こんにちは、地下室の狂気の妹、フランドール=スカーレットです。
最近天井の方が騒がしいので、ご飯を運びに来たメイドに尋ねたら、
姉さまがなんと月へ行くロケットを作成しているらしい。
我儘で好奇心旺盛な姉さまの事だから、
今回の騒ぎもそれ関連だろうと当たりをつけていたけど、
まさかロケットで月に行くとは思わなかったわ。
ところでロケットって何かしら?
姉さまが不在の間、気兼ねなく館を歩き回ることができる。
もっとも姉さまと咲夜がいる時でも、館の中を歩く事自体は禁じられていないのだけど、
咲夜がそれとなく目を光らせているのが感じ取れて辛いの。
そりゃ過去に情緒不安定で暴れたりもしたよ、でも、
いつまでもそんな目で見てほしくないのに……。
ロケットを見ようと歩き回り、美鈴に聞いてようやく場所を突き止めたけれど、
時すでに遅し、もう姉さま達は飛び立った後だった。
姉さまの友人のパチュリーから、しばらく紅魔館の面倒を見てくれって頼まれた。
トップが大勢いると、いろいろと大変な事になるのを歴史の本でいくらか知っていたので、
地下室で大人しくしていたんだけど、姉さまが帰って来るまでの代理なら問題ないはず。
退屈しのぎも兼ねて、姉さまのいない間に紅魔館を改革しちゃおう。私は今から臨時当主。
まずは……
~『咲夜のお仕置きルーム』を廃止しよう~
もっとみんなにとって素晴らしい紅魔館にするために、まずはこれに着手しよう。
以前妖精たちがその部屋の事を私にポツリと漏らし、こっそり行ってみたのだ。
べつにゾッとするような拷問道具があったわけではなく、
窓のない殺風景な小部屋に簡素な照明と2脚のスツールがあるだけだったけど、
ミスをした妖精メイド達は、咲夜によってここに連れてこられ、
お説教やお仕置きをされるみたい。
噂によれば悲鳴が轟いたとか、ここから出てきたメイドがおかしくなって出てきたとか、
あくまで噂だけど、妖精メイド達は怖がっているらしいの。
そこで、パチュリーと相談して、廊下から部屋の中身が見えるよう壁をぶち抜き、
ガラスをはめ込み、綺麗な壁紙を張って談話室にしてしまいました。
費用はとある場所からの捻出です。
改修工事を通りがかった妖精メイドが見ていたので、私は彼女に微笑んで、もう大丈夫よ、
と言ってあげたけれど、彼女は恐縮したのか、会釈してそそくさと去ってしまいました。
少しショック……とは言え、この子が荒れていた時のかつての私を知っているなら、
それも仕方がないのかも、でも何か割り切れないな。
以前二羽の兎が地下に迷い込んできた時、道を教えてあげようとしたのに、
二羽の兎はそれこそ脱兎のごとく逃げてしまった。こういうの、どうしても慣れないよ。
いやいや、懲りずに頑張ろう。いつか分かってくれる、と思うのは自惚れかしら?
