「あら、アリス」
「こんにちは、霊夢。突然のお邪魔だけど時間空いてる?」
「アリスのためなら目の前で魔理沙が燃えてても空けとくわ」
「そこはさすがに魔理沙の消火を優先してほしいわね。とにかく、いくつかケーキ焼いてきたのよ。よかったらどうぞ」
「へえ、色んなのがあるのね」
「ブラウニーとかシフォンとかあるけど、どれがいい?」
「もちろんアリスのほっぺをハムハムしたいわ」
「うん、意味わかんない」
「つまりね? アリスの柔らかそうな頬を唇で挟んで、弾力を確かめるように開閉するわけよ。あとちょっと舐める」
「丁寧な説明、痛み入るわ。ますますわかんなくなった。あとちょっと引いた」
「大丈夫よ、匂いもクンカクンカするから」
「何が大丈夫なのか小一時間問い詰めたいけどやっぱり時間を無駄にしたくないから自問自答しててくれるかしら。押し入れの中で一人で」
「わかった。アリスがそばにいれば、私何でもできる」
「一人でって言ったわよね、私?」
「アリスに誤解があるみたいだから言うけどね、」
「うん」
「アリスのほっぺをちぎれんばかりにハムハムすることで、あまりに美味しさに私のほっぺが落ちそうになる。どちらのほっぺも両成敗。一件落着よ」
「率直に鬱陶しいわね。何一つ誤解してなかったわ。100%変質者の分析が完了してたわ」
「あぁ、もしかして恥ずかしいの? ほっぺた、どんな味のアリスも受け入れるわ」
「恥ずかしいのは霊夢でしょ。どこに出しても恥ずかしい。そして私はあなたが受け入れられないわ」
「嬉しい。アリスにとって私はそれだけ大きな存在なのね。受け止められないほどに」
「確かに大きいかもね──誇大妄想って意味では」
「あら、そんなに私、おかしいかしら」
「おかしいわ」
「即答ね」
「おかしいわ」
「二度も言うのね」
「だって、おかしいもの」
「おかしい上にアリスとお茶会。さしずめマッドティーパーティーね」
「マッドだって自覚を持ちえたことに驚きを禁じえないわ」
「少女は恋に狂うものよ」
「少女として霊夢と同じに見られるのは心外ね。霊夢みたいなのをヤンデレっていうのかしら」
「そういうアリスはツンデレね。もうそろそろデレていいのよ?」
「デレはないわ。霊夢に対しては年中無休で冷淡よ」
「ツンドラね」
「でも、本当はアリス、私のこと好きなんでしょ」
「は?」
「お人形と私とどっちが好きかって言われたら、」
「人形」
「どっちが好きかって、」
「人形」
「どっち、」
「人形」
「人形」
「最終的にはこちらが言葉を発するより早く──アリスったら『先の先』を奪うまでに成長したのね」
「武術家の極意よ。身につけたくもなかったけど」
「もう、私はアリスのことすごく好きなのに」
「ありがとう、って言っていいか、今では微妙」
「出涸らしのお茶より大好きなのに」
「微妙さに拍車が掛かったわ。むしろどれだけ出涸らし大好きなの」
「アリスのためなら、たとえ火の中、水の中、燃えさかる魔理沙の中」
「またも無意味に魔理沙が燃やされたわね」
「ありうることじゃない? いつも弾幕は炎だ!って言ってたし」
「聞いたことないわ」
「そんなことよりアリスのお勧めのケーキはどれなの?」
「ええと、そうね、これなんか自信作なんだけど、」
「隙ありっ」
「きゃ…」
「キャー、助けてー! アリスに襲われるー!」
「抱きついて引き倒しておいて、それ? 被害者面する加害者って近年よく聞くけど、ついに眼前に現れることになったわね」
「何言ってるの! 今のこの姿、誰が見ても肉欲に憑かれた金髪碧眼美少女に押し倒されたいたいけな巫女! 私これからエロ同人みたいなことされるのね! いやっ! 抱いて!」
「どっちよ。というか、さっき隙ありって言ったわよね」
「誰か来てー! しゃめいまるー、はたてー!」
「加えて虚偽の既成事実をマスコミを通じて流布しようとは知能犯ね。根本の知的レベルは恐ろしく低いけど」
「まったくもう、ケーキを食べさせると見せかけて相手をいただいちゃおうとはアリスも策士ね。エロスの諸葛孔明ね」
「身に覚えのない称号を授与されても困るわ」
「白昼堂々、神聖なる神社で事に及ぶなんて、いかな邪神もここまではしないわ」
「私もしないわ」
