一輪の背中にいるのが雲山から風船に変わったあたりで、いよいよ命蓮寺の経済状況もまずくなった。事業仕分けである。
ナズーリンは浦安のバイトで財を築き、星はナズーリンの妻となって食事に困っては居ないという。ぬえはどこかへ出かけたまま帰ってこない。
白蓮は蓮根を齧って飢えを凌ぎ、ムラサは具無しカレーを作っていた。されどかける米がない。
「お米がないっ!」
ムラサの慟哭が響く。
なんとか幻想郷でやっていく目処もついたと思いきや、お布施は十分な金額が集まらずにいた。
博麗神社は横に置いておくとしても、ほんの少し新参なだけの守矢神社に対し、命蓮寺はいまだ知名度が低い。
このままでは、家族同然である仲間たちも離散してしまう。ここで具無しカレーを作っているようなムラサではない。
「ごめんねムラサ。あなたにばかり背負わせてしまって」
「海兵隊は仲間を大切にするんです」
どこで覚えてきたのかしら、と白蓮は首を傾げた。時折ムラサの頭はファンタジーなのだ。
こないだなど、突如巨大なカジキマグロを釣り上げて帰ってきて、命蓮寺の面々の飢えを凌いだ。
幻想郷に海など存在しないのに。
「大抵のことは海兵隊魂でなんとかなります」
それで全てが解決するのなら、世界中の人がみな海兵隊になる。
というかまず、セーラー服は水兵服であって、海兵隊ではない。
「こまけぇことはいいんだよ!」
そう言って胸を張る豪快さもまた、ムラサの美点であった。
しかしコーヒー牛乳で具材を煮込み、それをカレーと言い張る海兵隊魂も、金がなければパンも買えない。
パンがなければパンツを煮込めばいいじゃないという意見もあるが、ノーパンしゃぶしゃぶはパンツを煮込むわけではないのだ。
「これは一つ、お金を稼ぐ必要があるわね」
ときに、地霊殿の化け猫が『おりんりんタクシー』なるものを始めたそうな。
なんでも猫車に客を乗せ、それを目的地へと運ぶ。これで千円。
肉体労働で稼ぐことを美徳するムラサにとって、その仕事はとても魅力的に聞こえた。
しかし、猫車なるものは持っていない。せいぜいあるのは錨ぐらいである。まさかそこに括りつけて走るわけにもいかない。
「となると、あれしかないわね」
ムラサは錨に看板を括りつけると、それを里の近辺へと突き刺した。
『ムラムラタクシー』
世にも卑猥な、二匹目のどじょうを狙うタクシーが誕生した瞬間である。
「カレー美味しいなぁ」
水筒の中身は当然、具無しのカレーである。これで喉の渇きと空腹を同時に癒すという魂胆であるが、飲めば飲むほど喉が渇く。
おまけにスパイスが食欲を刺激するという優れものだった。ぐぎゅるるる、と周囲に恥ずかしい音が漏れる。
「兵士は食わねど高楊枝、さ」
ムラサの目の前を、握り飯をかぶりつきながら歩く男が通った。恨めしそうにそれを目線で追いかけるが、彼はそれに気づいて早足で通り過ぎた。
「客もこないしね」
明朗会計、一万円ぽっきり。おりんりんタクシーが千円で営業するのなら、こちらは価格で対抗である。
なぜ値下げではなく値上げで対抗したのかと聞くと、「一人の客で十倍の収入。同じ客の数を取れば十倍の収益が望めるのよ」
ということらしい。どういうこと。
「このままじゃ聖がおなかを空かせて死んじゃう。一輪だって無倫になっちゃう」
無倫になると、ギリギリな商売を始めるらしい。
「そうしたら天麩羅蕎麦食べてジャガイモと牛肉を入れたカレーを作って」
「おいコラムラサ。なんで私がそんなことに手を染めなきゃいけないのよ」
「あら一輪。ごきげんよういい朝ね私ったらいけないわ早くジェニファーのところに行ってテニススクールに行かないといけないの」
「句読点ぐらい付けなさいよ。大体ジェニファーって誰よ。また勝手に作ったの?」
「いるもん! アンドレもジェニファーもオアチュリー・ノーレッジも雲山だってちゃんと居るもん!」
「うん、雲山は居るね。うん」
