※この作品は、他のゲームの神様に出演頂いております。
いわゆるクロスオーバーと呼ばれるものです。
加えて自己設定が満載です。
お読みになる際はご注意ください。
「春ですよー」
私はリリー・ホワイト。
春を告げる程度の能力を持つ妖精です。
今年も幻想郷に春を告げにやってきました。
「春が来ましたよー。
ポカポカしてて気分が良くても、いつまでも寝てたらいけませんよー」
せっかくこんなに気持ちのいい春がやって来たのだから、家に居たままではもったいないというものです。
「春はいいですよー。
みんなの心が温かくなる季節ですよー」
「わかったから! 起きるから!
起きて春を堪能するから、耳元で囁くのはもう止めなさい!」
怒られちゃいました。
この巫女さん、ちょっと短気です。春なのにー…
「大体、春を告げるだけだっていうのにどうしてわざわざ起こそうとするのよ!?
あんたはあれか!? 私の母親か!? そうじゃなかったら目覚まし時計か!?」
「こんな時間まで寝てるからですよ?
もうお昼前なのに、だらしないです」
「う… べ、別にいいじゃない…」
「やっと来た春を寝過ごすなんてもったいないですよ?
外に出てお日さまの光を思いっきり浴びましょー」
「…はぁ、わかったわよ。
外に出ればいいんでしょ?」
「早く行きましょー。
うんしょ! うんしょ!」
「…わざわざ背中まで押してくれなくても行くわよ」
「疲れましたー…」
もうヘトヘトですぅ…
巫女さんって意外と重…
「私が重いんじゃなくて、あなたの力が弱いだけだからね? 一応言っとくけど」
心を読まれちゃいました…
でも私の力が弱いなんて、ちょっと失礼です! プンプン!
「弱くないですよー。
こう見えて結構力持ちなんですからね?」
「はいはい、すごいわね。
そんな小さな体で私を動かそうとした根性だけは認めるわ」
ほめられちゃいました。えへへ…
ちょっと失礼だけど、優しい人ですね。
「ありがとうございます。
巫女さんって意外と優しいんですね。やっぱり春だからですねー」
「意外と、は余計だけど… 扱いやすい妖精ね」
「何か言いましたかー?」
「何も言ってないわよ。
そんなことより、外に行くんでしょ?」
「忘れてましたぁ…」
「はぁ… 何しに来たのやら…
さっさと行くわよ」
いけないいけない、すっかり気を取られちゃってました。
そんなことより、先を歩く巫女さんを追いかけないと。
でもなかなか追いつけません。巫女さんの一歩が大きいよー。
待ってー。
「へぇ… 今年も見事なものじゃない…」
「そうでしょうともー」
外に出ればそこは春満開。辺り一面桜が咲き誇っています。
神社の境内には桜の花びらがヒラヒラ舞い降りて、ピンク色の絨毯が私たちを出迎えてくれました。
「まぁ、掃除が大変そうだけどね」
「せっかくの春なのに、そんなこと言っちゃだめですよ?」
「春、春って…
春告精だけあって、あなた本当に春が好きなのね」
「はい! 今は春が何より好きなんですよー」
「…今は? 変わった言い方するのね」
あらら。口が滑っちゃいました。
「いーえ、何でもないんですよ?
