※この作品には東方星蓮船のネタバレが含まれています。
※この作品の登場人物は東方星蓮船体験版時点での情報で構築されています。製品版では異なる可能性があります。
有能なメイドは鼠の害をよく知っている。
時としてそれが裏目に出ることも、ある。
幻想郷は平和である。
去年の不作は人々の心に暗い影を落としているが、幸い餓死者が出ることはなかったようだ。
地霊殿の騒動も終わり、紅魔館の住人は平和を満喫していた。
テラスから空を見上げる吸血鬼。
図書館の窓から空を眺める魔女。
珍しい紅茶を淹れるメイド長。
いたって平和である。
彼女たちにとって、『宝船』などというものはどうでもよかったのだ。
もし、それが真実だとしても。
紅白の物体がその「船」を目指して飛行し始めている。
「咲夜も見なさい、霊夢が行ったわよ」
ちょうど紅茶を運んできたメイド長に、館の主、レミリアが言う。
「妖精戦を見る限り霊符ですね、しかし異変解決用装備とは…」
「それだけ『宝』に飢えているのかしら」
メイド長も館の主も、魔女も、『異変』に際して飛び出したことはある。
終わらない冬、異常な月、続く宴会、季節を問わず咲き乱れる花、異様な濃霧や野分や地震。
彼女たちは『危険だから』こそ飛び出していき、そして戦った。
しかし、今の彼女たちには危機感が全くない。
それが飛び出してくるまでは。
それが、『あれ』を防ぐまでは。
霊夢は鼠の妖怪と対峙していた。それほど強くはない。ただ、…馬鹿にされた。
怒りを込めた霊夢の攻撃は鼠を確実に追い詰めていく。
追い詰められた鼠は、複数の正八面体のクリスタルを展開し、周囲を回転させる。
その攻撃自体は霊夢の前では児戯に等しい。
だが、クリスタルは霊夢の攻撃を防ぐ。回転の合間を潜った分はあるが……
「アミュレット程度なら当たってもねぇ…」
「いえ、本体のほうは被弾してないですね」
「あれは鼠?ダウザーかしら?前はロッド、今はペンデュラム?」
「鼠ねぇ。不作による害獣の大量発生、伝染病の媒介、食害による飢餓……宝船なんかよりこちらのほうが重大」
吸血鬼が言えた義理ではないのだが。
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
『おや、さっきの人間か つまらん』
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
『私のネズミは人肉を好むから』
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
小賢しい。小賢しい。小賢しい!
<霊符『夢想封印』>
紅魔館。日陰の魔女も、吸血鬼も、メイド長も、それを見ていた。
自分たちが防げなかった、そして、幻想郷の切り札である博霊の巫女の、切り札のスペルカードが、鼠のクリスタルによって防がれたのを。
そして、巫女の攻撃によって、鼠が『負けたように見せかけて降下した』ことを。
事実を理解した瞬間に『時が止まる』。
なんとか降下に成功した鼠 - ナズーリン - を待ち受けていたのは
『元・異変解決者』『銀のネズミ捕り』 十六夜咲夜。
彼女にとってこれは異変。
幻想郷の切り札を防ぐ能力を持ち、探索にやってきた『鼠』。
不作による害獣の大量発生、伝染病の媒介、食害による飢餓をもたらす者。
「やれやれ、なんでこう血の気が多い…」
言葉をナイフが遮る。
「貴方は何を運んできたの?飢餓?病気?それとも何かの尖兵?」
ナズーリンは悟る。目の前のメイドは本気、だと。
瞬時に自分を殺す能力と、躊躇なくそれをやりとげる意志を持っている、と。
ここは慎重に誤解を解かなければ。先ほどの巫女とは話が違いすぎる。
「私はただの雇われダウザーに過ぎない。不審に思うのなら道具の糸をほどき、私の髪の毛1本まで漏らさず調べればいい。
ただ殺されるのはご免被りたいね、メイドが来たのなら風呂もあり主もいるはずだ」
「不作の地に不審な船が鼠を降ろす、これが飢餓や疫病の前振れでなくて何だと言うの?」
「もし私の目的が飢餓や疫病なら、わざわざ昼間に空から降りてくるかい?」
沈黙が流れる。
紅魔館テラス。もはや2人にとっても霊夢などどうでもいい。
「パチェはどう考える?あの鼠はやはり疫病や飢餓をもたらす?」
「もし私がそうするなら夜に降下するわね、少なくとも」
「昼間に堂々と降下するということは、敵意はそれほどない、陽動にしては地味…」
「少なくとも、吸血鬼の館にとってはそれほど驚異ではない」
「パチェ、ウチ(紅魔館)の血の供給はどこから来るかわかるわよね」
「館に封じれば問題はない、害があるとわかれば殺せばいい…」
「…咲夜はそれわかってたっけ」
「…考える時間があったかしら?」
「鼠は、殺す!」
咲夜を中心にした正方形が浮かび上がり、光を放つ。
「調理場においても、建物においても、鼠は大敵なのよぉ!」
<時符『プライベートスクウェア』>
哀れな鼠は…
「あ、プラスクならクリスタル貫通出来るんだ」
「白黒鼠にもあんな勢いで戦えればいいのに」
「というかパチェ止めに行って。今日光がひどいから」
「私だって日光は嫌なのよ」
正八面体のクリスタルを周りに回しながら、四角い時の小箱の中に閉じ込められ…
あきらかに異常なメイド長を門番が制止するまで、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わうことになった。
その後、どうなるかはまた別の話にて。
※この作品の登場人物は東方星蓮船体験版時点での情報で構築されています。製品版では異なる可能性があります。
