どうして、の言葉ばかりが駆け巡る。
焦燥感で真っ白に染まりそうな脳は、とうの昔にもてあましている。
どうして、どうして。何故。どうして。
どうして、勝てない?
わからなかった。いくら剣術指南役としての責務が(主に主人側のせいで)果たせていないにしても、鍛錬とはただ単に剣を振ることのみを指すわけではない。剪定ばさみの扱い一つにしろ、それを鍛錬とみなしたならば、日々積み重ねたそれはまさに磐石。極論を言えば箸の上げ下ろしすら鍛錬になる。
無論、基本の成ってない者が行っても無意味。というか、そんなことあるわけないだろうが。精神論に決まっているだろう。
「……決まっている、筈なんだけど」
思わず胴を目掛けた一閃と共に、呟きが漏れてしまう。
そうだ、決まっているのならば、今のこの状況は何だ。
当の相手は常のほんわかとした表情のまま、私の決して遅くはない─―むしろ手加減抜きの――打ち込みを、さも舞うかのように軽々とかわした。まるで蝶のようだ、と苦々しく賛辞を贈る。本来指南役としては上達を喜ぶべきなのだろうが……それが、私のあずかり知らぬあいだの事となれば、少々面白くない。否、かなり面白くない。確かに箸の上げ下ろしの回数が鍛錬となるのならば、相手のそれが尋常でない事もなんとか納得できる。
まあ問題は、そんなものが鍛錬になるはずないだろって事なんだが。
「あらあら妖夢、何が決まっているのかしら」
そうして気の抜けるような甘い声で相手─―幽々子様が問いを放った瞬間、まさに一瞬で私の得物が巻き上げられるように弾き飛ばされた。幽々子様の竹刀が、視野の外から握り近くを弾いたのかと気がついた時には、既に主の竹刀の切っ先は、私の眉間にひたりと当てられていた。
「……参りました」
「殊勝」
最近の幽々子様は、怖いほどに御強い。それについてだけは、完全に納得した。――しなければならなかった。
ではどうすればいい。頭の中で試行錯誤する。
「泣いちゃう?」
「泣きませんっ!」
「あらあら。だってそんな下を向いてるものだから」
考え事です、とごまかす。主を倒す算段とか、洒落にならない。
「妖忌がいると早いんだけど、ね?」
ごまかせなかった。すわ幽々子さま、心眼でも開眼なされたか……。
「いやいや妖夢、あなたの顔色とか物事の流れとか、そういったものが全て推理の材料になるのよ。あなたわかりやすいし。今もすごい吃驚した顔してたから、ちょっと推測してみただけ。心眼を開いたとでも考えたのかしら」
「……あの、本当に開眼なされては、おられないのですか?」
「芸者って人種は、本当にそればかりなのねぇ」
そういって幽々子様は、ほほ、と笑った。答えはやはり、いただけなかった。
* * *
「と、まあ、そういうわけでして」
「そういわれてもなあ……」
私の説明に、紫様の従者であり、式神を扱う式神としても名高い八雲藍──藍さんが悩ましい声を上げる。ふかふかとやわらかそうなどと言っては失礼かも知れないが、立派な九つの尾がゆらゆらとそれぞれにゆれて、持ち主の思考の巡りをあらわしているようだった。
「まあともかく、それでどうしたいんだ?」
「修行です」
「うむ、だろうな」
ため息とまでいかずとも、それに準ずるくらいには深い吐息をつく藍さん。そもそも、と彼女が言葉を継ぐ。
「そのなんだ、まず、なぜ剣術の話を私に持ってくるのかが解せないんだが」
「心得はありませんか?」
「あるよ。だがな、私の場合は呪が主なんだ。まあ暗器ならそれなりに使うが、剣術となると護身程度しか出来んぞ。……そうだな、永琳殿なら適任ではないか?」
いえ、と私は首を振る。
「確かに弓術からも学ぶことはできます。ただ、あの方は天才ですから」
「? それが問題――――ああ、そうか。そうだな」
藍さんは納得したように頷いた。
「薬師として弟子を導くことはできようが……弓術に関しては真正の天才。導くような次元ではないということか」
「はい。以前拝見する機会を得ましたが、永琳殿の射は百発百中などという生易しいものではありませんでした。あれはもう、中ることが決まっているから射る、という境地です。とても教わることなど出来ません」
「凄いものだね……しかし、そうなると」
腕組みをして考え込む藍さんの脳内で、どんな人選が行われているのか想像する。何しろ私もずいぶん悩んだのだ。悩んだ結果わかったのは、幻想郷内に存在する常識人は非常に少ないということだけだった。ちなみにその常識人の枠内に自分を入れることが、どうしても出来なかった。師よ、私は今切実に自尊心が欲しいです……。
「あ、ではどうかな、天狗の連中などは」
「相手してくれるような暇な連中には勝ってしまうので、駄目です」
「そ、そうか……」
大天狗様となればまた別だが……というか、そんな想像すら恐れ多い。古くは源九郎義経殿に稽古をつけた種族の長なのだ。しかしながら、そう、例を挙げれば哨戒任務に当たっている程度の天狗たちは、私にとって敵ですらない。逆に稽古をつけてやりたいぐらいのところだが、それをするにはまだ自分の未熟さが気になる。せめて、幽々子様にだけは一人前と認めていただかなければ……!
