※この作品は若干のキャラ崩壊とパロネタがあります。
「霊夢さぁ~ん!!お願いです!!助けてください!!」
静かな博麗神社に、東風谷早苗が慌しい様子で駆け込んでくる。
「こんな時間に何の用なのよ」
面倒そうな表情を浮かべ、境内から出てくる霊夢。
「神奈子様と諏訪子様が大変なんです!!何とかして下さい!!」
「何とかして下さいってね……。私は便利屋じゃないのよ」
「分かってます!けど、私ではもうどうする事も出来なくて……」
「とりあえず、事情を説明してくれないかしら?」
「……はい、今朝の事なんですが……」
「あ、諏訪子。おはよう。どうしたの?
顔が青いわよ?」
「青いわよ?じゃないわよ……。
誰のせいでこうなったと思ってるのよ……。
神奈子のいびき、うるさすぎてここのところ
まともに寝れた事なんてありはしないわ」
「いびき?あ…あぁ、ごめんごめん。気をつけるよ。悪かった」
「……だいたい、いびきなんておかしいわ。
高齢のおばさんじゃあるまいし……」
「おばっ……。諏訪子。確かに悪いのは私だから、
あまり強くは言えないけどおばさんっていうのは
ちょっと言いすぎじゃない?」
「何よ?どう考えてもおばさんじゃない。
大体前から思っていたんだけど
その髪型ありえないのよ。服装だって何かしまむら臭いし」
「ちょっと!!いくらなんでも関係のない外見の文句を言うなんて
酷いわ!!それを言うんだったら、
諏訪子だってぶりっ子で媚を売るのは前々から、
見苦しいと思ってたのよ!!みっともないと思わないの!?」
「ぶりっ子って……。神奈子は私のことを
ずっとそういう目で見ていたの!?」
「事実を言ったまでよ!!可愛らしいポーズをとって
ケロケロ~なんてやっちゃって。
いったい年いくつだと思ってんのよ!!」
「なにぃ~~!!ちょうど良いわ!
この際だからはっきりと決着をつけようよ!!」
「はんっ!!決着?記憶が正しければ諏訪子は
私に一度敗北したと思うんだけどね。また負けたいの?」
「ぐぬぬっ……」
「なんだか騒がしいですね……。
お二人方はもう起きていらっしゃるんですか?」
「早苗!!」
二人の神は同時にその名を叫ぶ。
「そうよ!!早苗に選んでもらいましょう!!
私が正しいか、諏訪子が正しいか。
そうすればどっちが悪いか分かるわ!!」
「うわぁ……このパターン。私だけが不幸になってしまうパターンだ……」
起きたばかりで寝ぼけている状態にもかかわらず、
早苗は小声で愚痴をこぼす。
「……えーと、どうなさったんですか?」
「聞いてよ!早苗!神奈子ったら、
自分のいびきが悪いのに私を侮辱したのよ!!」
「侮辱じゃないでしょ!事実よ!それにあんたが
先に私のことを侮辱したのよ?
私はすぐに自分の非を詫びたわ!!」
小学生の口喧嘩のように、二人の神の口論は平行線を辿っていた。
「と、とにかく!喧嘩はお止めください!!
私はお二人のそんな争いあう姿なんて見たくありません」
二人の神はその言葉を聞くと、動きを止めゆっくりと早苗に近づく。
「なぁに常識ぶってんのよ!あぁ~?
常識に囚われないって言ったのは
どこのどいつだよ!!まともなふりしやがって
おまえが一番変人なんだよ!!」
「へ……変人って…。ひどいですよ。神奈子様」
「そうだそうだ!!どっちが正しいかって聞いてるんだよ!
はっきりと、どちらかを選択しろや!!そんなんだから
いつまでたってもルイージって呼ばれるんだろうが!!」
「ひぃぃ~~」
二人の神による恐ろしい恐喝に耐え切れずに
早苗はまるでカツアゲされる小学生のように怯えきっていた。
「で、私のところまで逃げて来たってわけね」
「えぇ……つい、何も言わずに必死に逃げてしまいました……
私は何もやっていないのに……あんな罵倒をされるなんて…」
そこへ一番乗りとばかりに普通の魔法使い・霧雨魔理沙がやってくる。
「おっと。緑がここにいるなんて珍しいな。
しかも朝早くから。何か特別な用でもあるのか?」
「魔理沙さん!!私の名前は東風谷早苗です!