お気になさらずにー」
「あら、そんな言い方されたら余計気になるわ。
どういうことなのか聞かせてもらえない?」
「えー? どうしましょう。
まだ皆さんに春を告げてないです…」
「甘くておいしいお茶菓子もあるわよ?」
「わーい! 甘いの大好きですー!」
「ふふ… 今持ってくるから待ってなさい」
「はーい!」
甘いもの~♪ 甘いもの~♪
あま~いお菓子楽しみです~。
「お待たせ。春らしく桜餅にしてみたわ」
「わー! おいしそうですー!」
「どうぞ、召し上がれ」
「いただきまーす!」
「おっと」
「あぁー! お餅が遠ざかってゆくー…」
「ちゃんと話すって約束してくれる?」
「しますします! だからギブミーお餅ー」
「あげるから、しがみつかないの」
「わーい! 今度こそいただきまーす」
「はいはい、落ち着いて食べなさいよ」
「はーい」
縁側に腰掛けてっと…
むぐむぐ… 甘ーいですぅ。
「おいしいですー」
「そう、よかったわ。
じゃあ、食べながらでいいから話してくれる?」
「しょうがないですねぇ。
ちょっと長くなるかもしれませんよ?」
「構わないわ。
今はあなたの話を聞きたい気分だから」
巫女さんはそう言って隣に腰掛けました。
「わかりました。リリーは約束は守る子なので、お話しします。
昔のことですけど、私は今ほど春が好きではありませんでした
いえ、正直疎ましくも思っていたのですよ」
「あなたが? 想像つかないわね」
「ホントに昔のことですから。
でも今は違いますよ? 春が大好きです。愛してます。春一番です!」
「春一番はちょっと意味が違うけど…
だったら、どうしてそんなに好きになったの?」
「それはですねぇ…」
本当に懐かしいです。
でも、あの日のことは今でも鮮明に思い出せます。
私が変わるきっかけにもなった、あの出会いは…
◆ ◆ ◆
「今年も春が来ましたね…」
私が言うまでもなく、春は毎年やってきます。
そして、私には『春が来たことを伝える程度の能力』があります。
だから私は、毎年皆さんに春の訪れを伝えて回ります。
だけど…
「春なんて、私が伝えなくても勝手にやってくるじゃないですか…
なんで私にはこんな無駄な能力があるのでしょう…?
私がいる意味は、本当にあるの?」
それに私は、春が過ぎればまた次の春までお休みしないといけません。
私はまさに春のために存在するのに、その春に私は必要なのでしょうか…?
いっそのこと、春なんて無くなってしまえばこんなに悩まなくてもいいのに…
「それに、私が春を告げてもお花はまだ蕾のままだし、皆さんもなんか元気が無いです…
これじゃあ春を感じるなんてできないですよ…」
春を伝え終わっても、咲き誇るお花がなくて寂しいです…
でも、私の役目はここまでですから仕方ないですよね…
「後は自然にお任せするとして、私は帰るとしましょうか」
そうして飛び立とうとしたのですが、なぜか私はいまだ地面に立っています。
どうやら何かが私を引っ張っているようですね。
なんだろうと思って振り返ると、わぁびっくり。
「ワン!」
大きくて真っ白なわんちゃんが私の服の裾を引っ張っていたのです。
よく見たら、目の辺りや胸の辺りに赤い線のような模様がありました。
でも、フカフカしてて温かそうだなぁ… ではなくてですね。
「どうしたの、わんちゃん? 私に何かご用?」
「ワン!」
ふむふむなるほど。
「全然わかんないですよぉ…」
「クゥーン…」
いくら妖精でも、わんちゃんの言葉はわかりません。
とっても残念ですがしょうがないです。
「ごめんね、わんちゃん。
私はもう帰らないといけないから、遊びたいなら他の子を見つけてね? バイバイ」
そう言って飛び立とうとしたのですが、私の足はいまだ地面と接触中です。
振り返ると、やっぱりわんちゃんが裾を銜えていました。
なんなのでしょうか…?
「まだ私にご用があるの?」
「ワン!」
「う~ん… でも、私は本当に帰りたいんですよ。
幻想郷中を飛び回って、疲れちゃいましたから…」
「ワン!」
「きゃっ! え、なに!?
きゃああーーー!!」
わんちゃんは一鳴きすると、私の服を銜えて思いっきり振り投げたのです。
これにはさしもの私もビックリです!
落ちるのを感じて、怖くなったので思いっきり目をつむって衝撃に備えました。
でも、落ちた先はとっても柔らかい場所だったのです。
「…あれ?」
「ワン!」
目を開いてみると目の前には真っ白な…これは、毛?
