「はーいお二人さん今暇かしらー?」
「暇だけど何の用よ紫?」
急に隙間から現れた紫にレミリアは冷たく返す。
フランは驚きおやつを持ったまま固まっている。
固まっているフランを優しく見つめたあと紫はレミリアに向かっておどけたように言った。
「あらあらそう邪険にしないでちょうだい。お嬢さん。」
「黙れ。それに何の用だ?」
レミリアは怯えたフランを抱いて紫を睨む。
フランはびっくり系に弱いのだ。
紫はにこにこしながら用を告げた。
「何てことないわ。あなたたち外の世界へ旅行に行ってみませんこと?」
「は?どういうこと?」
鋭い表情をけし、驚いた顔をするレミリア。
紫は面白そうにレミリアを見つめたあと続けた。
「実は幻想郷は自然は多いのですけど発展が遅いのですわ。ですから外の世界の技術を視察してきてもらおうと思ってね。」
「なるほど…」
レミリアは納得したように頷くとふとおもいつくようにいった。
「理由は分かったが何故私たちなんだ?」
紫はそれに返答する。
「あなた方は外での暮らしが長いですし、他の妖怪たちと違って自ら結界を壊して入ってきましたので記憶も有りますでしょう?」
「ふむ…」
レミリアは少し考える仕草をすると犬のごとくくっついている妹をみやる。フランは外の世界と聞いて気になっているのか瞳がキラキラしていた。フランは幻想郷に来るまで地下から出ようとしなかったので気になるのだろう。
「分かったわ。それ乗らせてもらうわね。でもどうすればいいのかしら?外の世界のやしきは人間たちに壊されてしまったしそもそもどこへいくのよ。」
「その点に関しては問題有りませんわ。あなたたちに見合う高級なホテルは私が予約しますし向こうのお金も渡します。こことは通貨が違いますからね。あなたたちは服などを用意するだけでいいですわ。私が誘ったのだから全て私がやります。あと目的地は日本ですわ。つまり表日本ですわね。ここが裏日本ですから。」
紫の説明に頷くとレミリアは犬をつれて屋敷のなかに戻っていった。
旅行当日紫が屋敷につくと姉妹はすでにしたくを整え待っていた。だが…
「あなたたちホントにその服でいくのですか?」
紫が驚くのも無理はない。
何時もよりは控えめだが二人ともフリルたっぷりのふんわりドレスに高級そうなペチコートを履いている。フランに至っては大きな熊のぬいぐるみを抱えているのだ。
わかると思うが現代の日本ではコスプレといわれる格好をしているのだ。
しかし紫の疑問を聞いた二人は首をかしげながら話す。
「ええ?この服はお出掛け用の正装よ?いつもきているのは部屋着だもの。どこかおかしいかしら…」
紫は思い出した。そういえば二人は西洋の貴族だったと。紫はつっこむのを止めた。
「と…とりあえず外に送りますわね。」
紫が言うと同時に隙間を発動させる。そして
「ここが表日本ですわ。楽しんでちょうだいね。あとあなたたちも妖精メイドさんも羽は隠すのよ。」
それだけ言うと紫は帰っていった。残された姉妹と今回のお付きの妖精メイドはとりあえず町に向かった。
「うわー…人がいっぱいねお姉様。」
「そうね…」
レミリアはふとそばにある看板を読み上げる。
「『おいでませ京都』?」
「きょーと?なにそれ」
フランがピョコンと首をかしげる。ついでにぬいぐるみも傾げた。
フランの疑問を解消したのは妖精メイドだった。
「京都と言うのは日本の観光地のひとつでございますフラン様。日本らしさが味わえたり、世界遺産というものが多くあり古くからの建物や祭事等が残っている場所です。」
「ふーん…」
と二人が話している間にレミリアが甘いものの店を見つけ入ることとなった。
「いらっしゃいま…せ…」
三人が店に入ると出迎えてくれた店の店員は固まりまわりにいた客たちもざわめき出した。そりゃあ明らかに人間離れしたドレスの美少女二人と後ろで礼儀正しく控えてるメイドを見たら驚くだろう。
が等の本人たちは露知らず、不思議そうに辺りを見渡すと妖精メイドは固まったままの店員に声をかけた。
「あの申し訳有りませんが、ずっとお嬢様達をたたせているのはいけないのです。お席に案内してくださいませんか?」
「あ…そうですね!すいませんこちらへどうぞ」
慌てわれにかえった店員はメイドの言葉で席へ案内する。
そしてスイーツを味わっている間まわりのひそひそ話は絶えなかった。
いわく お嬢様って言ったぞ?、コスプレじゃなさそうよね…、可愛い、等だ。
「美味しかったわね。」
レミリアは満足そうに店を出る。
「お姉様!次はあそこいこう!」
「はいはい…」
レミリアは苦笑しながらフランと一緒に旅行を楽しんだ。
勿論他の観光客からの視線とひそひそ話が絶えなかったのは言うまでもない。
お寺にいったり、抹茶食べたり八つ橋買ったりと存分に満喫したあと紫が現れた。
「楽しかったかしら?お二人さん。」
紫の問いに眠るフランをおんぶしたレミリアが笑顔でうなずく。
紫は満足そうな笑みを浮かべると三人をつれて隙間に消えた。
「次は西洋にいかない?お二人さん。」
「「いくーーーー!」
すっかり旅行にはまったスカーレット姉妹だった。