『羽の付け根を軽く引っ掻くように触ってください…』
『声我慢しちゃ嫌です。パチュリー様の可愛い声聞きたいです』
『このまま溶け合いたい…心からそう思います』
「またこの夢なの…」
頭が半分麻痺したような感じを覚えながらベッドから身を起こす。
アリスから「英気を養うには睡眠から」と聞いてから眠るようにしてみたのだけれど…
毎回こんな夢見せられるんじゃ少し考え物ね。
それもこれも全部あの子のせいだ。
「パチュリー様お早うございます!コーヒーお持ちしましょうか!?」
寝室のドアを勢いよく開けながら元凶である小悪魔が挨拶してきた。
この子が「私の能力があればすぐに寝付けますよ」なんて言うから任せてみたら…
毎回眠るたびに淫夢を見せてくるなんて。この子がサキュバスだって事すっかり忘れてた私も悪いのだけれど。
まぁ、能力を使っているおかげで私が寝ているか起きているかがすぐに分かるらしい。
起きるとすぐに色々用意してくれるのだけは便利ね。
「コーヒーは遠慮しておくわ。貴女の能力のおかげで今日もよく眠れたわよ」
「お役に立てて光栄ですー」
軽く皮肉を言ってみても全然通じてない。悪気がない分注意しづらい。
今更「貴女の見せる夢は刺激が強い」とは言い出しにくいし、それは魔女である私の威厳にも係わる。一般的に魔女はサバトを行うと言われているようだし、使い魔の見せる夢ぐらい耐えて見せるわ。
「小悪魔、今日は特に機嫌が良いわね。何かあったの?」
「はい!新しい官能小説のネタ思いついたんです!汁ダックダクで百合ん百合んな女子高エロファンタジーです!」
朝から爽やかにろくでもない事口走ってくれるわね、この子。
前からコソコソ書斎の隅で何か書いてるとは気付いていたけど、私が寝付けるように頼んでから妙にカミングアウトしてくる。自分の種族に誇りを持つ事自体は悪くないのだけれどね。
「分かったわ。小説執筆も良いけど仕事の差し支えにならないようにしなさいね」
「ありがとうございます。では失礼いたします」
小悪魔が頭の羽をせわしなく動かしながら寝室から出て行く。
さて私も昨日の研究を続きから始めないとね。
「『詠唱の際に胸腔内で起こる振動を魔術的儀式として活用する』ね…興味深いわ」
アリスの言う通り睡眠をとる様になって確かに研究効率が上がった様に感じる。
研究時間そのものは短くなってるはずなのだけれど、量より質と言う事かしら。
この本に書かれてる事も賢者の石の機能として付けると面白いかもしれない。
術式をメモしながら機嫌良く研究を進めていると控えめにドアがノックする音が聞こえた。
「パチュリー様、申し訳ありません…ご相談したい事が…」
紙束を脇に抱えた小悪魔が入ってきた。
これはいつものアレね。
「いつも言ってるでしょ?濡れ場のシーンは道具使わない方が雰囲気出て好きだって」
「いえ、違います。またアリスさんと魔理沙さんが図書館に勝手に侵入してまして」
「あら」
さっきのは少し恥ずかしかったわね。誤魔化すためにこちらから話を促す。
「一応聞くけどネズミ捕りの二人は?」
「はい、美鈴門番長は二人が来たことを咲夜メイド長に報告。そしてメイド長自らの案内で二人はテラスに招かれました。そこにお嬢様も加わり4人でお茶会、その後こちらに来たみたいです」
