
「落ち着きなさい! まずは素数を数えて落ち着くのです」
「そんな暇ないよ聖!
とにかく連絡だ。大声で叫べば届くかもしれない。響子はどこにいる?」
「それが、ノド風邪を引いて昨日から寝込んでいるのよ」
「クソっ! こんな時に限って!」
「こらナズーリン、口が悪いですよ。めっ」
「元はといえばご主人が悪いんだろうがぃ!」
「きゃいん!」
「あの~」
喧々諤々と荒っぽい話し合いをする一同に、青娥がのほほんとした声をかけた。
「皆さん、冷静に。私も少し驚きましたが、芳香はとても丈夫です。
生き埋めだって何日も耐えられますわ。後からゆっくり迎えに行っても大丈夫ですよ」
そう自分の部下の頑丈さを力説する青娥。
だが、青娥はなぜ皆がこんなに狼狽しているか、その理由が分かっていなかった。
それを説明するため、ナズーリンが前に出る。
「青娥だったか。青娥はこの国の葬り方をご存知か?」
「葬り方って……土葬でしょう。芳香もそうでしたよ」
やっぱりそう思っていたか。
ナズーリンはなるべく噛んで含める様に、簡潔な言葉で青娥の重大な勘違いを正す。
「それは大昔の話。今は火葬が一般的だ。無論、幻想郷もそのしきたりに準じている」
青娥はへぇー、と頷く。
だが、その内容が頭に染み渡った瞬間、顔色がみるみる一変する。
足がガクガクと震え、言葉がかすれる。
「じゃ……じゃあ芳香は……」
「ああ。このまま放っておくと、墓場じゃなくて焼場に直行する。
ところで、その芳香は炎にも耐えられるのかい?」
「芳香ああぁぁぁ!! 今行くわあぁぁぁ!!」
青娥は半狂乱状態になって寺の外に飛び出すと、そのまま遮二無二飛び上がる。
そして芳香が連れ去られた方向へと飛翔していった。
突然の出来事に皆は唖然としていたが、ここでようやく冷静な連携を思い出す。
「ナズーリン。あなたは青娥さんと棺桶を追ってください」
「わかった」
「星と村紗は火葬場に先回りを」
「わかりました!」「了解!」
「私と一輪はご遺族の方に事情を説明し、その後そちらに向かいます。
何としても最悪の事態は防ぐのです。いいですね」
聖の言葉に、全員が力強く頷く。そしてそれぞれの配置に散って行った。
「……すみません。こんなことになってしまうなんて」
「反省は後です。今は成すべきことをしましょう」
「――けけけ、あのゾンビもとんだ災難だねぇ」
人を小馬鹿にした様な口調の声に、一輪はむっと上を見上げる。
そこには予想通り、空中に逆さになって胡坐をかくぬえの姿があった。
「ぬえ! こんな時に高みの見物なんていい身分ね。こっちは大変なのよ」
「何よ。雁首揃えて異変に気づかなかったくせに。
というか、遺族も棺桶の中くらい見るでしょ。誰も気づかなかったの?」
皮肉を吐かれて癪に障るが、言われてみると一輪も気になった。
すると、聖が申し訳なさそうに説明する。
「確かに出棺の直前、棺の蓋を開けて最後のお別れを行いました。でも――」
『じいちゃん。長い間ありがとう。楽しかったよ』
『そのおべべ、エキゾチックでよく似合っているね』
『まったく、最後まで笑わせてくれるな』
『でも、重松らしいよ。寂しくなるな』
『重松さん』 『じぃじ』 『シゲさん』
『……何か、身長低くない?』
『そうだな。こんなに小さくなっちゃったんだな……』
『いやそーいうんじゃなくて……第一、これ女の子じゃないのか? 顔も違うし』
『服のせいでそう見えるんだよ。変わり果てた姿だけど、ほら綺麗な顔じゃないか。
まるで寝息が聞こえるみたいだぞ』
『そう……かなぁ』
『母ちゃん。あの顔に貼ってあるやつ何?』
