「ゆかりんさんは十歳になりまちたー……なんてね」
「は?」
お天道様が明るく照らすマヨヒガの中庭。
縁側に腰を下ろした紫は、ひざに顎肘をついて、人生に疲れた中年のごとく、ハァと溜め息をもらした。
藍は怪訝そうな表情を浮べて紫の方を振り返っている。中庭にたてられた物干し竿に紫の下着を干そうとする姿勢のまま、首だけを後ろに振り向かせている。お尻から生えたもこもこの尻尾が、きょとんとした藍の意識にあわせてか、ちょっとだけピンと立ち上がっている。そんな式神の姿がなんとなく愛らしくて、紫はくすくすと笑ってしまう。藍の体は随分大きくなって、身長も紫を追い越してしまったが、娘同然のこの式神を愛しく思う気持ちは、それこそ藍が十歳だったころから変わらない。
紫は物分りの悪い愛娘に、辛抱強く、もう一度だけチャンスを与える事にした。
「ゆかりんさん、じゅっさい」
「……ああ、そういう」
生意気ざかりの娘は、ハンッ、と鼻で笑った。紫のこめかみがピクリと疼く。
「今日で三十歳でしたっけ。まぁ、無駄な抵抗はお見苦しいですよ。受け入れてください」
藍はおざなりな声でそう言ったきり、また紫に背中を向けて、いそいそと洗濯物の続きをする。こちとら忙しいのにくだらん事で邪魔すんじゃねーよ、とでも言わんばかりのその背中。
「何よその態度」
可愛くない。
十歳のころの藍だったら、紫が呼びかけたのならそれがどんな内容であれ、ちょこちょこと駆け寄ってきて、幼い顔に大きな瞳を貼り付けて、むやみやたらと嬉しそうに紫を見上げてくれたろうに。これもまた、時の流れがもたらす悲しみということか。
――躾が必要ね。。
紫はパチンと指をはじいて、藍の足元に隙間を開いた。突然足場を失って、落下していく藍。
「ちょ!? 何をするんですか紫さまぁぁぁぁぁ!?――」
あるじに失礼なお尻(紫主観)を向けたお仕置きに、折檻空間へと放り込む。ぐもん、と隙間が閉じると、隙間から漏れ聞こえていた悲鳴は途絶えた。出てくるころには、ちょっと全身ヌトヌトになっているかもしれないけれど、きっと今より従順になってくれているだろう。
「……ふぅ」
人気の無くなった中庭。紫はパタパタと風に揺れる選択物を眺めつつ、憂鬱そうに溜め息を吐いた。
「三十歳かぁ。ああ、時の流れは無情」
心に重くのしかかる、三十という数字。
――みそじ。おはだのまがりかど。おばはん。いかずごけ……
ふと空を見上げると、十代、二十代という輝く時代が、雲の向こうに見える気がする。それはもう、手の届かない、遠くへと過ぎ去ったまばゆい時間。
大賢者の誉れ高い紫であっても、時計の針を元に戻す事はできないのだ。
「若返る薬をください」
と紫が頭を下げると、永琳は無言でしわ取り薬を差し出した。その反応にイラっときて、診察室に入ってそうそう殴り合いのケンカになってしまった。
騒ぎに気づいてやってきた鈴仙の必死のとりなしにより、ひとまず互いに矛を収める。
「まぁ、とりあえず座って」
腰掛椅子を紫に勧める永琳。目に青タンを作りながらも、冷静な表情は崩さない。高級そうなデスクチェアーに腰かけている。机の上にならんだたくさんの分厚い本は、医学書か診察記録だろうか。
紫は大人しく椅子にお尻を下ろした。蹴られた尻が僅かに痛んだが、顔には出さない。診察患者さん、という体の紫。
「ええと、お年はいくつになるんだったかしら」
と、永琳がたずねた。
「三十歳」
と、紫が答えると、鈴仙が驚いた声を上げた。
「三十!? 紫さんて思ってたより全然若かったんですねぇ!」
ぴく、と紫のこめかみが疼いた。
永琳は目ざとくそれに気づいていたようだ。
紫はパチン、と指をはじいて、鈴仙の足元に隙間を開いた。