いい加減に覚えてください!!」
「分かってるって。ちょっとした冗談だぜ。
そんなに怒らなくても」
屈託のない笑顔でごまかす魔理沙。
「それがね……」
霊夢はそれまでの事情を、早苗から聞いたように魔理沙にも説明をする。
「ふーん、そんな事が。どうりでさっきあの二人と会った訳だ」
「えっ!?」
早苗は驚く。
「いや、なんか博麗神社に行くとか言ってたぜ
時間的にもそろそろ着く頃なんじゃないか」
「ちょっ!!れ、霊夢さん!!もし、お二人方が来ても
私はいないっていってくださいね!!」
「え!?ちょっと、なにするつもりよ?」
「何って、隠れるんですよ!!今の状態でお二人方と会っても
馬の耳に念仏です!ぬかに釘です!!」
咄嗟に早苗は、近くにある賽銭箱のふたを開け
その中に自身の体を収める。
「ちょっと使い方を間違ってるような気が…」
霊夢は困った表情を浮かべながら、その様子を見ている。
「あ!例のお二人さんが来るぜ」
霊夢と魔理沙はすぐに気づいた。
二人がこの神社にやってきたという事はもちろん。
いつもの如く、二人で一つのように並んで歩いているが、
その頭上では蛙と蛇が、命を削りながら闘っているオーラを発している。
「あぁ、黒白。さっきも会ったな。あんたもここに用だったのか」
いつもならきちんと名前で呼んでくれる。魔理沙はそう思っていた。
顔は平静を装っているが、その内面が言動となって表れてしまった様だ。
しかし、ここで突っ込めば神の制裁を食らうかもしれないと判断した
魔理沙は、何事もなかったかのように対応する。
「私が、一番乗りだったぜ」
魔理沙は霊夢に目で合図をする。
「そう。まぁ、いいわ。紅白さん。
うちの早苗、ここに来なかった?」
「えぇ、来たわよ。ちょうどそこの賽銭箱に隠れているわ」
「ちょっ!ちょっと霊夢さん!酷いじゃないですか!
少しは庇う位してくださいよ!!」
某FFで有名なAAのように賽銭箱からインしてくる早苗。
「た、確かにちょっとひどいぜ……
少しは早苗のことも……」
「はぁ~……。最初に言ったでしょ。私は便利屋じゃないのよ。
家庭内の喧嘩は当事者同士で解決してくれないと」
「金ですか!?金がないと動かないんですね!!
見損ないましたよ!!いくら、賽銭箱の中身が空っぽだからって
人の気持ちまで踏みにじるとは思いませんでしたよ!
心まで汚れてしまったんですね!?」
霊夢は、悪魔のような鋭い眼光で早苗を睨む。
「まぁ、あんたらも知ってるとは思うだろうけど……」
神奈子が申し訳なさそうに話す。
「早苗。悪かったよ」
「……えっ……」
二人は早苗に謝る。予想外の出来事に
早苗はあたふたしている。
「私達、ちょっとやりすぎたよ。
あの時は悪かった。だから…」
「あら、この神社にこんなに人が集まっているなんて珍しいわね」
二人の言葉を遮るように、胡散臭いスキマ妖怪が現れる。
「もしかして、宴会?」
同時に鬼である伊吹 萃香も引き寄せられるように登場する。
「……また厄介なのが出てきたわ……」
スキマ妖怪はどこかで一部始終を聞いていたのか
哀れみの目で、神奈子に近づきこう呟く。
「神奈子さん……といったわね。あなたの気持ち
すごく分かるわ。いわれのない誹謗中傷を浴びせられるのは
苦痛でしかないわよね。けど、安心して。私は味方よ。
人生経験の浅い小さなおこちゃまには私達の苦労なんて分からないわ」
ほとぼりは冷めかけていたはずだが、空気の読めない
いや、あえて読んでいるのかは分からない。
スキマ妖怪は神奈子を慰め、諏訪子に流し目を送り
挑発しているようだった。
諏訪子はスキマ妖怪の意図を理解し、
悔しかったのか反論し始める。
「な、何よ!!見た目が小さいからって馬鹿にしないでよね!!