しかし一輪の背中では、緑の風船が揺れていた。マジックで雲山で書かれている辺り、たぶん雲山だと思う。
「でもムラサ。さすがに一万円は高いんじゃない?」
「そうかしら?」
「そうよ。競合相手のおりんりんタクシーは千円ポッキリなんでしょ?」
「サービスの内容が違うのよ。四十分八千円ポッキリのお店も、三十分の延長は五千円だわ」
「ちょっとお得感が出るのね。でも高い。しかも一万円ですらない」
「安くて早くて安心ね」
「高くて怪しくて乱心よ。ねぇムラサ。ちゃんと働きに出ましょう? ぬえだって日雇いの仕事してるらしいのよ」
「私はプロレタリアートの哀歌を叫ぶ義務があるのよ。蟹工船で過ごしたあの日々……」
「まぁいいけど、お客いないんでしょ?」
「うん。居ない」
「試しに私が乗ってあげるわよ。ムラサの試みがどんなものかって」
「ほんとに! さすが通訳の仕事を長年務めてる一輪ね! 資本主義者の犬!」
「すっごい腹立つんだけど。それで、どうやってタクシーになるの?」
ムラサはよくぞ聞いてくれましたとばかりに、胸を張った。
「私が貴女の肩に乗るの」
「ちょっと待って。客がムラサを運ぶってどういうことなの」
「新時代のビジネスよ。タクシーも客を運ぶという形態から、客がタクシーを運ぶという時代に突入したの」
「本末転倒にすぎる!」
「私はキャプテンよ! キャプテンたるもの、船を操船する義務がある! とぅっ!」
そう言うがいなや、ムラサは月面宙返りで一輪の肩へと飛び乗った。
足を一輪の腋の下へと挟み込む、見事な肩車である。雲山は弾けた。
「よし、とりあえず守矢神社にいこう一輪。レッツゴー」
「え、あっ、うん……」
一輪は言われるがままに、ゆっくりと妖怪の山へと歩き出した。
異様な風体の二人を、天狗たちは協議の末に見送った。
どうやら二人の足は守矢神社へ向かっているようで、天狗社会に影響を及ぼすことはないだろうということ。
命蓮寺の住人として、既に面通しは済ませていたということ。
そして何よりも、怪しげな二人組みに関わりたくはないというのが本音であった。
「いやーいい天気。私の船が沈没したのもこんな日でね」
快晴で雲一つない天気で沈没したのならば、ムラサの船長としての腕は疑われる。
「カレーと船、どちらも私は大切だった。だから命も投げ出したんだよ、うんうん」
「そうなんだ」
「さっきからつれないけど、どうかした?」
「ううん」
言葉少ない一輪に、ムラサはカレーの水筒を渡すことで機嫌を取ってみた。投げ捨てられた。ムラサは泣いた。
しかしながらも、ムラムラタクシーは確実に守矢神社へと近づいている。思った以上に良い発想だったと、一人得心した。
(一輪一万円持ってるかな。これからは前払いにしたほうがいいかもしれない)
代金を踏み倒す客も、この幻想郷にはいないとも限らない。
とくに、紅魔館の主だとか博麗の巫女はきっと、文句やケチをつけて代金を払わないに違いないのだ。
次からはしっかりと、前金で一万円を取ると、ムラサは誓った。
(技術の安売りは許せない。ダンピングが横行しちゃったら、技術者に未来はないのよ)
物が安くなることは、決して良いことばかりではないのだ。消費者にも、そこをよく考えてもらいたい。
しかし同時に忘れないでほしい。ムラサのしていることは、ただの肩車だと言うことも。
「はてさて、守矢神社にもついたわけで」
「疲れた……」
ムラサを降ろして、そのまま膝をつく一輪。軽いムラサといえど、肩車をして山道を歩けば、膝にくる。
「おやま? そこに居るのは命蓮寺のお二人さんじゃないですか。お久しぶりです。幻想郷には慣れましたか?」
箒に仕込み刀を仕込んで十年。今では立派な剣客へと成長した早苗は、すり足で参拝者である二人へと近づいた。
ムラサはそれでも○○が付いているのかと叱咤し、一輪は首を横に振ってんなものは無いと否定した。
「○○がそんなのじゃしょぼくれた爺の××××にも■■■■だ! まだ老馬の@×Э%のほうが迫力がある!