『あれは……きっと白蓮様が有難いお言葉をしたためてくださったのよ。ナンマンダブ ナンマンダブ』
「――この様な具合で、誰も気づかず」
「「いや気づけよ!」」
さすがに一輪とぬえのツッコミがハモる。だが今さらそれを審議してもどうしようもない。
「ともかく降りてきなさい。皆で協力するのよ」
「嫌よ。あのゾンビ、夜中に近づいただけで見境なく襲ってくるんだもの。
それにあれは神子の仲間じゃない。放っておけばいいのよ」
「ぬえ!」
「ふん」
不機嫌に顔を逸らすぬえ。一輪も諌めはするが、実は内心チラッとその考えが頭をよぎっていたため、強く否定できない。
すると聖が口を開く。
「確かに芳香さんは、仏教を否定する立場に近い存在です」
「聖……」
「しかし、立場や主義が違うというだけで助けられる命を無視することは、仏教以前に正道から外れる行為です。
私は意識があるまま焼かれる程の罪が、芳香さんにあるとも思えません。
ぬえの気持ちは分かりますが、その意見を芳香さんが心配で飛び出した青娥さんに披露できますか?」
聖の静かだが意思を孕んだ反駁に、ぬえは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
そして、まるで逃げるようにそそくさと寺の陰に引っ込んでしまった。
一輪はそれを無言で見送った。自分に追う資格がないように思えたからだ。
「一輪、あまりぬえを責めないでください。
ぬえも一輪も、私の事を心配しての思慮だったのでしょう?
それでも、私の指示に従ってくれて感謝していますよ」
一輪の心象を汲んでか、さりげなくフォローの言葉をかける聖。
一輪は少し逡巡したが、今は芳香を助けるのが先決と気持ちを切り替え、聖と共に棺桶の追跡を開始した。
――◇――
「芳香! 芳香ぁ!! どこなの!?」
土地勘に疎い幻想郷の上空。青娥は結い上げた髪を振り乱し、目に一杯の涙を溜めてノドを枯らさんばかりに叫んだ。
普段の艶めかしく、大人の余裕を醸し出す姿は微塵も感じられない。
その取り乱した姿を例えるなら、釈迦に我が子を隠された鬼子母神そのものであった。
故に、ナズーリンは容易に青娥を見つけることができた。
「青娥! 落ち着いて! 話を」
「はぁっ!? これが落ち着けるわけないでしょ!!」
「ツッ!」
「あ……」
青娥をなだめようとしたナズーリンの小さな頬に、鮮やかな朱色が散る。
勢いよく振り抜いた腕がナズーリンに直撃したのを悟り、青娥は我に返った。
ナズーリンは患部に手をやりながら、青娥が正気になったことを見て取る。
「……ご、ごめんなさい」
「いい。私だって部下の子鼠や寺の仲間がこうなったら、穏便ではいられないさ。
それより、私についてきてくれると助かる。
棺桶の速度は異常だが、火葬場までの道筋は予想がつく。今からでも追いつくかもしれない」
ナズーリンの頼もしい言葉に、青娥はようやく頭の熱を下げて気丈に頷く。
そして二人は命蓮寺から続く街道沿いに飛び、棺桶を探した。火葬場の方向に針路を取りつつ、二人は目を凝らす。
「! いた。あれだ」
ナズーリンが前方を指差す。
その先には、土煙を巻き上げて全力疾走する棺があった。
四人の俊足が棺桶を前方へソイヤソイヤと威勢よく運搬する。まるで神輿を100倍速で見ているようだ。
よく見ると、棺桶の上で扇を両手に持ち担ぎ手に発破を掛ける人物がいる。
あれは重松の家内であるトメだ。
重松と同級のお年寄りであるはずだが、足腰をうまく使い、神業的なバランスで揺れる棺桶に立っている。