私の紅魔館改革第2弾はズバリ
~美鈴の門番小屋に暖房を設置しよう~
今はそれほどでもないけど、冬場の門番小屋はとても寒い。ストーブもあるようだけど、
燃料の石炭が手に入れにくいって美鈴はぼやいていた。
紅魔館に豊富にあるエネルギー源、魔法の力を使った暖房器具を設置してあげよう。
魔理沙が言っていた香霖堂と言うお店へ行ってみた。
ここには外界から流れ着く物も含めて、珍しいものが置かれていると言うわ。
店主さんも私達と同じ人外っぽい。
探してみたけど、それらしいものは見つからない。
店主さんが何かお探しですかと声をかけても構わず探し続けた。
だって自分の力で何とかしてみたかったんだもん。
苦節30分、とうとう私は根負けして店主さんに聞いてみる事にした。
そしたら魔理沙が使っているのと少し違うタイプの八卦炉を見つけてくれた。
魔法で動く暖房器具が欲しいと言ったら、あれだねと一瞬で見つけてくれたわ。
今までの苦労は一体何だったんだろう。頑固さが仇になっちゃった。もっと素直になるべきだったね。
お代はまた例の物を使いました。
置手紙と取扱説明書を添えて、門番小屋にそっとこの八卦炉を置いて、
遠くからそっと観察しました。
「あれ、これは……?」 気付いたようね。
置手紙を読み進むうちに、美鈴の目が潤む。
「――――様、ありがとうございます、ありがとうございます」
両手で手紙を胸に当てながら、美鈴はずっと喜びの涙を流していた、大成功。
彼女はずっとプレゼントの贈り主に感謝の言葉をつぶやいていました。
あっ、いま思いついた、第3弾。
~美鈴や門番メイドの食事をひと品追加させよう~
内勤メイドに比べて結構大変なシフトらしいし、これくらい報いてあげなきゃ。
まだ財源はあるし。
次の改革案、メイド達の生産性向上……は別にいいや。
みんなにはのびのびと暮らしていて欲しいし、妖精メイドはあまり役に立たないと言われているけれど、紅魔館はそれで持っているの。
いいにおいが流れてきた。昼食の時間だね。
食堂はごった返していて、メイド全員は入りきれていない。20人くらいが外で待っている。
誰かが早く食べてよ、とぼやいています。
よし、ちょっと考え付いた。これが第4弾。
同じ時間に一度に食事するんじゃなくて、昼間勤務するメイド、夜勤のメイドを各二つのグループに分けて、勤務開始と終了の時刻を1時間ずらしてみようと思う。
パチュリーに相談し、妖精メイド達を広間に集めて、明日から始めてみる事にしました。
次の日、食事時に混雑しなくて済むようになって、みんなゆっくりご飯が食べられるようになりました。
「フラン、なかなかやるわね」 とパチュリーもほめてくれて嬉しい。
後もう一つやりたい事があるの、でもこれはまた別の財源が必要ね、
そこで臨時当主補佐(いま私が勝手に任命した)のパチュリーに相談しよう。
「でね、これを半分近く削れば……」
「それだと、レミィが怒るわよ」
「だから、外部にも協力してもらって……」
「フラン、あなたも策略家ね」
「だって、私も悪魔の一種だもん。それよりもパチュリー、イヤなら無理にとは言わないわよ」
「ううん、レミィにもたまにはお灸を、ね」
一週間後、紅魔館に窓が増えて、外から見たイメージも内部も明るくなりました。
実は私達吸血鬼、別に陽の光は弱点ではないんです。
ただ人々の迫害を恐れて、人目につきやすい昼間は避けて夜に活動しているうちに、
陽の光は有害だと吸血鬼側でも言いだすようになっただけ。
この幻想郷では秩序を守る限り、私達も世界のパワーバランスの一部として存在が
認められているのだから、もう自分たちを偽る必要はないと思うんです。
後パチュリーに、一連の改革に関してみんなに説明をお願いしておきました。
そうこうしているうちに姉さま達が帰って来ました。
紅魔館の従業員はみんな、姉さまに感謝しています。
曰く、
―お仕置き部屋を廃止したお嬢様のご英断に感謝します―
―お嬢様のおかげで門番小屋は冬もあたたかく、食事も豊かになって精が出ます―
―レミリア様のご配慮でご飯をゆっくり食べられるようになりました―
―陽の光はお嬢様の弱点なのに、光を好む私ら妖精のため、窓を増やして下さるなんてなんと豪胆なお方―
などなど。
「えっ、私はそんな事言っ……いや、喜んでくれて嬉しいわ、これで私の威厳を再確認したでしょう。精っぱい奉仕するが良い」
姉さまは余裕のある表情を取りつくろっていたけど、明らかに困惑していたな。
ちょっとその様がおかしくて笑える、いつも私達に対しては尊大に振舞っているのに。
私は素知らぬ顔で地下室に戻り、姉さまが突っ込んでくるのを今か今かと待つ。
ドタドタと足音が近づいてくる。来た来た。
ドアを勢いよく開けて、姉さまは叫ぶ。
「フ~~ラ~~ン~~やってくれたわね」
「あら、ごきげんようお姉さま」
「とぼけるんじゃないの、窓を増やしたの、あんたの仕業でしょう」
「いいじゃない、本来平気なんだし、それに、みんなに好評でしょ」