口で○○たれる前と後に『サー』と言え! 分かったか不人気!」
「たいして変わらないってば……」
「お取り込みのところ失礼しますね。えーっと、ムラサ船長さんと、一輪さんですっけ? 今日は雲の人は居ないんですか?」
早苗が話しかけると、反射的にムラサのマーシャルアーツ(ビ○ーズ・ブートキャンプ仕込み)が飛び出した。
しかし冷静にそれを受けた早苗は、流暢な動きで逆にアームロックをかける。
「ぐわわああ!」
「それ以上はいけない!」
一輪の叫びに、ぱっとアームロックを外す。恨めしそうに早苗を睨むムラサであったが、どう贔屓目に見ても自業自得の正当防衛だった。
「失礼ですね。現人神だって体は人間なんですよ。急に殴りかかれたらそりゃアームロックもかけます」
この体運びは、外の世界の女子の一般的なスキルである。
「千夜一夜物語もびっくりの説話ね。姐さんは、人間は変わっていないって言ってたけど、変わってるじゃない」
「うぐごごご……」
腕を押さえてもがくムラサに、早苗は腕に包帯を巻いていた頃を思い出していた。
一回百円で、風を起こしてスカートを捲るバイトをしていたこと。
自分のスカートは決して捲りあがらないよう、奇跡の力をフル活用したこと。
バレンタイデーにチョコレートと見せかけて、奇をてらってカレールーを渡したこと。
それを食べた、好きだった男の子が翌日インドへ旅立ってしまったこと。
まるで走馬灯のように蘇った数々の光景で、早苗は、目頭が熱くなるのを感じていた。
「私の、負けです」
「何がだよ!?」
「うぎぎぎぎ」
「そうですか、事情はわかりました。いいでしょう。お米がないのなら、うちの備蓄を分けますよ。
え? 御礼だなんて結構ですよ。三人の食い扶持なんてそう大したこともないですし、困ったときはお互い様ですから」
終始謙虚な態度を取っていた早苗に、一輪はさすが現人神は格が違ったと頷いた。
一俵丸ごと分けてもらった一輪とムラサの両名は、これで胸を張って命蓮寺へと帰れると頬をほころばせていた。
「しばらくは具無しカレーでも、いいかな……? ご飯があるってわかったら、きっとみんなも帰ってくるよね、きっと」
「なんで無理やりにいい話にしようとしてるの?」
目論見を完全に打ち砕かれてしまったムラサは、瞳から光を失った。
一輪はため息を吐きつつも、俵を担ぎなおす。
「帰ろうムラサ。私たちの家に」
「うん。あ、そういえばさ一輪。なんで私が肩車されてたとき、ずっと無言だったの?」
「え、それは、その、えっと、ね?」
ナズーリンは浦安のバイトで財を築き、星はナズーリンの妻となって食事に困っては居ないという。ぬえはどこかへ出かけたまま帰ってこない。
白蓮は蓮根を齧って飢えを凌ぎ、ムラサは具無しカレーを作っていた。されどかける米がない。
「お米がないっ!」
ムラサの慟哭が響く。
なんとか幻想郷でやっていく目処もついたと思いきや、お布施は十分な金額が集まらずにいた。
博麗神社は横に置いておくとしても、ほんの少し新参なだけの守矢神社に対し、命蓮寺はいまだ知名度が低い。
このままでは、家族同然である仲間たちも離散してしまう。ここで具無しカレーを作っているようなムラサではない。
「ごめんねムラサ。あなたにばかり背負わせてしまって」
「海兵隊は仲間を大切にするんです」
どこで覚えてきたのかしら、と白蓮は首を傾げた。時折ムラサの頭はファンタジーなのだ。
