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「あれ?」
戸棚の中を覗きこんだ霊夢はみょんと声を上げた。
「どうしたんだ」
「えっと、戸棚にしまってあった煎餅が……」
「煎餅が?」
そこに鎮座していたのは、茶色ではなく黄色の物体。
「……蜜柑になってる」
「はぁ?」
そう、それは見間違えることなく蜜柑、
手のひらに収まる小さな楕円。
「ほら」
「まじかよ……」
魔理沙が驚くのも当然だった、霊夢の家に蜜柑などという高級品があるはずがないのだ、
一般家庭で言えばお茶菓子がキャビアになっていたようなものである。
「ほ、本物なのか?」
「……みたいね」
複数あった中の一つを魔理沙に渡し、二人で蜜柑を観察する、
しかし上下左右どこからみても蜜柑でしかなかった。
「蜜柑だな」
「蜜柑ね」
蜜柑である。
「きっと日頃の行いがよかったのね」
「ああ、まったくだな」
「多分外の桜の木には蜜柑が沢山なってるはずよ!」
「いやいや、それはないと思うが」
「さあ! 蜜柑を求めて障子オープン!!」
そして外を見れば、神社の木々に程よく熟した蜜柑蜜柑蜜柑。
「障子クローズ!!」
本当になってました。
「……異変ね」
「異変だな」
「ええ、異変なのよ」
『紫!?』
唐突の来訪者は蜜柑を一つ手に取ると、丁寧に皮をむいて頬張りながら喋り始めた。
「あむ……幻想郷は今、外界の侵略を受けているわ」
「侵略ですって?」
「ええ、日本の僻地、本州とは隔離された地域である四国四県、その内の一つの愛媛に」
「愛媛……聞いたことがあるな、人にして人にあらぬ者が住んでいる土地だと」
「何者かの手引きによって幻想郷は愛媛に限りなく近い状態、このままでは危険よ……もぐもぐ」
霊夢と魔理沙に悪寒が走る、
すでに幻想郷全土が危機的状況なのだ。
「愛媛に詳しいサポートを付けるわ、橙!」
「はい」
「あなたは霊夢達についていきなさい」
「了解です!」
「私は少しでも侵略を抑える側に回るわ、後は任せたわよ、霊夢」
そうして紫は隙間の中に消えていった、
橙は妙に張り切った様子で背を伸ばしている。
「なんか押し付けられたような気がするけど……あっ、私の蜜柑持っていかれた!」
「大丈夫ですよ、蜜柑なんかこれから嫌というほど食べれますから」
「だよなぁ、表に沢山なってたし」
「えっ!?」
魔理沙の一言に、橙は凍りついた、
しかしすぐに我を取り戻し方と思うと、その目つきが厳しくなる。
「……霊夢さん、魔理沙さん、準備をしてください」
「準備? 何のよ」
「蜜柑狩りのです!」
「お、そうだな……、私の分も確保しないと」
「そんな悠長なこといってる場合ですか! 狩られちゃいますよ!」
「は?」
橙が勢いよく障子を開く、その瞬間、霊夢と魔理沙は蜜柑狩りの意味を理解した。
「な……なんで蜜柑が空を飛んでいるんだ……?」
「こっちに気づいたようです、来ますよ」
「とりあえず……やるしかないみたいね」
霊夢達に気づいた蜜柑は、一瞬宙に止まったかと思うと、
一斉に三人めがけて突進してきた、その様子はさながら天然の弾幕か。
「飛翔韋駄天!」
「夢想封印! 散!」
「スターダストレヴァリエ!!」
蜜柑の弾幕と霊夢達の弾幕が衝突しあい、ところどころで光が弾ける、
数分にも及ぶ相殺合戦の果てに、敗北したのは蜜柑達であった。
「はぁはぁ……み、蜜柑ってのは人を襲うような果物だったか?」
「普段魔理沙さんが食してるのは栽培物でしょう、あれは配合を重ねて無力化された物です」
「栽培……?」
「逆に天然物は凄く凶暴なんですよ、なので安全の為に定期的に蜜柑狩りをするわけです」
「……すごいんだな、愛媛って」
「みたいですね」
魔理沙がびみょんな表情を浮かべている横で、
霊夢はぴくりとも動かなくなった蜜柑を拾い食していた。
「うまっ! これまじうまっ! 甘みが凄くて蜜柑じゃないみたい!」
「何食ってんだよ!」