私はパチュリーに、私がした改革は全て姉さまが計画していて、私は姉さまに頼まれてそれをやっただけだとみんなに説明しておくように頼んでおいたの。
あくまで紅魔館当主の顔は姉さま、妹が当主の座を狙っているなどと風聞が流れたら、
どんな連中が漬け込んでくるかわからないし、それに、やっぱり姉さまとの絆はずっとずっと大事にしていたいのよ。
「まあ、それはいいとして、今晩の夕食が質素だったのは何故?」
「それは、窓の増設で、日頃家計を圧迫しまくっていた『れみりゃ費』を削減したのよ。
それでも、食事には食前酒に前菜に、肉や魚料理、スープにご飯にデザート、しっかり揃ってるでしょ、メイド達や私から見ればまだまだ贅沢の極みよ。それに」
と私は自分の翼を指差して続けました。
「私の羽の石も全部売ったんだから」
「貴方の羽の石、ただのガラスでしょ。これだけはすぐに元に戻させるわ」
「どうぞどうぞ、評判が落ちてもいいのなら」
私はとどめとばかりに、メイドに持ってこさせた天狗の新聞を姉さまに渡しました。
見出しはこうです。
レミリア嬢、従業員の待遇改善を行う。自らの生活を質素に
その新聞には、姉さまが紅魔館の財政改善のため、『れみりゃ費』と俗称される自らの生活費を削り、余裕のできた分はメイドや門番の生活向上に使うと発表したと書かれてあります。
天狗にそういう情報を流したんです。
そして、霊夢や魔理沙、そして前に一度争った事のある永遠亭の面々からの、
『あのレミリアにできるわけがない、すぐ撤回するにきまっている』
と異口同音のコメントも載せてもらいました。
ようは、姉さまのプライドに訴えかけるわけです。
もし以前のように贅沢ばかりするようになれば、それ見た事かと笑われちゃうし、メイド達を失望させちゃうぞ、と言う風に。
「ううう、何て恐ろしい子、今度何かするときは、私に言うのよ」
「はーい、姉さま☆」
姉さまはまだ何か言いたそうな顔で去って行きました。
その後、姉さまはメイド達から感謝され、紅魔館の対外イメージも良くなったそうです。
姉さま自身も、最初は不満たらたらだったのに、だんだんこの状態も悪くないと思うようになったみたい。
それでこそ立派な当主だよ、これからも陰で支えていくね。
最近天井の方が騒がしいので、ご飯を運びに来たメイドに尋ねたら、
姉さまがなんと月へ行くロケットを作成しているらしい。
我儘で好奇心旺盛な姉さまの事だから、
今回の騒ぎもそれ関連だろうと当たりをつけていたけど、
まさかロケットで月に行くとは思わなかったわ。
ところでロケットって何かしら?
姉さまが不在の間、気兼ねなく館を歩き回ることができる。
もっとも姉さまと咲夜がいる時でも、館の中を歩く事自体は禁じられていないのだけど、
咲夜がそれとなく目を光らせているのが感じ取れて辛いの。
そりゃ過去に情緒不安定で暴れたりもしたよ、でも、
いつまでもそんな目で見てほしくないのに……。
ロケットを見ようと歩き回り、美鈴に聞いてようやく場所を突き止めたけれど、
時すでに遅し、もう姉さま達は飛び立った後だった。
姉さまの友人のパチュリーから、しばらく紅魔館の面倒を見てくれって頼まれた。
トップが大勢いると、いろいろと大変な事になるのを歴史の本でいくらか知っていたので、
地下室で大人しくしていたんだけど、姉さまが帰って来るまでの代理なら問題ないはず。
退屈しのぎも兼ねて、姉さまのいない間に紅魔館を改革しちゃおう。私は今から臨時当主。
まずは……
~『咲夜のお仕置きルーム』を廃止しよう~
もっとみんなにとって素晴らしい紅魔館にするために、まずはこれに着手しよう。
以前妖精たちがその部屋の事を私にポツリと漏らし、こっそり行ってみたのだ。
べつにゾッとするような拷問道具があったわけではなく、
窓のない殺風景な小部屋に簡素な照明と2脚のスツールがあるだけだったけど、
ミスをした妖精メイド達は、咲夜によってここに連れてこられ、
お説教やお仕置きをされるみたい。
噂によれば悲鳴が轟いたとか、ここから出てきたメイドがおかしくなって出てきたとか、
あくまで噂だけど、妖精メイド達は怖がっているらしいの。
そこで、パチュリーと相談して、廊下から部屋の中身が見えるよう壁をぶち抜き、
ガラスをはめ込み、綺麗な壁紙を張って談話室にしてしまいました。
費用はとある場所からの捻出です。
改修工事を通りがかった妖精メイドが見ていたので、私は彼女に微笑んで、もう大丈夫よ、
と言ってあげたけれど、彼女は恐縮したのか、会釈してそそくさと去ってしまいました。
少しショック……とは言え、この子が荒れていた時のかつての私を知っているなら、
それも仕方がないのかも、でも何か割り切れないな。
以前二羽の兎が地下に迷い込んできた時、道を教えてあげようとしたのに、
二羽の兎はそれこそ脱兎のごとく逃げてしまった。こういうの、どうしても慣れないよ。
いやいや、懲りずに頑張ろう。いつか分かってくれる、と思うのは自惚れかしら?
