素晴らしきカリスマ溢れるスーパー最強お姉様にこんな素敵な牢屋に入れられて早5年。
鉄格子とにらめっこなんて当の昔に飽きたはずだったけど、久々にやってみるとなかなか面白い。
このままだと恋をしてしまいそうである、檻に。
檻と恋をする吸血鬼……うん、悪くない。 これだけで本が一冊書けそうである。
そうなると私は檻キャラだろうか。 嫌すぎる。
「檻キャラフランちゃんのラブラブロマンス、はっじまるよ~!」
誰も居ない地下に私の声が木霊する。
最初こそ空しかったが、これもまぁ、慣れだ。
こうやって定期的に声を出してないと声の出し方を忘れるのだから仕方がない。
「くぁ……」
何もしなくても睡魔は襲う。
そろそろ寝るとしよう。
牢屋と言ってもベッドはある。
もっとも、色々遊んであるそれは既に原型を留めていないが……
私はベッドのまだ柔らかい部分を探し、そこに潜り込むようにして目を閉じた。
あぁ……
お腹減ったなぁ……
───────────
私が目を覚ますとそこには……っ!!
なんてこともなく、普通に牢屋の中だった。
それはそうと、今日もまたいつもの夢を見た。
そこには5年前、私をここに入れたお姉様の顔があった。
何か切羽詰ってたような、それでいて慈しむような顔。
しばらくは絶対に出るなとか言ってたっけ?
だがこの5年間、私が脱走したのは一度や二度ではない。
言いつけを守って最初の1週間くらいは出なかったが、その間罰のつもりなのか食事も出なかった。
さすがにそりゃないよと思った私は牢屋をぶち破って外に出たんだっけかな。
それに味を占めて何度も脱獄したのだが、幸運なことにこれまで誰にも見つかっていない。 大丈夫か紅魔館の警備。
出たくなったら出て、適当に切り上げて戻ってくる。
誰も気づいてないようだし、私はこれからも周りには「出たことありませんよ?」って顔で振舞うだろう。
「…………ん?」
よく考えたら、何で私がこんなに気を使わないといけないのだろうか。
紅魔館だってよく知らないけど、そーぞくけんとか何とかで半分は私のもののはずだ……たぶん。
ここに入れられたのだって、どうせ皆が私をイカレポンチだとかクレイジーだとか決め付けているからに決まっている。
確かに多少怒りっぽい所もあるかもしれないが、いくらなんでもこれはひどいんじゃないだろうか。
私だって自分の能力を知らないほど無知じゃないし、それがどんな影響を持つかわからないほどもう子供でもない。
「あーあ、何でこんな能力持って生まれたんだろ……」
同じクレイジーでもクレイジーDとは大違いである。というか逆だ。
「ドラドラドラドラドラ ドララァ!!」
なんて、殴るほうの真似ならできるけど。
「って……やば」
格子ふっ飛ばしちゃった。
「ま、いっか」
せっかくなので、久々に外に出よう。
私はいつものようにこっそりと地下を抜け出し、外へ行くことにした。
「いま何時頃かなぁ……」
───────────
生憎と今は昼頃で、しかし空は曇っていた。
天はほのかに明るいが、一面を黒い雲が覆っている。
今の季節なんて私が知るわけもないが、かなり寒いからたぶん冬なんだろう。
それからしばらく、適当に飛んでいると小さい建物が集まっている場所を見つけた。
そして最悪なことに雨が降ってきた、なんてこったい。
仕方がないので一先ず手頃な洞窟を見つけて雨宿りをすることにした。
ぽつり、ぽつりがじゃあじゃあと……
最悪だ。 何度でも言おう、最悪だ。
お腹は空いたし、雨まで降ってきた。
これからどうしようか。
雨は一向に降り止む気配がない。
このまま止むのを待つか、進むか戻るか。
「って私動けないじゃん」
自分が吸血鬼なのを忘れていた。
「…………はぁ」
このまま雨が降り止まなければ野宿、なのだろうか。
野宿も嫌だが、さすがに脱獄がバレそうでそっちのほうが心配だった。
───────────
「ゔー……」
雨が止んだ。
どうやら通り雨だったようだ。
場所が場所なだけに随分と濡れてしまったが、それはまぁ、いい。
気分は最悪、テンションは下がる一方だ。
こんな日は大人しく家に帰って寝るとしよう。
お腹空いたし。
雨上がりだと言うのに相変わらず真っ黒な空を眺めながら、私は帰路につく。
「っと……」
美鈴だ。
わざわざ門の前を通らなくても帰れるっちゃ帰れるんだけど、何しろ近道だし通りたい。
「おー、寝てる寝てる」
それに、いつ見ても壁に寄りかかって俯いているから見つかった試しもない。
全身雨で濡れていても全く動く気配すらないのはさすがに感心する。
そろり、そろりと……
「…………ふー」
さすがにここまで来れば大丈夫だろう。
後は……
「げ」
廊下の一角、視線の先に見たくないものがあった。
あのふりふりピンクは間違いない、あいつだ。
幸いにもこちらには気づいていない。
よし、今のうちに………
「妹監禁罪で逮捕でござる!!」
闇討ちしてやんよぉぉぉぉぉ!!