「では紅魔館の門番は」
「青龍刀は好みません」
絶対所持している気がする。
「藍さん、御願いします」
「うー……む。そうだね、どうも致し方ないようだ。わかったよ」
「有難う御座いますっ」
うむうむ、と頷いてくださっていた藍さんがやおら、にやりとした。彼女は、不意の表情の変化にいぶかしげな顔になる私に向かって、「では早速、立ち合うとするか」と言った。
* * *
「これはまた……」
「マヨヒガという存在は、可変が売りでね」
急遽立ち合う運びとなり、藍さんに促されるままついてきた場所は、板張りの道場だった。こんな場所は前にはなかったはずだが、さすがはマヨヒガというべきなのだろうか。どんな仕組みかは知らないが、私のために現れてくれたらしい。
「私も刀を使ったほうがいいかな?」
「私は教えを受ける身ですから……」
「ふむ――ま、最初は竹刀でやってみようか」
決定した藍さんが壁を向くと、そこにはいつの間にかさまざまな大きさの竹刀が無数に用意されていた。どうやら家自体が意を汲んで用意を行ってくれるらしい。これは便利だな、と白玉楼のことを懐かしんでいると、竹刀を吟味していた藍さんが一本の竹刀を渡してくれた。やけに手に馴染む。二度、三度と試し振りしてからようやく、楼観剣と長さが同じなのだと気がついた。
「使い慣れた得物の間合いのほうが、普段の妖夢の様子がわかりやすいだろう?」
「言われてみれば確かに」
「では」
────────瞬間、大気が凍えた。
「――――え」
なんだ、これは。
これは、これは……いや、そうか。
これは、ただの道理だ。
腕の震えが止まらなくてわずらわしい。
見たくないのに見てしまう。
何を?
彼女の瞳を。
瞳孔が縦に狭まった、そうだ、それは獣の瞳だ。
こわい。
ああ、思ってしまった。
彼女が、あいつが、こわい。
「ぐ、うぅ」
奥歯を、かみ締める。
自身の神経という神経を叱咤し、射殺すつもりで睨みつける。
……普段の彼女がやけに温和な性格のため忘れがちだが、そもそも藍さんの持つ妖力は桁外れ。弾幕ごっこではない、ただの殺し合いとなれば、まず目の前に立つだけで至難の業だろう。
だから、彼女は手加減してくれている。
これだけの威圧感を放っておきながら、殺意はほんのわずかに混ぜているだけ。私が壊れないよう、私がすくまないよう、気を遣ってくれているのだ。
だから。
とても悔しかった。
「……──、いざ」
呟くような声量で心を振り捨て、一歩目の踏み込みに全てを賭ける。剣とはすなわち、一切不惑。肉体の理を滞りなく動かすためには、まず己の迷いを断ち切らねばならない。
そう、私は、剣だ。
狂わなくては。
「む」
火薬が爆ぜるような破裂音がマヨヒガの道場に響く。私の体が立てた音だ。私の足が、立てた音だ。この音を聞くと、私の恐れや迷いが、音を立てて退いてゆく。息が楽になる。ここからだ。自分が正気に戻る前に、勝負をつけてしまわねばならない。理解してはいけない。分析してはいけない。
藍さん。すでに一足一刀の間合いに入っている。動かれる前に、動けないようにしなくては。踏み込む。ほぼ同時に私の竹刀の切っ先が、吸い込まれるように藍さんの肩へ────。
「……くぅ」
「いい速さだね」
当たらなかった。
矢張りとはいえ、当てることが出来なかった。
その事実に無様に意識を奪われてしまった私に仕掛けようともせず、藍さんは静かに対している。睨みつけた私の竹刀は、彼女の肩──頚動脈を傷つけ、そのまま心の臓を割ろうとする軌道──の直前で、彼女の持つ竹刀に止められてしまっている。眼前に竹刀。──竹刀?