「くっ、なんて速さなの。全然追いつけない」
青娥が焦燥を滲ませて、怨めしく男衆を睨む。
信じられないことに、彼らは空を飛ぶ二人と速度が互角なのだ。距離が中々詰まらない。
「おーい止まれ! トメさん! 中の人は重松さんじゃないんだぁ!!」
ナズーリンが必死に叫ぶも、轟々と進行方向から吹きつける風が大声を押し流し、同じく疾走する男達とトメの耳元を塞いでいる。
そうこうしている内に、棺桶は人里の門柱をくぐっていった。
もうこんな所まで来たのかと青娥は不安を加速させるが、ナズーリンはしめた! と勝機を見出した表情になる。
「これは好機だ。
人里は建物が多いし道も細い。絶対に減速しないと長細い棺桶は曲がれない。
ぴったりと後ろに張り付いて、角に差し掛かったところで急加速だ」
ナズーリンの分析に、青娥は視線で同意を示す。
すると前方に、おあつらえ向きの曲がり角が出現した。進路は左。
よし。減速だ。追いつける、追いつける。
だがここで、ナズーリンの思惑はもろくも崩れ去る。
「ソイヤっセイ!」
「「「セイッ!」」」
トメが一喝。二枚の扇を左に指揮した刹那、棺桶が向きを90度変えた。
しかもただ方向転換しただけでない。
前方の二人が足をふんばり、後方の二人は全力で右に向かう。すると各自に独立した車輪で旋回するかのごとく、棺桶はぶん回される。
だが、トメが指定の方向を向いた瞬間に絶妙のタイミングで前進の合図を出す。
男衆は鬨をあわせ、寸分の狂いもなく猛ダッシュ。あっと言う間に棺桶を元の速さに乗せてしまう。
この間約1秒。無論、減速はない。
ナズーリンは口をあんぐりと開けて、想定外の事態を受け止める。
自分達でも減速しないと民家に激突しそうな直角の左折を、まさかあんなに軽々とやってのけてしまうとは。
「ぐうぅ! なぜ喪服であんな機動力が出せるんだ!?」
ナズーリンはそうイライラと吐き捨てる。
賢い策士は、自分が泥沼に嵌まってしまったことに臍を噛んだ。
曲がり角での減速は最早期待できない。むしろ路地ではこちらが引き離される公算が高い。
一旦高度をとり、上空から探査するべきか。しかし、どうやって異常事態を知らせる。
ナズーリンの任務は、棺桶に近づけなければ無意味なのだ。
悔しいが、ナズーリンはこの場所での接近を断念した。体勢を立て直し、人里から出たところを追跡するしかない。
だが、そんな計算を完了したナズーリンの手を、青娥がはっしと握る。
「な、何だい?」
「こうなったら、こちらが近道すればいいのです。
むこうがジグザグ曲がりながら進むなら、私達は真っ直ぐ突っ切れば棺桶の目の前に出られる筈です」
「……は?」
ナズーリンは混乱した。
青娥が言わんとすることは分かる。確かにそれなら追いつける。
でも、それができないから困っているのだ。
すると訳の分からないナズーリンの手を引いて、青娥はピタリと前方を駆ける棺桶を見据える。
折しも棺桶は右へ。やはり鮮やかな最小回転半径を描いて家屋の陰に消えてしまう。
だが、青娥はその後先には目もくれず、真っ直ぐ民家に突っ込んでいく。
「!!! ちょ、ま! まさかやめろせい」
ナズーリンの必死の願いは、壁の向こうに抜けた青娥に届かなかった。
「べぶっっっ!!」
「きゃあっ!!」
壁の外のナズーリンは、民家の壁へとモロに正面衝突。まるでカエルが轢き潰された様な少しまずい悲鳴をあげる。
一方青娥は壁に穴を開けたまではいいが、一人分の穴しか開けなかったせいでナズーリンが壁に引っかかり、激しく後ろへつんのめった。
普段一人でしか壁抜けをしない青娥が、慌てていた故の大惨事である。