ジャンピングきりもみ回転キックで姉の後頭部を打ち抜いっ……あれ?
「…………」
打ち抜いてしまった。
私の足と共に頭が壁にぶつかる。
ぐしゃっというあまり聞こえてはいけない音が聞こえてしまった。
私は床に落ちたそれを、そっと拾う。
「…………」
とりあえず、棺桶のある倉庫まで持って行き、頭を入れます。
次いで胴体を入れ、湯を沸かします。
棺桶の線までお湯を注ぎ、蓋をします。
「これでよし、と」
これで明日には出来上がってるだろう。
3分でできないのが難点だが、贅沢は言えない。
「はぁ~……」
こちとらただでさえお腹空いてるっていうのに、肉体労働は勘弁してもらいたい。
お腹空きすぎて視界がぼんやりしてきたし、心なしか吐き気もしてきた。
これはもうだめかもわからんね。
フラフラしつつも地下の食料庫に辿り着き、輸血パックを探す。
なんと冷凍されていて、お湯につけて3分で食べられるという便利仕様だ(味はイマイチ)。
私は適当に2、3見繕い、先ほどお姉様に使ったやかんでレトルトブラッドを解凍する。
この出来上がったものを水で冷やし、付属のストローで吸うのだ。
「あー、このドロリッチ感、生き返る-」
食事が終わっても相変わらず視界はぼんやりしていた。
霞がかかっているようで見えづらい。
目をごしごしこすっても、治らなかった。
見えにくい目で廊下を進む。
昼間だというのに、いや、昼間だからか、ひっそりとして何の物音もしなかった。
私は何とか地下室へ辿り着いた頃にはへとへとになっていた。
服は濡れてるし、目は見えないしで気持ち悪いことこの上ない。
私は雨に濡れて真っ黒になった服を脱ぎ捨て、ベッドに潜る。
見上げた天井はいつもと変わることなく無機質で。
もしかしたら私はとっくの昔に死んでいて、世界には誰もいないんじゃないのかと思えてきた。
「幻想郷……かぁ」
そんなものも、あったなぁ…………
鉄格子とにらめっこなんて当の昔に飽きたはずだったけど、久々にやってみるとなかなか面白い。
このままだと恋をしてしまいそうである、檻に。
檻と恋をする吸血鬼……うん、悪くない。 これだけで本が一冊書けそうである。
そうなると私は檻キャラだろうか。 嫌すぎる。
「檻キャラフランちゃんのラブラブロマンス、はっじまるよ~!」
誰も居ない地下に私の声が木霊する。
最初こそ空しかったが、これもまぁ、慣れだ。
こうやって定期的に声を出してないと声の出し方を忘れるのだから仕方がない。
「くぁ……」
何もしなくても睡魔は襲う。
そろそろ寝るとしよう。
牢屋と言ってもベッドはある。
もっとも、色々遊んであるそれは既に原型を留めていないが……
私はベッドのまだ柔らかい部分を探し、そこに潜り込むようにして目を閉じた。
あぁ……
お腹減ったなぁ……
───────────
私が目を覚ますとそこには……っ!!
なんてこともなく、普通に牢屋の中だった。
それはそうと、今日もまたいつもの夢を見た。
そこには5年前、私をここに入れたお姉様の顔があった。
何か切羽詰ってたような、それでいて慈しむような顔。
しばらくは絶対に出るなとか言ってたっけ?
