Coolier - 新生・東方創想話

彼女に似合うモノ

2009/12/28 01:16:06
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最近何だか星の様子が何かおかしい、とナズーリンは感じていた。
と言うのも星が自分を見る目が変わったと感じるようになったからだ。

聖の思想を幻想郷に広めるために聖と星は幻想郷中を巡り、人、妖怪関係なく布教活動を行なっている。
そして、ついこの間妖怪の山に在るという守矢神社に二人は行ってきたのだがその頃からナズーリンは
妙な視線を感じるようになった。

星自体に目立った変化はない。
変わらず真面目に寺で毘沙門天の使いとして働き、今までと同じ様に物も無くしている。
何一つ変わっていないと思うのだが、唯一視線がだけがどこかおかしい。

何と言えばいいのか、熱の籠ったとでも言えばいいだろうか?
本人は気付かれているとは思っていないだろうが、物陰からまるで風邪に侵されている患者のように
頬をやや紅潮させ熱の籠った視線をナズーリンに向けている。
もちろんナズーリンはその事に気が付いてはいるが特に気にも留めなかった。

だが、それが長く続けば話は変わってくる。

『一体何なんだ?』とナズーリンは考えた。
虎も猫科だと言うから猫としての本能から鼠である自分を狙っているのかとも考えた。
しかし、星が一向に襲ってくる気配はない。
あくまでも物陰から見つめているだけなのだ。

実害はないが、そんな風に毎日見られていては何とも落ち着かない。
いっそ本人に聞いてみるかとも考え、星に会いに行くと彼女はいつも通りの寅丸星になってしまう。
どこまでも真面目な普段通りの彼女なのだ、瞳にもあの妙な雰囲気は感じられない。
その度に『気のせいなのだろうか?』と思って、その場は軽い世間話をして終るのだがまた暫くすると
あの視線を物陰から送ってくる。

そんな落ち着かない日が一月程続いた後だった。
ナズーリンは星に呼び出された。



――


人気の無い寺の裏手側、そこが星に指定された場所だった。
この場所は北側に位置するため建物が日の光を遮り昼間でも薄暗く肌寒い。
そんな場所でナズーリンは星を待っていた。

「まったく、突然呼び出したりして何だと言うんだ?」

ナズーリンは呼び出しておいてまだ姿を見せない星に毒づく。
今日の昼食が終った後こっそりと『このあとちょっといいですか?』と星に耳打ちされた。
特に用事も無かったのでナズーリンは了承したのだが最後まで星は何のためにこの場所に呼び出したのか
ナズーリンには教えてくれなかった。

おかげで彼女は呼び出された理由も解らないままで一人星を待つことになった。

「っくしゅん」

くしゃみが出た。
ただでさえ冬至も過ぎて風が一段と冷たくなってきたというのに、こんな薄暗く日の当たらない場所では尚更肌寒い。
元々直ぐ済む用事だと言われて軽装で出てきているのでこのままでは風邪をひいてしまうかもしれない。

「…………」

何だかずっと一人で待っているのが馬鹿らしくなってきた。
直ぐに済むからと言われて出てきたのに、呼び出した当の本人は指定した時間を過ぎたのに今だ姿を見せない。
このまま帰ってしまおうかと思ったちょうどその時

「ナズーリン、すいません遅くなりました!」

叫び声とともに星が走って現れた。
よほど急いだのかこの寒い中で汗を額に浮べて息を切らしていた。
だがそんな姿を見た所で待たされた間の寒さが変わるわけも無い。
だからナズーリンの言葉はどこかトゲのある言葉になった。

「やあ、呼び出したくせに随分遅かったね?」

「す、すいません、ナズー、リン、ちょっと、探し物、が、見つからなくて」

ぜぇぜぇと肩で息をする星見ていると寒かったのが何だかどうでもよくなってきた。
それに、今更彼女を責めても冷えた身体が温まるわけでもない。

「まぁ、いいよ、で、いきなり呼び出したりして何の用だい?」

「ああ、はい、実は、お願いが、ありまして……」

「星、一先ず落ち着いてくれ、私は逃げない」

聞き取りにくくてしょうがないので、息を切らしたまま話をしようとする星に落ち着いて貰う様に言った。
それにしても一体なんのお願いだろうか?
目の前で深呼吸して呼吸を落ち着かせようとしている星を見てナズーリンは思う。

人気の無い場所に呼び出してまでするお願いとは何だろう?
何かまた無くし物でもしたのだろうか?
しかし、それならば別にこんな人気の無い場所でなくてもいいはずだ。
では何だろう?