こう見えても、私は人妻なのよ!!子供もいるのよ!!
あなたに子育ての苦労が分かるって言うの!?」
「……私には、たしか橙っていう子供がいたわねぇ……
育ち盛りで大変だけど、とってもかわいいわ。
それよりも、根拠のない悪口で、本質を誤魔化すっていう行為は
私のような大人の女性に嫉妬でも抱いているのかしら?
聞くところによるとあなた、神奈子さんをばばぁ呼ばわりしたそうじゃない」
「うっ……。ば、ばばぁはばばぁじゃん……」
その時、その場にいた誰もが瞬時に身構えた。
スキマ妖怪の顔は笑ってはいるものの、明らかに
胸の内はその表情とは真逆のものだった。
「まぁ、あなたのような貧乳、ロリ体系は気楽でいいわよねぇ。
ちょっと笑顔でポーズをとって、ケロケロ~~なんてしてれば
大きなお友達がすぐに寄ってくるものねぇ。私も、見習いたいものね……」
「ば、馬鹿にするな!?私だって!!」
「ちょっと。紫!?その発言は聞き捨てならないなぁ~」
諏訪子の言葉を遮り、萃香が物を言う。
「あんただって今、根拠のない悪口を言ったよ!
それに、この件はもう終わってるはずだ!
紫は明らかに言いすぎだ!」
「あら、事実じゃない。悪口でもなんでもないわ。
小さな子供には、私の言う事が理解出来ないのかしら?」
「なんだと~?」
スキマ妖怪と小鬼は一触即発の雰囲気になる。
「おい、ちょっとまずいんじゃないか?」
魔理沙は霊夢に小声で話している。
「……まったく、しょうがないわね……」
霊夢は困ったように頭を掻きながら、二人の下へ歩み寄る。
「きゃっ!!」
「いだっ!!」
霊夢の鉄拳がスキマ妖怪と小鬼の頭に容赦なく振り下ろされる。
「二人の馬鹿が迷惑かけたわね。
あなたたちも仲直りしたようだし。
これで異変は解決したという事で」
二人は霊夢に引きずられながら、神社の裏に連れて行かれる。
「早苗……」
「神奈子様……諏訪子様……」
喧嘩した後の恋人のように、親密を高めている守矢一家を見守る魔理沙
「やれやれだぜ……」
帽子を深くかぶり、持っていた箒でその場を後にする。
だが、この時には誰もが気づかなかった。
この出来事を機に、幻想郷にとてつもない事件が発生するという事を……。
「紫様。おかえりなさいま」
マヨヒガに帰ってくるや否や、藍の出迎えに応じる事もなく
自身の部屋に向かうスキマ妖怪。
「紫様?どうかなさ」
その言葉を遮るようにぴしゃりと音を立てて襖を閉める。
藍はじっとその場に立ち尽くし、主人の様子を伺う。
しばらくその部屋内で、けたたましい破壊の音が聞こえた後
ゆっくりと襖が開かれる。
「藍、決めたわ!!戦争よ」
「はい?」
「あの糞餓鬼共め!!こうなったらいい機会だわ!
この幻想郷で大人の女の魅力を知らしめてやるわ!
どいつもこいつもババァ言いやがって……
子供がそんなに偉いのか?子供がそんなに偉いのか?
偉いのは経験溢れる大人のはずよっ!!」
「……状況がつかめないのですが……」
「藍!!あなたは体調を万全にしさえすればいいわ!
とにかくこれからは忙しくなるわ。準備は出来てる!?」
一方、伊吹 萃香はというと、体が小さいというだけで
馬鹿にされた事に対し酷く苛立っていた。
森の中で、手当たりしだいに木に向かって拳を打ちつける。
「くそっ!紫の奴め!!小さいだけで馬鹿にしやがって!!
私の力がどういうものかぐらい分かっているだろうに。
それなのに、あんな言い様はひどい!!」
次々と大木が薙ぎ倒され、周囲の視界が開けていく。
「確かにあの時は負けてしまったけど
私だって、努力しているんだ!!