私の紅魔館改革第2弾はズバリ
~美鈴の門番小屋に暖房を設置しよう~
今はそれほどでもないけど、冬場の門番小屋はとても寒い。ストーブもあるようだけど、
燃料の石炭が手に入れにくいって美鈴はぼやいていた。
紅魔館に豊富にあるエネルギー源、魔法の力を使った暖房器具を設置してあげよう。
魔理沙が言っていた香霖堂と言うお店へ行ってみた。
ここには外界から流れ着く物も含めて、珍しいものが置かれていると言うわ。
店主さんも私達と同じ人外っぽい。
探してみたけど、それらしいものは見つからない。
店主さんが何かお探しですかと声をかけても構わず探し続けた。
だって自分の力で何とかしてみたかったんだもん。
苦節30分、とうとう私は根負けして店主さんに聞いてみる事にした。
そしたら魔理沙が使っているのと少し違うタイプの八卦炉を見つけてくれた。
魔法で動く暖房器具が欲しいと言ったら、あれだねと一瞬で見つけてくれたわ。
今までの苦労は一体何だったんだろう。頑固さが仇になっちゃった。もっと素直になるべきだったね。
お代はまた例の物を使いました。
置手紙と取扱説明書を添えて、門番小屋にそっとこの八卦炉を置いて、
遠くからそっと観察しました。
「あれ、これは……?」 気付いたようね。
置手紙を読み進むうちに、美鈴の目が潤む。
「――――様、ありがとうございます、ありがとうございます」
両手で手紙を胸に当てながら、美鈴はずっと喜びの涙を流していた、大成功。
彼女はずっとプレゼントの贈り主に感謝の言葉をつぶやいていました。
あっ、いま思いついた、第3弾。
~美鈴や門番メイドの食事をひと品追加させよう~
内勤メイドに比べて結構大変なシフトらしいし、これくらい報いてあげなきゃ。
まだ財源はあるし。
次の改革案、メイド達の生産性向上……は別にいいや。
みんなにはのびのびと暮らしていて欲しいし、妖精メイドはあまり役に立たないと言われているけれど、紅魔館はそれで持っているの。
いいにおいが流れてきた。昼食の時間だね。
食堂はごった返していて、メイド全員は入りきれていない。20人くらいが外で待っている。
誰かが早く食べてよ、とぼやいています。
よし、ちょっと考え付いた。これが第4弾。
同じ時間に一度に食事するんじゃなくて、昼間勤務するメイド、夜勤のメイドを各二つのグループに分けて、勤務開始と終了の時刻を1時間ずらしてみようと思う。
パチュリーに相談し、妖精メイド達を広間に集めて、明日から始めてみる事にしました。
次の日、食事時に混雑しなくて済むようになって、みんなゆっくりご飯が食べられるようになりました。
「フラン、なかなかやるわね」 とパチュリーもほめてくれて嬉しい。
後もう一つやりたい事があるの、でもこれはまた別の財源が必要ね、
そこで臨時当主補佐(いま私が勝手に任命した)のパチュリーに相談しよう。
「でね、これを半分近く削れば……」
「それだと、レミィが怒るわよ」
「だから、外部にも協力してもらって……」
「フラン、あなたも策略家ね」
「だって、私も悪魔の一種だもん。それよりもパチュリー、イヤなら無理にとは言わないわよ」
「ううん、レミィにもたまにはお灸を、ね」
一週間後、紅魔館に窓が増えて、外から見たイメージも内部も明るくなりました。
実は私達吸血鬼、別に陽の光は弱点ではないんです。
ただ人々の迫害を恐れて、人目につきやすい昼間は避けて夜に活動しているうちに、
陽の光は有害だと吸血鬼側でも言いだすようになっただけ。
この幻想郷では秩序を守る限り、私達も世界のパワーバランスの一部として存在が
認められているのだから、もう自分たちを偽る必要はないと思うんです。