「でもせめてお願い、痛くしないでね」
「この状況、誰かに『委託』したいわ」
「据え膳を目の前にしたらやることは『一択』でしょ」
「据え膳?」
「そう、霊夢ランチ。召し上がれ♪」
「本日、私は生まれて初めてこのような能動的な据え膳を見ました」
「なんか英文を直訳したような文言ね」
「言葉に感情を入れるのが面倒臭くなったの」
「感情を入れない──それはつまり、この私に身も心も委ねるってこと? 攻守交代を御所望?」
「霊夢のポジティブさはすごいわ」
「そんな……もう、こそばゆいわね」
「ホントにすごいわ」
「じゃあ私がリードするわね。初めてでも心配しないで。どんな迷いも私が祓ってあげる」
「祓うなら自分の煩悩にしたら?」
「全てを任せていいのよ。ノープロブレム、私、お祓いは専門」
「専門の聖職者たる自分の立場と現在の行為を比較検討の上、反省した方がいいわ」
「ええと、じゃあこう言った方がいい? アリスを見てふしだらな感情を噴出させちゃったこのはしたない巫女に、どうか体を開いてください、とか」
「官能小説風にオシオキを求めろとは言ってないわよ。最後、攻めに回ってるし」
「やっぱり人間は自分の心に正直に生きるのが正道なのよ」
「引き倒してきた相手に人の道を説かれるって理不尽よね」
「じゃ、アリスという名の据え膳を、いただきます」
「おあずけ」
「飼い主は私の方だから、却下」
「霊夢が飼い主? あれだけ餌付けされてといて」
「甘やかすと猫って自分を主人と勘違いするのね。首輪をつけておくんだったわ」
「センスの悪い装飾品は身につけないの」
「いくつか選んでおいたから、後で自分が好きなの決めて」
「用意はしてあるのね」
「それでは改めて、いただきます」
「ペットを食べるなんて動物愛護団体がうるさいわよ」
「ネコは食べられる側でしょ」
「酷い言い草ね。タチが悪いわ」
「良いタチを心がけるわ」
「でもこうなれてアリスは嬉しいでしょ」
「ん。一瞬自分の鼓膜が異常をきたしたのかと思ったけど、普通に考えれば異常なのはいつだって霊夢よね。何その台詞」
「アリスは嬉しいでしょ、こうなれて」
「繰り返さなくていいわ、耳を通して頭がおかしくなりそうだから。私が嬉しいですって? メリットは?」
「私が喜ぶ」
「一方的ね」
「じゃあ、納得したところで、」
「ホントに一方的ね」
「でもアリスのためにもなるのよ。将来の、未来の」
「未来?」
「二人で明るい家庭を築く未来!」
「無いことに備える必要はないわね」
「明るい家族計画!」
「俄然ヒワイになったわね。いえ、始めからか」
「夫婦の結びつきに夜の営みは必須事項よ。だからそのための練習、事前予行なの。さあ、だから私とShall we dance!」
「本格的ね。火災訓練で実際に放火するみたいな。訓練自体が災害みたいな」
「私、アリスのためなら火災訓練で魔理沙を燃やしてもいいわ」
「また魔理沙が燃やされてるわ。もはや前世の因果かしら」
「魔理沙のことなんて置いといて、今は私たちの練習よ。来るべき日のために。『サッカーチームが構成できるくらいの大家族!』って、カラス天狗に取材される日のために」
「方向性が見えないどころか異次元」
「二人して女同士の子作りという生物学的限界を超えましょう。素敵な奇跡を起こすの」
「今のままでもいいんじゃない? 霊夢の頭の中は既に素敵な楽園だもの」
「これ以上霊夢と話しても埒が開かなそうだから──よいしょっと」
「ああっ、アリスが立った!」
「クララが立ったみたく言わないで。脚を使わないグラップリング(寝技)じゃあ簡単に逃れられるわ」
「くぅ、アリスったらできる子っ」
「このままいると赤ずきんよろしく食べられちゃうし、帰る」
「え?」
「帰る。私の分のケーキは食べていいわよ。さようなら」
「そんな。私はただスイーツを食べたかっただけなのに。だから待ってちょうだい、マイ・スイート・ハニー」
「…………」
「…………」
「なんかその上手いこと言った感あふれるドヤ顔が腹立たしいから、よりスピードアップして帰る」
「あっ、ちょっと! 待って! アリス、カムバーッッ……あら、ほんとに速い」
「こんにちは、霊夢。突然のお邪魔だけど時間空いてる?」