「天然物は取立てが最高に美味しいですよ」
「ほら、魔理沙も食べてみなさいよ!」
「おいおい、さっきまで生きてた蜜柑を食べるなんて……うめぇ!!」
蜜柑に夢中になって頬張り続ける霊夢と魔理沙、
すでに地面に落ちている皮の枚数は五十を超えている。
「あのー、あんまり食べ過ぎると」
「んぐんぐ……何よ、こんなにあるんだから……もぐもぐ」
「だなぁ……もぐもぐ……たまにはいいだろう」
「肌が黄色くなりますよ?」
『うぇっ!?』
それは劇的な変化であった、フランケンシュタインのような肌の色をしていた霊夢は
まるで黄色人種のように黄色に満ち満ちた肌色となり、魔理沙にいたっては
黒白の黒の部分が黄色に変色するほどになっていたのだ。
『なんじゃこりゃぁぁー!!』
「蜜柑の食べすぎです」
そして二人は決意した、とっととこの異変を解決してしまおうと、
迫りくる蜜柑の群れをなぎ倒し、片っ端から籠に詰めて隠しておき、
巨大蜜柑、変形合体蜜柑、蜜柑を食べ過ぎて蜜柑になった幽々子を打ち倒し、進み続けた。
「大分愛媛色が強くなってきました……異変の元凶はこの先だと思います」
「ここは霧の湖……ということはレミリアの奴がまたなんかやったな」
「ねぇ、この湖の色、なんかおかしくない? オレンジ色してるんだけど」
「あ、これ水じゃなくてポンジュースです」
『ポンジュース!?』
ポン道などというレベルではなかった、湖の水がまるごとポンジュースになっていたのだ。
「ということはこの湖を突っ切るのは危険ですね」
「どういうこと?」
「ポンジュースのある所に蜜柑海賊団あり、十中八九襲われます」
「なんだその蜜柑海賊団ってのは」
蜜柑海賊団、別称マンダリンパイレーツ、
棒状の用具と硬球をもって四国の他県に攻め込み、
さまざまなものを略奪していく極悪非道の海賊団である。
「最近では九州の方にも触手を伸ばし始めたとか……」
「とりあえず迂回したほうが良いってことはわかったわ」
こうして三人は湖を避けて迂回する事にした、
それが功を奏したのか、ほぼ敵に襲われる事は無かった。
「ついたな、紅魔館……もとい、橙魔館に」
「ものの見事にオレンジね」
紅い部分が全てオレンジになっていた、それだけのことだった。
「う……霊夢?」
「レミリア!?」
三人は門前で倒れていたレミリアを発見する、
その全身はすでに蜜柑色に染められていた。
「大丈夫か!?」
「逃げて……ここはすでに……」
「しまった! 周りを見てください!」
橙の一声で霊夢達も現状に気づく、四方を取り囲む大小の蜜柑の群れ、
そしてその数はこれまで戦ってきた数とは比べ物にもならなかった。
「随分と早い到着ね……まあいいわ、ようこそ、我が橙魔館へ」
「誰っ!?」
「私はオレンジ、久しぶりね博麗霊夢!」
黄色と緑の服装、紅い髪に手に握られた杖、
オレンジと名乗る彼女は、霊夢に強い敵意を抱いていた。
「本当に誰?」
「キィー!! あなたが忘れても私は忘れないわ! 蜜柑を栽培しながらのんびりと平和な生活を
してた時に、突如襲い掛かってきたあなたに封印されたあの忌まわしい日の出来事を!」
「……記憶に無いわね」
「ええ、そうでしょうとも、あなたからすればどうでもいい妖怪の一匹だったでしょうね!」
オレンジが杖を振り上げる、すると同時に囲んでいた蜜柑達の動きが激しくなった。
「これは復讐よ! それが個人的で、くだらない私怨で、ちっぽけな物だったとしても!」
「まずいな、さすがにこの量に襲われたら……」
「霊夢さん、魔理沙さん、ほんのちょっとの間だけ、蜜柑達の相手をお願いできますか?」
「……橙?」
橙は二人に軽い感じでお願いすると、
蜜柑を恐れることなくオレンジの元へと歩き寄っていった。
「(蜜柑が……この妖怪を避けていく?)」
「私の名前は橙、あなたに……蜜柑勝負を申し込むわ!」
「っ!!」
橙は帽子の中から蜜柑を一つ取り出すと、それをオレンジに投げつけた、
