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河城ウルトラの笑い実験

2026/08/20 01:52:54
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 河城ウルトラの笑い実験

 その研究は関係者の間で「笑い実験」と呼ばれていた。飯縄丸 龍、八坂 神奈子、天弓 千亦の連名発起、河城 にとりが指揮、進行する産業推進計画「U計画」の6期目の研究目的は、新開発の笑気ガスが生体に与える効果の検証と、笑気ガスを用いた消費者購買意欲の向上可能性を検討する応用研究の2つだった。

 基礎研究U6-1は発笑に要する最低ガス濃度、副作用や経時耐性の有無、濃度ごとの作用変化、被験者が耐えうる最高ガス濃度の4つの項目を観察する、ガスの笑気効果に焦点を当てた最初の実証実験であり、ガスによる嗜好性変化や解放環境での実用性検証を後に控えた本研究の根幹であった。

 実験のため、それまでの5期と同じく太陽の畑から10匹の妖精を調達した。窃盗容疑での叱責と外的刺激で実験協力を促し、身体特性の人類類似性、薬剤耐性及び過敏性、従順度の3つの観点で評価して4匹が選ばれた。残りはそれまでと同じく処分した。
 被験者4匹にはこれから行われる実験とその目的を説明、研究終了後の解放と多額の報酬を約束し、同意を得た上で実験に参加させた。被験者等は進んで同意書に署名し、監督者の指示に積極的に従いガス室へと入って行った。
 ガス室扉の施錠、部屋の密閉、補給窓や観測窓の開閉、収音、照明の過不足、換気機能の正常が確認され、室内送気に笑気ガスが送り込まれた。
 基礎研究U6-1が開始された。

 ガス室の排気の成分を分析しつつ、時間をかけ室内のガス濃度を僅かずつ上げた。8時間程で1匹が笑い出し、これを発笑に要する最低濃度として研究チームはガス濃度を安定させた。
 しかし被験者等はガス濃度が不変にも関わらず意識高揚を強め、声を荒げて笑い続けた。3日目には被験者等は笑いながら暴行を振るいあう等過激な行動を取り始め、チームの命令にも応じなくなった。何を言っても笑うか、「ガスを濃くしろ!」と叫ぶばかりとなり、食料を拒絶し補給窓を何かで固め、観測窓からも何も見えなくなった。5日から6日目にかけ笑い声はいっそう施設中をつんざき、凄まじい連発音と地揺れが常時響いた。
 河城 にとりは観察の困難を理由に7日目に実験を停止、ガス供給を止めて換気を全開し、被験者等に退室を命じた。しかし扉は異常な力で内側から押さえられ命令は拒絶。河城 にとりはガス室への突入を部隊に命じた。

「シサクBハゴクシヨウリヨウデカジヨウニハンノウ.ヒケンタイゼンインハツキヨウ,ウチ3タイソウシツ.シセツソンシヨウアリ,ジツケンヲチユウシス.」
 テレタイプを送信すると、河城 にとりは背後の手術台へ振り返った。

 突入部隊は地獄絵図を見た。床に散乱した食料、漆喰壁が全面弾幕で砕け、被験者は一様に酷く自身を傷付けていた。1匹は機能を停止していて、3匹は妖精とは思えぬ怪力で部隊を襲った。部隊は2匹を鎮圧、生け捕りにできたのは1匹だけだった。

 縛り付けられたまま跳ね回る妖精へ近付き、河城 にとりは彼女に問いかけた。
「お前は、一体何者なんだ。」
 身をねじり、液を散らし、目を剥いた妖精は今も爆笑しながらそれに答えた。
「アハハハハハ、忘れたのか、私は笑いだよ。お前たちの中に潜む憎悪そのものだよ。アハハハハハ、笑いたい、自分が笑いたい、笑える奴を観たいという嫌悪だよ。アハハハハハ、バカを観たい、アホを観たい、負け犬を観たい、自分より劣った誰かが見たい!自分こそ優位だと気が付きたい!そう思って笑うことだよ!アハハハハハ、自分を慰めたい。自分だけが護られたい自分だけが救われたい!他の奴ら全員滅ぼしたい!そして最後に、自分だけが笑いたい。アハハハハハ!そう思うことだよ!それが私だよ。それがお前だよ。それが、笑うということなんだよ!アハハハハハ!アハハハハハ!アハハハハハ!私を観たな!!アハハハハハ!!アハハハハハ!!アハハハハハ!!お前も笑えよ!!!アハハハハハ!!!アハハハハハ!!!!アハハハハハ!!!!!」
 カチャカチャカチャ、カチャカチャカチャカチャカチャカチャ。
 テレタイプがカナ文の活字を連打していた。
「イイヅナマル メグム」に始まる指令書は実験の継続を命令していた。
 同じくして2頭の白狼天狗が現れ、実験継続を口頭で命じた。しかし河城 にとりはそんな物共には目も向けず、ただ妖精だけを睨み降ろしていた。
 河城 にとりはフリントロックのピストルを抜き、撃鉄を上げ、未だ笑い続ける妖精の眉間に押し当てた。弾幕よりこっちの方が楽だった。
 正直妖精が銃弾なんかじゃ死なないことなんて明らかだった。
 しかし河城 にとりはそんなことも、自分のことを羽交い絞めにする白狼天狗も、未だ耳障りに紙を殴るテレタイプさえ、少しも気にはしなかった。
 河城 にとりは引き金を引いた。

 おわり
お久しぶりです、くろありです。今作は都市伝説回でした。
コンテストに挙げた後にはもう気づいてはいたのですが、全体的に荒いなと。これがだいぶ気に入っている方なのでカスらなかったのも納得です。
コンテストに落ちた作品でほかにも好みのものがいくつかありますので、気ままに上げていきたいと思います。
完全に供養目的の自己満足となりますが、しばしの間お目汚しさせてしまうことお許しください。
くろあり
https://x.com/cjzcznx2sostjwj
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