「え!? きゃぁぁぁぁ!?――」
藍と同じく突然足場を失った鈴仙は隙間の中に落下――しなかった。隙間が口を開けた瞬間、永琳は素早く腕を伸ばして、鈴仙のへにょり耳を掴んだのだ。
耳で宙吊りにされた鈴仙は苦悶の表情を浮べる。
「いだだだ! お師匠様離してぇ!離して! 耳がちぎれちゃいますう!」
「あら、本当に手を離していいの?」
「へ?」
足元にぱっくりと開いた隙間を見下ろす鈴仙。
「ひっ」
その鈴仙の顔から血の気が引いた。
隙間の奥から、聞き覚えのある声が漏れてきた。
「ゆかりしゃまぁぁぁゆるひてくらしゃぃぃぃ」
呂律の回らなくなった藍の声。そして同時に、たくさんのスライムが蠢いているかのような、ねちょねちょとした音も聞こえてくる。
「ひぃぃぃ! 離しちゃだめ! 師匠絶対にはなさないでください!」
「せわしない娘ねぇ」
どこにそんな力があるのか、永琳は椅子に腰掛けたまま、上半身と腕の力だけで鈴仙の体重を支え、隙間からずらして床に下ろした。
「い、因幡達の様子をみてきますぅぅぅ」
鈴仙は耳を押さえながら脱兎になって診察室から逃げていった。
廊下を離れていく騒々しい足音に、しばし二人で耳を傾ける。静かになるのを待ってから、永琳が言った。
「察しの悪い弟子の躾は、自分でしますので」
「いらぬお世話をいたしました」
紫はぺこりと頭を下げた。
「それで……若返りの薬がどうとか? 」
「あるんでしょう? くださらない? お礼はさせていただきます」
「ま、あるにはありますが――」
永琳は思案顔で宙を見つめながら、手に持ったペンで、こんこんこん、と机を叩く。診察室に耳ざわりなその音が広がる。
永琳は諭すように語り掛けた。
「自然の摂理に逆らうべきではないわ。認めなさい」
ギリッ――紫の食いしばった歯が軋んだ音をたてた。
「貴方に命の何たるかを語られたくないわね」
「そう睨まないで。蓬莱人は蓬莱人なりの見方で、命の大切さを理解しているのだから」
二人はしばし、互いを見つめ合う。紫は睨み、永琳は静かな瞳でそれを受け止める。紫の睨みには、大抵の妖怪が即座に逃げ出すほどの凄みがある。けれど永琳は、眼球を僅かばかりも揺らがせる事なく、風の無い日の湖面のような静けさで、紫の睨みを受け止めた。
つまるところ永琳は見透かしているのだろう。紫は本当に薬が欲しかったわけじゃない。ただ、自分が苦しんでいる事を誰かに知って欲しかった。一人ではいられなかった。
紫はそんな子どもじみた自分が急に恥ずかしくなって、ふっと、表情を緩ませる。
「いじわるな先生」
「患者のことを第一に考えています」
永琳はてきとうな返事をすると、立ち上がり、壁際の戸棚を開けて何かを探した。取り出されたのは、乳白色の何かで満たされた、拳大のガラス瓶だった。
「これは?」
「お肌クリーム。高級品よ」
「……また馬鹿にしてる?」
「年をとるとね、こういう物も必要になってくるの。お誕生日プレゼントだと思ってちょうだい」
「……ありがとう」
紫は礼を言って、永遠亭を後にした。
隙間を通って博麗神社の縁側に移動する。霊夢は今日も、縁側に座ってお茶を啜っていた。その隣に降り立ち、霊夢を見下ろして、
「ゆかりんさん、十歳で~す」
「……」
霊夢にジト目で睨まれる。
梅雨の合い間の湿った風が、一なぎ、ひゅうと虚しく吹いた。
「ケンカ売ってる?」
「そんなことないわよう」
ちょっとお茶目に腰をくねらせ、いやんいやんと否定する。
霊夢は大きく溜め息を吐いた。
「あんたもいいかげん年なんでしょ。そろそろ、そういうの止めたら?」
「失礼しちゃうわね」
ぐさっと、腰にくる言葉ではある。
「年の話はやめてぇ」
