Coolier - 新生・東方創想話

月の勇者

2009/11/07 14:29:21
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むかしむかし、月に一匹のウサギさんがいました。
彼女は月の兵士で、体は小さくもその中に溢れる勇気を持った勇ましいウサギさんでした。

ウサギさんは月の姫様二人にとても懐いていました。
彼女がまだ兵士ではなかった頃、仕事に飽きての余り地上に逃げて、また返ってきた事を許してくれたからです。
ウサギさんはいつか必ずその恩を返さなければならない、と思っていました。

ある日、ウサギさんは二人の姫様の呼びを受けました。
姉の豊姫様がその美しい顔に憂いを湛えて言いました。

「もうすぐ、地上の妖怪たちがまた攻めて来ます」

ウサギさんはすごく驚きました。地上の恐ろしい妖怪たちが二度も敗れたにも関わらず、またしても月を襲うという事です。
妹の依姫様が真剣な顔で言いました。

「貴方に頼みがあるの。29名の仲間と一緒に、拠点である月の塔を守ってほしい」
「今度の敵は勢力がとても強くて、以前とは勝手がちがいます」
「貴方たちが時間を稼いでくれてる隙に、都で準備を万全にしてから立ち向かうつもりよ」

ウサギさんはちょっとだけ怖くなりました。地上の妖怪は本当に強くて怖いのです。
でも、姫様たちに着た恩を思い出したらすぐに勇気が出ました。

「任せてください豊姫様、依姫様。仰せのままに、月の塔は私たちが必ず守って見せます」

「ありがとう。ただの一日、24時間だけ守り抜いたらその後は戻ってくれてもいい」

豊姫様が悲しい笑顔でそう言いました。そして、二人の姫様はウサギさんの頭をなでなでしてくれました。

こうやって姫様達から指示を受けたウサギさんが月の塔に着きました。
でもおかしいです。自分を迎えてくれるはずの仲間たちの姿がどこにも見当たりません。
悲しくも、29名の仲間たちは怖くて怖くて逃げてしまったのです。
塔の中には29挺の鉄砲だけが捨てられてまま残っていました。

ウサギさんはすっごく心配になりました。自分は元々餅つきの玉兎に過ぎません。
何の力も無い自分は、地上の妖怪たちが触るだけでも死んでしまうかも知れないのです。
たった一人で24時間も塔を守ることは不可能と見えました。

でもウサギさんは諦めませんでした。

「私まで逃げたら、月のみんなが危ない」

ウサギさんはまず椅子とか机とかの物を運んで、塔の門の裏側に固く積み上げました。
そして自分の物も含む30挺の鉄砲を取り揃えて、弾と火薬と一緒にあっちこっちの窓に方に分けて仕掛けました。
そうやって準備を終えてから、気を引き締めて妖怪たちが来るのを待ちました。

ああ、遂に来ました。地上の恐ろしいスキマ妖怪が、
自分の部下だけでなく数多いの強い妖怪たちを甘い言葉でそそのかして一緒に連れてきたのです。

妖怪たちは月の塔に人影が無いのを見ていい気になりました。そして拠点を占領すべく一気に飛びかかりました。

「ヒャッハー!空き巣だぁ!」

でもウサギさんは姿を隠していて、射程内に敵が入ると同時に素早く狙いを定めて鉄砲を撃ちました。
二人の姫様の卑しい写真目当てで月まで来た天狗のブンヤさんが一番早くピチュりました。
その次に恐ろしい毒を扱う人形の妖怪さんがピチュりました。

いきなり反撃を受けた妖怪たちはたじろぎました。
その隙にウサギさんはあっちこっちの窓へ移動しながら続けて鉄砲を撃ちました。
赤い目が煙でもっと赤くなるのも無視して、撃って撃って撃ちまくりました。
結局妖怪たちは耐えられず後退してしまいました。

スキマ妖怪の右腕のキツネさんが塔に近づいて叫びました。

「抵抗は無駄だ!命が惜しかったらすぐに降参しろ」

「そうは行きません!ここにいるのは月の最強部隊です。貴方たちこそ今の内に地上に帰りなさい」

ウサギさんはこうやってハッタリをかけました。
後ろで報告を受けたスキマ妖怪は冷たい笑顔でこう言いました。

「なら何も占領する必要はありません。歯向かう者は皆殺しよ」
「妖精の中で一番強い、無敵の最強妖精を出しなさい」

氷の力を持った妖精さんが塔に向かって飛んできました。

「こ~んな塔、中の奴らと一緒にカチンコチンよ!」

そう言って、強力な瞬間冷凍ビームを発射して月の塔に当てました。
なんと、塔がみるみる氷付けになって行きます!