「──つあっ!」
「おお、獣じみてる。でも余所見は駄目だね」
なんとか床に身を投げ出してよける。そのまま転がって藍さんから大きく距離をとった。すごい。もちろん侮るなどもってのほかの相手だということはわかっている。だが、だが全く攻撃の気配が読めなかった。間が外されている。──どうしてくれよう。
「続けるかい?」
「無論」
藍さんは強い。
強いが、目の前に立っている。
きっと、私の剣は届く。
否。
届かせる。
そう思わなければ戦う資格がない。
だから、
出し惜しみはしない。
右足を三寸ほど前へ。
体重がこれで、完全に前方へ移動する。
「玉砕は感心しない」
「砕ければ欠片があたるでしょう」
「欠片に刀があればいいがな」
「玉砕とはそうするものです。無闇に砕けてはそれこそ本末転倒」
お互い、にたりと嗤う。
「──いぃやぁぁぁあっ!」
先手をとったのは、また私だった。先ほどよりも短くなった距離をつめる。速度が極みに達すれば足音も消えるそうだが、私はまだその域にない。故に、道場中を揺らさんばかりの轟音を立て疾駆する。気配など丸わかりな代償を払ってでも、一刀の利を取らねばならない。
まずは一合。ガッ、とかみ合う竹刀ごしに藍さんの両目を一瞥する。絡み合ったそばから、
「うぉぉお!?」
吹き飛ばすっ!
「ぐぅ……おいおいずいぶんな馬鹿力、って、うわ、喋って、る! 途、中だ、っての!」
ついでに息もつかせない。喋る暇など与えないつもりだったが致し方ないか。体勢を崩し受けに回る竹刀ごと、叩き斬る勢いで連打連打連打、およそ十八合分は畳みかける。馬鹿力は半人半霊の特質だ。でなければ私のような小娘があのような刀を、それも二振りも取り回せられる道理がない。だから、竹刀となれば、このような連打も可能なわけだ。この細身の竹刀なら、楼観剣の二割半、白楼剣と比べても五割程度の重さしかなかろう。長所を最大に生かすことこそ、武の本義!
「ちっ」
藍さんが舌打ちと共に、受けた竹刀をそのまま跳ね上げる。ほぼ上段に腕が持ち上がってしまった私の眼前に肉薄し、左側からこめかみへ──肘打ちか!
「馬鹿力はどっちですかっ」
「おっと、根に持ったかい? それは重畳」
近距離なら肘打ちがもっとも速く、そして効果がある。私はそれを、柄の後ろで受け止めた。そこを支点として、逆回転へ入る。横倒しになっている竹刀をそのままお返しとばかりに、藍さんの側頭部へ遠心力で叩きつけるっ!
「おっと。……ふむ、頭が固い固いと思っていたが、なかなかどうして。達者じゃないか」
「臨機応変は師の身上、私も教わりましたから」
「そうかそうか……では、よし。私も一つ見せてやろう」
藍さんはそういうと、やにわに竹刀を左手一本で構えた。いまさら片手剣か、と私は不審に思いながらも応じて左八双に似た型に変える。すると。
「……藍さん、それはなんの真似ですか」
「さて、なんだろうか」
藍さんは竹刀を片手のまま、背中へ回したのだ。ちょうど左腕に沿うように立てた形で、だ。逆手かと思えばそうでもない、奇妙に指を伸ばした握りが気になる。
しかし、児戯ではない。
気づくと、藍さんの体はゆっくりと半身へ変化していた。真剣に攻撃する気のようだ。肩からも足からも完全に力が抜けているのに、およそ彼女の神経という神経には、動きを止められたばねのような意識が漲っていることが、理解できる。周囲に展開されている球状の気配は、その密度の濃さのせいで、簡易な結界のような有様だ。
ごくり、と渇いた喉が鳴る。刹那。藍さんの竹刀が唸りをあげて右から迫ってきた。この軌道は──頭部!
「く、ああぁ!」
なんて、速い……!
あの刹那、藍さんが飛ぶように迫ってくると同時。彼女の左後方から、竹刀がまるで蛇のように旋回してくるところを、なんとか目に焼き付けることが出来た。防ぐので精一杯。その上、押さえつけられているように竹刀が重い……。
うん?
押さえつけられているよう、に?
「しまっ……!」
「逃がさんよ」
おぼろげに思惑を理解した私はとっさに飛び退ろうとしたが、更に力が篭った藍さんの竹刀から逃げられない。こんの、片手の竹刀で押さえ込むなど、馬鹿力は絶対にそっちだ! くそ、手で来るか足で来るか……!