ああなるほど、私は今わんちゃんの背中に乗っかっているのですね。
思った通りフカフカで温かいですぅ…
「ワン!」
「…はっ! 眠ってしまうところでした。
それもこれも、わんちゃんがフカフカなのがいけないんですよ?」
「クゥーン…」
本気で落ち込んじゃってますね。
ちょっと悪いことしちゃいました… 反省します…
「ごめんなさい、わんちゃん。
怒ってるわけじゃないから、そんなに落ち込まないで?」
「ワン!」
私の言葉に、とっても元気なお返事をしてくれました。
機嫌もなおったようで、よかったです。
「でも、どうしてこんなことするんですか?
遊びたいんだったら別の子を…」
「ワン!」
「…って、きゃあーーー!!」
私の言葉を遮って一鳴きすると、今度は私を乗せたまま走りだしちゃいました!
「わんちゃん、速い! 速過ぎですぅーー!!」
「ワン! ワン!」
私の声が聞こえていないのでしょうか、わんちゃんのスピードは緩まる気配を見せません。
それどころか、どんどん加速していってます。
「怖いですー! お願いだから止まってー!」
「ワン!」
「きゃっ!」
私の必死の願いが通じたのか、ようやく止まってくれました。
急ブレーキだったのでビックリしちゃいましたが…
「もう! いきなり何するんですか!?
本当に怖かったんですからね!」
「………」
「聞いてるんですか!?」
「ワン!」
「…どこ見てるんですか? 後ろ…?
………わぁ」
わんちゃんの視線を追いかけて後ろを見てみると、見事な桜が咲いていました。
それも、今通って行った所だけ…
「さっきまではまだ蕾だったはずなのに… どうして?」
「ワン! ワン!」
「…もしかして、わんちゃんがやったの?」
「ワン!」
自信たっぷりに返事をしてくれました。
でも、ちょっと信じられないです…
「…本当なの?」
「ワン!」
「…うわぁ」
わんちゃんがまだ蕾の桜の木に向って一鳴きすると、一瞬にして満開になりました。
…これは、夢ですか? でも頬を撫でてゆく花びらの感触は本物…
「ホントにわんちゃんがやったんだぁ…」
「ワン!」
「すごいすごい! わんちゃんすごいです!」
「ワウ?」
なんか気の無い返事ですね。
自分がどれだけ凄いことをしたのか、わかってないんでしょうか?
「ワン! ワン!」
「どうしたの?」
「ワン!」
相変わらず何言ってるかわかんないです…
でもなんか歩き出そうとしてますね。
「もしかして、まだ行くの?」
「ワン!」
「きゃっ! また!?
相変わらず速過ぎますー! スピード緩めてくださーい!!」
「ワン! ワン!」
「速くなってますよー!?」
今度は止まる気が無いみたいで、どんどん加速していってます。
どう考えてもさっきの倍以上速いです…
どうしようもないので、振り落とされないように必死にしがみつくことにしました。
「こ…怖いですーーー!!」
「ワン!」
どこまで行くのでしょう?
…もしかして、幻想郷全土を回るつもりですか? …この速度で?
…眩暈がしてきました。
もう耐えられません。なので、意識を手放すことにします。
「きゅ~………」
~ ~ ~
「ワン! ワン!」
「………ん、う~ん…
…はれ? ここはどこですか?」
「ワン!」
「わんちゃん…
ということは、今までのはやっぱり夢じゃなかったんですね…」
「ワウ?」
「いえ…なんでもないです。気にしないでね」
それにしてもここはどこでしょう?
向こうの方にちょっと切り立った崖のような場所がありますね。
それに肌寒いですし、ちょっと小高い丘…のような場所でしょうか。
「…もう走るのはやめたの?」
「ワン!」
「あっ! どこ行くの!?
そっちは危ないよ!?」
わんちゃんが崖の方へ走って行っちゃいました。
危ないから連れ戻さないと…!
「ワン! ワン!」
「もう… そこは危ないからこっちにおいで?」
「ワン!」
わんちゃんに戻る気配はないですね…
それどころか一際元気よく鳴いて、私と崖の向こうを交互に見ています。
「…そっちに何かあるの?」
「ワン!」
どうにも私を呼んでるみたいです。
崖の向こうに、一体何があるんでしょうか…?