腕の筋が多少伸びた程度で済んだ青娥は、あまりの衝撃に固まった民家の住人を尻目に、急いでまた壁から外に顔を出す。
するとそこには、顔から出せる液体を全て流して意識が混濁しているナズーリンがひっくり返っていた。
「嘘!? お、起きて。ねぇしっかりして! 貴方がいないと、私は道が分からないのよぉ!」
「うへへぇ……なんか、綺麗な電飾があしらわれたチーズの大行進が見えるぅ……」
「そっち行っちゃだめぇぇぇ!!」
青娥が力任せに揺さぶるが、ナズーリンは蘇ってこない。まさに阿鼻叫喚の絵図である。
そんなことをしている間に、棺桶は人里を通り抜けた。
それは、棺桶が火葬場に到着するまでもう間もないことを意味していた。
――◇――
寅丸星は、空を飛べない村紗水蜜を背負って空中を駆ける。
なにせ自分の肩には、村紗の他に顔も知らない誰かの命がかかっている。急がない訳にはいかない。
村紗も、帽子が風で飛ばないよう押さえながら、それでも意志溢れる顔つきで火葬場を目指す。
寺で、棺桶に運ばれた人の説明をあらかた受けた。星と村紗は、芳香と呼ばれたその人の立場も理解した。
だが、それでも星は芳香のために力を振り絞って加速する。
星が責任を感じていたこともあるが、根底にあるのは『絶対に死なせない』という純粋な正義感であった。
また村紗も、一度門をくぐったなら、その人は寺の大事な客人であると考えている。
その客人が危機で聖から救出の命あれば、村紗は全力で解決にあたる。
大勢の人間を導き救わんとする神の代理人と、大勢の命を預かる船長。
この二人が一人のために手を組み、田んぼの上を通過する。
最早、事の円満解決は時間の問題である。
あっと言う間に人里が後ろに遠ざかる。
二人は使命感を胸に真っ直ぐ飛び、妖怪の山の麓に近づく。
霧の湖、湖のほとりに佇む紅魔館。
それも通り過ぎると、魔法の森が眼下に広がった。だが、この二人の飛行を止めるものなどいない。
眼下には濃い緑が濁流の様に流れ、凄まじい勢いで自分達が前進していることが明白であった。
そして、星が背中の村紗に一点の曇りもない真っ直ぐな声で話しかける。
「村紗」
「何?」
「火葬場は、こちらの方向であっているのですか?」
「星ストォォォップ! 両舷後進一杯! とりあえず止まれぇ!」
村紗はあらん限りの大声を出して星を制動する。
星も驚いて飛ぶのを止めた。
現在位置は魔法の森のど真ん中。どの方向を見ても濃い密度の原生林だ。
「……星。これは私の聞き違いであることを祈るわ。でも復唱願う。
あなた、今何て言った?」
「あの、火葬場は本当にこちらの方向なのかと……
とりあえず真っ直ぐ進んでみたけど、村紗が何にも言わないからこの方角で正しいのかな~って」
その言葉を聞いた途端、村紗は氷山が激突した時のマードック一等航海士も真っ青な程の汗を滝の様に流す。
「わ、私はいつも寺の番をしているから、火葬場の場所なんて知らないのよ。
星こそ、聖のお供でくっついて歩いているから、道程は知っているんじゃないの?」
「え? いや、私は……いつも聖の後ろをついて行くだけなので、詳しい道順はちょっと……」
そして、痛いほどの沈黙が3秒。
その沈黙が、怒りの村紗船長によって破られたのはコンマ2秒後である。
「どーすんのよぉぉ!! とんでもない回り道じゃない! 間に合わないわよこれぇ!」
「すみません! でも済んだことです。今後の対策を講じましょう」
「あんたが言う台詞じゃないよねそれ!?」
「とりあえず人里に戻って道を聞きましょう。いざ軌道修正!