「よけてみろ」
「な!?」
藍さんの攻撃は意に反して竹刀だった。私の竹刀を支点にしてその切っ先が、阻んだはずの頭部へと勢い良く迫ってくる。そうか、あんな鍔元のそばで打ってきたのは、コレが狙いだったか──。
とっさに頭と首を避けるが、右肩をしたたかに打たれた。体勢が崩れる。──しかし、まだっ! 苦鳴をかみ殺し、
「悪いが、仕舞だ」
水月にもろに突き入れられた竹刀に、私の意識はゆっくりと刈り取られていった。
* * *
「すまん」
目の前、藍さん、土下座。ついでに尻尾もふもふ。
私が起き上がると、目の前にそんな光景が展開されていた。これはなかなかに珍しいな、などと考えていると、自分が布団に寝かされていたことにようやく気がついた。そういえば、軽く負けたんだった、と思い出す。
「あの、全く気にしてなどいませんので……」
「面目ない……どうも、その、お前が思いのほか強いので、つい」
「強い、ですか」
とてもそうは思えなかった。思い返せばいいようにあしらわれていたような気持ちで、正直少しでも勝てると考えていた自分が恥ずかしい。恥ずかしいので、布団から抜け出して正座する。そして、いまだに少女土下座中の藍さんの肩をそっと叩いた。
「顔を上げてください」
「ああ……」
「水月の痛みは気にしていません」
「目ぇ、目が怖いぃぃぃぃいっ」
藍さんは強いなあ、と改めて思う。そういえば、終わりのあの技は即興なのだろうか。あのような強く柔らかな剣の動きは見たことがなかった。
「藍さん」
「ナンデショウカ」
「もういいですってば」
「そうだな、私も少し飽きてきた」
「……。あのですね、最後の辺りで見せていただいた技は、藍さんの即興なのですか? あの、防いだ剣を支点に打ち下ろすような技は」
「ああ、あれか」
そういうと藍さんは、くくっと笑う。
「あれは私が追われていた頃に、追っ手が使っていた技でな」
「な、追われたのですか!?」
「ああまあ、その話はまたいつかな──ま、そのとき散々喰らったもんだから、嫌でも覚えてしまったよ。あんな奇術みたいな技を考えて、実際に使えるところまで持っていったのだから、奴もなかなかの者だったようだな」
「? 藍さんは使ったではないですか」
ああ、と藍さんは湯飲みに手を伸ばしつつ仰る。私もそれにならって、いつの間にか置かれていた湯飲みに手を伸ばした。さすがはマヨヒガだなと感心する。湯飲みの中身はドクダミ茶のようだった。
「私や……そうだな、妖夢ならば簡単なのだがな」
「私ですか」
「うん、単純に言えば力、なのかな。技巧を用いるのは簡単だが、それを使い物になる威力に出来るかどうか。思えば奴も人外の存在だったのかもしれないよ」
「それほどの技だったのですか……」
いやいや妖夢、と藍さんはまたかすかに笑った。その笑顔は少しだけ寂しげだった、かも知れない。
「私たちの場合は、一つの壁はすでに壁ではないんだ。その点でいえば、そう、『それほどの』技なんかじゃない。あとはもう、相手の防御を支点にして、手首ごと持ち上げればいいだけさ。ただし私はそれだけじゃなくて──」
と、藍さんは右手で喉仏の辺りを軽く撫で、語る。
「この辺を何度も貫かれたがね」
「う……」
「ふふ、そんな顔するな」
これだけ年月が経ってみると、それもまたよい思い出さ──、と彼女は目を閉じた。我が師にも、そういった思い出があったのだろうか、とふと考えた。きっとあったのだろう。私の知らない師だけの思い出が、たくさんたくさん、ありすぎるほどに。
そうだ。幽々子様ならば、師の行状について色々とご存知かもしれない、と私はマヨヒガを早々に辞すことにした。ご迷惑をかけた藍さんには、また後日お礼に伺う旨をお伝えする。いいさ、と彼女は軽く言って、手を振って見送ってくれた。
* * *
「……紫様」
呟いた藍の背後に、ぬるりと開く、異界の裂け目。
「あら、およびかしら?」
「見ていらしたんでしょうに」
「なんで?」
「私の行動を紫様がご存じないわけはありませんし、出てこられないということは見ていらっしゃるということでしょう?」
「そうねえ、でも、知らないことのほうが多いわよぉ」
我が主ながら、胡散臭い。直後、失礼なことを考えてしまったと反省するも、そもそも主自身がそう思わせるように仕向けているのだから仕方がないのではないか、と自己完結する藍。
「すぐに夕餉を」
「あらありがとう。で、どう?」
「どう、と申されますと」
「んもうわかってるくせに」
妖夢よ妖夢、と八雲紫──神隠しの主犯──は気遣わしげに妖夢の去った方向をみやる。演技か本気か判別がつかないな、と藍は思いながら口を開いた。
「未熟です」
「明快ねぇ。だめっぽい?」
「いえ。妖夢次第ではありますが……きっと伸びます。いずれは妖忌殿を追い越すことでしょう」
「人ゆえに、かしら?」
「半人ゆえに、です」
違いない、と紫と藍は笑いあう。
どちらからともなく二人はマヨヒガの中へと戻り、やがて。
一陣の風。
────後にはもう、何も、残らなかった。
焦燥感で真っ白に染まりそうな脳は、とうの昔にもてあましている。
どうして、どうして。何故。どうして。
どうして、勝てない?
