Coolier - 新生・東方創想話

バレンタインデー

2016/02/14 00:05:33
最終更新
サイズ
6.66KB
ページ数
1
閲覧数
2466
評価数
9/19
POINT
1260
Rate
12.85

分類タグ

 ずずず

 霊夢はお茶を啜っていた。
 ほうと一息吐くと、湯飲みを置き、煎餅を掴む。そしてそれを囓る。

 はりっ

 茶請けの煎餅はやや湿気っている。が、悪くない。

「……もっと早く食べなきゃ駄目ね」

 そう云いながら、幸せそうに食べ進める。
 一枚を食べ終え、お茶で口を潤ませてから、二枚目に手を伸ばす。
 その時、玄関をノックする音が聞こえた。

「お邪魔します。霊夢さん、居ますか?」

 戸が開く音がして、次いで早苗の声が響いた。
 霊夢はまた湿気った煎餅を囓る。咀嚼中なので、返事できない。
 廊下を歩く音が響いて、居間に早苗が姿を見せる。

「あ、居た」

 はりっ

 早苗の言葉に、気のない煎餅の破砕音で応じる。

「……それ返事じゃないですよね……」

 返事のつもりだった霊夢はふいっと視線を逸らした。

「まぁいいです。ところで霊夢さん。バレンタインデーってご存じですか?」
「はひ? はれんはひんへー?」
「……そのお煎餅を咀嚼するまで待ちます」

 早苗は呆れながら、霊夢のすぐ隣に腰を下ろした。
 早苗に呆れられながら、霊夢は煎餅を食んだ。そして嚥下した。
 お茶を飲む。そして一息。

「はぁ……で、バレンタインデーだっけ?」
「はい。ご存じですか?」

 霊夢がようやく話せるようになったので、早苗がにじり寄った。

「近い近い。聞いたことあるけど、詳しくないわ。行事でしょう? なんか、食べ物をあげる」
「すごく認識が雑なのは判ったので少し改めていいですか?」
「いいわよ」

 霊夢の言葉に、早苗はこほんと咳払いをする。

「まぁ、といってもそんな大げさなものじゃないんですが、あれです。基本は友達とか、あと、好きな男性とかに、女性がチョコレートをあげたりするイベントなんですよ」

 霊夢の認識を雑と云った割に雑な説明である。

「あ、そうなの? なんか宗教的なイベントだって聞いたけど」
「大本はそうだったらしいですが、まぁ、お祭りですから」
「ふぅん」

 お祭り。そう云われれば、元々なんだったかなんてどうでも良かった。騒げればいいのだ。楽しめればいいのだ。巫女ですらそう云い切る世界なのだ。たぶん聖は頭を抱えている。
 早苗の話を聞き、霊夢はうんうんと頷き、感心をした。

「でも、チョコレート作るなんて随分大変な行事なのね」

 霊夢の感想に、早苗は首を傾げる。

「あれ、そうです? チョコってチョコを溶かして固めるだけですよね?」

 早苗の言葉に、今度は霊夢が首を傾げた。

「ん? チョコを溶かして固める? どゆこと?」

 その訝しげな顔を見て、早苗は悟る。幻想郷に既製品のチョコレートはないのだと。

「え、あ、そうでした。すみません、外の世界の話です」
「ふぅん……チョコを溶かして固める……なんか簡単なものがあるのかしら」

 霊夢はぶつぶつと呟きだす。
 そんな霊夢に、ふと早苗は気付く。売ってないけど、霊夢はチョコレートが作れるのだと。

「え。チョコって作れるんですか!?」
「はっ!? え、何、あんた今チョコレート簡単に作れるって云ったじゃない!?」
「あぁ、それはあの、完成したチョコがあっての話で、材料からっていうのは知らないんです」
「は? 完成したチョコレートがあって? もうそれって作る必要ないじゃない?」
「うっ。いえ、それは一旦置いておいて……で、チョコって作れるんですか?」

 霊夢は興味津々そうだったが、聞いたことあるだけで湯煎とかそういうことをしたことのない早苗には荷が重かったので、その話はなかったことにする。

「材料さえあればね。でも、今日中に誰かに送ろうって考えてるなら、ちょっと厳しいわ。材料揃えることができても、結構時間が掛かるから」
「へぇ……何がいるんです?」
「必要最低限で良ければ、カカオ豆とカカオバターと砂糖と粉ミルクね」

 想像よりずっと少ない材料に早苗がやや驚く。

「簡単に言えば、カカオ豆を煎って、皮剥いて、砕いて、すりつぶして、他の材料加えてさらにすりつぶして、温度管理しながら練り続ける。それが終わったら地道に温度調整して、型取って、冷やして、完成」

 霊夢の話を聞き終えてから、早苗はすっと手を上げた。

「意外と手順少なく聞こえたんですが、それってどのくらい時間が掛かるんですか?」
「……手間暇掛けたいかどうかにもよるけど、例えば練るのには1~2日は掛けたいわね」
「え、そんなに!?」