受け取ったオレンジはそれを確かめると表情を一変させる。
「成る程ね、いくら巫女といえども蜜柑の中をこんなに早く辿り着けるわけがない、
そう、内から、あるいは外から愛媛の事をよく知るものでも居なければ……」
オレンジも懐から蜜柑を取り出すと、橙に向けてそれを投げた。
「この蜜柑は有田蜜柑! 橙、あなた……和歌山の者ね!」
「愛媛人と和歌山人は出会ったら殺しあうのが運命! この勝負受けないとは言わせないわ!」
「返答はすでにした! その愛媛蜜柑こそが証!」
『一体何なんだ愛媛と和歌山ーっ!!』
「いくわよ! オレンジ!」
「叩き潰してあげるわ! 橙!」
二人は互いに手の中の蜜柑を握りつぶし、全身から蜜柑パワーを溢れさせる、
にらみ合い、一瞬の静寂の後、二人は交差し、そのパワーをぶつけ合った。
「……こふっ」
『橙!!』
着地した橙の口からオレンジ色の液体が漏れる、
そのまま膝が崩れ、地面に座り込んだ。
「大丈夫か橙!」
「しっかりして!」
「だ……大丈夫です、ちょっとよろけただけです、から」
「良かった……!」
「心配させやがって……」
駆け寄ってきた二人に対して橙は精一杯の笑顔で返した、
無事だという事を確認した二人は安堵の表情を浮かべる。
「ふふ……今回は私の負けね」
「オレンジ!」
「だけど、忘れない事ね……」
オレンジは二人の後方で地に伏していた、
敗北してもなお、その顔に不敵な笑みを浮かべたままで。
「たとえ私が倒れても……いずれ第二、第三の農家が全国出荷量一位の座を取り返しに――!」
まだ戦いは終わらない、そう彼女は言い残し、蜜柑色の光となって散っていった。
「……結局、あいつは何だったのよ」
「見ろ霊夢! 蜜柑達が消えていくぜ!」
「本当だわ、これで……異変も解決ね」
「やったな橙! お前が幻想郷を救ったんだ!」
「えっ、あ……はい!」
博麗の巫女、普通の魔法使い、そして一匹の化猫によって、
後に蜜柑異変と命名される今回の異変は解決された。
こうしてなんでもない平和な日々が、神社にも戻ってきたのだった。
「あれ?」
「ん、どうしたんだ霊夢」
「えっと……戸棚にしまってあった煎餅が……」
「煎餅が?」
「うどんになってる」
― 完 ―
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懐かしいキャラ。そしてカオス。
突っ込んだら負けってのが良く分かった。
旧作はこのようにして復帰するのか!
次はくるみの木がry
さて、静岡県人たる俺としては愛媛・和歌山の蜜柑戦争に武力介入せざるを得ない
というか、幻想郷と四国の間に何が起こってるんだww
ねーよwwwwwww
そして、あとがきに笑った
くそっ! 今まで岐阜あたりを探していたのは間違いだったのか……
オレンジ…顔が思い出せない
あれですかね、愛媛と和歌山の対立って、お好み焼きにおける大阪と広島の対立と似てるんですかね。
オレンジたん、一瞬「誰?」って思ってごめんね
蜜柑は貰うもの。おまけに伊予柑がついてきます
皮薄くて柔らかいよ、愛媛みかんにも負けないよ
と思ってたけど後書きで考えが変わったよ
台風も追い返すみかんになんか勝てるかよw
以前の壮絶な水不足問題は乗り切られたようで何よりですw
蜜柑に愛媛と出てきてから「みかんのうた」をBGMに読ませていただきました。テンション上がりまくりw
どこまで突き進むんだ、この人はwwww
・・・全部じゃねーか!!w
なんて読むんだ?
だいまかん?ちぇんまかん?
何やってる・・・もとい、なんと予想を裏切らないゆゆさまw
オレンジも橙も柑橘類だけど蜜柑に屈していいのか!?
つお茶
今度は蜜柑ではなくオレンジとして攻めてきやがれ!!
ここで限界だったwww
俺のさわやかりんごはちみつ水返せwww
蜜柑が食べたくなってきたwww
なぜかせっちんさんのもみじ狩りを思い出したわ。
俺の煎餅返せ
福岡県人の俺は苺装備で挑むぜ!