「アリスのためなら目の前で魔理沙が燃えてても空けとくわ」
「そこはさすがに魔理沙の消火を優先してほしいわね。とにかく、いくつかケーキ焼いてきたのよ。よかったらどうぞ」
「へえ、色んなのがあるのね」
「ブラウニーとかシフォンとかあるけど、どれがいい?」
「もちろんアリスのほっぺをハムハムしたいわ」
「うん、意味わかんない」
「つまりね? アリスの柔らかそうな頬を唇で挟んで、弾力を確かめるように開閉するわけよ。あとちょっと舐める」
「丁寧な説明、痛み入るわ。ますますわかんなくなった。あとちょっと引いた」
「大丈夫よ、匂いもクンカクンカするから」
「何が大丈夫なのか小一時間問い詰めたいけどやっぱり時間を無駄にしたくないから自問自答しててくれるかしら。押し入れの中で一人で」
「わかった。アリスがそばにいれば、私何でもできる」
「一人でって言ったわよね、私?」
「アリスに誤解があるみたいだから言うけどね、」
「うん」
「アリスのほっぺをちぎれんばかりにハムハムすることで、あまりに美味しさに私のほっぺが落ちそうになる。どちらのほっぺも両成敗。一件落着よ」
「率直に鬱陶しいわね。何一つ誤解してなかったわ。100%変質者の分析が完了してたわ」
「あぁ、もしかして恥ずかしいの? ほっぺた、どんな味のアリスも受け入れるわ」
「恥ずかしいのは霊夢でしょ。どこに出しても恥ずかしい。そして私はあなたが受け入れられないわ」
「嬉しい。アリスにとって私はそれだけ大きな存在なのね。受け止められないほどに」
「確かに大きいかもね──誇大妄想って意味では」
「あら、そんなに私、おかしいかしら」
「おかしいわ」
「即答ね」
「おかしいわ」
「二度も言うのね」
「だって、おかしいもの」
「おかしい上にアリスとお茶会。さしずめマッドティーパーティーね」
「マッドだって自覚を持ちえたことに驚きを禁じえないわ」
「少女は恋に狂うものよ」
「少女として霊夢と同じに見られるのは心外ね。霊夢みたいなのをヤンデレっていうのかしら」
「そういうアリスはツンデレね。もうそろそろデレていいのよ?」
「デレはないわ。霊夢に対しては年中無休で冷淡よ」
「ツンドラね」
「でも、本当はアリス、私のこと好きなんでしょ」
「は?」
「お人形と私とどっちが好きかって言われたら、」
「人形」
「どっちが好きかって、」
「人形」
「どっち、」
「人形」
「人形」
「最終的にはこちらが言葉を発するより早く──アリスったら『先の先』を奪うまでに成長したのね」
「武術家の極意よ。身につけたくもなかったけど」
「もう、私はアリスのことすごく好きなのに」
「ありがとう、って言っていいか、今では微妙」
「出涸らしのお茶より大好きなのに」
「微妙さに拍車が掛かったわ。むしろどれだけ出涸らし大好きなの」
「アリスのためなら、たとえ火の中、水の中、燃えさかる魔理沙の中」
「またも無意味に魔理沙が燃やされたわね」
「ありうることじゃない? いつも弾幕は炎だ!って言ってたし」
「聞いたことないわ」
「そんなことよりアリスのお勧めのケーキはどれなの?」
「ええと、そうね、これなんか自信作なんだけど、」
「隙ありっ」
「きゃ…」
「キャー、助けてー! アリスに襲われるー!」
「抱きついて引き倒しておいて、それ? 被害者面する加害者って近年よく聞くけど、ついに眼前に現れることになったわね」
「何言ってるの! 今のこの姿、誰が見ても肉欲に憑かれた金髪碧眼美少女に押し倒されたいたいけな巫女! 私これからエロ同人みたいなことされるのね! いやっ! 抱いて!」
「どっちよ。というか、さっき隙ありって言ったわよね」
「誰か来てー! しゃめいまるー、はたてー!」
「加えて虚偽の既成事実をマスコミを通じて流布しようとは知能犯ね。根本の知的レベルは恐ろしく低いけど」
「まったくもう、ケーキを食べさせると見せかけて相手をいただいちゃおうとはアリスも策士ね。エロスの諸葛孔明ね」
「身に覚えのない称号を授与されても困るわ」
「白昼堂々、神聖なる神社で事に及ぶなんて、いかな邪神もここまではしないわ」
「私もしないわ」
「でもせめてお願い、痛くしないでね」
「この状況、誰かに『委託』したいわ」
「据え膳を目の前にしたらやることは『一択』でしょ」