だがこの5年間、私が脱走したのは一度や二度ではない。
言いつけを守って最初の1週間くらいは出なかったが、その間罰のつもりなのか食事も出なかった。
さすがにそりゃないよと思った私は牢屋をぶち破って外に出たんだっけかな。
それに味を占めて何度も脱獄したのだが、幸運なことにこれまで誰にも見つかっていない。 大丈夫か紅魔館の警備。
出たくなったら出て、適当に切り上げて戻ってくる。
誰も気づいてないようだし、私はこれからも周りには「出たことありませんよ?」って顔で振舞うだろう。
「…………ん?」
よく考えたら、何で私がこんなに気を使わないといけないのだろうか。
紅魔館だってよく知らないけど、そーぞくけんとか何とかで半分は私のもののはずだ……たぶん。
ここに入れられたのだって、どうせ皆が私をイカレポンチだとかクレイジーだとか決め付けているからに決まっている。
確かに多少怒りっぽい所もあるかもしれないが、いくらなんでもこれはひどいんじゃないだろうか。
私だって自分の能力を知らないほど無知じゃないし、それがどんな影響を持つかわからないほどもう子供でもない。
「あーあ、何でこんな能力持って生まれたんだろ……」
同じクレイジーでもクレイジーDとは大違いである。というか逆だ。
「ドラドラドラドラドラ ドララァ!!」
なんて、殴るほうの真似ならできるけど。
「って……やば」
格子ふっ飛ばしちゃった。
「ま、いっか」
せっかくなので、久々に外に出よう。
私はいつものようにこっそりと地下を抜け出し、外へ行くことにした。
「いま何時頃かなぁ……」
───────────
生憎と今は昼頃で、しかし空は曇っていた。
天はほのかに明るいが、一面を黒い雲が覆っている。
今の季節なんて私が知るわけもないが、かなり寒いからたぶん冬なんだろう。
それからしばらく、適当に飛んでいると小さい建物が集まっている場所を見つけた。
そして最悪なことに雨が降ってきた、なんてこったい。
仕方がないので一先ず手頃な洞窟を見つけて雨宿りをすることにした。
ぽつり、ぽつりがじゃあじゃあと……
最悪だ。 何度でも言おう、最悪だ。
お腹は空いたし、雨まで降ってきた。
これからどうしようか。
雨は一向に降り止む気配がない。
このまま止むのを待つか、進むか戻るか。
「って私動けないじゃん」
自分が吸血鬼なのを忘れていた。
「…………はぁ」
このまま雨が降り止まなければ野宿、なのだろうか。
野宿も嫌だが、さすがに脱獄がバレそうでそっちのほうが心配だった。
───────────
「ゔー……」
雨が止んだ。
どうやら通り雨だったようだ。
場所が場所なだけに随分と濡れてしまったが、それはまぁ、いい。
気分は最悪、テンションは下がる一方だ。
こんな日は大人しく家に帰って寝るとしよう。
お腹空いたし。
雨上がりだと言うのに相変わらず真っ黒な空を眺めながら、私は帰路につく。
「っと……」
美鈴だ。
わざわざ門の前を通らなくても帰れるっちゃ帰れるんだけど、何しろ近道だし通りたい。
「おー、寝てる寝てる」
それに、いつ見ても壁に寄りかかって俯いているから見つかった試しもない。
全身雨で濡れていても全く動く気配すらないのはさすがに感心する。
そろり、そろりと……
「…………ふー」
さすがにここまで来れば大丈夫だろう。
後は……
「げ」
廊下の一角、視線の先に見たくないものがあった。
あのふりふりピンクは間違いない、あいつだ。
幸いにもこちらには気づいていない。
よし、今のうちに………
「妹監禁罪で逮捕でござる!!」
闇討ちしてやんよぉぉぉぉぉ!!
ジャンピングきりもみ回転キックで姉の後頭部を打ち抜いっ……あれ?
「…………」
打ち抜いてしまった。
私の足と共に頭が壁にぶつかる。
ぐしゃっというあまり聞こえてはいけない音が聞こえてしまった。
私は床に落ちたそれを、そっと拾う。
「…………」
とりあえず、棺桶のある倉庫まで持って行き、頭を入れます。
次いで胴体を入れ、湯を沸かします。
棺桶の線までお湯を注ぎ、蓋をします。
「これでよし、と」
これで明日には出来上がってるだろう。
3分でできないのが難点だが、贅沢は言えない。
「はぁ~……」
こちとらただでさえお腹空いてるっていうのに、肉体労働は勘弁してもらいたい。
お腹空きすぎて視界がぼんやりしてきたし、心なしか吐き気もしてきた。
これはもうだめかもわからんね。
フラフラしつつも地下の食料庫に辿り着き、輸血パックを探す。
なんと冷凍されていて、お湯につけて3分で食べられるという便利仕様だ(味はイマイチ)。
私は適当に2、3見繕い、先ほどお姉様に使ったやかんでレトルトブラッドを解凍する。
この出来上がったものを水で冷やし、付属のストローで吸うのだ。
「あー、このドロリッチ感、生き返る-」
食事が終わっても相変わらず視界はぼんやりしていた。
霞がかかっているようで見えづらい。
目をごしごしこすっても、治らなかった。
見えにくい目で廊下を進む。
昼間だというのに、いや、昼間だからか、ひっそりとして何の物音もしなかった。
私は何とか地下室へ辿り着いた頃にはへとへとになっていた。
服は濡れてるし、目は見えないしで気持ち悪いことこの上ない。
私は雨に濡れて真っ黒になった服を脱ぎ捨て、ベッドに潜る。
見上げた天井はいつもと変わることなく無機質で。
もしかしたら私はとっくの昔に死んでいて、世界には誰もいないんじゃないのかと思えてきた。
「幻想郷……かぁ」
そんなものも、あったなぁ…………
ちょっと不思議な読後感は評価できます。
どちらにしてもひどくヘビーだ。
こちらの視界もぼんやりしてきそうだよ。
後、クレイジーDのラッシュはドラドラではなくドラララでは
おうふ、これは痛いミス
昔の記憶を頼りになんかドラエモンみたいなあれだったなと思って書きましたが
確認したらドララでした
これは恥ずかしい
てか妖怪だろうがなんだろうがアレはしっかり効くもんなのか