わからなかった。いくら剣術指南役としての責務が(主に主人側のせいで)果たせていないにしても、鍛錬とはただ単に剣を振ることのみを指すわけではない。剪定ばさみの扱い一つにしろ、それを鍛錬とみなしたならば、日々積み重ねたそれはまさに磐石。極論を言えば箸の上げ下ろしすら鍛錬になる。
無論、基本の成ってない者が行っても無意味。というか、そんなことあるわけないだろうが。精神論に決まっているだろう。
「……決まっている、筈なんだけど」
思わず胴を目掛けた一閃と共に、呟きが漏れてしまう。
そうだ、決まっているのならば、今のこの状況は何だ。
当の相手は常のほんわかとした表情のまま、私の決して遅くはない─―むしろ手加減抜きの――打ち込みを、さも舞うかのように軽々とかわした。まるで蝶のようだ、と苦々しく賛辞を贈る。本来指南役としては上達を喜ぶべきなのだろうが……それが、私のあずかり知らぬあいだの事となれば、少々面白くない。否、かなり面白くない。確かに箸の上げ下ろしの回数が鍛錬となるのならば、相手のそれが尋常でない事もなんとか納得できる。
まあ問題は、そんなものが鍛錬になるはずないだろって事なんだが。
「あらあら妖夢、何が決まっているのかしら」
そうして気の抜けるような甘い声で相手─―幽々子様が問いを放った瞬間、まさに一瞬で私の得物が巻き上げられるように弾き飛ばされた。幽々子様の竹刀が、視野の外から握り近くを弾いたのかと気がついた時には、既に主の竹刀の切っ先は、私の眉間にひたりと当てられていた。
「……参りました」
「殊勝」
最近の幽々子様は、怖いほどに御強い。それについてだけは、完全に納得した。――しなければならなかった。
ではどうすればいい。頭の中で試行錯誤する。
「泣いちゃう?」
「泣きませんっ!」
「あらあら。だってそんな下を向いてるものだから」
考え事です、とごまかす。主を倒す算段とか、洒落にならない。
「妖忌がいると早いんだけど、ね?」
ごまかせなかった。すわ幽々子さま、心眼でも開眼なされたか……。
「いやいや妖夢、あなたの顔色とか物事の流れとか、そういったものが全て推理の材料になるのよ。あなたわかりやすいし。今もすごい吃驚した顔してたから、ちょっと推測してみただけ。心眼を開いたとでも考えたのかしら」
「……あの、本当に開眼なされては、おられないのですか?」
「芸者って人種は、本当にそればかりなのねぇ」
そういって幽々子様は、ほほ、と笑った。答えはやはり、いただけなかった。
* * *
「と、まあ、そういうわけでして」
「そういわれてもなあ……」
私の説明に、紫様の従者であり、式神を扱う式神としても名高い八雲藍──藍さんが悩ましい声を上げる。ふかふかとやわらかそうなどと言っては失礼かも知れないが、立派な九つの尾がゆらゆらとそれぞれにゆれて、持ち主の思考の巡りをあらわしているようだった。
「まあともかく、それでどうしたいんだ?」
「修行です」
「うむ、だろうな」
ため息とまでいかずとも、それに準ずるくらいには深い吐息をつく藍さん。そもそも、と彼女が言葉を継ぐ。
「そのなんだ、まず、なぜ剣術の話を私に持ってくるのかが解せないんだが」
「心得はありませんか?」
「あるよ。だがな、私の場合は呪が主なんだ。まあ暗器ならそれなりに使うが、剣術となると護身程度しか出来んぞ。……そうだな、永琳殿なら適任ではないか?」
いえ、と私は首を振る。
「確かに弓術からも学ぶことはできます。ただ、あの方は天才ですから」
「? それが問題――――ああ、そうか。そうだな」
藍さんは納得したように頷いた。
「薬師として弟子を導くことはできようが……弓術に関しては真正の天才。導くような次元ではないということか」
「はい。以前拝見する機会を得ましたが、永琳殿の射は百発百中などという生易しいものではありませんでした。あれはもう、中ることが決まっているから射る、という境地です。とても教わることなど出来ません」
「凄いものだね……しかし、そうなると」
腕組みをして考え込む藍さんの脳内で、どんな人選が行われているのか想像する。何しろ私もずいぶん悩んだのだ。悩んだ結果わかったのは、幻想郷内に存在する常識人は非常に少ないということだけだった。ちなみにその常識人の枠内に自分を入れることが、どうしても出来なかった。師よ、私は今切実に自尊心が欲しいです……。
「あ、ではどうかな、天狗の連中などは」
「相手してくれるような暇な連中には勝ってしまうので、駄目です」
「そ、そうか……」
大天狗様となればまた別だが……というか、そんな想像すら恐れ多い。古くは源九郎義経殿に稽古をつけた種族の長なのだ。しかしながら、そう、例を挙げれば哨戒任務に当たっている程度の天狗たちは、私にとって敵ですらない。逆に稽古をつけてやりたいぐらいのところだが、それをするにはまだ自分の未熟さが気になる。せめて、幽々子様にだけは一人前と認めていただかなければ……!