後パチュリーに、一連の改革に関してみんなに説明をお願いしておきました。
そうこうしているうちに姉さま達が帰って来ました。
紅魔館の従業員はみんな、姉さまに感謝しています。
曰く、
―お仕置き部屋を廃止したお嬢様のご英断に感謝します―
―お嬢様のおかげで門番小屋は冬もあたたかく、食事も豊かになって精が出ます―
―レミリア様のご配慮でご飯をゆっくり食べられるようになりました―
―陽の光はお嬢様の弱点なのに、光を好む私ら妖精のため、窓を増やして下さるなんてなんと豪胆なお方―
などなど。
「えっ、私はそんな事言っ……いや、喜んでくれて嬉しいわ、これで私の威厳を再確認したでしょう。精っぱい奉仕するが良い」
姉さまは余裕のある表情を取りつくろっていたけど、明らかに困惑していたな。
ちょっとその様がおかしくて笑える、いつも私達に対しては尊大に振舞っているのに。
私は素知らぬ顔で地下室に戻り、姉さまが突っ込んでくるのを今か今かと待つ。
ドタドタと足音が近づいてくる。来た来た。
ドアを勢いよく開けて、姉さまは叫ぶ。
「フ~~ラ~~ン~~やってくれたわね」
「あら、ごきげんようお姉さま」
「とぼけるんじゃないの、窓を増やしたの、あんたの仕業でしょう」
「いいじゃない、本来平気なんだし、それに、みんなに好評でしょ」
私はパチュリーに、私がした改革は全て姉さまが計画していて、私は姉さまに頼まれてそれをやっただけだとみんなに説明しておくように頼んでおいたの。
あくまで紅魔館当主の顔は姉さま、妹が当主の座を狙っているなどと風聞が流れたら、
どんな連中が漬け込んでくるかわからないし、それに、やっぱり姉さまとの絆はずっとずっと大事にしていたいのよ。
「まあ、それはいいとして、今晩の夕食が質素だったのは何故?」
「それは、窓の増設で、日頃家計を圧迫しまくっていた『れみりゃ費』を削減したのよ。
それでも、食事には食前酒に前菜に、肉や魚料理、スープにご飯にデザート、しっかり揃ってるでしょ、メイド達や私から見ればまだまだ贅沢の極みよ。それに」
と私は自分の翼を指差して続けました。
「私の羽の石も全部売ったんだから」
「貴方の羽の石、ただのガラスでしょ。これだけはすぐに元に戻させるわ」
「どうぞどうぞ、評判が落ちてもいいのなら」
私はとどめとばかりに、メイドに持ってこさせた天狗の新聞を姉さまに渡しました。
見出しはこうです。
レミリア嬢、従業員の待遇改善を行う。自らの生活を質素に
その新聞には、姉さまが紅魔館の財政改善のため、『れみりゃ費』と俗称される自らの生活費を削り、余裕のできた分はメイドや門番の生活向上に使うと発表したと書かれてあります。
天狗にそういう情報を流したんです。
そして、霊夢や魔理沙、そして前に一度争った事のある永遠亭の面々からの、
『あのレミリアにできるわけがない、すぐ撤回するにきまっている』
と異口同音のコメントも載せてもらいました。
ようは、姉さまのプライドに訴えかけるわけです。
もし以前のように贅沢ばかりするようになれば、それ見た事かと笑われちゃうし、メイド達を失望させちゃうぞ、と言う風に。
「ううう、何て恐ろしい子、今度何かするときは、私に言うのよ」
「はーい、姉さま☆」
姉さまはまだ何か言いたそうな顔で去って行きました。
その後、姉さまはメイド達から感謝され、紅魔館の対外イメージも良くなったそうです。
姉さま自身も、最初は不満たらたらだったのに、だんだんこの状態も悪くないと思うようになったみたい。
それでこそ立派な当主だよ、これからも陰で支えていくね。
お仕置き部屋廃止を知った咲夜さんの反応が気になるけど…
咲夜さんの反応も見てみたかった
ストーリー4コマ漫画みたいで良いですね