こないだなど、突如巨大なカジキマグロを釣り上げて帰ってきて、命蓮寺の面々の飢えを凌いだ。
幻想郷に海など存在しないのに。
「大抵のことは海兵隊魂でなんとかなります」
それで全てが解決するのなら、世界中の人がみな海兵隊になる。
というかまず、セーラー服は水兵服であって、海兵隊ではない。
「こまけぇことはいいんだよ!」
そう言って胸を張る豪快さもまた、ムラサの美点であった。
しかしコーヒー牛乳で具材を煮込み、それをカレーと言い張る海兵隊魂も、金がなければパンも買えない。
パンがなければパンツを煮込めばいいじゃないという意見もあるが、ノーパンしゃぶしゃぶはパンツを煮込むわけではないのだ。
「これは一つ、お金を稼ぐ必要があるわね」
ときに、地霊殿の化け猫が『おりんりんタクシー』なるものを始めたそうな。
なんでも猫車に客を乗せ、それを目的地へと運ぶ。これで千円。
肉体労働で稼ぐことを美徳するムラサにとって、その仕事はとても魅力的に聞こえた。
しかし、猫車なるものは持っていない。せいぜいあるのは錨ぐらいである。まさかそこに括りつけて走るわけにもいかない。
「となると、あれしかないわね」
ムラサは錨に看板を括りつけると、それを里の近辺へと突き刺した。
『ムラムラタクシー』
世にも卑猥な、二匹目のどじょうを狙うタクシーが誕生した瞬間である。
「カレー美味しいなぁ」
水筒の中身は当然、具無しのカレーである。これで喉の渇きと空腹を同時に癒すという魂胆であるが、飲めば飲むほど喉が渇く。
おまけにスパイスが食欲を刺激するという優れものだった。ぐぎゅるるる、と周囲に恥ずかしい音が漏れる。
「兵士は食わねど高楊枝、さ」
ムラサの目の前を、握り飯をかぶりつきながら歩く男が通った。恨めしそうにそれを目線で追いかけるが、彼はそれに気づいて早足で通り過ぎた。
「客もこないしね」
明朗会計、一万円ぽっきり。おりんりんタクシーが千円で営業するのなら、こちらは価格で対抗である。
なぜ値下げではなく値上げで対抗したのかと聞くと、「一人の客で十倍の収入。同じ客の数を取れば十倍の収益が望めるのよ」
ということらしい。どういうこと。
「このままじゃ聖がおなかを空かせて死んじゃう。一輪だって無倫になっちゃう」
無倫になると、ギリギリな商売を始めるらしい。
「そうしたら天麩羅蕎麦食べてジャガイモと牛肉を入れたカレーを作って」
「おいコラムラサ。なんで私がそんなことに手を染めなきゃいけないのよ」
「あら一輪。ごきげんよういい朝ね私ったらいけないわ早くジェニファーのところに行ってテニススクールに行かないといけないの」
「句読点ぐらい付けなさいよ。大体ジェニファーって誰よ。また勝手に作ったの?」
「いるもん! アンドレもジェニファーもオアチュリー・ノーレッジも雲山だってちゃんと居るもん!」
「うん、雲山は居るね。うん」
しかし一輪の背中では、緑の風船が揺れていた。マジックで雲山で書かれている辺り、たぶん雲山だと思う。
「でもムラサ。さすがに一万円は高いんじゃない?」
「そうかしら?」
「そうよ。競合相手のおりんりんタクシーは千円ポッキリなんでしょ?」
「サービスの内容が違うのよ。四十分八千円ポッキリのお店も、三十分の延長は五千円だわ」
「ちょっとお得感が出るのね。でも高い。しかも一万円ですらない」
「安くて早くて安心ね」
「高くて怪しくて乱心よ。ねぇムラサ。ちゃんと働きに出ましょう? ぬえだって日雇いの仕事してるらしいのよ」