「紫がくだらない事言うからでしょう」
「ぐすん……あ、そうだ、これ」
「え?」
紫は胸の谷間ポケットから、永琳にもらったお肌クリームを取り出した。霊夢はそれを受け取り、紫が永遠亭でしたように、しげしげと見つめる。
「何これ?」
「お肌クリーム。高級品らしいわ。永遠亭の薬師さんから霊夢に」
「へぇ、ありがとう」
霊夢はカパッと蓋を開けて、中のクリームを指ですくった。カスタードクリームみたいなものが、指にのる。霊夢はそれを手の甲に塗りつけた。
「最近は水仕事をすると手が荒れるのよね。嬉しいわ」
そうやって素直に喜ぶ霊夢の横顔は、ふと紫の心を寂しくした。霊夢がそういう事に喜びを感じている姿が、切ないのだ。
「お茶汲んできてあげよっか」
機嫌をよくした霊夢が、よっこらしょと立ち上がる。
霊夢を見下ろしていた紫の視線が、じょじょに水平になり、そして今度は上向いていく。
少女の身長はいつしか紫を追い越し、顔立ちも今や完全に大人びた。少女の面影は、いまだにさらし続けている腋に、かすかに残るのみ。その腋も、今では処理をサボるとすぐに毛がもじゃると言う。
「ねぇ、霊夢」
紫は霊夢の顔を見上げて、言った。
「三十歳のお誕生日、おめでとう」
祝福する自分の声を聞いて、何か、後悔のような感情を得る。認めてしまった、という無念さであろうか。ただおめでとうを言っただけなのに、気持ちが不安定になる。
「やめてよそういうの。この年になってまでそういうのはねぇ」
霊夢はちょっと気恥ずかしそうな顔で、紫を見下ろして言った。
「けど、このクリームはありがとね。あ、念のため確認するけど、誕生日プレゼントよねこれ? お代を請求されてもお金は無いよっ」
かつてのままの元気さで、ドタドタと台所にかけていく。だがそれも、いつかは失われてしまうのだろう。
紫はその背中を見守る。
博麗の巫女という運命を背負うにはあまりにも小さかったあの背中も、今はもう随分と大きくなった。
「三十歳かぁ」
時の流れは空に浮かぶ雲のようだ。一見とどまっているようで、実はそうではない。気がつけば、大きく様子を変えている。
紫は縁側に立ち、空を見上げる。天気は良いが、帯状の薄い雲が広がっている。青空はそのモヤの奥で薄水色の光を放っている。霊夢の少女時代は、そのさらに向こうにのみ存在する。
「本当に、遠くなったわねぇ」
願いが叶うなら、いつまでも世話を焼かせる少女でいてほしかった。
「藍? どこにいるの?」
夕暮れ。夜には博麗神社で霊夢のお誕生日会が開かれるのだが、紫は一足早く退散した。祝いの言葉はすでに伝えた。素直に喜べない自分が宴会に参加して、場を盛り下げることもないだろう。
マヨヒガに戻ってきた紫は、中庭で、生乾きの洗濯物が桶の中に放置されているのに気づき、顔をしかめた。ちゃんと干さなければ、皺になてしまう。躾のなっていない式神をしかりつけてやろうとその姿を探して――
「――あ、そうだ。隙間に放り込んだままだった」
てへぺろっ、と自分の側頭部にこっつんする。
ぱちん、と指を鳴らして、中空に隙間を開いた。
ずるり、と隙間から藍がぬめり落ちてくる。それはまるで、巨大な鯨の胃を裂いたら中から大きな魚がヌルリとでてきました、という様相で、法衣はところどころが破れ、そして全身のいたるところにヌメヌメの透明な粘液が付着していた。。
「ゆ……ゆかりひゃま……」
ぴくぴくと痙攣しながら、ダブルピースをしていないのが不思議なくらいの表情で、紫の名前を呟く。しかし呼ばれたところで、何か伝えたい意思があるのだとしても、紫にはさっぱりわからなかった。
「ごめんごめん。さぁ、とりあえずお風呂にはいってネバネバを洗い落としましょ」