……ところで、人里にはどう戻ったらいいですかね?」
「うわーん!! 自分で勝手に迷子になったー!」
魔法の森のど真ん中に、悲痛な叫びが木霊する。
それとほぼ同時刻。
幻想郷に煙が上がる。
その煙は細くたなびき、まるで生き物の様に大空へ流れていった――
――◇――
「うう……まだ頭がクラクラする……」
「頑張って! 今倒れられたら、私には打つ手が無くなるのよ」
そう励ましの言葉をかける青娥は、ふらふらと飛ぶナズーリンの案内で火葬場を目指していた。
人里でのナズーリンは本気で生命が危なかったが、青娥の仙術と妖怪が持つ生命力のおかげでなんとか持ち直した。
そして、二人は何とか火葬場の近くにまでやってきたのだった。
しかし、ナズーリンの表情は暗い。
体調がおもわしくないせいでもあるが、行けども行けども激走している棺桶に出会わないことに一抹の不安を感じていた。
そして、その悪い予想は現実となる。
「……! 見えた。あれが火葬場、だ……」
ナズーリンの語尾が固くなる。
青娥も急いでその方向に顔を向けるが、その表情は愕然としたものとなる。
煉瓦造りの建物に、高々とそびえる煙突。
その煙突からは、細長い煙が風にたなびいていた。
「……うそ……うそウソ嘘よ!」
青娥が最初は小さく、段々声を荒げて嘘と連呼する。
そして青娥は、猛スピードで火葬場に近づく。
すると建物の壁に一列に並んだ窯の蓋が確認できた。その中で一つだけ、人だかりができている窯がある。
蓋はぴったりと閉められ、職員とおぼしき人間が合掌をしながら念仏を唱えている。
その光景を目撃したことを引き金に、頭のどこかで否定していた事象が瞬時に脳内を侵す。
芳香の事は、もう手遅れである。
そう実感するのには、充分だった。
「イヤアアアァァァァァ!! 芳香ぁぁぁ! 芳香ぁぁぁぁぁ!!」
青娥の甲高い咆哮が、ナズーリンや職員の耳に突き刺さる。
もはや理性があるのかないのか分からない青娥は、窯の蓋に職員の制止も聞かずに飛びつく。
そして留め金をあっという間に外し、蓋を開ける。
だがそこには、絶望の炎がごうごうと燃え盛っていた。
至る所から火炎が噴射し、中の様子は全くうかがえない。
だが確実に言えることは、この中ではたとえキョンシーであろうと、生命どころか原形を留めることさえ不可能である、ということだ。
そんな煉獄を連想させる炎の奔流は、青娥の心を打ちのめした。
ナズーリンが青娥を引き離し、灼熱を封じる様に蓋が閉じられた。
何事かと職員らは問いたげだったが、ナズーリンは青娥の正面に回り込む。
その時の青娥の顔からは表情というものが抜け落ち、まるで能面だった。
だが、その瞳からハラハラと涙が落ち、地面を濡らす。
「…………め……しか」
「……青娥?」
「……ごめん……ごめん、芳香……間に合わなかった……」
言葉にすることで現実を存分に受け止めたのか、青娥の顔がくしゃりと歪む。
「青娥……」
「う……うう……あああああ! うわあぁぁぁ!!」
青娥は名前を呼んだナズーリンにもたれかかる様にしがみつき、そのまま魂消る程の悲鳴と嗚咽をあげてむせび泣く。
それはまさに、愛する者との突然の別離を嘆く姿そのものであり、皮肉にも火葬場という場所には適切な光景であった。
ナズーリンもその取り乱し様に心を締めつけられ、そっと背中を撫でながら謝罪の言葉を漏らす。
「青娥……すまなかった。私がついていながら、こんな」
「うう……芳香ぁ……ごめんなさい」
「青娥、泣かないでくれ」
「あああああ……あうう……」
「せーが、どうして泣いてる?」
「だって……芳香が、芳香がぁ」
「おう? 私がどーかしたか?」
青娥はしばらく間があって、弾かれた様に後ろを振り向く。
ナズーリンは、とっくに信じられない物を見る様な目つきで発言の主を眺めていた。
そこにいたのは、蒼白い顔にお札をつけ、小首をかしげる前ならえのキョンシーが一人。
そう、先ほど焼かれたはずの芳香その人であった。
「……芳香?」
「おーう。なんだー?」
「芳香……っ」
「おお。私のことだよなー……私は誰だ?」
呆然と呟く青娥に、あっけらかんと答える芳香。
次に語尾を震わしながら名前を呼ぶ青娥に、相変わらずとぼけた返答をする芳香。
それだけで青娥が芳香を認識して、抱きしめるため地を蹴るのには充分だった。
「芳香! 芳香ぁぁぁ!」
「おおう! せーががうぉぉ!!」
青娥は芳香をひしと抱きすくめ、芳香は後ろに倒れそうになる。
だがなんとか腕を青娥の両脇に入れて支えると、芳香はとりあえず泣きじゃくる青娥を落ち着かせようと両腕を上下させて精一杯背中を撫でようとする。
だがそれはむしろ青娥の脆い部分を刺激した様で、ますます青娥は女児のごとくわんわんと泣き崩れる。