「私はプロレタリアートの哀歌を叫ぶ義務があるのよ。蟹工船で過ごしたあの日々……」
「まぁいいけど、お客いないんでしょ?」
「うん。居ない」
「試しに私が乗ってあげるわよ。ムラサの試みがどんなものかって」
「ほんとに! さすが通訳の仕事を長年務めてる一輪ね! 資本主義者の犬!」
「すっごい腹立つんだけど。それで、どうやってタクシーになるの?」
ムラサはよくぞ聞いてくれましたとばかりに、胸を張った。
「私が貴女の肩に乗るの」
「ちょっと待って。客がムラサを運ぶってどういうことなの」
「新時代のビジネスよ。タクシーも客を運ぶという形態から、客がタクシーを運ぶという時代に突入したの」
「本末転倒にすぎる!」
「私はキャプテンよ! キャプテンたるもの、船を操船する義務がある! とぅっ!」
そう言うがいなや、ムラサは月面宙返りで一輪の肩へと飛び乗った。
足を一輪の腋の下へと挟み込む、見事な肩車である。雲山は弾けた。
「よし、とりあえず守矢神社にいこう一輪。レッツゴー」
「え、あっ、うん……」
一輪は言われるがままに、ゆっくりと妖怪の山へと歩き出した。
異様な風体の二人を、天狗たちは協議の末に見送った。
どうやら二人の足は守矢神社へ向かっているようで、天狗社会に影響を及ぼすことはないだろうということ。
命蓮寺の住人として、既に面通しは済ませていたということ。
そして何よりも、怪しげな二人組みに関わりたくはないというのが本音であった。
「いやーいい天気。私の船が沈没したのもこんな日でね」
快晴で雲一つない天気で沈没したのならば、ムラサの船長としての腕は疑われる。
「カレーと船、どちらも私は大切だった。だから命も投げ出したんだよ、うんうん」
「そうなんだ」
「さっきからつれないけど、どうかした?」
「ううん」
言葉少ない一輪に、ムラサはカレーの水筒を渡すことで機嫌を取ってみた。投げ捨てられた。ムラサは泣いた。
しかしながらも、ムラムラタクシーは確実に守矢神社へと近づいている。思った以上に良い発想だったと、一人得心した。
(一輪一万円持ってるかな。これからは前払いにしたほうがいいかもしれない)
代金を踏み倒す客も、この幻想郷にはいないとも限らない。
とくに、紅魔館の主だとか博麗の巫女はきっと、文句やケチをつけて代金を払わないに違いないのだ。
次からはしっかりと、前金で一万円を取ると、ムラサは誓った。
(技術の安売りは許せない。ダンピングが横行しちゃったら、技術者に未来はないのよ)
物が安くなることは、決して良いことばかりではないのだ。消費者にも、そこをよく考えてもらいたい。
しかし同時に忘れないでほしい。ムラサのしていることは、ただの肩車だと言うことも。
「はてさて、守矢神社にもついたわけで」
「疲れた……」
ムラサを降ろして、そのまま膝をつく一輪。軽いムラサといえど、肩車をして山道を歩けば、膝にくる。
「おやま? そこに居るのは命蓮寺のお二人さんじゃないですか。お久しぶりです。幻想郷には慣れましたか?」
箒に仕込み刀を仕込んで十年。今では立派な剣客へと成長した早苗は、すり足で参拝者である二人へと近づいた。
ムラサはそれでも○○が付いているのかと叱咤し、一輪は首を横に振ってんなものは無いと否定した。
「○○がそんなのじゃしょぼくれた爺の××××にも■■■■だ! まだ老馬の@×Э%のほうが迫力がある!