「………わぁ…」
その崖は、幻想郷を見通せるほど見晴らしがいい場所でした。
こんな所があるなんて知らなかったです。
だけど、私を何より驚かせたのは…
「きれい…」
眼前に広がるのは、鮮やかなピンク色の海原が風に揺られて波打っているよう…
ここに海は無いのではっきり言えませんが、きっとこんな感じのはずです。
ほんの数刻前までは寂しかった幻想郷の色が、見事に一新されていたのです。
「…こんなにきれいな景色、見たことないです…」
これが…春。
私が告げていた寂しいものじゃなくて、本物の…
「クゥーン…」
「え?」
頬をちょっとざらついた感触のものが撫でていったのです。
すぐ傍でわんちゃんの声がしたので、頬を舐められたのだと気付きました。
ふと舐められた頬に手を当ててみると、少し濡れています。
舐められたせいだけじゃないです。これは…
「あれ? 私… 泣いて…?」
「クゥン…」
わんちゃんは私の涙を拭い続けています。
涙は次から次へと零れてきて、でもそれを一生懸命拭ってくれます。
「…慰めてくれてるの?」
「クゥ…ン」
「でも大丈夫。悲しいから泣いてるんじゃないの…」
「ワウ?」
「春が…あんまりにもきれいだから。だから泣いちゃったの…」
これが私の告げるべき春…
このきれいな色を皆さんにお知らせするのが、私の役目だったんですね…
「…わんちゃんは、私にこれを見せたかったの?」
「ワン!」
「そうなの… ありがとう…
ありがとう、わんちゃん…」
言葉はわからないけど、わんちゃんの想いは伝わりました…
だから精一杯の感謝の気持ちを伝ようと、抱きしめて、一杯お礼を言いました。
わんちゃんはやっぱり大きくって、その分とっても温かかったです…
「本当にありがとう…
これからは私、自分の役割に誇りを持てそうです」
「ワン!」
「きゃあ! 今度は何ですか~!?」
…また裾を銜えられて、今度は引きずられていきます。
わんちゃん、スゴイ力です~…
でも、今回はすぐ近くだったので怖い思いをしなくて済みました。
そして、そこで見せられたものは…
「ちっちゃい…野花?
でも、まだ蕾だ…」
「ワン!」
「…? わんちゃんの力で咲かせてあげないの?」
「ワン! ワン!」
「え? なにするの?」
わんちゃんは私の背中をグイグイ押して、私の体を蕾の正面まで押し出しました。
「どうしたの? 咲かせないの?」
「ワン!」
相変わらず私の背中を押すばかりで、何がしたいのかわからないです…
でも、この子はお花を咲かす気が無いみたいですね…
…まさかとは思いますけど…
「…私にやれ、って言ってるの?」
「ワン!!」
今日一番のお返事でした。
なるほどー… そういう意味だったんですねー。
「む…無理ですよぉ!
一介の妖精でしかない私に、そんな力あるはずないです!」
「ウウゥゥゥ…!」
「わ…わかりましたぁ。
やってみますから、だからそんな怒らないでくださいよぉ…」
うぅ… 優しいわんちゃんだと思ってたのにぃ…
裏切られた気分ですよ…
「え…っと、こうかな?」
どうしたらいいかわからないので、とりあえず両手で包んでみることにしました。
そして、リリーパワーをお花に注入すること一分。恐る恐る手をどけてみるとそこには…
「…咲いてませんね」
「クゥーン…」
そんなに都合のいいものじゃありませんしね…
そもそも無理があったんですよ…
「やっぱり私には無理ですよ…
そんな大それたこと、できるわけがないです」
「ワン! ワン!」
「どうしたんですか?
そんなに私の手を触って… もしかして、お手ですか?」
「ウウゥゥ…!」
「わ…わかってますよ!
もう一度やれ、って言ってるんですよね!?」
「ワン!!」
「うぅ… スパルタです…
でも、何回やっても同じですよ…?」
さっきと同じように両手でふんわりと包んでみます。
そして、再び力を与えてみようとしました。
さっきと違う点があるとすれば…
「…わんちゃん?」
わんちゃんが、私の手の上に片足を乗っけてきたのです。
「どうしたの?」
「………」
じっとお花の方を見るだけで、今度は何も答えてくれません。
本当にどうしたというのでしょうか…?