一方のナズーリンは、そんな感動の再会を呆気にとられて見つめていた。
「そんな、いったいどうして」
信じられないという口調でそう漏らしたナズーリンの視界の端に、懸命に走ってくる二人組が見えた。
「はぁはぁ……間に合ったのね」
「ぎりぎりでしたが、通じたようです」
「一輪に聖。通じたって、どういうことだい?」
現れたのは、遺族と棺桶を追いかけていた二人。後ろの方にはわらわらと人の集団がついてきている。
どうやらこの二人は、この奇跡の種を知っているらしい。
ナズーリンが二人に尋ねると、一輪はこう答えた。
「火葬場に連絡をしたのよ。それでお棺の取り違えを伝えたの」
「連絡って……大声が使えない今、どうやって」
「狼煙を上げたのです」
「の、のろし?」
聖はそう言って命蓮寺の方角の上空を指差す。
そこには赤茶けた色の細い煙が、なんとカタカナの形に一筆書きの短文となって、でかでかとたなびいていた。
少し風に流されて崩れてはいるが、充分こう読めた。
『キンキュウジタイ カンオケノ ナカハ シゲマツニアラズ
スミヤカニ カソウ テイシセヨ』
「すごい……ちゃんと伝わるじゃないか。こんなこと誰が」
ナズーリンが感嘆するのも無理はない。
こんな物理法則を捻じ曲げられる輩は、幻想郷にも数えるほどしかいないだろう。
そのような特殊能力を惜しげもなく披露した張本人の名が、一輪から明かされた。
「ぬえとマミゾウさんよ」
「ええ!? 親分と、あのぬえが」
「そう。私たちがご遺族に状況を説明していたら、ぬえが話に割り込んできて――」
『ねぇ、一輪』
『ぬえ……何か用なの?』
『そんなおっかない顔しないでよ……要は棺桶を焼くな、って火葬場に伝わればいいんだよね。
だったら、マミゾウ親分なら何とかできるかも』
『ええ!? 本当?』
『まぁ、頼んでみる』
『でもどーゆー風の吹き回し? 急に協力的になって』
『それは……
私もいろいろ考えたんだけど、単純に……私だったら大事な人が、何の前触れも別れも無しに燃やされるのは嫌だな……って』
『ぬえ』
『……何、聖』
『その意義や良し。分かってくれて、ありがとう』
『ふん……』
「――それで、ぬえがマミゾウさんに頼んで、マミゾウさんの力を込めた落ち葉を燃して作った煙を、ああいう風に化けさせてもらったのよ」
「半分は賭けでした。そもそもこの作戦は火葬場の職員がこちらの方を見ていて、なおかつ文章の意味を察していただくことが前提でしたから。
しかし、優秀な観察眼と御仏のご意思のお陰で、最悪の結果は回避した様です」
そう、聖は清々しい表情で莞爾として笑う。
「じゃ、じゃあ今そこの窯で焼いているのは何者だい?」
概ね状況を理解したナズーリンが最後の疑問を投げかけると、答えは先程まで立ちん坊だった職員の一人から返ってきた。
「ああ、こちらはとある農家から火葬を依頼された農耕馬のご遺体です。
ここは馬頭観音もお祀りしていて、特別な依頼があった時にこうして稼働しています」
「つまり……中は人じゃなくて馬だったのか」
ここまできて、ナズーリンはようやく安心から力が抜け、地面へ腰を下ろす。
そこから聖たちの斜め後方をよく見ると、ナズーリンと同じように喪服の男衆が肩で息をして空の棺桶の周りにへたりこんでおり、その男たちをトメが「よくやった。感動した!」と声をかけて慰労していた。
ナズーリンがその様子をやれやれと見つめていると、背後に気配を感じた。
振り返るとまだ涙が乾ききっていない青娥が、やおら地面に三つ指をついて頭を下げる。
「ナズーリン、皆さん……本当に、本当にありがとうございます」
「いやいや、頭を上げてくれ。私はそういうのが苦手なんだ」
「私たちは当然のことをしたまでです」
ナズーリンはむず痒そうに青娥の体を起こしてやり、聖もそれに微笑みを持って追随する。
そんな姿を目の当たりにして、一輪は青娥の印象を改めた。
死体を使役することに抵抗はあるが、青娥は残酷でも冷血でもないことが充分に分かった。
それに、一輪は純粋に嬉しかった。
「せーが。泣くのイヤ。だめ。せーがは笑ってるのが、一番いいぞう」
そう芳香に語りかけられて、ようやく柔和な表情を見せる青娥を守れてよかったと思う。
次に会う時は、初対面の様なわだかまりも消えているだろう。
一輪はそう確信していた。
そして遺族の一団が本物の棺桶と共にここへ到着する。
先頭の人間が持つ遺影の中で、重松が騒動の終結をダブルピースで祝福しているのだった――
「あれ、何か足りない様な……」
――◇――
「……ヤードを回せ、船を止めろ。船長の命令だ。ヤードを回せ、船を止め」
「村紗、とりあえずこっちが人里の様な気がします。さぁ行きましょう」
「とりあえず、気がします、で針路を修正できるかぁ!!