「では紅魔館の門番は」
「青龍刀は好みません」
絶対所持している気がする。
「藍さん、御願いします」
「うー……む。そうだね、どうも致し方ないようだ。わかったよ」
「有難う御座いますっ」
うむうむ、と頷いてくださっていた藍さんがやおら、にやりとした。彼女は、不意の表情の変化にいぶかしげな顔になる私に向かって、「では早速、立ち合うとするか」と言った。
* * *
「これはまた……」
「マヨヒガという存在は、可変が売りでね」
急遽立ち合う運びとなり、藍さんに促されるままついてきた場所は、板張りの道場だった。こんな場所は前にはなかったはずだが、さすがはマヨヒガというべきなのだろうか。どんな仕組みかは知らないが、私のために現れてくれたらしい。
「私も刀を使ったほうがいいかな?」
「私は教えを受ける身ですから……」
「ふむ――ま、最初は竹刀でやってみようか」
決定した藍さんが壁を向くと、そこにはいつの間にかさまざまな大きさの竹刀が無数に用意されていた。どうやら家自体が意を汲んで用意を行ってくれるらしい。これは便利だな、と白玉楼のことを懐かしんでいると、竹刀を吟味していた藍さんが一本の竹刀を渡してくれた。やけに手に馴染む。二度、三度と試し振りしてからようやく、楼観剣と長さが同じなのだと気がついた。
「使い慣れた得物の間合いのほうが、普段の妖夢の様子がわかりやすいだろう?」
「言われてみれば確かに」
「では」
────────瞬間、大気が凍えた。
「――――え」
なんだ、これは。
これは、これは……いや、そうか。
これは、ただの道理だ。
腕の震えが止まらなくてわずらわしい。
見たくないのに見てしまう。
何を?
彼女の瞳を。
瞳孔が縦に狭まった、そうだ、それは獣の瞳だ。
こわい。
ああ、思ってしまった。
彼女が、あいつが、こわい。
「ぐ、うぅ」
奥歯を、かみ締める。
自身の神経という神経を叱咤し、射殺すつもりで睨みつける。
……普段の彼女がやけに温和な性格のため忘れがちだが、そもそも藍さんの持つ妖力は桁外れ。弾幕ごっこではない、ただの殺し合いとなれば、まず目の前に立つだけで至難の業だろう。
だから、彼女は手加減してくれている。
これだけの威圧感を放っておきながら、殺意はほんのわずかに混ぜているだけ。私が壊れないよう、私がすくまないよう、気を遣ってくれているのだ。
だから。
とても悔しかった。
「……──、いざ」
呟くような声量で心を振り捨て、一歩目の踏み込みに全てを賭ける。剣とはすなわち、一切不惑。肉体の理を滞りなく動かすためには、まず己の迷いを断ち切らねばならない。
そう、私は、剣だ。
狂わなくては。
「む」
火薬が爆ぜるような破裂音がマヨヒガの道場に響く。私の体が立てた音だ。私の足が、立てた音だ。この音を聞くと、私の恐れや迷いが、音を立てて退いてゆく。息が楽になる。ここからだ。自分が正気に戻る前に、勝負をつけてしまわねばならない。理解してはいけない。分析してはいけない。
藍さん。すでに一足一刀の間合いに入っている。動かれる前に、動けないようにしなくては。踏み込む。ほぼ同時に私の竹刀の切っ先が、吸い込まれるように藍さんの肩へ────。
「……くぅ」
「いい速さだね」
当たらなかった。
矢張りとはいえ、当てることが出来なかった。
その事実に無様に意識を奪われてしまった私に仕掛けようともせず、藍さんは静かに対している。睨みつけた私の竹刀は、彼女の肩──頚動脈を傷つけ、そのまま心の臓を割ろうとする軌道──の直前で、彼女の持つ竹刀に止められてしまっている。眼前に竹刀。──竹刀?
「──つあっ!」
「おお、獣じみてる。でも余所見は駄目だね」
なんとか床に身を投げ出してよける。そのまま転がって藍さんから大きく距離をとった。すごい。もちろん侮るなどもってのほかの相手だということはわかっている。だが、だが全く攻撃の気配が読めなかった。間が外されている。──どうしてくれよう。
「続けるかい?」
「無論」
藍さんは強い。
強いが、目の前に立っている。
きっと、私の剣は届く。
否。
届かせる。
そう思わなければ戦う資格がない。
だから、
出し惜しみはしない。
右足を三寸ほど前へ。
体重がこれで、完全に前方へ移動する。
「玉砕は感心しない」
「砕ければ欠片があたるでしょう」
「欠片に刀があればいいがな」
「玉砕とはそうするものです。無闇に砕けてはそれこそ本末転倒」
お互い、にたりと嗤う。
「──いぃやぁぁぁあっ!」
先手をとったのは、また私だった。先ほどよりも短くなった距離をつめる。速度が極みに達すれば足音も消えるそうだが、私はまだその域にない。故に、道場中を揺らさんばかりの轟音を立て疾駆する。気配など丸わかりな代償を払ってでも、一刀の利を取らねばならない。
まずは一合。ガッ、とかみ合う竹刀ごしに藍さんの両目を一瞥する。絡み合ったそばから、
「うぉぉお!?」
吹き飛ばすっ!