よくわからないその雰囲気に気圧されて、私も集中することにしました。
「「………」」
しばらくそうしていたのですが、ある時、変化が起きました。
「………!
光ってる!」
手のひらに収まっていたお花から光が放たれ、隙間から零れ出てきたのです。
そしてゆっくりと手を開いてみると、今度は…
「…咲いてる!
わんちゃん、咲いてるよ!!」
「ワン!」
「やったね!
…って、これは何? 光の玉…?
わわっ!? なに!? 私の中に入って来たよ!?」
喜びも束の間、力強く咲いた小さな花から出てきた小さな光が玉を為して、なんと私の体に入ったのです。
初めはビックリしましたが、すぐに害の無いものだとわかりました。
だって…
『ありがとう… 咲かせてくれて、ありがとう…』
心の底から温かくなるような、そんな声が聞こえたのですから…
「今の光は… このお花の想い…?」
「ワン!」
あの小さな光は、きっとこの小さなお花の精一杯の気持ちだったんでしょう…
でも、私は何もしてないです…
今のだって、きっとこのわんちゃんのお蔭のはずだから…
「そんな… 私、こんな想い受け取れないよ…
今のは、この子が手伝ってくれたから…」
「ワン!」
「わんちゃん…」
「ワン! ワン!」
「…私が受け取ってもいい、って言ってるの?」
「ワン!!」
「…あははっ。 やっぱり何言ってるかわかんないや」
「クゥーン…」
「でも… 本当に、いいの?」
「ワン!!」
やっぱり優しい子だなぁ…
それに、とっても賢い子です…
「『ありがとう』かぁ…
ず~っと春を伝えてきたけど、そんなこと言われたの初めてです…」
「クゥン…」
「ふふっ… くすぐったいよ。
今度も大丈夫。悲しくて泣いてるわけじゃないから…
こんな私でも、誰かから感謝されるようなことができる… それが、嬉しいだけだから」
さっきはこの子に手伝ってもらったけど、今の気持ちなら私だけでもできそうな気がします。
春を愛し、敬い、迎えたいと思う今なら…
「ねぇ、わんちゃん」
「ワウ?」
「『ありがとう』」
「…ワン!!」
私の想いは伝わったかな?
うん、きっと伝わりましたよね。
この子の返事が何よりの証拠です!
「じゃあ、わんちゃん。私はもう行かないと」
「ワウ?」
「幻想郷に春を伝えるのが私の役目だから。
本当の春を皆さんにお知らせしないといけないから、私は行くね」
「ワン! ワン!」
「…頑張れ、って?」
「ワン!」
「ありがとう… 優しいわんちゃん…
じゃあもう行くから… またね」
「ワン!!」
別れの言葉も済ませて、行こうとしたのですが大事なことを忘れていました。
なので、私はわんちゃんの方を向き直したのです。
「あ、忘れてました!」
「ワウ?」
「私の名前はリリー・ホワイト!
『主に春が来たことを伝える程度の能力』を持っています!」
「ワン! ワワン! ワン!!」
「…やっぱりわかんないですぅ」
「クゥーン…」
「あはは… でも、わんちゃんはわんちゃんですよね。
私にとって、あなたは優しい子。それで十分です」
「ワン!」
「それでは今度こそ…
さようなら! また会えたら一緒に遊びましょう!!」
「ワン!!」
…結構な距離を飛んだでしょうか、もうあの丘は見えません。
短い時間でしたけど、これまでの生涯に匹敵…いえ、上回るほど素敵な時間でした。
結局、わんちゃんの正体はわからなかったですけど、興味なんてありません。
素晴らしい出会いがあった。それでいいのです…
さぁ、私は私の役目を果たすとしましょう!