空になった鉄砲に弾を込めていたウサギさんは、余りにも寒くて気が遠くなりました。
でも力を絞り出して叫びました。

「妖精さん、妖精さん。この塔はその程度では崩れませんよ」

「え?じゃあどうすればいいの?」

「あなたの10倍くらい大きい氷をぶつければ崩れます」

「それならできる!あたい最強だし」

氷の妖精さんは得意になって、頭の上で大きい氷の塊を溜め始めました。
ウサギさんはそれを見て氷が妖精さんの⑨倍になる瞬間、相手の片手を狙って鉄砲を撃ちました。

「あ」

氷塊が滑って妖精さんの頭の上に落ちました。
ピチューン!妖精さんは自分の氷と一緒に地面に落ちて潰れてしまいました。

この様子を見ていたキツネさんはとんとん地団太を踏みました。
でも仕方なく、スキマ妖怪に戻って報告をしました。

スキマ妖怪は残忍な笑顔でこう言いました。

「山の上の毒々しい巫女を出しなさい」

ようかいをいっぱいころしてもへいきな、悪い巫女さんが威張って出てきました。

「月でも常識に囚われてはいけないのですよ!だからこうしちゃいます」

なんと、巫女さんが奇跡で大きな津波を呼びました!
巨大な波が塔を力強く殴った衝撃でウサギさんは転んでしまいました。このままでは直ぐにでも崩れてしまいます。
でもウサギさんは慌てなくて巫女さんに問いかけました。

「巫女さん、巫女さん。貴方の好きな食べ物は何ですか?」

「え?私は甘いものなら何でもいいですけど…」

それを聞いたウサギさんは、鉄砲においしい飴玉をいっぱい込めて空中に撃ちました。

「わあ、空からスイーツが降って来ます!月って凄い所なんですね」

巫女さんは津波を呼ぶのもやめて、飴玉を拾い集め始めました。
その隙にウサギさんが狙いをすまして鉄砲を撃ちました。
ピチューン!見事なヘッドショットだと感心はするがどこもおかしくはないです。
結局、悪い巫女さんもPとか点が書かれた札だけ残してピチュってしまいました。

キツネさんは気がくじれて主のスキマ妖怪の所に戻りました。
今度はスキマ妖怪は笑顔の中にたぎる爆凶星を隠して言いました。

「地底に太陽さえ作り出すことができる地獄カラスを出しなさい」

地の底から雇われてきたカラスさんが塔の前方に飛んできました。
そのカラスさんは核融合という凄まじい力を持っているのです。

「助かりたかったらカウントゼロの前にリフ○クでも掛ける事ね!」

なんと、カラスさんが右手の制御棒に凄く大きいエネルギーを溜め始めました。
あんな攻撃を受けたら月の塔はおろか、月の一部が消し飛んでしまいます。
鉄砲を撃っても、6面ボスなので無駄に硬くてピクリともしません。

でも賢いウサギさんはまた知恵を働かせました。
カラスさんがエネルギーを溜めるのを待って、今だというタイミングで叫びました。

「カラスさん!後ろにバックアタックを狙う悪者がいます!」

「うにゅっ、マジで!?」

カラスさんは制御棒と一緒に体をぐるっと後ろへ向けました。
その瞬間、制御棒からエネルギーが発射されて多いの妖怪たちが核の炎に包まれてしまいました。

三度も失敗したキツネさんは気が抜けてしまいました。
もう夜が来て、元から暗い月の空が真っ黒になっています。
キツネさんはまた塔に近づいて、あまり期待を持たないまま言いました。

