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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第七話 史上最強の超常現象

2025/07/25 20:44:31
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「ふんふんふふふ、ふふ、ふふふーん」
 鼻歌を歌いながら空を飛ぶ。
「…今夜はお鍋!」
 先ほど里で購入した鶏肉、ネギ、白菜、えのき、その他もろもろ鍋に入れる具材の入った袋を手に提げて。私は居候している博麗神社へと向かっていた。今夜は私と霊夢さん、そして魔理沙さんの三人で食事をするのだ。この暑い季節に鍋かと思うかもしれないが、美味しいものはいつ食べても美味しいものだ。って、私は誰に向かって説明しているのだろう。ともかく、早く博麗神社に帰って魔理沙さんが来る前に鍋の下準備を終わらせなくては。一層の力を込めて、より速く飛ぼうとした、そんな時だった。
「大ちゃんのカタキッー!」
 私の後ろから、氷の礫が飛んできたのは。
「っ!?」
 間一髪で回避する。しかし、手に提げていた袋を守り切ることは出来なかった。氷の礫が直撃し、穴だらけになって、具材が零れ落ちてしまった。
「へぇー、今の一撃を交わすなんて中々やるわね!弱い者いじめしか出来ないと思ってたけど、そうじゃないのか」
「――何者!」
 抜刀しながら、ぎゅんと後ろを向く。そこにいたのは、不敵な笑みを浮かべた少女だった。白いシャツの上に涼やかな青いワンピースを身に纏い、その真ん中に大きな赤いリボンをつけている。癖のある水色の髪に、青いリボン。特徴的なのは、背中に六枚の氷の羽が生えていることだ。その身長の低さと相まって、妖精であることがすぐに分かる。
「…よくも私たちの大事な夕飯を」
「ふん、大ちゃんをいじめた報いよ。いい気味ね!」
「何を訳の分からないことを。だいたいその「大ちゃん」っていうのは誰ですか」
「お前がこの前倒した妖精だよ。守矢の巫女の絵を持っていたはず」
 なるほど。確かにこの前の早苗さんモザイク化事件の時に、その一因となった絵をばらまいていた妖精を倒したっけ。
「…あの時の妖精が「大ちゃん」ですか」
「そういうことよ。そしてあたいは大ちゃんの大親友、チルノ!さあ、弾幕ごっこで勝負だ!」
「――いいでしょう。食べ物の怨みが恐ろしいということを、嫌というほど思い知らせてやる!」
 普段ならこんな喧嘩、適当にあしらうのだが。逆恨みにも等しい理由で私たちの楽しみを奪った奴に優しくするほど、私も甘くない。
「秘術剣『ソーマタージスウィング』!」
 私が五芒星の形に剣を振るうと、その軌跡から弾幕が浮かび上がり、チルノと名乗った妖精目掛けて飛んでいく。早苗さんのスペルカードをヒントにした、私の新たな剣技だ。だが。
「凍符『パーフェクトフリーズ』!」
「…弾幕が、凍った!?」
 チルノが両手をかざすと、私の放った弾幕はカチンと凍り付き、そのまま砕けてしまった。
「くっ…水剣『ポロロッカスウィング』!」
 激流を思わせる弾幕を、チルノに振るう。
「…あたいはその程度じゃ倒せないよ!」
 器用に弾幕を回避するチルノ。
「妖精のくせに、手ごわい…!」
 ことここに至り、私は認識を改めた。目の前の相手はこれまで私が軽くあしらってきたただの妖精ではない。熟練の弾幕プレイヤーだ。
「ふふん。なんてったって、あたいは最強だからな!氷符『アイシクルフォール』!」
 いくつものつららが、私を貫こうと襲い掛かってくる!
「うぐっ…!」
 刀を振るってつららを撃ち落とすも、何個かもらってしまった。
「これでとどめ!氷塊『グレートクラッシャー』!」
 私がひるんだ隙に、チルノは巨大な氷塊を作り上げ、それを私に向かって振り下ろす。
「くっ…舐めるなぁあああ!『半跏趺連斬』!」
 飛ぶ斬撃を間髪入れずに氷塊に向かって放ち続ける。普段は溜めの動作を入れてから撃つのだが、そうもいっていられない。
「うっ、氷が砕ける…!」
 よし、突破口が見えた!
「そこ!不可知剣『鬼女返し』!」
 氷塊の砕けた隙間に見えたチルノを斬りつける。
「うわぁっ!」
 斬撃を喰らって、一歩分後ろに下がるチルノ。
「最強のあたいとここまで張り合うとは…認めてあげるわ!」
「それはどうも」
「楽しくなってきた!ここからが本番だ!」
「楽しくって…カタキ打ちは?」
「あ、そうだった。大ちゃんのカタキー!」
 なんだろう、このその場その場で生きているかんじ。弾幕ごっこの実力に反して、こういうところはそこらの妖精と変わらないというか、輪をかけて酷いというか。ともかく、お互い再び構え直して次のスペルカードを繰り出そうとした、そんな時だった。それが現れたのは。それは、私たちの頭上から現れた。大きな円盤が、空に浮いている。ゆっくりと降りてくるそれにはライトがついていて、こちらを照らしている。ま、間違いない。これは――
「「UFO!?」」
 あっけにとられる私たち。その隙をついて、UFOから鋭いビームが放たれる。
「あ、あばばばばばば!?」
 ビームがチルノに直撃する。しばらくチルノにビームを当て続けていたUFOだったが、突然ふっとビームの射出をやめ、どこかに飛び去ってしまった。何が起こったか分からず、茫然と立ち尽くす(浮いてるけど)私。
「はぁ…はぁ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「…これくらい、何ともない!あのUFOは後でとっちめるとして、今はこの弾幕ごっこにけりをつける。雪符『ダイアモンドブリザード』!」
 高らかにスペルカードを宣言するチルノ。しかし。
「…あ、あれ。弾幕が撃てない。なんか、ちからがぬける…」
 あれ、そういえば何か彼女の姿に違和感があるような。
「…!?あたいの羽が!?」
 あ、言われてみれば…。
「「二枚になってる――!?」」
 出会った時は六枚あったはずだが。
「おーい、遅いぞかさね。何してるんだって…チルノ?」

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