頭が痛くなるわね。レミィはアリスに妙に甘いし、咲夜は魔理沙に甘い。こっちから侵入させないように頼んでも聞きはしない。
美鈴は咲夜の命令なら絶対に守るし、咲夜はレミィの言う事なら何でも聞くし…
優秀な人材がいても私が直接命令出来ないのは歯がゆいわね。こんな時は自分が居候の立場って自覚してしまうわ。
私の直属の部下と言えば、絵本を読むために図書館勤務希望した妖精メイドの子たちと小悪魔だけ。
「そう!親友を好きになった事を先生に相談する主人公!その女教師は健気な主人公に惹かれていくんです!百合百合な三角関係の始まりです!」
その小悪魔は私に報告し終わってから私の机の端に勝手に噛り付いて官能小説の執筆を始めている。
この子の取り得は官能小説の執筆と淫夢を見せる能力。侵入者の撃退には向いてない。
はぁ…眠れば良い考えでも浮かぶかしら。
眠れば…その時ふと閃いた。
「ねぇ小悪魔」
「はい!?道具は無しで書いてます!」
「図書館の客室のベッドっていつでも使える状態よね?」
「はい。そうですが」
「じゃあアリスと魔理沙の二人に今日は一日図書館を使って良いと言って来てくれる?客室のベッドも自由に使って良いってね。もちろんその際は『貴女の能力を使って』眠らせてあげて」
小悪魔の顔が笑顔で輝く。
「その命令が下される日を待っていました!早速言って来ます!」
先刻より興奮した状態で小悪魔が飛び出す。
小悪魔も何だかんだで悪魔。こういった悪戯には目が無い。
今から明日の朝が楽しみね。あの初心な二人が小悪魔の見せる淫夢で慌てふためく姿はきっと見物だわ。
いつも勝手に蔵書を読まれて持っていかれるんだもの。このぐらい仕返しは許されるわよね。
次の日二人が起きてくるのを図書館内の客室近くで待つ。小悪魔も一緒だ。
これほど時間が経つのを遅く感じるなんて。一日千秋という日本語が今の私にピッタリ合う。
「小悪魔、あの二人はまだ起きないかしら?」
「眠りが浅くなって来たのでそろそろ起きると思います…あっ今起きました」
その言葉を聞いてから風に乗る。
何気なく蔵書を探す振りをしながら二人を観察するためだ。
あの二人は夢の中で散々自分たちに淫らな事をした小悪魔の顔を見てどんな反応をするのかしら?
いけない、いけない。想像しただけで顔がにやけてしまう。
そして客室のドアが開く。
「おぉ、お早うさん。小悪魔。パチュリーもお早う」
「待ってよ魔理沙…あら二人とも部屋の前でどうしたの?」
「お早うございます。咲夜メイド長が朝食を作られているそうですよ」
「そっか。待たせたらまずいな。行こうかアリス」
「えぇ」
あ、あれ?何よこの淡白な会話。小悪魔を見ても特に面白い反応が無い?
それにあの二人ってあんなに親密な仲だったかしら?
図書館から立ち去る二人はお互いに軽いキスをしてじゃれ合っている。
「上手く行きましたね!パチュリー様!」
二人が去り、小悪魔がニコニコ屈託の無い笑顔で話しかけてくる。
「私もずっとあの二人が中々進展しないのが不満だったんですよ。でも今回はパチュリー様の許可も頂きましたし頑張っちゃいました。二人ともお互い素直になれば早いものですね」
進展?全然状況が飲み込めない。小悪魔は淫夢を見せたんじゃないの?一体この子は何を二人に見せたっていうの?淫夢では無いとでも言うの?