次やるときは私だって……」
小鬼はその場で横になり、空を眺めながら
物思いに耽る。
「……決めた。こうなったら徹底抗戦だ!!
小さくても紫に勝てるという事を思い知らせてやる!!
次は絶対勝つんだから!!」
それから数日後、白黒つける能力を保持している四季映姫の下に
二通の手紙が送られる。送り主は八雲紫と伊吹萃香だ。
手紙はそれぞれに対する宣戦布告を意味する内容だった。
ヤマザナドゥによってその布告は受理され、これにより
幻想郷はババァとロリによる冷戦時代の幕開けとなる。
最初に動いたのは、ババァ代表の八雲一家である。
妖々組に協力を申し入れ、かつての旧友である
西行寺幽々子はこれをあっさりと承諾した。
次に動いたのは幻想郷では二番目の勢力を
誇っている紅魔館である。
紅魔館の当主であるレミリア・スカーレットは
これを機に八雲一家と交戦することをメディアに伝えた。
ロリ勢力の代表・伊吹 萃香の全面的バックアップを
高々と宣言する。
「あちゃー。なんかとんでもないことになってるぜ」
文々。新聞を見ながら溜息をこぼす魔理沙。
「私も予想していなかった……まさかこんな事になるなんて……
というか、紫がババァと呼ばれていたことをそんなに
コンプレックスに思っていたなんて……
(私も時々、ババァと言ってからかっていた事もある……)」
「で、どうするんだ?」
「は?」
「は、じゃないよ。霊夢はどっちにつくんだよ?
あの二人は今ぴりぴりしてる。少しでも優勢になるべく
片っ端から協力を呼びかけているそうだぜ」
「馬鹿じゃないの?決まってるじゃない。
どっちにもつかないわよ」
「……まぁ、霊夢だから出来る発言だよな。
私は、いずれどちらかにつかなければならない決断をしなきゃいけない……
正直言ってかなり怖い……」
表情は冷静を取り繕っているが
新聞を持っている手は震えている。
「……これが……戦争なのか……
霊夢!もし私が死んでも」
「吸血鬼から厄紙が来た」
神社の近くで妖精の会話が繰り広げられる。
「まじで?あたいはまだ来てないんだけど」
「私!仲間のために頑張るわ!!大妖精の存在を
皆に知ってもらうために!精一杯頑張る!!」
口では大層なことを言っているが、これは戦争。
厄紙とは要するに徴兵。大妖精は涙を浮かべながら
自分を励まし、その結果に最大限の正当性を持たせようと
納得させている。しかし、話相手がチルノだったために
大妖精が望む言葉を掛けられる事はなかった。
「よかったじゃん。大ちゃん頑張ってね」
「で、出来ればチルノちゃんと一緒に戦いたかった……」
「あたいは最強だからね。協力すればぱわーばらんすが崩れる」
「…………」
いいタイミングで遮られてしまったのか、
どうきりだそうかと考えている魔理沙。
「大丈夫よ。魔理沙。
誰も死なせはしないわ。誰一人として不幸な目にはあわせない。
それが異変解決人の異名を持つ……私の役目だから……」
「霊夢……」
その目つきはいつものふざけた霊夢ではなく
プロフェッショナルとしての鋭い目つきだった。
魔理沙はそっと霊夢の手をとり、
霊夢もそれに答えるかのように手を握り返す。
「なんだか、最近物騒よねぇ」
永遠亭のヤブ医者・八意永琳は蓬莱山輝夜にそう呟く。
「まぁ、私たちは関係ないし好き勝手にやらせたら良いんじゃないの?」
「この前、診察で村に立ち寄ったんだけどねぇ。つい最近までは
すごく穏やかだったのに、
まるで世紀末のように死相が出ている患者ばかりだったわ」
「この機にお互い潰しあってくれた方が良いんじゃないの?