有能なメイドは鼠の害をよく知っている。
時としてそれが裏目に出ることも、ある。
幻想郷は平和である。
去年の不作は人々の心に暗い影を落としているが、幸い餓死者が出ることはなかったようだ。
地霊殿の騒動も終わり、紅魔館の住人は平和を満喫していた。
テラスから空を見上げる吸血鬼。
図書館の窓から空を眺める魔女。
珍しい紅茶を淹れるメイド長。
いたって平和である。
彼女たちにとって、『宝船』などというものはどうでもよかったのだ。
もし、それが真実だとしても。
紅白の物体がその「船」を目指して飛行し始めている。
「咲夜も見なさい、霊夢が行ったわよ」
ちょうど紅茶を運んできたメイド長に、館の主、レミリアが言う。
「妖精戦を見る限り霊符ですね、しかし異変解決用装備とは…」
「それだけ『宝』に飢えているのかしら」
メイド長も館の主も、魔女も、『異変』に際して飛び出したことはある。
終わらない冬、異常な月、続く宴会、季節を問わず咲き乱れる花、異様な濃霧や野分や地震。
彼女たちは『危険だから』こそ飛び出していき、そして戦った。
しかし、今の彼女たちには危機感が全くない。
それが飛び出してくるまでは。
それが、『あれ』を防ぐまでは。
霊夢は鼠の妖怪と対峙していた。それほど強くはない。ただ、…馬鹿にされた。
怒りを込めた霊夢の攻撃は鼠を確実に追い詰めていく。
追い詰められた鼠は、複数の正八面体のクリスタルを展開し、周囲を回転させる。
その攻撃自体は霊夢の前では児戯に等しい。
だが、クリスタルは霊夢の攻撃を防ぐ。回転の合間を潜った分はあるが……
「アミュレット程度なら当たってもねぇ…」
「いえ、本体のほうは被弾してないですね」
「あれは鼠?ダウザーかしら?前はロッド、今はペンデュラム?」
「鼠ねぇ。不作による害獣の大量発生、伝染病の媒介、食害による飢餓……宝船なんかよりこちらのほうが重大」
吸血鬼が言えた義理ではないのだが。
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
『おや、さっきの人間か つまらん』
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
『私のネズミは人肉を好むから』
小賢しい。博霊の巫女を相手に。
小賢しい。小賢しい。小賢しい!
<霊符『夢想封印』>
紅魔館。日陰の魔女も、吸血鬼も、メイド長も、それを見ていた。
自分たちが防げなかった、そして、幻想郷の切り札である博霊の巫女の、切り札のスペルカードが、鼠のクリスタルによって防がれたのを。
そして、巫女の攻撃によって、鼠が『負けたように見せかけて降下した』ことを。
事実を理解した瞬間に『時が止まる』。
なんとか降下に成功した鼠 - ナズーリン - を待ち受けていたのは
『元・異変解決者』『銀のネズミ捕り』 十六夜咲夜。
彼女にとってこれは異変。
幻想郷の切り札を防ぐ能力を持ち、探索にやってきた『鼠』。
不作による害獣の大量発生、伝染病の媒介、食害による飢餓をもたらす者。
「やれやれ、なんでこう血の気が多い…」
言葉をナイフが遮る。
「貴方は何を運んできたの?飢餓?病気?それとも何かの尖兵?」
ナズーリンは悟る。目の前のメイドは本気、だと。
瞬時に自分を殺す能力と、躊躇なくそれをやりとげる意志を持っている、と。
ここは慎重に誤解を解かなければ。先ほどの巫女とは話が違いすぎる。
「私はただの雇われダウザーに過ぎない。不審に思うのなら道具の糸をほどき、私の髪の毛1本まで漏らさず調べればいい。
ただ殺されるのはご免被りたいね、メイドが来たのなら風呂もあり主もいるはずだ」
「不作の地に不審な船が鼠を降ろす、これが飢餓や疫病の前振れでなくて何だと言うの?」
「もし私の目的が飢餓や疫病なら、わざわざ昼間に空から降りてくるかい?」
沈黙が流れる。
紅魔館テラス。もはや2人にとっても霊夢などどうでもいい。
「パチェはどう考える?あの鼠はやはり疫病や飢餓をもたらす?」
「もし私がそうするなら夜に降下するわね、少なくとも」
「昼間に堂々と降下するということは、敵意はそれほどない、陽動にしては地味…」
「少なくとも、吸血鬼の館にとってはそれほど驚異ではない」
「パチェ、ウチ(紅魔館)の血の供給はどこから来るかわかるわよね」
「館に封じれば問題はない、害があるとわかれば殺せばいい…」
「…咲夜はそれわかってたっけ」
「…考える時間があったかしら?」
「鼠は、殺す!」
咲夜を中心にした正方形が浮かび上がり、光を放つ。
「調理場においても、建物においても、鼠は大敵なのよぉ!」
<時符『プライベートスクウェア』>
哀れな鼠は…
「あ、プラスクならクリスタル貫通出来るんだ」
「白黒鼠にもあんな勢いで戦えればいいのに」
「というかパチェ止めに行って。今日光がひどいから」
「私だって日光は嫌なのよ」
正八面体のクリスタルを周りに回しながら、四角い時の小箱の中に閉じ込められ…
あきらかに異常なメイド長を門番が制止するまで、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わうことになった。
その後、どうなるかはまた別の話にて。
ナズーリン死ななくてよかった・・・
EX中ボスとして再登場しそうな1面ボスなんてナズーリンくらいなもんだが、これでなずりんがEXに登場しなかったら・・・咲夜さんに狩られたか・・・
ナズーリンが中国に助けられた時に中国になんて言うんだろうか