ナズーリンが星のお願いが何なのかを考えている時、ふと深呼吸をする星と目が合った。
目が合うと直ぐに目を逸らしてしまったが一瞬見た彼女の目は物陰から自分を見つめている時と同じ目をしていた。

あの妙な熱の籠った熱い視線だった。

何だこの雰囲気は?
人気の無い場所に突然呼び出され、熱の籠った目で見られている。
何だかまるでこのまま告白でもされそうな雰囲気ではないか?

「……(まさか、ね)」

頭では否定したが、しかし告白、そう思うと今まで星の行動も何だか納得できる気がした。

いつも物陰から自分を見つめていたのも、告白するタイミングを捜していたのではないか?
私から話掛けてみた時は私に悟られない様に努めて平静を装っていたのではないか?
私をこんな人気の無い場所に呼び出したのも誰にも聞かれたくないからではないか?
指定の時間に遅れてきたのも『探し物』とか言っていたが気持ちの整理をつけるためではないだろうか?

『告白』と言う単語が今までの星の行動を全て一本に繋げるような気がした。
ずっと物陰から見つめていたのも、突然こんな所に呼び出したのも、呼び出したのに遅れたのも
全てはそのためなのではないだろうか?

ずっと言おうと思っても勇気が持てず物陰から見ているだけ
自分が話掛けた時は悟られない様にと感情を殺して平静を装っていただけ
そして今日は勇気を持ち人気の無い場所に呼び出したが、やっぱり断られるのが怖くて
約束の時間に遅れてしまった。
そう考えると今までの行動が可愛らしく思えてきた。

「………っ」

自分の妄想に星の行動を当て嵌めるとナズーリンは自分の頬が紅潮していくのを感じた。
我ながら馬鹿な事を考えてしまったな、と
それでも、もしも、もしも自分の思ったとおりなら、とも思う。

本当は上司と部下の関係が嫌で、自分達はそんな関係なんだと思いこみたくなくて
ソレを取っ払いたくて『ご主人様』とは言わず名を呼び捨てにしてきた。
『いつかは自分の気持ちに気が付いてくれないかな』と願いを込めて、何を言われてもあえて星と呼んで来た。

でも、所詮彼女が自分と一緒にいてくれるのは上司と部下の関係なのだからだと思って
ずっと悟られない様にしてきた。

だから、そのまぁ何だ、もしも星にこのまま告白されたのなら全然オッケーな訳で
むしろ私としても凄く嬉しい事で……
って何を考えているんだ私は!?

ナズーリンは自分の思考に悶える。
まだ星が自分に告白すると決まったわけではないのに何を考えているんだろう。

馬鹿か自分はと考えていると突然星に名を呼ばれた。

「ナズーリン!」

「ひゃ、ひゃい!」

ナズーリンは一人悶えている時に突然名を呼ばれた事で思わず変な返事をしてしまった。
しかし、その事に対して星は何も言わずナズーリンの肩を掴みジッと彼女を見つめる。

その目は例の熱が籠っているが、視線自体は紳士的で本当にこのまま告白するのではないか?
と思わせるには充分だった。

その行動と視線にさらにナズーリンの頭の中はヒートアップする。

『(ま、待ってくれ私だって一応女の子なんだ、星はずっと悩んで覚悟を決めてきたのだろうけど
私としても心の準備というのがあってだね、その、そ、そんな目で私を見つめないでくれ!!)』

あまりの緊張感で言葉には出せなかった。
口から出たのは『あ』とか『う』とか意味をもたない言葉ばかりだった。

今なら水の入ったヤカンを沸騰させる自身が彼女にはあった、それほどまでに緊張し先程まで冷えていた
身体は熱くなっていた。
今、星の目の前には顔を真っ赤に染めたナズーリンがいる事だろう。

「ナズーリン、私のお願いを聞いてくれますか?」

静かでどこまでも紳士的な星の声

普段なら『なんだい?』なんて清まして答えるナズーリンだが今はコクコクと人形の様に
首を縦に振ることしかできなかった。

星はナズーリンが首を縦に何度も振る姿を見て安堵するかのように一息ついた。
そしてナズーリンの肩から手を離し、懐から一つの丈夫そうな布を取り出しナズーリンの前に広げた。

今だ頭の中がテンパっているナズーリンはその丈夫そうな布にプレゼント(指輪的な)が包まれているのかとも思った。
てっきり『このままずっと一緒にいてほしい』的な事を言われるのだと思っていた。
だが、布には何も包まれておらず、星が見せたかった物がその布自体だと暫くして理解した。

