Coolier - 新生・東方創想話

夜の散歩

2009/03/11 00:08:45
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十五夜の日、お月見も終わり皆が寝静まる頃に、こっそりと屋敷を抜け出した。

それはやってはいけない事。

理由は解らないがリーダーからキツク言われていた。

『十五夜の日の夜は決して屋敷の外に出てはいけない』

ソレを皆従順に守ってきた。
勿論私もそうだった。
しかし、そこまで言われるのなら、どうして駄目なのか興味があった。

いつもイロイロな悪戯をしているリーダー。
約束なんて守らないし、いつも嘘ばかりの彼女の口から出た言葉。

ソレに対して勿論皆が聞いた。

『どうして?』

その疑問に迷う事なくリーダーは答えた。

『駄目なものは駄目なの!もしこの約束破ったら全身の毛引っこ抜いて、塩水かけるからね!!』

「……」

あの時の言葉を思い出して身震いする。
アレは本気の目だった。

いつか聞かされた事があった。

アレがどんなに痛くて辛いのかを

「……だ、大丈夫、大丈夫、見つからなければ、うん、きっと……多分」

震える声を出しながら竹林を進む。

竹林を夜風が通る。
その風で『サササ』と静かに鳴く笹の葉の声を聞きながら竹林の奥へ進む。

この間偶然見つけた自分の秘密の場所。

天まで届きそうな程高く伸び、日の光も月の光も遮ってしまうこの竹林で
唯一開いた穴、まるでそこが、月を見るための特等席の様な場所。

今日のような満月の夜ならさぞ月が美しく見える事だろう。

生い茂る竹薮にポッカリと開いた穴、そこから見る月はどの様に見えるだろう?
普段と変わらない姿だろうか?
それとも、普段見る月よりも美しいだろうか?

これから見れるであろう光景を想像して、胸が期待で膨らんでいく。

一人での月見になると思っていたがしかし、その場所に着くとそこには先客がいた。

自分達とは少し違う兎。
ブレザーを羽織る彼女は竹薮に開く穴からジッと月を見つめていた。

彼女はこちらには気付いていない様だった。

声をかけようと思ったが出来なかった。
とても自分には声をける勇気はなかった。
リーダーに知られる事が怖いからではない(……とは言い切れない)。

泣きそうな目で、悲痛な表情で、ただ、月を見つめていた。

彼女の表情を見た瞬間、その光景に身動きが出来なくなっていた。

ふと、思い出したかのように彼女が月に手を伸ばす。

届くはずはない。

届かない事が解らない訳でもないだろうに彼女は必死に手を伸ばしている。

手は月の方へ向けられ、その手はただ、何も掴む事なく握られる。

「ごめんなさい」

声が聞こえてくる。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

誰かに対する謝罪の言葉

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

まるで親に叱られた子供の様に、月に手を伸ばし、謝罪の言葉を言い続ける。

誰に対する謝罪だろう?

疑問に思う。

その時肩に手が乗った。

「!?」

驚き振り向くとそこには知った顔があった。

「あ、リー…ダー?」

「姿が見えないと思って捜していたら、貴女はここで何をやっているの?」

その言葉にゾッとした。

「あ、あ、す、すいません」

「ごめんで済んだら罰なんか与えない」

非常にマズイ状況である。
リーダーは非常に怒っていらっしゃる。

「ほら、見つからないうちに帰るよ」

罰はその後でね、と最後に付け足された。

そして耳を掴まれ、そのまま引きずる様に連行される。

「あ、ちょ、ちょっとじゃないくらい痛いですコレ」

「大丈夫よ、これからのヤル事の方が痛いから」

冷たい言葉に血の気が引いていくのが解る。

普段なら軽口でもいいながら一緒に悪戯の準備をしているのに
今は普段の感じがまったくない。

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

まるで、先程の彼女の様に許しをこう。
それ程今日のリーダーは怖かった。

涙を流し懇願する私の姿を見て、リーダーは溜息をついた。

「反省してる?」

「は、はい、反省してます!」

「じゃあ、今日は特別に許してあげる、でも次約束破ったら……解ってるね?」

その言葉に私は壊れた人形の様に首をブンブンとふる。

その様子にリーダーはもう一度溜息をついて、私の顔を見て

「そう、貴女は少し自分勝手過ぎる。まずここで裁かれよ!月に置いてきた仲間の恨みと共に!」

無表情に言った。

「鈴仙ちゃんが閻魔様に言われた言葉、アレ以来毎月十五夜になると、あそこで月に向かって謝ってる。
この事も他の兎には秘密にしなさいよ」

「……はい」

秘密にするのならどうしてその事を私に教えたのだろう。
もしかしたら教えてほしいと顔に出ていたのかもしれない。

「帰るよ」

そう言って私の耳を離してリーダーは先に行ってしまう。

私は一度後ろを振り向く。

彼女は今もまだ月に謝り続けているのだろうか?
あんなに謝っていたのに彼女はまだ許されていないのだろうか?

ふと、彼女の事を考えた。

彼女の目があんなに赤いのはきっと、
月に残してきた仲間の事を思って涙しているからいつもあんなに紅いのだろう
と、そう思った。

私は先を行くリーダーを足早に追いかけた。

疑問が二つ残った。
彼女はいつまでああして謝り続けるのだろう?
どうして、リーダーはこの事を教えてくれたのだろう?

その疑問には誰も答えてはくれない。

――

兎、兎、何故その瞳は赤い?
月にいる仲間の事を思って泣いているから赤い。
七度目の投稿となります。H20です。

今回はちょっとやってみたかった書き方をしました。
そのキャラだけの視点で進む話を書いてみたかったのでやってみたのですが

いかがだったでしょうか?

あと、聞いた話では肌が傷ついた状態に海水をかけて放置すると
塩分により肌が乾き大変な事になるとかなんとか

塩水でもなるのでしょうか?
もしならないのでしたら、コレはアレです。てゐの脅しって事で一つ……

では、最後に
最後まで読んでいただきありがとうございました。

ご意見、アドバイス、誤字脱字や文法のミスがありましたら教えてやって下さい。
H2O
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コメント



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8.無評価名前が無い程度の能力削除
うーむ、物悲しい。
しかし、謎が謎のままで終わっているラストがちと微妙。
鈴仙の事はともかく、てゐが妖怪兎に事の次第を説明した理由が本当にわからない。この兎に鈴仙をどうにかさせたいんだろうか。この辺、謎が余韻として機能する以前にやや中途半端な印象を受けました。

しかしえーき様の判断で行くと、モハメド・アリも地獄行きなのかな。
戦争を強制される立場の者がそれを嫌って逃げ出すのって、仲間を見捨てた事になんのかね?
19.無評価H2O削除
8様
前回に続きまた疑問を残す様な話で申し訳ないです。
今後その辺りを課題に精進しようと思いますので、また見てやってください。

あと、モハメド・アリは戦争前、鈴仙は戦争中って事で若干ニュアンスが別と考えても
いいのではないでしょうか?
罪状は似た様な感じだとしても、中身を知らずに逃げるのと、中身を知っていて逃げるのとでは
また違う罪になるのではないだろうか?と自分は思います。
これがもし、戦争はこうなっていて、こんなに仲間が死んでいる。と自分の目で確認したうえで
逃げるのであればモハメド・アリも鈴仙も同じ罪になるのかもしれません。

また、徴兵拒否は平和主義としての思想の一つとも思いますので仲間を見捨てた事にはならないのかも
しれませんよ?(ただ、周囲から色々言われそうですが……

長々とすいませんでした。

次回もよろしければコメントを下さい。