「ぐぅ……おいおいずいぶんな馬鹿力、って、うわ、喋って、る! 途、中だ、っての!」
ついでに息もつかせない。喋る暇など与えないつもりだったが致し方ないか。体勢を崩し受けに回る竹刀ごと、叩き斬る勢いで連打連打連打、およそ十八合分は畳みかける。馬鹿力は半人半霊の特質だ。でなければ私のような小娘があのような刀を、それも二振りも取り回せられる道理がない。だから、竹刀となれば、このような連打も可能なわけだ。この細身の竹刀なら、楼観剣の二割半、白楼剣と比べても五割程度の重さしかなかろう。長所を最大に生かすことこそ、武の本義!
「ちっ」
藍さんが舌打ちと共に、受けた竹刀をそのまま跳ね上げる。ほぼ上段に腕が持ち上がってしまった私の眼前に肉薄し、左側からこめかみへ──肘打ちか!
「馬鹿力はどっちですかっ」
「おっと、根に持ったかい? それは重畳」
近距離なら肘打ちがもっとも速く、そして効果がある。私はそれを、柄の後ろで受け止めた。そこを支点として、逆回転へ入る。横倒しになっている竹刀をそのままお返しとばかりに、藍さんの側頭部へ遠心力で叩きつけるっ!
「おっと。……ふむ、頭が固い固いと思っていたが、なかなかどうして。達者じゃないか」
「臨機応変は師の身上、私も教わりましたから」
「そうかそうか……では、よし。私も一つ見せてやろう」
藍さんはそういうと、やにわに竹刀を左手一本で構えた。いまさら片手剣か、と私は不審に思いながらも応じて左八双に似た型に変える。すると。
「……藍さん、それはなんの真似ですか」
「さて、なんだろうか」
藍さんは竹刀を片手のまま、背中へ回したのだ。ちょうど左腕に沿うように立てた形で、だ。逆手かと思えばそうでもない、奇妙に指を伸ばした握りが気になる。
しかし、児戯ではない。
気づくと、藍さんの体はゆっくりと半身へ変化していた。真剣に攻撃する気のようだ。肩からも足からも完全に力が抜けているのに、およそ彼女の神経という神経には、動きを止められたばねのような意識が漲っていることが、理解できる。周囲に展開されている球状の気配は、その密度の濃さのせいで、簡易な結界のような有様だ。
ごくり、と渇いた喉が鳴る。刹那。藍さんの竹刀が唸りをあげて右から迫ってきた。この軌道は──頭部!
「く、ああぁ!」
なんて、速い……!
あの刹那、藍さんが飛ぶように迫ってくると同時。彼女の左後方から、竹刀がまるで蛇のように旋回してくるところを、なんとか目に焼き付けることが出来た。防ぐので精一杯。その上、押さえつけられているように竹刀が重い……。
うん?
押さえつけられているよう、に?
「しまっ……!」
「逃がさんよ」
おぼろげに思惑を理解した私はとっさに飛び退ろうとしたが、更に力が篭った藍さんの竹刀から逃げられない。こんの、片手の竹刀で押さえ込むなど、馬鹿力は絶対にそっちだ! くそ、手で来るか足で来るか……!