ぱちんと指をはじくと同時に、再び藍が隙間に飲み込まれる。けれど今度の行き先は、風呂場だ。ばちゃーんという水しぶきの音が、隙間の奥から聞こえる。
「素直になったことでしょうし、今日は一緒にお風呂にはいりましょ♪」
今日はなぜだか、昔みたいに藍と一緒にお風呂に入りたかった。本当は理由など分かりきっているのだが。懐古的な己の感情を、紫の意地が認めないのだ。
紫は庭から縁側に上がり、鼻歌交じりに浴室に向かった。
紫は襲い来る心地よさに負けて、うぁ゛ぃ゛ー、とだらしない声を上げた。湯船の中で、寝起きの猫みたいに体を伸ばし、びびびびと小刻みに四肢を震わせる。頭を後ろにそらした拍子に、藍のおっぱいが首筋にぽよんと触れた。大きくて柔らかい。
霊夢は紫よりも体が大きいが、藍はその霊夢よりさらに体が大きい。湯船につかる藍のふとももに、紫は腰掛けている。そうすると、お尻と肩に天然の肉クッションがあたって、とっても具合が良い。
「反省したかしら?」
紫がからかうように言うと、耳元で、
「はぁ、まぁ……」
と、文句を言いたげな藍の声。呂律のほうはもう治っている。
紫は手のひらをお湯から出して、ちゃぷちゃぷと音をたてさせる。手首から下は、見えない。紫の体は、藍の尻尾に覆われているのだ。湯船の中で藍の尻尾の毛は海草のようにゆらゆらと立ちあがり、二人の肢体を隠してしまっている。湯に浸かりながら九本の尻尾で全身を撫でられると、マッサージのようで気持ちがよい。
「あの紫様、戯言を申してもいいでしょうか」
「あん? 戯言? いいけど」
「ええと……」
自分から言い出したくせに、しばらく待っても藍は黙ったままだ。
「藍?」
「……あの、やっぱり、いいです」
「そんなベタな言葉を口にして、言わずにすむと本気で思っているのかしら」
「いや、その、本当に下くだらないことですから……」
「言いなさい」
「うぅ」
いつもなら、言いたくなければあえては聞かないのだが、この時は藍の口ぶりがちょっと妙だったので、紫は興味を引かれた。
藍の口調は恥らう乙女のそれだ。久しぶりに裸で寄り添っているという状況を考えたとしても、おかしい。
藍がまだゴニョゴニョと無駄な抵抗をするので、紫はぐるりと体の向きを変えて、、藍と向き合う。ぱちゃぱちゃと湯の音が響く。藍の大きな乳房に顎を乗せて、その顔を覗き込む。濡れて張り付いた前髪の間に、恥ずかしそうな瞳。
「主が言えと命令しているのよ」
一睨みすると、藍は諦めた。
「紫様は霊夢が年をとっていくのを、随分と嫌がりましたよね」
「ええ。昔のままでいてほしかった」
「以前から紫様は好んで霊夢の世話をしたがりましたが」
「藍は、いちいちそれに文句を言うのよねぇ」
「ま、まぁそれはおいといて、もしかして紫様は……」
「何よ」
「成長して手のかからなくなった私の代わりに、霊夢を世話しているのかなぁ……なんて……」
藍は言い終えると、鼻まで湯船にもぐった。俯いて前髪に目元を隠してしまったが、紅潮したほっぺたは隠しきれていない。ぶぶぶぶ、と口で泡を立てる。はじけた泡の飛沫が、ぴちぴちと紫の顔にあたる。
紫は藍の沈んだ顎を掴むと、無理やりに顔をあげさせて、互いに顔を直視させる。紫はいやらしく笑い、藍はちょっと泣きそうな顔をしている。恥ずかし泣き、とでもいうか。
「おかしなことを考えるのねぇ。藍は」
「紫……さま……」
互いの口臭が、それぞれの鼻腔に流れ込む。藍の荒くなった鼻息が、紫の鼻の下をあたりをこそばす。その鼻息もまた、紫の鼻腔に吸い込まれていく。湿った肉の香り。
「さて、何が貴方にそう言わせたのかしら」
「え?」