いよいよ時代も永遠亭~ってね」
「あいかわらず黒い事をお考えですね。姫様は」
「いやだなー。ここで一番黒いのは永琳じゃない」
「いや、一番黒いのは因幡てゐですよ」
「まーたしかにそうね。あの兎野郎。
済ました顔して、ここを乗っ取るつもりなのよ。
恐ろしい。いつか絶対チキントーストにしてやるわ」
「師匠。急患です。なんでも突然倒れたそうです。
重病の可能性もあるので診て下さい」
長い兎の耳が特徴的な女子高生がその部屋を訪れる。
「あ、はいはい。ちょっと待っててね
すぐ行くから」
八意永琳はすぐに準備を済ますと
患者が運ばれた診察室へと向かう。
慣れた手つきで患者の診断をする。
子供らしく、ひどく衰弱している。
しかし、症状から推測すると、ただの栄養失調だ。
点滴をいくつか打つと体調も元通りになり
入院の必要もなくその場で診察終了となった。
「うちの子供を助けてくれてありがとうございます
本当になんとお礼を言って良いのか」
「いえいえ、当然のことをしたまでです。
一時的な栄養失調だったので
一応、食事には気を使ってください」
「はい、本当にありがとうございます。
ほら!!あんたも診てくれたお医者さんに
ちゃんとお礼をいいなさい!!」
「おばちゃん、ありがとう」
翌日、永遠亭は八雲一家に協定を持ち出し
同盟を組む。密かに永遠亭の権力転覆を狙っていた因幡てゐは
以前から目に掛けていたキモケーネ一派と接触を図る。
「なぁ、妹紅。今、幻想郷は大変なことになっている」
「ん?あぁ、そうだな。輝夜は八雲一家についたらしいな。
だったら、私らは鬼につく。もう決まったことだろう?」
「その件なんだが、ちょっと考え直してくれないか?」
「え?だってちょうどいいじゃないか。永遠亭の兎から持ちかけられた
話も悪くなかっただろ?あれで、輝夜を陥れることも出来る」
「よく考えてくれ。私は教師なんだぞ?」
「ん?あぁ。そうだな」
「教師ということは人に教えることが仕事だ。
つまり人生経験が豊富な年上キャラではないと務まらないポジションだ。
そんなお姉さん属性である私が、幼女サイドにつくのは違和感を感じないか?」
「……確かに、そうだけど。しかし、輝夜が……」
「妹紅の言い分も分かる。けれど、目先のことだけを考えていても仕方がない。
妹紅、お前はどんなキャラで自分を売っていきたいんだ?」
「は?」
「お前は、決してロリではないはずだ。そのぶっきらぼうな態度。
多くは語らずだが、人情味があり、いざというときに頼れる性格は
むしろ私と同様、お姉さんタイプだ」
「は、はぁ……」
「今回は、輝夜のことは目を瞑り、
今後のことを考えて八雲一家に協力するべきだと思う。
私のためと思って納得してほしい」
翌日、永遠亭とは犬猿の仲であるキモケーネ一派が
まさかの八雲一家と同盟を組んだことが幻想郷中に知れ渡った。
たった二人にもかかわらず、驚異的な力を持っていた
藤原妹紅(を陰で操る上白沢慧音)のその決断は、各々の勢力のトップに
度肝を与える結果となった。と同時に、
一体の兎の水死体が発見されたことも報じられる。
そして、残されたのはお馴染みの紅白と白黒のみとなる。
「なぁ、霊夢。いよいよヤバくなってきたな。
わかってるんだろ?もう自分でも止められないって。
どちらかが死に、どちらかが生きるしかない」
「……そうね……」
神社にやってくるのは既に魔理沙しかいない。
かつて談笑し合っていた、スキマ妖怪も小鬼ももういない。
楽しかったあの日々は戻ってこない。
そんな思いを馳せながら、霊夢もまた決断する。
「……決めたわ……魔理沙……」
「……やっと……か」
「私は紫側につくわ」
「……そうか……」
「確かに、私は大人の女とはいえないわ。
萃香も大事だし、特殊な性癖を持つ者にとっては
私はすこぶる魅力的らしいわ……。だけど……」
どこからともなく切ないBGMが流れてくる。
「責めはしないぜ。人それぞれだ」
「魔理沙も、私と同じ考えだよね?」
魔理沙はうつむいている。
「残念だけど……私は……」
「そんな……嘘よ…ずっとずっと一緒に
異変を解決してきたじゃない!