「幻想郷のみなさん、春ですよー!」
遠く、あの小高い丘から、遠吠えが聞こえたような気がしました…
◆ ◆ ◆
「…ということがあったんですよー」
「………」
「今では春を愛する私の気持ちは最高潮ですので、私が通る所は春を迎えるのですよー」
「…ごめんなさい」
「ど…どうしたんですか?」
「こんな軽い気持ちで聞いていい話じゃなかったわ…
面白半分で訊ねたこと、許してちょうだい…」
「いいんですよー。私はおいしい桜餅をいただきましたから、そのお礼です」
「そう… そう言ってくれると助かるわ」
「ホントにいいんですってばー」
「ところで、その犬にはそれ以降会ってないの?」
「そうなんですよー。
とっても残念ですが、あのわんちゃんはきっとどこかで元気にやってますよ」
「そうね…
それと、それは本当に犬だったの? オオカミとかではなかった?」
「どうでしょう?
動物に詳しいわけじゃないので、もしかしたらそうなのかもしれません。
でも私にとっては、変わらない『優しいわんちゃん』です!」
「…ふふっ、そうね。
変な質問したわね。ごめんなさい」
「いえいえ。
では、そろそろ行きますねー」
「ええ、引きとめたりして悪かったわね」
「いいんですよー。
こちらこそ、お餅ごちそうさまでした」
「それこそ気にしなくていいわよ…
ねぇ、リリー」
「…? 何ですか?」
「今年も春を運んでくれて、ありがとう…」
「…はい! 巫女さんの想い、しっかり受け取りましたよー」
「巫女さんじゃないわ。
私は霊夢よ。覚えてね」
「それは失礼しました。
では、霊夢さん。また次の春にお会いしましょう」
「えぇ… それまで元気でね」
「はい!」
さて、早く皆さんに春を伝えてあげないといけませんね。
あのわんちゃんが教えてくれた、私の大好きな春を…
「みなさーん、春ですよー」
~ ~ ~
「優しい気持ち… 感謝の気持ち…
総じて、純粋な想いが力を呼ぶ…か。
あの子の力、妖精にしてはやけに強いと思っていたけど、そんな経緯があったのね。
あれは間違いなくあの子しか持ち得ない力だわ。
それにしてもオオカミか… あの子を見かねて出てきたのかしら?
どこの誰だかわからないけど… 優しい大神様もいたものね…
それにしても、すごい花びらね… 掃除どうしようかしら?
まぁ、せっかくあの子が持ってきてくれた春だものね、しばらくそのままにして春を満喫しましょう。
…面倒だからじゃないからね?」
(了)
東方も大神も大好物な自分にはたまらない話でした。
けど、私・・・大神は名前を知っているだけなんですよねぇ・・・。(苦笑)
でも、面白かったからそれはそれ…ということで。
ほのぼのしててかわいい作品でした
大風呂敷を広げなくても、こういうクロスオーバーって出来るもんなのですなぁ。
東方は割とクロスがしやすい作品だと思う今日この頃。
ちくしょう再々プレイだ!
大神も東方も名作ですからね…
アマ公様は本当にお優しいお方です。
>6 名前が無い程度の能力さん
問題は日本で発売されるのかどうか…
こればっかりはわからないですからねぇ。
>8 煉獄さん
そのお言葉を頂けるだけで、私は満足でございます…
>9 名前が無い程度の能力さん
リリーとアマ公。この二人のコラボでほのぼのしないわけがない!!
そんな想いで書き綴っていました。
>10 名前が無い程度の能力さん
楽しんで頂けたようで、幸いでございます。
>13 名前が無い程度の能力さん
その通りでございます。
>16 名前が無い程度の能力さん
いつでも一生懸命なイメージがありますよね。
>17 名前が無い程度の能力さん
同じ「和」な雰囲気がありますからね。
あと、筆技の幅が広いというのもあると思います。
>20 名前が無い程度の能力さん
ありがとうございます。
クロスには違いないのですが、友情出演といった雰囲気を目指しました。
>21 名前が無い程度の能力さん
何回やってもラストは泣いてしまう…
私は唯一泣いたゲームが大神です。
何回でもプレイして損はない、そんな作品だと思います…
アマ公、よくやった。GJってやつだ