注意、この作品は以前投稿した『一人の地霊殿』『作り物の方が怖い時もあると思います』
と同様に『せっかくの二次創作だし、一人くらいこんなさとりがいてもいいのでは?』
をコンセプトにしています。
ですのでキャラ崩壊などが嫌いな方、苦手な方はご注意ください。
問題なければこのままどぞ↓へ
―想起・テリブルスーヴニール
スペル発動と共に目標を狙い光が霊夢に集まる。
それを慌てる事も焦る事もなく紙一重で難なく回避する。
その霊夢の様子にさとりはニヤリと不敵に笑う。
「ふふ、流石ですね、ですがこれならどうですか!?」
―想起・戸隠山投げ
「さぁ、ここからが本番です、己の恐怖の記憶で眠りにつくがいい!!」
叫び勢いよくブンブンと回すさとりの右腕に様々な物が集まり塊となっていく。
コレはパートナーである萃香の技だ。
密の力を利用して近場の物を集めてソレを投擲武器とする。
シンプルではあるが弾は無限に用意できるし、集める物によっては途中でバラバラになり
広範囲攻撃にもなる厄介な技だ。
すぐにあの塊が飛んでくる。
「くっ!?」
霊夢は思わず身構える、が少し様子がおかしい。
物が集まっていくにつれてさとりの腕の回転速度と高度がだんだん落ちていく。
終いには腕を完全に下にダランと垂らした状態でさとりはゆっくりと地面に降りてしまった。
「……?」
暫く様子を見ていたが、いつまで待っても彼女から攻撃が来る気配が感じられない。
油断させるために行っているのだろうか?
それとも何か予期せぬ事態でも起こっているのだろうか?
どちらにせよこのままではラチが開かないので霊夢も高度を下げ、罠であっても
すぐに霊撃で対処出来る様に注意してさとりに近づく。
「くっ、ふ、ん~!!」
近づいてみて解ったがさとりは顔を真っ赤にして声を出して気張っていた。
何となく予想はつくのだが一応本人の口から確認をとってみる事にした。
「何やってんのよ、もしかして便秘?」
「べ!?ち、違いますよ!」
霊夢の言葉に思わず大声で反論するさとり、そんな事は百も承知な霊夢はその言葉をサラッと流した。
「解ってるわよ、予想できるんだけど一応聞いとくわ、どうしたの?」
「え?あ、それは、その……、……くて」
語尾を弱めたさとりの声は小さく、肝心の部分が聞き取れなかった。
「え?何?」
解っているくせに本人の口から確認をとらないと納得しない霊夢さんは本当にドSです。
「で、ですからその、…思ったよりも重くて動かなくて……」
「ぷっ」
「~~っ!!」
想像通りのさとりの言葉に霊夢は思わず噴出してしまった。
そしてさとりも想像通りの霊夢の反応に思わず顔を背ける。
霊夢からはさとりがどんな顔をしているのか確認はできなかったが、僅かに見える耳が真っ赤なので
羞恥で顔が真っ赤なのだろうとは解った。
さとりはそのまま『う~う~』唸りながらどうにか集まった物を持ち上げようとしている。
その光景を見て霊夢は思った。
その時の霊夢の目はとても優しかった。
「……」
「!、な、何が微笑ましいんですか!?」
「いやだってさ、アンタ今相当可愛いわよ、ぷっ」
霊夢の馬鹿にした態度にさとりはさらに顔を羞恥に染める。
「く~っ、馬鹿にして!ち、ちょっと待っていなさい!!今に貴女は貴女のトラウマに
屈する事でしょう!!」
さとりの心の底からの怒鳴り声、しかし巫女は揺るがない。
「へぇー?ちなみにあと十秒」
「そ、それだけあれば充分です!」
さとりは『それだけ』と言ったが実際に時間は『それしか』ないのだ、どうにか出来る訳がない。
しかし、『やれる物ならやってみろ』という挑発的な巫女の思考にさとりはむきになっていた。
大概こういうシチューションでむきになると碌な事がないのだが、頭に血が上っていてさとりは
気が付いていない。
そもそもこういった事態の時は冷静に、落ち着いて時間がかかってもいいからゆっくりと対処するのが
一番いい結果を生むものだ。
焦れば焦るほど泥沼に嵌るだけである。
しかし、ソレに気付けないさとりは再び自分の腕力だけで集めた塊を持ち上げようと試みる。
「く、ん~っ!!」
「五秒」
「トォー!!」
「四」
「ウリャー!!」
「三」
「う、ウオオオオオ!!」
「二」
「く、うぅ」
「一」
「う~っ」
「零」
「く~~っ!!」
無理だった。やっぱり残り十秒はきつかった。
時間があればできたんだ大丈夫だったんだ、ごめん嘘、本当は途中で諦めていました。
「つ、次です!!次の貴女のトラウマで貴女は今度こそ恐怖で眠りにつくのです!!」
己の失態を払拭する様に、何事もなかったかの様にさとりは次の霊夢のトラウマを想起する。
―想起・百万鬼夜行
「おっと」
発動された次のスペル(トラウマ)に流石に馬鹿にしていた霊夢もさとりから距離をとる。
今度は疎を使った弾幕だ今度のは力が必要ないから注意しなければならない。
バックステップでさとりから距離をとって符を構える霊夢
しかし、さとりから攻撃が来る事はなかった。
それどころか雨の日に捨てられている子犬の様な顔をしてこっちを見ている。
もはや、嫌な予感しかしない。
「……」
霊夢は再び(今回は警戒心など微塵も持たず)さとりの傍に行く。
羞恥に顔を染めプルプル震えながら目に涙を溜めながらさとりはゆっくりと口を開いた。
「どうしょう……、手抜けなくなっちゃった……」
よく見ると集められた塊にさとりの手首は埋まっていた。
どうやら集め方を失敗した様だ。
「……」
霊夢にその事をカミングアウトした時のさとりには地霊殿の主らしさも『怨霊も恐れ怯える』という二つ名も
まるで感じられなかった。
――
同様の理由で最後の『濛々迷霧』も発動できずに戦闘は終った。
霊夢により塊から開放されたさとりはそのまま部屋の隅に行き体育座りをした。
いくら戦闘が苦手とはいえ、こんなのはあんまりだ、情けなすぎる。
そんなさとりに気を使って霊夢は一言彼女に残していった。
「あのさ、さとりその、ドンマイ」
そんな嘘偽りのない心からの彼女の言葉が痛かった。
いっそ笑い者にでもしてくれれば気が楽だった。
その日さとりは枕を涙で濡らした。
でも個人的に冒頭の「前フリ」は蛇足だったかな~、と。
できればメタ系のネタは後書きにしてもらえると嬉しいです。
(冒頭は「キャラ崩壊注意」だけでも大丈夫かと)
いいぞもっとやれ
美鈴とかの技を想起したら次の日、筋肉痛で倒れてそうww