ちくしょう、栃木に勝てる気がしねぇ!
てかほんとうにもうなんなんだよこれwwwwwww
と和歌山県民の俺が言ってみる。
えーと、ゴーフレット辺りで
どうやら次は俺の出番らしいなっ!
蜜柑になったゆゆさまたべたい
そんな俺は岡山県民
とうまかん じゃねーの?
あとがきでやられた
しかし別の幻想郷が一部の地域を支配してるのが気掛かりだな
なんでもナズーリンの親戚が住んでるらしい
ねーよwと言って笑えたんだろうがな……
もちろんオリーブガイナーズを初めとしていっぱい出てくるんだよね!ね!
っていうか本編も面白かったがあとがきの方がさらに面白いってwwwww
東京には何もないの・・・・orz
やはり9割真実なのかwwww
そして第二部の敵は誰なのだろうか
吹いたwwww
クソ映画を思い出した。
和菓子なのさ!!
埼玉だとオンバシラ五家宝か?ベタベタになるな。
発想が素晴らしすぎる。脱帽した
俺は青森県民なのでとりあえず林檎を装備しておきますね
次は高知県がお相手いたそう
・何かあったら酒を飲む
・昼間人に会うとたまに酒くさい
・むしろ大通りから一歩入ると町が酒くさい
・何故か昼間から飲み屋に人がいる
・おちょこに穴が開いている、理由は「注がれたらすぐ飲め」
・たまにおちょこの底が丸い、理由は「酒入ったまま置くな」
・日照時間1位のくせに降水量も1位
・忘年会と新年会は両方やる
・むしろ「1年お疲れ様会」と「今年もよろしく会」を追加する
・ZUN並の猛者が割とごろごろいる
>>誰だ四国を魑魅魍魎の闊歩する異国扱いしてる奴は!!
今更何を、四国は外国だぜ?
うどんなら橋向こうですぐ隣だから縁深いんだがなー
ほとんどの台風が愛媛に来る前に東に反れるから不思議だったんだが・・・
まさか蜜柑のおかげだったとはw
山梨県人にとっての、葡萄や桃といっしょか
さっそく、近所で栽培を始めなければww
幻想郷がキムチだらけ…
そしてまたお腹を壊すorz 大阪の名産… …?
うちのすだちもここまですごくはない
ご飯を炊く時にポンジュースを使う「あけぼのごはん」の事かぁーっ!
臨時ニュース
山口は河豚を5個師団 幻想郷へ派遣する事を決定
(:;゜)(:;゜)
みかんは美味しいですおw
いいぞもっとやれ。
宮城県民の俺としてはライスシャワーを装備しますねw
次はきっと、博麗の巫女、普通の魔法使い、そして一匹の兎によって解決ですね、わかりますww
どれもこれも山形&秋田の農水産物には敵うまい!!!はっはっはっ!!!!
ただしみかんは勘弁な!!
愛媛って怖いところなんですね><
でも愛媛の蜜柑だけはやめようと思うんだ。
橙かっこよかった!
>「あむ……幻想郷は今、他界の侵略を受けているわ」
他界って死後の世界…
外界などの方が良いかと。
新潟県民の自分は酒樽装備で
われわれ福岡にはラーメンがある!
な、とんこつと味噌と醤油で三つ巴だとっ!
ちなみに福岡はタンスが一位だそうで(関係ない
年に2、3回食えるかどうかですぜ。
月に3回は芋煮が食卓に上がるけどね。
……大分に、負けている……だと……!?
同志よ!!
「清ならこういうだろう。箱根の山の向こうだからバケモノばかり…」
そうか、漱石が真に描きたかったのはこういうお話しかw
ここだけは譲れない。
みんなまとめて踊る阿呆…じゃなくて踊る⑨にしてやんよwwww
みかんが道に落ちまくってたり
給食ではポンジュース(紙パック)でるよね
うまうま。
みかんは小さいのがおいしいです
ふははは!椎茸は大分の独占場だ!
とりあえず蜜柑には梨で対抗……できるかなぁ…
そんなに褒めないでw
あとタグ欄ひどすぎるだろw
福岡県民でたすか・・・おっと?なんだこの苺h(ピチューン
東京ばな奈をわすれてもらっちゃ困るな!
みかん栽培地の北限だったとか。