「もう降参しろ!我が主の手にかかればこんな塔など一瞬で終わるのだぞ」

ウサギさんは考えました。もう塔を守って18時間になります。
あと6時間さえ稼げば姫様たちとの約束は果たされるのです。なので身を隠したまま叫びました。

「分かりました!今日はもう攻撃をやめて、明朝私たちが武器を持ったまま味方の所へ帰るのを見逃してくれるのなら」
「6時間後にこの塔を明け渡します!」

思いもかけなかった答えを得たキツネさんは喜びました。
それで妖怪たちを引かせて朝が来るのを待ちました。

「月の最強部隊だって」

「いったいどんな奴らなのかしら」

「もしかしたら神様部隊なのかもしれないわ」

やがて朝になりました。
地上の妖怪たちはもう塔の前で待っていて、塔の扉が開けるのを見て固唾をのみました。

塔の中から一人の小さなウサギさんが出てきました。
全身に鉄砲を重そうに担いて、引いている荷車にも鉄砲が積まされています。

で、それだけでした。ウサギさんの以外には誰も塔から出てこないのです。
キツネさんが驚いて聞きました。

「他の兵士たちはどこにいる?」

「この塔を守っていたのは私一人だったんです!」

妖怪たちはみんな呆れて言葉を失いました。

この事を知ったスキマ妖怪は遂に顔をしかめながら怒り出しました。
彼女は妖怪たちに直ちに月の都へ進撃するように命令して、自身は別れて行動する事にしました。

スキマ妖怪は月の都で、二人の姫様が以前よりも遥かに大きな力を持っているのを見ました。
妖怪がまるでゴミのようです。またもや自身の計画が失敗したのを知って、スキマ妖怪はもっともっと悔しがりました。

そして彼女は、一番前に立って勇敢に戦っている小さなウサギさんの姿を見つけ出しました。
見た事がある顔です。前にも月の桃食いと一緒に邪魔してきたムカつく子ウサギです。

不幸にも、スキマ妖怪は幻想郷の仲間以外の者にはとても無慈悲な性格でした。

「ギャフン、と言ったのは今まで互いに一度づつ。今度は痛み分けでいきましょう」

ウサギさんは雨のように降り注ぐ弾幕を掻き分けて進んでいました。
後ろには頼もしい豊姫様と依姫様がいます。自分はただ前を向いているだけでいいのです。

その時、何も知らずひたすらに戦っていたウサギさんの後ろに小さなスキマが開けました。
そしてそこから鋭い端の日傘が恐ろしい速さで飛び出てきました。

ドスッ。かわいそうなかわいそうなウサギさんは胸を貫かれてしまいました。
あかいちがどくどくでます。ざんねん!うさぎさんのたたかいはこれでおわってしまったのです。

ウサギさんは自分がもはや助からないと言う事を知りました。
それでも決して振り向かわず、倒れながら手に持っていた鉄砲を思い切り前へ投げました。
そしてそのまま動かなくなってしまいました。

これを見た二人の姫様とウサギ達の目に涙が溜まりました。
そしてもっと勇気を出して妖怪たちと戦い始めました。
月の塔から逃げ出した29名の仲間たちまで、持った力の10倍、いや20倍で戦いました。

そうやってようやく、また妖怪どもを月から追い出す事に成功したのです。

今は月の都の中心には、前へ鉄砲を投げる小さなウサギさんの彫像が立っています。
月の人たちはどんなに辛い事があっても、

「見よ、あの小さなレイセンさえも」

と、言いながら力を合わせて乗り越えるようになりました。

小さなウサギさんの勇気は、今日も月と一緒にほのかに輝いています。
な ぜ こ ろ し た し

…実はこれ、フランスとイタリアの勇敢な兵士さんの物語を混ぜたパロディーなんです。原作に忠(ry
D・D
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コメント



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9.90名前が無い程度の能力削除
うにゅほの素直さに癒された気がしたが気のせいじゃなかったぜ!
というかブン屋、お前は何しに来たんだww
11.100名前が無い程度の能力削除
思わずう~ん、と唸らされる、深い、不思議なお話だった。
淡々とした文がうまい雰囲気をつくっているが、紫の行動だけがちょっと引っかかったかな。
でも、個人的にはかなり好き。
14.100名前が無い程度の能力削除
レ、レイセーーーン!惜しいウサギを無くした…
パロディー元は記憶の片隅に覚えているけど思い出せんw