「藍が大きくなって、私の世話好きな性分は行き場を失った。それで私は藍の代わりとして霊夢にあれこれ世話をやいた……貴方はそう言うのね。とても恥ずかしそうに。――ところで、貴方はたびたび私にお小言を言うわね。あまり霊夢の世話をやきすぎないでください、と。そういえば今日だって、霊夢が年老いた事を嘆く私に、藍はそっけなかったわねぇ。私が霊夢の事を言うと、藍はいつもそっけない。――さて、これらの事から想像できる藍の深層心理とは……?」
紫は、まるで狐の親子がそうするように、ぺろり、と藍の頬を舐めた。
「ひぅっ」
と藍の顔が強張る。
二度、三度、ぺろぺろと舐めて、四度目は舌を這わせたまま、藍の耳元にまで唇を運んでいく。二人の体はほとんど密着している。紫の体が湯に小さな波を起こし、その波は広がって藍の肌にぶつかる。そして跳ね返って紫の肌にぶつかり、また跳ね返り……。
「霊夢はおばさんになっちゃった。もうとっくに子どもじゃない。じゃあ次は誰の世話をしようかしら?」
藍の耳穴に、直接声を注ぐ。藍の世界は今、紫で一杯になっているだろう。視覚、触覚、嗅覚、そして聴覚。味覚は……まぁ今はいいだろう。
紫は再び囁く。
「三十歳と十歳の境界――」
「え?」
藍がいぶかしげな声を上げた次の瞬間、シュンッと藍の体が縮んだ。代わりに紫の体が、ボンッと膨らむ。小柄な十代女子だった紫の体が、三十路のナイスバディに成長した。まるでいつもの藍のよう。膨張した紫の体に押しのけられた湯が、ばしゃっとはじけ飛ぶ。藍は急に縮んだ体のせいで、姿勢のバランスを失って湯船に沈みこんだ。
「あばばば」
もがく藍の体を抱きあげてやる。
「けほっ、けほっ、いきなり何するんですかぁ」
体にあわせて幼くなった声で、藍が文句を言う。
「こうすれば、久しぶりに湯船で藍を抱いてあげられるでしょ」
紫の声は、ちょっとだけアダルティになった。
紫は二人の体の場所を入れ替えた。自分が湯船の底に座り、そのふとももに、体の小さくなった藍を背中向きに座らせる。
「あん、尻尾が邪魔ね。自分のお股の間に通しなさい。昔もそうしてたでしょう」
「え、え? ちょ、ちょっと紫様……」
戸惑う藍を無理やりに座らせる。小さなお尻の感触が、ふとももにあたる。懐かしい柔らかさ。
紫は藍をぎゅうと抱き寄せた。藍の可愛らしい肩甲骨が、紫の大きくなった胸をもにゃりと押しつぶしていく。
「ゆかりさま……あふぅ」
藍の声が溶けていく。
小さな藍の体を抱きながら、紫は過ぎ去った昔の事を思い返していた。随分と昔、式神になったばかりの小さい藍をよくこうやって抱いた。それから何十年かたって、藍が大きくなったころ、霊夢が博麗の巫女になった。そして小さかった霊夢も、気がつけば大人になっていた。これからも年老いていくだろう。若返る事は無い。
自分は、藍の体を小さくして、それで時間をまき戻した気でいる……。それが惨めで、切なくて、紫はいっそう強く藍の体を抱いた。
「ゆかりさまぁ」
甘えた藍の声は、遠い昔と変わらない。そんな藍を愛しく思う紫の気持ちもまた、同じだ。
だが時代は、確かに変ってゆく。
あと誤字が…
>パタパタと風に揺れる選択物を眺めつつ
→洗濯物
変態性を抑えられなくなりましたか? ならしかたない。
自分は紫が藍に甘える方が好きですね。
>> ――躾が必要ね。。
句点がダブってます。
紫様のアダルティーなお姿を拝見したら若返りました。
霊夢も年をとるんだよなぁ…
アンニュイなゆかりんもかわいいです。
ゆかりんかわいい
ゆかりんやえーりんが取り沙汰してたのは霊夢の年齢。
で、鈴仙が驚いたのは星霜を重ねた大妖だと思っていた八雲紫が実は三十歳だったと誤解したからか。