また初期の頃のように、自機を二人でって
約束しあったじゃない!!」
霊夢は感極まってか、顔を両手で覆い
今にも泣きそうであった。
「パチュリーがいるからな……。
あいつを放ってはおけない
敵同士になるけど……」
「……そう……
それが、魔理沙の選択ね……」
「二人が何のしがらみもなく
顔を会わせられるのも
今日が最後だ」
「そうね……哀しいわ」
魔理沙はすっと立ち上がり、霊夢を正面に見据える。
「お互い無事を祈ろう。そして、
生きてまたここで……」
魔理沙は、涙を浮かべている霊夢をそっと抱き寄せ
励ましの言葉を投げかける。
「……卑怯よ……
こんなの反則よ……
私、魔理沙と離れたくなんかないよ……
もしかしたら、死んじゃうかもしれないのに……」
「霊夢!!」
魔理沙は強い口調で、霊夢に言う。
「確かに、私たちは敵同士になる!
だけど、私は絶対に死なない!!
約束する!!だから、霊夢も約束してくれ。
この戦争が終わったら、一緒に暮らそう!!
別荘も買った。指輪も用意してある」
「魔理沙……」
二人のムードも感極まり、
流れているBGMもいよいよ
盛り上がりを見せ始めたとき。
「……で、あんたは何をやっている訳?」
霊夢が突然、頭上に向かって言葉を放つ。
そこにはラジカセを持った烏天狗の射命丸 文が飛んでいる。
「いや……いい雰囲気でしたからつい……」
その日、紫側に霊夢が、萃香側に魔理沙と
アリス・マーガトロイドが加わった事が
射命丸 文によって報道された。
「どうも不安だわ……」
完全で瀟洒なメイドである十六夜咲夜は悩んでいた。
「あら?十分じゃない?戦力は数ではなく質よ?」
その主であるレミリアスカーレットは難なく答える。
「確かにそうですが……相手はあの八雲紫です
万が一の場合にも備えて……」
「あんなやつ、私がぎったぎたにしてやるわ!
私のしゃがみガードでイチコロよ!!」
「確かに、あれはロリコンじゃない者にとっても
相当の痛手を与える事が出来ます。しかし、
そうではないのです。根本的に何かが欠けている……」
十六夜咲夜は続けて言う。
「……お嬢様、私に秘策があるのですが
申し上げてもよろしいでしょうか?」
「いいわ。許可する」
「この地上のほとんどのものは既に
どちらかの配下についてしまっています。
しかし、一つだけどちらの配下にもついていない組織がございます。
なんとか、その組織を取り入れることが出来れば
私たちの勝利につながるのではないでしょうか?」
「……聞いたことがあるわね。
その組織を治めている主の名は
確か小五ロリ……」
「古明地 さとりでございます」
「そいつらを私達の側に置けば……」
「おそらく勝利は確定かと」
「けど、相手は手ごわいわよ?
何せ、心を読める妖怪。一筋縄ではいかないわ」
「もしよろしければ、私に交渉の役目を……」
十六夜咲夜は主であるレミリアスカーレットに
許可を申請している。
「秘策を持っているのね……」
「えぇ、ある情報屋から仕入れたネタです。
かなり信憑性があります」
「へぇ……」
「どうやら、彼女はパチュリー様と
同属のようです。それを利用すれば
おそらく交渉は成功するかと……」
「そう……パチェと同属か……
それならば、案外早く決着がつきそうね。
いいだろう。咲夜。その重大な任を
お前に与えよう。くれぐれもヘマはしないことね」
「あ、ありがとうございます!!」
「失敗すればどうなるか分かってるわね?」
「は、はい!!三百六十五日間の犬耳&犬尻尾、
ワンワンの恥辱。十分に承知しております!!」
「なら、よろしい」
十六夜咲夜は支度をすると、地下に向かい旅立っていった。
その後、十六夜咲夜の功績により地霊殿組が
伊吹萃香側に加わった。いよいよ大国同士の
一触即発のムードが高まっていく。
お互いの士気は最高潮。
両者がにらみ合う中で、山の頂上付近にある守矢神社では
三人がその光景を見守っている状況だった。
「ひぇぇ~、大変なことになってますよ~
ど、どうしましょう。神奈子様、諏訪子様!
私達のせいで、とんでもないことになってますよ!」
「あーうー」
「ど、どうしましょうって言われてもねぇ……」
「今ならまだ間に合うはずですよ!