 驚きのあまり、早苗の顔が霊夢の顔に急接近した。

「近い近い! 可能なら2週間とか掛けてもいいくらいよ」
「長っ!」

 早苗は自分が外の世界であっという間に食べてしまったチョコレートの手間に戦慄した。

「短縮しちゃって1時間とかでもいいんだけど、そりゃやっぱり味落ちると思うわよ」
「うぐ……それじゃあ主に掛かるのは練る時間なんですか?」
「あとは冷やす時間かなぁ。出来るなら1週間くらい寝かせておくと、味が馴染むからいいわね。他の手順はそんなに掛からないから、この2つかな?」
「……2週間とか掛かるんだ……」
「私の知ってる手順ならね。っても、そんなに作ったことないわよ、面倒だし」

 口ぶりから察するに、それでも結構実践経験ありそうだった。

「じゃあ、今日中っていうのは無理ですね。本当に」
「何、チョコレート作りに来たの?」
「あ、いえ……まぁ、作れたらいいかな、くらいな気持ちで」

 その言葉に、霊夢の耳がぴくりと動いた。

「何? 好きな人でも出来たの?」

 そして、にやりと笑った。
 早苗は慌てて、手を振りそれを否定する。

「へっ!? ち、違いますよ! その、お世話になってるので、八坂様や守矢様に差し上げようかな、なんて……」
「あ、そう。なんだ」

 霊夢はつまらなそうに口を尖らせて見せた。

「それって、チョコレートじゃなきゃ駄目なの?」
「え? いえ、チョコに限るわけでもないらしいです。チョコに限ってるのは日本独特とか、なんかそんなの見た気がするので」
「ふぅん。材料……」

 霊夢は煎餅を囓った。茶を飲んだ。
 そして思う。紅茶に合う甘い物が欲しいなと。

「お菓子ならいいの? クッキーとかで良ければ一緒に作ってもいいけど」
「え。あ、本当ですか? じゃあ作りたいです!」

 というわけで、二人はクッキーを作ることになった。

「シンプルなの作る材料しかないから」
「大丈夫です」




 そうして二人は小さなクッキーを作った。何の変哲も無い、白いくて丸いクッキー。
 焼き上がり、充分に冷ましたクッキーを、二人は4つの紙袋に入れた。二人で一緒に作ったので、別に分けてはいない。

「……自分の分を紙袋に入れる必要はなかったわ」

 自分の分をきちんと袋に入れて口を縛ってから、無駄な包装に霊夢はげんなりした。自分で詰めたクッキーを自分で解いて一人で嗜むのは、なんかやや寂しいものがあった。

「はぁ……で、早苗は三つでいいのよね。あんたんとこの神様とあんた用の」
「あ、はい。これで充分です」

 早苗は満足そうに、目の前に置かれたクッキーを眺めていた。
 その目の前で、霊夢が自分のクッキーを開けようとする。そんな霊夢を、慌てて早苗が止めた。

「あ、ちょ、ちょっと待った!」
「はい?」

 そう云って、霊夢のクッキーを奪った。

「あ、ちょっと。何、三つじゃ足りなかった?」
「いえ、そうではなくて」

 云いながら、そっと自分の持っていた紙袋を霊夢に渡した。

「その。どうせなら交換しましょうよ」
「はぁ?」

 二人で作ったクッキーである。二人で詰めたクッキーである。四つ詰めてから、適当に1と3で取りわけただけである。交換しても、中身はなにも変わらない。
 ただ、無意味でもない。

「……そうね。どうせなら、名目だけでも贈り物の方が有り難いわね」
「そうですよ」

 云って、早苗も笑った。

「今度、チョコ一緒に作らせて下さい。興味あるので」
「いいわよ。それじゃ、来年のバレンタインデーに向けて作ってみる?」
「賛成です」

 二人は、楽しそうに笑う。

 2月14日。

 今日は、褌(ふんどし)の日。
お久し振りだったり初めましてだったりしてます。大崎屋です。どうも。

寒かったり暖かかったりしてますね。風邪引かないように気を付けてくださいね。私は風邪引いてます。

チョコですよ。15日には何故か安くなりますね。何故でしょうかね。楽しみだ。

稚拙な内容では御座いますが、楽しんで頂けましたら幸いです。
では、また♪
大崎屋平蔵
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.500簡易評価
2.30名前が無い程度の能力削除
中間の蘊蓄要りますかね?
7.80名前が無い程度の能力削除
最後の一文は一体…
8.80奇声を発する程度の能力削除
最後w
9.80名前が無い程度の能力削除
最後!
10.100名前が無い程度の能力削除
最後!!
11.100名前が無い程度の能力削除
おい最後!!
12.90名前が無い程度の能力削除
これ最後いらないでしょww
13.100名前が無い程度の能力削除
最後いらないだろw

ほのぼのとしてよかったです

白いくて丸いクッキー。
→白くて丸いクッキー

口を潤ませてから、
→「潤して」の方がいい気がします
14.100名前が無い程度の能力削除
可愛かったです