黒い色をした丈夫そうな布の正体はズボンだった。
しかし、星の穿いている様な丈の長いズボンではなく、格段に丈の短く切られたズボン
つまりは半ズボンだった。

「……え?」

てっきり愛の告白でもされると思っていたナズーリンは訳が解らず戸惑った。
そのままポカンと口を開いたまま『何コレ?』と星に視線を向けると彼女が口を開いた。

「ナズーリン、今日からこの半ズボンを穿いて一人称を『ボク』にしませんか?」

それは素敵な笑顔だった。
うっかりそんな笑顔を見てしまったら惚れてしまいそうになるほど素敵な笑顔だった。

ただし、それが普通の状況ならばの話だ。

ナズーリンは星のその言葉に僅かに微笑み。

「ねぇ、星がいつも私の事を、物陰から見ていたのはこの事を言うためだったのかい?」

念のため確認をとった。
ナズーリンの言葉に星は素敵な笑顔を崩さずに答えた。

「なんだ、気が付いていたんですか?実はそうだったんです、いつもナズーリンがこのズボンを穿いて『ボク』とか言ってくれたら
嬉しいなと想像していたんです、でもどうしても言い出せなくて今日は本当に勇気を出して何とかこの思いを伝えようと決めたのに
この半ズボンをどこにしまったのか忘れてしまっていてですね、本当に遅れてすいませんでした」

「……そう、そっか、そうなんだ」

星の言葉を聞いてナズーリンは上がった体温が徐々に下がっていくのを感じた。
今ならお湯を氷に変える自身があった。

「はい、せっかくナズーリンに似合うようにと森の魔法使いにオーダーメイドした半ズボンを無くしてしまっては
呼び出した意味がありませんでしたから焦りましたよ」

爽やかに星は言い切った。

「フフ、まったく君って奴は……」

「ん?ナズーリンどうしました、さぁ、さっそくこの半ズボンを穿いふぐ!!?」

ナズーリンは微笑みながらダウジングロッドの先端を星の鼻の穴に突っ込んだ。

「あ、あのナズーリン?痛いですよ?」

星のその言葉にナズーリンはさらに笑みを濃くして聖母の様に優しく微笑みながら

「本当に、……馬鹿だな!!」

ロッド棒をグリグリグリグリグリグリグリ

「あ、いや、痛い、ふ、深い裂ける、裂けちゃいます!!抜いてください!!」

「ハハハハハ」

ナズーリンは星の悲鳴を無視して気の済むまでロッド棒をグリグリし続けた。



――



「はぁ……」

ナズーリンは肩を落として自室に向かっていた。
てっきり星に告白されるかと思ってあんなに舞い上がった自分が馬鹿らしく思えた。

星はあの後鼻血が止まらなくなって竹林の医者の元に走っていった。
その光景を思い出しこのまま星に自分の気持ちが伝わらないのではと思うとまた溜息が出てきた。

「……星の馬鹿」

今日はイロイロと疲れたからもう自室でノンビリしようとナズーリンは決めた。

「おや、ナズーリンどうしたのですか?そんなに肩を落として」

そんな肩を落とすナズーリンに声がかけられた、聖の声だ。

「ああ、聖か、ちょっとイロイロあってね?」

「そうですか、何があったのか解りませんがあまり溜め込んではいけませんよ?
悩み事でしたら私がいつでも相談にのりますからね?」

ああ、彼女の優しさが心地良い。こんな時の彼女の優しい言葉は本当に嬉しい。

「そうかい?じゃあ、聞いてくれるかな?」

ナズーリンは思わず先程の星とのやり取りを聖に話した。
勿論告白されるかと思った事は省いた。
それは誰にも教えない秘密である。



――



「まったく、星にも困ったものね……」

ナズーリンの話を聞いた後で聖が言った第一声だった。

「だろ?私もそんな事を言われるとは思ってなかったからねガッカリしてしまってね……」

「え?がっかり?」

「いや、なんでもない、ビックリの間違いだ」

「そうですか、それにしてもまったく星は解っていませんね」

「何がだい?」

首を傾げたナズーリンに聖はどこからか眼鏡を取り出し、そのまま無駄の無い自然な動きで彼女にかけた。

「……?」

突然眼鏡をかけさせられてナズーリンは訳が解らなかった。
そのまま先程の星とのやり取りの様に『何コレ』と聖に視線を向けると聖は穏やかな笑みを浮べて告げた。

「ナズーリンに半ズボン、ボクっ子まで指定しておいて『眼鏡』を忘れるなんて星は本当に解っていませんね?」

その時の聖白蓮の笑顔は世界を救えるんではないか?と思える程素敵な笑顔だった。

ナズーリンはそんな素敵な笑顔を自分に向けている聖の鼻の穴目掛けてダウジングロッドを突っ込んだ。

聖の悲鳴が命蓮寺に響き渡ったのは言うまでもない。
23度目となりました。
自分で読み返してみて『私の書く命蓮寺組はどこか駄目だ』と思いました。
でも似合うと思うんですよナズに半ズボン……、
あと普段クールだけど、いきなり告白されそうになるとテンパル乙女風ナズは正義だ!!
それだけが言いたかった。
命蓮寺組で今度は真面目な話が書けたらいいなぁ……、ってか他の面子書けるといいなぁ……