止めましょうよ!」
「い、いやさすがの私たちでも
あの連中を止めることは死を意味すると思うんだ……」
「わ、私も頑張りますから!!一緒に三人で!!」
「さ、早苗は私達に死ねって言ってるの。
あのときのこと、まだ根に持ってるの?」
「根に持ってなんかいません!!」
「あ、とうとう始まっちゃったよ~」
「え……そんな……」
山の頂から見下ろし、その光景を眺める三人。
実力者同士のすさまじい争いは、一線を凌駕していた。
二人の神は決して弱いほうではない。
だがしかし、その力を発揮するには相手が悪すぎたのである。
もはや、誰もこの戦争を止める事など出来ない。
多くの犠牲を出し、どちらかが勝ち残るまで
静かに見守るしかないのだ。
「せっかくここにやってきたのに、もうなくなっちゃうのかね……」
「幻想郷のような新しい土地ってあるのかな……」
「ここが守矢神社ね。ちょっと、借りてもいいかしら?」
突然の参拝客が、早苗に声を掛けている。
「あ、はい。いいですよ」
今の早苗にとっては参拝客などどうでもよく
軽い口返事で問いに答える。
「ん?日傘に緑髪って……」
慌てて、その参拝客に視線を移すと
パラソルを手に持ち、それを広げ、
下に向けてから、何か準備をしていた。
二人の神はその正体を知っているのか
顔が青ざめている。
参拝客は無言で準備を終えると
やがて、辺りに眩い閃光が発せられる。
幻想郷の住人達が戦っているであろう
平地に向かって参拝客は、極上のマスタースパークを放ち始めた。
その威力は、魔理沙のソレをも凌ぐ遥かに強力な代物だった。
「まったく、五月蠅いわね。ゴミ屑共が。
まともにティータイムなんで出来やしないわ。
人騒がせもいいところね。あんた達に足りないのは、
艶やかな容姿でもなく、小動物のような可愛らしい態度でもなく
どんなことでも受け入れることが出来る器量でしょうが……
幻想郷はすべてを受け入れるって言葉、忘れてるんじゃないのぉ?
まぁ、私はその両方を持っているから問題ないんだけどねっミ☆」
二人の神はその光景に絶句し、呆然と立ち尽くし、
恐怖で身を震わせている。
東風谷早苗はというと……
「幽香さんっ!!私を、弟子にしてください!!」
「……私のシゴキは半端ないわよ?覚悟は出来てるの?」
「はい!!雑用でも何でもします!!私を強くしてください!!」
すべてを受け入れる幻想郷。
ようやく、真の意味で常識に囚われる事のなくなった
東風谷早苗の誕生の瞬間でもあった。
続編あるのかな? 期待してる
思わず惚れ直した。
ちょw
咲夜さんには失敗して欲しかったな
このシリアスなんだかネタなんだか分からない感覚が大好きです。
流石陰の幻想郷支配者。どっちかというとバ大人組みなのに完全中立とは惚れ直したぜ。
だけどさぁ……本当の意味でのロリっていないよね。みんなバ
個人的にはさとりんを仲間に加えた経緯を少し見たかった。
誤字がひとつ。「攻めはしないぜ。人それぞれだ」責めはしないですね。
身体が幼くても存在がババァだわ
ということで続き待ってます
二の次→これだと「大したことない」という意味が強いです
高々に→「高々と」が一般的
永遠に幼き→永遠に紅い幼き月だったかと
レミリアスカーレット→間に「・」か何か入れた方が見やすいかも
霊夢だから言える発言→「できる発言」または「言えること」
私の存在価値を認めることが→認めさせることが
床間→?
攻めはしないぜ→責めはしないぜ
顔を両手で多い→覆い
最骨頂→最高潮?真骨頂?ここでは最高潮が正しいかな?
この地上には既にほとんどのものがどちらかの配下に→この地上のほとんどのものは既にどちらかの配下に
いくつかはテーマ故の意図的なものかも知れませんが一応
だって外観年齢18歳ぐらいでしょ?
としたら、ルーミアやミスティア達もすべてロリ側に回ってしまうかと
白蓮も加え、ババァ連合を強化すべきかと