口で○○たれる前と後に『サー』と言え! 分かったか不人気!」
「たいして変わらないってば……」
「お取り込みのところ失礼しますね。えーっと、ムラサ船長さんと、一輪さんですっけ? 今日は雲の人は居ないんですか?」
早苗が話しかけると、反射的にムラサのマーシャルアーツ(ビ○ーズ・ブートキャンプ仕込み)が飛び出した。
しかし冷静にそれを受けた早苗は、流暢な動きで逆にアームロックをかける。
「ぐわわああ!」
「それ以上はいけない!」
一輪の叫びに、ぱっとアームロックを外す。恨めしそうに早苗を睨むムラサであったが、どう贔屓目に見ても自業自得の正当防衛だった。
「失礼ですね。現人神だって体は人間なんですよ。急に殴りかかれたらそりゃアームロックもかけます」
この体運びは、外の世界の女子の一般的なスキルである。
「千夜一夜物語もびっくりの説話ね。姐さんは、人間は変わっていないって言ってたけど、変わってるじゃない」
「うぐごごご……」
腕を押さえてもがくムラサに、早苗は腕に包帯を巻いていた頃を思い出していた。
一回百円で、風を起こしてスカートを捲るバイトをしていたこと。
自分のスカートは決して捲りあがらないよう、奇跡の力をフル活用したこと。
バレンタイデーにチョコレートと見せかけて、奇をてらってカレールーを渡したこと。
それを食べた、好きだった男の子が翌日インドへ旅立ってしまったこと。
まるで走馬灯のように蘇った数々の光景で、早苗は、目頭が熱くなるのを感じていた。
「私の、負けです」
「何がだよ!?」
「うぎぎぎぎ」
「そうですか、事情はわかりました。いいでしょう。お米がないのなら、うちの備蓄を分けますよ。
え? 御礼だなんて結構ですよ。三人の食い扶持なんてそう大したこともないですし、困ったときはお互い様ですから」
終始謙虚な態度を取っていた早苗に、一輪はさすが現人神は格が違ったと頷いた。
一俵丸ごと分けてもらった一輪とムラサの両名は、これで胸を張って命蓮寺へと帰れると頬をほころばせていた。
「しばらくは具無しカレーでも、いいかな……? ご飯があるってわかったら、きっとみんなも帰ってくるよね、きっと」
「なんで無理やりにいい話にしようとしてるの?」
目論見を完全に打ち砕かれてしまったムラサは、瞳から光を失った。
一輪はため息を吐きつつも、俵を担ぎなおす。
「帰ろうムラサ。私たちの家に」
「うん。あ、そういえばさ一輪。なんで私が肩車されてたとき、ずっと無言だったの?」
「え、それは、その、えっと、ね?」
たった今さっきビリーさん(大阪在住)をテレビで見てたばかりで噴いたwww
後ろ向きに肩車だったら40分一万円でも安過ぎる! 今から行くからキュロットだけ穿いて待ってろ!
……リストラされたのか…(涙)
ですが、本人が気づいていないのも一興。
八重結界さんありがとう!
いくら出せば一輪さんを乗せられますか
と思ってたら、まさか客をムラムラさせるタクシーだったとは
ごめんなさいキャプテン、こんどココイチで奢るから許して
というか水蜜の経歴が謎すぎる……
とにかく色々とツッコみたいですが、一輪さんの気遣い(?)に泣けました。
で、このタクシーはどこにいけば乗れますかね?
テリーマン……ゴローちゃん……
そりゃカレーの匂いなんて邪魔でしょうがないよなwww
さあry
とりあえず2万円だ
ところでナズをオプションで付けるといくらになりますかw
SSを読み終わる→なんて良心的な!
お、俺の身に一体何が……
最初っから最後までオチとツッコミどころしかないwww