「よけてみろ」
「な!?」
藍さんの攻撃は意に反して竹刀だった。私の竹刀を支点にしてその切っ先が、阻んだはずの頭部へと勢い良く迫ってくる。そうか、あんな鍔元のそばで打ってきたのは、コレが狙いだったか──。
とっさに頭と首を避けるが、右肩をしたたかに打たれた。体勢が崩れる。──しかし、まだっ! 苦鳴をかみ殺し、
「悪いが、仕舞だ」
水月にもろに突き入れられた竹刀に、私の意識はゆっくりと刈り取られていった。
* * *
「すまん」
目の前、藍さん、土下座。ついでに尻尾もふもふ。
私が起き上がると、目の前にそんな光景が展開されていた。これはなかなかに珍しいな、などと考えていると、自分が布団に寝かされていたことにようやく気がついた。そういえば、軽く負けたんだった、と思い出す。
「あの、全く気にしてなどいませんので……」
「面目ない……どうも、その、お前が思いのほか強いので、つい」
「強い、ですか」
とてもそうは思えなかった。思い返せばいいようにあしらわれていたような気持ちで、正直少しでも勝てると考えていた自分が恥ずかしい。恥ずかしいので、布団から抜け出して正座する。そして、いまだに少女土下座中の藍さんの肩をそっと叩いた。
「顔を上げてください」
「ああ……」
「水月の痛みは気にしていません」
「目ぇ、目が怖いぃぃぃぃいっ」
藍さんは強いなあ、と改めて思う。そういえば、終わりのあの技は即興なのだろうか。あのような強く柔らかな剣の動きは見たことがなかった。
「藍さん」
「ナンデショウカ」
「もういいですってば」
「そうだな、私も少し飽きてきた」
「……。あのですね、最後の辺りで見せていただいた技は、藍さんの即興なのですか? あの、防いだ剣を支点に打ち下ろすような技は」
「ああ、あれか」
そういうと藍さんは、くくっと笑う。
「あれは私が追われていた頃に、追っ手が使っていた技でな」
「な、追われたのですか!?」
「ああまあ、その話はまたいつかな──ま、そのとき散々喰らったもんだから、嫌でも覚えてしまったよ。あんな奇術みたいな技を考えて、実際に使えるところまで持っていったのだから、奴もなかなかの者だったようだな」
「? 藍さんは使ったではないですか」
ああ、と藍さんは湯飲みに手を伸ばしつつ仰る。私もそれにならって、いつの間にか置かれていた湯飲みに手を伸ばした。さすがはマヨヒガだなと感心する。湯飲みの中身はドクダミ茶のようだった。
「私や……そうだな、妖夢ならば簡単なのだがな」
「私ですか」
「うん、単純に言えば力、なのかな。技巧を用いるのは簡単だが、それを使い物になる威力に出来るかどうか。思えば奴も人外の存在だったのかもしれないよ」
「それほどの技だったのですか……」
いやいや妖夢、と藍さんはまたかすかに笑った。その笑顔は少しだけ寂しげだった、かも知れない。
「私たちの場合は、一つの壁はすでに壁ではないんだ。その点でいえば、そう、『それほどの』技なんかじゃない。あとはもう、相手の防御を支点にして、手首ごと持ち上げればいいだけさ。ただし私はそれだけじゃなくて──」
と、藍さんは右手で喉仏の辺りを軽く撫で、語る。
「この辺を何度も貫かれたがね」
「う……」
「ふふ、そんな顔するな」
これだけ年月が経ってみると、それもまたよい思い出さ──、と彼女は目を閉じた。我が師にも、そういった思い出があったのだろうか、とふと考えた。きっとあったのだろう。私の知らない師だけの思い出が、たくさんたくさん、ありすぎるほどに。
そうだ。幽々子様ならば、師の行状について色々とご存知かもしれない、と私はマヨヒガを早々に辞すことにした。ご迷惑をかけた藍さんには、また後日お礼に伺う旨をお伝えする。いいさ、と彼女は軽く言って、手を振って見送ってくれた。
* * *
「……紫様」
呟いた藍の背後に、ぬるりと開く、異界の裂け目。
「あら、およびかしら?」
「見ていらしたんでしょうに」
「なんで?」
「私の行動を紫様がご存じないわけはありませんし、出てこられないということは見ていらっしゃるということでしょう?」
「そうねえ、でも、知らないことのほうが多いわよぉ」
我が主ながら、胡散臭い。直後、失礼なことを考えてしまったと反省するも、そもそも主自身がそう思わせるように仕向けているのだから仕方がないのではないか、と自己完結する藍。
「すぐに夕餉を」
「あらありがとう。で、どう?」
「どう、と申されますと」
「んもうわかってるくせに」
妖夢よ妖夢、と八雲紫──神隠しの主犯──は気遣わしげに妖夢の去った方向をみやる。演技か本気か判別がつかないな、と藍は思いながら口を開いた。
「未熟です」
「明快ねぇ。だめっぽい?」
「いえ。妖夢次第ではありますが……きっと伸びます。いずれは妖忌殿を追い越すことでしょう」
「人ゆえに、かしら?」
「半人ゆえに、です」
違いない、と紫と藍は笑いあう。
どちらからともなく二人はマヨヒガの中へと戻り、やがて。
一陣の風。
────後にはもう、何も、残らなかった。
妖夢かっこいいです(^ρ^)
>>10
まずはお褒め有難う御座います。
仰るとおりで、その点を作中で消化できなかった事が私の未熟です。
納得いく文章を書けるよう頑張りたいと思います。
あの能力って、剣術を修めている程度の意味しかないと思うのだけれど。
妖夢に限らず、後天的に身に付けた技術を能力として扱っているっぽい
のがチラホラと。藍に至っては、それって紫の方が絶対凄いよね? とか
思ったり。