あとタグはきっと間違っていないとも思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

1様
ではこれからも駄目なままで……、もう駄目だ……

5様
新たなる信仰対象を教えられたのではないでしょうか?
半ズボンボクっ子眼鏡ナズ>越えられない壁>神仏(毘沙門天)

6様
ようこそ、こちらの世界へ……

7様
そうですよね、もしも(※この先のコメントはスキマに送られました)

9様
落ち着いてください、黒の半ズボンですからあの方ではありません。
あとナズはダウジングと言う探偵要素を持っていますから
見た目子供、頭脳大人な眼鏡サッカー少年かもしれません。

奇声を発する程度の能力様
そうなんですよ、不思議と違和感ないんですよ。

ぺ・四潤様
匙を投げられた!?
昔とある漫画で『鼻エンピツ』という恐ろしいモノを見ましてね……
『鼻ロッド』かマニアックな響きだなぁ……
いやぁ、それにしても迂闊でした、中の事は考えてませんでしたよ。

17様
あ、ありがとうございます?
でも多分今度は真面目な命蓮寺組になる、はずです多分、恐らくきっと……

18様
この光景を容易に想像できました、きっとこの後聖も加わって
『ボクのロッドを聖の(ry』(ぶふぉ!)
「ししょー新しく来た患者さんの傷もすぐに開いちゃいます~~」
「……座薬でも突っ込んでおきなさい」

『鼻座薬』かマニ(ry

喉飴様
おおう!?なんとまた見ていただけていたとは…
そうですよね、可愛いですよね?
ナズーリンをもっとテンパらせ隊

29様
いやいや、大丈夫ですよ。書いていた私もエロスを感じていましたからハハッ……
やっぱりダイジョバナイかもしれません……

30様
あー、泣いて頼まれたりしたらありそうですね。
『じゃあ、一日だけだぞ』とか言ったりして……
その光景を考えてみたらそれだけでもう一本書けそうな気がしました。
でもきっとまた駄目な命蓮寺組になりそうですけど……

ずわいがに様
うん、私もそう思います。
でもきっと、この星と聖の二人はその姿を見て喜ぶような気もします。
だから『屈したら負け』と思い、意地でも泣かないとも思います。

36様
……ソレ何処の探偵っすか?
アレ?そんな探偵をどっかで見た事あるような?
気のせい?……アレ?

コメントありがとうございました。
H2O
簡易評価

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コメント



0.1370簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
うん、どこか駄目だ。
だがそれがいい。
実に駄目だ、いいぞもっとやれ。
5.100名前が無い程度の能力削除
守矢神社から帰ってきてから……早苗さん、あんたナニを吹き込んだーーー!?
6.100名前が無い程度の能力削除
ナズーリンが短パンボクっ娘眼鏡……?ふべらっ!?(鼻血
7.100名前が無い程度の能力削除
鼻の穴で良かった…
9.100名前が無い程度の能力削除
短パンにボクという時点ではミッ(アッー
だけど、聖は一体どこでの○太君を知ったんだろう?
10.100奇声を発する程度の能力削除
ナズに半ズボン…。
想像したら違和感無かったw
13.100ぺ・四潤削除
うん。あなたはもう駄目だ。諦めてこのままでいてください。
ダウジングロッドで鼻の穴www 音声だけだとすごく……卑猥です……
甘いな聖。あなたこそ解っていない。大事なものを忘れている。 つブリーフ
17.100名前が無い程度の能力削除
このダメさはいいものだ。
18.100名前が無い程度の能力削除
「ボクのロッドをご主人様の穴に入れてみたいんだ……」(ぶふぉ!)
ししょーこの患者さんすぐ傷が開いちゃいます~~

布教したと思ったらされていたのは聖達のほうだったァァーーーーーー!!
22.80喉飴削除
テンパるナズの可愛さは異常ですね。
普段余裕の人ほど、恋愛系で慌てる姿は可愛すぎます。
29.100名前が無い程度の能力削除
ロッドでグリグリされる星ちゃんの台詞に不覚にもエロスを感じた……俺ももうダメだ
30.100名前が無い程度の能力削除
でも御主人様に涙目で頼まれたら渋々従っちゃうんでしょ?
34.90ずわいがに削除
ナズーリン……お前は今、泣いていい。
36.100名前が無い程度の能力削除
ええい!星さんもひじりんもわかってねぇ!
ナズーリンにはまずはメガネだろうが!あとパイプとコーヒーもあればグッド!