今信号弾のスペル作るから! それで助けを呼ぶから!」
その日の深夜。先回りをするはずの船長とご本尊コンビは、未だ樹海を彷徨っていた。
「はぁ。でもこんな真夜中、しかも魔法の森のど真ん中で信号弾を上げても、果たして誰か気づきますかねぇ?」
「何でこの子は恐ろしく冷静なのよぉ!! メーデーメーデー! たーすけてぇ!」
そして魔法の森に、村紗の不憫な叫びが響く。
その二日後、魔理沙がげっそりと痩せた村紗と何故か心身ともに健康なままの星を発見、救出。
命蓮寺に帰った二人は、それぞれ心配していた一輪とナズーリンに泣きながらビンタされるという理不尽を味わったとさ。
【終】
とりあえず寅ちゃんは村紗に謝らないといけないね。
死してなおだんじりフリルピースで僕らを笑わせに掛かる重松氏に敬礼。
んでもって青娥の芳香大好きっぷりが可愛いなあ!
最初に墓場に来たのが一輪さんでなくてお燐だったら殊更大事件だった、全く芳香ちゃんは運が良く、かわいい。
落ち着いたお姉さんが慌てる様、嫌いじゃありません。
3番様
ありがとうございます。後半の事象もやったことあります……
4番様
とりあえず、ビンタされた星は泣きながらナズーリンに謝るも、「一番は村紗に謝りなさい!」と怒られていました。
14番様
さすが重松の嫁といったところです。
また、青娥は芳香を溺愛している様が一番輝いていると思うのです。
15番様
重松さんの様な人になりたいですね。
お燐だったら……うわお、バットエンドしか浮かばない。本当にラッキーなキョンシーです。
18番様
ありがとうございます。
19番様
実際に棺桶も、いつもより余計に疾走しておりま~す!
橙華とっつぁん様
昨今は自由葬なる既定の枠にこだわらないお葬式もあるそうで、こういったお葬式もありかな、とイメージしてみました。
お褒めにあずかり恐縮です。
23番様
あの世でも馬鹿やって皆を笑わせてくれよ!
24番様
本人が面白ければそれでよし。懐が深い幻想郷に感謝です。
重松さんが映姫様の前でふざけないかが心配ながま口でした。
てそんなわけないですよねスミマセン。
ご感想ありがとうございます。サクッと楽しんでいただけて何よりです。
超門番様
さすがに炎はちと厳しいかと。どこぞの蓬莱人みたいに復活するすべが無いですから。
……でもこれを反省した娘々が何か対策するカモ?
ドタバタ系コメディは読んでいて純粋に楽しいですね。
こういうの書いてみたいです。うぎぎ。
ご感想ありがとうございます。やっぱりそうなんです!
ドタバタは往年のドリフ並みにキャラクターを動かしまくると、疾走感が出てグーだと思います。
でもその動きが濃い分、設定や話運びはあっさりだとバランスがいいのではないでしょうか。