「据え膳?」
「そう、霊夢ランチ。召し上がれ♪」
「本日、私は生まれて初めてこのような能動的な据え膳を見ました」
「なんか英文を直訳したような文言ね」
「言葉に感情を入れるのが面倒臭くなったの」
「感情を入れない──それはつまり、この私に身も心も委ねるってこと? 攻守交代を御所望?」
「霊夢のポジティブさはすごいわ」
「そんな……もう、こそばゆいわね」
「ホントにすごいわ」
「じゃあ私がリードするわね。初めてでも心配しないで。どんな迷いも私が祓ってあげる」
「祓うなら自分の煩悩にしたら?」
「全てを任せていいのよ。ノープロブレム、私、お祓いは専門」
「専門の聖職者たる自分の立場と現在の行為を比較検討の上、反省した方がいいわ」
「ええと、じゃあこう言った方がいい? アリスを見てふしだらな感情を噴出させちゃったこのはしたない巫女に、どうか体を開いてください、とか」
「官能小説風にオシオキを求めろとは言ってないわよ。最後、攻めに回ってるし」
「やっぱり人間は自分の心に正直に生きるのが正道なのよ」
「引き倒してきた相手に人の道を説かれるって理不尽よね」
「じゃ、アリスという名の据え膳を、いただきます」
「おあずけ」
「飼い主は私の方だから、却下」
「霊夢が飼い主? あれだけ餌付けされてといて」
「甘やかすと猫って自分を主人と勘違いするのね。首輪をつけておくんだったわ」
「センスの悪い装飾品は身につけないの」
「いくつか選んでおいたから、後で自分が好きなの決めて」
「用意はしてあるのね」
「それでは改めて、いただきます」
「ペットを食べるなんて動物愛護団体がうるさいわよ」
「ネコは食べられる側でしょ」
「酷い言い草ね。タチが悪いわ」
「良いタチを心がけるわ」
「でもこうなれてアリスは嬉しいでしょ」
「ん。一瞬自分の鼓膜が異常をきたしたのかと思ったけど、普通に考えれば異常なのはいつだって霊夢よね。何その台詞」
「アリスは嬉しいでしょ、こうなれて」
「繰り返さなくていいわ、耳を通して頭がおかしくなりそうだから。私が嬉しいですって? メリットは?」
「私が喜ぶ」
「一方的ね」
「じゃあ、納得したところで、」
「ホントに一方的ね」
「でもアリスのためにもなるのよ。将来の、未来の」
「未来?」
「二人で明るい家庭を築く未来!」
「無いことに備える必要はないわね」
「明るい家族計画!」
「俄然ヒワイになったわね。いえ、始めからか」
「夫婦の結びつきに夜の営みは必須事項よ。だからそのための練習、事前予行なの。さあ、だから私とShall we dance!」
「本格的ね。火災訓練で実際に放火するみたいな。訓練自体が災害みたいな」
「私、アリスのためなら火災訓練で魔理沙を燃やしてもいいわ」
「また魔理沙が燃やされてるわ。もはや前世の因果かしら」
「魔理沙のことなんて置いといて、今は私たちの練習よ。来るべき日のために。『サッカーチームが構成できるくらいの大家族!』って、カラス天狗に取材される日のために」
「方向性が見えないどころか異次元」
「二人して女同士の子作りという生物学的限界を超えましょう。素敵な奇跡を起こすの」
「今のままでもいいんじゃない? 霊夢の頭の中は既に素敵な楽園だもの」
「これ以上霊夢と話しても埒が開かなそうだから──よいしょっと」
「ああっ、アリスが立った!」
「クララが立ったみたく言わないで。脚を使わないグラップリング(寝技)じゃあ簡単に逃れられるわ」
「くぅ、アリスったらできる子っ」
「このままいると赤ずきんよろしく食べられちゃうし、帰る」
「え?」
「帰る。私の分のケーキは食べていいわよ。さようなら」
「そんな。私はただスイーツを食べたかっただけなのに。だから待ってちょうだい、マイ・スイート・ハニー」
「…………」
「…………」
「なんかその上手いこと言った感あふれるドヤ顔が腹立たしいから、よりスピードアップして帰る」
「あっ、ちょっと! 待って! アリス、カムバーッッ……あら、ほんとに速い」
レイアリはこういう手合いが多過ぎる
すごくいい
そのギャップでアリス嬢を落とすのです
そしてつまらん
恋は盲目と言いますが霊夢はもっと落ち着いてください
霊夢のテンションが怖い……