「小悪魔、一つ聞きたいんだけど…貴女は淫魔なのよね?」
「?、えぇ、そうですね。何故か良く私の種族サキュバスは淫魔って呼ばれますねー。淫らな夢を見せるからだとか何とか。サキュバスは淫らな夢を見せるんじゃなくて『その人の願望を夢に見せる』だけなのに失礼な話ですよね」
~小悪魔の日記~
『あの一件以来パチュリー様の様子がおかしいです。私を見ると顔を真っ赤にして本で隠したり、私が手に触ると色っぽい声を出したり。
…これは実に順調と見て良いと思います。世事に疎いパチュリー様に与える情報を意図的に操作した甲斐がありました。
アリスさんと魔理沙さんが交際を始めた情報の隠蔽含め、頑張りましたもん。なるべくパチュリー様を研究に没頭させ渉外は常に私が担当。おかげでこんなに上手くいきました。
私の能力は淫夢を見せる能力。あの二人には起きてすぐにいちゃつかせる為に、とびきりの夢を見せました。お互いの痴態を別々に見せるのは苦労しましたけど。
パチュリー様は私が見せた夢のおかげで二人が交際を始めたと勘違い。私が見せた夢もご自分の願望だと勘違い。
素晴らしいです。パチュリー様の心は今、私の事で一杯のはず。好きな人が自分の事だけを考えてくれる幸せ。
私だけの可愛い宝石、私だけの可愛いパチュリー様』
彼女の書いた「汁ダックダクで百合ん百合んな小説」も興味がありますが……
どんな凄い内容になっているのか…。
小悪魔を見て顔を赤くするパチュリーが可愛いですねぇ。
面白かったですよ。
ナクト先生ぇ……覚醒パッチュさんがぁ……見たいよぉ……っ!(切なげに)
こあさんに幸あらんことを。
○ 英気を養うには睡眠から
この場合は、こっちの方が正しい気がする。
こぁが可愛いな。
それはそうと、暖かくなってきたとはいえ全裸待機はツライいんだ。
続きは書いてもらえないのかね?
↑ナクト自身の言葉かも・・・(笑)
サッキュバスの淫夢も興味あるけど、バチュリーも対応が大人な感じで良いです!
マリアリは自重すべきw
流れとしては上手く考えられてると思うんだけど最後の日記は蛇足かな?
他のキャラの会話で判明するとか間接的な表現にした方が良かったかも。
それか小悪魔の独白にするとか。
日記だとすると色々とおかしな所がでてくるから。
(「日記」なのに過去の過程をまるで初めてであるかのように書いている、
魔女相手で発見されるリスクも高いのに文章として残す、他)
と言うかこの魔女と小悪魔は一体ナニを書いて(re
幾度と無くコメント下さりありがとうございます!
小悪魔の想像を超える程パチュリーはムッツリだったのです…
>>20様
小「淫魔ですから!」
>>26様
ネチョって難しいですよね。なかなかハードルが高いです。
>>32様
感謝の極みです。
>>34様
小悪魔はSSそれぞれで性格改変がしやすく動かしやすい子ですね。
>>謳魚様
彼女は毎晩鳴かされながらもきっと幸せな事でしょう。
>>41様
覚醒したパチュリーの絶技の前にそんな悲鳴をあげそうです。
>>42様
いつか夜伽にも投稿したいですね。
男無し・生えない・道具無しになりますが。
>>43様
続きは貴方の心の中に…
書いていただいても無問題です。
>>カリモ警部様
3~5月は繁忙期で大変でした…
まぁ来月は来月で試験があるんですけど…
>>49様
言われてやっと不自然さに気付きました。
…確かに変ですね。どうしよう。
ご指摘ありがとうございます!
>>50様
ありがとうございます。
最初は小悪魔の台詞で終わる作品だったのですが、
「パチュリーが使い魔に良い様にされるのもなぁ」と思い練り直した作品です。
ただ日記の所が推敲不足で不自然ですが…
>>51様
いつか投稿したいですね。
森奈津子先生のような明るい百合エロをマスターしたいです。
>>52様
小悪魔もパチュリーもお互いにドスケベです。
>>GUNモドキ様
パチュリーはアーカムのミスカトニック大学にあるような本ですね。
小悪魔は鳳翔伶先生のような純愛百合エロを。
>>59様
精進していつか向こうに行きたいですね。
個人的に女性同士のネチョは「癒し」だと思っているので読む人が癒されるようなお話を…
>>64様
その台詞を見ると某百合4コマを思い出します。
あの台詞にも元ネタがあるらしいのですがサッパリ知りません。
このこあはまさに小悪魔。
サッキュバスってのもいいですね!